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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130764
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】位置計測装置および位置計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/26 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
G01S5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029332
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】萬造寺 博
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA04
5J083AB20
5J083AC11
5J083AC18
5J083AD03
5J083AD04
5J083AD18
5J083AE02
5J083BA01
5J083BD11
5J083BE01
5J083BE17
5J083BE30
(57)【要約】
【課題】範囲が限られた対象水域において、高精度に受波器の位置を計測する、位置計測装置および位置計測方法を提供する。
【解決手段】位置計測装置は、複数のパルスゲート算出部と、複数の信号検出部と、位置計算部とを備える。複数のパルスゲート算出部の各々は、複数の受波器が配置された架台の位置、架台の回転角、および、架台における各受波器の位置に基づき、送波器から複数の受波器の各々まで直接的に伝搬する音響信号である直接波に対して、当該音響信号の反射波が重畳しない時間範囲を算出する。複数の信号検出部の各々は、複数のパルスゲート算出部の各々が算出した時間範囲において、複数の受波器の各々が受信した音響信号に基づく信号を検出する。位置計算部は、複数の信号検出部が信号を検出した、当該時間範囲における検出時間の、時間差に基づき、各受波器の位置の座標を計算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送波器から発せられて対象水域の水中を伝搬する音響信号を用いて、該音響信号を受信する複数の受波器の各々の位置を計測する位置計測装置であって、
前記複数の受波器が配置された架台の位置、前記架台の回転角、および、前記架台における前記複数の受波器の各々の位置に基づいて、前記送波器から前記複数の受波器の各々まで直接的に伝搬する前記音響信号である直接波に対して、前記音響信号の反射波が重畳しない時間範囲を、それぞれが算出する複数のパルスゲート算出部と、
前記複数のパルスゲート算出部の各々が算出した前記時間範囲において、前記複数の受波器の各々が受信した前記音響信号に基づく信号を、それぞれが検出する複数の信号検出部と、
前記複数の信号検出部が前記信号を検出した、前記時間範囲における検出時間の、時間差に基づいて、前記複数の受波器の各々の位置の座標を計算する位置計算部と、
を備える、位置計測装置。
【請求項2】
前記複数のパルスゲート算出部の各々は、
前記架台の位置、前記回転角、および、前記架台における前記複数の受波器の各々の位置に基づいて、前記複数の受波器の各々の位置から誤差の範囲における概略位置の座標を計算し、前記送波器の位置と前記概略位置と音速とに基づいて、前記送波器から前記複数の受波器の各々までの前記直接波の伝搬時間から誤差の範囲における概略伝搬時間を計算し、該概略伝搬時間を用いて、前記時間範囲を算出する、請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記複数のパルスゲート算出部の各々は、
前記概略伝搬時間から第1猶予時間前の時間を始点とし、前記概略伝搬時間から第2猶予時間後の時間を終点とした、前記時間範囲を算出し、
前記第1猶予時間および前記第2猶予時間は、
前記対象水域の広さ、前記対象水域の水深、前記対象水域における前記送波器の位置、および、前記複数の受波器の各々の前記概略位置の少なくともいずれかから定められる、請求項2に記載の位置計測装置。
【請求項4】
前記複数の受波器の各々が受信した前記音響信号に基づく前記信号を、前記複数の信号検出部の各々が検出した前記検出時間と、前記送波器が前記音響信号を発した時間と、に基づいて、前記複数の受波器の各々と前記送波器との間の距離を計算する距離計算部を更に備え、
前記位置計算部は、
前記距離計算部が計算した前記距離と、前記検出時間の前記時間差とに基づいて、前記複数の受波器の各々の位置の座標を計算する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の位置計測装置。
【請求項5】
前記距離計算部は、
前記送波器を含む送波装置から、該送波器が前記音響信号を発した時間を示す送波時間情報を取得する、請求項4に記載の位置計測装置。
【請求項6】
前記複数の受波器は、3つ以上の前記受波器であって、
前記位置計算部は、
前記3つ以上の受波器のうちのいずれか1つの前記受波器の位置の座標を計算する場合において、前記いずれか1つの受波器に近接する位置に配置された、前記3つ以上の受波器のうちの2つの前記受波器であって、互いに異なる方向において前記いずれか1つの受波器と並ぶ前記2つの受波器の各々が受信した、前記音響信号に基づく前記信号が検出された前記検出時間と、前記いずれか1つの受波器が受信した前記音響信号に基づく前記信号が検出された前記検出時間と、の間の前記時間差に基づいて前記いずれか1つの受波器の位置の座標を計算する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の位置計測装置。
【請求項7】
前記位置計算部が計算した、前記複数の受波器の各々の位置の座標を用いて処理を行う平均算出部を更に備え、
前記複数の受波器は、
前記送波器から前記音響信号を複数回受信し、
前記位置計算部は、
前記複数の受波器が前記音響信号を受信する度に、前記複数の受波器の各々の位置の座標を計算し、
前記平均算出部は、
前記位置計算部が前記複数回計算した、前記複数の受波器の各々の位置の座標を用いて、前記複数の受波器の各々の平均座標を算出する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の位置計測装置。
【請求項8】
前記位置計算部が計算した、前記複数の受波器の各々の位置の座標を用いて処理を行う平均算出部を更に備え、
前記複数の受波器は、
2以上の前記送波器の各々から前記音響信号を受信し、
前記位置計算部は、
前記複数の受波器が前記音響信号を受信する度に、前記2以上の送波器のうちの、該音響信号の送信元の前記送波器の位置の座標を用いて、前記複数の受波器の各々の位置の座標を計算し、
前記平均算出部は、
前記位置計算部が計算した、前記複数の受波器の各々の位置の座標を累積的に記憶し、且つ、記憶している、前記複数の受波器の各々の位置の座標を用いて、前記複数の受波器の各々の平均座標を算出する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の位置計測装置。
【請求項9】
送波器から発せられて対象水域の水中を伝搬する音響信号を用いて、該音響信号を受信する複数の受波器の各々の位置を計測する位置計測装置によって実行される位置計測方法であって、
前記複数の受波器が配置された架台の位置、前記架台の回転角、および、前記架台における前記複数の受波器の各々の位置に基づいて、前記送波器から前記複数の受波器の各々まで直接的に伝搬する前記音響信号である直接波に対して、前記音響信号の反射波が重畳しない時間範囲を、それぞれにおいて算出する複数のパルスゲート算出ステップと、
前記複数のパルスゲート算出ステップの各々において算出された前記時間範囲において、前記複数の受波器の各々が受信した前記音響信号に基づく信号を、それぞれにおいて検出する複数の信号検出ステップと、
前記複数の信号検出ステップにおいて前記信号が検出された、前記時間範囲における検出時間の、時間差に基づいて、前記複数の受波器の各々の位置の座標を計算する位置計算ステップと、
