(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130692
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】細胞増殖方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20220830BHJP
C12N 5/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12N5/078
C12N5/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108063
(22)【出願日】2022-07-05
(62)【分割の表示】P 2020213055の分割
【原出願日】2016-05-12
(31)【優先権主張番号】62/161,128
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507114521
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】ニューエン、キム スィェン デュイ
(72)【発明者】
【氏名】スターツ、トーマス パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ハワード、アレキサンダー エル.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バイオリアクターにおいて細胞を成長させる方法を提供する。
【解決手段】一実施形態として、白血球アフェレーシスプロセスを使用して、白血球及び赤血球を含む第1の複数の細胞を生成する工程と、複数の中空糸を有する中空糸型バイオリアクターに該第1の複数の細胞を投入する工程と、該第1の複数の細胞を活性化剤に曝露して、該中空糸型バイオリアクター内での該第1の複数の細胞の増殖を活性化する工程と、該中空糸型バイオリアクターの該複数の中空糸内で該第1の複数の細胞の少なくとも一部を増殖させて、第2の複数の増殖細胞を生成する工程と、該中空糸型バイオリアクターから該第2の複数の増殖細胞を取り出す工程と、を有する、細胞増殖方法である。前記活性化剤は、種々の形態をとり、例えば、抗原提示細胞或いは抗体によって機能化されたビーズである。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球アフェレーシスプロセスを使用して、白血球及び赤血球を含む第1の複数の細胞を生成する工程と、
複数の中空糸を有する中空糸型バイオリアクターに前記第1の複数の細胞を投入する工程と、
前記第1の複数の細胞を活性化剤に曝露して、前記中空糸型バイオリアクター内での前記第1の複数の細胞の増殖を活性化する工程と、
前記中空糸型バイオリアクターの前記複数の中空糸内で前記第1の複数の細胞の少なくとも一部を増殖させて、第2の複数の増殖細胞を生成する工程と、
前記中空糸型バイオリアクターから前記第2の複数の増殖細胞を取り出す工程と、を有する、細胞増殖方法。
【請求項2】
請求項1記載の細胞増殖方法であって、前記第1の複数の細胞の一部がT細胞を含む、細胞増殖方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の細胞増殖方法であって、前記第1の複数の細胞は、追加の精製過程を経ることなく前記中空糸型バイオリアクターに投入される、細胞増殖方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記第1の複数の細胞は、血小板を含む、細胞増殖方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記第1の複数の細胞は、顆粒球を含む、細胞増殖方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記第1の複数の細胞の前記活性化剤への曝露は、前記第1の複数の細胞を、表面上に前記活性化剤を含むビーズに曝露させる工程を含む、細胞増殖方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記第1の複数の細胞の前記活性化剤への曝露は、前記第1の複数の細胞を、前記活性化剤を有する樹状細胞に曝露させる工程を含む、細胞増殖方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記活性化剤は、1又は複数の抗原を含む、細胞増殖方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記活性化剤は、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD28抗体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1又は複数の抗体を含む、細胞増殖方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記諸工程が閉鎖系システムで行われる、細胞増殖方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞増殖方法であって、前記第1の複数の細胞の増殖は、培地を前記中空糸型バイオリアクター内で循環する工程を含む、細胞増殖方法。
【請求項12】
請求項11記載の細胞増殖方法であって、前記培地が、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン7(IL-7)、及びインターロイキン15(IL-15)のいずれか1つ又はこれらの組み合わせを含む、細胞増殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年5月13日に出願された米国特許仮出願第62/161,128号明細書(タイトル:細胞の増殖)の優先権を主張するものであり、該米国特許仮出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞増殖システム(CES)は、研究及び治療の目的のために用いられる種々の細胞を増殖・分化させるために使用される。一例として、T細胞療法(例えば、自己T細胞療法)は、多くの疾患を治療するための新しい技術である。例えば、生体外で遺伝子操作され増殖されたT細胞は、白血病(例えば、B細胞)やその他の癌の治療法として有望である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、T細胞の増殖は、バッグシステムやシステム内において行われているが、そのようなシステムは完全に自動化されておらず、また機能的に閉鎖されていない。
【0004】
本発明の実施形態は、上記の点及び他の点を考慮してなされた。しかしながら、ここで記載される課題は、本発明の実施形態の用途を、制限するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本節は、本発明のいくつかの実施形態の態様を簡単な形式で説明するためのものであり、主張される本発明の重要な又は必須の要素を特定することを意図していないし、また、請求項の範囲を制限することを意図しているものでもない。
【0006】
実施形態は、細胞増殖システムのバイオリアクターにおいて細胞を成長させる細胞増殖システム(CES)及び方法に係る。実施形態では、中空糸型バイオリアクターのようなバイオリアクターにおいて細胞を増殖する。実施形態において、細胞(例えば、T細胞)は、複数の中空糸を含む中空糸型バイオリアクターに導入される。実施形態において、第1の複数の細胞は、活性化剤に曝露されて、前記中空糸型バイオリアクターにおける前記細胞の増殖が活性化される。実施形態において、前記活性化剤は、細胞又は(例えば、ビーズ上に)結合された抗原又は可溶性抗原である。細胞を活性化剤に曝露した後、前記細胞を増殖して、第2の複数の増殖細胞を生成する。そして、前記第2の増殖細胞は前記バイオリアクターから取り出される。
【0007】
他の実施形態では、細胞を増殖するための細胞増殖システムが提供される。実施形態において、該システムは、少なくとも両端部を有する第1流体流路を備える中空糸型バイオリアクターを備える。前記第1流体流路の第1端部は、前記中空糸型バイオリアクターの第1ポートと流体的に関連付けられ、前記第1流体流路の第2端部は、前記中空糸型バイオリアクターの第2ポートと流体的に関連付けられ、前記第1流体流路は、前記中空糸型バイオリアクターの毛細管内側部分を有する。前記第1流体流路と流体的に関連付けられた流体入口路を用いて、前記第1流体流路には、複数の細胞が導入される。前記第1流体流路において流体を循環させるポンプがさらに設けられる。
【0008】
システムは、命令を実行するプロセッサを有する。該プロセッサによって命令が実行されると、白血球を含む第1の複数の細胞を含む第1の流体を、前記中空糸型バイオリアクターの前記毛細管内側部分へ導入するステップを有する方法が実行される。該プロセッサはさらに、前記毛細管内側部分において前記第1の複数の細胞を第1の活性化剤へ曝露し、前記中空糸型バイオリアクターにおける前記第1の複数の細胞の増殖を活性化させるステップを行う命令を実行する。該プロセッサは、培地を含む第2の流体を前記毛細管内側部分に導入し、前記第1の複数の細胞のうちの少なくとも一部の細胞を増殖させ、第2の複数の増殖細胞を生成するステップを行うための命令を実行する。該プロセッサは、前記バイオリアクターから前記第2の複数の増殖細胞を取り出すステップを行うための命令を実行する。
【0009】
