(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130664
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】非接触のスライド上流体混合
(51)【国際特許分類】
G01N 1/31 20060101AFI20220830BHJP
G01N 1/38 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G01N1/31
G01N1/38
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107033
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2019564130の分割
【原出願日】2018-05-17
(31)【優先権主張番号】62/511,390
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507179346
【氏名又は名称】ベンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】グレイブス,エバン
(72)【発明者】
【氏名】アルカンドリー,エミリー
(72)【発明者】
【氏名】デュッタロイ,アニク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】染色プロセスを自動化し、染色非一貫性を低減するのに役立つスライドホルダ及び染色装置を提供する。
【解決手段】スライド支持部材(20)と、顕微鏡スライド(10)の表面上に存在する1つまたは複数の流体が非接触で混合されるようにスライド支持部材(20)と連通している顕微鏡スライド(10)に弾性波を導入するための少なくとも1つの音響源(30)とを備える、顕微鏡スライドホルダ(5)。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド支持体、および前記スライド支持体と連通している少なくとも1つのトランスデューサを備える、標本を含む顕微鏡スライド上で流体を非接触で混合するためのスライドホルダであって、前記少なくとも1つのトランスデューサが、約1Hz以上約1kHz以下の範囲にわたる周波数で動作する、スライドホルダ。
【請求項2】
前記少なくとも1つのトランスデューサが、前記スライド支持体の下面と連通している、請求項1に記載のスライドホルダ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのトランスデューサが、前記標本を含む顕微鏡スライドの標本端の中央に実質的に対応する領域において、前記スライド支持体に沿って位置付けられる、請求項1または2に記載のスライドホルダ。
【請求項4】
少なくとも2つのトランスデューサが、前記スライド支持体と連通している、請求項1から3のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項5】
前記少なくとも2つのトランスデューサの各々が、前記少なくとも2つのトランスデューサのうちの第1のトランスデューサによって供給される第1の弾性波が、前記少なくとも2つのトランスデューサのうちの第2のトランスデューサによって供給される第2の弾性波によって相殺されないように構成される、請求項4に記載のスライドホルダ。
【請求項6】
前記少なくとも2つのトランスデューサが、互いと位相がずれている、請求項5に記載のスライドホルダ。
【請求項7】
前記少なくとも1つのトランスデューサの周波数が、約1Hz以上約500Hz以下の範囲にわたる、請求項1から6のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのトランスデューサの周波数が、約50Hz以上約500Hz以下の範囲にわたる、請求項1から7のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのトランスデューサの周波数が、約100Hz以上約200Hz以下の範囲にわたる、請求項1から8のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのトランスデューサに供給される電力が、約40mVpp以上約350mVpp以下の範囲にわたる、請求項1から9のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項11】
前記スライド支持体が、前記標本を含む顕微鏡スライドの裏面の少なくとも一部分を支持するように構成された支持面を有し、前記裏面が、標本を含む面の反対側である、請求項1から10のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項12】
前記スライド支持体が、加熱素子をさらに備える、請求項11に記載のスライドホルダ。
【請求項13】
前記少なくとも1つのトランスデューサと電気通信しているコントローラをさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項14】
前記コントローラが、増幅器および信号発生器を含む、請求項13に記載のスライドホルダ。
【請求項15】
スライド支持体と、顕微鏡スライドの表面上に存在する1つまたは複数の流体が非接触で混合されるように前記顕微鏡スライドに低周波数振動を導入するための少なくとも1つの音響源とを備える、スライドホルダ。
【請求項16】
前記低周波数振動が弾性波である、請求項15に記載のスライドホルダ。
【請求項17】
低周波数振動を導入するための前記音響源が、機械トランスデューサ、圧電トランスデューサ、および表面弾性波デバイスからなる群から選択される、請求項15から17のいずれか一項に記載のスライドホルダ。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のスライドホルダを複数備えるトレイであって、前記複数のスライドホルダの各スライドホルダが、実質的に水平および同一平面上の離間した位置に位置付けられる、トレイ。
【請求項19】
標本を含むスライドを処理する方法であって、(i)前記標本を含むスライド上の試料を第1の試薬と接触させるステップと、(ii)前記標本を含むスライドに低周波数弾性波を導入することによって、前記標本を含むに前記第1の試薬を均一に分布するステップとを含み、前記低周波数弾性波が、約1Hz以上約1Khz以下の範囲にわたる周波数を有する、方法。
【請求項20】
前記低周波数弾性波が、前記標本を含むスライドと連通している少なくとも1つのトランスデューサによって生成される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の試薬が、前記標本を含むスライド上に存在する既存の流体に分注され、前記少なくとも1つのトランスデューサによって生成された前記弾性波が、前記既存の流体内の前記第1の試薬を均一に混合する、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記既存の流体が緩衝液である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのトランスデューサが、約1Hz以上約500Hz以下の範囲にわたる周波数で動作するように構成される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記周波数が、約50Hz以上約500Hz以下の範囲にわたる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記周波数が、約100Hz以上約200Hz以下の範囲にわたる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
弾性波が、約1秒以上約120秒以下の範囲にわたる時間間隔の間、前記試料に導入される、請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記時間間隔が、約1秒以上約60秒以下の範囲にわたる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記時間間隔が、約1秒以上約30秒以下の範囲にわたる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記時間間隔が、約2秒以上約15秒以下の範囲にわたる、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記標本を含むスライドの底面が、基板と少なくとも部分的に接触しており、前記少なくとも1つのトランスデューサが、前記基板に結合されている、請求項20に記載の方法
。
【請求項31】
前記第1の試薬が、前記試料内の第1の標的に特有の検出プローブである、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の検出プローブの検出を促進するために、前記試料を第1の検出試薬と接触させるステップをさらに含む、請求項19から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記試料を第2の標的に特有の第2の検出プローブと接触させるステップをさらに含む、請求項19から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第2の検出プローブが、前記第1の検出プローブと同時に導入され、前記少なくとも1つのトランスデューサが、前記第1の検出プローブおよび前記第2の検出プローブを混合する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の検出プローブおよび前記第2の検出プローブが、抗体である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
試料を染色する方法であって、(a)試料を含む顕微鏡スライド上に存在する流体だまりに試薬を分注するステップと、(b)低周波数弾性波を前記スライドに導入することによって、前記試薬を前記流体だまりに非接触で分注するステップとを含み、前記試薬を分注するステップが、前記試料内の細胞または組織を損傷することなく発生する、方法。
【請求項37】
前記試薬が、前記低周波数弾性波を導入した後約30秒以内に前記流体だまり内に実質的に均一に分注される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記低周波数弾性波を導入するための音響源が、機械トランスデューサ、圧電トランスデューサ、および表面弾性波デバイスからなる群から選択される、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記音響源が、約100Hz以上約200Hz以下の範囲にわたる周波数で動作する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記試薬が、特異結合部位である、請求項36から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記特異結合部位が、抗体を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
第2の試薬を前記流体だまりに分注するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
1つまたは複数の、請求項1に記載のスライドホルダと、標本を含む顕微鏡スライドの標本を含む表面に1つまたは複数の流体を導入することができる少なくとも1つの分注器とを備える、染色装置。
【請求項44】
前記標本を含む顕微鏡スライドの表面に導入された前記1つまたは複数の流体の混合を監視するためのフィードバック制御デバイスをさらに備える、請求項43に記載の染色装置。
【請求項45】
前記1つまたは複数の流体を分注するステップが、前記だまりまたは試料をいかなる混合装置またはガス流とも接触させることなく発生する、請求項43または44に記載の染
色装置。
【請求項46】
前記標本を含む顕微鏡スライドの表面上の流体だまりに接触する能動的な混合装置をさらに備える、請求項43または44に記載の染色装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その開示が参照により全体が本明細書に組み込まれている、2017年5月26日に出願した米国仮特許出願第62/511,390号の出願日の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]多くの組織は、明視野顕微鏡下で組織の成分を目に見えるようにするために十分な色が処理後に保持されない。したがって、様々な試薬で組織を染色することによって組織の成分に色およびコントラストを追加するのが一般的通例である。以前は、組織学的または細胞学的分析のために組織試料を染色するステップが手動で実施されており、このプロセスは、本質的に一貫性がない。一貫性のない染色は、病理学者または他の医療関係者がスライドを読み取ること、および異なる試料同士の比較を行うことを困難にする。したがって、染色プロセスを自動化し、染色非一貫性を低減するのに役立つ多数のデバイスおよび方法が説明されてきた。
【0003】
[0003]自動染色のためのデバイス、特に、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)などの従来の試薬を用いた高容量染色のためのデバイスは、主に、スライドのラックが自動的に、一連の試薬槽内へと下降され、またそこから取り出される「ディップアンドダンク」型のものである。例えば、Tabataに対する米国特許第4,911,098号は、自動染色装置について記載しており、ここでは、組織標本を保持する顕微鏡スライドは、多数の化学溶液容器内へ連続して浸漬される。スライドは、スライドホルダバスケット内に垂直に取り付けられ、このバスケットに対して係合および脱離するクランプを使用して、スライドを溶液から溶液へと移動させる。クランプは、バスケットを傾斜させるための機序を含むことができ、この機序は、バスケットが次の溶液に浸される前に過剰な溶液を取り除くのを助ける。「ディップアンドダンク」型のさらなる自動染色デバイスは、Keefeに対する米国特許第5,573,727号、Takahasiらに対する米国特許第6,080,363号、Ljungmannらに対する米国特許第6,436,348号、およびThiemらを発明者として命名する米国特許出願公開第2001/0019703号に記載されている。
【0004】
