(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130683
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】画像表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G09F9/00 338
G09F9/00 313
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107839
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2017243534の分割
【原出願日】2017-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2017020485
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝夫
(57)【要約】 (修正有)
【課題】画像表示部材とその表面側に配される湾曲した光透過性カバー部材とを積層して画像表示装置を製造する際に、画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにし又、表示に色ムラが生じないようにする。
【解決手段】画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、光硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置は、光硬化性樹脂組成物を湾曲した光透過性カバー部材の凹部面に塗布し、塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させ、凹部面の中央部に光硬化性樹脂組成物の硬化収縮に基づく微少凹みを有する仮硬化樹脂層を形成し、仮硬化樹脂層の微少凹みを対応する量の光硬化性樹脂組成物を、仮硬化樹脂層又は画像表示部材に塗布し、画像表示部材と光透過性カバー部材とを、仮光硬化樹脂層を介して積層し、画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させ、製造できる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、光硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法において、
以下の工程(A)~(D):
<工程(A)>
光硬化性樹脂組成物を、湾曲した光透過性カバー部材の凹部面に塗布する工程;
<工程(B)>
塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させ、凹部面に光硬化性樹脂組成物の硬化収縮に基づく微少凹みを有する仮硬化樹脂層を形成する工程;
<工程(C)>
仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量の光硬化性樹脂組成物を、仮硬化樹脂層又は画像表示部材に塗布する工程;
<工程(D)>
画像表示部材と光透過性カバー部材とを、仮硬化樹脂層を介して積層する工程; 及び
<工程(E)>
画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させることにより光透過性硬化樹脂層を形成する工程;
を有する製造方法。
【請求項2】
工程(A)で使用する光透過性カバー部材が、横樋形状を有する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程(B)において、光透過性カバー部材の凹部面の少なくとも中央部に微小凹みを発生させると共に、工程(C)において微小凹み体積の70%以上に相当する光硬化性樹脂組成物を、対応する仮硬化樹脂層又は画像表示部材に塗布する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
光透過性カバー部材の横樋形状の両端部の内側又は外側に、それぞれ光硬化性樹脂組成物の塗布領域を画する内側ダム材又は外側ダム材が設けられている請求項2又は3記載の製造方法。
【請求項5】
工程(B)と工程(C)との間で、内側ダム材又は外側ダム材を除去する請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
工程(D)の積層を、真空貼合法で行う請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
工程(D)と工程(E)との間で、加圧脱泡処理を行う請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
画像表示部材が、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル又はタッチパネルである請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
工程(B)において、仮硬化樹脂層の硬化率が10~90%となるように、光硬化性樹脂組成物に紫外線を照射して仮硬化させる請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
