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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130781
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】グミ組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/34 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
A23G3/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029360
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小関 誠
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB07
4B014GG09
4B014GK05
4B014GK08
4B014GL02
4B014GL04
4B014GL09
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP23
4B014GQ05
(57)【要約】
【課題】 従来のグミキャンディに比べ、口どけが良く、サクっとした食感の歯ごたえと軟らかさを併せ持ち、喫食時の香り立ち(フレーバーリリース)が良く、大量生産可能な新規な食感のグミキャンディを提供すること。
【解決手段】 グミキャンディ生地に、ピログルタミン酸を0.08%~1.5%含有することを特徴とするグミ組成物、及びピログルタミン酸を0.08%~1.5%含有することを特徴とするグミキャンディによって達成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピログルタミン酸を含有することを特徴とするグミ組成物。
【請求項2】
前記ピログルタミン酸の含有量が、0.08%~1.5%である請求項1に記載のグミ組成物。
【請求項3】
前記グミ組成物がグミキャンディである請求項1または2に記載のグミ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グミ組成物及びその製造方法に関する。特に、従来にない口どけ、サクっとした食感の歯ごたえ、フレーバーリリース(香り立ち)の良さを有するグミキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディと呼ばれるチューイングキャンディが知られている。グミキャンディは、主にゼラチンをゲル化剤として使用して製造される。チューイングキャンディを噛むと、ゴムのような弾力のある噛みごたえに特徴がある食感を持つ。グミキャンディ市場の拡大に伴い、さまざまな食感をもつグミキャンディが開発されている。
例えば、ソフトな弾性を持つもの(特許文献1)、油脂を加えることで一定の力で噛みきれるもの(特許文献2)、ゼラチン以外の原料を用いてグミ様の食感を持たせたもの(特許文献3)などが知られている。
更に、軟らかい食感の歯ごたえや口どけを持つものが好まれるようになり、口どけの良いグミキャンディも知られている(特許文献3、4)。
【0003】
乳化剤の一種であるジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリドは、デンプン吸着剤、グルテン改質剤として、パンやビスケットなどの焼菓子の食感改良に適していることが知られている(特許文献5)。
また、グミ組成物を医薬品投与のために用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-169696号公報
【特許文献2】特開2008-220281号公報
【特許文献3】特開平5-137513号公報
【特許文献4】特開2010-154784号公報
【特許文献5】特開平4-173046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グミキャンディは、主にゼラチンをゲル化剤として使用し、噛んだ際にゴムのような噛みごたえを楽しむための弾力ある菓子である。新しい食感と口どけを持たせるためには水分を多くしたり、デキストリンや多糖類、油脂等を添加することが必要となる。すると、製造工程が煩雑になり、輸送・保管時に製品同士が付着してしまったり、長期保管が難しいという欠点があった。
【0006】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものである。その目的は、味に影響を与えず、製造時の装置への付着が抑えられ、製造後の製品同士の付着を抑えることができるグミキャンディを提供することである。他の目的は、水分含量を高くしたり、デキストリンや多糖類・油脂を添加することなく、十分な口どけとサクっとした食感の歯ごたえを有し、喫食時のフレーバーリリースの良好なグミキャンディを提供することである。また他の目的は、大量生産可能なグミキャンディを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明に係るグミ組成物は、ピログルタミン酸を含有することを特徴とする。このとき、前記ピログルタミン酸の含有量が、0.08%~1.5%であることが好ましい。また、前記グミ組成物がグミキャンディであることが好ましい。