を含む、位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象水域において送波器から発せられた音響信号を用いて、対象水域における複数の受波器の各々の位置を計測する、位置計測装置および位置計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、音波による信号を用いて、複数の受波器と、送波器との間の位置関係について計測する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。当該技術は、海洋における船舶の位置計測に用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】海洋音響学会編,「海洋音響の基礎と応用」,成山堂書店,2004年4月28日,p.241-242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術を用いて、例えば水槽など、範囲が限られた対象水域における、受波器と送波器との間の位置関係について計測する場合、以下のような問題が発生し得る。対象水域において送波器から発せられた音波は、水面、対象水域の底面、および、対象水域における壁面において反射し、反射した音波は互いに重畳する。受波器は、重畳した音波を受信する。このため、受波器が受信する音波の位相は、反射波によるノイズによって、送波器からの伝搬時間と対応付けられないものとなる。これにより、当該位相を当該伝搬時間と対応付けて行う、受波器の位置の計測の精度が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、範囲が限られた対象水域において、高精度に受波器の位置を計測する、位置計測装置および位置計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位置計測装置は、送波器から発せられて対象水域の水中を伝搬する音響信号を用いて、該音響信号を受信する複数の受波器の各々の位置を計測する位置計測装置であって、前記複数の受波器が配置された架台の位置、前記架台の回転角、および、前記架台における前記複数の受波器の各々の位置に基づいて、前記送波器から前記複数の受波器の各々まで直接的に伝搬する前記音響信号である直接波に対して、前記音響信号の反射波が重畳しない時間範囲を、それぞれが算出する複数のパルスゲート算出部と、前記複数のパルスゲート算出部の各々が算出した前記時間範囲において、前記複数の受波器の各々が受信した前記音響信号に基づく信号を、それぞれが検出する複数の信号検出部と、前記複数の信号検出部が前記信号を検出した、前記時間範囲における検出時間の、時間差に基づいて、前記複数の受波器の各々の位置の座標を計算する位置計算部と、を備える。
【0007】
本発明に係る位置検出方法は、送波器から発せられて対象水域の水中を伝搬する音響信号を用いて、該音響信号を受信する複数の受波器の各々の位置を計測する位置計測装置によって実行される位置計測方法であって、前記複数の受波器が配置された架台の位置、前記架台の回転角、および、前記架台における前記複数の受波器の各々の位置に基づいて、前記送波器から前記複数の受波器の各々まで直接的に伝搬する前記音響信号である直接波に対して、前記音響信号の反射波が重畳しない時間範囲を、それぞれにおいて算出する複数のパルスゲート算出ステップと、前記複数のパルスゲート算出ステップの各々において算出された前記時間範囲において、前記複数の受波器の各々が受信した前記音響信号に基づく信号を、それぞれにおいて検出する複数の信号検出ステップと、前記複数の信号検出ステップにおいて前記信号が検出された、前記時間範囲における検出時間の、時間差に基づいて、前記複数の受波器の各々の位置の座標を計算する位置計算ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る位置計測装置および位置計測方法によれば、直接波に反射波が重畳しない時間範囲において、音響信号に基づく信号が検出される。そのため、当該信号が検出された検出時間に対応する、音響信号の位相は、送波器から複数の受波器の各々までの、当該音響信号の伝搬時間に対応したものとなる。当該検出時間の時間差に基づく、各受波器の位置の座標の計算により、対象水域において高精度に受波器の位置の計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る位置計測装置を含む位置計測システムの構成例を示す図である。
図2】SSBL方式に基づく、受波器の位置の計測について説明するための模式図である。
図3】音響信号の到来角度の算出について説明するための図である。
図4】パルスゲートについて例示する図である。
図5】実施の形態1に係る位置計測装置による位置計測処理を例示するフローチャートである。
図6】実施の形態2に係る位置計測装置を含む位置計測システムの構成例を示す図である。
図7】実施の形態2に係る位置計測装置による位置計測処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に係る位置計測装置および位置計測方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る位置計測装置を含む位置計測システムの構成例を示す図である。実施の形態1に係る位置計測システム100は、実施の形態1に係る位置計測装置1と、送波装置2と、受波装置3と、回転装置4と、配置記憶装置5とを有する。配置記憶装置5は、位置計測装置1または受波装置3に含まれていてもよい。
【0011】
送波装置2は、信号を生成し、音波によって当該信号を送信する。以下では、音波による信号を音響信号と記載する場合がある。受波装置3は、送波装置2から送信された音響信号を受信する。位置計測装置1は、送波装置2から送信されて受波装置3が受信した音響信号に対応するデジタル信号を用いて、送波装置2と受波装置3との間の位置関係について計測するものである。以下、詳細に説明する。
【0012】
送波装置2は、信号生成部20、第1変換部21、および送波器22を備える。信号生成部20は、第1変換部21を介して送波器22に接続されている。信号生成部20は、デジタル形式の信号を生成する。なお、実施の形態1では、当該信号を、パルス信号とする。第1変換部21は、当該信号をデジタル形式からアナログ形式に変換する。送波器22は、対象水域の水中に設置され、音波によって当該信号を送信する。対象水域とは、例えば、水槽、プール、または池など、広さおよび深さなどの範囲が限定された水域を指す。
【0013】
受波装置3は、N個の受波器30と、N個の第2変換部31とを備える。なお、実施の形態1では、Nを3以上の自然数とする。以下、N個の受波器30の各々を、受波器301、受波器302、・・・、受波器30Nと記載する。なお、受波器301~受波器30Nのうちのいずれかを、受波器30Aと記す場合もある。ここで、Aは、1からNまでの自然数のいずれかである。また、N個の第2変換部31の各々を、第2変換部311、第2変換部312、・・・、第2変換部31Nと記載する。なお、第2変換部311~第2変換部31Nのうちのいずれかを、当該Aを用いて、第2変換部31Aと記す場合もある。受波器30Aは、第2変換部31Aと接続されている。
【0014】
N個の受波器30は、架台32の一面にアレイ状に配置されている。N個の受波器30は、架台32と共に対象水域の水中に設置され、音響信号などの音波を受信する。なお、実施の形態1における各受波器30は、水中において伝搬する、音響信号の音波、または、音響信号以外の音波を、随時受信するものとする。音響信号以外の音波は、ノイズとなるが、振幅が小さいなどの理由のため、許容される誤差の範囲におけるノイズとして無視する。
【0015】
各受波器30は、受信した音波に基づくアナログ形式の信号を生成する。受波器30Aは、当該アナログ形式の信号を第2変換部31Aに出力する。各第2変換部31は、各受波器30から入力されたアナログ形式の信号を、デジタル形式の信号に変換する。ここで、当該音波に基づく、当該デジタル形式の信号の位相は、当該音波の位相と一致する。従って、音響信号の位相と、当該音響信号に基づくデジタル信号の位相は一致する。第2変換部31は、変換後のデジタル信号を、随時、位置計測装置1に出力する。
【0016】
以下では、受波器30Aが受信する音響信号を、A番目の音響信号と記載する場合もある。そして、受波器30Aが音響信号に基づいて生成したアナログ信号と、第2変換部31Aが当該音響信号に基づくアナログ信号を変換して生成したデジタル信号とを、A番目の信号と記載する場合もある。
【0017】
回転装置4は、不図示の例えばアクチュエータなどを含み、水中の架台32を回転させる。回転装置4についての詳細は、後述する。
【0018】
位置計測装置1は、N個の信号検出部10と、距離計算部11と、(N-1)個の位相差計算部12と、位置計算部13と、N個のパルスゲート算出部14と、を備える。以下、N個の信号検出部10の各々を、信号検出部101、信号検出部102、・・・、信号検出部10Nと記載する。なお、信号検出部101~信号検出部10Nのうちのいずれかを、上記Aを用いて、信号検出部10Aと記す場合もある。また、(N-1)個の位相差計算部12の各々を、位相差計算部121、・・・、位相差計算部12(N-1)と記載する。なお、位相差計算部121~12(N-1)のいずれかを、位相差計算部12Bと記す場合もある。ここで、Bは、1から(N-1)までのいずれかの自然数である。更に、N個のパルスゲート算出部14の各々を、パルスゲート算出部141、パルスゲート算出部142、・・・、パルスゲート算出部14Nと記載する。なお、パルスゲート算出部141~パルスゲート算出部14Nのうちのいずれかを、上記Aを用いて、パルスゲート算出部14Aと記す場合もある。
【0019】
信号検出部10Aは、第2変換部31Aと接続されている。信号検出部10Aは、第2変換部31Aから、音波に基づくデジタル信号を取得する。信号検出部10Aは、A番目の信号を検出する。なお、当該A番目の信号はパルス信号であるため、信号検出部10Aは、受波器30Aが音響信号を受信していない状態において受波装置3から得ていたデジタル信号の振幅からの、A番目の信号の振幅への急峻な変化を検出する。
【0020】
信号検出部10Aは、第2変換部31Aからデジタル信号を取得した時間を計測している。あるいは、信号検出部10Aは、受波器30Aから第2変換部31Aを介して、当該受波器30Aが音波を受信した時間を示す情報を取得する。または、信号検出部10Aは、第2変換部31Aから、デジタル信号と共に、第2変換部31Aが当該デジタル信号を信号検出部10Aに出力する時間を示す情報を取得する。なお、実施の形態1において、時間とは、位置計測システム100において共通の特定の時刻を起点とし、当該起点からの時間を指すものとする。
【0021】