工程(E)において、光透過性硬化樹脂層の硬化率が90%以上となるように、仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させる請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
光硬化性樹脂組成物が、エラストマー及びアクリル系オリゴマーの少なくとも一方と、アクリル系モノマーと、光重合開始剤とを含有する液状の樹脂組成物であって、
エラストマーが、アクリル共重合体、ポリブテン及びポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも一種であり、
アクリル系オリゴマーが、ポリウレタン系(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート及びポリイソプレン系(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1~10のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネル等の画像表示部材と、その表面側に配される湾曲した透明保護シート等の光透過性カバー部材とが、光透過性硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションなどの車載用情報端末に用いられている画像表示装置は、フラットな光透過性カバー部材に光硬化性樹脂組成物を塗布し、紫外線照射により仮硬化させて仮硬化樹脂層を形成した後、仮硬化樹脂層に液晶表示パネルや有機ELパネル等のフラットな画像表示部材を積層し、続いて仮硬化樹脂層に対し紫外線照射を再度行うことにより本硬化させて光硬化樹脂層とすることにより製造されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、車載用情報端末用の画像表示装置の意匠性やタッチ感を向上させるために、一方向に湾曲した形状の光透過性カバー部材を用いることが求められるようになっている。このため、このような画像表示装置を特許文献1に記載の製造方法に準じて製造することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、光硬化性樹脂組成物を紫外線照射により光硬化させると硬化収縮が生じるが、フラットな光透過性カバー部材にフラットな画像表示部材を積層する特許文献1の製造方法の場合には、面方向の光硬化性樹脂組成物の塗布厚が約150μm程度と薄くしかも均一であるため、光硬化樹脂層が硬化収縮してもボイドが発生し難く、画像品質に対する光硬化樹脂層の残存応力の影響を無視できるものであった。
【0006】
一方、一方向に湾曲した形状の光透過性カバー部材の凹部面に光硬化性樹脂組成物を塗布した場合、湾曲していない辺近傍の光硬化性樹脂組成物の塗布厚は0~500μm程度になるが、凹部面の中央部の光硬化性樹脂組成物の塗布厚は辺近傍の塗布厚より非常に厚くなり、場合により数mm厚程度にまで厚くなる。このため、凹部面の中央部では、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮が著しく大きなものとなり、結果的に中央部には凹みが形成され、組み上げた画像表示装置の表示面に空隙が生じる場合があり、また、空隙が生じないまでも、光硬化樹脂層の残留応力により表示に色ムラが生ずるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、以上の従来の技術の問題点を解決することであり、画像表示部材とその表面側に配される湾曲した光透過性カバー部材とを光硬化性樹脂組成物の硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を製造する際に、組み上げた画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにし、また、空隙が生じないまでも、光硬化樹脂層の残留応力により表示に色ムラが生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、光透過性カバー部材の凹部面に光硬化性樹脂組成物を塗布し、仮硬化処理した後、硬化収縮により生じた仮硬化樹脂層の中央部の凹みに新たに光硬化性樹脂組成物を塗布し、画像表示部材を積層し、本硬化処理を行うことにより、画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにでき、また、光硬化樹脂層の残留応力を低減させて表示の色ムラが生じないようにできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、光硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法において、
以下の工程(A)~(D):
<工程(A)>
光硬化性樹脂組成物を、湾曲した光透過性カバー部材の凹部面に塗布する工程;
<工程(B)>
塗布された光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させ、凹部面に光硬化性樹脂組成物の硬化収縮に基づく微少凹みを有する仮硬化樹脂層を形成する工程;
<工程(C)>
仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量の光硬化性樹脂組成物を、仮硬化樹脂層又は画像表示部材に塗布する工程;
<工程(D)>
画像表示部材と光透過性カバー部材とを、仮硬化樹脂層を介して積層する工程; 及び
<工程(E)>
画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させることにより光透過性硬化樹脂層を形成する工程;
を有する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の画像表示装置の製造方法においては、湾曲した光透過性カバー部材の凹部面に光硬化性樹脂組成物を塗布し、仮硬化処理した後、硬化収縮により生じた仮硬化樹脂層の中央部の凹みに新たに光硬化性樹脂組成物を塗布し、画像表示部材を積層し、本硬化処理を行う。このため、画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにでき、また、光硬化樹脂層の残留応力を低減させて表示の色ムラが生じないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、本発明の製造方法の工程(A)の説明図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の製造方法の工程(A)の説明図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の製造方法の工程(B)の説明図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の製造方法の工程(B)の説明図であるる。
【
図3A】
図3Aは、本発明の製造方法の工程(C)の説明図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の製造方法の工程(C)の説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の製造方法の工程(D)の説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の製造方法の工程(E)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、画像表示部材と湾曲した光透過性カバー部材とが、光硬化樹脂層を介して積層されている画像表示装置の製造方法であり、以下の工程(A)~(E)を有する製造方法である。以下、図面を参照しながら工程毎に詳細に説明する。
【0013】
<工程(A):塗布工程>
まず、
図1Aに示すように湾曲した光透過性カバー部材1を用意し、
図1Bに示すように光透過性カバー部材1の凹部面1aに、ディスペンサーD等により光硬化性樹脂組成物2を塗布する。この光硬化性樹脂組成物2の塗布量は、画像表示素子のサイズや形状、用途等により異なるが、通常、45(w)×80(l)×3(t)mm(曲率半径(r):300mm)の湾曲光透過性カバー部材に対し、40(w)×80(l)mmの画像表示部材を光透過性カバー部材の湾曲していない2辺に接触する形で貼合する場合、好ましくは23.44ccで湾曲最深部の厚みが670μmとなるが、より好ましくは23.76ccで光透過性カバー部材の湾曲していない2辺と画像表示部材間に約100μmの隙間を設けることが可能である。この隙間は画像表示装置の設計にもよるが、50μm以上800μm以下が好ましい。また、そのような塗布量を一度の塗布操作で満足させてもよいが、複数回の塗布操作で満足させてもよい。
【0014】
(光透過性カバー部材1)
湾曲した光透過性カバー部材1の具体的な形状としては、一方向に湾曲した形状(例えば、円柱パイプをその中心軸に平行な平面で切断して得られる劣弧側の形状(以下、横樋形状と称する))(
図1A)や、X方向とY方向に湾曲した形状(
図1C)、360°方向に湾曲した形状(例えば、球をその中心点を含まない平面で切断して得られる劣弧側の形状)(
図1D)などが挙げられる。これらの形状の中央部に平坦部1bが形成されていてもよい(例えば、
図1E)。
【0015】
光透過性カバー部材1が横樋形状である場合(
図1A)、その両端部1xと1yの内側に、光硬化性樹脂組成物の塗布領域を画する内側ダム材3(
図1F)、もしくはその両端部1xと1yの外側に光硬化性樹脂組成物の塗布領域を画する外側ダム材4(
図1G)を設けることが好ましい。内側ダム材3及び外側ダム材4としては、塗布された光硬化性樹脂組成物を、それと相溶することなく堰き止めることができ、光硬化性樹脂組成物の仮硬化後に、簡便に除去可能な公知の材料から形成することができる。例えば、内側ダム材3としては、微粘着層を備えた公知の熱可塑性エラストマーテープなどを光透過性カバー部材1の端部内側に土手状に貼りつけたものが挙げられる。外側ダム材4としては、シリコーンシート、フッ素樹脂シート等を挙げることができる。
【0016】
なお、光透過性カバー部材1が
図1Cや
図1Dの態様である場合、ダム材は無くてもよい。また、
図1A、1Bの態様の場合であっても、内側ダム材3に対応する光透過性カバー部材1の表面に、光硬化性樹脂組成物の流れを防止するための表面処理(例えば、光硬化性樹脂組成物の特性に応じて粗面化処理、親水化処理、あるいは撥水化処理等)を施してもよい。
【0017】
