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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130766
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 19/00 20060101AFI20220831BHJP
   C04B 35/577 20060101ALI20220831BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20220831BHJP
   B22D 19/14 20060101ALI20220831BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20220831BHJP
   B22D 18/02 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
B22D19/00 E
C04B35/577
C04B41/88 U
B22D19/14 B
H01L23/36 M
B22D18/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029334
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大助
(72)【発明者】
【氏名】太田 寛朗
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA30
5F136BC03
5F136EA02
5F136FA02
5F136FA17
5F136FA42
5F136FA83
5F136GA22
5F136GA23
5F136GA33
(57)【要約】
【課題】中央部分と外周面側に位置する部分とで熱伝導率の差が小さい成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素多孔体にアルミニウムを含む金属が含浸されたアルミニウム-炭化珪素複合化部を有する板状成形体であって、アルミニウム-炭化珪素複合化部の、中央部と中央部よりも外周面側に位置する外側部の少なくとも一部とのアルキメデス法による密度の差が3%以下である、成形体とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素多孔体にアルミニウムを含む金属が含浸されたアルミニウム-炭化珪素複合化部を有する板状成形体であって、
アルミニウム-炭化珪素複合化部の、中央部と中央部よりも外周面側に位置する外側部の少なくとも一部とのアルキメデス法による密度の差が3%以下である、成形体。
【請求項2】
アルミニウム-炭化珪素複合化部を平面視四角形の板状とし、板面の一辺に平行に5等分した線及び当該辺に交わる一辺に平行に5等分した線にそれぞれ沿って垂直に切断して25等分割した分割片のうち、中央の分割片のアルキメデス法による密度と四隅の分割片のアルキメデス法による密度の平均値との差が3%以下である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
アルミニウムを含む金属及び無機繊維を含むアルミニウム-無機繊維複合化部をさらに有し、
アルミニウム-無機繊維複合化部が、成形体の外周面の少なくとも一部を構成し、
アルミニウム-無機繊維複合化部を含む外周面をマイクロスコープで観察したときの3mm×4mmの視野における無機繊維で構成される領域の面積が1mm未満である、請求項1又は2に記載の成形体。
【請求項4】
アルミニウム-無機繊維複合化部に1以上の貫通孔を有する、請求項3に記載の成形体。
【請求項5】
板面及び/又は外周面の少なくとも一部に金属部を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のアルミニウム-炭化珪素複合体。
【請求項6】
放熱部品である、請求項1から5のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の成形体の製造方法であって、以下の工程:
(i)板状の炭化珪素多孔体を準備すること、
(ii)板状の炭化珪素多孔体を、600~750℃で50~200分間保持すること、
(iii)(ii)で得られた炭化珪素多孔体を100~450℃に加熱された金型内に配置すること、及び
(iv)金型内に溶融したアルミニウムを含有する金属を流し込むこと、
(v)板状の炭化珪素多孔体にアルミニウムを含有する金属を含浸させること、
を含む、方法。
【請求項8】
工程(i)において、周縁部に少なくとも一つの切り欠き部を有する板状の炭化珪素多孔体を準備し、該切り欠き部に、切り欠き部の容積に対して70~90体積%の無機繊維成形体を配置すること、をさらに含み、
工程(v)において、板状の炭化珪素多孔体及び無機繊維成形体にアルミニウムを含有する金属を含浸させる、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や電鉄用途におけるパワーモジュール用放熱板として、従来の銅に替わりアルミニウム-炭化珪素複合体が使用されている。アルミニウム-炭化珪素複合体は、熱伝導率は銅よりも低いものの、熱膨張係数は6~8ppm/Kであり銅の17ppm/Kの約半分であるため、モジュールを構成するセラミックス回路基板と放熱板とを接着する半田層部分でのクラック発生が抑制され、高い信頼性を実現することができる。
【0003】
アルミニウム-炭化珪素複合体の製法として、炭化珪素粉末に添加物等を混合した後、乾式プレス法、押し出し法やインジェクション法等により成形体を形成し、これを焼成して、炭化珪素を主成分とした多孔質の成形体(プリフォーム)を作製した後、この成形体に、非加圧含浸法や、溶湯鍛造法、ダイキャスト法などの加圧含浸法でアルミニウムを含有する金属を含浸させる方法が知られている。例えば、特許文献1,2では、溶湯鍛造法によりプリフォームにアルミニウム含有金属を含浸させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/002943号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/125878号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶湯鍛造法は、1つ以上の板状のプリフォームを金型内に配置した後、アルミニウム含有金属の溶湯を金型内に注ぎ、所定の圧力で所定の時間加圧することでプリフォーム中にアルミニウム含有金属を含浸させる方法である。この際にプリフォームの中央部分と外周面側に位置する部分とでアルミニウム含有金属が含浸される量にムラが生じると、得られるアルミニウム-炭化珪素複合体の中央部分と外周面側に位置する部分とで密度に差が生じることがある。中央部分と外周面側に位置する部分とで密度に差が生じると、熱伝導率の差が生じる原因となり得る。そのような場合は、モジュール化された後の信頼性低下の原因となることがある。
【0006】
本発明は、中央部分と外周面側に位置する部分とで熱伝導率の差が小さい成形体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の実施形態を有する。