[0004]別のタイプの自動染色装置は、新鮮な試薬を個々のスライドに直接送達する。例えば、Edwardsらに対する米国特許第6,387,326号は、スライドが、一度に1つずつスライド格納デバイスから放出され、このスライドがコンベアベルト輸送装置に沿って動く際に様々な染色ステーションにおいて個々に処理されるという染色スライドのための装置について記載している。個々のスライドを自動的に染色するためのさらなるデバイスは、Bogenらに対する米国特許第6,180,061号、Tseungらを発明者として命名するPCT公開WO03/045560、およびRichardsらを発明者として命名する米国特許出願公開第U.S.2004/0052685号に記載されている。
【0005】
[0005]流体の効率的な混合は、多くの工業的方法、化学的方法、および製薬方法、ならびに生物工学的応用において重要なステップである。少量での混合は、しばしば、困難な作業である。いくつかの実施形態においては、分子拡散が主たる混合機序となり、これが、プロセス全体を遅くする。能動型の混合器の統合は、しばしば、困難であり、任意のそのようなデバイスの費用を増大させ、試料間の相互汚染をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,911,098号
【特許文献2】米国特許第5,573,727号
【特許文献3】米国特許第6,080,363号
【特許文献4】米国特許第6,436,348号
【特許文献5】米国特許出願公開第2001/0019703号
【特許文献6】米国特許第6,387,326号
【特許文献7】米国特許第6,180,061号
【特許文献8】PCT公開WO03/045560
【特許文献9】米国特許出願公開第U.S.2004/0052685号
【特許文献10】WO2015/086484
【特許文献11】WO2010/080287
【特許文献12】米国特許第7,615,371号
【特許文献13】米国特許第7,468,161号
【特許文献14】米国特許第8,663,991号
【特許文献15】米国特許第8,048,373号
【特許文献16】米国特許第7,468,161号
【特許文献17】米国特許公開第2016/0282239号
【特許文献18】米国特許第5,650,327号
【特許文献19】米国特許第5,654,200号
【特許文献20】米国特許第6,296,809号
【特許文献21】米国特許第6,352,861号
【特許文献22】米国特許第6,827,901号
【特許文献23】米国特許第6,943,029号
【特許文献24】米国公開特許出願第20030211630号
【特許文献25】米国公開特許出願第20040052685号
【特許文献26】WO2011-139978 A1
【特許文献27】WO2016-170008 A1
【特許文献28】国際特許番号:PCT/US2010/002772(特許公開番号:WO/2011/049608)
【特許文献29】米国特許出願公開第2014/0178169号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Prichard、Overview of Automated Immunohistochemistry、Arch Pathol Lab Med.、Vol.138、1578-1582頁(2014)
【発明の概要】
【0008】
[0006]本明細書に開示されるのは、基板上での1つまたは流体の非接触分注、補充、および/または混合のためのシステムおよび方法である。出願者らは、基板の表面上に存在する1つまたは複数の流体を補充、分布、および/または混合するために低周波数音響または振動エネルギー(例えば、細胞に損傷を与えない周波数、2000Hz未満の周波数などで)を使用することにより、低製造費および保守費を維持しながらの高い混合効率、低減されたプロセス時間、ならびに汚染の予防を可能にするということを発見した。出願者らはまた、驚くべきことに、そのような低周波数音響エネルギーの導入が、1つまたは複数の流体内で生成される波による音響エネルギーの吸収に起因して、少量での混合を促進するということを発見した。出願者らはまた、予期せず、前述の利益が、基板上に存在する細胞および/または組織に損傷を(例えば、溶解または細胞膜崩壊により)与えることなく、ならびに試料を不必要に加熱することなく実現され得るということを発見した。
出願者らはまた、本明細書に説明される方法に従って流体を混合することが、(i)染色アーチファクトのリスクを低減し、(ii)染色中、細胞および/または組織にわたって均一な抗体試薬濃度を可能にするということを発見した。本明細書に開示されるデバイスおよび方法の使用は、任意の染色手順においてより低い濃度の検出プローブ(例えば、抗体)の使用を可能にし得るとも考えられている。
【0009】
[0007]本開示の1つの態様は、少なくとも1つの支持部材と、基板(例えば、標本を含む顕微鏡スライド)の表面上に存在する流体を非接触で混合、分注、または補充するための1つまたは複数の音響源(例えば、1つまたは複数のトランスデューサ)とを有する基板ホルダまたはキャリアであって、音響源が、支持部材または基板と連通している、基板ホルダまたはキャリアである。「支持部材または基板と連通している」とは、例えば、音響源が、支持部材もしくは基板と少なくとも部分的に接触していること、または支持部材もしくは基板と少なくとも部分的に接触して置かれるように移動され得ることを意味する。いくつかの実施形態において、音響源は、支持部材内に埋め込まれるか、または音響源は、支持部材もしくは基板に接触する別の要素と接触している。いくつかの実施形態において、音響源は、低周波数(例えば、約1Hz~約1kHzの範囲にわたる周波数)で動作する機械トランスデューサまたは圧電トランスデューサである。いくつかの実施形態において、顕微鏡スライドである。基板の他の例としては、表面増強レーザ脱離/電離(「SELDI」)およびマトリックス補助レーザ脱離/電離(「MALDI」)チップ、ならびにシリコンウエハが挙げられる。
【0010】
[0008]本開示の別の態様は、スライド支持体部材と、スライド支持体部材と連通している少なくとも1つのトランスデューサとを備える、標本を含むスライド上の1つまたは複数の流体(スライドの表面上に既に存在する流体を含む)を非接触で混合、分注、または補充するためのスライドホルダであって、少なくとも1つのトランスデューサが、約1Hz~約1kHzの範囲にわたる周波数で動作する、スライドホルダである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのトランスデューサは、スライド支持部材の下面と連通している。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのトランスデューサは、スライドの標本端の中央に実質的に対応する領域において、スライド支持体部材に沿って位置付けられる。
【0011】
[0009]いくつかの実施形態において、少なくとも2つのトランスデューサは、スライド支持体と連通している。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのトランスデューサの各々は、少なくとも2つのトランスデューサのうちの第1のトランスデューサによって供給される第1の弾性波(または第1の一連の弾性波)が、少なくとも2つのトランスデューサのうちの第2のトランスデューサによって供給される第2の弾性波(または第2の一連の弾性波)によって相殺されないように構成される。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのトランスデューサは、互いと位相がずれている。
【0012】
[0010]いくつかの実施形態において、少なくとも1つのトランスデューサは、約1Hz~約500Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、周波数は、約50Hz~約500Hzの範囲にわたる。いくつかの実施形態において、周波数は、約100Hz~約200Hzの範囲にわたる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのトランスデューサに供給される電力は、約40mVpp~約350mVppの範囲にわたる。
【0013】
[0011]いくつかの実施形態において、スライド支持体は、スライドの裏面の少なくとも一部分を支持するように構成された支持面を有し、裏面は、標本を含む面の反対側である。いくつかの実施形態において、スライド支持体は、加熱素子をさらに備える。いくつかの実施形態において、スライド支持体は、少なくとも1つのトランスデューサと電気通信しているコントローラをさらに備える。いくつかの実施形態において、コントローラは、増幅器および信号発生器を含む。いくつかの実施形態において、スライドホルダは、本明細書にさらに説明されるように、染色装置またはカバーグラス被覆装置の部分である。他の実施形態において、スライド支持体は、抵抗性加熱素子またはペルチェ加熱および冷却素子などの加熱および/または冷却素子を含むようにさらに構成される。
【0014】
[0012]本開示の別の態様は、スライド支持体、およびスライドの表面上に存在する1つまたは複数の流体が非接触で混合されるようにスライドに低周波数振動を導入するための少なくとも1つの音響源である。いくつかの実施形態において、低周波数振動は、弾性波である。いくつかの実施形態において、低周波数振動を導入するための音響源は、機械トランスデューサ、圧電トランスデューサ、および表面弾性波デバイスからなる群から選択される。
【0015】
[0013]本開示の別の態様は、複数の上記スライドホルダを備えるスライドトレイである。いくつかの実施形態において、各スライドホルダは、実質的に水平および同一平面上の離間した位置に位置付けられる。他の実施形態において、各スライドホルダは、弧に沿って位置付けられる。別の態様は、上記スライドホルダを含む可動式スライド支持体である。
【0016】
[0014]本開示の別の態様は、本明細書に説明されるスライドホルダ(またはスライドトレイ)のうちの少なくとも1つと、スライドの標本を含む表面に1つまたは複数の流体を導入することができる少なくとも1つの分注器(または他のデバイス)とを備える染色装置である。いくつかの実施形態において、染色装置は、標本を含むスライドの表面に導入された1つまたは複数の流体の混合を監視するためのフィードバック制御デバイス(例えば、カメラ)をさらに備える。いくつかの実施形態において、試薬の分注は、だまりまたは試料をいかなる混合装置またはガス流とも接触させることなく発生する。いくつかの実施形態において、染色装置は、スライドの表面上の流体だまりに接触する能動的な混合装置をさらに備える。流体分注器および生物標本の自動処理のための他の構成要素は、WO2015/086484、WO2010/080287、および米国特許第7,615,371号に開示されており、これら特許の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
[0015]本開示の別の態様は、標本を含むスライドの表面上に存在する流体を非接触で混合、補充、または分布する方法であって、流体の混合、補充、または分布が、スライドの表面上に存在するいかなる標本にも損傷を引き起こすことなく発生する、方法である。いくつかの実施形態において、流体の混合、補充、または分布は、低周波数で動作する音響源により達成される。いくつかの実施形態において、本方法は、スライド上に第1の流体および第2の流体を分注するステップ、および弾性波により第1の流体および第2の流体を非接触で混合するステップを含む。
【0018】
[0016]本開示の別の態様は、(i)標本を含むスライド上の試料を第1の試薬に接触させるステップ、および(ii)標本を含むスライドに低周波数弾性波を導入することによって、標本を含むに第1の試薬を均一に分布するステップを含む、標本を含むスライドを処理する方法である。いくつかの実施形態において、低周波数弾性波は、標本を含むスライドと連通している少なくとも1つのトランスデューサによって生成される。いくつかの実施形態において、第1の試薬は、標本を含むスライド上に存在する既存の流体に分注され、少なくとも1つのトランスデューサによって生成された弾性波は、既存の流体内の第1の試薬を均一に混合する。いくつかの実施形態において、既存の流体は、緩衝液である。
【0019】
[0017]いくつかの実施形態において、少なくとも1つのトランスデューサは、約1Hz~約1kHzの範囲にわたる周波数で動作するように構成される。いくつかの実施形態において、周波数は、約50Hz~約500Hzの範囲にわたる。いくつかの実施形態において、周波数は、約100Hz~約200Hzの範囲にわたる。いくつかの実施形態において、弾性波は、約1秒~約120秒の範囲にわたる時間間隔の間、試料に導入される。いくつかの実施形態において、時間間隔は、約1秒~約60秒の範囲にわたる。いくつかの実施形態において、時間間隔は、約1秒~約30秒の範囲にわたる。いくつかの実施形態において、時間間隔は、約2秒~約15秒の範囲にわたる。いくつかの実施形態において、標本を含むスライドの底面は、基板と少なくとも部分的に接触しており、少なくとも1つのトランスデューサが、基板に結合されている。
【0020】
[0018]いくつかの実施形態において、第1の試薬は、試料内の第1の標的に特有の検出プローブである。いくつかの実施形態において、本方法は、第1の検出プローブの検出を促進するために、試料を第1の検出試薬と接触させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、試料を第2の標的に特有の第2の検出プローブと接触させるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、第2の検出プローブは、第1の検出プローブと同時に導入され、少なくとも1つのトランスデューサは、第1の検出プローブおよび第2の検出プローブを既存の流体と混合する。いくつかの実施形態において、第1の検出プローブおよび第2の検出プローブは抗体である。
【0021】
[0019]本開示の別の態様は、(i)標本を含むスライド上の試料を第1の試薬と接触させるステップと、(ii)第1の試薬が試料と反応する時間、または試料によって吸収される時間を確保するステップと、(iii)標本を含むスライド上に弾性波を導入することによって、標本を含むスライド上に第1の試薬を均一に分布し、それにより、試薬が少なくとも部分的に枯渇している領域に試薬を補充するステップとを含む、試薬を補充する方法である。いくつかの実施形態において、本方法は、任意選択的に、弾性波の導入により第1の試薬を均一に分布する前に第1の試薬の追加のアリコートを導入するステップを含む。いくつかの実施形態において、本プロセスは、追加の試薬により繰り返されてもよい。
【0022】