光透過性カバー部材1の材料としては、画像表示部材に形成された画像が視認可能となるような光透過性があればよく、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の樹脂材料が挙げられる。これらの材料には、片面又は両面ハードコート処理、反射防止処理などを施すことができる。光透過性カバー部材1の湾曲の形状や厚さなどの寸法的な特性、弾性などの部位利敵物性は、使用目的に応じて適宜決定することができる。
【0018】
(光硬化性樹脂組成物2)
光透過性カバー部材1の凹部面1aに塗布する光硬化性樹脂組成物2の性状は好ましくは液状である。液状のものを使用すると、光透過性カバー部材1の凹部面1aに光硬化性樹脂組成物2を組成物表面が平坦となるように充填することができる。ここで、液状とは、コーンプレート型粘度計で0.01~100Pa・s(25℃)の粘度を示すものである。
【0019】
このような光硬化性樹脂組成物2は、ベース成分(成分(イ))、アクリル系モノマー成分(成分(ロ))、及び光重合開始剤(成分(ハ))を含有するものを好ましく例示することができる。必要に応じ、更に、可塑剤成分(成分(ニ))を含有することができる。なお、光硬化性樹脂組成物2の最終的な硬化収縮率は3%以上のものである。5%以上であってもよい。
【0020】
ここで、“最終的な硬化収縮率”とは、光硬化性樹脂組成物2を未硬化の状態から完全に硬化させた状態との間で生じた硬化収縮率を意味する。ここで、完全に硬化とは、後述するように硬化率が少なくとも90%となるように硬化した状態を意味する。以下、最終的な硬化収縮率を全硬化収縮率と称する。また、硬化性樹脂組成物を未硬化の状態から仮硬化させた状態との間で生じた硬化収縮率を仮硬化収縮率と称する。更に、本硬化工程において、仮硬化の状態から完全に硬化させた状態との間で生じた硬化収縮率は、本硬化収縮率と称する。
【0021】
光硬化性樹脂組成物の全硬化収縮率は、未硬化(換言すれば、硬化前)の組成物と完全硬化後の固体の完全硬化物の比重を電子比重計(アルファーミラージュ(株)製SD-120L)を用いて測定し、両者の比重差から次式により算出することができる。また、光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂の仮硬化収縮率は、未硬化(換言すれば、硬化前)の組成物と仮硬化後の固体の仮硬化物の比重を電子比重計(アルファーミラージュ(株)製SD-120L)を用いて測定し、両者の比重差から次式により算出することができる。本硬化収縮率は、全硬化収縮率から仮硬化収縮率を減じることにより算出することができる。
【0022】
【0023】
成分(イ)のベース成分は、光透過性硬化樹脂層の膜形成成分であり、エラストマー及びアクリル系オリゴマーの少なくともいずれか一方を含有する成分である。両者を成分(イ)として併用してもよい。
【0024】
エラストマーとしては、好ましくはアクリル酸エステルの共重合体からなるアクリル共重合体、ポリブテン、ポリオレフィン等を好ましく挙げることができる。なお、このアクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは5000~500000であり、ポリブテンの繰り返し数nは好ましくは10~10000である。
【0025】
他方、アクリル系オリゴマーとしては、好ましくは、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリブタジエン等を骨格に持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーを挙げることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートとメタクリレートとを包含する。
【0026】
ポリイソプレン骨格の(メタ)アクリレート系オリゴマーの好ましい具体例としては、ポリイソプレン重合体の無水マレイン酸付加物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物(UC102(ポリスチレン換算分子量17000)、(株)クラレ;UC203(ポリスチレン換算分子量35000)、(株)クラレ;UC-1(分子量約25000)、(株)クラレ)等を挙げることができる。
【0027】
また、ポリウレタン骨格を持つ(メタ)アクリレート系オリゴマーの好ましい具体例としては、脂肪族ウレタンアクリレート(EBECRYL230(分子量5000)、ダイセル・オルネクス(株);UA-1、ライトケミカル工業(株))等を挙げることができる。
【0028】
ポリブタジエン骨格の(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、公知のものを採用することができる。
【0029】
成分(ロ)のアクリル系モノマー成分は、画像表示装置の製造工程において、光硬化性樹脂組成物に十分な反応性及び塗布性等を付与するために反応性希釈剤として使用されている。このようなアクリル系モノマーとしては、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、テトラヒドロフリフリルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ラウリルメタクリレート等を挙げることができる。