非制限的且つ非包括的な実施形態が、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る中空糸型バイオリアクターの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る、予め設けられた流体搬送装置を備えた細胞増殖システムの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る細胞増殖システムのハウジングの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る、予め設けられる流体搬送装置の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る細胞増殖システムの概略図である。
【
図6】
図6は、細胞増殖システムの他の実施形態の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る細胞増殖プロセスのフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態を実施するために使用されるコンピュータシステムの構成要素を示す図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る、培養中の種々の時点における総細胞数を示す棒グラフである。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る、培養中の種々の時点における細胞生存率を示す棒グラフである。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る、精製細胞の投入及び非精製細胞の投入に対する樹状細胞数を示す棒グラフである。
【
図12】
図12は、一実施形態に係る、培養中の種々の時点における(また細胞投入における種々の純度に対する)総細胞数を示す棒グラフである。
【
図13】
図13は、一実施形態に係る、培養中の種々の時点における(また細胞投入における種々の純度に対する)細胞生存率を示す棒グラフである。
【
図14】
図14は、一実施形態に係る、細胞の表現型分布(cell phenotype distribution)を示す棒グラフである。
【
図15】
図15は、一実施形態に係る、種々のサイトカインの組み合わせ及び種々の投与方法の比較を示す棒グラフである。
【
図16】
図16は、一実施形態に係る、異なる循環レート及び異なるリアクター動作における生存細胞数を示す棒グラフである。
【
図17】
図17は、一実施形態に係る、異なるサイトカインの組み合わせで培養を行った場合の種々の時点における総収穫細胞数を示す棒グラフである。
【
図18】
図18は、一実施形態に係る、異なる活性化剤を用いた場合の細胞の収率を示す棒グラフである。
【
図19】
図19は、一実施形態に係る、異なる活性化剤を用いた場合の細胞表現型を示す棒グラフである。
【
図20】
図20は、一実施形態に係る、サイトカインの産生を示すグラフである。
【
図21】
図21は、他の実施形態に係る、サイトカインの産生を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の原理は、以下の詳細な説明及び添付図面に示される実施形態を参照することで、さらに理解されよう。詳細な実施形態において具体的な特徴が示され説明されるが、本発明は、以下で説明される実施形態に限定されないと理解されるべきである。
【0012】
以下では、添付図面に示される実施形態が詳細に言及され説明される。可能な限り、図面及び以下の記載において、同一又は同様な部分に対しては、同じ参照符号が使用される。
【0013】
図1は、本発明と共に使用される中空糸型バイオリアクター100の一例の正面図を示す。中空糸型バイオリアクター100は、長手方向軸LA-LAを有し、チャンバーハウジング104を備える。少なくとも1つの実施形態において、チャンバーハウジング104は、4つの開口部又は4つのポート、すなわち、IC入口ポート108、IC出口ポート120、EC入口ポート128、EC出口ポート132を有する。
【0014】
本開示の実施形態において、第1循環路内の流体は、中空糸型バイオリアクター100の第1の長手方向端112におけるIC入口ポート108を通って中空糸型バイオリアクター100に進入し、複数の中空糸116の毛細管内側(種々の実施形態において、中空糸膜の毛細管内(「IC」)側又は「IC空間」と呼ぶ)に進入して通過し、中空糸型バイオリアクター100の第2の長手方向端124に位置するIC出口ポート120を通って中空糸型バイオリアクター100の外に出る。IC入口ポート108とIC出口ポート120との間の流体経路は、中空糸型バイオリアクター100のIC部分126を定義する。第2循環路内の流体は、EC入口ポート128を通って中空糸型バイオリアクター100に進入し、中空糸116の毛細管外側又は外側(該膜の「EC側」又は「EC空間」と呼ぶ)に接触して、EC出口ポート132を通って中空糸型バイオリアクター100の外に出る。EC入口ポート128とEC出口ポート132との間の流体経路は、中空糸型バイオリアクター100のEC部分136を構成する。EC入口ポート128を通って中空糸型バイオリアクター100に入った流体は、中空糸116の外側に接触する。小分子(例えば、イオン、水、酸素、乳酸等)は、中空糸116を通じて中空糸の内部すなわちIC空間から外部すなわちEC空間へ、又はEC空間からIC空間へ拡散することができる。成長因子のような高分子量の分子は、通常は、大きすぎるため中空糸を通過できず、中空糸116のIC空間内にとどまる。培地は、必要であれば交換補充してもよい。また、必要であれば、培地を、酸素供給装置又はガス移送モジュールを通じて循環させて、ガスを交換してもよい(例えば、細胞増殖システム500(
図5)や細胞増殖システム600(
図6)を参照)。細胞は、以下で説明されるように、第1循環路及び/又は第2循環路内に含有させることができ、該膜のIC側及び/又はEC側に存在させることができる。
【0015】
中空糸膜を作製するのに用いられる材料は、中空糸に加工可能な任意の生体適合性高分子材料でよい。本開示の実施形態において、使用可能な一材料としては、合成ポリスルホン系材料が挙げられる。細胞を中空糸の表面に付着させるため、該表面は、少なくとも細胞成長表面をフィブロネクチンやコラーゲンのようなタンパク質でコーティングしたり或いは該表面に放射線を照射したりするような方法で、改質されてよい。膜表面をガンマ線処理することによって、膜に対してフィブロネクチン等による追加コーティングを行わずに、接着性細胞を付着させることが可能になる。ガンマ線処理を行った膜で作製されたバイオリアクターは、再利用することができる。本開示の実施形態において、細胞付着のための他のコーティング及び/又は他の処理を用いてもよい。
【0016】
図2において、本開示の実施形態に係る、予め設けられた流体輸送組立体を有する細胞増殖システム200の一実施形態が示される。CES200は、細胞増殖装置202を有する。細胞増殖装置202は、細胞増殖装置202の後側部分206と係合するハッチ又は開閉可能なドア204を有する。細胞増殖装置202内の内部空間208は、バイオリアクター100を含む予め設けられた流体輸送組立体210を受容し係合固定できるような特徴を有する。予め設けられた流体輸送組立体210は、細胞増殖装置202に取り外し可能に取り付けられており、細胞増殖装置202において、使用された流体輸送組立体210を、新しい又は未使用の流体輸送組立体210に比較的迅速に交換できるようになっている。単一の細胞増殖装置202の動作によって、第1の流体輸送組立体210を用いて細胞の第1のセットを成長又は増殖させ、その後、第1の流体輸送組立体210を第2の流体輸送組立体210に交換する際に殺菌することなく、第2の流体輸送組立体210を用いて細胞の第2のセットを成長又は増殖させることができる。予め設けられた流体輸送組立体は、バイオリアクター100と酸素供給器又はガス移送モジュール212を有する。実施形態において、流体輸送組立体210に接続される種々の培地用配管を受容する配管案内スロットが214として示される。
【0017】
図3は、本開示の実施形態に係る、予め設けられた流体輸送組立体210(
図2参照)を取り外し可能に取り付ける前の、細胞増殖装置202の後側部分206を示す。開閉可能なドア204(
図2参照)は、
図3では省略されている。細胞増殖装置202の後側部分206には、流体輸送組立体210の構成要素と組み合わせて動作する複数の異なる構造が設けられている。詳細には、細胞増殖装置202の後側部分206は、流体輸送組立体210におけるポンプループと協働する複数の蠕動ポンプ(IC循環ポンプ218、EC循環ポンプ220、IC入口ポンプ222、EC入口ポンプ224)を有する。また、細胞増殖装置202の後側部分206は、複数のバルブ(IC循環バルブ226、試薬バルブ228、IC培地バルブ230、空気除去バルブ232、細胞入口バルブ234、洗浄バルブ236、分配バルブ238、EC培地バルブ240、IC廃棄バルブ242、EC廃棄バルブ244、収穫バルブ246)を有する。さらに、複数のセンサ(IC出口圧力センサ248、IC入口圧力/温度センサ250、EC入口圧力/温度センサ252、EC出口圧力センサ254)が、細胞増殖装置202の後側部分206に関連付けられる。さらに、空気除去チャンバーのための光学センサ256が示されている。
【0018】
実施形態に係る、バイオリアクター100を回転させるための軸又はロッカー制御部258が、
図3に示されている。軸又はロッカー制御部258と関連付けられた軸嵌合部260によって、細胞増殖装置202の後側部分206に対して、流体輸送組立体210又は流体輸送組立体400の軸アクセス開口部(例えば、配管収納部300(
図4)の開口部424(
図4))の適切な位置合わせが行える。軸又はロッカー制御部258の回転によって、軸嵌合部260及びバイオリアクター100に対して回転運動が付与される。従って、CES200のオペレータ又はユーザが、新しい又は未使用の流体輸送組立体400(
図4)を、細胞増殖装置202に取り付ける際、位置合わせは、軸嵌合部260に対して、流体輸送組立体210又は流体輸送組立体400の軸アクセス開口部424(
図4)を適切に方向付けるといった比較的簡単な作業となる。
【0019】
