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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013071
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ベッド
(51)【国際特許分類】
   A47C 17/64 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A47C17/64 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115372
(22)【出願日】2020-07-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】520128772
【氏名又は名称】田中 博志
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】田中 博志
(57)【要約】
【課題】少ない力でも簡単にベッドを横向きに立てることができると共に、横向きに立てた状態のままスムーズに移動させて、速やかにドアを通過することが可能な水害対策用ベッドを提供する。
【解決手段】平時は寝台のベース部分10の一部として使用され、浸水時は人が乗った状態で床から浮上することができる、浮体31を有した本体部30と、浸水時、前記寝台のベース部分10を横向きに立てるのを補助するために、前記寝台のベース部分10を起立方向に傾斜させる起立補助手段(ねじりバネ51)を備えたベッド1である。浸水時に、寝台のベース部分10を横向きに立てた状態において下側となる面にセットされるキャスター71を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平時は寝台のベース部分の一部として使用され、浸水時は人が乗った状態で床から浮上することができる、浮体を有した本体部と、
浸水時、前記寝台のベース部分を横向きに立てるのを補助するために、前記寝台のベース部分を起立方向に傾斜させる起立補助手段と、
を備えた、ベッド。
【請求項2】
前記起立補助手段として前記寝台のベース部分を傾斜させる方向に付勢するねじりバネを備えた、請求項1に記載のベッド。
【請求項3】
浸水時、前記寝台のベース部分を横向きに立てた状態において下側となる面にセットされるキャスターを備えた、請求項1又は2に記載のベッド。
【請求項4】
前記キャスターは、平時は前記寝台のベース部分に設けた格納部に格納されており、浸水時は前記寝台のベース部分を横向きに立てた状態において下側となる面から突出する位置まで移動させることが可能なスライド機構を備えた、請求項3に記載のベッド。
【請求項5】
前記キャスターは、前記寝台のベース部分の任意の位置に取り付け可能な固定手段を備えた、請求項3に記載のベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッドに関するものである。
【0002】
より詳しくは、本発明のベッドは、津波、高潮、台風、豪雨による河川の氾濫等によって洪水が発生し、家屋が浸水したときに、水没を避け、人が乗った状態で水面上に浮上することができる水害対策用ベッドに関するものである。
【背景技術】
【0003】
平時は通常のベッドとして使用されるが、洪水が発生した時は、避難用ボートのように使用できるベッドが提案されている(特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1のボート兼用シェルタベッドは、少なくとも1名が横臥できるサイズのマット部材と、このマット部材の下面に設けた舟型形状の浮力部と、前記マット部材の幅方向両側に設けた脚部とを備える。前記浮力部は、たとえば発泡スチロール等の浮力の大きい発泡樹脂で構成される。
【0005】
また、特許文献2の浮き袋付きベッドは、ベッド本体と、ベッド本体に装備された袋体を備える。この袋体に気体を吹き込むことによって浮き袋とし、全体の比重を下げることで、ベッド本体を水に浮かせることを可能とする。
【0006】
ところで、国土交通省のウェブサイト「川の防災情報」の「浸水深と避難行動について」(https://www.river.go.jp/kawabou/reference/index05.html)によれば、一般家屋の場合、浸水深(洪水が発生した浸水域の地面から水面までの高さ)が0.5m以下で「床下浸水」、0.5~1.0mで「床上浸水」、1.0~2.0mで「1階の軒下まで浸水」、2.0~5.0mで「2階の軒下まで浸水」、5.0m以上で「2階の屋根以上が浸水」と説明されている。このように、近年、地震による津波や地球温暖化による気候変動の影響を受けて水害が激甚化しており、寝室がある階の軒下まで浸水することが想定されている。