【0030】
成分(ハ)の光重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシルフェニルケトン(Irgacure184、BASFジャパン(株))、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2一ヒドロキシ-2-メチル-プロピロニル)ベンジル]フェニル}-2-メチル-1-プロパン-1-オン(Irgacure127、BASFジャパン(株))、ベンゾフェノン、アセトフェノン等を挙げることができる。
【0031】
このような光重合開始剤は、ベース成分(イ)中のアクリル系オリゴマー及びアクリル系モノマー成分(ロ)の合計100質量部に対し、少なすぎると紫外線照射時に硬化不足となり、多すぎると開裂によるアウトガスが増え発泡不具合の傾向があるので、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~3質量部である。
【0032】
また、光硬化性樹脂組成物2は、分子量の調整のために連鎖移動剤を含有することができる。例えば、2-メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノール、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0033】
また、光硬化性樹脂組成物2は、更に、必要に応じて、シランカップリング剤等の接着改善剤、酸化防止剤等の一般的な添加剤を含有することができる。
【0034】
光硬化性樹脂組成物2は、後述する仮硬化工程の後の本硬化工程におけるその硬化収縮率が3%未満に抑制されているので、基本的には可塑剤成分を含有することは必須ではないが、硬化樹脂層に緩衝性を付与すると共に、光硬化性樹脂組成物の硬化収縮率を低減させるために、本発明の効果を損なわない範囲で可塑剤成分(成分(ニ))を含有することができる。従って、光硬化性樹脂組成物中に成分(イ)のベース成分と成分(ロ)のアクリル系モノマー成分との合計含有量は好ましくは25~85質量%であるが、成分(ニ)の可塑剤成分の含有量は0~65質量%の範囲である。
【0035】
成分(ニ)の可塑剤成分は、紫外線の照射では成分(イ)のベース成分及び成分(ロ)のアクリル系モノマー成分と反応しないものである。このような可塑剤成分は、固体の粘着付与剤(1)と液状オイル成分(2)とを含有する。
【0036】
固体の粘着付与剤(1)としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、天然ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン等のロジン樹脂、テルペン系水素添加樹脂を挙げることができる。また、前述のアクリル系モノマー成分を予め低分子ポリマー化した非反応性のオリゴマーも使用することができ、具体的には、ブチルアクリレートと2-ヘキシルアクリレートおよびアクリル酸の共重合体やシクロヘキシルアクリレートとメタクリル酸の共重合体等を挙げることができる。
【0037】
液状オイル成分(2)としては、ポリプタジエン系オイル、又はポリイソプレン系オイル等を含有することができる。
【0038】
<工程(B):仮硬化工程>
次に、
図2Aに示すように、塗布された光硬化性樹脂組成物2に対し紫外線UVを照射して仮硬化させ、光透過性カバー部材1の凹部面1aに(通常、その中央部に)光硬化性樹脂組成物2の硬化収縮に基づく微少凹み5a(例えば、
図2BではX字状の凹みであるが、ライン状等の他の形状の凹みでもよい)を有する仮硬化樹脂層5を形成させる。微少凹み5aにおける“微少”とは、仮硬化収縮による体積変動量を意味している。ここで、仮硬化させるのは、光硬化性樹脂組成物2を流動しない状態にして取り扱い性を向上させるためである。このような仮硬化のレベルは、仮硬化樹脂層5の硬化率(ゲル分率)が好ましくは10~90%、より好ましくは40~90%となるようなレベルである。また、硬化率(ゲル分率)とは、紫外線照射前の光硬化性樹脂組成物2中の(メタ)アクリロイル基の存在量に対する紫外線照射後の(メタ)アクリロイル基の存在量の割合(消費量割合)と定義される数値であり、この数値が大きい程、硬化が進行していることを示す。
【0039】
なお、硬化率(ゲル分率)は、紫外線照射前の樹脂組成物層のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(X)と、紫外線照射後の樹脂組成物層のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さ(Y)とを、以下の数式に代入することにより算出することができる。
【0040】
【0041】
紫外線の照射に関し、硬化率(ゲル分率)が好ましくは10~80%となるように仮硬化させることができる限り、光源の種類、出力、累積光量などは特に制限はなく、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を採用することができる。
【0042】
また、紫外線照射条件に関し、上述の硬化率の範囲内において、後述する工程(C)の貼り合わせ操作の際、仮硬化樹脂層5の液だれや変形が生じないような条件を選択することが好ましい。そのような液だれや変形が生じないような条件を粘度で表現すると、20Pa・S以上(コーンプレートレオメーター、25℃、コーン及びプレートC35/2、回転数10rpm)となる。