信号検出部10Aは、A番目の信号を検出した時間を抽出する。なお、実施の形態1における受波装置3は、各受波器30が音波を受信次第、各信号検出部10にデジタル信号を出力し、信号検出部10は、受波装置3からデジタル信号を取得次第、音響信号に基づく信号を検出するための処理を開始する。以下では、信号検出部10Aが、A番目の信号を検出した時間を検出時間と記載する。また、検出時間を示す情報を検出時間情報と記載する。
【0022】
なお、各信号検出部10は、取得したデジタル信号を一定時間保持し、保持したデジタル信号から、音響信号に基づく信号を検出するものでもよい。この場合には、Aが1~Nの各々の信号検出部10Aは、受波装置3からデジタル信号を取得した時間、または、受波器30Aが当該デジタル信号の元となる音波を受信した時間と対応付けて、当該デジタル信号を記憶する。そして、信号検出部10Aは、第2変換部31Aから、音響信号に基づく信号を取得し始めた時間、または、受波器30Aが音響信号を受信し始めた時間を抽出する。この場合において上記検出時間は、各信号検出部10が抽出した当該時間を指すものとする。
【0023】
信号検出部101~信号検出部10Nは、距離計算部11に接続されている。信号検出部101は、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)に接続されている。また、信号検出部102~信号検出部10Nの各々は、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)の各々に接続されている。すなわち、Aが2~Nの各々の信号検出部10Aは、位相差計算部12(A-1)に接続されている。距離計算部11は、各信号検出部10から、検出時間情報を取得する。各位相差計算部12は、信号検出部101から検出時間情報を取得する。また、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)の各々は、信号検出部102~信号検出部10Nの各々から検出時間情報を取得する。
【0024】
距離計算部11は、各信号検出部10に接続されていると共に、送波装置2における信号生成部20とも接続されている。信号生成部20は、送波器22が、パルス信号である音響信号を発した時間を示す送波時間情報を、距離計算部11に送信する。なお、送波時間情報は、送波器22が音響信号を発した時間に代えて、信号生成部20が信号を生成した時間を示す情報であってもよい。または、送波時間情報は、信号生成部20が、生成した信号を第1変換部21に出力した時間を示す情報であってもよい。送波時間情報が示す時間は、信号生成部20において、予め定められていてもよい。この場合には、当該時間において送波器22は、当該音響信号を送信する。
【0025】
距離計算部11は、信号生成部20から受信した送波時間情報と、各信号検出部10から取得した検出時間情報とを用いて、送波器22と各受波器30との間の距離を計算する。具体的には、距離計算部11は、当該検出時間情報が示す時間と、送波時間情報が示す時間との差分を計算する。距離計算部11は、当該差分に音速を乗じて、送波器22と各受波器30との間の距離を計算する。当該音速は、水中を伝搬する音波の平均速度として、予め想定されるものでもよい。
【0026】
位相差計算部12Bは、信号検出部101および信号検出部10(B+1)の各々から取得した検出時間情報に基づいて、1番目の信号と(B+1)番目の信号との間の位相差を計算する。なお、1番目の信号と(B+1)番目の信号との間の位相差は、当該信号におけるノイズが無視できる場合には、当該1番目の信号の検出時間と、当該(B+1)番目の信号の検出時間との間の時間差に対応する。すなわち、当該位相差は、当該信号におけるノイズが無視できる場合には、送波器22から受波器301への音響信号の伝搬時間と、送波器22から受波器30(B+1)への当該音響信号の伝搬時間との時間差に対応する。なお、伝搬時間とは、送波器22から発せられた音響信号が、各受波器30に到達するまでの時間を指す。
【0027】
位置計算部13は、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)の各々、および、距離計算部11と接続されている。位置計算部13は、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)の各々から、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)の各々が計算した位相差を取得する。また、位置計算部13は、距離計算部11から、当該距離計算部11が計算した距離を取得する。
【0028】
位置計算部13は、各受波器30への音響信号の到来方位について計算し、当該到来方位に基づいて、各受波器30の対象水域における位置の座標を計算する。以下、位置計算部13による、受波器30Aの位置の座標の計算処理について説明する。
【0029】
位置計算部13は、(N-1)個の位相差計算部12のうち、2つまたは3つの位相差計算部12によって得られた位相差に基づいて、受波器30Aへの音響信号の到来角度を計算する。ここで、受波器30Aに対して、2つの受波器30が近接する位置に配置されているとする。当該近接する位置とは、当該2つの受波器30の各々と、受波器30Aとの間の距離が、後述するように、音響信号の波長の半分以下の長さの位置を意味するものとする。また、当該2つの受波器30は、それぞれ、異なる方向において受波器30Aと並んでいるものとする。なお、当該2つの受波器30は、それぞれ異なる方向において受波器30Aと隣接するものでもよい。以下、当該2つの受波器30を、それぞれ、受波器30C、受波器30Dとする。ここで、C、Dは、互いに異なる1からNまでのいずれかの自然数であり、Aと異なる数である。
【0030】
位置計算部13は、受波器30Aへの音響信号の到来方位の計算において、A番目の信号とC番目の信号との間の位相差と、A番目の信号とD番目の信号との間の位相差とを用いる。これらの位相差の取得方法は、受波器30Aが受波器301である場合と、受波器30Aおよび当該2つの受波器30のいずれもが受波器301ではない場合と、当該2つの受波器30のうちの一方が受波器301である場合とで異なるため、それぞれの場合における位相差の取得方法について、以下説明する。
【0031】
位置計算部13は、上述のように、受波器301への音響信号の到来方位の計算において、1番目の信号とC番目の信号との間の位相差と、1番目の信号とD番目の信号との間の位相差とを用いる。1番目の信号とC番目の信号との間の位相差は、位相差計算部12(C-1)から得られる。また、1番目の信号とD番目の信号との間の位相差は、位相差計算部12(D-1)から得られる。
【0032】
位置計算部13は、受波器30Aおよび当該2つの受波器30のいずれもが受波器301ではない場合には、受波器30Aへの音響信号の到来方位の計算に用いる上記位相差を、以下のように取得する。位置計算部13は、位相差計算部12(A-1)が計算した、1番目の信号とA番目の信号との間の位相差、および、位相差計算部12(C-1)が計算した、1番目の信号とC番目の信号との間の位相差を用いて、A番目の信号とC番目の信号との間の位相差を計算する。より詳細には、位置計算部13は、1番目の信号からのC番目の信号の位相差を、1番目の信号からのA番目の信号の位相差によって減ずることにより、A番目の信号からのC番目の信号の位相差を得る。同様に、位置計算部13は、位相差計算部12(A-1)が計算した、1番目の信号とA番目の信号との間の位相差、および、位相差計算部12(D-1)が計算した、1番目の信号とD番目の信号との間の位相差を用いて、A番目の信号とD番目の信号との間の位相差を計算する。
【0033】
位置計算部13は、受波器30Cと受波器30Dの一方が、受波器301である場合には、受波器30Aへの音響信号の到来方位の計算に用いる上記位相差を、以下のように取得する。なお、ここでは、Cを1とし、受波器30Cを受波器301とする。位置計算部13は、位相差計算部12(A-1)から、C番目の信号とA番目の信号との間の位相差を取得する。位置計算部13は、位相差計算部12(A-1)が計算した、1番目の信号とA番目の信号との間の位相差、および、位相差計算部12(D-1)が計算した、1番目の信号とD番目の信号との間の位相差を用いて、A番目の信号とD番目の信号との間の位相差を計算する。
【0034】
位置計算部13は、距離計算部11が計算した送波器22と受波器30Aとの間の距離、および、受波器30Aへの音響信号の到来方位を用いて、受波器30Aの位置の座標を計算する。なお、実施の形態1に係る位置計測装置1は、SSBL(Super Short Base Line)方式に基づいて、受波器30Aの位置の座標を計算するものとする。
【0035】
図2は、SSBL方式に基づく、受波器の位置の計測について説明するための模式図である。図2に示すように、以下では、対象水域を、互いに直交するx軸、y軸、およびz軸によるxyz空間によって示す。図2においては、理解容易のため、受波器30A、受波器30C、および受波器30Dは、対象水域における水平面であるxy平面に配置されているとし、受波器30Aは、座標が(0,0,0)の原点Oに配置されているとする。そして、送波器22は、座標が(x,y,z)の点Tに配置されているとする。
【0036】
受波器30Aへの音響信号の到来方位の、x軸、y軸、およびz軸からの角度を、それぞれ、θx、θy、θzとする。以下では、音響信号の到来方位に対応する角度であって、x~z軸からの当該到来方位の角度を、到来角度と記載する場合もある。受波器30Aへの音響信号の到来角度は、(θx,θy,θz)となる。ここで、θxとθyとθzの間には、以下の式(1)によって示される関係が成立する。
