(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130765
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】防災装置、防災システムおよび防災方法
(51)【国際特許分類】
G08B 21/10 20060101AFI20220831BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20220831BHJP
G08B 31/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G08B21/10
G08B25/10
G08B31/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029333
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 真樹
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA14
5C086AA15
5C086CA01
5C086CA22
5C086CB31
5C086DA08
5C086DA14
5C086EA41
5C086EA45
5C086FA06
5C086GA09
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA37
5C087BB20
5C087BB74
5C087DD02
5C087EE07
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF03
5C087FF04
5C087FF16
5C087FF17
5C087FF19
5C087GG08
5C087GG11
5C087GG17
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】自然災害が発生するおそれがある状況下において、自動的に人に対して適切な行動を促すことができる防災装置、防災システムおよび防災方法を得る。
【解決手段】自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサと、予め決められた音声メッセージを記憶する子局記憶手段と、音声メッセージを出力する拡声用スピーカと、センサの検出値の情報を含むセンサデータを外部の情報処理装置に送信する子局通信手段と、検出値と予め決められた閾値とを比較し、検出値が閾値より大きい場合、音声メッセージを拡声用スピーカに出力させるとともに、子局通信手段を介してセンサデータを情報処理装置に送信する子局制御手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサと、
予め決められた音声メッセージを記憶する子局記憶手段と、
前記音声メッセージを出力する拡声用スピーカと、
前記センサの検出値の情報を含むセンサデータを外部の情報処理装置に送信する子局通信手段と、
前記検出値と予め決められた閾値とを比較し、前記検出値が前記閾値より大きい場合、前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させるとともに、前記子局通信手段を介して前記センサデータを前記情報処理装置に送信する子局制御手段と、
を有する防災装置。
【請求項2】
前記センサは、予め決められた位置が水没したか否かを検出する水没センサであり、
前記子局記憶手段は、前記閾値として、危険閾値を記憶し、
前記子局制御手段は、
前記水没センサから受信する前記検出値が前記危険閾値より大きい場合、洪水が発生した旨の前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させる、
請求項1に記載の防災装置。
【請求項3】
前記センサは、地面上の水の深さである水位を検出する水位センサであり、
前記子局記憶手段は、前記閾値として、第1の閾値と、前記第1の閾値よりも大きい値である第2の閾値とを記憶し、
前記子局制御手段は、
前記水位センサから受信する前記検出値が前記第2の閾値より大きい場合、建物内に待機することを勧告する前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させ、前記センサデータを前記情報処理装置に送信し、
前記水位センサから受信する前記検出値が前記第1の閾値より大きく、前記第2の閾値以下である場合、避難を勧告する前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させ、前記センサデータを前記情報処理装置に送信する、
請求項1または2に記載の防災装置。
【請求項4】
前記センサは、基準方向に対する傾きの変化を検出するジャイロセンサであり、
前記子局制御手段は、
前記ジャイロセンサから受信する前記検出値が前記閾値より大きい場合、避難を勧告する前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させる、
請求項1に記載の防災装置。
【請求項5】
前記センサは、風速を検出する風速センサであり、
前記子局制御手段は、
前記風速センサから受信する前記検出値が前記閾値より大きい場合、建物内に待機することを勧告する前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させる、
請求項1に記載の防災装置。
【請求項6】
前記センサ、前記子局通信手段および前記子局制御手段に電力を供給する蓄電池を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の防災装置。
【請求項7】
自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサと、拡声用スピーカとを有する拡声装置と、
前記センサの検出値の情報を含むセンサデータを前記拡声装置から受信する情報処理装置と、を有し、
前記拡声装置は、
前記センサデータを前記情報処理装置に送信する子局通信手段と、
予め決められた音声メッセージを記憶する子局記憶手段と、
前記検出値と予め決められた閾値とを比較し、前記検出値が前記閾値より大きい場合、前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させるとともに、前記子局通信手段を介して前記センサデータを前記情報処理装置に送信する子局制御手段と、を有する、
防災システム。
【請求項8】
複数の前記拡声装置を有し、
前記各子局記憶手段は、前記複数の拡声装置毎に異なり、自装置に対応する子局識別子を記憶し、