[1]炭化珪素多孔体にアルミニウムを含む金属が含浸されたアルミニウム-炭化珪素複合化部を有する板状成形体であって、アルミニウム-炭化珪素複合化部の、中央部と中央部よりも外周面側に位置する外側部の少なくとも一部とのアルキメデス法による密度の差が3%以下である、成形体。
[2]アルミニウム-炭化珪素複合化部を平面視四角形の板状とし、板面の一辺に平行に5等分した線及び当該辺に交わる一辺に平行に5等分した線にそれぞれ沿って垂直に切断して25等分割した分割片のうち、中央の分割片のアルキメデス法による密度と四隅の分割片のアルキメデス法による密度の平均値との差が3%以下である、[1]に記載の成形体。
[3]アルミニウムを含む金属及び無機繊維を含むアルミニウム-無機繊維複合化部をさらに有し、アルミニウム-無機繊維複合化部が、成形体の外周面の少なくとも一部を構成し、アルミニウム-無機繊維複合化部を含む外周面をマイクロスコープで観察したときの3mm×4mmの視野における無機繊維で構成される領域の面積が1mm未満である、[1]又は[2]に記載の成形体。
[4]アルミニウム-無機繊維複合化部に1以上の貫通孔を有する、[3]に記載の成形体。
[5]板面及び/又は外周面の少なくとも一部に金属部を有する、[1]から[4]のいずれかに記載のアルミニウム-炭化珪素複合体。
[6]放熱部品である、[1]から[5]のいずれかに記載の成形体。
[7][1]から[6]のいずれかに記載の成形体の製造方法であって、以下の工程:
(i)板状の炭化珪素多孔体を準備すること、
(ii)板状の炭化珪素多孔体を、600~750℃で50~200分間保持すること、
(iii)(ii)で得られた炭化珪素多孔体を100~450℃に加熱された金型内に配置すること、及び
(iv)金型内に溶融したアルミニウムを含有する金属を流し込むこと、
(v)板状の炭化珪素多孔体にアルミニウムを含有する金属を含浸させること、
を含む、方法。
[8]工程(i)において、周縁部に少なくとも一つの切り欠き部を有する板状の炭化珪素多孔体を準備し、該切り欠き部に、切り欠き部の容積に対して70~90体積%の無機繊維成形体を配置すること、をさらに含み、
工程(v)において、板状の炭化珪素多孔体及び無機繊維成形体にアルミニウムを含有する金属を含浸させる、[7]に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中央部分と外周面側に位置する部分とで熱伝導率の差が小さい成形体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る成形体の概念的な構成を示す図であって、図1(a)は平面図、図1(b)はB-B線における断面図である。
図2】密度の差の求め方についての概略説明図である。
図3】実施例1で得られた成形体の外周面をマイクロスコープで観察したときの3mm×4mmの視野における写真であって、図3(a)は成形体の外周面のうち無機繊維が含まれない領域の写真であり、図3(b)は、成形体の外周面のうちアルミニウム-無機繊維複合化部で構成される領域の写真である。
図4】実施例2で得られた成形体の外周面をマイクロスコープで観察したときの3mm×4mmの視野における写真であって、図4(a)は成形体の外周面のうち無機繊維が含まれない領域の写真であり、図4(b)は成形体の外周面のうちアルミニウム-無機繊維複合化部で構成される領域の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
[成形体]
本実施形態に係る成形体は、アルミニウムを含む金属及び炭化珪素を含むアルミニウム-炭化珪素複合化部を有する板状成形体であって、アルミニウム-炭化珪素複合化部の、中央部と中央部よりも外周面側に位置する外側部(以下、単に「外側部」ともいう。)の少なくとも一部とのアルキメデス法による密度の差が3%以下である。中央部分と外側部との密度の差が3%以下であるので、容易に中央部と外側部との熱伝導率の差が小さい成形体を得ることができる。
【0012】
「板状成形体」は、板面(「主面」又は「表裏面」ともいう。)及び厚み方向に延びる面(「外周面」又は「側面」ともいう。)を有する板状の成形体であり、好ましくは平板状の成形体である。板状成形体の平面形状、厚み及び板面の大きさについては後述する。
【0013】
図1は、一実施形態に係る成形体の概念的な構成を示す図である。図1(a),(b)に示す成形体1は、板面方向から見て平面視矩形状の平板状成形体であり、アルミニウム-炭化珪素複合化部3を有している。アルミニウム-炭化珪素複合化部3の四隅にはアルミニウム-無機繊維複合化部5が設けられており、四隅を除く周囲(側面及び表裏面)には、金属部4が設けられている。アルミニウム-無機繊維複合化部5には他の部品にネジ止め固定するための貫通孔2が設けられている。アルミニウムを含む金属部4、アルミニウム-無機繊維複合化部5及び貫通孔2は、必要に応じて設けられるものであり、成形体は、アルミニウムを含む金属部4、アルミニウム-無機繊維複合化部5及び/又は貫通孔2を有しない構成とすることもできる。
【0014】
(アルミニウム-炭化珪素複合化部)
アルミニウム-炭化珪素複合化部は、アルミニウムを含む金属及び炭化珪素を含む領域であり、アルミニウムを含む金属と炭化珪素との複合体で構成されている。アルミニウム-炭化珪素複合化部は、炭化珪素多孔体(プリフォーム)にアルミニウムを含む金属が含浸された構造を有する。炭化珪素多孔質及びアルミニウム-炭化珪素複合化部の製造方法については後述する。
【0015】
アルミニウムを含有する金属としては、アルミニウム又はアルミニウム合金が挙げられる。アルミニウムを含有する金属としては、含浸時にプリフォームの空隙内に十分に浸透するために融点がなるべく低いことが好ましい。このようなアルミニウム合金として、例えばシリコンを5~25質量%、好ましくは7~20質量%、より好ましくは10~15質量%含有したアルミニウム合金が挙げられる。さらにマグネシウムを、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%含有させることは、炭化珪素粒子と金属部分との結合がより強固になり好ましい。アルミニウム合金中のアルミニウム、シリコン、マグネシウム以外の金属成分に関しては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限はなく、例えば銅等が含まれていてもよい。
【0016】
炭化珪素としては、炭化珪素粉末を成形及び焼成して形成された炭化珪素多孔体を含むことが好ましい。炭化珪素粉末のサイズ及び炭化珪素多孔体の製造方法については後述する。
【0017】
アルミニウム-炭化珪素複合化部における炭化珪素多孔体の相対密度は、好ましくは55~75%であり、より好ましくは60~70%であり、さらに好ましくは62~68%である。炭化珪素の相対密度を55~75%にすることにより、成形体の熱膨張係数を6~9ppm/K程度にすることができる。相対密度は、天秤で測定した重量を、ノギスにより測定した外形寸法とマイクロメーターで測定した厚みから算出した体積で除して密度を算出し、算出した密度を、炭化珪素の密度3.21g/cmで除して算出した値とする。
【0018】