[0020]本開示の別の態様は、(a)試料を含むスライド上に存在する流体だまりに試薬を分注するステップと、(b)低周波数弾性波を使用して試薬を流体だまりに非接触で分注するステップとを含み、試薬を分注するステップが、試料内の細胞または組織を損傷することなく発生する、試料を染色する方法である。いくつかの実施形態において、試薬は、試薬の分注を開始した後約30秒以内に流体だまり内に実質的に均一に分注される。いくつかの実施形態において、試薬の非接触分注は、機械トランスデューサおよび圧電トランスデューサからなる群から選択される音響源を使用して達成される。いくつかの実施形態において、音響源は、約100Hz~約200Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、試薬は、特異結合部位である。いくつかの実施形態において、特異結合部位は、抗体を含む。いくつかの実施形態において、本方法は、第2の試薬を流体だまりに分注するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】[0021]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図1B】[0022]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの上面図である。
【
図1C】[0023]複数のトランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図1D】[0024]複数のトランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの上面図である。
【
図1E】[0025]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図1F】[0026]支持部材が、少なくとも1つの次元において顕微鏡スライドと比較してより大きい、トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの上面図である。
【
図1G】[0027]支持部材が、少なくとも1つの次元において顕微鏡スライドと比較してより小さい、トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの上面図である。
【
図1H】[0028]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図1I】[0029]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図1J】[0030]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの上面図である。
【
図2A】[0031]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図2B】トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図2C】[0032]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの上面図である。
【
図3】[0033]各スライドホルダが少なくとも1つのトランスデューサと連通している、複数の顕微鏡スライドホルダを備えるスライドトレイの上面図である。
【
図4A】[0034]スライドホルダが片持部を含む、トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図4B】[0035]スライドホルダが片持部を含む、トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの上面図である。
【
図4C】[0036]スライドホルダが片持部を含み、加熱板も含む、トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図5A】[0037]スライドホルダが、加熱板も含む、トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図5B】[0038]スライドホルダが加熱板も含む、複数のトランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダの側面図である。
【
図6】[0039]トランスデューサと連通している顕微鏡スライドホルダを備えるシステムであって、フィードバック制御のための素子も含むシステムの側面図である。スライド処理ステーション(SPS)加熱板は、スライドが置かれる取り付け具である。スライド上の流体量は、トランスデューサの変位により混合される。信号発生器は、トランスデューサを駆動するための周波数および電圧を供給する。UV光、カメラ、および囲いは、蛍光信号を強化し周囲光からの干渉を除去することによって、流体混合を可視化および定量化するために使用される。
【
図7A】[0040]弾性波が導入される際の、スライドの角に置かれた染料の分布を経時的に例証する図である。
【
図7B】弾性波が導入される際の、スライドの角に置かれた染料の分布を経時的に例証する図である。
【
図7C】弾性波が導入される際の、スライドの角に置かれた染料の分布を経時的に例証する図である。
【
図7D】弾性波が導入される際の、スライドの角に置かれた染料の分布を経時的に例証する図である。
【
図8A】[0041]弾性波が導入される際の、スライドの角に置かれた染料の分布を経時的に例証する図である。
【
図8B】[0042](a)関心領域(ROI)内の画素の緑値の標準偏差が各フレームについて計算されることを例証し、(b)混合プロセス中のROI内の緑値標準偏差のプロットを提供する図である。
【
図9】[0043]第1の電圧からより高い第2の電圧へ入力電圧を掃引した結果を例証し、入力電圧が増大するにつれて定常波パターンの面積が増大することを例証する図である。
【
図10A】[0044]弾性波が導入される際の染料の分布を経時的に例証する図である。
【
図10B】[0045]弾性波が導入される際の染料の分布を経時的に例証する図である。
【
図11】[0046]合計トランスデューサ期間時間と、オン時間と、オフ時間との関係を例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0047]定義
[0048]逆のことが別途明確に示されない限り、1つを超えるステップまたは行為を含む本明細書において特許請求されるいかなる方法においても、方法のステップまたは行為の順序は、方法のステップまたは行為が列挙される順序に必ずしも限定されないということも理解されたい。
【0025】
[0049]本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数指示物を含む。同様に、「または」という言葉は、文脈が別途明確に示さない限り、「および」を含むことが意図される。用語「含む」は、「AまたはBを含む」が、A、B、またはAおよびBを含むことを意味するように、包含的に定義される。
【0026】
[0050]本明細書および請求項内で使用される場合、「または」は、上に定義されるように、「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離するとき、「または」または「および/または」は、包含的である、すなわち、少なくとも1つの包含であるが、いくつかの要素または要素のリストのうちの2つ以上、および、任意選択的に、追加的な列挙されていない項目も含むと解釈されるものとする。それとは反対に明確に示される用語のみ、例えば、「のうちの1つのみ」、「のうちのちょうど1つ」、または、請求項内で使用されるときの「からなる」などは、いくつかの要素または要素のリストのうちのちょうど1つの要素の包含を指す。一般的に、用語「または」は、本明細書で使用される場合、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちのちょうど1つ」など、排他性の用語が続くときは、排他的な代替案(すなわち、「一方または他方であるが両方ではない」)を示すとだけ解釈されるものとする。「から本質的になる」は、請求項内で使用されるとき、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0027】
[0051]本明細書および請求項内で使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに関連した「少なくとも1つの」という表現は、要素のリスト内の要素のうちの任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙された1つ1つすべての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではないと理解されるべきである。この定義はまた、要素が、任意選択的に、表現「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外のものが、具体的に特定されたそれらの要素に関連するにしろ関連しないにしろ、存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(言い換えると、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、言い換えると、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つの」)は、例えば、1つの実施形態においては、任意選択的に2つ以上のAを含みBが存在しない(および、任意選択的にB以外の要素を含む)少なくとも1つを指してもよく、別の実施形態においては、2つ以上のBを含みAが存在しない(および、任意選択的にA以外の要素を含む)少なくとも1つを指してもよく、さらに別の実施形態においては、任意選択的に2つ以上のAを含み、さらに任意選択的に2つ以上のBを含む少なくとも1つ(および、任意選択的に他の要素を含む)を指してもよい。
【0028】
[0052]本明細書で使用される場合、用語「備えること」、「含むこと」、「有すること」、および同様のものは、同義で使用され、同じ意味を有する。同様に、「備える」、「含む」、「有する」、および同様のものは、同義で使用され、同じ意味を有する。具体的には、これら用語の各々は、「備える」の一般的な米国特許法定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下」を意味するオープンタームであると解釈され、また、さらなる機能、制限、態様などを除外しないと解釈される。したがって、例えば、「構成要素a、b、およびcを有するデバイス」は、少なくとも構成要素a、b、およびcを含むデバイスを意味する。同様に、「ステップa、b、およびcを伴う方法」は、少なくともステップa、b、およびcを含む方法を意味する。さらには、ステップおよびプロセスは、本明細書では特定の順序で概略が示され得るが、当業者は、ステップおよびプロセスの順序が変わり得ることを認識するものとする。
【0029】
[0053]本明細書で使用される場合、用語「弾性波」は、ソニックエネルギー、音響エネルギー、音響パルス、音エネルギー、音波、ソニックパルス、パルス、波、もしくは振動エネルギー、またはこれらの用語の任意の他の文法的形態、ならびに音響エネルギーと類似の特性を有する任意の他のタイプのエネルギーを包含する。これらの用語の各々は、本明細書では同義に使用され得る。
【0030】
[0054]本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、例として、また限定することなく、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、それらの組み合わせを含む、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子、ならびに、任意の脊椎動物(例えば、ヒト、ヤギ、ウサギ、およびマウスなどの哺乳動物)において免疫反応中に生成される同様の分子、ならびに当該技術分野において知られているような抗体断片(F(ab’)2断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、およびFab断片など、他の分子への結合を実質的に除外するまでに目的の分子(または目的のよく似た分子の群)に特異的に結合する、組換抗体断片(sFv断片、dsFv断片、二重特異性sFv断片、二重特異性dsFv断片、F(ab)’2断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、二重特異性抗体、および三重特異性抗体(当該技術分野において知られているような)、ならびにラクダ科抗体)を指す。抗体はさらに、抗原のエピトープを特異的に認識して結合する少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドを指す。抗体は、重鎖および軽鎖で構成され得、重鎖および軽鎖の各々が、可変重(VH)領域および可変軽(VL)領域と呼ばれる可変領域を有する。VH領域およびVL領域は、一緒に、抗体によって認識された抗原を結合することを担う。抗体という用語はまた、損傷のない免疫グロブリン、ならびに当該技術分野においてよく知られているそれらの変異形および部分を含む。
【0031】
[0055]本明細書で使用される場合、用語「生物試料」または「組織試料」は、ウイルスを含む任意の有機体から得られる生体分子(タンパク質、ペプチド、核酸、脂質、炭水化物、またはそれらの組み合わせなど)を含む任意の試料を指す。有機体の他の例としては、哺乳動物(ヒト;ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、およびブタのような家畜動物;ならびにマウス、ラット、および霊長類のような実験動物など)、昆虫、環形動物、クモ形類、有袋目、爬虫類、両生類、バクテリア、ならびに菌類が挙げられる。生物試料としては、組織試料(組織切片および組織の針生検など)、細胞試料(顕微解剖によって得られる細胞のPapスメアまたは血液スメアもしくは試料などの細胞学的スメアなど)、または細胞分画、細胞断片、もしくは細胞小器官(細胞を溶解し、それらの成分を遠心分離または別のやり方で分離することによって得られるものなど)が挙げられる。生物試料の他の例としては、血液、血清、尿、精液、糞便物質、脳脊髄液、間質液、粘液、涙、汗、膿、生検組織(例えば、外科生検または針生検によって得られる)、乳頭吸引液、耳垢、母乳、膣液、唾液、ぬぐい液(口内ぬぐい液など)、または第1の生物試料に由来する生体分子を含有する任意の物質が挙げられる。特定の実施形態において、用語「生物試料」は、本明細書で使用される場合、対象から得られた腫瘍または腫瘍の一部分から調製される試料(均質化または液化された試料など)を指す。