前記各子局通信手段は、前記子局識別子を前記センサデータに含めて前記情報処理装置に送信し、
前記情報処理装置は、
前記センサデータを前記複数の拡声装置から受信する親局通信手段と、
前記複数の拡声装置毎に前記子局識別子に対応して位置が記録された地図情報を記憶する親局記憶手段と、
前記複数の拡声装置から収集する前記センサデータと前記地図情報とを用いて、前記各拡声装置の位置に前記検出値の情報を示す災害マップを作成する親局制御手段と、
前記災害マップを表示する表示部と、を有する、
請求項7に記載の防災システム。
【請求項9】
前記複数の拡声装置のうち、少なくとも1つの拡声装置から前記センサデータを受信すると、受信した前記センサデータを前記情報処理装置に転送する中継装置をさらに有する、
請求項8に記載の防災システム。
【請求項10】
前記各拡声装置は、時刻を計測するタイマーを有し、
前記子局制御手段は、
前記検出値が前記閾値より大きいと判定したときの時刻を前記タイマーから取得し、取得した前記時刻の情報を前記センサデータに含める、
請求項8または9に記載の防災システム。
【請求項11】
自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサと、予め決められた音声メッセージを記憶する記憶手段と、前記音声メッセージを出力する拡声用スピーカと、通信手段とを有する防災装置による防災方法であって、
前記センサによって検出される検出値と予め決められた閾値とを比較するステップと、
前記検出値が前記閾値より大きい場合、前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させるとともに、前記検出値の情報を含むセンサデータを、前記通信手段を介して外部の情報処理装置に送信するステップと、
を有する防災方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然災害の誘因となる自然現象を監視する防災装置、防災システムおよび防災方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水害等の災害発生時に、住民に必要な情報を放送するための拡声用スピーカを備えた屋外拡声装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された防災無線システムでは、使用者は、屋外拡声装置の扉を開けずに、携帯無線機を用いて音声メッセージを拡声用スピーカに出力させることができる。
【0003】
また、洪水および津波等の水害を防止または軽減するために、河川および海洋における水位および水流を測定する計測システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示された計測システムは、河川等に設置された計測センサによって検出される水位および水流から水害の発生を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-181690号公報
【特許文献2】特開2014-222174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された防災無線システムでは、屋外拡声装置の使用者が、水害の状況を判定し、拡声用スピーカに出力させるメッセージを考える必要がある。そのため、水害状況の判定および拡声用スピーカから出力されるメッセージが、使用者によって異なる。特許文献2に開示された計測システムでは、水害の発生を予想するが、住民に対して、避難勧告等をアナウンスすることまでは行っていない。水害等の自然災害が発生するおそれがある状況下において、自動的に人に対して適切な行動を促すことができる防災装置、防災システムおよび防災方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防災装置は、自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサと、予め決められた音声メッセージを記憶する子局記憶手段と、前記音声メッセージを出力する拡声用スピーカと、前記センサの検出値の情報を含むセンサデータを外部の情報処理装置に送信する子局通信手段と、前記検出値と予め決められた閾値とを比較し、前記検出値が前記閾値より大きい場合、前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させるとともに、前記子局通信手段を介して前記センサデータを前記情報処理装置に送信する子局制御手段と、を有するものである。
【0007】
本発明に係る防災システムは、自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサと、拡声用スピーカとを有する拡声装置と、前記センサの検出値の情報を含むセンサデータを前記拡声装置から受信する情報処理装置と、を有し、前記拡声装置は、前記センサデータを前記情報処理装置に送信する子局通信手段と、予め決められた音声メッセージを記憶する子局記憶手段と、前記検出値と予め決められた閾値とを比較し、前記検出値が前記閾値より大きい場合、前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させるとともに、前記子局通信手段を介して前記センサデータを前記情報処理装置に送信する子局制御手段と、を有するものである。
【0008】
本発明に係る防災方法は、自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサと、予め決められた音声メッセージを記憶する記憶手段と、前記音声メッセージを出力する拡声用スピーカと、通信手段とを有する防災装置による防災方法であって、前記センサによって検出される検出値と予め決められた閾値とを比較するステップと、前記検出値が前記閾値より大きい場合、前記音声メッセージを前記拡声用スピーカに出力させるとともに、前記検出値の情報を含むセンサデータを、前記通信手段を介して外部の情報処理装置に送信するステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自然災害の発生度合を示す値を監視し、災害発生の度合が高いと判定すると、予め決められた音声メッセージを拡声用スピーカから出力し、災害発生の度合を示す情報を外部の情報処理装置に送信する。そのため、防災装置の付近にいる人は、自然災害の発生度合を示す値に基づく避難または待機等の適切な行動を取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る防災システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示した防災システムの一構成例を示す模式図である。