cos2θz=1-cos2θx-cos2θy (1)
【0037】
送波器22の位置の座標である(x,y,z)は、θxおよびθyと、距離計算部11が計算した、送波器22と受波器30Aとの間の距離Rとを用いて、以下の式(2)~(4)によって算出される。
xT=Rcosθx (2)
yT=Rcosθy (3)
zT=R・(1-cos2θx-cos2θy)1/2 (4)
【0038】
図3は、音響信号の到来角度の算出について説明するための図である。図3には、理解容易のために、図2における2つの受波器30を示す。当該2つの受波器30のうちの一方を受波器30Aとする。そして、他方を受波器30Pとする。なお、Pは、CまたはDと等しく、受波器30Pは、受波器30Cまたは受波器30Dである。
【0039】
図3において音響信号は、2つの受波器30Aおよび受波器30Pに、角度θで入射するものとする。ここで、受波器30Pが受波器30Cである場合には、θは、図2におけるθxであり、受波器30Pが受波器30Dである場合には、θは、図2におけるθyである。
【0040】
図3では、受波器30Aが受信した音響信号をSLAによって示し、受波器30Pが受信した音響信号をSLPによって示す。図3に示すように、音響信号SLAと音響信号SLPとの間には、位相差δφがある。なお、受波器30Aと受波器30Cの各々が受信した音響信号の位相差δφは、Aが1である場合には、位相差計算部12(C-1)によって計算され、Cが1である場合には、位相差計算部12(A-1)によって計算され、AおよびCのいずれもが1ではない場合には、位相差計算部12(A-1)および位相差計算部12(C-1)が計算した位相差を用いて得られる。受波器30Aと受波器30Dの各々が受信した音響信号の位相差δφは、Aが1である場合には、位相差計算部12(D-1)によって計算され、Dが1である場合には、位相差計算部12(A-1)によって計算され、AおよびDのいずれもが1ではない場合には、位相差計算部12(A-1)および位相差計算部12(D-1)が計算した位相差を用いて得られる。
【0041】
図3に示す位相差δφは、受波器30Aおよび受波器30Pが受信するノイズが無視できる場合には、送波器22から受波器30Aまでの音響信号の伝搬時間と、送波器22から受波器30Pまでの音響信号の伝搬時間との間の時間差に対応する。当該位相差δφを用いて、以下の式(5)より、音響信号が受波器30Aへ到来する角度θが得られる。
θ=arccos{(δφ・c)/(2π・f・d)} (5)
【0042】
ここで、fは、音響信号の周波数であり、cは、水中での音速であり、dは、受波器30Aと受波器30Pとの間の距離である。実施の形態1では、fは予め得られているとし、dは予め定められているとし、cは予め想定されているとする。式(5)によって、θxおよびθyが得られる。
【0043】
なお、実施の形態1に係る位置計測装置1が、(-π)以上であってπ以下のδφを算出し、且つ、0以上であってπ以下のθを算出するためには、dは、以下の式(6)を満たす必要がある。
d≦λ/2 (6)
【0044】
なお、λは、水中での音響信号の波長であって、以下の式(7)を満たす。
λ=c/f (7)
【0045】
以上、受波器30Aを基準として、当該受波器30Aが配置されている位置を原点Oとした場合における送波器22の位置の座標の計算について説明した。一方、送波器22を基準として、当該送波器22が配置されている位置を原点とすると、受波器30Aの位置の座標は、上記式(2)~(4)の各々を満たすx、y、zを用いて、(-x,-y,-z)となる。
【0046】
実施の形態1に係る位置計測装置1は、送波器22の位置を示す座標を予め取得しているものとし、各受波器30の位置の座標を計算する。そのため、位置計算部13は、対象水域における送波器22の位置の座標を用いて、上記(-x,-y,-z)を補正する。具体的には、送波器22の位置の座標が、(α,β,γ)で示される場合には、受波器30Aの位置の座標は、(α-x,β-y,γ-z)となる。位置計測装置1は、2つ以上の受波器30の各々の位置の座標を並行して計算してもよいし、各受波器30の位置の座標を逐次的に計算してもよい。
【0047】
以上、各受波器30の位置の座標の計算について説明したが、海域ではなく対象水域に受波器301~受波器30Nと送波器22とが配置された場合には、各受波器30の位置の座標が正確に得られなくなる虞がある。以下、このことについて説明する。
【0048】
水中を伝搬する音波は、対象水域または海域等の、水面、底面、または壁面等に到達した場合において反射する。信号生成部20が生成した信号を示す音波であって、送波器22から発せられた音波も、当該水面、当該底面、または当該壁面等に到達した場合において反射する。以下では、特に断りがない限り、単に音波と記載する場合には、送波器22から発せられた音波を指すものとする。また、以下では、送波器22から発せられた後に、当該水面、当該底面、または当該壁面等において反射した当該音波を、反射波と記載する場合もある。更に、以下では、送波器22から発せられた後、直接的に、すなわち、水面、底面、または壁面等において反射することなく、各受波器30に到来した音波を、直接波と記載する場合もある。
【0049】
直接波は、信号生成部20が生成した信号を示す。一方、反射波は、直接波に重畳してノイズとなる。詳細には、反射波の重畳により、直接波の位相は変化する。位相の変化によって、送波器22から各受波器30までの音波の伝搬時間と、各受波器30が受信する当該音波の位相とが対応付けられなくなる。そのため、複数の受波器30のうちの任意の2つの受波器30までの、音波の伝搬時間の時間差と、当該2つの受波器30が受信する音波の位相差とが対応付けられなくなる。すると、位置計測装置1は、上述した式(1)~式(5)を用いての、各受波器30の位置の座標の計算が正確に行えなくなる。従って、各受波器30の位置の座標の計算が精度良く行われるには、反射波による影響が低減されることが望ましい。
【0050】
ここで、直接波の伝搬経路は、反射波の伝搬経路に比べて短い。そのため、直接波は反射波よりも各受波器30に早く到達する。広い海域内に各受波器30と送波器22とが配置されている場合には、送波器22から発せられた音波が海面または海底等に到達して反射した後、各受波器30に到達するまでには長い時間がかかる場合が多い。そのため、各受波器30が、直接波を受信し始める時点から、反射波を受信し始める時点までの時間差は、長くなる場合が多い。従って、各受波器30と送波器22とが広い海域内に配置されている場合においては、各受波器30は、反射波が重畳しない直接波を、十分に長い時間、受信できる。そして、位置計測装置1は、小さなノイズの信号によって、各受波器30の位置の座標を精度良く得ることができる。
【0051】
一方、水槽などの対象水域内に各受波器30と送波器22とが配置された場合には、当該対象水域は、海域に比べて、狭く、水深も浅いため、各受波器30は、海域内に配置された場合に比べて早い時点から反射波を受信する。従って、各受波器30が直接波を受信し始める時点から、反射波を受信し始める時点までの時間は、海域内における場合に比べて短いものとなる。
【0052】
実施の形態1に係る位置計測装置1は、対象水域内を伝搬する音波のうちの直接波による信号を抽出し、当該信号を用いて、高精度に各受波器30の位置を計測するものである。以下、そのための構成および機能等について説明する。
【0053】
図1の参照に戻る。実施の形態1における信号検出部10Aは、パルスゲート算出部14Aと接続されている。信号検出部10Aは、パルスゲート算出部14Aと一体であってもよい。パルスゲート算出部14Aは、反射波が重畳していない直接波を、受波器30Aが受信する時間範囲を算出する。以下では、当該時間範囲をパルスゲートと記載する。パルスゲートの算出方法については、後述する。
【0054】
信号検出部10Aは、パルスゲート算出部14Aから、パルスゲートを示すパルスゲート情報を取得する。各信号検出部10は、各パルスゲート算出部14から取得したパルスゲート情報に基づき、パルスゲートにおいて、音響信号に基づく信号を検出する。各信号検出部10は、パルスゲートにおける、当該信号が検出された検出時間を、距離計算部11に通知する。信号検出部101は、当該検出時間を、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)に通知する。信号検出部102~信号検出部10Nの各々は、当該検出時間を、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)の各々に通知する。距離計算部11、位相差計算部12B、および位置計算部13等による以降の処理は、パルスゲートにおける検出時間に基づいて、上述のように実行される。これにより、位置計測装置1は、ノイズが低減された信号に基づいて、対象水域における各受波器30の位置計測を精度良く実行できるようになる。以下、パルスゲートの算出処理について詳述する。
【0055】
パルスゲート算出部14Aは、後述する回転装置4および配置記憶装置5と接続されている。実施の形態1における回転装置4は、回転制御部40および架台回転部41を有する。回転制御部40は、各パルスゲート算出部14と接続されている。また、回転制御部40は、架台回転部41と接続されており、架台回転部41を制御する。架台回転部41は、上述のようにアクチュエータなどを含み、架台32に動力を伝達し、架台32を回転させる。回転制御部40は、架台32の回転角度を決定し、架台32を当該回転角度だけ回転させるよう、架台回転部41に指示を行う。架台回転部41は、回転制御部40からの指示に応じて、架台32を回転させる。