図4は、取り付け・取り外し自在の予め取り付けられる流体輸送組立体400の斜視図である。予め取り付けられる流体輸送組立体400は、細胞増殖装置202に取り外し可能に取り付けられており、細胞増殖装置202において、使用された流体輸送組立体400を、新しい又は未使用の流体輸送組立体400に比較的迅速に交換できるようになっている。
図4に示されるように、バイオリアクター100は、軸嵌合部402を含むバイオリアクターカップリングに取り付けられる。軸嵌合部402は、細胞増殖装置202の軸(
図3に示されている例えば、軸258)を係合させるための1以上の(付勢された腕部又はバネ部材404のような)軸締結機構を有する。
【0020】
実施形態において、シャフトフィッティング402及びバネ部材404には、バイオリアクター100を回転させる細胞増殖システムの機構が接続される。例えば、いくつかの実施形態において、細胞増殖システムは、バイオリアクターを回転可能なQUANTUM(登録商標)細胞増殖システム(CES)(コロラド州、レイクウッド、テルモBCT社製)の一部であってもよい。バイオリアクターを回転可能な細胞増殖システムの例としては、少なくとも、2013年3月19日発行の米国特許第8,399,245号明細書(タイトル:細胞増殖システムの細胞成長チャンバーのための回転システム及びその使用方法)、2013年2月13日発行の米国特許第8,809,043号明細書(タイトル:細胞増殖システムの細胞成長チャンバーのための回転システム及びその使用方法)、及び2015年6月16日発行の米国特許第9,057,045号明細書(タイトル:細胞増殖システムのバイオリアクターにおける細胞の投入及び分散方法)に記載されている。上記米国特許出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0021】
実施形態によれば、流体輸送組立体400は、配管408A、408B、408C、408D、408E等及び種々の管継手を有する。これらにより、以下で説明されるように、
図5~
図9に示されるような流体路が提供される。ポンプループ406A、406B、406Cも、ポンプ用に設けられる。細胞増殖装置202が配置される場所に、種々の培地が設けられてもよいが、実施形態において、プリマウントタイプの流体輸送組立体400は、細胞増殖装置202の外部に延在する程度に十分な長さの配管を有することで、該配管に対して培地バッグに関連付けられた配管が接合されてもよい。
【0022】
図5は、細胞増殖システム500の実施形態の概略図である。
図6は、他の実施形態である細胞増殖システム600の概略図である。
図5及び
図6に示される実施形態では、以下で説明するように、細胞は、IC空間で成長される。しかしながら、本発明は、そのような例に限定されない。他の実施形態では、細胞はEC空間で成長されてもよい。
【0023】
図5は、実施形態に係るCES500を示している。CES500は、第1流体循環路502(「毛細管内側ループ」又は「ICループ」とも呼ぶ)と第2流体循環路504(「毛細管外側ループ」又は「ECループ」とも呼ぶ)とを有する。第1流体流路506は、中空糸型バイオリアクター501に流体的に関連付けられて、少なくとも部分的に第1流体循環路502を構成する。流体は、IC入口ポート501Aを介して中空糸型バイオリアクター501に流入し、中空糸型バイオリアクター501内の中空糸を通って、IC出口ポート501Bを介して流出する。圧力測定器510は、中空糸型バイオリアクター501を離れる培地の圧力を測定する。培地は、培地流量/循環流量を制御するために用いられるIC循環ポンプ512を介して、流れる。IC循環ポンプ512は、第1方向(例えば、時計回り)又は第1方向の反対の第2方向(例えば、反時計回り)に、流体をポンピング可能である。出口ポート501Bは、逆方向では、入口として使用することができる。ICループ502に流入する培地は、バルブ514を介して流入する。当業者であれば理解できるように、追加のバルブ及び/又は他の装置を種々の位置に配置して、流体経路の特定の部分に沿って、培地を隔離し及び/又は該培地の特性を測定することもできる。従って、示される概略図は、CES500の複数の要素に対する1つの可能な構成を示すものであり、1以上の実施形態の範囲において、概略図は変形可能であると理解されるべきである。
【0024】
ICループ502に対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート516又はサンプルコイル518から得られる。第1流体循環路502に配置された圧力/温度測定器520によって、動作中において、培地の圧力及び温度が測定できる。そして、培地は、IC入口ポート501Aに戻って、流体循環路502を完了する。中空糸型バイオリアクター501で成長/増殖した細胞は、中空糸型バイオリアクター501から流し出され、バルブ598を通って収穫バッグ599に入るか、中空糸内に再分配され、さらに成長される。以下では、これが詳細に説明される。
【0025】
第2流体循環路504において、流体は、EC入口ポート501Cを介して、中空糸型バイオリアクター501に入り、EC出口ポート501Dを介して中空糸型バイオリアクター501を離れる。ECループ504では、培地は、中空糸型バイオリアクター501の中空糸の外側と接触し、それによって、小分子の中空糸への及び中空糸からの拡散が可能となる。
【0026】
培地が中空糸型バイオリアクター501のEC空間に入る前に、第2流体循環路504に配置された圧力/温度測定器524によって、該培地の圧力及び温度が測定可能である。培地が中空糸型バイオリアクター501を離れた後、圧力測定器526によって、第2流体循環路504の培地の圧力が測定可能である。ECループに対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート530から又はサンプルコイルから得られる。
【0027】
実施形態において、中空糸型バイオリアクター501のEC出口ポート501Dを離れた後、第2流体循環路504の流体は、EC循環ポンプ528を通って、酸素供給器又はガス移送モジュール532に至る。EC循環ポンプ528は、両方向に流体をポンピング可能である。第2流体流路522は、酸素供給器入口ポート534及び酸素供給器出口ポート536を介して酸素供給器又はガス移送モジュール532と流体的に関連付けられている。動作中は、流体培地は、酸素供給器入口ポート534を介して、酸素供給器又はガス移送モジュール532に流入し、酸素供給器出口ポート536を介して、酸素供給器又はガス移送モジュール532から流出する。酸素供給器又はガス移送モジュール532は、CES500における培地に対して、酸素を付加し、気泡を除去する。種々の実施形態において、第2流体循環路504における培地は、酸素供給器又はガス移送モジュール532に入るガスと平衡状態にある。酸素供給器又はガス移送モジュール532は、適当なサイズの任意の酸素供給器又はガス移送装置でよい。空気又はガスは、フィルタ538を介して酸素供給器又はガス移送モジュール532に流入し、フィルタ540を介して、酸素供給器又はガス移送装置532から流出する。フィルタ538、540は、酸素供給器又はガス移送モジュール532及び関連する培地の汚染を減少又は防止する。プライミング工程の一部を行っている際にCES500からパージされた空気又はガスは、酸素供給器又はガス移送モジュール532を介して大気にベント可能である。
【0028】
CES500を図示した構成において、第1流体循環路502及び第2流体循環路504における流体培地は、同じ方向で(並流構成で)中空糸型バイオリアクター501を流れる。CES500は、対向流で流れるように構成してもよい。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、(バッグ562からの)細胞を含む培地及び容器546からの流体培地は、第1流体流路506を介して第1流体循環路502に導入される。流体容器562(例えば、細胞投入バッグ又は空気をシステム外にプライミングするための生理食塩水プライミング流体)は、バルブ564を介して、第1流体流路506及び第1流体循環路502に流体的に関連付けられる。
【0030】
流体容器、すなわち培地バッグ544(例えば、試薬)は、バルブ548を介して第1流体入口路542に流体的に関連付けられ、流体容器、すなわち培地バッグ546(例えば、IC培地)は、バルブ550を介して第1流体入口路542に流体的に関連付けられ、又はバッグ544、546は、バルブ548、550、570を介して第2流体入口路574に流体的に関連付けられる。また、滅菌され密封可能な第1及び第2入力プライミング路508、509が設けられる。空気除去チャンバー(ARC)556が、第1循環路502に流体的に関連付けられる。空気除去チャンバー556は、1以上の超音波センサを有してもよい。該センサには、空気除去チャンバー556内における特定の測定点において、空気、流体の不足、及び/又はガス/流体境界、例えば、空気/流体境界、を検知するための上部センサ及び下部センサが含まれる。例えば、空気除去チャンバー556の底部近傍及び/又は頂部近傍で、超音波センサを用いて、それらの場所における空気、流体、及び/又は空気/流体境界を検知することができる。実施形態において、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、他のタイプのセンサを使用することができる。例えば、本開示の実施形態に従って、光学センサを使用してもよい。プライミング工程の一部又はその他のプロトコルを行っている際にCES500からパージされる空気又はガスは、空気除去チャンバー556と流体的に関連付けられたライン558を通って、エアバルブ560から大気中へベント可能である。
【0031】