【
図3】
図2に示した水没センサの構成および動作を説明するための模式図である。
【
図4】
図1に示した拡声装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示した中継装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図1に示した情報処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態1に係る拡声装置の別の構成例を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態1に係る拡声装置の設置例を模式的に示す地形図である。
【
図9】実施の形態1に係る拡声装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1に係る防災システムの動作手順を示すシーケンス図である。
【
図11】変形例1に係る防災システムの拡声装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図12】変形例1において、複数の拡声装置の設置例を模式的に示す地形図である。
【
図13】変形例1において、情報処理装置が表示部に表示させる画像の一例を示す図である。
【
図14】実施の形態2に係る防災システムの一構成例を示す模式図である。
【
図15】
図14に示した拡声装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図16】実施の形態2に係る拡声装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図17】実施の形態1および2を組み合わせた拡声装置の一構成例を示す模式図である。
【
図18】変形例2に係る防災システムの拡声装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図19】変形例2において、
図18に示した拡声装置の設置例を模式的に示す地形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態1の防災装置を含む防災システムの構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係る防災システムの一構成例を示す図である。防災システム1は、音声を出力する拡声装置2と、拡声装置2から無線でデータを受信する情報処理装置3とを有する。拡声装置2は、例えば、市区町村防災の防災無線システムにおける拡声装置に用いられる。
図1は、防災システム1が中継装置4を有する場合を示しているが、中継装置4が防災システム1に設けられていなくてもよい。中継装置4は、拡声装置2と情報処理装置3との無線通信を中継する役目を果たす。拡声装置2が防災装置に相当する。
【0012】
本実施の形態1では、拡声装置2は電柱のように鉛直に立つ棒状の構造物に設置される。拡声装置2は、棒状の構造物に限らず、建物の壁に設置されてもよい。情報処理装置3は、災害対策拠点となる建物BDに設置される。拡声装置2が市区町村に設置される場合、災害対策拠点は、例えば、市区町村役場の建物である。情報処理装置3を防災対策拠点の親局とすると、拡声装置2は、自然災害の発生度合の情報を親局に提供する子局として機能する。
【0013】
図2は、
図1に示した防災システムの一構成例を示す模式図である。説明のために、
図2に示す拡声装置2、中継装置4および情報処理装置3の各寸法の縮尺率が互いに異なるようにしている。
図2は、拡声装置2が電柱に設置され、情報処理装置3が2階建ての建物BDの2階に設置されている場合を示す。拡声装置2は、電波を出力するアンテナ21と、音声を出力する拡声用スピーカ22と、本体部23と、操作部24と、水没センサ25とを有する。
【0014】
使用者(図示せず)が操作をしやすくするために操作部24は、例えば、大人が立った状態で目線の高さに設けられている。地面から操作部24の下面までの高さH1は、例えば、140~160cmである。水没センサ25は、操作部24の下に設けられている。本体部23は、電柱において、操作部24よりも高い位置に設けられている。地面から本体部23の下面までの高さH2は、例えば、2階床下の高さに相当する3m以上である。拡声装置2に外部から電力を供給するケーブル(図示せず)を接続するための接続部(図示せず)が、電柱において、操作部24よりも高い位置に設けられている。拡声用スピーカ22は、電柱の最上部に設置されている。
図2に示す構成例では、アンテナ21が拡声用スピーカ22と本体部23との間に設けられているが、アンテナ21が拡声用スピーカ22と同様に、電柱の最上部に設置されてもよい。
【0015】
図2に示すように、中継装置4は、アンテナ41を有する。アンテナ41は、拡声装置2から出力される電波を受信するアンテナ41aと、拡声装置2から受信した電波を情報処理装置3に転送するアンテナ41bとを有する。情報処理装置3は、拡声装置2から送信された電波を受信するアンテナ31を有する。
【0016】
水没センサ25は、自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサの一例である。自然災害は、土地に固有の素因と、誘因との組み合わせによって発生する。誘因とは、災害を発生させるトリガーとなる、地震、台風、豪雨および津波などの自然現象である。水没センサ25は、台風および集中豪雨などの自然現象を誘因とした洪水などの水害により、予め決められた位置の水没を検出する。水没検出対象の位置は、例えば、
図2に示す高さH1である。水没センサ25は、浸水センサまたは冠水センサと称されることもある。
【0017】
ここで、水没センサ25の構成の一例を説明する。
図3は、
図2に示した水没センサの構成および動作を説明するための模式図である。はじめに、水没センサ25の構成を説明する。
図3に示すように、水没センサ25は、直方体状の筐体51と、検出回路70とを有する。筐体51の材質は、例えば、合成樹脂等の絶縁体である。
【0018】
筐体51内には、フロート52が設けられている。フロート52の上面には金属製の板55が貼り付けられている。筐体51の下面には、筐体51内に水が入り込むための穴が形成されている。筐体51の側面上部には、筐体51内の空気を抜くための微細な穴54が形成されている。検出回路70は、端子71と端子72とを接続する導線に直流電源74および抵抗素子73が直列に接続されている。抵抗素子73と並列に電圧計75が接続されている。端子71および端子72の先端は、筐体51の上面を貫通して、筐体51内に位置している。