アルミニウム-炭化珪素複合化部は、板状であり、好ましくは平板状である。アルミニウム-炭化珪素複合化部の平面形状は、成形体の平面形状に準じた形状にすることができる(例えば略四角形状、略長方形等)。成形体が後述するアルミニウム-無機繊維複合化部や金属部を有している場合は、アルミニウム-無機繊維複合化部及び金属部を含めた形状として成形体の平面形状に準じた形状にする。
【0019】
アルミニウム-炭化珪素複合化部の平均厚みは、好ましくは2~7mmであり、より好ましくは3~6mmであり、さらに好ましくは4~5mmである。平均厚みは、レーザー変位計により求めた値とする。
【0020】
アルミニウム-炭化珪素複合化部の板面の面積は、放熱作用を効率的に発揮する観点から、成形体の板面の面積に対して、好ましくは70%以上であり、より好ましくは85%以上である。面積は、ノギスにより、炭化珪素多孔体の面積、成形体の面積を算出し、炭化珪素多孔体の面積を成形体の面積で除して算出する。
【0021】
アルミニウム-炭化珪素複合化部のアルキメデス法による密度は、好ましくは2.92~3.08であり、より好ましくは2.94~3.04であり、さらに好ましくは2.96~3.02である。アルミニウム-炭化珪素複合化部の密度を2.92~3.08とすることで、熱伝導性を高めることができるとともに、熱膨張係数を実装されるセラミックス基板と同等の値とすることができ、熱膨張係数差により生じる半田クラックを抑制することができる。
本明細書において、アルキメデス法による密度は、具体的には天秤により空気中及び水中で重さを図ることで測定される。
【0022】
アルミニウム-炭化珪素複合化部は、中央部のアルキメデス法による密度と、中央部よりも外周面側に位置する外側部の少なくとも一部のアルキメデス法による密度との差が好ましくは3%以下であってよく、2%以下であってよく、1.5%以下であってよく、1.0%以下であってよく、0.8%以下であってよく、0.5%以下であってよく、0.3%以下であってよい。アルミニウム-炭化珪素複合化部の中央部の密度と外側部の密度との差を3%以下であるので、中央部分と外周面側に位置する部分とで熱伝導率の差を小さくすることができる。
密度の差の下限値は、小さいほど好ましく、例えば、0.001%以上、0.01%以上、0.1%以上、又は0.2%以上とすることができる。
【0023】
「中央部」とは、アルミニウム-炭化珪素複合化部の板面の中央付近の領域を厚み方向に垂直に切り取った分割片のことである。「中央付近の領域」は、アルミニウム-炭化珪素複合化部の平面形状が四角形状である場合は、対角線が交わる点を含む領域、又は、アルミニウム-炭化珪素複合化部を板面に垂直に9等分割、25等分割若しくは49等分割した場合の中央の分割片とすることができる。等分割する方法は、板面の一辺に平行な等分線と、当該辺に交わる辺に平行な等分線とに沿って切断することで等分割することができる。例えば、板面の一辺に平行に3等分した線に沿って垂直に切断し、かつ当該辺に交わる一辺に平行に3等分した線に沿って垂直に切断することで、9等分割することができる。
「外側部」とは、中央部よりも外周面側に位置する任意の領域を厚み方向に垂直に切り取った分割片のことである。「外側部」は、好ましくは、板面に垂直に9等分割、25等分割又は49等分割した場合の四隅の分割片である。中央部及び外側部は、密度の差を容易に比較できるよう、同じ大きさ(板面の面積×厚み)であることが好ましい。
【0024】
中央部と外側部との密度の差を3%以下にする方法としては、非加圧含浸法による方法や、溶湯鍛造法による製造時においてアルミニウムを含む金属を炭化珪素多孔体の全体に満遍なく含浸させることが挙げられる。例えば、成形体の製造時に炭化珪素多孔体を予備加熱する際に600~750℃で50~200分間保持したり、金型温度を100~450℃にしたりすることで、中央部と外側部との密度の差を3%以下にすることができる。成形体の製造方法については後述する。
【0025】
一実施形態において、アルミニウム-炭化珪素複合化部を板面に垂直に25等分割した分割片のうち、中央の分割片のアルキメデス法による密度と四隅の分割片のアルキメデス法による密度の平均値との差が好ましくは3%以下であってよく、2%以下であってよく、1.5%以下であってよく、1.0%以下であってよく、0.8以下であってよく、0.5%以下であってよく、0.3以下であってよい。中央の分割片のアルキメデス法による密度と四隅の分割片のアルキメデス法による密度の平均値との差を3%以下にすることで、中央部分と外側部とで熱伝導率の差が小さい成形体を与えることができる。
【0026】
「アルミニウム-炭化珪素複合化部を板面に垂直に25等分割した」とは、アルミニウム-炭化珪素複合化部のみで形成される領域を板面方向からの平面視で25等分割となるように垂直に切り分けることを意味している。アルミニウム-炭化珪素複合化部の平面形状によって、アルミニウム-炭化珪素複合化部の全体を25等分割するのが難しい場合があるので、好ましくは、アルミニウム-炭化珪素複合化部から、平面視の形状が正方形又は長方形の領域(好ましくは板面の面積が最大となる正方形又は長方形の領域)を切り出した後に、25等分割する。また、アルミニウム-炭化珪素複合化部の周縁部に、後述するアルミニウム-無機繊維複合化部が設けられている場合や、アルミニウム-炭化珪素複合化部の板面及び/又は外周面の少なくとも一部に金属部が設けられている場合は、機械加工によりそれらを取り除いた後に、アルミニウム-炭化珪素複合化部を25等分割する。
【0027】
「25等分割」は、板面の一辺に平行に5等分割するとともに、当該辺に交わる一辺に平行に5等分割して25個の分割片に切り分けることを意味している。切り分ける方法は、公知の機械加工により行う。密度を容易に比較できるように、好ましくは、予め切り出された正方形又は長方形の領域の板面の一辺に平行に5等分割するとともに、当該辺に交わる一辺に平行に5等分割して25等分割とする。25等分割された場合、全ての分割片は、板面の面積が同じである。中央の分割片と四隅の分割片とは、密度を容易に比較できるように、厚みも同じにすることがより好ましい。
一実施形態において、アルミニウム-炭化珪素複合化部を平面視四角形の板状とし、アルミニウム-炭化珪素複合化部を板面の一辺に平行に5等分した線及び当該辺に交わる一辺に平行に5等分した線にそれぞれ沿って垂直に切断して25等分割した分割片のうち、中央の分割片のアルキメデス法による密度と四隅の分割片のアルキメデス法による密度の平均値との差が3%以下である。
【0028】
図2は、板状で平面視が長方形であるアルミニウム-炭化珪素複合化部20を25分割する場合の、密度の差の求め方についての概略説明図である。アルミニウム-炭化珪素複合化部20の短辺に平行でかつ等間隔の切り取り線(a1-a1’線、a2-a2’線、a3-a3’線、a4-a4’線)に沿って5分割するとともに、長辺に平行でかつ等間隔の切り取り線(b1-b1’線、b2-b2’線、b3-b3’線、b4-b4’線)に沿って5分割することで25個の分割片に切り分ける。25個の分割片のうち中央に位置する分割片を中央部21とし、四隅の分割片を外側部22a、22b、22c及び22d(以下、「22a~d」ともいう。)とする。中央の分割片及び四隅の分割片22a~dのアルキメデス法による密度を測定して、四隅の分割片22a~dについてはその平均値を算出し、中央部21の密度との差を求める。
【0029】