【0056】
架台32における、各受波器30が配置される面には、座標が対応付けられている。以下では、架台32における座標軸を、x’軸、y’軸と記載する。(x’,y’)が(0,0)となる架台32上の点を、架台32における原点とする。また、架台32の当該面における中心点を、架台32における中心点と記載する。実施の形態1における回転制御部40は、架台32における原点または中心点等の、対象水域における座標を予め取得しているものとする。なお、対象水域における座標とは、上述したxyz空間における座標を指す。
【0057】
回転制御部40は、架台32における原点または中心点等の、対象水域における座標に代えて、架台回転部41の例えば重心などの位置の、対象水域における座標を予め取得していてもよい。ここで、架台32と架台回転部41とは、動力伝達のために物理的に接触しており、架台回転部41の重心等の、対象水域における座標が定まれば、架台32における原点または中心点等の、対象水域における座標が定まるものとする。以下では、架台32における原点もしくは中心点等、または、架台回転部41の重心等の、対象水域における位置を、架台32の位置と記載する場合もある。また、架台32の位置を示す情報を架台位置情報と記載する場合もある。
【0058】
回転制御部40は、架台位置情報と、決定した回転角度とを、各パルスゲート算出部14に送信する。回転制御部40は、回転装置4に代えて、位置計測装置1に含まれてもよい。
【0059】
実施の形態1における配置記憶装置5は、各受波器30の架台32における位置のx’座標とy’座標とを記憶している。以下では、各受波器30の架台32における位置のx’座標とy’座標とを、配列情報と記載する場合もある。
【0060】
各パルスゲート算出部14は、回転制御部40から、架台位置情報と回転角とを取得し、配置記憶装置5から配列情報を取得する。パルスゲート算出部14Aは、架台位置情報、回転角、および配列情報を用いて、対象水域における受波器30Aの概略的な位置の、x座標、y座標、およびz座標を計算する。ここで、対象水域における受波器30Aの概略的な位置について説明する。架台位置情報が示す、架台32の原点または中心点等のx座標、y座標、およびz座標と、架台32の回転角と、配列情報が示す、架台32における各受波器30のx’座標およびy’座標と、によって、幾何学的に各受波器30の位置のxyz座標が計算できる。
【0061】
ここで、回転装置4の動作上の誤差によって、回転制御部40が決定した回転角と、回転した架台32の回転角度との間に誤差が発生する場合がある。また、架台32のたわみにより、架台32上におけるx’座標およびy’座標の位置が、理論上のx’座標およびy’座標の位置とは異なってしまう場合がある。これらの原因により、架台位置情報と回転角と配列情報とを用いて幾何学的に算出された、各受波器30の位置のxyz座標は、実際の各受波器30の位置のxyz座標と異なってしまう可能性がある。すなわち、各受波器30の位置のxyz座標を、架台位置情報と回転角と配列情報とを用いて算出したものには誤差が生じている可能性がある。上記受波器30Aの概略的な位置とは、受波器30Aが存在する位置からの、当該誤差の範囲における位置を指す。以下では、当該概略的な位置を概略位置と記載する場合もある。また、以下では、特に断りが無い限り、単に座標と記載する場合には、xyz座標を意味するものとする。そして、以下では、単に位置と記載する場合には、当該xyz座標によって表される位置を指すものとする。
【0062】
パルスゲート算出部14Aは、受波器30Aの概略位置の座標と、送波器22の位置の座標と、想定される音速cとを用いて、送波器22が音響信号を送信してから直接波が受波器30Aに到達するまでに要する、概略的な時間を計算する。ここで、概略的な時間とは、概略位置の座標を用いて得られる、誤差の範囲における時間である。すなわち、パルスゲート算出部14Aは、受波器30Aの概略位置の座標を用いることによって、送波器22が音響信号を送信してから直接波が受波器30Aに到達するまでに要する時間として、誤差の範囲における時間を算出する。以下では、当該概略的な時間を概略伝搬時間と記載する場合もある。
【0063】
パルスゲート算出部14Aは、概略伝搬時間から第1猶予時間Δtだけ前の時点を始点とした時間範囲であって、概略伝搬時間から第2猶予時間Δtだけ後の時点を終点とした時間範囲を、パルスゲートとする。第1猶予時間Δtおよび第2猶予時間Δtは、上記パルスゲートにおいて、各受波器30が反射波を受信しないよう定められる。第1猶予時間Δtおよび第2猶予時間Δtは、対象水域の水深、対象水域の広さ、対象水域における送波器22の位置、および、受波器30Aの概略位置等のうちの少なくともいずれかから定められてもよい。第1猶予時間Δtおよび第2猶予時間Δtは、予め定められていてもよいし、各受波器30の概略位置の座標の計算の都度、当該座標に応じて決定されてもよい。第1猶予時間Δtおよび第2猶予時間Δtは、互いに等しくとも、異なっていてもよい。また、第1猶予時間Δtおよび第2猶予時間Δtのうちの少なくとも一方は、パルスゲート算出部14毎に、例えば、各受波器30の概略位置によって、異なっていてもよい。
【0064】
図4は、パルスゲートについて例示する図である。図4において、横軸は時間軸であり、縦軸は音波の振幅を示す。図4において、SLTは、送波器22から発せられた音波を示し、SLAは、受波器30Aが受信した音波を示し、SLPは、受波器30Pが受信した音波を示す。なお、受波器30Aと受波器30Pは、図3におけるものと同様とする。すなわち、受波器30Pは、図2における受波器30Cと受波器30Dのいずれかであり、受波器30Aとの間の距離dが式(6)を満たすものである。
【0065】
図4では、送波器22が音響信号を送信した時間を0とする。また、送波器22と受波器30Aとの間の距離をRとする。この場合において受波器30Aは、式(8)を満たす時間tにおいて当該音響信号の直接波を受信する。なお、式(8)におけるcは音速である。
t0=R/c (8)
【0066】
受波器30Pは、時間tから時間δtの経過後に当該直接波を受信する。当該δtは、図3における位相差δφに対応する。
【0067】
パルスゲート算出部14Aは、受波器30Aに直接波が到達する時間tから誤差の範囲における時間tを概略伝搬時間として算出している。パルスゲート算出部14Aは、時間tから時間Δtだけ前の時間tを始点とし、時間tから時間Δtだけ後の時間tを終点とするパルスゲートΔTを算出する。
【0068】
同様に、パルスゲート算出部14Pは、受波器30Pに音響信号が到達する時間t+δtから誤差の範囲における時間tを概略伝搬時間として算出している。パルスゲート算出部14Pは、時間tから時間Δtだけ前の時間tを始点とし、時間tから時間Δtだけ後の時間tを終点とするパルスゲートΔTを算出する。
【0069】
図4に示すように、受波器30Aは、時間tにおいて、直接波と反射波とが重畳した波を最初に受信する。なお、以下では、直接波と反射波とが重畳した波を重畳波と記載する場合もある。受波器30Pは、時間tにおいて、重畳波を最初に受信する。
【0070】
図4に示すように、パルスゲートΔTにおいて受波器30Aは、直接波を受信するが、重畳波を受信していない。同様に、パルスゲートΔTにおいて受波器30Pは、直接波を受信するが、重畳波を受信していない。
【0071】
このように、各パルスゲート算出部14によって得られたパルスゲートにおいて、各受波器30は、直接波を受信し、重畳波を受信しない。すなわち、各受波器30は、送波器22から各受波器30までの伝搬時間と、位相とが対応する信号を、パルスゲートにおいて受信する。このため、各信号検出部10が抽出する検出時間は、当該伝搬時間に相当するものとなる。従って、位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)の各々が計算する位相差は、2~N番目の各々の音響信号の伝搬時間と、1番目の音響信号の伝搬時間との時間差に対応する位相差となる。当該位相差によって、位置計算部13は、高精度に各受波器30の位置について計算できる。
【0072】
実施の形態1における位置計測装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリと、入力インターフェース回路と、通信インターフェース回路等とを用いて構成可能である。位相差計算部121~位相差計算部12(N-1)および位置計算部13の各々の機能は、プロセッサが、メモリに記憶されている、位置計測プログラムなどの各種プログラムを読み出して実行することにより実現できる。各信号検出部10の機能のうち、各第2変換部31から信号を取得する機能は、入力インターフェース回路によって実現できる。各信号検出部10の機能のうち、信号を検出する機能、および、検出時間を抽出する機能は、プロセッサが、メモリに記憶されている、位置計測プログラムなどの各種プログラムを読み出して実行することにより実現できる。距離計算部11の機能のうち、信号生成部20から送波時間情報を受信する機能は、通信インターフェース回路によって実現できる。距離計算部11の機能のうち、送波器22と各受波器30との間の距離を計算する機能は、プロセッサが、メモリに記憶されている、位置計測プログラムなどの各種プログラムを読み出して実行することにより実現できる。回転制御部40が位置計測装置1に含まれない場合において、各パルスゲート算出部14の機能のうち、回転制御部40から架台位置情報を取得する機能は、通信インターフェース回路によって実現できる。配置記憶装置5が位置計測装置1に含まれない場合において、各パルスゲート算出部14による機能のうち、配置記憶装置5から配列情報を取得する機能は、通信インターフェース回路によって実現できる。各パルスゲート算出部14による、概略位置、概略伝搬時間、およびパルスゲートの算出機能は、プロセッサが、メモリに記憶されている、位置計測プログラムなどの各種プログラムを読み出して実行することにより実現できる。