【0019】
続いて、
図3を参照して、水没センサ25の動作を説明する。水没センサ25が
図3の左側に示す水没前の状態では、端子71と端子72とが電気的に接続されていないので、電圧計75は電圧を検出しない。電圧計75は、抵抗素子73に電流が流れていないので、検出値Sgとして、例えば、0Vの信号を本体部23に送信する。このときの検出値Sgの信号をオフ信号と称する。
【0020】
図3の左側に示す状態から、水没センサ25の付近の川の堤防が決壊し、洪水が起こると、穴53から筐体51内に水Waが入る。穴53から筐体51内に水Waが入ると、筐体51内の空気は穴54から外に抜け、水位の上昇に伴ってフロート52が鉛直上方に移動する。その後、
図3の右側に示すように、端子71と端子72とが板55に接触し、検出回路70に電流が流れる。電圧計75は、抵抗素子73に電流が流れることで、抵抗素子73間の電位差を検出し、検出した電位差の情報を検出値Sgとして本体部23に送信する。このときの検出値Sgは、例えば、3Vの信号であり、オン信号と称する。
【0021】
次に、拡声装置2の構成を詳しく説明する。
図4は、
図1に示した拡声装置の一構成例を示すブロック図である。拡声装置2の本体部23は、子局通信手段11と、子局記憶手段12と、子局制御手段13と、電力制御手段14と、蓄電池15とを有する。子局通信手段11は、給電線(図示せず)を介してアンテナ21と接続されている。
【0022】
子局通信手段11は、情報処理装置3に無線でデータを送信する。子局記憶手段12は、予め決められた音声メッセージと、予め決められた閾値thwとを記憶する。音声メッセージは、洪水が発生した旨のメッセージである。閾値thwは、水没センサ25の検出値Sgに対して、洪水等の水害が発生したか否かの判定基準となる値である。閾値thwは、洪水発生の判定基準となる危険閾値に相当する。閾値thwは、例えば、2.5Vである。
【0023】
子局制御手段13は、水没センサ25から検出値Sgを受信すると、検出値Sgと閾値thwとを比較する。検出値Sgが閾値thwより大きい場合、子局制御手段13は、音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させるとともに、子局通信手段11を介して、検出値Sgの情報を含むセンサデータを情報処理装置3に送信する。
【0024】
電力制御手段14は、接続部(図示せず)を介して外部から供給される電力を予め決められた電圧の電力に変換し、変換した電力を子局通信手段11等の各手段と、拡声用スピーカ22と、水没センサ25とに供給する。また、電力制御手段14は、接続部(図示せず)を介して外部から供給される電力を用いて、蓄電池15を常に充電した状態に維持する。電力制御手段14は、外部からの電力供給が遮断されると、電力供給元を蓄電池15に変更し、蓄電池15から供給される電力を子局通信手段11等の各手段と、拡声用スピーカ22と、水没センサ25とに供給する。
図3に示した直流電源74は、電力制御手段14によって水没センサ25に供給される電力源に相当する。
【0025】
図4に示した本体部23のハードウェア構成の一例を説明する。本体部23のうち、蓄電池15を除く各手段の機能がソフトウェアで実行される場合、子局通信手段11、子局記憶手段12、子局制御手段13および電力制御手段14は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(図示せず)およびメモリ(図示せず)で構成される。メモリがプログラムを記憶し、プロセッサがプログラムにしたがって処理を実行することで、子局通信手段11等の各手段の機能が実現される。メモリは、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリである。また、メモリは、RAM(Random Access Memory)の揮発性の半導体メモリを有していてもよい。
【0026】
また、子局通信手段11、子局記憶手段12、子局制御手段13および電力制御手段14の各手段の機能を、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の処理回路(図示せず)によって実現してもよい。子局通信手段11、子局記憶手段12、子局制御手段13および電力制御手段14の各手段の機能を、1つの処理回路で実現してもよく、それぞれ別の処理回路で実現してもよい。
【0027】
次に、中継装置4の構成を詳しく説明する。
図5は、
図1に示した中継装置の一構成例を示すブロック図である。中継装置4は、通信制御手段42と、電力制御手段43と、蓄電池44とを有する。通信制御手段42は、給電線(図示せず)を介して、アンテナ41aおよび41bと接続されている。通信制御手段42は、拡声装置2からセンサデータを受信すると、受信したセンサデータを情報処理装置3に転送する。
【0028】
電力制御手段43は、外部から供給される電力を予め決められた電圧の電力に変換し、変換した電力を通信制御手段42に供給する。電力制御手段43は、外部から供給される電力を用いて、蓄電池44を常に充電した状態に維持する。電力制御手段43は、外部からの電力供給が遮断されると、電力供給元を蓄電池44に変更し、蓄電池44から供給される電力を通信制御手段42に供給する。
【0029】
次に、情報処理装置3の構成を詳しく説明する。
図6は、
図1に示した情報処理装置の一構成例を示すブロック図である。情報処理装置3は、例えば、サーバ装置である。情報処理装置3は、制御部32と、入力部33と、表示部34とを有する。制御部32は、親局通信手段35と、親局記憶手段36と、親局制御手段37とを有する。親局通信手段35は、給電線(図示せず)を介してアンテナ31と接続されている。入力部33は、例えば、キーボードおよびマウス等の入力デバイスである。表示部34は、例えば、ディスプレイ装置である。
【0030】
親局記憶手段36は、拡声装置2の位置が記録された地図情報を記憶する。地図情報は、緯度および経度に対応して、建物および道路等の構造物ならびに各構造物の位置に関する情報を有する。親局通信手段35は、拡声装置2または中継装置4からセンサデータを無線で受信すると、受信したセンサデータを親局制御手段37に送信する。親局制御手段37は、拡声装置2から取得したセンサデータと地図情報とを用いて、拡声装置2の位置に検出値Sgが示す情報を付加した災害マップを作成する。親局制御手段37は、作成した災害マップを表示部34に表示させる。
【0031】