【0007】
そのため、水害対策用ベッドを利用していたとしても、大規模水害の場合は屋内に閉じ込められて水没する危険がある。水害対策用ベッドには、屋外もしくは屋外に通じる安全で広い場所へ、迅速に避難できる構造が求められる。
【0008】
この点、水害対策用ベッドは、例えば特許文献2のベッドがそうであるように、脚部にキャスターが取り付けられているものが多い。そのため、平時の使用状態の向きのままであれば、水平方向の移動はキャスターの作用によって少ない力で行える。
【0009】
しかしながら、一般にベッドの幅は、シングルの場合で100cm程度、セミダブルの場合で120cm程度であり、これらのサイズは水害対策用ベッドにおいても同様に設計されている。これに対し、寝室の出入口のドアの幅は、90cm以下である家屋が殆どである。
【0010】
つまり、例えば特許文献1、2のベッドを使用している一人暮らしの人が、水害の発生時、寝室内に閉じ込められる危険を回避し、寝室の外で浮上する必要があると判断したとしても、ベッドの幅がドアの幅よりも大きいために、平時の使用状態の向きのままではドアを通過することができない。
【0011】
そのため、従来は、寝室の外で浮上する必要があると判断した場合は、まず寝室内で水害対策用ベッドを横向きに立てた状態とし、その状態で床面を摺るようにしてドアの方向に押し進め、ドアを通過させる必要があった。
【0012】
しかし、上述のように、ベッドを1人で横向きに立てた状態とすることや、その状態で床面を摺るようにして移動させるのは、かなりの力を要する作業となる。水害発生時の緊急性、切迫した状況を鑑みると、特に高齢者にとっては実施困難な作業である。また、仮に実施できても、相当の時間がかかり、その間に浸水が進んで危険となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007-222320号公報
【特許文献2】特開2014-113439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、従来の水害対策用ベッドは、ドアを通過させるために、ベッドを横向きに立てた状態とすることや、その状態で床の上をスムーズに移動させることが困難であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、浸水時(以下の説明では、津波、高潮、台風、豪雨による河川の氾濫等、原因の如何を問わず、洪水が発生して、家屋、病院、宿泊施設等、人が就寝している建物が浸水する時を、単に「浸水時」という。)、少ない力でも簡単にベッドを横向きに立てることができると共に、横向きに立てた状態のままスムーズに移動させて、速やかにドアを通過することが可能な水害対策用ベッドを提供することを目的とし、以下に列記する構成を主要な特徴点としている。
【0016】
第1発明は、
平時は寝台のベース部分の一部として使用され、浸水時は人が乗った状態で床から浮上することができる、浮体を有した本体部と、
浸水時、前記寝台のベース部分を横向きに立てるのを補助するために、前記寝台のベース部分を起立方向に傾斜させる起立補助手段と、
を備えている。
【0017】
第2発明は、第1発明において、
前記起立補助手段として前記寝台のベース部分を傾斜させる方向に付勢するねじりバネを備えている。
【0018】
第3発明は、第1又は第2発明において、
浸水時、前記寝台のベース部分を横向きに立てた状態において下側となる面にセットされるキャスターを備えている。
【0019】
第4発明は、第3発明において、
前記キャスターは、平時は前記寝台のベース部分に設けた格納部に格納されており、浸水時は前記寝台のベース部分を横向きに立てた状態において下側となる面から突出する位置まで移動させることが可能なスライド機構を備えている。
【0020】
第5発明は、第3発明において、
前記キャスターは、前記寝台のベース部分の任意の位置に取り付け可能な固定手段を備えている。
【0021】