【0073】
なお、回転制御部40が位置計測装置1に含まれる場合には、当該回転制御部40の機能は、架台回転部41に制御用の信号を出力するための出力インターフェース回路によって実現できる。また、配置記憶装置5が位置計測装置1に含まれる場合には、当該配置記憶装置5の機能は、HDD(Hard Disk Drive)およびリムーバブルディスク等の記憶装置、または、上記メモリによって実現できる。回転制御部40および配置記憶装置5が位置計測装置1に含まれる場合には、各パルスゲート算出部14は、プロセッサおよびメモリによって実現できる。位置計測装置1は、その全部または一部を専用のハードウェアとしてもよい。
【0074】
図5は、実施の形態1に係る位置計測装置による位置計測処理を例示するフローチャートである。ステップS1において各パルスゲート算出部14は、回転制御部40から架台位置情報および回転角を取得し、配置記憶装置5から配列情報を取得する。
【0075】
ステップS2において各パルスゲート算出部14は、架台位置情報と回転角と配列情報とに基づいて、各受波器30の概略位置の座標を計算し、各受波器30の概略位置の座標に基づいて、各受波器30が直接波を受信するまでの概略伝搬時間を計算する。ステップS3において各パルスゲート算出部14は、当該概略伝搬時間を用いてパルスゲートを算出する。そして、各パルスゲート算出部14は、算出したパルスゲートを、各信号検出部10に通知する。
【0076】
ステップS4において各受波器30は音響信号を受信する。そして、各受波器30は、受信した音響信号に基づくアナログ信号を、各第2変換部31に出力する。各第2変換部31は、当該アナログ信号をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号を、各信号検出部10に出力する。なお、ステップS4の処理は、ステップS1~ステップS3の処理と並行して実行されてもよいし、ステップS1~S3のいずれか以前に実行されてもよい。なお、当該ステップS4の処理が、上記ステップS3以前に実行される場合には、各信号検出部10は、各パルスゲート算出部14からパルスゲートを取得するまでの間に各第2変換部31から取得した信号を、時系列で記憶する。
【0077】
ステップS5において各信号検出部10は、パルスゲートにおいて、音響信号に基づく信号を検出し、当該パルスゲートにおける、当該信号が検出された検出時間を抽出する。各信号検出部10は、当該検出時間を、接続されている位相差計算部12に通知する。また、各信号検出部10は、検出時間を距離計算部11に通知する。
【0078】
ステップS6において距離計算部11は、信号生成部20から取得した送波時間情報が示す時間と、各信号検出部10から通知された検出時間と、音速とに基づいて、各受波器30と送波器22との間の距離を計算する。なお、距離計算部11は、ステップS6以前において信号生成部20から送波時間情報を取得しているとする。
【0079】
ステップS7において、Bが1~(N-1)の各々の位相差計算部12Bは、信号検出部10(B+1)および信号検出部101の各々から通知された検出時間に基づいて、(B+1)番目の信号と、1番目の信号との間の位相差を計算する。各位相差計算部12は、計算した位相差を位置計算部13に通知する。なお、ステップS6の処理と、ステップS7の処理は、並行して実行されてもよいし、逆の順番で実行されてもよい。
【0080】
ステップS8において位置計算部13は、距離計算部11が計算した距離と、各位相差計算部12が計算した位相差とを用いて、各受波器30の位置の座標を計算する。
【0081】
以下、実施の形態1に係る位置計測装置1の効果について述べる。実施の形態1に係る位置計測装置1は、送波器22から発せられて対象水域の水中を伝搬する音響信号を用いて、当該音響信号を受信する複数の受波器30の各々の位置を計測する。位置計測装置1は、複数のパルスゲート算出部14、複数の信号検出部10、および位置計算部13を備える。複数のパルスゲート算出部14の各々は、複数の受波器30が配置された架台32の位置、架台32の回転角、および、架台32における複数の受波器30の各々の位置に基づいて、送波器22から複数の受波器30の各々まで直接的に伝搬する音響信号である直接波に対して、音響信号の反射波が重畳しない時間範囲を算出する。複数の信号検出部10の各々は、複数のパルスゲート算出部14の各々が算出した当該時間範囲において、複数の受波器30の各々が受信した音響信号に基づく信号を検出する。位置計算部13は、複数の信号検出部10が当該信号を検出した、当該時間範囲における検出時間の、時間差に基づいて、複数の受波器30の各々の位置の座標を計算する。これにより、当該時間差に対応する位相差は、送波器22から複数の受波器30までの伝搬時間の時間差に対応するものとなり、複数の受波器30の各々の位置の座標の計算の精度、すなわち、複数の受波器30の各々の位置の計測精度が向上する。
【0082】
実施の形態1における複数のパルスゲート算出部14の各々は、架台32の位置、上記回転角、および、架台32における複数の受波器30の各々の位置に基づいて、対象水域における複数の受波器30の各々の位置から誤差の範囲における概略位置の座標を計算する。そして、当該複数のパルスゲート算出部14の各々は、送波器22の位置と当該概略位置と音速とに基づいて、送波器22から複数の受波器30の各々までの直接波の伝搬時間から誤差の範囲における概略伝搬時間を計算する。当該複数のパルスゲート算出部14の各々は、当該概略伝搬時間を用いて、当該時間範囲を算出する。従って、各パルスゲート算出部14は、各受波器30の概略位置の座標を幾何学的に計算し、当該概略位置の座標から、当該各受波器30までの直接波の概略伝搬時間を算出できる。当該概略伝搬時間を用いることにより、反射波が重畳していない直接波が受信される時間範囲を、当該概略伝搬時間を用いない場合に比べ、高精度に算出可能となる。位置計測装置1は、当該時間範囲における上記検出時間の時間差を用いることにより、複数の受波器30の位置を精度良く計測できる。
【0083】
実施の形態1における複数のパルスゲート算出部14の各々は、概略伝搬時間から第1猶予時間Δt前の時間を始点とし、当該概略伝搬時間から第2猶予時間Δt後の時間を終点とした、当該時間範囲を算出する。第1猶予時間Δtおよび第2猶予時間Δtは、対象水域の広さ、対象水域の水深、対象水域における送波器22の位置、および、複数の受波器30の各々の概略位置の少なくともいずれかから定められる。すなわち、当該時間範囲は、概略伝搬時間、第1猶予時間Δt、および第2猶予時間Δtから得られ、当該第1猶予時間Δtおよび第2猶予時間Δtは、対象水域の広さおよび水深、送波器22の対象水域における位置、ならびに、複数の受波器30の各々の概略位置の少なくともいずれかによって定められる。従って、複数のパルスゲート算出部14は、範囲が限られた対象水域において、反射波が直接波に重畳しない当該時間範囲を精度良く算出できる。よって、位置計測装置1は、当該時間範囲における検出時間の時間差に基づいて、複数の受波器30の各々の位置を高い精度で計測できる。
【0084】
実施の形態1に係る位置計測装置1は、距離計算部11を更に備える。距離計算部11は、複数の受波器30の各々が受信した音響信号に基づく信号を、複数の信号検出部10の各々が検出した検出時間と、送波器22が音響信号を発した時間と、に基づいて、複数の受波器30の各々と送波器22との間の距離を計算する。位置計算部13は、距離計算部11が計算した当該距離と、当該検出時間の時間差とに基づいて、複数の受波器30の各々の位置の座標を計算する。距離計算部11は、検出時間と、送波器22が音響信号を発した時間とを用いることにより、高精度に複数の受波器30の各々と送波器22との間の距離を計算できる。位置計算部13は、当該距離を用いることにより、複数の受波器30の各々の位置の座標を精度良く計算できる。
【0085】
実施の形態1における距離計算部11は、送波器22を含む送波装置2から、当該送波器22が音響信号を発した時間を示す送波時間情報を取得する。距離計算部11は、送波装置2から取得した当該送波時間情報を用いることにより、複数の受波器30の各々と送波器22との間の距離を、更に高い精度で計算できる。従って、位置計測装置1による位置計測の精度が更に向上する。
【0086】
実施の形態1における位置計算部13は、3つ以上の受波器30のうちのいずれか1つの受波器30Aの位置の座標を計算する場合において、当該受波器30Aに近接する位置に配置された2つの受波器30であって、互いに異なる方向において受波器30Aと並ぶ2つの受波器30の各々が受信した、音響信号に基づく信号が検出された検出時間と、受波器30Aが受信した音響信号に基づく信号が検出された検出時間と、の間の時間差に基づいて、受波器30Aの位置の座標を計算する。これにより、位置計測装置1は、各受波器30の位置の、空間における座標を高精度に計算できる。
【0087】
実施の形態2.