図1は、アルミニウム-炭化珪素複合化部3の周縁部にアルミニウム-無機繊維複合化部5が設けられており、アルミニウム-炭化珪素複合化部3の板面及び/又は外周面の少なくとも一部に金属部4が設けられている成形体1の構成を示す図である。このような構成を有する場合は、機械加工によりアルミニウム-無機繊維複合化部5や金属部4を取り除いて平面視が四角形の板状とした後に、アルミニウム-炭化珪素複合化部3を25分割する。
【0030】
例えば、図1の成形体1において、アルミニウム-無機繊維複合化部5とアルミニウム-炭化珪素複合化部3との境界を構成する、A1-A1’線及びA2-A2’線で切断して残った領域6(切り出し領域6)、又は、A3-A3’線及びA4-A4’線で切断して残った領域6’(切り出し領域6’)について、必要に応じてさらに、アルミニウム-炭化珪素複合化部3の板面及び/又は外周面に設けられている金属部4を有する場合は当該金属部4を機械加工により取り除き、25等分割する。或いは、図1の成形体1において、A1-A1’線及びA2-A2’線で切断し、さらに、A3-A3’線及びA4-A4’線で切断して残った領域について図2に示す場合と同様に25等分割する。
この場合において、25個の分割片のうち、中央の分割片21が「中央部」に相当し、四隅の分割片22a,22b,22c,22dが「外側部」に相当する。
【0031】
(アルミニウム-無機繊維複合化部)
一実施形態において、成形体は、周縁部に少なくとも一つのアルミニウム-無機繊維複合化部を有する。アルミニウム-無機繊維複合化部は、アルミニウムを含む金属及び無機繊維を含む領域であり、アルミニウムを含む金属層中に無機繊維が含まれている(分散されている)構造を有している。アルミニウム-無機繊維複合化部は、アルミニウム-炭化珪素複合化部や後述する金属部と比べて靱性が高く、その部分においてクラックや割れが生じ難い。そのため、アルミニウム-無機繊維複合化部に、成形体を他の部品にネジ止め固定するための貫通孔を形成する場合において、貫通孔及びその近傍にクラックや割れが発生することを防ぐ作用を有する。
【0032】
図1に示す平板状の成形体1は、四隅にアルミニウム-無機繊維複合化部5を有している。四隅のアルミニウム-無機繊維複合化部5には、それぞれ貫通孔2が一つ設けられている。成形体1は、四隅にアルミニウム-無機繊維複合化部5を有しているが、貫通孔2が形成される箇所に応じて、周縁部のその他の部分(例えば、成形体の角部と角部の間の部分等)にアルミニウム-無機繊維複合化部5を有していてもよい。
【0033】
アルミニウムを含有する金属は、製造が容易である観点から、上記したアルミニウム-無機繊維複合化部の製造時に用いるアルミニウムを含む金属と同じであることが好ましい。
【0034】
無機繊維としては、金属、金属酸化物、ガラス、カーボン等が挙げられるが、中でも金属酸化物が好ましく、アルミナ繊維が特に好ましい。
無機繊維の含有量は、成形体にめっき処理を施す場合にめっき性を高める観点から、成形体の表面に露出しない量であることが好ましい。例えば、無機繊維の含有量は、アルミニウム-無機繊維複合化部の体積に対して好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは1~25体積%である。
【0035】
一実施形態において、アルミニウム-無機繊維複合化部は、成形体の外周面の少なくとも一部を構成し、アルミニウム-無機繊維複合化部を含む外周面を、外周面に対して垂直方向から、マイクロスコープで観察したときの3mm×4mmの視野における無機繊維で構成される領域の二値化処理で測定した面積が、1mm未満であり、好ましくは0.8mm未満であり、より好ましくは0.5mm未満である。無機繊維で構成される領域の面積を、1mm未満にすることで、成形体にめっき層を設ける場合のめっき密着性を高めることができる。下限値は特に限定されないが0.001mm以上であってよく、0.005mm以上であってよく、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。二値化処理は、画像処理ソフトを用いて行うことができる。なお、二値化の閾値は、無機繊維に相当する部分を他の部分と適切に区別できるように設定する。例えば、図3図4に示すような明るさの画像の場合には120に設定する。
【0036】
「外周面」とは、板状の成形体の厚み方向に延びる面(側面)であり、板面の周囲を取り囲む面を意味している。図1の成形体1は、板面方向から見て平面視長方形であり、表裏の板面の周囲をめぐる外周面を有する。成形体1の外周面を外周面に対して垂直方向から見ると、アルミニウム-無機繊維複合化部5が外周面の一部を形成した構造である。
【0037】
「無機繊維で構成される領域」は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製SU6600)及びEDX(HORIBA社製EMAX型)を用いて無機繊維と同じ成分が検出される領域を意味している。「無機繊維で構成される領域」は、マイクロスコープ写真において、通常は黒い点として観察される。
【0038】
(金属部)
一実施形態において、成形体は、板面及び/又は外周面の少なくとも一部に、金属部を有する。金属部は、アルミニウムを含む金属を含むことが好ましい。金属部を有することで、容易にめっきを施すことができ、めっきを施すことで、半田濡れ性が向上し、パワーモジュール用ベース板として用いる場合にセラミックス回路基板と半田付けにより容易に接合することができる。
【0039】
金属部の材質は、製造が容易である観点から、上記したアルミニウム-無機繊維複合化部の製造時に用いるアルミニウムを含む金属と同じであることが好ましい。この場合の金属部の形成方法は、例えば、アルミニウム-炭化珪素複合体を製造する際に、炭化珪素多孔体に予め金属部を形成したい箇所に切り欠きを作ることにより金属部を形成する方法が挙げられる。
【0040】
図1の成形体1は、金属部4がアルミニウム-炭化珪素複合化部3の側面の一部及び板面に存在するが、一部の金属部4を機械加工等により取り去って、アルミニウム-炭化珪素複合化部3の少なくとも一部を露出させてもよい。
【0041】
金属部の板面方向の平均厚みは、成形体にめっき処理を施す場合にめっき密着性をより高める観点から、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは30~100μmである。金属部の厚みは、成形体の表面を研削加工して所定厚みに調整することも可能である。金属部の平均厚みは、特許第6595740号の図3に記載の方法により求めた値とする。すなわち、成形体の端部から成形体全長の20%内側を通る直線、及び成形体の中線に沿って、アルミニウム-無機繊維複合化部をダイヤモンド加工治具で切断する。その後、特許第6595740号の図3内に示す丸印の箇所について、表面部分を走査型電子顕微鏡で100倍にて観察する。最表面から炭化珪素粒子までの距離を200μm間隔で5箇所測定し、5点の平均を計算することで金属部の平均厚みとする。 金属部の外周面方向の平均厚みは、炭化珪素を十分に多い、めっきを外周面に析出させる観点から、好ましくは0.1~2mmであり、より好ましくは0.5~1.5mmである。
【0042】
(貫通孔)
成形体は、成形体を他の部品にネジ止め固定するための1以上の貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔及びその近傍にクラックや割れが発生することを防ぐために、貫通孔はアルミニウム-無機繊維複合化部に設けられていることが好ましい。