(バッグ568からの)EC培地又は(バッグ566からの)洗浄液が第1流体流路又は第2流体流路に加えられる。流体容器566は、バルブ570と流体的に関連付けられる。バルブ570は、分配バルブ572及び第1流体入口路542を介して第1流体循環路502と流体的に関連付けられる。また、バルブ570を開け、分配バルブ572を閉じることにより、流体容器566は、第2流体入口路574及びEC入口路584を介して第2流体循環路504と流体的に関連付けることができる。同様に、流体容器568は、バルブ576と流体的に関連付けられる。バルブ576は、第1流体入口路542及び分配バルブ572を介して第1流体循環路502と流体的に関連付けられる。また、バルブ576を開け、分配バルブ572を閉じることにより、流体容器568は、第2流体入口路574と流体的に関連付けることができる。オプションとして、培地試薬又は洗浄液の導入用に熱交換器552を設けてもよい。
【0032】
ICループにおいて、流体はまず、IC入口ポンプ554によって送られる。ECループでは、流体はまず、EC入口ポンプ578によって送られる。超音波センサのようなエア検知器580がEC入口路584と関連付けられてもよい。
【0033】
少なくとも1つの実施形態において、第1及び第2流体循環路502、504は、廃棄ライン588と接続される。バルブ590を開けると、IC培地は、廃棄ライン588を介して、廃棄バッグすなわち出口バッグ586に至る。同様に、バルブ582を開けると、EC培地は、廃棄ライン588を介して廃棄バッグすなわち出口バッグ586に流れる。
【0034】
実施形態において、細胞は、細胞収穫路596を介して収穫される。中空糸型バイオリアクター501からの細胞は、細胞を含むIC培地をポンピングすることにより、細胞収穫路596及びバルブ598を介して、細胞収穫バッグ599に収穫される。
【0035】
CES500の各部品は、細胞増殖装置202(
図2及び
図3)のような装置又はハウジング内に収容され、該装置は、細胞及び培地を所定温度に維持する。
【0036】
図6は、細胞増殖システム600の他の実施形態の概略図である。CES600は、第1流体循環路602(「毛細管内側ループ」又は「ICループ」とも呼ぶ)と第2流体循環路604(「毛細管外側ループ」又は「ECループ」とも呼ぶ)とを有する。第1流体流路606は、中空糸型バイオリアクター601に流体的に関連付けられて、第1流体循環路602を構成する。流体は、IC入口ポート601Aを介して中空糸型バイオリアクター601に流入し、中空糸型バイオリアクター601内の中空糸を通って、IC出口ポート601Bを介して流出する。圧力センサ610は、中空糸型バイオリアクター601を離れる培地の圧力を測定する。圧力の他に、実施形態において、センサ610は、作動中において、培地圧力及び培地温度を検知する温度センサであってもよい。
【0037】
培地は、培地流量又は循環流量を制御するために用いられるIC循環ポンプ612を介して、流れる。IC循環ポンプ612は、第1方向(例えば、反時計回り)又は第1方向の反対の第2方向(時計回り)に、流体をポンピング可能である。出口ポート601Bは、逆方向では、入口として使用することができる。ICループに流入する培地は、バルブ614を介して流入することができる。当業者であれば理解できるように、追加のバルブ及び/又は他の装置を種々の位置に配置することにより、流体経路の特定の部分に沿って、培地を隔離し及び/又は該培地の特性を測定することもできる。培地のサンプルは、動作中に、サンプルコイル618から得られる。そして、培地は、IC入口ポート601Aに戻って、流体循環路602を完了する。
【0038】
中空糸型バイオリアクター601で成長/増殖した細胞は、中空糸型バイオリアクター601から流し出され、バルブ698及びライン697を介して収穫バッグ699に入る。或いは、バルブ698が閉じている場合、細胞は、中空糸型バイオリアクター601に再分配され、さらに成長される。示される概略図は、CES600の複数の要素に対する1つの可能な構成を示すものであり、概略図に対する変更は、1以上の実施形態の範囲において可能であると理解されるべきである。
【0039】
第2流体循環路604において、流体は、EC入口ポート601Cを介して、中空糸型バイオリアクター601に入り、EC出口ポート601Dを介して中空糸型バイオリアクター601を離れる。ECループでは、培地は、中空糸型バイオリアクター601の中空糸の外側と接触し、それによって、一実施形態では、チャンバー601内における小分子の中空糸への及び中空糸からの拡散が可能となる。
【0040】
培地が中空糸型バイオリアクター601のEC空間に入る前に、第2流体循環路604に配置された圧力/温度センサ624によって、該培地の圧力及び温度を測定することができる。培地が中空糸型バイオリアクター601を離れた後に、センサ626によって、第2流体循環路604の培地の圧力及び/又は温度を測定することができる。ECループに対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート630から又はサンプルコイルから得られる。
【0041】
中空糸型バイオリアクター601のEC出口ポート601Dを離れた後、第2流体循環路604の流体は、EC循環ポンプ628を通って、酸素供給器又はガス移送モジュール632に至る。実施形態において、EC循環ポンプ628もまた、両方向に流体をポンピング可能である。第2流体流路622は、酸素供給器又はガス移送モジュール632の入口ポート632A及び出口ポート632Bを介して酸素供給器又はガス移送モジュール632と流体的に関連付けられている。動作中は、流体培地は、入口ポート632Aを介して、酸素供給器又はガス移送モジュール632に流入し、出口ポート632Bを介して、酸素供給器又はガス移送モジュール632から流出する。酸素供給器又はガス移送モジュール632は、CES600における培地に対して、酸素を付加し、気泡を除去する。
【0042】
種々の実施形態において、第2流体循環路604における培地は、酸素供給器又はガス移送モジュール632に入るガスと平衡状態にある。酸素供給器又はガス移送モジュール632は、酸素供給又はガス移送に有用な、適当なサイズの任意の装置でよい。空気又はガスは、フィルタ638を介して酸素供給器又はガス移送モジュール632に流入し、フィルタ640を介して、酸素供給器又はガス移送装置632から流出する。フィルタ638、640は、酸素供給器又はガス移送モジュール632及び関連する培地の汚染を減少又は防止する。プライミング工程の一部を行っている際にCES600からパージされた空気又はガスは、酸素供給器又はガス移送モジュール632を介して大気にベント可能である。
【0043】
CES600として示された該構成において、第1流体循環路602及び第2流体循環路604における流体培地は、同じ方向で(並流構成で)中空糸型バイオリアクター601を流れる。ある実施形態において、CES600は、対向流で流れるように構成してもよい。
【0044】
少なくとも1つの実施形態において、(細胞容器、例えばバッグのような供給源からの)細胞を含む培地は、取り付け点662に取り付けられ、培地源からの流体培地は、取り付け点646に取り付けられる。細胞及び培地は、第1流体流路606を介して第1流体循環路602に導入される。取り付け点662は、バルブ664を介して、第1流体流路606と流体的に関連付けられる。取り付け点646は、バルブ650を介して、第1流体流路606と流体的に関連付けられる。試薬源を、点644に流体的に接続して、バルブ648を介して流体入口路642に関連付けてもよいし、又はバルブ648及び672を介して第2流体入口路674に関連付けてもよい。
【0045】
空気除去チャンバー(ARC)656が、第1循環路602に流体的に関連付けられる。空気除去チャンバー656は、1以上のセンサを有してもよい。該センサには、空気除去チャンバー656内における特定の測定点において、空気、流体の不足、及び/又はガス/流体境界、例えば、空気/流体境界、を検知するための上部センサ及び下部センサが含まれる。例えば、空気除去チャンバー656の底部近傍及び/又は頂部近傍で、超音波センサを用いて、それらの場所における空気、流体、及び/又は空気/流体境界を検知することができる。実施形態において、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、他のタイプのセンサを使用することができる。例えば、本開示の実施形態に従って、光学センサを使用してもよい。プライミング工程の一部又はその他のプロトコルを行っている際にCES600からパージされる空気又はガスは、空気除去チャンバー656と流体的に関連付けられたライン658を通って、エアバルブ660から大気中へベント可能である。
【0046】
EC培地源が、EC培地取り付け点668に取り付けられる。洗浄液源が、洗浄液取り付け点666に取り付けられる。これにより、EC培地及び/又は洗浄液が第1流体流路又は第2流体流路に加えられる。取り付け点666は、バルブ670と流体的に関連付けられる。バルブ670は、バルブ672及び第1流体入口路642を介して第1流体循環路602と流体的に関連付けられる。また、バルブ670を開け、バルブ672を閉じることにより、取り付け点666は、第2流体入口路674及び第2流体流路684を介して第2流体循環路604と流体的に関連付けることができる。同様に、取り付け点668は、バルブ676と流体的に関連付けられる。バルブ676は、第1流体入口路642及びバルブ672を介して第1流体循環路602と流体的に関連付けられる。また、バルブ676を開け、分配バルブ672を閉じることにより、流体容器668を、第2流体入口路674と流体的に関連付けることができる。
【0047】
ICループにおいて、流体はまず、IC入口ポンプ654によって送られる。ECループでは、流体はまず、EC入口ポンプ678によって送られる。超音波センサのようなエア検知器680がEC入口路684と関連付けられてもよい。
【0048】
少なくとも1つの実施形態において、第1及び第2流体循環路602、604は、廃棄ライン688に接続される。バルブ690を開けると、IC培地は、廃棄ライン688を通って、廃棄バッグ又は出口バッグ686に至る。同様に、バルブ692を開けると、EC培地は、廃棄バッグ又は出口バッグ686に流れる。