実施の形態1に係る位置計測装置1は、直接波に反射波が重畳する前のパルスゲートにおいて各受波器30が受信した当該直接波に基づく信号の位相差を用いて、SSBL方式によって、当該各受波器30の位置の座標を計算するものであった。反射波が重畳していない直接波の位相は、送波器22から各受波器30までの音響信号の伝搬時間に対応する。そのため、複数の受波器30が受信する当該直接波に基づく信号の位相差は、送波器22から当該複数の受波器30までの音響信号の伝搬時間の時間差に対応する。当該位置計測装置1は、当該時間差に対応する位相差を用いることによって、範囲が限られた対象水域における各受波器30の位置の座標を高精度に計算するものであった。
【0088】
実施の形態2では、1以上の送波器22から複数回に亘って音響信号が送信され、各受波器30の位置の座標が当該複数回計算されて、平均化される。これにより、実施の形態2では、各受波器30の位置の計測精度を更に向上させる。
【0089】
以下、実施の形態2では、上記実施の形態1における構成要素と同様の構成要素に対し、同一の符号を付すものとする。また、実施の形態2において、実施の形態1における構成内容と同様の構成内容、および、実施の形態1における機能と同様の機能等については、特段の事情がない限り、説明を省略する。
【0090】
図6は、実施の形態2に係る位置計測装置を含む位置計測システムの構成例を示す図である。実施の形態2における位置計測システム200は、送波装置6、および、実施の形態2に係る位置計測装置7を有する。送波装置6は、信号生成部20、1以上の第1変換部21、および、1以上の送波器22を備える。位置計測装置7は、実施の形態1に係る位置計測装置1が備える構成に加え、平均算出部15を備える。当該平均算出部15は、上記プロセッサおよび上記メモリによって実現できる。
【0091】
実施の形態2における送波装置6は、1以上の送波器22のうちの1つの送波器22が音響信号を送信してから、予め定められた時間以後に、1以上の送波器22のうちの、当該1つの送波器22、または、他の送波器22が音響信号を送信するものである。当該予め定められた時間は、音波が発せられてから、当該音波が水中において減衰するまでの時間であって、当該音波の振幅が閾値以下となるまでの時間である。以下では、当該予め定められた時間を減衰時間と記載する場合もある。
【0092】
実施の形態2における信号生成部20は、音響信号を送信する送波器22を、1以上の送波器22から選択する。送波装置6には、送波器22と同じ数の第1変換部21が含まれる。送波器22と第1変換部21は、1対1で接続されている。信号生成部20は、選択した送波器22と接続されている第1変換部21に信号を出力する。信号生成部20から信号を取得した第1変換部21は、当該信号をデジタル形式からアナログ形式に変換し、接続先の送波器22に、変換後の信号を出力する。第1変換部21から信号を取得した送波器22は、当該信号を音波によって送信する。
【0093】
信号生成部20は、送波器22が音響信号を送信してから減衰時間の経過以後において、次の音響信号を送波器22に送信させる。信号生成部20は、送波器22が音響信号を送信してから減衰時間の経過以後において、信号を生成してもよい。あるいは、信号生成部20は、送波器22が音響信号を送信してから減衰時間の経過以後において、生成した信号を第1変換部21に出力してもよい。
【0094】
送波装置6が複数の送波器22を有する場合には、信号生成部20は、位置計測装置7の距離計算部11に、音響信号が発せられた時間を示す送波時間情報と共に、当該音響信号を送信した送波器22を識別する情報を送信する。位置計測装置7は、送波装置6に複数の送波器22が含まれる場合には、各送波器22の位置の座標を、各送波器22を識別する情報と関連付けて記憶しているものとする。以下では、音響信号を送信した送波器22を識別する情報を送波器情報と記載する場合もある。なお、位置計測装置7は、送波装置6に送波器22が1つだけ含まれる場合には、当該送波器22の位置の座標を記憶している。
【0095】
実施の形態2における信号生成部20は、送波器22が音響信号を送信する時間を示す送波時間情報と、当該送波器22を識別するための送波器情報とを、当該送波器22が当該音響信号を送信する時点において、距離計算部11に送信する。あるいは、信号生成部20は、当該時点から予め定められた時間以内に、当該送波時間情報と当該送波器情報とを送信してもよい。または、信号生成部20は、当該時点から、予め定められた時間だけ前の時点において、当該送波時間情報と当該送波器情報とを送信してもよい。なお、当該予め定められた時間は、減衰時間よりも短い。なお、信号生成部20によって、送波時間情報および送波器情報が送信されるタイミングは、上述のものに限定されない。また、信号生成部20は、送波時間情報および送波器情報を同時にではなく、別々に送信してもよい。
【0096】
実施の形態2におけるパルスゲート算出部14Aは、送波装置6に複数の送波器22が含まれる場合には、各送波器22の位置の座標と、受波器30Aの概略位置の座標と、音速とを用いて、各送波器22が音響信号を送信してから、受波器30Aが各送波器22から信号を受信するまでの概略伝搬時間を計算する。そして、パルスゲート算出部14Aは、当該概略伝搬時間からパルスゲートを算出する。これにより、A番目の信号のパルスゲートは、送波器22毎に算出される。
【0097】
パルスゲート算出部14Aは、送波器22毎について算出したパルスゲートを、信号検出部10Aに通知する。信号検出部10Aは、当該複数の送波器22のうちの1つの送波器22が音響信号を送信し、距離計算部11が送波器情報を信号生成部20から受信した場合には、当該送波器情報を距離計算部11から取得する。信号検出部10Aは、パルスゲート算出部14Aが、音響信号の送信元の送波器22の位置の座標と、受波器30Aの概略位置の座標と、音速とを用いて算出したパルスゲートにおいて、当該音響信号に基づく信号を検出する。
【0098】
位相差計算部12Bは、信号検出部101と信号検出部10(B+1)の各々から、音響信号に基づく信号を検出した検出時間情報を取得する。そして、位相差計算部12Bは、(B+1)番目の信号と1番目の信号の位相差に対応する時間差であって、(B+1)番目の信号が検出された検出時間と、1番目の信号が検出された検出時間との間の時間差を計算する。
【0099】
パルスゲート算出部14Aは、送波装置6に複数の送波器22が含まれている場合において、送波器22毎にパルスゲートを算出する代わりに、複数の送波器22のうちの1つを基準の送波器22とし、当該基準の送波器22の位置の座標と、受波器30Aの概略位置の座標と、音速とを用いて、パルスゲートを算出してもよい。なお、基準の送波器22は、送波装置6に含まれる複数の送波器22において、例えば、中心に位置する送波器22、または、中心から予め定められた距離以内に位置する送波器22である。
【0100】
パルスゲート算出部14Aは、送波装置6に1つの送波器22が含まれる場合には、上記実施の形態1と同様にパルスゲートを算出する。
【0101】
距離計算部11は、信号生成部20から取得した送波時間情報と、各信号検出部10から取得した検出時間情報と、音速とを用いて、音響信号を送信した送波器22と、各受波器30との間の距離を計算する。
【0102】
位置計算部13は、音響信号を送信した送波器22と、各受波器30との間の距離を、距離計算部11から取得する。位置計算部13は、受波器30Aが受信した音響信号と、当該受波器30Aに近接する上記受波器30Pが受信した音響信号との位相差から、当該音響信号の受波器30Aへの到来角度を、上述のように計算する。
【0103】
位置計算部13は、音響信号を送信した送波器22と、各受波器30との間の距離、および、当該音響信号の各受波器30への到来角度から、音響信号を送信した送波器22を基準とした各受波器30の位置の座標を計算する。
【0104】
位置計算部13は、送波装置6に複数の送波器22が含まれる場合には、距離計算部11から送波器情報を取得する。位置計算部13は、当該送波器情報と関連付けて記憶されている当該送波器22の位置の座標を用いて、算出した各受波器30の位置の座標を補正する。位置計算部13は、送波装置6に送波器22が1つだけ含まれる場合には、位置計測装置7に記憶されている、当該送波器22の位置の座標を用いて、算出した各受波器30の位置の座標を補正する。
【0105】
位置計算部13は、送波装置6から音響信号が送信されて、各受波器30が当該音響信号を受信する毎に、各受波器30の位置の座標を計算する。位置計算部13は、計算した当該座標を平均算出部15に通知する。平均算出部15は、位置計算部13から取得した、各受波器30の位置の座標を、累積的に記憶する。平均算出部15は、送波装置6による複数回の音響信号の送信処理によって得られた、各受波器30の位置の座標の平均を算出する。なお、当該複数回の音響信号の送信処理の各々は、上述のように減衰時間以上の長さの時間を挟んで行われる。以下、平均算出部15による処理を詳細に説明する。
【0106】