図1の成形体1は、四隅のアルミニウム-無機繊維複合化部にそれぞれ1つの貫通孔が設けられているが、成形体が取り付けられる他の部品の構成や成形体を構成する材料の特性を考慮して、成形体の何れの箇所にも貫通孔を設けることができる。
【0043】
(めっき層)
成形体は、板面及び/又は外周面に、めっき層を有していてもよい。めっき層を有することで、成形体をパワーモジュール用ベース板として用いる場合にセラミックス回路基板と半田付けにより容易に接合して用いることができる。
【0044】
めっき層は、好ましくはNiめっき層である。めっき処理方法は特に限定されず、必要に応じて表面加工や研磨が施された後に、無電解めっき処理、電気めっき処理法のいずれでもよい。
【0045】
めっき層の厚みは、好ましくは1~20μmであり、より好ましくは3~12μmである。めっき層の厚みを1~20μmとすることで、部分的にめっきピンホールが発生して放熱特性が低下することを防ぐことができるとともに、Niめっき膜とアルミニウム合金との熱膨張差によるめっき剥離を防ぐことができる。
【0046】
(成形体)
成形体は、板状であり好ましくは平板状である。成形体の平面形状は、用途に応じて選択することができ、放熱板として用いる場合は、略四角形状であることが好ましい。「略」とは、角が丸みを帯びた四角形状を含むことを意味している。四角形状としては、正方形、長方形(矩形)、平行四辺形、ひし形等が挙げられ、正方形又は長方形であることがより好ましく、長方形であることがさらに好ましい。厚み及び板面の大きさについては後述する。「平面視」とは、主面方向(板面方向)からの平面視を意味している。
【0047】
成形体の平均厚みは、好ましくは2mm~7mmであり、より好ましくは3mm~5mmである。平均厚みは、レーザー変位計により求めた値とする。
【0048】
成形体の板面の大きさは、特に限定されないが、例えば、平面視長方形の場合、短辺が80~150mmで長辺が130~270mmの大きさが挙げられる。本実施形態に係る成形体は、中央部と外周面側に位置する部分とで密度の差が小さいので、寸法が大きい場合でも中央部と外周面側に位置する部分との熱伝導率の差が小さい成形体とすることができる。例えば、短辺が130~150mmで長辺が140~270mmの平面視長方形の成形体とすることができる。
【0049】
成形体は、好ましくは中央部及び外側部のいずれについても、25℃での熱伝導率が好ましくは180W/mK以上であり、より好ましくは190W/mK以上であり、さらに好ましくは200W/mK以上である。150℃の熱膨張係数は、好ましくは9×10-6/K以下であり、より好ましくは8×10-6/K以下である。熱伝導率は、25℃においてレーザーフラッシュ法で測定した値とする。熱膨張係数は、50℃から150℃において熱膨張計で測定した値とする。
【0050】
成形体は、中央部の25℃での熱伝導率と中央部よりも外周面側に位置する外側部の25℃での熱伝導率の差が10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。中央部と外側部とで熱伝導率の差が小さいので、成形体全体から均一に放熱することができる。中央部及び外側部の規定方法は、上記アルミニウム-炭化珪素複合化部の中央部と外側部との規定方法と同じである。中央部及び外側部のそれぞれから試験片を切り出して熱伝導率を測定し、その差を算出する。
一実施形態において、成形体は、板面に垂直に25等分割した分割片のうち、中央の分割片の25℃での熱伝導率と四隅の分割片の25℃での熱伝導率の平均値との差が10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。中央の分割片の25℃での熱伝導率と四隅の分割片の25℃での熱伝導率の平均値との差を10%以下にすることで、成形体全体から均一に放熱することができる。
25等分割の方法は、上記アルミニウム-炭化珪素複合化部を25等分割する方法と同じである。中央の分割片の熱伝導率及び四隅の分割片の熱伝導率をそれぞれ測定し、四隅の分割片について熱伝導率の平均値を算出し、中央の分割片との差を算出する。
熱伝導率の差を10%以下にする方法としては、成形体の製造時において炭化珪素多孔体を予備加熱する際に600~750℃で50~200分間保持する方法がある。
【0051】
成形体は、電子・電気部品から発生する熱を放熱するための部品、即ち放熱部品として用いることができる。放熱部品として用いる場合は、成形体は表面にめっき層を有していることが好ましい。このような電子・電気製品の中間工程では、さらに絶縁基板、チップの接合、ケース付、樹脂封止等の工程を経てモジュールとなる。
【0052】
[製造方法]
成形体の製造方法は、以下の工程:
(i)板状の炭化珪素多孔体を準備すること、
(ii)板状の炭化珪素多孔体を、600~750℃で50~200分間保持すること、
(iii)(ii)で得られた炭化珪素多孔体を100~450℃に加熱された金型内に配置すること、及び
(iv)金型内に溶融したアルミニウムを含有する金属を流し込むこと、
(v)板状の炭化珪素多孔体にアルミニウムを含有する金属を含浸させること、
を含む。
【0053】
(工程(i))
工程(i)において、板状の炭化珪素多孔体(プリフォーム)を準備する。プリフォームを製造する場合は、炭化珪素粉末を、成形及び焼成することで準備することができる。成形は、公知の乾式プレス法、湿式プレス法、押出し成型法、インジェクション法、キャスティング法、シート成形後打ち抜く方法等により行うことができる。
【0054】
炭化珪素粉末としては、成形体の密度向上の観点から、平均粒子径が好ましくは1~250μm、より好ましくは5~200μmである炭化珪素粉末が好ましい。平均粒子径が異なる複数の炭化珪素粉末を混合して粒度を調整することもできる。「平均粒子径」は、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子社製「JSM-T200型」)と画像解析装置(例えば日本アビオニクス社製)を用い、1000個の粒子について求めた径の平均値を算出した値とする。
【0055】
炭化珪素には、必要に応じてシリカ等の結合材や、金属の含浸時に割れなどの異常を発生しないような強度を発現させるために、無機質或いは有機質のバインダーを添加することができる。バインダーとしては、高強度のプリフォームが得やすいため、シリカゾルが好ましい。バインダーは、相対密度の向上の観点から、体積比率で、固形分として炭化珪素100に対し20以下となる割合で添加することが好ましい。
【0056】
一実施形態において、湿式プレス法により炭化珪素多孔体を成形する。湿式プレス法は、多孔質の凹凸型を用意し、凹型内に炭化珪素粉末と無機バインダー及び水を主成分とするスラリーを充填し、凸型で圧縮成形すれば良い。
【0057】
上記により成形された炭化珪素多孔質体は、その製法によって異なるものの、通常は乾燥、加熱脱脂処理を経た後、所定の強度を有するように焼成される。
焼成条件としては、不活性雰囲気中や大気中、700℃以上の温度で行うことが好ましいが、大気中の場合、1100℃以上の温度で焼成した場合、炭化珪素が酸化し得られる複合体の熱伝導率が低下するので、少なくともこの温度以下で焼成することが好ましい。
【0058】