【0049】
細胞が中空糸型バイオリアクター601にて成長された後、該細胞は、細胞収穫路697を介して収穫される。中空糸型バイオリアクター601からの細胞は、バルブ698を開けた状態において、細胞を含むIC培地をポンピングすることにより、細胞収穫路697を介して、細胞収穫バッグ699に収穫される。
【0050】
CES600の各部品は、細胞増殖装置202(
図2及び
図3)のような装置又はハウジング内に収容され、該装置は、細胞及び培地を所定温度に維持する。さらに、実施形態において、CES600とCES500(
図5)の部品を組み合わせてもよい。他の実施形態において、CESは、本開示の範囲内において、
図5及び
図6に示される部品よりも少ない数の部品を含んでもよいし、多い数の部品を含んでもよい。実施形態において、CES500、CES600のある部分は、テルモBCT社(コロラド州、レイクウッド)によって製造されるQUANTUM(登録商標)細胞増殖システム(CES)の1以上の特徴によって実施される。
【0051】
CES600を用いたある特定の実施形態において、T細胞がCES600において増殖される。この実施形態では、T細胞は、白血球アフェレーシスプロセスによって集められ、バイオリアクター601に導入される。T細胞はバイオリアクター601に導入されて、経路602に入る。
【0052】
いくつかの実施形態において、T細胞は、バイオリアクター601に導入する前に、精製される(purified)。精製プロセスにおいては、遠心分離機及び/又は精製用カラムが使用される。精製プロセスでは、例えば、ミルテニーバイオテク社(ドイツ、ベルギッシュ・グラートバッハ)のLSカラム及び/又はビーズ(例えば、機能性ビーズ)が使用される。
【0053】
しかしながら、ある実施形態では、T細胞は、白血球アフェレーシスプロセスによる集約後、精製過程を経ずに、直接、バイオリアクター601に付加される場合もある。いくつかの実施形態において、T細胞の成長は、他の細胞をT細胞と一緒にバイオリアクターへ導入することによって、増進されると考えられる。従って、T細胞は精製されずに、その他の赤血球、血小板、顆粒球、及び/又は白血球と一緒にバイオリアクターへ投入されてもよい。一実施形態では、未精製のT細胞を投入した場合、T細胞のほとんどが増殖し、その結果、増殖後にバイオリアクターから取り出した細胞のうちの約90%を超える量、又は約95%を超える量、又は約98%を超える量、或いは約99%を超える量、がT細胞であり、残りの細胞は、赤血球、血小板、顆粒球、他の白血球、及び/又はそれらの組み合わせである。一実施形態では、未精製のT細胞を投入した場合、T細胞のほとんどが増殖し、その結果、増殖後にバイオリアクターから取り出した細胞のうちの約100%未満、又は約99%未満、又は約98%未満、又は約97%未満、又は約96%未満、又は約95%未満、又は約94%未満、又は約93%未満、又は約92%未満、又は約91%未満、又は約90%未満、がT細胞である。
【0054】
いくつかの実施形態において、T細胞は、プライミング工程の後、バイオリアクター601に加えられる。理解されるように、いくつかのT細胞は非接着性であり、従って、増殖(expansion/proliferation)のために、バイオリアクター601の中空糸壁に付着する必要がない。これらの実施形態では、付着を促進するためのコーティング剤(例えば、フィブロネクチン)で、中空糸の内側をコートする必要がない。この場合、(精製又は未精製の)T細胞は、プライミング工程の後、バイオリアクターコーティング工程を行わずに、バイオリアクター601に導入される。
【0055】
バイオリアクター601に入ると、細胞は、細胞の増殖を活性化するための活性化剤にさらされる。一例において、抗原提示細胞が、バイオリアクター601に予め導入される、或いはバイオリアクター601において予め成長される。一実施形態では、T細胞を加える前に、単球由来樹状細胞がバイオリアクター601において成長される。いくつかの実施形態において、抗原提示細胞を使用する場合、抗原提示細胞の増殖のために最適化された条件下で最初に成長プロセスが行われる。
【0056】
他の実施形態において、抗体で機能化されたビーズがバイオリアクター601に加えられる。他の実施形態では、そのようなビーズは、細胞がバイオリアクターに導入される前に、細胞を含む容器(例えば、T細胞の入ったバッグ)に加えられる。抗体はT細胞の増殖を活性化する。使用されるビーズの例としては、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(マサチューセッツ州、ウォルサム)製のビーズであるDYNABEADSが挙げられる。いくつかの実施形態において、ビーズは、抗体によって表面が機能化される。制限はされないが、そのような抗体の例としては、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD28抗体、抗CD34抗体等が挙げられる。
【0057】
他の実施形態においては、活性化剤は、流体(例えば、溶液)の形態をとる。活性化剤含有流体は、1以上の活性化剤を含む(例えば、抗原)。抗原の他に、流体は、他の成分を含んでもよい。制限はされないが、例としては、タンパク質、界面活性剤、試薬、緩衝剤等が挙げられる。可溶性の共刺激シグナルを含む流体の一例は、IMMUNOCULT(商標)ヒトCD3/CD28 T細胞活性化剤(STEMCELL Technologies社、カナダ)である。
【0058】
細胞が活性化剤に曝露された後(そして、継続して曝露されている間)、細胞はバイオリアクター601において増殖が行われる。増殖中、多くの数の物質が、バイオリアクター601へ加えられたり、バイオリアクター601から取り出されたりする。例えば、サイトカインを用いて、T細胞の増殖が刺激される。いくつかの実施形態において、単一のサイトカインが使用される。使用されるサイトカインとしては、以下に制限されないが、例えば、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン15(IL-15)、及びそれらの組み合わせ等が挙げられる。他の実施形態では、IL-2だけが用いられる。或いは、IL-2がIL-7と一緒に用いられる。或いは、IL-7だけが用いられる。或いは、IL-7がIL-15と一緒に用いられる。他の実施形態では、IL-2がIL-15と一緒に用いられる。さらに他の実施形態では、IL-2とIL-7とIL-15とが一緒に用いられる。いくつかの実施形態では、1を超えるサイトカインを使用する場合、サイトカインはそれぞれ同時に加えられてもよいし、異なるタイミングで加えられてもよいし、或いは組み合わせた状態で加えられてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、サイトカインは、例えば、ポート618を介して、バイオリアクター601に直接加えることもできる。しかしながら、他の実施形態では、サイトカインは、例えば、経路606を介して、サイトカインがバイオリアクター601内をかん流(perfuse)していくような場所で加えられる。いくつかの実施形態では、サイトカインをバイオリアクター601内にかん流させることによって、T細胞の成長が促進されると考えられる。
【0060】
T細胞を刺激することに加えて、T細胞は、例えば、多数の栄養素を含む培地を付加することによって、栄養補給(フィーディング)されてもよい。いくつかの実施形態において、培地は市販の培地である。例えば、T細胞にフィーディングするために使用される培地は、ミルテニーバイオテク社(ドイツ、ベルギッシュ・グラートバッハ)から市販されているTexMACS培地を元にしたもの(製造された流体を部分的に変更したものでもよいし変更せずにそのままでもよい)である。他の実施形態では、培地は、セルジェニック社(ドイツ、フライブルグ)から市販されているCELLGRO培地を元にしたもの(製造された流体を部分的に変更したものでもよいし変更せずにそのままでもよい)である。培地は、他の物質(例えば、塩、血清、タンパク質等)を添加することによって、部分的に変更されてもよい。
【0061】
T細胞の増殖の一部として、温度、pH、酸素濃度、二酸化炭素濃度、排出物濃度、代謝物濃度等のその他の条件は、バイオリアクター601内で調節される。いくつかの実施形態において、EC側(例えば、経路604)の流量を用いて、種々のパラメータが制御される。例えば、細胞成長が行われているIC側の排出物濃度又は代謝物濃度を減らしたい場合、EC側の流量を増やすことで、中空糸を通過するIC側からEC側への移動によって、排出物及び/又は代謝物をIC側から確実に除去することができる。
【0062】
T細胞を増殖させた後、該細胞は、バイオリアクター601から取り出される。T細胞は容器699に集められる。
【0063】
本発明の実施形態は、CES600を使用することによって、従来のプロセスに対して(T細胞の成長において)利点を持つ。例えば、中空糸を使用することにより、密接な細胞間コミュニケーションが可能となり、従って、T細胞の活性化及び刺激が増大され、増殖が始まり、継続する。また、バイオリアクター601のような中空糸型バイオリアクターを使用することにより、T細胞成長に対して大きな表面面積を提供することが可能となり、より高い濃度のT細胞又はより高い量のT細胞が産出される。
【0064】
さらに、バイオリアクター601における条件(IC流量及びEC流量を含む)は、CES600の多数の部品・部材を用いて制御できる。また、CES600では、様々な場所においてサイトカインを投入することが可能であり、サイトカインをバイオリアクター601に直接或いは間接的(例えば、潅流式(perfusion))に投入できる。
【0065】