図6に示した制御部32のハードウェア構成の一例を説明する。制御部32の各手段の機能がソフトウェアで実行される場合、親局通信手段35、親局記憶手段36および親局制御手段37は、プロセッサ(図示せず)およびメモリ(図示せず)で構成される。メモリがプログラムを記憶し、プロセッサがプログラムにしたがって処理を実行することで、親局通信手段35等の各手段の機能が実現される。また、親局通信手段35、親局記憶手段36および親局制御手段37の各手段の機能を、例えば、ASIC等の処理回路(図示せず)によって実現してもよい。親局通信手段35、親局記憶手段36および親局制御手段37の各手段の機能を、1つの処理回路で実現してもよく、それぞれ別の処理回路で実現してもよい。
【0032】
なお、拡声装置2は外部から電力供給を受けずに自家発電してもよい。
図7は、実施の形態1に係る拡声装置の別の構成例を示すブロック図である。
図7に示す拡声装置2aは、
図4に示した構成と比較すると、接続部(図示せず)の替わりに太陽電池60を有する構成である。
図7に示す拡声装置2aは、操作部24を備えていないが、操作部24を備えていてもよい。電力制御手段14は、太陽電池60から供給される電力を用いて、各手段等への電力配分および蓄電池15の充電を行う。拡声装置2aは、外部から電力の供給を受ける必要がない。そのため、例えば、住宅地から離れたところに拡声装置2aを設置することができる。
【0033】
本実施の形態1の防災システム1の動作を、
図8~
図10を参照して説明する。
図8は、実施の形態1に係る拡声装置の設置例を模式的に示す地形図である。等高線の間隔は50mとする。つまり、隣り合う等高線の間で標高が50m変化する。
図8に示す地形図において、
図6を参照して説明した情報処理装置3は、村役場の建物BD1に設けられている。
【0034】
図8を参照すると、川Rv1は、東側から西側に流れており、山Mt1と山Mt2との間で大きく蛇行している。蛇行付近は川Rv1の流れの向きが大きく変化する場所なので、水量が多いときに堤防に大きな力がかかる。また、
図8に示していないが、雨が降ると、山Mt1の西側斜面を流れ落ちる水と、山Mt2の東側斜面を流れ落ちる水とが、これら2つの山の間で支流を形成し、支流が川Rv1の蛇行付近に流れ込む。そのため、川Rv1の蛇行付近が破堤点となる危険性が高い。川Rv1が蛇行付近で破堤した場合に発生する洪水をより早く検知するため、拡声装置2が
図8に示す位置に設置されている。
【0035】
また、
図8を参照すると、山Mt1は南西方向に尾根が延びており、尾根が拡声装置2と建物BD1との無線通信を妨げる。そのため、
図8に示す地形図では、拡声装置2と建物BD1内の情報処理装置3との無線通信を中継する中継装置4が設置されている。破線で示す建物BD2に情報処理装置3が設置される場合、無線通信に対する障害物が拡声装置2と建物BD1との間にないため、中継装置4が設けられていなくてもよい。
図8に示す地形図において、拡声装置2の周囲に住居がない場合、拡声装置2は
図7に示した拡声装置2aであることが望ましい。この場合、拡声装置2に電力を供給するケーブルを、川Rv1を跨ぐようにして設置する必要がない。
【0036】
拡声装置2、中継装置4および建物BD1が
図8のように設置された場合について、防災システム1の動作を説明する。
図9は、実施の形態1に係る拡声装置の動作手順を示すフローチャートである。
図10は、実施の形態1に係る防災システムの動作手順を示すシーケンス図である。
【0037】
子局制御手段13は、予め決められた周期で水没センサ25から検出値Sgを受信する(ステップS101)。子局制御手段13は、受信した検出値Sgと閾値thwとを比較し、検出値Sgが閾値thwより大きいか否かを判定する(ステップS102)。検出値Sgが閾値thw以下である場合、子局制御手段13はステップS101の処理に戻る。
【0038】
図8に示した地形図において、川Rv1が蛇行付近で破堤した場合、拡声装置2が設置された領域が洪水になり、水没センサ25から子局制御手段13に送信される信号がオフ信号からオン信号に切り替わる。この場合、ステップS102の判定において、検出値Sgが閾値thwより大きくなるので、子局制御手段13は、音声メッセージを拡声用スピーカ22から出力させる(
図9のステップS103、
図10のステップS151)。このときの音声メッセージは、例えば、洪水が発生したことを知らせるメッセージである。
【0039】
続いて、子局制御手段13は、子局通信手段11を介して、検出値Sgの情報を含むセンサデータを情報処理装置3に送信する(ステップS104)。
図8に示した地形図の場合、
図10に示すステップS152において拡声装置2から送信されたセンサデータを中継装置4が受信する。中継装置4は、受信したセンサデータを情報処理装置3に転送する(ステップS153)。
【0040】
図10に示すステップS154において、情報処理装置3の親局通信手段35は、センサデータを受信すると、受信したセンサデータを親局通信手段35に送信する。親局制御手段37は、拡声装置2から取得したセンサデータと地図情報とを用いて、拡声装置2の位置に検出値Sgが示す情報を付加した災害マップを作成する。検出値Sgが示す情報は、例えば、洪水が発生したことを示す情報である。親局制御手段37は、作成した災害マップを表示部34に表示させる。これにより、センサデータの情報が表示部34に表示される(ステップS155)。
【0041】
図9のステップS103および
図10のステップS151において、拡声装置2の付近にいる人は、拡声用スピーカ22から出力された「洪水が発生しました」という音声メッセージを聞いて、急いで拡声装置2から離れる方向に逃げるか、近くの建物に避難できる。また、
図10のステップS155において、災害対策拠点の防災担当者は、表示部34に表示される災害マップを見て、拡声装置2の付近で川Rv1が破堤し、洪水が発生したことをより早く知ることができる。さらに、防災担当者は、災害マップに表示される川Rv1において、拡声装置2に最も近い点を洪水の発生点として、今後の水害の拡大を予測できる。
【0042】
本実施の形態1の防災装置は、自然災害の発生度合を示す値を検出する水没センサ25と、予め決められた音声メッセージを記憶する子局記憶手段12と、音声メッセージを出力する拡声用スピーカ22と、子局通信手段11と、子局制御手段13とを有する。子局通信手段11は、水没センサ25の検出値Sgの情報を含むセンサデータを情報処理装置3に送信する。子局制御手段13は、検出値Sgと予め決められた閾値thwとを比較し、検出値Sgが閾値thwより大きい場合、音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させるとともに、センサデータを情報処理装置3に送信する。
【0043】