【0043】
仮硬化における硬化のレベルは、後述する本硬化工程において仮硬化樹脂層5から硬化樹脂層への間で生ずる硬化収縮率が3%未満となるように、硬化させるものである。即ち、全硬化収縮率が5%である光硬化性樹脂組成物2の場合には、仮硬化の際に少なくとも2%ほど仮硬化収縮させておくことになる。
【0044】
なお、工程(A)で内側ダム材3や外側ダム材4を設けた場合、工程(B)の後、工程(C)の前で、内側ダム材3又は外側ダム材4を除去することが好ましい。既に光硬化性樹脂組成物2が仮硬化しており、樹脂流動が生じないからである。
【0045】
<工程(C):光硬化性樹脂組成物の再充填>
次に、仮硬化樹脂層5の微少凹み5aに対応する量の光硬化性樹脂組成物2を、仮硬化樹脂層5(
図3A)又は通常フラットな画像表示部材6(
図3B)に塗布する。ここで、微少凹み5aに対応する量は、微少表面形状計測装置(例えば、3D測定レーザー顕微鏡(OLS4000シリーズ)、(株)島津製作所)を使用して微少凹部5aの凹部形状を計測することにより算出することができる。あるいは光硬化性樹脂組成物の仮硬化収縮率と使用量(体積)とにより決定することもできる。
【0046】
また、本工程で使用する光硬化性樹脂組成物2は、屈折率の観点から、工程(A)で使用した光硬化性樹脂組成物2と同じのものを使用することが好ましいが、屈折率が略同一であれば異なる組成の光硬化性樹脂組成物を使用してもよい。また、光硬化性樹脂組成物の塗布は、従来公知の手法により微少凹み5aに光硬化性樹脂組成物2が充填されるように行うことが好ましい。例えば、光硬化性樹脂組成物2を仮硬化樹脂層5又は画像表示部材6に塗布する場合、微少凹部5aを埋めるようにライン状(
図3A、3B)、X字状、あるいは中央部にドット状に塗布すればよい。
【0047】
なお、光硬化性樹脂組成物2の塗布位置が、微少凹部5aからズレた場合であっても、塗布された光硬化性樹脂組成物2を仮硬化させずに流動性を保持したまま真空貼合を行うため、光硬化性樹脂組成物2を微少凹部5aへ適正に移動させることができる。
【0048】
画像表示部材6としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等を挙げることができる。ここで、タッチパネルとは、液晶表示パネルのような表示素子とタッチパッドのような位置入力装置を組み合わせた画像表示・入力パネルを意味する。
【0049】
なお、先に説明した工程(B)及び本工程(C)の好ましい態様として、工程(B)において、光透過性カバー部材の凹部面の少なくとも中央部に微小凹みを発生させると共に、工程(C)において微小凹み体積の70%以上に相当する光硬化性樹脂組成物を、対応する仮硬化樹脂層又は画像表示部材に塗布する態様が挙げられる。
【0050】
<工程(D):積層工程>
続いて、画像表示部材6と光透過性カバー部材1とを、仮硬化樹脂層5を介して積層する(
図4)。積層は、公知の圧着装置を用いて、10℃~80℃で加圧することにより行うことができるが、仮硬化樹脂層5と画像表示部材6又は光透過性カバー部材1との間に気泡が入らないようにするために、いわゆる真空貼合法で積層を行うことが好ましい。
【0051】
なお、工程(D)の後、工程(E)の前に、積層物に公知の加圧脱泡処理(処理条件例:0.2~0.8MPa、25~60℃、5~20min)を行うことが好ましい。
【0052】
<工程(E):本硬化工程)>
続いて、画像表示部材6と光透過性カバー部材1との間に挟持されている仮硬化樹脂層5に紫外線UVを照射して本硬化させることにより光透過性硬化樹脂層7を形成する(
図5)。これにより、目的の画像表示装置が得られる。なお、本工程において本硬化させるのは、仮硬化樹脂層5を十分に硬化させて、画像表示部材6と光透過性カバー部材1とを接着し積層するためである。このような本硬化のレベルは、光透過性硬化樹脂層7の硬化率(ゲル分率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となるようなレベルである。
【0053】
なお、光透過性硬化樹脂層7の光透過性のレベルは、画像表示部材6に形成された画像が視認可能となるような光透過性であればよい。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例において、光硬化性樹脂組成物の全硬化収縮率、仮硬化収縮率、本硬化収縮率は、光硬化性樹脂組成物の比重、仮硬化物、完全硬化物のそれぞれの比重を電子比重計(アルファーミラージュ(株)製SD-120L)を用いて測定し、それらの測定結果を次式に当て嵌めて算出した。
【0055】
【0056】
比較例1
(工程(A):塗布工程))
まず、45(w)×80(l)×3(t)mmのサイズの透明樹脂板(ポリエチレンテレフタレート板)を用意し、幅方向に曲率半径(r)が300mmとなるように公知の手法で湾曲させ、湾曲した横樋形状の光透過性カバー部材として樹脂カバー(
図1A)を得た。
【0057】