さらに、CES600によって、閉鎖系システムが提供される。すなわち、T細胞を成長するためのステップを、周囲環境に直接曝露することなく、実行することができる。従って、周囲環境によってT細胞が汚染されたり、或いはT細胞やT細胞成長に使用される物質によって周囲環境が汚染されたりすることがない。いくつかの実施形態では、増殖のためのT細胞の開始濃度を、他の方法/システムに比べて、小さい量にすることができると考えられる。これらの実施形態では、T細胞増殖の収穫量を、他の方法/システムに比べて大きくできる。
【0066】
いくつかの実施形態では、T細胞の有効量を成長させる時間が短縮されると考えられる。さらに他の実施形態では、他の方法/システムに較べて、(高価な)サイトカインのような物質の使用量を減らして、T細胞を成長できると考えられる。
【0067】
図7は、実施形態に係る細胞成長のフローチャート700を示す。以下では、フローチャート700のステップを行うための特定の装置が説明されるが、本発明はそれらに限定されない。例えば、いくつかのステップは、細胞増殖システムの一部又は、プロセッサ実行可能命令として与えられるソフトウェアに基づいてステップを実行可能なプロセッサによって行われるように記載されてもよい。これらはあくまでも例示の目的で行われるものであり、フローチャート700は、特定の装置によって行われることに制限されない。
【0068】
フローチャート700はステップ704で始まり、細胞を集めるオプションとしてのステップ708へ進む。一例として、ステップ708は、アフェレーシスプロセスを含んでよい。一実施形態では、白血球アフェレーシスプロセスが、ステップ708の一部として実行される。細胞を集めることが可能な装置としては、テルモBCT社(コロラド州、レイクウッド)製のCOBE(登録商標)スペクトラ・アフェレーシス・システムが挙げられる。
【0069】
フローチャート700は、ステップ708からステップ712へ進む。ステップ712では、細胞が細胞増殖システム(特に、細胞増殖システムのバイオリアクター)に投入される。上述のように、いくつかの実施形態では、フローチャート700は、ステップ712から始まってもよい。実施形態において、バイオリアクターは、バイオリアクター100(
図1参照)のような中空糸型バイオリアクターである。これらの実施形態では、ステップ712では、細胞を1又は複数の中空糸に個別に流してもよい。ステップ712では、プロセッサ、ポンプ、バルブ、流体路等を用いて、細胞をバイオリアクターへ投入してもよい。一実施形態において、ステップ712は、バルブ(例えば、バルブ564、514、664、614)を開き、ポンプ(例えば、ポンプ554、654)を動作させてもよい。
【0070】
ステップ712の後、フローチャート700は、ステップ716へ進む。ステップ716では、細胞は活性化剤に曝露される。理解されるように、特定の細胞型は、増殖のための活性化を行う前に、例えば、特定のタンパク質に対する曝露による活性化が必要となる。この細胞型の例としては、T細胞がある。ステップ716では、細胞は、増殖・成長するために細胞を活性化させるのに必要な活性化剤に曝露される。
【0071】
ステップ716は、ステップ716の一部として行われる或いはステップ716の前に行われる複数のステップを含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、ステップ720は、細胞増殖を活性化するために必要な活性化剤を提示する抗原提示細胞を成長するために行われる。一実施形態において、ステップ720は、ステップ716の前に、或いはさらにステップ708の前に行われてもよい。一例において、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)が成長される。これら実施形態では、ステップ720は、結果として抗原提示細胞がバイオリアクター内に存在することになる複数のステップ(例えば、抗原提示細胞への前駆細胞としての単球を集めるステップ)を含んでよい。抗原提示細胞は表面に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を有し、抗原提示細胞の表面には、他の細胞(例えば、T細胞)に提示されると、該細胞の増殖を誘発する抗原が存在する。
【0072】
他の実施形態において、ステップ716は、ステップ724を含んでもよい。ステップ724では、ビーズがバイオリアクターに加えられる。理解されるように、いくつかの実施形態において、ビーズ(例えば、磁気ビーズ、ポリマービーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズ)は、ビーズ表面上に、細胞増殖を活性化させる特定の活性化剤が含まれるように、部分的に変更されてもよい。一例として、磁気ビーズは1又は複数の抗体によって機能化される。抗体の例としては、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD28抗体、抗CD34抗体が挙げられる。細胞が抗体に曝露されると、他の物質の存在下において、該細胞は、増殖するように活性化される。いくつかの実施形態における使用に適したビーズとしては、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(マサチューセッツ州、ウォルサム)製のビーズであるDYNABEADS(登録商標)が挙げられる。
【0073】
ステップ716の後、ステップ728へ進む。ステップ728では、細胞が増殖される。ステップ728は、複数のサブステップを有してよい。例えば、サブステップ732では、細胞は、例えば、サイトカインを用いて、刺激される。このような刺激によって、細胞増殖の継続が可能となる。
【0074】
実施形態において、ステップ728は、数時間、又は数日間、又は数週間の期間にわたって行われる。この期間中、種々のサブステップ(例えば、732、736、及び/又は740)が種々の時点で行われてよい。例えば、この期間中、サイトカイン(例えば、インターロイキン)のような物質が付加され、バイオリアクターに分散(かん流)され或いは直接投入され、細胞増殖の刺激が継続されてもよい。使用されるサイトカインの非制限的な例としては、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン12(IL-12)、インターロイキン13(IL-13)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン18(IL-18)、インターロイキン23(IL-23)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。サイトカインは個別に、或いは組み合わせて使用され、例えば、一実施形態では、IL-7がIL-15と組み合わせて使用される。他の実施形態では、IL-2とIL-7が一緒に使用される。さらに他の実施形態では、IL-2とIL-15が一緒に使用される。
【0075】
ステップ728は、細胞フィーディングステップ736を有してもよい。ステップ736では、グルコース、リン酸塩、塩等を含む種々の栄養素が加えられてもよい。ステップ736では、栄養素濃度が検知され、比較的低い濃度測定値に応答して、バイオリアクターに栄養素が加えられるステップを含んでもよい。ステップ736は、プロセッサ、ポンプ、バルブ、流体路等を使用して、栄養素を加えることで細胞フィーディングを行うステップを有してもよい。或いは、グルコースのような栄養素の付加は、所定のスケジュールに基づいて行われてもよい。
【0076】
ステップ740は、バイオリアクターの成長環境を制御するステップを含んでよい。理解されるように、栄養素に加えて、細胞成長を最適化するための環境としては、複数の異なるパラメータがある。例えば、温度、pH、酸素濃度、二酸化炭素濃度、排出物濃度、代謝物濃度等が、ステップ740の一部として、モニタ・制御される。一実施形態では、細胞増殖が行われている毛細管内側空間でのpH、酸素濃度、二酸化炭素濃度、排出物濃度、代謝物濃度等の制御において、バイオリアクターの毛細管外側空間(EC)側を流れる流体の流量が利用される。
【0077】
フローチャート700は、ステップ740から、バイオリアクターから細胞を取り出すステップ744へ進む。ステップ744は、複数のサブステップを含んでよい。例えば、収穫プロセスはそれ自身で複数のステップを含むが、ステップ744の一部として行うことができる。実施形態において、ステップ744は、バイオリアクターの毛細管内側空間(IC)側及びEC側の循環レートを変更するステップを含んでよい。他の実施形態において、ステップ744は、種々の物質を循環させ、中空糸の内側表面に付着した細胞を確実に剥離してバイオリアクターから取り出すステップを有してよい。一例として、プロテアーゼを付加することで、細胞が中空糸に結合することを助ける糖タンパク質のようなタンパク質が分解される。フローチャート700はステップ752で終了する。
【0078】
本開示の実施形態によれば、
図7に示されるフローチャートにおいて記述された動作ステップは、あくまで例示の目的であり、変更されてもよく、他のステップと組み合わせてもよく、また他のステップと並行に行われてもよい。実施形態では、本開示の範囲から逸脱しなければ、ステップを減らしてもよいし、ステップを追加してもよい。また、例えば、ステップ(及びサブステップ)は、いくつかの実施形態では、例えば、メモリに記憶された予めプログラムされたタスクを実行するプロセッサによって、自動的に行ってもよい。ここでは、そのようなステップは、あくまでも例示の目的で提示されている。
【0079】
フローチャート700に対して、種々のステップをある特定の順序で列挙して説明を行ったが、本開示は、そのような順序に制限されない。他の実施形態において、ステップ及びサブステップは、異なる順序で、或いは並行して、或いは部分的には
図7に示された順序で、或いは