本実施の形態1の防災システム1は、自然災害の発生度合を示す値を検出する水没センサ25と、拡声用スピーカ22とを有する拡声装置2と、水没センサ25の検出値Sgの情報を含むセンサデータを拡声装置2から受信する情報処理装置3とを有する。拡声装置2は、子局通信手段11、子局記憶手段12および子局制御手段13を有する。子局通信手段11は、センサデータを情報処理装置3に送信する。子局記憶手段12は予め決められた音声メッセージを記憶する。子局制御手段13は、検出値Sgと予め決められた閾値thwとを比較し、検出値Sgが閾値thwより大きい場合、音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させるとともに、センサデータを情報処理装置3に送信する。
【0044】
本実施の形態1によれば、拡声装置2が自然災害の発生度合を示す値を監視し、災害発生の度合が高いと判定すると、避難勧告等の音声メッセージを拡声用スピーカ22から出力するとともに、災害発生の度合を示す情報を災害防災拠点に設置された情報処理装置3に送信する。拡声装置2の付近にいる人は、自然災害の発生度合を示す値に基づく避難または待機等の適切な行動を取ることができる。また、災害対策拠点にいる防災担当者は、情報処理装置3が受信したセンサデータを活用することで、おおよそどの地域で浸水しているかを把握できるため、柔軟な救護活動をすることができる。さらに、防災担当者は、情報処理装置3が受信したセンサデータを活用することで、今後の水害の拡大を予測できる。本実施の形態1によって、リアルタイムに水害の発生を検知し、警報の出力および情報収集を行うことができる。
【0045】
従来、災害対策拠点の防災担当者は、台風および集中豪雨などにより河川の水位が上昇したとき、水位計測器によって計測される水位から破堤の予測を行うが、破堤後、防災担当者および堤防決壊箇所の付近の住民は、破堤後の状況を知ることができなかった。これに対して、本実施の形態1によれば、拡声装置2が、水没を検出する水没センサ25を備え、水没センサ25が水没を検出すると、警報を拡声用スピーカ22から出力する。そのため、破堤後の水害警報を、音声メッセージとして、堤防決壊箇所の付近にいる人により早く知らせることができる。また、拡声装置2がセンサデータを情報処理装置3に送信するので、防災担当者も情報処理装置3が受信したセンサデータから、破堤したことを知ることができる。
【0046】
また、本体部23は、3m以上の高い位置に設けられ、かつ蓄電池15を備えているので、地上から3m未満の高さ、例えば、操作部24まで水没しても、一定時間動作することができる。停電時などの緊急時でも、拡声装置2は動作できる。
【0047】
(変形例1)
本実施の形態1の防災システム1の変形例を説明する。本変形例1は、防災システム1が複数の拡声装置2を有する構成である。
図11は、変形例1に係る防災システムの拡声装置の一構成例を示すブロック図である。
【0048】
本変形例1の拡声装置の構成を、
図11を参照して説明する。拡声装置2bの本体部23は、時刻を計測するタイマー16を有する。子局記憶手段12は、複数の拡声装置2b毎に異なり、自装置に対応する子局識別子を記憶する。子局通信手段11は、自装置の子局識別子をセンサデータに含めて情報処理装置3に送信する。子局制御手段13は、センサデータを送信する際、検出値Sgが閾値より大きいと判定したときの時刻をタイマー16から取得し、取得した時刻の情報をセンサデータに含めてもよい。
【0049】
次に、本変形例1の防災システム1の動作を、
図12を参照して説明する。
図12は、変形例1において、複数の拡声装置の設置例を模式的に示す地形図である。
図12は、拡声装置2bが4台の場合を示すが、拡声装置2bの台数は4台に限らない。ここでは、
図12に示す地形図において、拡声装置2b-2の近くで川Rv1が破堤する場合で説明する。拡声装置2b-2の水没センサ25が水没を検出すると、拡声装置2b-2は、子局識別子を含むセンサデータを情報処理装置3に送信する。子局識別子だけでなく、時刻の情報がセンサデータに含まれていてもよい。
【0050】
情報処理装置3の親局制御手段37は、複数の拡声装置2b-1~2b-4から収集するセンサデータと地図情報とを用いて、各拡声装置2b-1~2b-4の位置に検出値Sgの情報を示す災害マップを作成する。各センサデータには子局識別子が含まれているので、親局制御手段37は、拡声装置2b-1~2b-4の各位置に洪水が発生しているかを判定できる。親局制御手段37は、作成した災害マップを表示部34に表示させる。
【0051】
図13は、変形例1において、情報処理装置が表示部に表示させる画像の一例を示す図である。
図13に示す画像は災害マップの一例であるが、
図13において、説明の便宜上、通常の画像には表示されない符号、引き出し線および矢印を、
図12と同様に示している。
図13に示す画像において、破堤により川Rv1から水が広がった領域をドット模様で示す。
【0052】
親局制御手段37は、拡声装置2b-1、2b-3および2b-4の水没センサ25の検出値Sgが閾値thw以下なので、水害が発生していないことを災害マップに表示させている。また、親局制御手段37は、拡声装置2b-2の水没センサ25の検出値Sgが閾値thwより大きいので、検出値Sgが示す情報として、洪水が発生したことを災害マップに表示させている。広い範囲に設置される複数の拡声装置2bのそれぞれに水害検出機能を持たせることで、リアルタイムに水害の発生を検知し、警報の出力および情報収集を行うことができる。
【0053】
また、拡声装置2b-1~2b-4の各装置は、タイマー16を有しているので時刻を判定し、互いに時間をずらして、センサデータを情報処理装置3に送信してもよい。この場合、拡声装置2b-1~2b-4のうち、2つ以上の装置が同時にセンサデータを送信してしまうことで情報処理装置3がセンサデータを受信できない拡声装置2bが発生してしまうことを防ぐことができる。
【0054】
また、時刻の情報がセンサデータに含まれている場合、情報処理装置3は、拡声装置2b-1~2b-4の各装置から互いに異なる時刻にセンサデータを受信しても、各拡声装置2bにおいて、検出値Sgが閾値より大きくなった時刻を判定できる。親局制御手段37が、災害マップにおいて、拡声装置2b-1~2b-4の検出値Sgが示す情報と共に時刻の情報を表示させれば、防災担当者は、各拡声装置2bの水没位置の時系列変化を基に、今後の水害の拡大をより予測しやすくなる。
【0055】
さらに、地図情報が緯度および経度に対応して構造物および各構造物の位置に関する2次元の情報を有するだけでなく、高さを含む3次元の情報を有していてもよい。この場合、親局制御手段37は、土地の高低差を基に破堤後の水の広がり方をシミュレーションし、シミュレーション結果を災害マップに表示することができる。
【0056】
実施の形態2.