成形体の相対密度を55~75%とするには、粒度の異なる炭化珪素粉末を配合することが好ましい。炭化珪素の場合、平均粒径が100μmの粉末と平均粒径が10μm又はこれより細かい粉末を混合したもの、あるいは平均粒径が60μmの粉末と平均粒径が10μm又はこれより細かい粉末を混合した粉末の使用がその一例として挙げられる。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子社製「JSM-T200型」)と画像解析装置(例えば日本アビオニクス社製)を用い、1000個の粒子について求めた径の平均値を算出することによって測定することができる。
【0059】
一実施形態において、工程(i)が、周縁部に少なくとも一つの切り欠き部を有する板状の炭化珪素多孔体を準備することを含む。「周縁部」とは、板状の炭化珪素多孔体の縁の部分を含む領域を意味している。
例えば、成形体が図1に示すような、四隅にアルミニウム-無機繊維複合化部を有する場合は、得られる炭化珪素多孔体の四隅に切欠き部が形成されるように付形された炭化珪素多孔体を準備する。切欠き部の形成は、好ましくは、圧縮成形時に、所望の切欠き部の形状を有する型枠等を用いることで行う。また、切欠き部は、板状成形体を機械加工することでも形成できる。
【0060】
前記切り欠き部には、切り欠き部の容積に対して好ましくは70~95体積%、より好ましくは75~92体積%、さらに好ましくは70~90体積%、又は80~90体積%となるように無機繊維成形体を配置することが好ましい。無機繊維成形体を、切り欠き部に70~95体積%の割合で配置することで、成形体に貫通孔を設ける場合でも貫通孔及びその近傍にクラックや割れが発生することを防ぐことができるとともに、成形体の外周面に無機繊維が露出しにくく、めっき処理を施す際のめっき密着性を高めることができる。
【0061】
「切り欠き部の容積」は、得られる成形体と同じ形状において切り欠き部に相当する部分の容積(板面の面積×厚み)のことを意味しており、通常は成形体の外周面と炭化珪素多孔体の外周面とで囲まれた領域である。
【0062】
無機繊維成形体としては、有機バインダー又は無機のバインダーを用いて成形してなる無機繊維成形体等を例示できる。より具体的には圧縮成形されたフェルト状の無機繊維成形体を用いることもできる。無機繊維の材質については、上記アルミニウム-無機繊維複合化部について記載したものと同じであるからここでは記載を省略する。
【0063】
無機繊維成形体を用いる場合、無機繊維成形体中の無機繊維の含有量は、好ましくは25体積%以下であり、より好ましくは1~25体積%である。無機繊維成形体中の無機繊維の含有量を25体積%以下にすることで、アルミニウム-無機繊維成形体中の無機繊維の含有割合を容易に調整できる。
【0064】
一実施形態において、2以上の炭化珪素多孔体を積層して一つのブロックとすることができる。2以上の炭化珪素多孔体を積層して一つのブロックとすることで、生産効率を高めることができる。
炭化珪素多孔体は、離型剤を塗布した離型板で挟み積層して一つのブロックとする。この炭化珪素多孔体を積層して一つのブロックとする際に、面方向の締め付けトルクが1~20Nm、好ましくは2~10Nmとなるように離型板で挟み込んで積層する。積層方法は特に限定されないが、例えば、炭化珪素多孔体を、離型剤を塗布したステンレス製の離型板で挟み積層した後、両側に鉄製の板を配置してボルトで連結して所定締め付けトルクで締め付けて一つのブロックとする方法が挙げられる。面方向の適正な締め付けトルクに関しては、使用する炭化珪素多孔体の強度により異なるが、締め付けトルクが1Nm未満では、得られるアルミニウム-炭化珪素質複合体の表面アルミニウム層の厚みが厚くなったり、厚み差が大きくなり過ぎたりする場合がある。一方、締め付けトルクが20Nmを超えると、得られるアルミニウム-炭化珪素質複合体の表面アルミニウム層が局所的に薄く成り過ぎ、その後のめっき前処理等の表面処理時に部分的にアルミニウム-炭化珪素質複合体が露出し、その部分にめっき未着が発生したり、めっき密着性が低下したりする等の問題が発生する場合がある。
【0065】
(工程(ii))
アルミニウムを含む金属を炭化珪素多孔体に十分に含浸させるために、炭化珪素多孔体を予め所定の温度で予備加熱する。特許文献1には、溶融したアルミニウムを含有する金属が含浸不十分のまま固化することを防ぐために550℃以上に加熱しておくことが記載されている。本発明者は、予備加熱時の保持時間を調整すること、及び含浸時の金型の温度を所定の範囲にすることで、中央部と外側部との密度の差をより小さくすることができかつ熱伝導率の差を小さくすることできることを見出した。
【0066】
工程(ii)において、(i)で準備した炭化珪素多孔体(及び必要に応じて、無機繊維)を、600~750℃、好ましくは650℃を超え750℃以下、より好ましくは660~740℃で、50~200分間、好ましくは80~150分間、より好ましくは100~120分間保持する。炭化珪素多孔体を600~750℃で50~200分間保持することで、中央部と外周面側に位置する外側部とで密度の差が小さく、かつ熱伝導率の差が小さい成形体を得ることができる。保持時間が200分を超えると、上記予備加熱温度の範囲内であっても、中央部と外周面側に位置する外側部とで熱伝導率の差が大きくなる場合がある。
【0067】
(工程(iii))
工程(iii)において、(ii)で得られた炭化珪素多孔体(及び必要に応じて、無機繊維)を100~450℃、好ましくは150~35℃、より好ましくは200~300℃に加熱された金型内に配置する。従来、金型温度は、予備加熱した炭化珪素多孔体の温度が下がらないように、なるべく高い方が好ましいと考えられていた。しかし、本実施形態に係る製造方法において、工程(ii)の予備加熱を行った炭化珪素多孔体については、むしろ金型温度を100~450℃にしてアルミニウムを含む金属を速やかに固化させることで、中央部と外周面側に位置する部分とで密度の差が小さく、かつ熱伝導率の差が小さい成形体を得ることができることがわかった。
【0068】
金型は、引き続き工程(iv)において溶湯鍛造法によりアルミニウムを含む金属を含浸させることができるよう、プレス型であることが好ましい。
【0069】
2以上の炭化珪素多孔体を積層して同時に工程(iii)及び(iv)を行う場合は、金型は、積層する炭化珪素多孔体の数に応じた深さ又は幅を有する凹型(ダイ)を有することが好ましい。
【0070】
従来、溶湯鍛造法において、製品形状を形成するために、炭化珪素多孔体の外周面を囲むように鉄枠で固定し、これを複数枚積層して金型に配置し、アルミニウムを含む金属の溶湯を金型内に注ぐことで行われていた。このような方法では、各炭化珪素多孔体の外周面が鉄枠で覆われており、かつ各炭化珪素多孔体の鉄枠が面方向に隙間なく積層されるので、アルミニウムを含む金属の溶湯は、最外部に位置する炭化珪素多孔体側からしか流れ込むことができない。その結果、中央部と外周面側に位置する部分とで密度に差が生じやすい。そのため、炭化珪素多孔体の外周面を囲う製品形状を形成するための鉄枠は用いないことが好ましい。
炭化珪素多孔体をプレス凹型(ダイ)内にセットすることで金型内に配置する。
【0071】
(工程(iv))
工程(iv)において、炭化珪素多孔体(及び必要に応じて無機繊維)が配置された金型内に溶融したアルミニウムを含有する金属を流し込む。アルミニウムを含有する金属の種類については、上記のとおりである。