各受波器30が送波装置6から音響信号をM回受信している場合には、位置計算部13は、各受波器30の座標をM回計算している。そのため、平均算出部15には、受波器30毎に、M個の座標が記憶されている。送波装置6がi回目に音響信号を送信した場合において、位置計算部13が計算した、受波器30Aの位置の座標を(x、y、z)とする。この場合において平均算出部15は、受波器30Aの位置の座標として、(x、y、z)、(x、y、z)、・・・、(x、y、z)の、M個の座標を記憶する。平均算出部15は、当該M個の座標を用いて、受波器30Aの位置の平均座標を計算する。なお、受波器30Aの位置の平均座標とは、平均算出部15に記憶されている、受波器30Aの位置の座標を平均した座標を指す。以下、当該平均座標の算出について、具体的に説明する。
【0107】
平均算出部15は、受波器30Aのx座標である、x、x、・・・、xの平均値と、受波器30Aのy座標である、y、y、・・・、yの平均値と、受波器30Aのz座標である、z、z、・・・、zの平均値とを計算し、受波器30Aの位置の平均座標(xav、yav、zav)を得る。xav、yav、zavは、それぞれ、以下の式(9)~(11)を満たす。
av=(x+x+・・・+x)/M (9)
av=(y+y+・・・+y)/M (10)
av=(z+z+・・・+z)/M (11)
【0108】
送波装置6からの1回の音響信号の送信のみで得られた各受波器30の位置の座標には、誤差が含まれ得る。しかし、送波装置6からの複数回の音響信号の送信によって得られた各受波器30の位置の平均座標は、1回の音響信号の送信のみで得られた当該座標を修正したものとなり、誤差が小さくなっている。そのため、平均算出部15によって各受波器30の位置の座標は、より高精度に得られる。
【0109】
以下、位置計測装置7による処理の流れを、図7を参照して説明する。図7は、実施の形態2に係る位置計測装置による位置計測処理の流れを例示するフローチャートである。ステップS11において各パルスゲート算出部14は、回転制御部40から架台位置情報および回転角を取得し、配置記憶装置5から配列情報を取得する。
【0110】
ステップS12において各パルスゲート算出部14は、架台位置情報と回転角と配列情報とに基づいて、各受波器30の概略位置の座標を計算する。各パルスゲート算出部14は、送波装置6に複数の送波器22が含まれる場合には、各受波器30の概略位置の座標と、複数の送波器22の各々の位置の座標とに基づいて、各受波器30が複数の送波器22の各々の直接波を受信するまでの概略伝搬時間を計算する。各パルスゲート算出部14は、送波装置6に送波器22が1つだけ含まれる場合には、各受波器30の概略位置の座標と、当該送波器22の位置の座標とに基づいて、各受波器30が当該送波器22の直接波を受信するまでの概略伝搬時間を計算する。
【0111】
ステップS13において各パルスゲート算出部14は、送波装置6に複数の送波器22が含まれる場合には、送波器22毎に算出した概略伝搬時間を用いて、送波器22毎にパルスゲートを算出する。各パルスゲート算出部14は、送波装置6に送波器22が1つだけ含まれる場合には、当該送波器22から各受波器30までの直接波の概略伝搬時間を用いてパルスゲートを算出する。各パルスゲート算出部14は、算出したパルスゲートを、各信号検出部10に通知する。
【0112】
ステップS14において距離計算部11は、信号生成部20から送波時間情報を受信し、各受波器30は、音響信号を受信する。なお、送波装置6に複数の送波器22が含まれる場合には、距離計算部11は、送波器情報を受信する。各受波器30は、受信した音響信号に基づくアナログ信号を、各第2変換部31に出力する。各第2変換部31は、当該アナログ信号をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号を、各信号検出部10に出力する。
【0113】
ステップS15において各信号検出部10は、パルスゲートにおいて、音響信号に基づく信号を検出し、当該パルスゲートにおける、当該信号が検出された検出時間を抽出する。なお、当該パルスゲートは、当該音響信号を送信した送波器22の位置の座標と、各受波器30の概略位置の座標とを用いて計算された概略伝搬時間から算出されたものである。各信号検出部10は、当該検出時間を、接続されている位相差計算部12に通知する。また、各信号検出部10は、検出時間を距離計算部11に通知する。
【0114】
ステップS16において距離計算部11は、信号生成部20から取得した送波時間情報と、各信号検出部10から取得した検出時間情報とを用いて、音響信号の送信元の送波器22と、各受波器30との間の距離を計算する。
【0115】
ステップS17において、Bが1~(N-1)の各々の位相差計算部12Bは、信号検出部10(B+1)および信号検出部101の各々から取得した検出時間情報に基づいて、(B+1)番目の信号と、1番目の信号との間の位相差を計算する。各位相差計算部12は、計算した位相差を位置計算部13に通知する。なお、ステップS16の処理と、ステップS17の処理は、並行して実行されてもよいし、逆の順番で実行されてもよい。
【0116】
ステップS18において位置計算部13は、距離計算部11が計算した距離と、各位相差計算部12が計算した位相差とを用いて、音響信号を送信した送波器22を基準とした各受波器30の位置の座標を計算する。ステップS19において位置計算部13は、音響信号を送信した送波器22の位置の座標を用いて、ステップS18において算出した各受波器30の位置の座標を補正する。そして、位置計算部13は、得られた各受波器30の位置の座標を平均算出部15に通知する。
【0117】
ステップS20において平均算出部15は、受波器30毎に累積して記憶している座標を平均し、各受波器30の位置の平均座標を算出する。ステップS20の処理後、位置計測装置7による処理は、ステップS14に戻る。なお、当該ステップS14において各受波器30が受信する音響信号の送信時点は、当該音響信号が送信される直前に送信された音響信号の送信時点から、減衰時間以降となる。上述したように、実施の形態2においては、送波装置6における1以上の送波器22のうちの1つの送波器22が音響信号を送信してから減衰時間の経過以後において、当該1以上の送波器22のうちの、当該1つの送波器22、または、他の送波器22が音響信号を送信する。
【0118】
以下、実施の形態2に係る位置計測装置7による効果について述べる。実施の形態2に係る位置計測装置7は、実施の形態1の位置計測装置1が備える構成に加えて、平均算出部15を備える。複数の受波器30は、送波器22から音響信号を複数回受信する。位置計算部13は、複数の受波器30が音響信号を受信する度に、複数の受波器30の各々の位置の座標を計算する。平均算出部15は、位置計算部13が複数回計算した、複数の受波器30の各々の位置の座標を用いて、複数の受波器30の各々の平均座標を算出する。これにより、各受波器30の位置の座標として、誤差が低減された平均座標が得られるため、位置計測装置7による計測精度が更に向上する。
【0119】
実施の形態2に係る位置計測装置7は、更に平均算出部15を備える。複数の受波器30は、2以上の送波器22の各々から音響信号を受信する。位置計算部13は、複数の受波器30が音響信号を受信する度に、当該2以上の送波器22のうちの、当該音響信号の送信元の送波器22の位置の座標を用いて、複数の受波器30の各々の位置の座標を計算する。平均算出部15は、位置計算部13が計算した、複数の受波器30の各々の位置の座標を累積的に記憶する。そして、平均算出部15は、記憶する、当該複数の受波器30の各々の位置の座標を用いて、複数の受波器30の各々の平均座標を算出する。これにより、各受波器30の位置の座標として、誤差が低減された平均座標が得られるため、位置計測装置7による計測精度が更に向上する。
【0120】
以上、実施の形態について説明したが、本発明の内容は、実施の形態に限定されるものではなく、想定しうる均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0121】
1、7 位置計測装置、2、6 送波装置、3 受波装置、4 回転装置、5 配置記憶装置、10、101~10N、10A 信号検出部、11 距離計算部、12、121~12(N-1)、12B 位相差計算部、13 位置計算部、14、141~14N、14A、14P パルスゲート算出部、15 平均算出部、20 信号生成部、21 第1変換部、22 送波器、30、301~30N、30A、30C、30D、30P 受波器、31、311~31N、31A 第2変換部、32 架台、40 回転制御部、41 架台回転部、100、200 信号計測システム、c 音速、d 受波器間の距離、O 原点、R 送波器と受波器との間の距離、SLA、SLP 音響信号、T 点、t、t、t、t、t、t、t、t、t、δt、t+δt 時間、ΔT、ΔT パルスゲート、Δt 第1猶予時間、Δt 第2猶予時間、θ、θx、θy、θz 角度、δφ 位相差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7