本実施の形態2は、水害による住宅地域の水位の上昇に対応して、拡声装置が避難すべきか自宅に留まるべきかを住民に音声で知らせるとともに、水位の状況を防災対策拠点に通知するものである。
【0057】
本実施の形態2においては、実施の形態1で説明した構成と同一の構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、本実施の形態2においては、実施の形態1の構成および動作と異なる点を中心に説明し、実施の形態1と同様な構成および動作の説明を省略する。
【0058】
本実施の形態2の防災システムの構成を説明する。
図14は、実施の形態2に係る防災システムの一構成例を示す模式図である。説明のために、
図14に示す拡声装置2c、中継装置4および情報処理装置3の各寸法の縮尺率が互いに異なるようにしている。
図14は、拡声装置2cが電柱に設置されている場合を示す。拡声装置2cは、
図2に示した拡声装置2の構成と比較すると、水没センサ25の替わりに水位センサ26を有する。水位センサ26は、
図14に示すように、電柱下部に設けられている。
【0059】
水位センサ26は、自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサの一例である。水位センサ26は、台風および集中豪雨などの自然現象を誘因とした水害の発生度合を示す値を検出する。水位センサ26は、地面上に溜まる水の深さである水位を検出する。水位センサ26は、電柱下部に設けられているため、水位が低い段階で水を検出できる。水位センサ26は、例えば、特許文献2に開示された計測センサである。
【0060】
図15は、
図14に示した拡声装置の一構成例を示すブロック図である。子局記憶手段12は、住民に避難勧告を行うか否かの判定基準となる第1の閾値thw1と、避難せずに自宅に留まることを勧告する基準値となる第2の閾値thw2とを記憶する。第2の閾値thw2は、第1の閾値thw1よりも大きい値である。第1の閾値thw1は、例えば、5~10cmである。第2の閾値thw2は、例えば、30~40cmである。
【0061】
子局制御手段13は、水位センサ26から検出値Sgを受信すると、検出値Sgを第1の閾値thw1または第2の閾値thw2と比較する。子局制御手段13は、検出値が第1の閾値より大きい場合、避難を勧告する旨の音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させるとともに、センサデータを情報処理装置3に送信する。子局制御手段13は、検出値Sgが第2の閾値thw2より大きい場合、建物内に待機することを勧告する音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させるとともに、センサデータを情報処理装置3に送信する。
【0062】
次に、本実施の形態2の防災システム1の動作を説明する。
図16は、実施の形態2に係る拡声装置の動作手順を示すフローチャートである。子局制御手段13は、予め決められた周期で水位センサ26から検出値Sgを受信する(ステップS201)。子局制御手段13は、受信した検出値Sgと第2の閾値thw2とを比較し、検出値Sgが第2の閾値thw2より大きいか否かを判定する(ステップS202)。
【0063】
ステップS202の判定の結果、検出値Sgが第2の閾値thw2以下である場合、子局制御手段13は、検出値Sgが第1の閾値thw1より大きく第2の閾値thw2以下であるか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203の判定の結果、検出値Sgが第1の閾値thw1以下である場合、子局制御手段13は、ステップS201の処理に戻る。
【0064】
一方、ステップS203の判定の結果、検出値Sgが第1の閾値thw1より大きく第2の閾値thw2以下である場合、子局制御手段13は、避難を勧告する音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させる(ステップS204)。続いて、子局制御手段13は、子局通信手段11を介して、検出値Sgの情報を含むセンサデータを情報処理装置3に送信する(ステップS205)。その後、子局制御手段13は、ステップS201の処理に戻る。
【0065】
ステップS202の判定の結果、検出値Sgが第2の閾値thw2より大きい場合、子局制御手段13は、避難せずに、建物内に待機することを勧告する音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させる(ステップS206)。続いて、子局制御手段13は、子局通信手段11を介して、検出値Sgの情報を含むセンサデータを情報処理装置3に送信する(ステップS207)。
【0066】
ステップS204およびS206において、拡声装置2cの付近にいる人は、拡声用スピーカ22から出力される音声メッセージを聞いて、避難すべきか自宅に待機すべきかを判断できるので、センサの検出値に基づく適切な行動を取ることができる。また、ステップS205およびS207において、情報処理装置3は拡声装置2cから受信するセンサデータの情報を示す災害マップを作成して表示部34に表示させる。災害対策拠点の防災担当者は、表示部34に表示される災害マップを見て、災害マップに表示される水位の時間的変化から、拡声装置2が設置された付近の今後の水位の変化を予測できる。
【0067】
本実施の形態2によれば、水位センサ26によって水害の発生度合が検出され、水位センサ26の検出値に基づいて水害発生前に注意喚起の放送を自動で行うことで、拡声装置2の付近の住民に迅速な避難を促すことができる。さらに、拡声装置2cの水位センサ26によって検出された水位の情報は、防災対策拠点に設置された情報処理装置3に無線通信によって届けられるため、防災計画に活用できる。
【0068】
また、
図16に示したフローチャートは、ステップS203の処理よりもステップS202の処理の手順を先にすることで、ステップS203の判定よりもステップS202の判定の優先度を高くしている。これにより、水害の危険性が高くなったとき、拡声装置2cの付近にいる人に、建物内に待機することをより早いタイミングでアナウンスすることができる。
【0069】
なお、本実施の形態2に変形例1を適用してもよい。広い範囲に設置される複数の拡声装置2bのそれぞれに水位検出機能を持たせることで、リアルタイムに水害の度合を検知し、警報の出力および情報収集を行うことができる。
【0070】
また、本実施の形態2と実施の形態1とを組み合わせてもよい。
図17は、実施の形態1および2を組み合わせた拡声装置の一構成例を示す模式図である。
図17に示す拡声装置2dは、
図15に示した拡声装置2cに実施の形態1で説明した水没センサ25を有する構成である。例えば、単位時間あたりの雨量が少なかったにもかかわらず、破堤などにより一気に住宅地の水位が人の高さを超える状況が発生しても、水没センサ25が水没を検出し、避難せずに待機する旨の音声メッセージが拡声用スピーカ22から出力される。そのため、住民が堤防決壊の発生を知らずに建物の外に出てしまうことを抑制できる。