【0032】
[0056]本明細書で使用される場合、用語「流体」は、水、溶媒、溶液(例えば、緩衝溶液)などを含む任意の流体を指す。用語「流体」はまた、任意の混合物、コロイド、懸濁液などを指す。用語「流体」はまた、試薬、染色剤、ならびに顕微鏡スライドおよび/または標本に適用され得る他の標本処理剤(例えば、接着剤、固定剤など)を包含する。流体は、水性または非水性であってもよい。さらなる例としては、抗体の溶液または懸濁液、核酸プローブの溶液または懸濁液、および染料または染色分子の溶液または懸濁液(例えば、H&E染色溶液、Pap染色溶液など)が挙げられる。流体の依然としてさらなる例としては、パラフィン包埋した生物標本を脱パラフィンするための溶媒および/または溶液、水性洗浄溶液、ならびに炭化水素(例えば、アルカン、イソアルカン、およびキシレンなどの芳香族化合物)が挙げられる。流体の依然としてさらなる例としては、生物標本を脱水または再水和するために使用される溶媒(およびその混合物)が挙げられる。
【0033】
[0057]本明細書で使用される場合、用語「複数」は、2つ以上、例えば、3つ以上、4つ以上、5つ以上などを指す。
[0058]本明細書で使用される場合、用語「試薬」は、液体または液体組成物をスライドに添加することを伴う標本処理動作において使用される任意の液体または液体組成物を指す。試薬および処理液体の例としては、溶液、乳濁液、懸濁液、および溶媒(純物、またはそれらの混合物のいずれか)が挙げられる。これらの例および他の例は、水性または非水性であってもよい。さらなる例としては、特異結合実体の溶液または懸濁液、抗体、核酸プローブの溶液または懸濁液、および染料または染色分子の溶液または懸濁液(例えば、H&E染色溶液、Pap染色溶液など)が挙げられる。依然としてさらなる例としては、パラフィン包埋した生物標本を脱パラフィンするための溶媒および/または溶液、水性洗浄溶液、ならびに炭化水素(例えば、アルカン、イソアルカン、およびキシレンなどの芳香族化合物)が挙げられる。
【0034】
[0059]本明細書で使用される場合、用語「一次抗体」は、組織試料内の標的タンパク質抗原に特異的に結合する抗体を指す。一次抗体は、一般的に、免疫組織化学的方法に使用される第1の抗体である。各々が本明細書で説明される、エピトープ標識した抗体、未修飾抗体、または抗体複合体は、一次抗体の例である。したがって、一次抗体は、組織試料内の標的を検出するための「検出プローブ」としての役割を果たす。
【0035】
[0060]本明細書で使用される場合、用語「二次抗体」は、本明細書では、検出プローブまたはその一部分(例えば、ハプテンまたは一次抗体)に特異的に結合し、それにより、後続試薬(例えば、ラベル、酵素など)がある場合には、検出プローブと後続試薬との間のブリッジを形成する抗体を指す。二次抗体は、検出プローブ、例えば、一次抗体を間接的に検出するために使用されてもよい。二次抗体の例としては、抗タグ抗体、抗種抗体、および抗ラベル抗体が挙げられ、各々が本明細書で説明される。
【0036】
[0061]本明細書で使用される場合、用語「スライド」は、生物標本が分析のために置かれる、任意の好適な寸法の任意の基板(例えば、全体または部分がガラス、石英、プラスチック、シリコンなどでできた基板)を指し、より詳細には、標準の7.62cm(3イ
ンチ)×2.54cm(1インチ)顕微鏡スライドまたは標準の75mm×25mm顕微鏡スライドなどの「顕微鏡スライド」を指す。スライドの上に置かれ得る生物標本の例としては、限定するものではないが、細胞学的スメア、薄組織切片(生検からのものなど)、および生物標本のアレイ、例えば、組織アレイ、細胞アレイ、DNAアレイ、RNAアレイ、タンパク質アレイ、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。したがって、1つの実施形態において、組織切片、DNA試料、RNA試料、および/またはタンパク質は、スライド上に特定の場所に置かれる。いくつかの実施形態において、スライドという用語は、SELDIおよびMALDIチップ、ならびにシリコンウエハを指し得る。
【0037】
[0062]本明細書で使用される場合、用語「特異結合実体」は、特異結合対のメンバを指す。特異結合対は、他の分子への結合を実質的に除外するまでに互いと結合することを特徴とする分子の対である(例えば、特異結合対は、生物試料内の他の分子との結合対の2つのメンバのいずれかの結合定数よりも大きい、少なくとも103M-1、104M-1、または105M-1である結合定数を有し得る)。特異結合部位の具体的な例としては、特異結合タンパク質(例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジンなどのアビジン、およびタンパク質A)が挙げられる。特異結合部位はまた、そのような特異結合タンパク質によって特異的に結合される分子(またはその部分)を含み得る。特異結合実体は、上記の一次抗体、または核酸プローブを含む。
【0038】
[0063]本明細書で使用される場合、用語「染色剤」「染色」または同様のものは、概して、特定の分子(脂質、タンパク質、または核酸など)または生物標本内の特定の構造物(正常または悪性の細胞、サイトゾル、核、ゴルジ装置、または細胞骨格など)の存在、場所、および/または量(濃度など)を検出および/または差別化する、生物標本の任意の処理を指す。例えば、染色は、特定の分子または特定の細胞構造物と生物標本の周囲部分との間にコントラストを提供することができ、染色の強度は、標本内の特定の分子の量の尺度を提供することができる。染色は、明視野顕微鏡だけでなく、位相コントラスト顕微鏡、電子顕微鏡、および蛍光顕微鏡などの他の観察器具も用いて、分子、細胞構造物、および有機体の観察を助けることに使用され得る。システム2によって実施される染色は、細胞の輪郭を視覚化するために使用され得る。システム2によって実施される他の染色は、特定の細胞成分(分子または構造物など)が、他の細胞成分の染色なしに、または比較的少ない染色で、染色されることに依存し得る。システム2によって実施される染色方法の種類の例としては、限定するものではないが、組織化学的方法、免疫組織化学的方法、および核酸分子間のハイブリッド形成反応などの分子間の反応(非共有結合相互作用を含む)に基づいた他の方法が挙げられる。具体的な染色方法としては、限定されないが、一次染色方法(例えば、H&E染色、Pap染色など)、酵素結合免疫組織学的方法、ならびに蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)などのインサイチュRNAおよびDNAハイブリダイゼーション方法が挙げられる。
【0039】
[0064]本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、目的の特徴または特性の全面的またはほぼ全面的な規模または程度を表す定性的状況を意味する。当業者は、生物および化学現象が、存在する場合、それが、完了まで進む、および/または完全性まで進行する、または絶対的結果を達成もしくは回避することはめったにないことを理解するものとする。いくつかの実施形態において、「実質的に」は、約20%以内を意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に」は、約15%以内を意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に」は、約10%以内を意味する。いくつかの実施形態において、「実質的に」は、約5%以内を意味する。
【0040】
[0065]本明細書で使用される場合、「標的」は、存在、場所、および/または濃度が決定される、または決定され得る任意の分子を意味する。標的の例としては、本明細書に開示されるものなどの、核酸配列およびタンパク質が挙げられる。
【0041】
[0066]本明細書で使用される場合、用語「トランスデューサ」は、電気エネルギーなどの第1のエネルギータイプを音響エネルギー、ソニックエネルギー、または振動エネルギーなどに変換することができる任意のデバイスを指す。典型的には、第1のエネルギータイプは、電気エネルギー、電磁エネルギー、または静電エネルギーである。トランスデューサは、単素子タイプ、多素子タイプ、アレイタイプ、機械的に集束されるタイプ、音響的レンズドタイプ、機械的に非集束されるタイプ、機械的にコリメートされるタイプ、機械的にデフォーカスされるタイプ、機械的に走査されるタイプ、電子的に走査されるタイプなどを含む、任意のタイプのものであってもよい。
【0042】
[0067]本明細書で使用される場合、略語「Vpp」は、ピークツーピーク電圧を意味する。
[0068]デバイスおよびシステム
[0069]いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、顕微鏡スライド上の流体の非接触のスライド上分布、補充、および/または混合は、染色品質を改善し、総アッセイ時間を低減し、より低い濃度の試薬(例えば、抗体)が必要とされることにより費用を節約し、相互汚染リスクを除去することができると考えられている。このことを念頭に、本開示の1つの態様は、スライド支持部材と、顕微鏡スライドの表面上に存在する1つまたは複数の流体が非接触で混合されるように、スライド支持部材と連通している顕微鏡スライドに弾性波を導入するための少なくとも1つの音響源とを備える、顕微鏡スライドホルダである。いくつかの実施形態において、顕微鏡スライドは、細胞および/または組織を含む生物試料を含み、弾性波を用いた混合は、試料内の細胞および/または組織を損傷することなく発生する。いくつかの実施形態において、混合は、顕微鏡スライドの表面上に存在する任意の流体の温度を実質的に増大させることなく、および/または試料の温度を増大させることなく(例えば、流体または試料の温度を10度超増大させることなく)発生する。
【0043】
[0070]いくつかの実施形態において、弾性波は、音響源により生成される。いくつかの実施形態において、音響源はトランスデューサである。いくつかの実施形態において、トランスデューサは、機械トランスデューサである。他の実施形態において、トランスデューサは、圧電トランスデューサである。いくつかの実施形態において、トランスデューサは、機械振動を生成する圧電ウエハからなる。いくつかの実施形態において、トランスデューサは、単軸内で動作する、すなわち、単一方向にのみ、例えば、y軸に沿って、表面音波を生成する、一定方向に放射するトランスデューサである。他の実施形態において、トランスデューサは、複数方向に、例えば、x軸およびy軸に沿って、動作する。
【0044】
[0071]いくつかの実施形態において、表面トランスデューサは、スライド上の流体体積を分布または混合するために使用される。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、表面トランスデューサによって生成される低周波数弾性波は、材料組立体(本明細書に説明されるものなど)を通ってスライド上の流体体積に放射されて、溶液を分布および/または混合すると考えられている。いくつかの実施形態において、信号発生器によって駆動される電磁石が、表面トランスデューサを上下に(例えば、0.1mm~約3mm)移動させる。より詳細には、表面トランスデューサは、入力周波数および電圧を、電磁石により垂直ダイヤフラム変位へ変換する。トランスデューサダイヤフラムの発振が、スライド取り付け具を通じて伝播し、スライド上の流体を分布および/または混合する。
【0045】
[0072]いくつかの実施形態において、音響源は、約5mm~約60mmの直径を有する表面トランスデューサである。他の実施形態において、音響源は、約10mm~約50mmの直径を有する表面トランスデューサである。さらに他の実施形態において、音響源は
、約20mm~約50mmの直径を有する表面トランスデューサである。
【0046】
[0073]いくつかの実施形態において、音響源は、約0.5Hz~約2000Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約0.5Hz~約1000Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約1Hz~約1000Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約1Hz~約750Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約1Hz~約500Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約1Hz~約250Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約1Hz~約200Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約1Hz~約150Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約10Hz~約200Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約50Hz~約200Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約100Hz~約200Hzの範囲にわたる周波数で動作する。いくつかの実施形態において、音響源は、約150Hzの周波数で動作する。
【0047】
[0074]いくつかの実施形態において、本開示の特定の実施形態において使用される周波数は、ある特定の周波数についての試料または支持部材のエネルギー吸収特徴によって影響を受ける。ある特定の周波数が試料によってより良好に吸収される、または優先的に吸収される限りでは、混合に対する弾性波の効果により良好に影響を与えることが好ましい場合がある。いくつかの実施形態において、弾性波は、短パルスの形態で、または規定の長さの時間にわたる連続場として送達され得る。いくつかの実施形態において、パルスは、束にされ得るか、または規則的に離間され得る。
【0048】