別途、ポリブタジエンの骨格を持つ(メタ)アクリル系オリゴマー(TE-2000、日本曹達(株))50質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部、光重合開始剤10質量部(Irgacure184、BASFジャパン(株)社製を3質量部、SpeedCure TPO、DKSHジャパン(株)製を7質量部)を均一に混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。この光硬化性樹脂組成物は、硬化率0%から90%までの間で、5.6%の全硬化収縮率を示すものであった。
【0058】
次に、横樋形状の樹脂カバーの両端を、外側ダム材としてシリコーンラバーシート2枚で挟み込んだ(
図1G)。この樹脂カバーの凹部に、調製した光硬化性樹脂組成物を、樹脂用ディスペンサーを用いて、中央部での厚さが880μm厚となるように吐出し光硬化性樹脂組成物膜を形成した。
【0059】
(工程(B):仮硬化工程)
次に、この光硬化性樹脂組成物膜に対して、紫外線照射装置(LC-8、浜松ホトニクス(株))を使って、積算光量が1200mJ/cm
2となるように、200mW/cm
2強度の紫外線を6秒照射することにより光硬化性樹脂組成物膜を仮硬化させて仮硬化樹脂層を形成し、更に外側ダム材を除去した。仮硬化の際に、仮硬化樹脂層の中央部に微少凹部が形成されていることが観察できた(
図2B)。なお、仮硬化収縮率は3.8%であった。
【0060】
なお、仮硬化樹脂層の硬化率は、FT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640~1620cm-1の吸収ピーク高さを指標として求めたところ、約70%であった。
【0061】
(工程(D):積層工程)
次に、40(W)×80(L)mmのサイズのフラットな液晶表示素子の偏光板が積層された面に、工程(B)で得た光透過性カバー部材をその仮硬化樹脂層側が偏光板側となるように載置し、樹脂カバー側から真空貼合機(真空度50Pa、貼合圧0.07MPa、貼合時間3秒、常温)で貼り付けた(
図4)。
【0062】
(工程(E):本硬化工程)
次に、この液晶表示素子に対し、樹脂カバー側から、紫外線照射装置(ECS-03601EG、アイグラフィックス(株))を使って紫外線(200mW/cm2)を3000mJ/cm2で照射することにより仮硬化樹脂層を完全に硬化させ、光透過性硬化樹脂層を形成した。光透過性硬化樹脂層の硬化率は98%であった。これにより、液晶表示素子に、光透過性カバー部材として湾曲した樹脂カバーが光透過性硬化樹脂層を介して積層された液晶表示装置が得られた。また、本硬化収縮率は1.8%であった。
【0063】
得られた液晶表示装置について、空隙の発生の有無を樹脂カバー側から目視観察したところ、光透過性硬化樹脂層と液晶表示素子との界面の略中央部に気泡状の空隙が生じていた。
【0064】
比較例2
光硬化性樹脂組成物として、ポリイソプレンの骨格を持つ(メタ)アクリレート系オリゴマー(UC203、(株)クラレ)40質量部、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(FA512M、日立化成(株))20質量部、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA、日本化成(株))3質量部、テトラヒドロフルフリルアクリレート(ライトエステルTHF、共栄社化学(株))15質量部、ラウリルアクリレート(ライトエステルL、共栄社化学(株))、ポリブタジエン重合体(Polyoil110、エボニック・ジャパン(株))20質量部、水添テルペン樹脂(P85、ヤスハラケミカル(株))45質量部、光重合開始剤(Irgacure184、BASFジャパン(株))4質量部を均一に配合して調製した光硬化性樹脂組成物(硬化率0%から90%までの間で、3.4%の全硬化収縮率を示す)を使用すること以外、比較例1と同様の操作で液晶表示装置を得た。
【0065】
得られた液晶表示装置について、空隙の発生の有無を樹脂カバー側から目視観察したところ、液晶表示装置(偏光板)と光透過性硬化樹脂層との界面には空隙は観察されなかったが、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察された。なお、仮硬化収縮率は3.1%であり、本硬化収縮率は0.3%であった。
【0066】
比較例3
光硬化性樹脂組成物として、光ラジカル重合性ポリ(メタ)アクリレートとしてポリイソプレンメタクリレート(UC102、(株)クラレ)6質量部、反応性希釈剤としてジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート15質量部とラウリルメタクリレート5質量部、可塑剤としてポリブタジエン(Polyvest110、エボニック・ジャパン(株))20質量部、光重合開始剤(Irgacure184、BASFジャパン(株))1質量部、及び粘着付与剤として水素添加テルペン樹脂(クリアロンM105、ヤスハラケミカル(株))53質量部を均一に配合して調製した光硬化性樹脂組成物(硬化率0%から90%までの間で、2.6%の全硬化収縮率を示す)を使用すること以外、比較例1と同様の操作で液晶表示装置を得た。
【0067】
得られた液晶表示装置について、空隙の発生の有無を樹脂カバー側から目視観察したところ、液晶表示装置(偏光板)と光透過性硬化樹脂層との界面には空隙は観察されなかったが、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察された。なお、仮硬化収縮率は2.2%であり、本硬化収縮率は0.4%であった。