アルミニウムを含む金属の溶湯温度は、好ましくは700~850℃であり、より好ましくは780~810℃である。アルミニウムを含む金属の溶湯温度を700~850℃にすることで、中央部分と外周面側に位置する部分とで熱伝導率の差が小さい成形体を得ることができる。
【0072】
(工程(v))
工程(v)において、板状の炭化珪素多孔体(及び必要に応じて無機繊維)にアルミニウムを含有する金属を含浸させる。成形体が、周縁部に少なくとも一つの切り欠き部を有する場合は、板状の炭化珪素多孔体及び無機繊維成形体にアルミニウムを含有する金属を含浸させる。
【0073】
含浸は、工程(iv)においてアルミニウムを含有する金属を流し込んだ後、プレス型の凹型(ダイ)を上パンチで密閉し、加圧することで行う。
含浸時の圧力は、好ましくは30~100MPa、より好ましくは40~90MPa、さらに好ましくは50~80MPaである。含浸時間は、好ましくは5~30分、より好ましくは10~25分、さらに好ましくは15~20分である。
【0074】
含浸時の圧力及び時間を、30~100MPa及び5~30分にすることで、中央部分と外周面側に位置する部分とで密度の差がより小さく、熱伝導率の差がより小さい成形体を得ることができる。
【0075】
工程(v)において、金型の大きさが炭化珪素多孔体の大きさよりも大きい場合は、炭化珪素多孔体の板面及び/又は外周面の少なくとも一部に、炭化珪素多孔体に含浸されたアルミニウムを含む金属と同じ組成を有する金属部が形成される。
室温まで冷却した後、金型から取り出して成形体を得ることができる。
含浸後のインゴットを、室温まで冷却し、その後、湿式バンドソー等で切断することで、アルミニウム-炭化珪素複合体を得ることができる。
その後、必要に応じて、不要な金属部をマシニングセンターで穴加工することで、所定のサイズに加工することができる。
【0076】
(その他の工程)
成形体の製造方法は、上記工程(i)~(v)に加えて、他の工程を有していてもよい。例えば、成形体がめっき層を有する場合は、工程(v)で得られた成形体に対して、必要に応じて表面加工や研磨処理を行った後に、めっき処理、好ましくはNiめっき処理を施すことができる。めっき処理方法は特に限定されず、必要に応じて表面加工や研磨が施された後に、無電解めっき処理、電気めっき処理法のいずれでもよい。
また、工程(v)の後に、成形体を求められる製品形状となるように切り出す工程を有していてもよい。切り出しは、湿式バンドソー等の公知の機械加工で行うことができる。但し、その後にめっき処理を行う場合は、めっき密着性を高める観点から、成形体の外周面に無機繊維が露出しない範囲で成形体を切り出す。
【実施例0077】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム株式会社製:NG-150、平均粒径:100μm)、炭化珪素粉末B(屋久島電工株式会社製:GC-1000F、平均粒径:10μm)及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)を質量比60:40:10に示す組成で配合し、攪拌混合機で1時間混合した。
【0079】
この混合粉末を、120mm×70mm×7mmで四隅に切欠き部を有する形状に10MPaの圧力で成形した。この成形体の角部の四隅は15mm×15mmの切欠き部を有する。この成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、大気中、960℃で2時間加熱して、炭化珪素多孔体を作製した。なお、得られた炭化珪素多孔体について、直径20mm×7mmの形状に加工して、その寸法と質量より相対密度を算出した結果、65%であった。上記と同じ方法で合計48枚の炭化珪素多孔体を作製した。
【0080】
次に、得られた各炭化珪素多孔体をダイヤモンド加工治具で4.8mmの厚さに加工した。12枚の試料を、各試料間に離型剤を塗布した0.8mm厚のSUS板を挟んで積層し、さらに、両端に位置する試料の各外側の面を6mm厚の鉄板で挟み、直径10mmのボルト及びナットで固定して一つのブロックを形成した。同じ方法で合計4つのブロックを形成した。
【0081】
各炭化珪素多孔体の角部の切欠き部には、10mm×10mm×厚さ4.8mmの大きさを有する、無機繊維成形体(デンカ株式会社製、「アルセン」)を充填した。無機繊維成形体の含有割合は、切り欠き部の容積に対して90体積%であった。
【0082】
次に、上記のブロック4個を1ブロックとして、電気炉内に配置した。温度600℃で120分間保持して炭化珪素多孔体を予備加熱した。
次いで、予め250℃に加熱しておいた内寸320mm×260mm×440mmの空隙を有するプレス型内に載置した。
【0083】
温度810℃に加熱したアルミニウム合金(シリコンを12質量%、マグネシウムを0.9質量%含有する)の溶湯をプレス型内に流し込んだ。プレス型を密閉後、60MPaの圧力で15分間プレスして、炭化珪素多孔体及び無機繊維(アルミニウム質短繊維)にアルミニウム金属を含浸させた。
【0084】
室温まで冷却したのち、金型サイズのブロックを室温まで冷却し、その後、湿式バンドソー等で切断することで、アルミニウム-炭化珪素複合体を得た。次いで、得られたアルミニウム-炭化珪素複合体を、マシニングセンターで外周、穴加工し、所定のサイズ(122mm×72mm×5mm)の、平面視が略長方形のアルミニウム-炭化珪素複合体(成形体)を得た。
【0085】
[実施例2]
予備加熱温度を650℃とした以外は、実施例1と同じ方法で、成形体を得た。
【0086】
[比較例1~4]
予備加熱温度条件及び金型温度を表2に記載のとおりとした以外は、実施例1と同じ方法で、成形体を得た。
【0087】
(密度)
実施例及び比較例で得られた成形体について、ダイヤモンドカッターを用いて、成形体の短辺をアルミニウム-炭化珪素複合化部とアルミニウム-無機繊維複合化部との境界(図1のA1-A1’線、A2-A2’線、A3-A3’線及びA4-A4’線)で切断し、アルミニウム-無機繊維複合化部を取り除いた。残ったアルミニウム-炭化珪素複合化部について、短辺に平行でかつ等間隔の切り取り線に沿って5等分割するとともに長辺に平行でかつ等間隔の切り取り線に沿って5等分割することで25個の分割片に切り分けた。このうち中央に位置する分割片と、四隅に位置する分割片について、天秤(島津製作所社製、「AUW120」)を用いて、空気中及び水中で重さを図り、アルキメデス法による密度を決定した。
四隅に位置する分割片の密度の平均値を算出し、中央部の密度との差を求めた。結果を表1に示した。
【0088】
(熱伝導率)
実施例及び比較例で得られた成形体について、密度の測定と同様の方法で25個の分割片に切り分けた。この分割片から、熱伝導率測定用試験体(直径11mm、厚さ1mm)を作製した。それぞれの試験体を用いて、温度150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(理学電機社製;LF/TCM-8510B)で測定した。結果を表1に示した。
【0089】
(外周面の観察)
実施例1,2で得られた成形体の外周面をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-2000)で観察した。無機繊維を含まない領域、及びアルミニウム-無機繊維複合化部で構成される領域について、それぞれ、3mm×4mmの視野を観察し、画像処理ソフトで二値化して、黒色に検出される領域(無機繊維で構成される領域)の面積を測定した。