ここで、本明細書において「寝台のベース部分」とは、例えば、簀子、マット、敷布団などは除外したベッドの台座となる部分のことを言う。また、本明細書において「横向きに立てる」とは、平時の使用状態ではベッド(寝台のベース部分)の側面を構成している面を下向きにして床に接地させ、ベッドを起立させることを言う。なお、通常、例えばシングルサイズのベッドであれば、ベッドの長手方向における側面を下向きにしてベッドを立てる方が作業が容易となるので望ましいことは言うまでもないが、例えばキングサイズのベッドのように平面視略正方形状のベッドの場合は、寝室のドアの位置を考慮して、敢えてベッドの短手方向における側面を下向きにしてベッドを立てても構わない。そのような場合も本明細書にいう「横向きに立てる」に含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のベッドは、寝台のベース部分の一部を構成する本体部が、十分な浮力を発生させる浮体を備えている。従って、本発明のベッドは、平時は通常のベッドとして使用できるが、浸水時は、本体部の作用のみで、水没を避けることができ、人が乗った状態で床から水面上に浮上し、避難用ボートと同様の機能を発揮できる。
【0023】
また、本発明のベッドは、寝台のベース部分を横向きに立てるのを補助する起立補助手段を備えている。従って、本発明のベッドは、浸水時には、起立補助手段の作用によって寝台のベース部分を起立方向に傾斜させることができ、少ない力でも簡単にベッドを横向きに立てることができる。
【0024】
加えて、本発明のベッドは、寝台のベース部分を横向きに立てた状態において下側となる面にセットされるキャスターを備えている。従って、本発明のベッドは、浸水時には、
キャスターの作用によって横向きに立てた状態のまま水平方向にスムーズに移動させることができ、速やかにドアを通過できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施形態に係るベッドの分解斜視図で、(a)は敷布団及び枕を、(b)は敷布団の下に敷くマットを、(c)はマットの下に敷く簀子を、(d)は寝台のベース部分を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るベッドの平時における使用状態を示す図である。
図3図3は、後格納部の開口に設けた扉を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るベッドにおいて起立補助手段として用いる外部取り付け型のねじりバネと、スライド式のキャスターを示す図で、(a)は平時においてキャスターが格納されている状態を、(b)は浸水時においてキャスターがセットされている状態を示す図である。
図5図5は、実施形態に係るベッドを起立補助手段を用いて起立方向に傾斜させた状態を示すと共に、想像線で起立が完了した状態を示す図である。
図6図7は、実施形態に係るベッドを横向きに立てた状態でドアを通過させ、屋外に通じる安全な場所で本体部が浮上するまでの流れを説明する図である。
図7図7は、スライド式のキャスターを、図3の紙面右側から見た状態を示す図である。
図8図8は、スライド式のキャスターを、図3の紙面下側から見た状態を示す図で、(a)は平時においてキャスターが格納されている状態を、(b)は浸水時においてキャスターをスライドさせた状態を示す図である。
図9図9は、実施形態に係るベッドの本体部を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図10図10は、浸水時に設置するテントの一例を示す図である。
図11図11は、浸水時に設置するテントの他の例を示す図で、(a)はパイプからなるフレームを組み合わせた状態を、(b)はフレームの上に屈折可能な簀子を被せた状態を示す図である。
図12図12は、第2実施形態に係るベッドの構成を示す図である。
図13図13は、第2実施形態に係るベッドにおいて起立補助手段として用いる内部取り付け型のねじりバネと、着脱式のキャスターを示す図である。
図14図14は、着脱式のキャスターの構成を示す図で、(a)は側面図、(b)は正面部である。
図15図15は、着脱式のキャスターの使用例を説明する図で、(a)は平時においてキャスターを格納した状態を、(b)は浸水時においてキャスターをベッドの前衝立部に取り付けた状態を示す図である。
図16図16は、本体部の他の例を示す図で、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明は、本発明、その適用物、その用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0027】