図7に示されたシーケンスで行われてもよい。また、ステップ又はサブステップは特定の特徴又は特定の構造によって行われるように記載したが、これは本発明を制限することを意図していない。むしろ、それら記載は、あくまでも例示の目的で行われている。他の実施形態において、上記されていない他の構造や特徴を用いて、フローチャート700のステップのうちの1又は複数のステップを行ってもよい。さらに、フローチャート700は、オプションとしてのステップを含んでもよい。しかしながら、オプションとして示されていない上述のステップは、本発明において必須と考えるべきではなく、ある実施形態では実行され、他の実施形態では実行されない場合もある。
【0080】
図8は、本発明の実施形態が実行されるコンピュータシステム800の構成要素例を示す。コンピュータシステム800は、例えば、細胞増殖システムがプロセッサを用いて、(上述のフローチャート700に示されたプロセスのように、プロセスの一部として行われるカスタムタスクや予めプログラムされたタスクのような)タスクを実行する実施形態において、使用される。
【0081】
コンピュータシステム800は、ユーザインターフェース802、処理システム804、及び/又は記憶装置806を有する。ユーザインターフェース802は、当業者であればわかるように、出力装置808、及び/又は入力装置810を有する。出力装置808は、1又は複数のタッチスクリーンを有してよい。タッチスクリーンは、1又は複数のアプリケーションウィンドウを提供するためのディスプレイ領域を有してよい。タッチスクリーンはまた、例えば、ユーザやオペレータからの物理的な接触を受容可能及び/又は取り込み可能な入力装置810であってもよい。タッチスクリーンは、当業者であれば理解できるように、処理システム804による接触位置の推定を可能とする静電容量構造の液晶ディスプレイ(LCD)でもよい。この場合、処理システム804は、接触位置を、アプリケーションウィンドウの所定位置に表示されるユーザインターフェース(UI)要素に写すことができる。また、タッチスクリーンは、本発明に係る、1又は複数のその他の電子構造を介して接触を受容することもできる。他の出力装置808としては、プリンター、スピーカ等が挙げられる。その他の入力装置810としては、当業者であれば理解できるように、キーボード、その他のタッチ式入力装置、マウス、音声入力装置等が挙げられる。
【0082】
本発明の実施形態において、処理システム804は、処理ユニット812、及び/又はメモリ814を有してもよい。処理ユニット812は、メモリ814に記憶された命令を実行するために動作可能な汎用プロセッサであってよい。処理ユニット812は、本発明の実施形態では、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを含んでよい。さらに、実施形態では、各プロセッサは、個別に命令を読み込んで実行するための1又は複数のコアを有するマルチコアプロセッサでよい。プロセッサは、当業者であれば理解できるように、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、その他の集積回路を含んでよい。
【0083】
本発明の実施形態において、メモリ814は、データ及び/又はプロセッサ実行可能命令を短期に又は長期に記憶する任意の記憶装置を含んでよい。メモリ814は、当業者であれば理解できるように、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、又は電気的消去・プログラム可能型リード・オンリ・メモリ(EEPROM)を含む。他の記憶媒体としては、例えば、当業者であれば理解できるように、CD-ROM、テープ、デジタル多用途ディスク(DVD)、又は、その他の光学記憶装置、テープ、磁気ディスク記憶装置、磁気テープ、その他の磁気記憶装置等がある。
【0084】
記憶装置806は、任意の長期データ記憶装置又は部品である。本発明の実施形態において、記憶装置806は、メモリ814と関連して記載されたシステムのうちの1又は複数のものを含んでよい。記憶装置806は、常設してもよいし、取り外し可能でもよい。一実施形態において、記憶装置806は、処理システム804によって生成された又は与えられたデータを記憶する。
【0085】
実施例
実施形態を実施する方法/プロセス/プロトコルのいくつかの例が以下で記載される。特定の特徴(細胞型、サイトカイン、抗原提示等)がこれら実施例において記載されるが、それらはあくまでも例示の目的で行われる。本発明は以下の実施例に制限されない。
【0086】
実施例1
QUANTUM(登録商標)細胞増殖システム(CES)の比較のためのベースライン(baseline)を生成するため、白血球アフェレーシス生成物から純化した単球を樹状細胞に成熟させ、Wolfl(Wolfl中のoの上には実際にはウムラルトがつくが、電子出願では使用できない文字なので省略してある。)とGreenbergのプロトコル(Nature Protocols 9巻、4号、2014年)に従って(白血球アフェレーシス生成物から凍結保存された)ドナー適合したT細胞と結びつける(combined)。該プロトコルの全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0087】
最適な培養期間を決定するため、ドナー1細胞が23日間培養された(5日間のDC成熟と18日間の共培養)。細胞増殖は、細胞培養の20日目まで継続することが観察された。20日目以降は、
図9及び
図10に示されるように、細胞数及び生存率は減少した。
【0088】
ドナー2を用いて、最適な単球純度及び最適な播種密度を決定した。単球は6井戸培養プレートに播種された。1つは、エルトリエーション(elutriation)プロセスにおける第5分画から直接播種した約50%純度のもの、もう1つは、CD14マイクロビーズを用いて2つのLSカラム(ミルテニー)を通して行われる磁気ビーズ精製後の99%純度のものである。上記2つの細胞純度条件で、10E+06細胞数/mLの密度から始まって、順次2倍希釈して3.13E+05細胞数/mLまでの密度で播種された。精製単球のための最適播種密度は、2.5E+06細胞数/mL及び純化されていない細胞に対して1.25E+06において観察された(
図11参照)。
【0089】
単球由来樹状細胞が、T細胞との共培養前の条件によってプールされ、T細胞は、単球由来樹状細胞と、比4:1で19日間、共培養された。エルトリエーションプロセスから直接播種した細胞は、T細胞の増殖において、精製された単球と比べて、それ以上とは言わないまでも同程度にうまくいくことが観察された(
図12参照)。ドナー1と同様に、細胞生存率は、細胞増殖が横ばい状態になると、減少する(
図13参照)。
【0090】
実施例2
T細胞は、以下の2つの方策でQUANTUM(登録商標)CESにおいて良好に増殖される。すなわち、抗体機能化された常磁性ビーズ(DynaBeads T cell Activator)(Q1070)によるCD3及びCD28の共刺激による方策、及び、オリジナルの白血球アフェレーシス生成物に存在する単球から成熟されたプロフェッショナルな抗原提示細胞(APCs)である単球由来樹状細胞(DCs)(Q1069)による抗原提示による方策である。これら2つの方策は、T細胞培養の増殖に対して、QUANTUM(登録商標)CESにおいて初期の効果を発揮する(
図14参照)。
【0091】
図15は、概念実証(proof-of-concept)のために、QUANTUMシステムにおいて増殖された細胞の表現型分布を示す。DC刺激増殖及びビーズ刺激増殖の両方において、出発生成物及びT175フラスコで増殖させた細胞の両方に対して、表現型分布(CD4:CD8比)においてシフトが観察された。この初期データは、刺激の手法に関わらず、QUANTUM(登録)CESがCD8T細胞増殖に有利であることを示唆する。
【0092】
表1は、概念実証のための増殖における投入された細胞数及び収穫された細胞数を示す。
【0093】
【0094】
実施例3
多くのサイトカインは、T細胞増殖を促進する。そのようなサイトカインとしては、IL-2や、IL-7とIL-15との組み合わせ等がある。これらサイトカインを投与する方法として、適切なサイトカイン濃度含有の予め構成された培地のボーラス注入法(bolus injection)と連続かん流法(continual perfusion)の2つの候補がある。これは、7群の研究によって調べられた。この研究では、IL-2のみ、IL-7とIL-15との組み合わせ、及びそれら3つのサイトカイン全ての組み合わせを上記2つの方法で、QUANTUM(登録商標)CESに供給して、直接比較した。この研究の対照群(control)は、サイトカインを投入しない一群である。この調査から、IL-7とIL-15との組み合わせの連続かん流法において、より高い倍率の増殖が得られることが分かった(
図15参照)。
図15は、サイトカインの種々の組み合わせ及び2つの投与方法での比較のために行われたQUANTUM(登録商標)CESの増殖における収穫数を示す。
【0095】
実施例4
次のステップでは、細胞増殖中におけるIC循環レートの増加及びバイオリアクターに対する6度揺動の付加を調べる。培養環境へのこれら新しい条件の適用は、T細胞増殖に対してネガティブな影響を与えることが分かった(
図16参照)。
図16は、対照群(バイオリアクター静止、循環レート5ml/min)と揺動させながらIC循環レートを増やす群(±6度の揺動、循環レート20ml/min)との収穫数の比較を示すグラフである。
【0096】
実施例5
T細胞増殖は、組み換えヒトインターロイキン2(improved sequence)(IL-2 IS)(ミルテニーバイオテク社、ドイツ)と組み換えヒトインターロイキン7(IL-7)(ミルテニーバイオテク社、ドイツ)とが補充されたTexMACS GMPグレード培地(ミルテニーバイオテク社、ドイツ)で促進される。T細胞増殖は、結合された共刺激シグナルすなわちDynaBeads(登録商標)Human T-Activator CD3/CD28(ライフ・テクノロジーズ社、ニューヨーク州、グランドアイランド)又は可溶性(soluble)共刺激シグナルすなわちImmunoCult(商標)Human CD3/CD28 T Cell Activator(STEMCELL Technologies社、カナダ)を用いて、開始される。QUANTUM(登録商標)CES(テルモBCT社、コロラド州、レイクウッド)は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(ロンザ社、スイス)でプライミングされ、システムから空気が除去される。プライミングシーケンスに従って、PBSは、TexMACS GMP培地に交換される。