【0090】
図3に、実施例1で得られた成形体の外周面をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-2000)で観察したときの3mm×4mmの視野における写真を示す。図3(b)において、黒い点(符号7)で示される部分が無機繊維と同じ成分が検出された領域である。図3(a)は実施例1で得られた成形体の外周面のうち無機繊維を含まない領域の顕微鏡写真であり、無機繊維は観察されない(つまり無機繊維で構成される領域の面積が1mm未満である)。図3(b)は、実施例1で得られた成形品の外周面のうちアルミニウム-無機繊維複合化部で構成される領域の顕微鏡写真であり、黒い点として無機繊維が観察されたが、その面積を二値化処理で算出すると0.5mmであった。
同様に、図4に、実施例2で得られた成形体の外周面をマイクロスコープで観察した時の3mm×4mmの視野における写真を示す。図4(a)は実施例2で得られた成形体の外周面のうち無機繊維を含まない領域の顕微鏡写真であり、無機繊維は観察されない。図4(b)は、実施例2で得られた成形品の外周面のうちアルミニウム-無機繊維複合化部で構成される領域の顕微鏡写真であり、黒い点として無機繊維が観察されたが、その面積を二値化処理で算出すると0.04mmであった。
【0091】
(めっき層の形成)
実施例1,2で得られた成形体について、圧力0.4MPa、搬送速度1.0m/minの条件でアルミナ砥粒にてブラスト処理を行い清浄化した後、無電解Ni-P及びNi-Bめっきを行った。成形体表面に8μm厚(Ni-P:6μm+Ni-B:2μm)のめっき層を形成した。実施例1,2で得られた成形体は、いずれも、板面及び外周面においてめっき密着性よくめっき層を形成することができた。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、実施例1,2の成形体は、中央部分と外周面側に位置する部分とで熱伝導率の差が小さい。これに対して、中央部分と外周面側に位置する部分とで密度の差が3%を超えている比較例1~4の成形体は、中央部分と外周面側に位置する部分とで熱伝導率の差が10%を超えており、差が大きくなってしまう。
【符号の説明】
【0094】
1 成形体
2 貫通孔
3,20 アルミニウム-炭化珪素複合化部
6,6’ 切り出し領域
4 金属部
5 アルミニウム-無機繊維複合化部
21 中央部
22a,22b,22c,22d 外側部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素多孔体にアルミニウムを含む金属が含浸されたアルミニウム-炭化珪素複合化部を有する板状成形体であって、
アルミニウム-炭化珪素複合化部を平面視四角形の板状とし、板面の一辺に平行に5等分した線及び当該辺に交わる一辺に平行に5等分した線にそれぞれ沿って垂直に切断して25等分割した分割片のうち、中央の分割片のアルキメデス法による密度と四隅の分割片のアルキメデス法による密度の平均値との差が3%以下である、成形体。
【請求項2】
アルミニウムを含む金属及び無機繊維を含むアルミニウム-無機繊維複合化部をさらに有し、
アルミニウム-無機繊維複合化部が、成形体の外周面の少なくとも一部を構成し、
アルミニウム-無機繊維複合化部を含む外周面をマイクロスコープで観察したときの3mm×4mmの視野における無機繊維で構成される領域の面積が1mm未満である、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
アルミニウム-無機繊維複合化部に1以上の貫通孔を有する、請求項に記載の成形体。
【請求項4】
板面及び/又は外周面の少なくとも一部に金属部を有する、請求項1からのいずれか一項に記載のアルミニウム-炭化珪素複合体。
【請求項5】
放熱部品である、請求項1からのいずれか一項に記載の成形体。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の成形体の製造方法であって、以下の工程:
(i)板状の炭化珪素多孔体を準備すること、
(ii)板状の炭化珪素多孔体を、600~750℃で50~200分間保持すること、
(iii)(ii)で得られた炭化珪素多孔体を100~300℃に加熱された金型内に配置すること、及び
(iv)金型内に溶融したアルミニウムを含有する金属を流し込むこと、
(v)板状の炭化珪素多孔体にアルミニウムを含有する金属を含浸させること、
を含む、方法。
【請求項7】
工程(i)において、周縁部に少なくとも一つの切り欠き部を有する板状の炭化珪素多孔体を準備し、該切り欠き部に、切り欠き部の容積に対して70~90体積%の無機繊維成形体を配置すること、をさらに含み、
工程(v)において、板状の炭化珪素多孔体及び無機繊維成形体にアルミニウムを含有する金属を含浸させる、請求項に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素多孔体にアルミニウムを含む金属が含浸されたアルミニウム-炭化珪素複合化部を有する、放熱部品用板状成形体であって、
アルミニウム-炭化珪素複合化部を平面視四角形の板状とし、板面の一辺に平行に5等分した線及び当該辺に交わる一辺に平行に5等分した線にそれぞれ沿って垂直に切断して25等分割した分割片のうち、中央の分割片のアルキメデス法による密度と四隅の分割片のアルキメデス法による密度の平均値との差が3%以下である、放熱部品用成形体。
【請求項2】
アルミニウムを含む金属及び無機繊維を含むアルミニウム-無機繊維複合化部をさらに有し、
アルミニウム-無機繊維複合化部が、成形体の外周面の少なくとも一部を構成し、
アルミニウム-無機繊維複合化部を含む外周面をマイクロスコープで観察したときの3mm×4mmの視野における無機繊維で構成される領域の面積が1mm未満である、請求項1に記載の放熱部品用成形体。
【請求項3】
アルミニウム-無機繊維複合化部に1以上の貫通孔を有する、請求項2に記載の放熱部品用成形体。
【請求項4】
板面及び/又は外周面の少なくとも一部に金属部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の放熱部品用成形体
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の放熱部品用成形体の製造方法であって、以下の工程:
(i)板状の炭化珪素多孔体を準備すること、
(ii)板状の炭化珪素多孔体を、600~750℃で50~200分間保持すること、
(iii)(ii)で得られた炭化珪素多孔体を100~300℃に加熱された金型内に配置すること、及び
(iv)金型内に溶融したアルミニウムを含有する金属を流し込むこと、
(v)板状の炭化珪素多孔体にアルミニウムを含有する金属を含浸させること、
を含む、方法。
【請求項6】
工程(i)において、周縁部に少なくとも一つの切り欠き部を有する板状の炭化珪素多孔体を準備し、該切り欠き部に、切り欠き部の容積に対して70~90体積%の無機繊維成形体を配置すること、をさらに含み、
工程(v)において、板状の炭化珪素多孔体及び無機繊維成形体にアルミニウムを含有する金属を含浸させる、請求項に記載の方法。