図1図2において、1は本実施例のベッドであり、寝台のベース部分10の上に、就寝時の通気性を良好にするための簀子5、マット4、敷布団2、枕3を設置して構成される。ベッド1は平面視矩形状で、たとえば大人1名が就寝するのに適したサイズであり、図2に示すように、平時は心地よく睡眠できる快適なベッドとして使用できる。なお、6は掛布団である。
【0028】
浮体31を有した本体部30は、平時は寝台のベース部分10の一部(中央部分)として使用される(図1(d)参照)。本体部30は、その周囲が、前格納部11、右側板部12、左側板部13、後格納部14で囲まれており、平時は外部から見えることがなく、ベッド1のデザイン性を損なうことはない。15は寝台のベース部分10の下面の四隅に取り付けられた平時に使用する車輪である。
【0029】
[第1実施例]
以下では、起立補助手段として、外部取り付け型のねじりバネ51を用いる第1実施例について説明する。第1実施例では、キャスターは、スライド式のキャスター71を用いる。
【0030】
前格納部11と後格納部14には、浸水時、寝台のベース部分10を横向きに立てる作業を補助し、寝台のベース部分10を起立方向に回動させて傾斜させる外部取り付け型のねじりバネ51(起立補助手段)と、寝台のベース部分10を横向きに立てた状態において下側となる面にセットされるスライド式のキャスター71が格納されている。
【0031】
前格納部11の外観は、図1(d)には表れていないが、その構成は後格納部14の構成と同じであり、後格納部14とは左右対称の関係にある。図3は、前格納部14の開口に設けた扉14aを示している。扉14aは蝶番14dにより開閉可能になっており、浸水時は、扉14aを開いた状態とする。
【0032】
ねじりバネ51は、図4に示すように、コイル部51aの中心に螺子52を通し、この螺子52を後格納部14の外板14bにねじ込むことにより固定する。そして、固定アーム51bの回転を螺子53で押さえながら、作動アーム51cを、固定アーム51bとの間のねじり角度を十分に小さくした状態で、螺子54に係止させる。
【0033】
浸水時は、作動アーム51cの先端を少し持ち上げて手前側にずらすことで螺子54との係止が解除され、これによって固定アーム51bに対し、作動アーム51bとの間のねじり角度が元の状態まで復元しようとする力が働く。このねじりバネ51による付勢によって寝台のベース部分10は、図5に実線で示したように、起立方向に回動し、床面とのなす角度が45度以上となるまで傾斜した状態となる。その後、想像線で示した位置まで起立させることは、例えば高齢者の弱い力でも容易に行うことができるので、本発明のベッド1は、浸水時には極めて少ない力で簡単に横向きに立てることが可能となる。なお、起立が完了した後、ねじりバネ51は、作動アーム51bを螺子54に係止させて元どおりの状態に戻しても良いし、コイル部51aを螺子52から抜き取って寝台のベース部分10から取り外しても良い。
【0034】
キャスター71は、図4に示すように、長孔72につまみ螺子73aで固定することにより長孔72の長さの分だけ自在にスライドさせることが可能な構成である。浸水時は、上述した作動アーム51cの解除を行う前に、キャスター71を横方向にスライドさせ、後格納部14の開口から突出させた状態にセットする。これにより、作動アーム51cを解除して寝台のベース部分10を起立させた状態において下側となる面には、図5に示すとおり2つの車輪71aを有したキャスター71が存在することになる。従って、本発明のベッド1は、横向きに立てた状態のまま水平方向の移動が容易に行える。
【0035】
その後の手順は図5に示すとおりである。寝台のベース部分10の平時の高さは例えば40~50cm程度であるため、横向きに立てた状態で移動させれば、90cm幅のドアは余裕をもって通過できる(図5(a)~(b))。ドアを通過した後は、屋外もしくは屋外に通じている広い安全な場所で、寝台のベース部分10を平時の使用状態の向きに戻す。その後浸水が進んでくると、浮体31で構成された本体部30のみが寝台のベース部分10から分離して浮上するので、この本体部30を緊急避難用ボートのように使用するのである(図5(c)~(d))。
【0036】
本体部30を構成する浮体31は、浸水時、本体部30に十分な浮力が得られるように例えば発泡スチロール等の発泡樹脂材で構成することができるが、本実施形態では、最も好適な発泡体としてスタイロフォーム(登録商標)を使用している。
【0037】