[0075]いくつかの実施形態において、音響源は、第1の時間間隔において第1の周波数で動作し、次いで第2の時間間隔において第2の周波数で動作する。他の実施形態において、音響源は、最初は、第1の周波数で動作し得、この周波数は、経時的に増加または減少され得る(例えば、予め定められた間隔で経時的に上昇または下降される)。例えば、第1の周波数が100Hzであり得、第2の周波数が200Hzであり得、周波数は、毎0.5秒10Hz間隔で100Hzから200Hz周波数が達成されるまで上昇されてもよい。他の実施形態において、音響源は、周波数変調を採用しており、このため周波数は、予め定められた周波数値の+/-20%である値だけ逸脱される。例えば、100Hzで動作する音響源は、その周波数を+/-10Hzだけ逸脱させ得る。他の実施形態において、音響源は、複数の周波数で同時に動作することができ、その各々が変調されてもよい。
【0049】
[0076]複数の音響源が利用される実施形態において、各音響源は、同じ周波数(または周波数の範囲)で、または異なる周波数(または異なる周波数の範囲)で動作し得る。複数の音響源が利用される実施形態において、各音響源は、異なる時間間隔の間、動作し得る。例えば、第1の音響源は、第1の時間間隔にわたって動作し得、その後に第2の時間間隔にわたる第2の音響源の動作が続く(両方の時間間隔は、同じ周波数または異なる周波数にあってもよい)。
【0050】
[0077]複数の音響源が利用される実施形態において、各音響源は、同相で、または互いと位相がずれて動作し得る。当業者は、複数の音響源を動作させることによって、各音響源が、位相がずれた様式で動作するように調整され得、その結果として、音響源によって生成される弾性波が、互いを相殺せず、それにより顕微鏡スライドの表面上に存在する1つまたは複数の流体の効率的な混合を可能にするということを理解するものとする。当業者はまた、トランスデューサの各々の周波数が、それらの動作全体を通して変調され得る
ことを理解するものとする。
【0051】
[0078]いくつかの実施形態において、入力振幅は、約0.1~約1,000mVppの範囲にわたる。他の実施形態において、入力振幅は、約40~約350mVppの範囲にわたる。いくつかの実施形態において、入力振幅は、経時的に変調され得る。例えば、音響源は、最初、第1の振幅で動作し得、この振幅は、最終振幅に達するまで経時的に増大または上昇され得る。いくつかの実施形態において、振幅は、予め定められた時間量にわたって予め定められた量だけ増大される。いくつかの実施形態において、入力振幅は、スライド上に存在する流体が保持される、すなわち、スライドから変位されないように選択される。
【0052】
[0079]
図1Aは、顕微鏡スライド10の裏面の少なくとも一部分を支持するように構成されたスライド支持部材20を有するスライドホルダ5を描写する。いくつかの実施形態において、
図1Aに描写されるものなど、スライド支持部材20は、顕微鏡スライド10と実質的に同じサイズである。当然ながら、当業者は、スライド支持部材20が、任意の次元において顕微鏡スライド10よりも大きいまたは小さい場合があることを理解するものとする。例えば、また
図1Fに描写されるように、スライド支持部材20は、顕微鏡スライド10よりも大きいが、
図1Gでは、スライド支持部材20(点線)は、顕微鏡スライド10より小さいものとして描写されている。いくつかの実施形態において、支持部材は、約0.1mm~約20mmの範囲にわたる厚さを有する。
【0053】
[0080]いくつかの実施形態において、支持部材20は、音響源30からの弾性波が、支持面20を通って、およびスライド10上に位置する標本または流体まで、放射、伝導、および/または転送することを可能にする材料で構築される。例えば、支持部材は、金属(例えば、銅、アルミニウム、真ちゅう、クロム、銀、金、白金、およびチタン、または上に特定された金属のいずれかを含む合金で構築され得る。
【0054】
[0081]いくつかの実施形態において、支持部材20は、加熱素子、または顕微鏡スライド10を加熱するための他の手段を備える。いくつかの実施形態において、支持部材20は、
図5Aに描写されるものなどの加熱板である。いくつかの実施形態において、支持部材20は、冷却素子、または顕微鏡スライド10からの熱を除去する他の手段を備える。他の実施形態において、顕微鏡スライドを加熱または冷却するための素子を備える熱規制板は、支持部材20と顕微鏡スライド10との間に配設される。
【0055】
[0082]いくつかの実施形態において、スライドホルダ5は、顕微鏡スライド10をスライド支持部材20に解放自在に固定するために、ばね、クリップ、またはタブなど、1つまたは複数の保持部材22を備える。いくつかの実施形態において、保持部材22は、スライドが支持部材20の上に搭載されると、スライド10の軸方向移動、横移動、および垂直移動を制限する。
【0056】
[0083]いくつかの実施形態において、音響源30(またはその上面31)は、スライド支持部材20と連通している。いくつかの実施形態において、音響源30は、スライド支持部材20の底面27と接触している(
図1A~
図1Gを参照されたい)。いくつかの実施形態において、音響源30は、音響源が動作している間のみ接触している。いくつかの実施形態において、音響源は、上下に移動して、動作しているときにスライド支持体に接触する。他の実施形態において、トランスデューサは、スライド支持部材20内に少なくとも部分的に埋め込まれ、例えば、スライド支持体およびトランスデューサが単一の素子を構成するようにスライド支持部材20内に統合される。
【0057】
[0084]他の実施形態において、音響源(または音響源の上部)は、スライド支持部材2
0内にはめ込まれているが、支持部材20の底面26と依然として連通している(
図1Hを参照されたい)。さらに他の実施形態において、トランスデューサは、スライドと直接連通している。例えば、音響源(または音響源の上部)は、スライド支持部材20内にはめ込まれて、顕微鏡スライド10の底面28と直接連通していてもよい(
図1Iを参照されたい)。
図1Kは、適切にサイズ決定された音響源を挿入するための空洞29を備える支持部材20を例証する。
【0058】
[0085]いくつかの実施形態において、支持部材20は、
図1A、
図1E、および
図1Fに例証されるように、単一のトランスデューサ30と連通している。他の実施形態において、支持部材は、複数のトランスデューサと連通していてもよい。例えば、
図1Cは、2つのトランスデューサ30Aおよび30Bと連通しているスライド支持部材20を例証する。当然ながら、当業者は、任意の数のトランスデューサがスライド支持部材20と連通していてもよいことを理解するものとする。組み込まれるトランスデューサの数にかかわらず、当業者は、生成される弾性波、例えば、表面音波が、顕微鏡スライド10へ放射することが許されて、流体の混合に影響を及ぼすように構成されるように、1つまたは複数のトランスデューサが構成されることを理解するものとする。
【0059】
[0086]当業者は、トランスデューサ30が、顕微鏡スライド10に対して任意の位置に置かれ得ることを理解するものとする。いくつかの実施形態において、顕微鏡スライド10は、ラベル端40および標本を含む端50を備え、トランスデューサは、標本を含む端50の境界内に置かれる。いくつかの実施形態において、トランスデューサ30は、標本を含む端50の中央を近似する位置に置かれる(
図1Bを参照されたい)。他の実施形態において、トランスデューサは、流体の大部分が分注されることになる、スライド10に沿った位置に置かれる。いくつかの実施形態において、トランスデューサは、顕微鏡スライドの端から少なくとも1cmに置かれる。いくつかの実施形態において、トランスデューサは、顕微鏡スライドの端から少なくとも1.5cmに置かれる。他の実施形態において、トランスデューサは、スライドのラベル端から約1cmに置かれる。
【0060】
[0087]複数のトランスデューサを有する実施形態において、トランスデューサは、スライドに対して任意の位置に置かれ得る。いくつかの実施形態において、また
図1Cに例証されるように、トランスデューサ30Aおよび30Bは、支持部材20の両端に置かれ得る。他の実施形態において、また
図1Dに例証されるように、2つのトランスデューサの上部31Aおよび31Bは、スライド10の標本を含む端50の対角線上の角に位置付けられる。複数のトランスデューサが設けられる実施形態において、トランスデューサは、互いから0.1cm~10cm離間され得る。
【0061】
[0088]
図1Aおよび
図1Cは、支持部材20またはスライド10の平面に実質的に平行な平面内に上面31を有するトランスデューサ30を例証するが、当業者は、上面31が支持部材20またはスライド10に対して任意の角度でオフセットされ得ることを理解するものとする。
【0062】
[0089]いくつかの実施形態において、顕微鏡スライドと連通している1つまたは複数の音響源は、表面トランスデューサであり、トランスデューサの表面積は全体として、顕微鏡スライドの表面積の少なくとも約5%である。他の実施形態において、顕微鏡スライドと連通している1つまたは複数の音響源は、表面トランスデューサであり、トランスデューサの表面積は全体として、顕微鏡スライドの表面積の少なくとも約10%である。さらに他の実施形態において、顕微鏡スライドと連通している1つまたは複数の音響源は、表面トランスデューサであり、トランスデューサの表面積は全体として、顕微鏡スライドの表面積の少なくとも約15%である。さらなる実施形態において、顕微鏡スライドと連通している1つまたは複数の音響源は、表面トランスデューサであり、トランスデューサの表面積は全体として、顕微鏡スライドの表面積の少なくとも約20%である。
【0063】
[0090]いくつかの実施形態において、音響源は、顕微鏡スライドに対して移動可能である(例えば、ステッパモータにより)。例えば、音響源は、弾性波が顕微鏡スライドの様々な部分に沿って導入されるように、顕微鏡スライド10に対して第1の位置から第2の位置へ(x軸、y軸、または両方、のいずれかに沿って)移動され得る。当業者は、音響源の動作中の移動が、顕微鏡スライドの表面上の流体の均一な混合を促進し得ることを理解するものとする。当業者はまた、標本および/または流体が顕微鏡スライドの表面上に提供される場所に応じて、音響源が再位置付けされ得ることを理解するものとする。他の実施形態において、音響源は、異なる支持部材、音響的に伝導性の基板を収容するように、支持部材との接触を強化するようになど、支持部材に対してz軸に沿って移動され得る。
【0064】
[0091]他の実施形態において、顕微鏡スライドは、音響源に対して移動可能である。例えば、顕微鏡スライドは、スライドトレイ上の第1の位置から第2の位置へ移動され得る。例えば、第1の位置は、スライドが1つまたは複数の流体を受容するように、分注ステーションであり得、第2の位置は、分注された1つまたは複数の流体を(本明細書にさらに説明されるように)分布、補充、および/または混合するために音響源トランスデューサを有する流体分布または混合ステーションであり得る。
【0065】
[0092]他の実施形態において、スライドホルダ5は、複数の支持部材21を備え得る。
図2Aおよび
図2Bは、スライド10の各端に位置する支持部材21Aおよび21Bによって支持される顕微鏡スライド10を描写する。代替的に、
図2Cに示されるように、顕微鏡スライド10は、スライドの縦の縁に実質的に沿って延びるレール(描写されない)によって支持され得る。これらの実施形態において、トランスデューサ30、またはその上面31は、顕微鏡スライド10の底面28と直接連通していてもよい。
【0066】
[0093]代替的に、トランスデューサ30、またはその上面31は、顕微鏡スライド10と間接連通していてもよい。例えば、導電性材料23は、顕微鏡スライドに供給される弾性波を強化または分布するように顕微鏡スライド10とトランスデューサ30との間に置かれてもよい(このためトランスデューサは、導電性材料23の底面27と連通していることになる)。いくつかの実施形態において、導電性材料23は、外殻を有し、殻の境界内に水、液体、ゲル、ヒドロゲルを含む基板(例えば、使い捨ての基板)である。他の実施形態において、導電性材料23は、スライド10と音響源30との間に置かれた液体またはゲルであってもよい。さらに他の実施形態において、導電性材料は、音響的に伝導性の固形物である。
【0067】
[0094]他の実施形態において、また
図4Aおよび
図4Bを参照すると、スライドホルダは、顕微鏡スライド10と片持部70との間に位置付けられた支持部材20を含む。これらの実施形態において、片持部は、少なくとも、音響源30と連通している遠位部分71を備える。いくつかの実施形態において、支持部材20または顕微鏡スライド10のいずれも、遠位部分71の上には位置付けられていない。いくつかの実施形態において、単一の音響源30が、遠位部分71の境界内に置かれる。他の実施形態において、複数の音響源30が、遠位部分71の境界内に置かれ、複数の音響源30の各々は、任意の様式で互いから離間または配置され得る。さらに他の実施形態において、1つまたは複数の音響源30は、遠位部分71の境界内に置かれ、少なくとも1つの追加の音響源30は、支持部材20の下の位置において片持部70と連通して置かれる。
【0068】
[0095]いくつかの実施形態において、遠位部分70は、少なくとも2.54cm(1インチ)だけ支持部材20から延在する。他の実施形態において、遠位部分70は、少なく
とも5.08cm(2インチ)だけ支持部材20から延在する。さらに他の実施形態において、遠位部分70は、少なくとも7.62cm(3インチ)だけ支持部材20から延在する。他の実施形態において、遠位部分70は、少なくとも10.16cm(4インチ)だけ支持部材20から延在する。
【0069】
[0096]いくつかの実施形態において、片持部70は、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、および低密度ポリエチレン(LDPE)、ならびに金属(アルミニウム、銅、ステンレス鋼など)からなる群から選択される材料から構築される。
【0070】
[0097]他の実施形態において、また
図4Cを参照すると、スライドホルダは、顕微鏡スライド10と片持部70との間に位置付けられた支持部材20を含み、流体(例えば、LCS(液体カバーガラス)、Ventana Medical Systems,Inc.、Tucson、AZ、USA)は、支持部材20(加熱板として特定される)とスライド10との間に位置付けられる。いくつかの実施形態において、顕微鏡スライドの表面は、スライドの表面上に別個に分注される複数の個別の液だまりを含み得、音響源30は、それらの別々の流体を分布および/または混合することを可能にする。
【0071】
[0098]いくつかの実施形態において、音響源は、アーム(または他の同様の部材)に連結され得、このアームは、アームに連結された音響源が支持部材またはスライドに接触するように位置付けられ得、それにより低周波数弾性波をスライドまたはスライド上の標本に導入するように移動され得る。
【0072】
[0099]スライドトレイ