【0068】
実施例1
比較例1における工程(B)と工程(D)との間で、工程(C)として、仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量の光硬化性樹脂組成物(比較例1の工程(A)で使用したものと同じ組成物)を、比較例1でも使用した樹脂用ディスペンサーを使用し、仮硬化樹脂層の中央部にライン状に塗布したこと以外は、比較例1と同様の操作により液晶表示装置を得た。なお、光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量は光硬化性樹脂組成物の使用量(体積)と仮硬化収縮率により測定し、その量は0.91ccであった。
【0069】
得られた液晶表示装置について、空隙の発生の有無を樹脂カバー側から目視観察したところ、樹脂カバーと光透過性硬化樹脂層との界面には空隙は観察されなかった。また、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察されなかった。なお、仮硬化収縮率は3.8%であり、本硬化収縮率は1.8%であった。
【0070】
実施例2
比較例1における工程(B)と工程(D)との間で、工程(C)として、仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量の光硬化性樹脂組成物(比較例1の工程(A)で使用したものと同じ組成物)を、比較例1でも使用した樹脂用ディスペンサーを使用し、仮硬化樹脂層の中央部にライン状に塗布したこと以外は、比較例1と同様の操作により液晶表示装置を得た。なお、光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量は、光硬化性樹脂組成物の使用量(体積)と仮硬化収縮率により測定したところ0.91ccであったが、その約70%に該当する0.64ccの光硬化性樹脂組成物を塗布した。
【0071】
得られた液晶表示装置について、空隙の発生の有無を樹脂カバー側から目視観察したところ、樹脂カバーと光透過性硬化樹脂層との界面には空隙は、ほとんど観察されなかった。また、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察されなかった。なお、仮硬化収縮率は3.8%であり、本硬化収縮率は1.8%であった。
【0072】
実施例3
比較例2における工程(B)と工程(D)との間で、工程(C)として、仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量の光硬化性樹脂組成物(比較例1の工程(A)で使用したものと同じ組成物)を、比較例1でも使用した樹脂用ディスペンサーを使用し、仮硬化樹脂層の中央部にライン状に塗布したこと以外は、比較例1と同様の操作により液晶表示装置を得た。なお、光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量は光硬化性樹脂組成物の使用量(体積)と仮硬化収縮率により測定し、その量は約0.74ccであった。
【0073】
得られた液晶表示装置について、空隙の発生の有無を樹脂カバー側から目視観察したところ、樹脂カバーと光透過性硬化樹脂層との界面には空隙は観察されなかった。また、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察されなかった。なお、仮硬化収縮率は3.1%であり、本硬化収縮率は0.3%であった。
【0074】
実施例4
比較例3における工程(B)と工程(D)との間で、工程(C)として、仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量の光硬化性樹脂組成物(比較例1の工程(A)で使用したものと同じ組成物)を、比較例1でも使用した樹脂用ディスペンサーを使用し、仮硬化樹脂層の中央部にライン状に対応する箇所の液晶表示素子側に塗布したこと以外は、比較例1と同様の操作により液晶表示装置を得た。なお、光硬化性樹脂組成物の仮硬化樹脂層の微少凹みに対応する量は、光硬化性樹脂組成物の使用量(体積)と仮硬化収縮率により測定し、その量は0.53ccであった。
【0075】
得られた液晶表示装置について、空隙の発生の有無を樹脂カバー側から目視観察したところ、樹脂カバーと光透過性硬化樹脂層との界面には空隙は観察されなかった。また、表示操作を行ったところ、樹脂カバーの中央の表示に色ムラが観察されなかった。なお、仮硬化収縮率は2.2%であり、本硬化収縮率は0.4%であった。
本発明の画像表示装置の製造方法は、湾曲した透過性カバー部材の凹部面に光硬化性樹脂組成物を塗布し、仮硬化処理した後、硬化収縮により生じた仮硬化樹脂層の中央部の凹みに新たに光硬化性樹脂組成物を塗布し、画像表示部材を積層し、本硬化処理を行う。このため、画像表示装置の表示面に空隙が生じないようにでき、また、光硬化樹脂層の残留応力を低減させて表示の色ムラが生じないようにできる。従って、本発明の製造方法は、タッチパネルを備えた車載用情報端末の工業的製造に有用である。
光透過性カバー部材の横樋形状の両端部の内側又は外側に、それぞれ光硬化性樹脂組成物の塗布領域を画する内側ダム材又は外側ダム材が設けられている請求項1又は2記載の製造方法。