スタイロフォーム(登録商標)はザ・ダウ・ケミカル・カンパニーの商標名であるが、押出法ポリスチレンフォーム(XPS:Extruded Polystyrene)であり、完全に独立した無数の空洞を有する発泡体で、1立方メートルあたりの重量が20~30Kg程度の軽量でありながら適度な硬さを有している。耐水性に優れる上、熱伝導率も低いので、救助隊が到着するまで水上で待つ間、寒さをしのぐのにも好適である。また、スタイロフォーム(登録商標)は難燃性の点でも優れており、火災発生時に焼失もしくは溶解するおそれもない。
【0038】
キャスター71は、平時は寝台のベース部分10に設けた格納部(前格納部11、後格納部14)に格納されており、浸水時は寝台のベース部分10を横向きに立てた状態において下側となる面から突出する位置まで移動させることが可能なスライド機構を備えている。キャスター71のスライド機構は図7図8に示すとおりの構造である。
【0039】
キャスター71は、平時は後格納部14を構成する外板14bと内板14cの間の空間に格納されている。車輪71aを軸支する軸77は、横断面コの字状の移動台座74に取り付けられており、台座74の開放している部分が横断面ロの字状の固定台座75と摺動可能に係合している。73bはつまみ螺子73aに対応するボルトである。このつまみ螺子73aを回転させて緩めるとキャスター71はスライド可能な状態となる。浸水時は、キャスター71を外側に突出させた状態とし、その位置でつまみ螺子73aを締め付けると、キャスター71はその位置で外板14bに対して固定される。76は固定台座75を内板14cに対して固定するボルトである。
【0040】
図9に示すように、本体部30は、凹状部32を備えている。浸水時、避難者は凹状部32内で休息し、睡眠を取ることができる。また、図示していないが、凹状部32の壁面に手摺りを取り付け、揺れの恐怖を緩和できるようにしても良い。33は浮体31で構成される本体部30の角部の強度を高めるために取り付けたフレームである。
【0041】
また、凹状部32には、少なくとも水、食料を含む避難用品を収容するケースを設置することが望ましい。避難者は、水や食料を補給しながら、救助隊の到着を待つことができる。なお、ケースには、必要に応じて風邪薬、絆創膏、防寒具、下着、靴下、手袋、ラジオ、救命道具、懐中電灯等を格納しても良い。
【0042】
また、浸水時は、図10に示すように、本体部30の浮体31の上面に、風雨をしのいでプライバシーを確保するためのテント80を設置しても良い。テント80は、2本のポール81a,81bを備え、各ポールの先端を浮体31の上面の四隅に設けた差込部に挿入して設営したもので、生地82の一箇所に出入口83が設けられている。なお、84は浸水時、救助者に対して光によって居場所を報知するためのライトである。
【0043】
他の例として、図11に示すように、ジョイント式のパイプ91~94で骨組みを組み立て、その上に屈折可能な簀子95を載置するテント90を用いても良い。簀子95には隙間があるため、日差しが強い時は風通しが良く、日光の直射を避けることができる。雨の時は簀子95の上にシートを被せれば良い。この実施例の場合、パイプ91~94は、平時は小さなサイズに分解できるので、場所を取らず省スペース化が図れる。
【0044】
[第2実施例]
以下では、起立補助手段として、内部取り付け型のねじりバネ510を用いる第2実施例について説明する。第2実施例では、キャスターは、着脱式のキャスター710を用いる。
【0045】
第2実施例では、前格納部11、後格納部14に代えて、板状の部材である前衝立部110、後衝立部140を設けている(図12)。また、右側板部12、左側板部13は存在せず、代わりにコの字状のフレーム16、17、18、19が螺子によって接合されている。第2実施例では、本体部30の側方を囲む筐体はなく、本体部30はフレーム16~19の内側に載置し、容易に離脱しないようにロープを用いてフレーム16~19に対して固定する。これが第2実施例における寝台のベース部分10となる。
【0046】
浸水時、寝台のベース部分10を横向きに立てる作業を補助し、寝台のベース部分10を起立方向に回動させて傾斜させるねじりバネ510(起立補助手段)は、内部取り付け型であり、前衝立部110の内側に取り付けられている。後衝立部140の裏面側は、図12には表れていないが、その構成は前衝立部110の裏面側の構成と同じであり、左右対称の関係にある。
【0047】
ねじりバネ510は、図13に示すように、コイル部51aの中心に螺子52を通し、螺子52のナットを締めることで前衝立部110に固定する。そして、固定アーム51bの回転を螺子53で押さえながら、作動アーム51cを、固定アーム51bとの間のねじり角度を十分に小さくした状態で、フレーム16の上に係止させる。作動アーム51cの先端には引き抜くことが可能なレバー51dが設けられており、レバー51は載置した本体部30の下から外側に露出している。