[00100]
図3を参照すると、本開示はまた、複数の顕微鏡スライド10を保持するよう
に構成されたスライドトレイ100を企図し、トレイ100内のそれぞれ個々の顕微鏡スライド10は、隣接するスライドに対して別々の水平位置に(しかし同じ平面内に)保持され、それぞれ個々の顕微鏡スライド10は、顕微鏡スライド上に存在する1つまたは複数の流体の非接触混合を可能にするために音響源30と連通している。いくつかの実施形態において、スライドトレイ内の各位置は、
図1A~
図1G、
図2A~
図2C、
図4A~
図4C、
図5A~
図5B、または
図6のいずれかに例証されるものなど、音響源を有するスライドホルダを備え得る。実際、スライドトレイ内の各位置は、上記のように、スライド支持部材、1つまたは複数の保持部材、および少なくとも1つの音響源を備え得る。好適なスライドトレイは、任意の好適な形状を有し得、所与のスライドトレイ内に保持された顕微鏡スライドは、任意の好適な数のスライド、例えば、5以上のスライド、または10以上のスライド、または20以上のスライド、または30以上のスライドを保持するために任意の好適な様式で配置され得る。異なる形状および保持能力のスライドトレイのいくつかの例は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,468,161号に開示されている。
【0073】
[0100]いくつかの実施形態において、スライドトレイは、スライドの長手がトレイの長い中心軸から外へ配設されるように、スライドトレイの中心長軸の両側に横並びに保持される2列のスライドを保持するように構成された略矩形のトレイである。スライドトレイ100内の各音響源30は、コントローラ60に通信可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、隣接するスライドホルダ間で伝送される音響エネルギーの量を低減するため、すなわち、第1の位置にある第1のトランスデューサから第1の位置に隣接する第2の位置にある顕微鏡スライドへの弾性波の伝送を防ぐ、または緩和するために、スライドトレイ内の各隣接する顕微鏡スライドまたは隣接する支持部材の間に物質が置かれてもよい。
【0074】
[0101]自動スライド処理システム
[0102]本開示の別の態様は、本明細書に説明されるように、流体をスライドに分注するように構成された少なくとも1つの流体分注器と、非接触混合のための少なくとも1つの音響源を備えるスライドホルダまたはスライドトレイとを備えるスライド処理装置である。当然ながら、当業者は、音響源を組み込む、上記のものなどのスライドトレイが、米国特許第8,663,991号、同第8,048,373号、および同第7,468,161号、ならびに米国特許公開第2016/0282239号に記載されている染色システムおよび標本処理装置において利用され得ることを理解するものとし、これら特許各々の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
[0103]いくつかの実施形態において、本明細書に説明されるスライドホルダまたはスライドトレイを組み込む標本処理装置は、米国特許第5,650,327号、同第5,654,200号、同第6,296,809号、同第6,352,861号、同第6,827,901号、および同第6,943,029号、ならびに米国公開特許出願第20030211630号および同第20040052685号を含む、自動分析を実施するためのシステムおよび方法を開示する多数の米国特許の譲受人であるVentana Medical Systems,Inc.Ventana Medical Systems,Inc.によって販売されているBENCHMARK XT機器、SYMPHONY機器、BENCHMARK ULTRA機器などの自動装置であり、これら特許の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。代替的に、標本は、手動で処理され得る。
【0076】
[0104]市販のH&E染色器の例としては、RocheからのVENTANA SYMPHONY(個別スライド染色器)およびVENTANA HE600(個別スライド染色器)シリーズH&E染色器、Agilent TechnologiesからのDako
CoverStainer(バッチ染色器)、Leica Biosystems Nussloch GmbHからのLeica ST4020 Small Linear
Stainer(バッチ染色器)、Leica ST5020 Multistainer(バッチ染色器)、およびLeica ST5010 Autostainer XLシリーズ(バッチ染色器)H&E染色器が挙げられる。
【0077】
[0105]標本処理装置は、標本に固定剤を適用することができる。固定剤は、橋かけ剤(アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、およびグルタルアルデヒド、ならびに非アルデヒド橋かけ剤など)、酸化剤(例えば、四酸化オスミウムおよびクロム酸などの金属イオンおよび金属錯体)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノール、およびエタノール)、未知の機序の固定剤(例えば、塩化第二水銀、アセトン、およびピクリン酸)、組み合わせ試薬(例えば、Carnoy固定液、メタカン(methacarn)、Bouin固定液、B5固定剤、Rossman液、およびGendre液)、マイクロ波、ならびに雑固定剤(例えば、除外された体積固定および蒸気固定)を含み得る。顕微鏡スライドと連通している音響源は、本明細書に詳細に説明されるように、スライドまたは別の流体内でこれらの固定剤いずれかを均一に分布するために使用され得る。
【0078】
[0106]標本がパラフィン包埋された試料である場合、試料は、適切な脱パラフィン流体を使用して標本処理装置により脱パラフィンされ得る。廃物除去剤が脱パラフィン流体を除去した後、任意の数の物質が、標本に連続して適用され得る。この物質は、前処理(例えば、タンパク質架け橋、核酸露出など)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えば、Stringency Wash)、検出(例えば、ビジュアルまたはマーカ分子をプローブにリンクする)、増幅(例えば、タンパク質、遺伝子などの増幅)、対比染色、カバースリッピング、または同様のもののためのものであり得る。ここでも、適用されるこれらの物質のいずれも、音響源の使用により混合または分布され得る。
【0079】
[0107]標本処理装置は、幅広い物質を標本に適用することができ、この物質は、その後、スライドホルダと連通している音響源を使用して均一に分布および/または混合され得る。この物質は、限定するものではないが、染色剤、プローブ、試薬、リンス液、および/または調整剤を含む。この物質は、流体(例えば、ガス、液体、またはガス/液体混合物)、または同様のものであり得る。流体は、溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒など)、溶液(例えば、水溶液、または他のタイプの溶液)、または同様のものであり得る。試薬は、限定するものではないが、染色剤、湿潤剤、抗体(例えば、単クローン抗体、多クローン抗体など)、抗原回収流体(例えば、水性または非水性ベースの抗原回復溶液、抗原回収緩衝液など)、または同様のものを含み得る。プローブは、検出可能なラベルに添着された、単離された核酸または単離された合成オリゴヌクレオチドであり得る。ラベルは、放射性同位体、酵素基質、共同因子、配位子、化学発光剤または蛍光剤、ハプテン、および酵素を含み得る。
【0080】
[0108]自動IHC/ISHスライド染色器は、典型的には、少なくとも;染色プロトコルにおいて使用される様々な試薬の貯蔵器、スライド上に試薬を分注するための、貯蔵器と流体連通している試薬分注ユニット、使用済み試薬およびスライドからの他の廃物を除去するための廃物除去システム、ならびに試薬分注ユニットおよび廃物除去システムの動作を協調させる制御システムを含む。染色ステップを実施することに加えて、多くの自動スライド染色器は、スライド焼付(試料をスライドに添着するため)、脱ろう(脱パラフィンとも称される)、抗原回復、対比染色、脱水および清浄、ならびにカバースリッピングを含む、染色の補助となるステップも実施し得る(または、そのような補助ステップを実施する別個のシステムと互換性がある)。全体が参照により本明細書に組み込まれる、Prichard、Overview of Automated Immunohistochemistry、Arch Pathol Lab Med.、Vol.138、1578-1582頁(2014)は、intelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNISおよびDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK(Ventana Medical Systems,Inc.)、Leica BOND、ならびにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)自動スライド染色器を含む、自動IHC/ISHスライド染色器のいくつかの特定の例およびそれらの様々な特徴について説明している。加えて、Ventana Medical Systems,Inc.は、米国特許第5,650,327号、同第5,654,200号、同第6,296,809号、同第6,352,861号、同第6,827,901号、および同第6,943,029号、ならびに米国公開特許出願第20030211630号および同第20040052685号を含む、自動分析を実施するためのシステムおよび方法を開示するいくつかの米国特許の譲受人であり、これら特許の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
[0109]市販の染色ユニットは、典型的には、以下の原理のうちの1つで動作する:(1)スライドが水平に位置付けられ、試薬が組織試料を含むスライドの表面上に液だまりとして分注される、オープンな個別スライド染色(DAKO AUTOSTAINER Link 48(Agilent Technologies)およびintelliPATH(Biocare Medical)染色器に実装されるものなど)、(2)試薬が、試料の上に堆積された不活性流体層で被覆されるか、またはそれを通じて分注されるかのいずれかである、液体オーバーレイ技術(VENTANA BenchMarkおよびDISCOVERY染色器に実装されるものなど)、(3)スライド表面が、狭いギャップを作成するために別の表面(別のスライドまたはカバープレートであってもよい)に近接して置かれ、このギャップにより毛管力が上昇し、液体試薬を試料に接触したままにする、毛細管ギャップ染色(DAKO TECHMATE、Leica BOND、およびDAKO OMNIS染色器によって使用される染色原理など)。毛細管ギャップ染色の何回かの反復は、ギャップ内の流体を混合しない(DAKO TECHMATEおよび Leica BONDなどで)。動的ギャップ染色と呼ばれる毛細管ギャップ染色の変異形において、毛管力は、試料をスライドに適用するために使用され、次いで平行な表面が、効果的な試薬混合へのインキュベーション中、試薬を撹拌するために互いに対して平行移動される(DAKO OMNISスライド染色器(Agilent)で実装される染色原理など)。平行移動ギャップ染色において、平行移動可能なヘッドは、スライドの上に位置付けられる。ヘッドの下面は、液体のメニスカスがスライドの平行移動中にスライド上の液体から生じるのを可能にするのに十分に小さい第1のギャップによってスライドから離間される。スライドの幅より小さい横寸法を有する混合延在部は、平行移動可能なヘッドの下面から延在して、混合延在部とスライドとの間に第1のギャップより小さい第2のギャップを画定する。ヘッドの平行移動中、混合延在部の横寸法は、第2のギャップから第1のギャップへ概して伸びる方向において、スライド上の液体の横方向の動きを生成するのに十分である。WO2011-139978 A1を参照されたい。近年、インクジェット技術を使用して試薬をスライド上に堆積させることが提案されている。WO2016-170008 A1を参照されたい。この染色技術のリストは、包括的であることは意図されず、音響混合を組み込むスライドホルダまたはスライドトレイのいずれかが、染色試薬の分布および混合を達成するためにそのようなシステムと併せて使用され得る。
【0082】
[0110]いくつかの実施形態において、生物標本を自動的に処理するための装置であり、本装置は、複数のスライドを略水平位置に保持する少なくとも1つのスライドトレイ(本明細書に説明されるものなど)であって、生物標本がスライド上に位置し、複数のスライドの各々が、スライドおよび/または試料への弾性波の導入を可能にするように少なくとも1つの音響源と連通している、少なくとも1つのスライドトレイと、スライドトレイを受容し、スライドトレイ内に保持された複数のスライドに対して1つまたは複数のスライド処理動作を実施する1つまたは複数のワークステーションと、スライドトレイを1つまたは複数のワークステーション内外へ移動させる運搬装置と、1つまたは複数のワークステーションに試薬を供給する、1つまたは複数のワークステーションと流体連通している流体工学モジュールと、1つまたは複数のワークステーションおよび流体工学モジュールと流体連通している空気力学モジュールであって、空気力学モジュールが、真空および/または加圧ガスを1つまたは複数のワークステーションおよび流体工学モジュールに供給する、空気力学モジュールと、運搬装置、1つまたは複数のワークステーション、流体工学モジュール、および空気力学モジュールと電気通信している制御モジュールであって、制御モジュールが、生物標本の処理中に装置の構成要素(音響源を含む)の機能を協調させる、制御モジュールとを備える。
【0083】
[0111]いくつかの実施形態において、生物標本を自動的に処理するための装置は、音響源の動作パラメータを独立して変化させるように、各音響源を独立して制御するための制御システムをさらに備え、コントローラは、少なくとも信号発生器を含む。いくつかの実施形態において、生物標本を自動的に処理するための装置は、スライドの表面上に分注された流体の混合および/または分布の監視を可能にするために1つまたは複数のセンサまたは他のフィードバック機序をさらに備える。いくつかの実施形態において、制御システムは、マイクロプロセッサおよび1つまたは複数のマイクロコントローラを備え、1つまたは複数のマイクロコントローラは、マイクロプロセッサからの命令を受信し、1つもしくは複数のワークステーション、流体工学モジュール、1つもしくは複数の音響源、および/または運搬装置のうちの1つまたは複数を別個に制御する。いくつかの実施形態において、スライドトレイは、本明細書に説明されるか、または