【0097】
新鮮で正常な末梢血白血球アフェレーシス製剤(LeukoPak)は、COBE(登録商標)スペクトラ・アフェレーシス・システム(テルモBCT社、レイクウッド、コロラド州)を用いて、単一ドナー(AllCells社、アラメダ、カリフォルニア州及びヘマケア社、ヴァン・ナイズ、カリフォルニア州)から得られる。ラボに到着したらすぐに、細胞濃度及び生存性(viability)が、Vi-Cell XR Cell Viability Analyzer(ベックマン・コールター社、ブレア、カリフォルニア州)によって測定される。また、リンパ球のパーセンテージが、コールターAc-T diff2(ベックマン・コールター社、ブレア、カリフォルニア州)血液分析器によって測定される。
【0098】
白血球アフェレーシス製剤から1.0×108の一定分量のリンパ球が、細胞:ビーズ比2:1でDynaBeads(登録商標)と、或いは1.0×106のリンパ球に対して2.5μlでImmunoCult(商標)と、が組み合わされ、さらに1.0×105IUのIL-2と2.5×103ngのIL-7とが組み合わされ、滅菌貯蔵ボトルにおいてTexMACS GMP培地で100mLの容積にされる。細胞/サイトカイン/刺激ベクター液は処理されて、Cell Inlet Bag(テルモBCT社、レイクウッド、コロラド州)に入れられ、培地循環させながらバイオリアクターのIC側へ投入され、中空糸において溶液が均一に分散される。
【0099】
細胞投入後、TexMACS培地を、IC側において1mL/minで、EC側において100mL/minで循環させ、IL-2(200IU/mL)とIL-7(5ng/mL)とを伴う培地の連続かん流をバイオリアクターのICインレットにて0.1mL/minで行う。バイオリアクターの方向は、3日目と6日目と9日目を除く増殖の最初の6日間は0°で静止している。3日目、6日目及び9日目では、IC循環及びEC循環をそれぞれ100mL/minに設定してIL-2及びIL-7を含む培地150mL(DynaBeads(登録商標)増殖)のボーラス投与或いはIL-2及びIL-7及び可溶性共刺激シグナルを含む培地150mL(ImmunoCult(商標)増殖)のボーラス投与をバイオリアクターのIC側に対して30mL/minで行い且つバイオリアクターを1秒の休止を挟んで-90°と180°との間を連続揺動させる。ボーラス投与が完了すると、バイオリアクターは静止0°状態に戻され、インレット及び循環ポンプの設定は、増殖開始の値に戻される。
【0100】
6日目から、バイオリアクターは、24時間ごとに、0°と180°との間を180°反転される。ボーラス投与におけるIL-2濃度及びIL-7濃度は、投与ごとに変更される(表2参照)。各ボーラス投与後、細胞は均一な懸濁状態において、ICサンプルループの一部は、TSCD(登録商標)II無菌接合装置(テルモBCT社、レイクウッド、コロラド州)を用いて、切断・接合される。このサンプルは、増殖期間にわたって細胞濃度、生存率、細胞表現型及び分泌型サイトカインをモニタするために使用される。
【0101】
【0102】
細胞は、QUANTUM(登録商標)CESから、高密度洗い出し自動タスク(High Density Washout automated task)を用いて、増殖の7日目、10日目、又は12日目に収穫される。この収穫方法を促進するため、培地は、バイオリアクターを動かして(1秒間の休止を挟んだ-90°と180°との間の連続揺動)良好に混合された細胞懸濁状態を達成しながら、IC側において、100mL/minのレートで5分間循環させる。培地循環後、収穫バッグは、廃棄バッグの代わりに、廃棄ラインに接合される。高密度洗い出しのタスク設定値は、以下である:ICインレット=200mL/min、EC循環レート=300mL/min及び停止条件=1000mL。サイトカイン無しの培地がこのタスクでは使用される。収穫後、細胞の生存度、絶対数、表現型特性が、フローサイトメトリーによって分析される。
【0103】
細胞は、T細胞として、CD3の発現によって特徴づけられる。また、ヘルパーサブセット、細胞傷害性サブセットは、それぞれCD4、CD8の発現によって特徴づけられる。PerPC-Cy5.5(BDバイオサイエンス社、サンノゼ、カリフォルニア州)に結びついたCD3のためのUCHT1クローンを用いて、サンプルにおけるCD3の表面受容体及び細胞内受容体の両方を色付けする。PE(BDバイオサイエンス社、サンノゼ、カリフォルニア州)に結びついたCD4のSK3クローンを用いて、サンプルにおけるCD4の表面受容体を色付けする。VioBright FITC(ミルテニーバイオテク社、ドイツ)に結びついたCD8のBW135/80クローンを用いて、サンプルにおけるCD8の表面受容体を色付けする。非生存細胞は、eFluor(登録商標)780細胞生死判定用色素(Fixable Viability Dye)(eBioscience社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いて、分析から区別された。細胞表面及び細胞内の色付けは、FIX & PERM(登録商標)Cell Permeabilization Kit(ライフ・テクノロジーズ社、グランドアイランド、ニューヨーク州)を用いて、なされた。サンプルは、FACSCanto II(BDバイオサイエンス社、サンノゼ、カリフォルニア州)において、FACSDiva ソフトウェア バージョン6.1.3(BDバイオサイエンス社、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて、解析された。FACSCanto IIは、BD FACSDiva CS&T Beads(BDバイオサイエンス社、サンノゼ、カリフォルニア州)によってキャリブレーションされ、補正量は、BD CompBeads(BDバイオサイエンス社、サンノゼ、カリフォルニア州)及びArC(商標)アミン反応性色素用コンペンセーションビーズキット(Amine Reactive Compensation Bead Kit)(ライフ・テクノロジーズ社、グランドアイランド、ニューヨーク州)を用いて、計算された。1サンプルに対して、10,000イベントが記録された。
【0104】
サンプルは、成熟中に、バイオリアクターのIC側及びEC側から周期的に取り出され、-20°Cで保存された。その後、サンプルは室温に戻され、Luminex(商標)アッセイ(Assay)のTh1/Th2/Th17 Human Magnetic 8-Plex Panel(ライフ・テクノロジーズ社、グランドアイランド、ニューヨーク州)を用いて、IL-2、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、IL-13、IL-17、IFNγが分析された。該分析物は、MAGPIXアナライザ(Luminex社、オースチン、テキサス州)を用いてxPONENT(Luminex社、オースチン、テキサス州)の収集・解析ソフトウェアを実行して、解析された。
【0105】
QUANTUM(登録商標)CESにおいて、IL-2と共にIL-7を使用することで、IL-2のみを用いた場合よりも、T細胞増殖が大きく増加することがわかる(
図17参照)。QUANTUM(登録商標)CESにおいて、ビーズ結合CD3及びCD28共刺激抗体を用いたT細胞増殖は、可溶性共刺激抗体の増殖よりも優れている(
図18参照)。7日間後の増殖産生物は、ビーズによる増殖においてCD3+細胞が一貫して約95%であり、可溶性に基づく増殖の大部分も同様のパーセンテージである(
図19参照)。しかしながら、増殖後の細胞産生物の生存率は、全てのドナーに対して、対応する可溶性に基づく増殖よりも一貫してビーズによる増殖の方が良好である(以下の表3参照)。表3において、***は、システムの汚染により、増殖に対して測定不可だったことを示す。**は、対応する対となる増殖に対して解析がなされたことを示す。全ての実験におけるサイトカインの解析は、IL-9の増加に伴うTh1及び細胞傷害性サブセットに関連するサイトカインの増加を示す。IL-9は、培養培地へのIL-7の付加によるIL-2受容体群の刺激により、細胞増殖を促進し、細胞自然死を抑制することが知られてきた(
図20及び
図21)。
【0106】
QUANTUM(登録商標)CESは、アフェレーシス血液収集の一分画から500倍を超えるT細胞を増殖することができる。自動化され且つ機能的に閉鎖されるシステムの製造プロセス制御によって、作業量を減らすことが可能となり、T細胞成熟における開放イベントも減らすことができる。その結果、細胞産生物の製造をより効率的に行える。
【0107】
【0108】
当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の方法及び構造に対して種々の変形及び変更を行えることは理解できよう。従って、本発明は、上記の特定の実施形態又は実施例に限定されないと理解されるべきである。むしろ、本発明は、以下の請求項及びそれらの等価物の範囲内において、変形形態及び変更形態をも含むことが意図されている。
【0109】
本発明の実施形態及び適用例が示され説明されてきたが、本発明は、上記した構成に制限されないと理解されるべきである。当業者に明らかな種々の変形、変更等は、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の構成、動作、また方法及びシステムにおける詳細において行うことが可能である。