【0048】
浸水時は、作動アーム51cの先端のレバー51dを引き抜くことでフレーム16との係止が解除され、これによって固定アーム51bに対し、作動アーム51bとの間のねじり角度が元の状態まで復元しようとする力が働く。このねじりバネ510による付勢によって寝台のベース部分10は、起立方向に回動して傾斜した状態となる。従って、第2実施例のベッド1も浸水時は寝台のベース部分10を極めて少ない力で簡単に横向きに立てることができる。また、第2実施例は、起立補助手段として用いるねじりバネ510が、内部取り付け型で外側から見えることがないので、平時における外観も良好となる。
【0049】
キャスター710は、前記寝台のベース部分の一部を構成している、たとえば前衝立部110や後衝立部140の任意の位置に取り付け可能な固定手段を備えた構成である。浸水時は、上述した作動アーム51cの解除を行う前に、キャスター710を寝台のベース部分10を横向きに立てた状態において下側となる面側に取り付けてセットされる(図13)。これにより、作動アーム51cを解除して寝台のベース部分10を起立させた状態において下側となる面には2つの車輪71aを有したキャスター710が存在することになる。従って、第2実施例のベッド1も、横向きに立てた状態のまま水平方向の移動が容易に行える。
【0050】
第2実施例では、横向きに立てた状態で水平方向に移動させてドアを通過した後は、屋外もしくは屋外に通じている広い安全な場所で、寝台のベース部分10を平時の使用状態の向きに戻すと共に、フレーム16~19に対して本体部30を固定していたロープを解いておく。その後、浸水が進んでくると、フレーム16~19から本体部30が分離して浮上するのである。
【0051】
キャスター710の固定手段は、図14図15に示すとおりの構造である。車輪71aを軸支する台座79に対し長板77がボルトで固定されている。長板77から短板78が手前側に突出するように延設されており、長板77と短板78は略平行で、その間隔は前衝立部110の厚みよりも若干広い間隔となっている。短板78の先端部の螺孔には固定螺子78aが取り付けられており、この固定螺子78aを締め付け方向に回転させることで、キャスター710は、後衝立部140の任意の位置に取り付けることができる。キャスター710は、平時は後衝立部140に設けた格納部141に置かれており、浸水時は格納部141から取り出して使用する。
【0052】
本発明は、前記の実施例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0053】
例えば、上記実施例では、浮体31は発泡樹脂材で構成する例を示したが、これに限らず、内部が空洞の樹脂材で構成された浮力室としても良い。また、浮力室の内部にポリウレタンフォーム、発泡スチロール、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等の発泡材を充填した構成でも良い。
【0054】
また、上記実施例では、ねじりバネ51,510を用いる例を示したが、起立補助手段の構成はこれに限らない。例えば寝台のベース部分10の底面に、片側の辺に沿って圧縮状態のスプリングを列設し、解除スイッチを押したときに圧縮状態が解除されてスプリングの作用で寝台のベース部分10を傾斜させる構成などでも良い。
【0055】
また、上記実施例では、直方体の形状の本体部30を開示したが、本体部30の構成はこれに限らない。例えば、図16に示すように浮体310を備えた本体部300に対し、ピン120によって回動可能に連結され、浸水時、本体部300の左右側方に展開するアウトリガー100,101を備えた構成でも良い。
【0056】
この場合、アウトリガー100,101は、本体部300と同様、スタイロフォーム(登録商標)等の高い浮力が得られる浮体130で構成する。このような構成を採用した場合は、浸水時、アウトリガー100,101が本体部300の側方に位置するので、濁流が発生している状況でもローリングに対する安定性が高まり、本体部300が転覆するリスクを低減できる。
【符号の説明】
【0057】
1 ベッド
10 寝台のベース部分
30,300 本体部
31,310 浮体
51,510 ねじりバネ(起立補助手段)
71,710 キャスター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16