図1A~
図1Gに例証されるようなスライドホルダなど、複数のスライドホルダを備える。
【0084】
[0112]いくつかの実施形態において、ワークステーションのうちの少なくとも1つは、可動式ノズル組立体を備え、このノズル組立体は、1つまたは複数のノズルを含み、このノズルを通って試薬がスライドに送達される。ノズルは、分注ノズルまたは上昇ノズルであってもよい。
【0085】
[0113]いくつかの実施形態において、ワークステーションは、スライドトレイ内の1つまたは複数の個々のスライド、例えば、スライドトレイ内の少なくとも2つまたは4つのスライドに対してスライド処理動作を実施することができるか、または、ワークステーションは、スライドトレイ内のスライドのすべてに対してスライド処理動作(音響源による混合動作を含む)を同時に実施することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のワークステーションは、第1のスライドに接触する相当量の試薬が第2のスライドに接触することなく、試薬をスライドトレイ内のスライドに分注し、それにより、スライド同士の相互汚染を最小限にする。そのようなワークステーションは、試薬をスライド上に分注する1つまたは複数の指向性ノズルを含み得、例えば、1つまたは複数の指向性ノズルは、スライドの表面にわたって相対する方向に試薬を分注する一対の指向性ノズルを含み得る。より具体的な実施形態において、1つまたは複数の指向性ノズルは、試薬をスライドの底面に向かって分注する指向性ノズルをさらに含み得る。他の実施形態において、1つもしくは複数のワークステーションは、所与のワークステーション内でスライドトレイ内に保持された少なくとも2つのスライドに試薬(例えば、同じ試薬)を同時に分注することができるか、または1つもしくは複数のワークステーションは、所与のワークステーション内でスライドトレイ内に保持されたスライドのすべてに試薬(例えば、同じ試薬)を同時に分注することができる。流体または試薬の分注に続いて、スライドの表面上の流体を分布および/または混合するために音響源が有効化され得る。
【0086】
[0114]いくつかの実施形態において、生物組織試料を含む複数のスライドを処理するための自動化された方法であり、本方法は、複数のスライドがスライドトレイ内で空間的に同一平面上の略水平位置に保持されたまま、1つまたは複数のワークステーションにおいて複数のスライドに対してスライド処理動作を実施することであって、複数のスライドの各々が、スライドおよび/または試料への弾性波の導入を可能にするように少なくとも1つの音響源と連通しており、スライド処理動作のセットが少なくとも、1つまたは複数の染色剤を、少なくとも1つの試薬容器から、流体工学モジュールを通じて、およびスライドトレイの上に位置付けられた少なくとも1つの分注ノズルの外へ流すことによって、空間的に同一平面上の略水平位置にあるスライド上の試料を染色すること、および溶媒交換を含む、スライド処理動作を実施することと、少なくとも染色および溶媒交換を含むスライド処理動作のセットを実施した後に、複数のスライドを保持するスライドトレイを自動カバースリッパワークステーションに運搬することと、スライド上のカバースリップが互いから離間されるように、複数のスライドがスライドトレイ内で空間的に同一平面上の略水平位置に保持されたまま、自動カバースリッパワークステーションを使用して別個のそれぞれのカバースリップを用いてスライドトレイ内に保持された複数のスライドをカバースリップすることと、カバースリップされたスライドを保持するスライドトレイを自動カバースリッパワークステーションから取り除くこととを含む。いくつかの実施形態において、処理は、(i)放射加熱装置下で試料を焼付けるステップ、(ii)試料を脱パラフィンするステップ、(iii)1つまたは複数の流体工学構成要素を通して、および概ねスライドトレイの上に位置付けられた1つまたは複数のノズルの外へ、1つまたは複数の染色剤を送達することによって、試料を染色するステップであって、1つまたは複数の流体工学構成要素が、1つまたは複数の染色剤を保持する少なくとも1つの試薬容器を1つまたは複数のノズルに流体的に接触させる、ステップと、(iv)試料を溶媒交換するステップと、(v)別個のカバースリップを用いて試料をカバースリップするステップとを含み、前述のステップは、2つ以上のワークステーションを備える装置によって自動的に実施され、スライドを保持するスライドトレイは、処理中、これら2つ以上のワークステーションの間を移動される。
【0087】
[0115]いくつかの実施形態において、標本が処理された後、ユーザは、標本を含むスライドを撮像装置へ運搬することができる。いくつかの実施形態において、撮像装置は、明視野撮像器スライドスキャナである。1つの明視野撮像器は、Ventana Medical Systems,Inc.によって販売されているiScan Coreo(商標)明視野スキャナである。自動化された実施形態において、撮像装置は、IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUESと表題の付いた国際特許番号:PCT/US2010/002772(特許公開番号:WO/2011/049608)に開示されるか、IMAGING SYSTEMS,CASSETTES,AND METHODS OF USING THE SAMEと表題の付いた、2014年2月3日に出願された米国特許出願公開第2014/0178169号に開示されるような、デジタル病理デバイスである。国際特許出願第PCT/US2010/002772号および米国特許出願公開第2014/0178169号は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態において、撮像装置は、顕微鏡に連結されたデジタルカメラを含む。
【0088】
[0116]制御システム
[0117]
図1Aを参照すると、トランスデューサ30は、コントローラ60により制御され得る。いくつかの実施形態において、また
図1Eに描写されるように、トランスデューサは、スイッチもしくはタイマ61、増幅器62、および/または信号発生器63に通信可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、制御システムは、増幅器および信号発生器を含む印刷装置回路基板組立体(PCBA)を備える。いくつかの実施形態において、制御システムは、信号発生器による使用のための電気入力を用意する電力サブシステムを備える。いくつかの実施形態において、信号発生器は、音響源(例えば、トランスデューサ)を駆動するのに十分な振幅および周波数の発振電気信号を発生させる。いくつかの実施形態において、音響源(例えば、トランスデューサ)は、信号発生器によって供給される電気信号を音響振動に変換する。いくつかの実施形態において、制御システムは、ケーシング内に含まれる。いくつかの実施形態において、制御システムは、コンピュータ64に通信可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、トランスデューサのための制御システムは、自動染色装置を制御するために使用されるコントローラである。
【0089】
[0118]いくつかの実施形態において、制御システムは、顕微鏡スライドに提供された弾性波を監視するための1つまたは複数のセンサをさらに備え得る。他の実施形態において、制御システムは、スライドの表面上に存在する1つまたは複数の流体の混合を監視するために1つまたは複数のフィードバック機序を備え得る。
【0090】
[0119]光学またはビデオ検出および分析が、混合を最適化するために用いられ得る。例として、光学またはビデオ検出は、着色試薬が透明の流体内へ混合する際の色の変化を検出するために使用され得る。スペクトル励起、吸収、光散乱、蛍光、発光、放射、偏光顕微鏡、ラマン散乱、およびスペクトル分析などの他の光学測定もまた、顕微鏡スライドの表面上の試料と接触している流体の混合を監視するために使用され得る。データは、混合プロセスを制御しているコンピュータまたは制御システムによって獲得され、分析され得る。例えば、受信したデータに基づいて、十分な混合が達成される場合、トランスデューサはオフにされ得る。別の例として、受信したデータに基づいて、混合が不十分である場合、コントローラは、トランスデューサがオンにされる時間を増大し得るか、またはコントローラは、トランスデューサの周波数、または追加のトランスデューサ上の電力を変更し得る。
【0091】
[0120]方法
[0121]本開示の別の態様は、低周波数弾性波(例えば、細胞を損傷しない周波数、2000Hsを下回る周波数など)を顕微鏡スライドに導入することによって、顕微鏡スライドの表面上の流体を分布および/または混合する方法を提供する。いくつかの実施形態において、弾性波の導入は、顕微鏡スライドの表面上に提供された生物試料上への流体の実質的に均一な分布の形成を促進する。例えば、流体は、顕微鏡スライドの表面上の予め定められた領域に分注され得、音響源の有効化および弾性波の導入の際、この流体は、分注の最初の領域を超えて分布され得る。いくつかの実施形態において、弾性波の導入による顕微鏡スライドの表面上の流体の分布は、スライドの表面上に装填された生物試料上への流体(例えば、試薬)の補充を促進するために使用され得る。例えば、生物試料は、表面上に堆積された試薬を吸収し得(または、試薬を不均等に吸収し得)、最終的に、生物試料と接触している試薬の量は、実質的に枯渇し得る(または、試料の特定の領域または部分から枯渇する)。音響源の有効化は、生物試料への試薬の別のアリコートの分布を促進し得、このようして生物試料と接触している試薬を補充する。音響源の有効化はまた、拡散手段より速く、スライドの他の領域から生物試料への試薬の再分布を促進し得、このようして生物試料と接触している試薬を補充する。
【0092】
[0122]他の実施形態において、第1の流体は、顕微鏡スライドの表面上に既に存在している場合があり(例えば、流体だまり)、第2の流体、例えば、試薬、の導入に続いて、第2の流体は、弾性波の導入に続いて第1の流体内で実質的に均一に分布され得る。いくつかの実施形態において、実質的に均一に分布されるとは、スライド上の2つの別個の地点の試薬濃度が、大きさが15%以下異なることを意味する。いくつかの実施形態において、実質的に均一に分布されるとは、スライド上の2つの別個の地点の試薬濃度が、大きさが10%以下異なることを意味する。他の実施形態において、実質的に均一に分布されるとは、スライド上の2つの別個の地点の試薬濃度が、大きさが5%以下異なることを意味する。さらに他の実施形態において、実質的に均一に分布されるとは、スライド上の2つの別個の地点の試薬濃度が、大きさが2%以下異なることを意味する。当然ながら、当業者は、任意の数の流体が、顕微鏡スライドの表面上に堆積され得、これら流体の各々が、弾性波の導入より、互いの中に、混合され得る、すなわち、実質的に均一に分布され得ることを理解するものとする。
【0093】
[0123]いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、スライドの表面上の任意の体積流体を分布および/または混合するのに好適である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法に従って分布および/または混合することができる流体の体積は、約50μL~約2000μLの範囲にわたる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法に従って分布および/または混合することができる流体の体積は、約50μL~約1000μLの範囲にわたる。他の実施形態において、本明細書に開示される方法に従って分布および/または混合することができる流体の体積は、約50μL~約750μLの範囲にわたる。さらに他の実施形態において、本明細書に開示される方法に従って分布および/または混合することができる流体の体積は、約50μL~約500μLの範囲にわたる。さらに他の実施形態において、本明細書に開示される方法に従って分布および/または混合することができる流体の体積は、約100μL~約500μLの範囲にわたる。当業者は、スライド上に存在する全体積が、所望のように、実質的に均一に分布および/または混合されるように、すべての動作パラメータ(例えば、動作の持続時間、周波数、振幅、振幅変調、周波数変調、試料に対する音響源の位置など)を含む、適切な音響源を選択することができるものとする。
【0094】
[0124]一般的に、本方法は、(i)流体をスライドの表面に導入すること、および(ii)低周波数弾性波をスライドに導入することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、限定されるものではないが、(a)音響源のフィードバック制御のための検出ステップ、(b)流体除去ステップ、および/または(c)さらなる流体分注ステップを含
む、さらなるステップを含む。
【0095】
[0125]いくつかの実施形態において、標本を含むスライドを処理する方法は、(i)標本を含むスライド上の試料を第1の試薬に接触させること、および(ii)標本を含むスライドに弾性波を導入することによって、標本を含むに第1の試薬を均一に分布することを含む。いくつかの実施形態において、均一な分布は、流体のないスライドの領域への流体の進出を可能にする。本明細書に記されるように、弾性波は、試料と連通しているトランスデューサによって生成され得る。いくつかの実施形態において、試薬は、スライドの表面上の第1の流体だまり(例えば、緩衝液を含む液だまり)内へ、またはスライド上の第1の液だまりに近接して、導入される。いくつかの実施形態において、試薬は、検出プローブである。いくつかの実施形態において、検出プローブは、生物試料内の特定の標的(例えば、抗体、核酸)に特異的な結合部位である。いくつかの実施形態において、利用される検出プローブは、一次抗体、具体的には、試料内のタンパク質標的(または、タンパク質標的のエピトープ)の検出を可能にする一次抗体である。いくつかの実施形態において、一次抗体は、フルオロフォア、ハプテン、または酵素などの検出可能なラベルに共役される。他の実施形態において、検出プローブは、試料内の核酸配列標的の検出を可能にする核酸プローブである。他の実施形態において、特異結合部位は、核酸プローブであり、この核酸プローブは、色原体、フルオロフォア、ハプテン、または酵素などの検出可能なラベルまたはレポータに共役される。
【0096】