【0071】
(変形例2)
上述した実施の形態1および2の防災システム1を、自然災害が土砂災害の場合に適用してもよい。土砂災害には、急傾斜地崩壊(がけ崩れ)、土石流および地すべりの3種類がある。本変形例2では、土砂災害が地すべりであり、地すべり発生前の地盤異常を検出する場合について説明する。
【0072】
本変形例2における拡声装置の構成を説明する。
図18は、変形例2に係る防災システムの拡声装置の一構成例を示すブロック図である。
図19は、変形例2において、
図18に示した拡声装置の設置例を模式的に示す地形図である。
【0073】
拡声装置2eは、
図7に示した構成と比較して、水没センサ25の替わりにジャイロセンサ27を有する。地すべりは、発生前に地表面に亀裂が生じたり、樹木が傾いたりする前兆現象がある。本変形例2では、地すべりの監視対象となる斜面にポールが設置され、ポールに拡声装置2eが設けられる。拡声装置2eが設けられるポールは、電柱でなくてもよい。
図19に示す地形図において、山Mt1と山Mt2との間に川Rv2が流れている。
図19は、山Mt2の東側の斜面に拡声装置2eが設置される場合を示す。山Mt2の東側の斜面と川Rv2との間に、複数の住居が建てられた領域AR1を破線で示す。
【0074】
ジャイロセンサ27は、自然災害の発生度合を示す値を検出するセンサの一例である。ジャイロセンサ27は、地震などの自然現象を誘因とした土砂災害の発生度合を示す値を検出する。ジャイロセンサ27は、基準方向に対する傾きの変化を検出する。基準方向は、例えば、鉛直方向である。子局記憶手段12が記憶する閾値thsは、地すべりが発生する危険性が高いと予め判定された角度である。
【0075】
次に、本変形例2における拡声装置2eの動作を説明する。拡声装置2eが設置された斜面に亀裂が生じるなど地盤に異常が発生すると、拡声装置2eが設置されたポールが傾き、ジャイロセンサ27の検出値Sgが変化する。子局制御手段13は、ジャイロセンサ27から受信する検出値Sgと閾値thsとを比較する。子局制御手段13は、検出値Sgが閾値thsより大きい場合、避難を勧告する音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させ、センサデータを情報処理装置3に送信する。
【0076】
上述の動作により、
図19に示す地形図において、領域AR1にある住居の住民は、地すべり発生前に避難することができる。また、情報処理装置3が拡声装置2eから受信したセンサデータの情報を表示部34に表示することで、防災担当者は山Mt2の東側斜面で地すべりの発生を予測することができ、地すべりによって被害が発生した場合の対策を準備できる。
【0077】
本変形例2では、土砂災害が地すべりの場合で説明したが、土地災害警戒区域の定義による、がけ崩れが発生するおそれがある区域、および土石流が発生するおそれがある区域に対して、上述した実施の形態1および2の防災システム1を適用してもよい。ジャイロセンサ27による、がけ崩れおよび土石流の発生の予測は困難である。がけ崩れは斜面の角度という素因の影響が大きく、土石流は大雨などによる雨量という誘因による影響が大きいからである。そのため、ジャイロセンサ27の検出値Sgが予め決められた閾値より大きくなったとき、がけ崩れまたは土石流が、数秒~数分以内の短時間で発生する。ジャイロセンサ27が土砂災害の発生の危険を検知してから、住民が避難すると危険である。
【0078】
そのため、子局制御手段13は、ジャイロセンサ27から受信する検出値Sgが閾値より大きい場合、建物のできるだけ高い位置に移動することを勧告する音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させる。この場合、地震によってがけ崩れが起こったとき、2階建ての建物に居る人は、拡声用スピーカ22から出力される音声メッセージを聞いて、より早く2階に避難できる。また、防災対策拠点では、防災担当者は、情報処理装置3が拡声装置2aから受信した情報から、がけ崩れが発生したことを知ることができる。
【0079】
(変形例3)
上述した実施の形態1および2の防災システム1を、自然災害が台風および竜巻等による暴風災害の場合に適用してもよい。本変形例3の防災システム1を、
図4に示した拡声装置2の場合で説明する。本変形例3では、水没センサ25の替わりに、風速を検出する風速センサが拡声装置2に設けられている。子局制御手段13は、風速センサから受信する検出値が予め決められた閾値より大きい場合、建物内に待機することを勧告する音声メッセージを拡声用スピーカ22に出力させる。また、子局制御手段13は、子局通信手段11を介して、センサデータを情報処理装置3に送信する。
【0080】
本変形例3によれば、気象衛星では検知することが困難な竜巻など強風が局地的に発生した場合、強風が発生した地域に近い人は、拡声用スピーカ22から出力される音声メッセージを聞いて建物内に待機することで、暴風による被害を軽減できる。また、情報処理装置3が拡声装置2eから受信したセンサデータの情報を表示部34に表示することで、防災担当者は、拡声装置2の付近で強風が発生したことを知り、今後の暴風災害の発生地域を予測できる。本変形例3に変形例1を適用すれば、防災担当者は、複数の拡声装置2bから情報処理装置3が受信するセンサデータを追跡することで、竜巻の進路を予測することができる。
【0081】
なお、バリエーションの利用形態として、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせた場合と、実施の形態2に変形例1を組み合わせる場合とを説明したが、バリエーションは、これらの利用形態に限らない。上述した実施の形態1および2ならびに変形例1~3のうち、いずれか2以上を選択して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 防災システム
2、2a~2e 拡声装置
2b-1~2b-4 拡声装置
3 情報処理装置
4 中継装置
11 子局通信手段
12 子局記憶手段
13 子局制御手段
14 電力制御手段
15 蓄電池
16 タイマー
21 アンテナ
22 拡声用スピーカ
23 本体部
24 操作部
25 水没センサ
26 水位センサ
27 ジャイロセンサ
31 アンテナ
32 制御部
33 入力部
34 表示部
35 親局通信手段
36 親局記憶手段
37 親局制御手段
41、41a、41b アンテナ
42 通信制御手段
43 電力制御手段
44 蓄電池
51 筐体
52 フロート
53、54 穴
55 板
60 太陽電池
70 検出回路
71、72 端子
73 抵抗素子
74 直流電源
75 電圧計
AR1 領域
BD、BD1、BD2 建物
Mt1、Mt2 山
Rv1、Rv2 川
Wa 水