[0126]いくつかの実施形態において、試薬の導入に続いて、低周波数弾性波が試料に導入される。いくつかの実施形態において、弾性波は、約0.5秒~約6時間の範囲にわたる時間間隔にわたって導入される。いくつかの実施形態において、弾性波は、約0.5秒~約240秒にわたる時間間隔にわたって導入される。他の実施形態において、弾性波は、約1秒~約180秒にわたる時間間隔にわたって導入される。他の実施形態において、弾性波は、約1秒~約120秒にわたる時間間隔にわたって導入される。他の実施形態において、弾性波は、約1秒~約60秒にわたる時間間隔にわたって導入される。他の実施形態において、弾性波は、約1秒~約30秒にわたる時間間隔にわたって導入される。他の実施形態において、弾性波は、約1秒~約15秒にわたる時間間隔にわたって導入される。他の実施形態において、弾性波は、約5秒~約10秒にわたる時間間隔にわたって導入される。
【0097】
[0127]いくつかの実施形態において、本方法は、(例えば、本明細書に説明されるフィードバック機序を使用することによって)流体および/または試薬が適切に分布または混合されているかどうかを検出することをさらに含む。検出ステップが、流体および/または試薬が適切に混合されていないことを決定する場合、音響源の動作パラメータが調整され得る(例えば、周波数、振幅、動作の持続時間、弾性波のパルス対連続導入、またはそれらの任意の組み合わせ)。
【0098】
[0128]いくつかの実施形態において、試料は、弾性波によりパルス振動される。いくつかの実施形態において、弾性波による試料のパルス振動は、一定の間隔であってもよい。例えば、試料は、特定の予め定められた時間量(例えば、約0.5秒間隔)にわたって、弾性波によりパルス振動され得、弾性波が導入されない予め定められた時間量(例えば、約1秒間隔)がその後に続く。他の実施形態において、弾性波による試料のパルス振動は、一定でない間隔であってもよい。他の実施形態において、弾性波によるパルス振動試料かどうかに関する決定は、混合の程度に関するフィードバックを提供する検出器、またはスライドもしくは試料の一部分が補充を必要とするかどうかを検出することができる検出器を使用することによって決定され得る。
【0099】
[0129]いくつかの実施形態において、試料は、試薬が試料と接触している時間間隔全体
を通して(例えば、インキュベーション期間の間)、弾性波によりパルス振動され得る。例えば、抗体が試料に導入され、プロトコルが、約360秒の時間間隔(例えば、インキュベーション期間)にわたって抗体が試料と接触したままであることを求める場合、弾性波は、インキュベーション期間中、設定された間隔で、予め定められた時間量にわたって試料に導入され得る。例えば、弾性波のパルスは、抗体の導入後の時間0、+30秒、+60秒、+90秒、+120秒、+150秒、+180秒、+210秒、+240秒、+270秒、+300秒、および+330秒において、5秒の時間間隔で導入され得る。当然ながら、予め定められた間隔で、または予め定められた時間量にわたって、弾性波により試料をパルス振動するのではなく、フィードバック制御デバイス(本明細書に説明されるものなど)が、パルスの時間の長さを含め、弾性波のパルスの導入が必要であるかどうかを決定するために利用されてもよい。
【0100】
[0130]他の実施形態において、スライドまたは試料は、流体がスライドまたは試料に分注される度に、および何らかの目的(すなわち、流体補充、流体分注、および/または流体混合)のために、弾性波によりパルス振動され得る。例えば、プロトコルが2分ごとに流体の特定のアリコートを添加することを求める場合、弾性波は、アリコートが添加される度に少なくとも予め定められた時間量にわたって、スライドおよび/または試料に供給され得る。当然ながら、追加のパルスが、必要に応じて、および上記のように、分注サイクルの間に供給されてもよい。
【0101】
[0131]加えて、特定のシステムまたは機器が、システムまたは機器の異なるステーションまたは処理領域(例えば、試料染色領域、試料インキュベーション領域)間でスライドを移動させることを求める場合、弾性波が、スライドの移動の前および/または後に試料内へパルス振動され得、そのような移動の前、移動の最中、および移動の後に、流体が適切に分布および/または混合されることを確実にする。第1の流体だまり内への第1の試薬の混合に続いて、混合された第1の試薬/流体だまりは、スライドの表面から除去され得る。続いて、第1の検出試薬が導入され得、次いでスライドの表面上で分布され得るか、またはスライド上に存在する第2の流体だまりと混合され得る。いくつかの実施形態において、第1の検出試薬は、検出プローブのラベルに特異的である。例えば、ラベルが酵素である場合、酵素の基質(検出可能な部位、例えば、色原体部位)が、着色された沈殿物が検出され得るように導入され得る。さらに他の実施形態において、抗ラベル抗体(二次抗体)が、検出を引き出すために導入され、この抗ラベル抗体は、検出プローブのラベルに特異的である。例えば、ラベルがハプテンである場合、ハプテンラベルに特異的な抗ハプテン抗体が導入され、この抗ハプテン抗体は、検出可能な部位を含む。いくつかの実施形態において、抗ハプテン抗体の検出可能な部位は、酵素であり、酵素の基質が、検出プローブおよび標的を検出するためにさらに導入される。次いで、検出可能な部位は、当業者に知られているプロセスに従って検出され得る。検出プローブおよび/または検出試薬の導入は、試料内の任意の所望の数の標的に相当するように「n」回繰り返され得る。
【0102】
[0132]本明細書に開示される方法は、多重アッセイにも好適である。例えば、第1の標的に特異的な第1の検出プローブおよび第2の標的に特異的な第2の検出プローブが、同時に、または連続して、導入され得る。第1および第2の検出プローブの両方が試料に導入されると、弾性波は、第1および第2の検出プローブが混合され均一に分布されるように試料に導入され得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、第1および第2の検出プローブの分布は、染色中の均一な検出プローブ濃度および/または染色アーチファクトの低減を促進し得ると考えられている。当業者は、任意の数の検出プローブが、同時に、または連続して、スライドの表面上の試料に導入され得、「n」個の検出プローブが、弾性波の導入により混合され得ることを理解するものとする。本明細書に記されるように、弾性波は、試料と連通している音響源によって、または本明細書に別途説明されるように、生成され得る。いくつかの実施形態において、弾性波は、約0.
5秒~約6時間の範囲にわたる時間間隔にわたって導入される。いくつかの実施形態において、弾性波は、約0.5秒~240秒にわたる時間間隔にわたって導入される。検出プローブの導入に続いて、1つまたは複数の検出試薬が、ここでも同時および/または連続のいずれかで導入され得、ここでも弾性波に導入により混合され得る。
【0103】
[0133]いくつかの実施形態において、流体または試薬を補充する方法は、(i)標本を含むスライド上の試料を第1の試薬と接触させることと、(ii)試薬が試料と反応する時間、または試料によって吸収される時間を確保することと、(iii)標本を含むスライドに低周波数弾性波を導入することによって、標本を含む上に第1の試薬を均一に分布し、それにより、試薬が少なくとも部分的に枯渇している領域に試薬を補充することとを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、任意選択的に、弾性波の導入により第1の試薬を均一に分布する前に、第1の試薬の追加のアリコートを導入するステップを含む。本明細書に記されるように、弾性波は、試料と連通しているトランスデューサによって生成され得る。いくつかの実施形態において、試薬は、スライドの表面上の第1の流体だまり(例えば、緩衝液を含む液だまり)内へ導入される。いくつかの実施形態において、試薬は、検出プローブである。いくつかの実施形態において、検出プローブは、生物試料内の特定の標的に特異的な結合部位である。いくつかの実施形態において、利用される検出プローブは、一次抗体、具体的には、試料内のタンパク質標的(または、タンパク質標的のエピトープ)の検出を可能にする一次抗体である。いくつかの実施形態において、一次抗体は、フルオロフォア、ハプテン、または酵素などの検出可能なラベルに共役される。他の実施形態において、検出プローブは、試料内の核酸配列標的の検出を可能にする核酸プローブである。他の実施形態において、特異結合部位は、核酸プローブであり、この核酸プローブは、色原体、フルオロフォア、ハプテン、または酵素などの検出可能なラベルまたはレポータに共役される。
【0104】
[0134]いくつかの実施形態において、標本を含むスライドを処理する方法は、(i)第1の流体を顕微鏡スライドの第1の部分上に分注すること、および(ii)標本を含むスライドに弾性波を導入することによって、標本を含む上に第1の流体を分布することを含む。いくつかの実施形態において、第1の流体は、顕微鏡スライドの第1の部分から顕微鏡スライドの少なくとも第2の部分に分布される。いくつかの実施形態において、スライドの第1の部分は、試料を含まない部分であり、スライドの第2の部分は、生物試料を含む。いくつかの実施形態において、流体は、検出プローブを含む。いくつかの実施形態において、検出プローブは、生物試料内の特定の標的に特異的な結合部位である。いくつかの実施形態において、本方法は、流体の追加のアリコートをスライドに(任意の領域において)導入し、次いで弾性波の導入により流体を分布するステップをさらに含む。
【0105】
[0135]実施例
[0136]一般的な実験プロトコル
[0137]スライド上の流体を混合するために、45mm直径のトランスデューサ(4ohm、5W、Adafruit.com製品ID=1784)を使用した。トランスデューサに電力供給するために、増幅器ICボード(Adafruit製品ID=1552、TPA2012)が必要であった。増幅器への入力は、信号発生器正弦波であり、トランスデューサへの増幅器出力は、PWM波である。増幅器IC、TPA2012D2は、
図3に示される、2×2.1出力を有するステレオD級オーディオ増幅器である。ボードには、増幅器のゲインを調整するためにピンが付属しており、すべての実験は、24dBゲインで実行した。PRISMボードおよびAtlasソフトウェアを介してトランスデューサをオン/オフにするために、2つのシャットダウンピン(SDRおよびSDL)を使用した。これは、混合する時間の長さを特定し、トランスデューサオン:オフ比および期間時間長さがどのように混合に影響を与えたかを理解するという利点をもたらした。使用した信号発生器は、Agilent33512Bであった。信号発生器のチャネル1は、特定の周波数および振幅を有する正弦波を出力するために使用した。周波数は、組立体の共鳴であった。
【0106】
[0138]使用したカメラは、Edmunds Optics EO-0413C LEであった。画像を見るためのソフトウェアは、Edmunds opticsウェブサイトからダウンロードすることができるuEye cockpitである。記録すべきfpsは、ソフトウェアプロパティオプション内で特定することができる。
【0107】
[0139]トランスデューサは、スライド処理ステーション(SPS)加熱板にねじ固定し、トランスデューサの底を実験台に固定する。湿潤スライドを、SPS加熱器板の上に置く。スライドのラベル端は、スライド整列板およびSPS加熱板にテープで貼り付ける。
【0108】
【実施例0109】
[0141]緩衝液へのフルオレセインの混合
[0142]概要
[0143]合計500μLの流体体積、フルオレセイン染料、および塩緩衝液を、混合のためにスライド上にピペットした。信号発生器は、トランスデューサを垂直に上下に作動させ、それによりスライド上の流体の混合を可能にするために、約150Hzおよび約100mVppの正弦波を発生させるように構成した。
【0110】
[0144]流体混合を捕捉および視覚化するために、UV光、フルオレセイン染料、カメラ、および囲いを必要としたが(
図6を参照されたい)、これらの構成要素のいずれも、混合には必ずしも必要ではない。フルオレセインを、スライド上の5つの領域、4つの角および中央に、l0μLの体積で置いた。
【0111】
[0145]一般的な手順
[0146]1.スライドとSPS加熱板との連結を向上するため、15μLの液体カバースリップ(LCS)を、SPS加熱板上にピペットする。
【0112】
[0147]2.スライドの湿潤-スライドを試薬内に浸漬し、スライドを軽くはじく。
[0148]3.ラベル側を上にして、スライドを加熱板の上に置く。スライドのラベル端をスライド整列板上の加工マークまでテープで貼り付ける。
【0113】
[0149]4.450μLの塩緩衝液を添加し、混合を視覚化するために、フルオレセインを4角および中央の5つのスポットに各スポットに10μLずつ添加する。
[0150]5.トランスデューサを150Hzおよび100mVppで駆動し、スライド上で流体を混合するために信号発生器をオンにする。
【0114】
[0151]6.トランスデューサをオフにし、スライドを取り除き、SPS加熱板をアルコールでふき取って綺麗にする。
[0152]結果
[0153]実験の設定パラメータは、表1に示される。
【0115】
【0116】
[0154]混合の結果は、
図7に例証される。
図7の個々のフレームは、スライド上の流体体積にわたって広がるフルオレセイン染料を例証する。混合に至るまでの約1秒、スライドの自由端の4角およびスライドの中央の染料を混合した。スライドのテープ端に最も近い4角の染料は、混合を開始したが、それらの場所におけるそのような混合はより長い時間がかかっており、これは、その端がテープによって押し下げられていることからより機械的に剛性であることに起因すると考えられている。定性的に、染料は、流体がスライドにわたって均一に広がるには約7秒かかると概算した。本出願者らは、本明細書に開示される非接触混合手段が、有利には、試料をいかなる物理デバイスまたはガス流にも接触させることなく流体の混合を可能にすることを示した。このことにより、この技術が染色プラットフォームに組み込まれる場合には、スライド同士の潜在的な相互汚染の懸念を除去すると考えられている。ここでは混合するための周波数が比較的低い、約150Hzであるため、組織損傷の見込みはない。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、細胞損傷は、超音波範囲(約18,000Hz超)で発生し、市販の超音波処理装置においては、細胞損傷は、気泡崩壊によって発生するせん断力によって生じると考えられている。本明細書に提供されるシステムにおいては、キャビテーションまたは気泡崩壊は観察されなかった。