また、別の発明に係るピログルタミン酸を含有するグミ組成物の製造方法は、(1)糖質と仕込水と乳化剤とを含有する主原料の煮詰め操作を行う主原料溶解工程、(2)ゲル化剤を水に溶解しておいたものを添加するゲル化剤添加工程、(3)主原料とゲル化剤とを混合することで生地を得る混合工程、(4)前記生地を所望の形状となるように成形する成形工程を備え、前記ピログルタミン酸は、前記(1)主原料溶解工程、(2)ゲル化剤添加工程または(3)混合工程のいずれかで添加されることを特徴とする。
このとき、前記グミ組成物が、グミキャンディであることが好ましい。
また、別の発明は、グミキャンディの製造時の装置への付着を抑制し、製造後の製品同士の付着を抑制するための方法であって、グミキャンディ原料中にピログルタミン酸を含有する方法である。
別の発明は、グミキャンディに良好な口どけ感とサクッとした食感と香り立ちの良さを与える方法であって、グミキャンディ原料中にピログルタミン酸を含有する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、今までになかった口どけとサクっとした食感の歯ごたえを持ち、喫食時の香り立ちのよい新規なグミキャンディを提供できる。また、製造時の装置への付着が抑えられ、製造後の製品同士の付着を抑制できるグミ組成物を大量生産できる製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】クリープメーターによるテクスチャ測定方法を示す模式図である。(A)テクスチャ測定前の状態、(B)テクスチャ測定中の状態、(C)テクスチャ測定後の状態をそれぞれ示す。
図2】テクスチャ測定の結果を示す模式図である。
図3】テクスチャ測定のかたさ(荷重)の結果を示すグラフである。データは、平均値±標準偏差(S.D.)にて示し、各群間の統計解析はStudent t検定によって行い、「*」はp≦0.05、「**」はp≦0.01で有意差があったことを示す(図4図9においても同様)。
図4】テクスチャ測定の凝集性の結果を示すグラフである。
図5】テクスチャ測定のガム性(荷重)の結果を示すグラフである。
図6】テクスチャ測定の付着力(応力)の結果を示すグラフである。
図7】テクスチャ測定の付着性の結果を示すグラフである。
図8】咀嚼に必要な時間の違いを示すグラフである。
図9】口どけの良さに関する官能評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
本発明においてグミ組成物とは、ゼラチンを主なゲル化剤(または乳化剤)とし、ゴム様の食感をもつ経口用の組成物を意味する。グミ組成物には、例えばグミキャンディが含まれる。グミ組成物の種類としては、ハードグミ、ソフトグミ、パウダー付きグミ、コーティンググミなどあるが、特に限定はない。
【0011】
本発明のグミ組成物は、嗜好用菓子、有効成分を有するサプリメント、機能性食品、経口医薬などが例示される。
有効成分としては、例えばビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、リコペン等のビタミン類;塩酸ベタイン、塩化カルニチン、塩化ベタネコール等の健胃剤;ニンジン、ヨクイニン、加工大蒜、麻黄、南天実、桂皮、ゲンチアナ、陳皮、センブリ、ゴシュウ、ソウジュツ、チョウジ、アロエ、ホップ、葛根湯、桂枝湯、柴胡桂枝湯、麻黄湯、小柴胡湯、小青竜湯等の生薬エキス又は漢方薬;アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、サリチルアミド等の解熱鎮痛剤;塩酸ノスカピン、ノスカピン等の去痰剤;アクリノール、塩化ベルベリン、クレオソート、タンニン酸、臭化水素酸スコポラミン、臭化メチルアトロピン、塩酸パパベリン、アミノ安息香酸エチル等の止瀉剤;臭化水素酸デキストロメトルファン、ヒベンズ酸チペピジン、リン酸ジヒドロコデイン等の血管拡張剤;塩酸イソチベンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸アリメマジン等の抗ヒスタミン剤;臭化水素酸デキストロメトルファン、ヒベンズ酸チペピジン、リン酸ジヒドロコデイン等の鎮咳剤;カルシウム、イオウ、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄等のミネラル類;大豆タンパク、卵白粉末、乳清タンパク等のタンパク質;グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、フェニルアラニン、タウリン、トリプトファン、γ-アミノ酪酸等のアミノ酸;EPA、DHA、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸等の脂肪酸類;カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素、アマランス、エリスロシン、アルラレッドAC、ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、アシッドレッド、タートラジン、サンセットイエローFCF、ファストグリーンFCF、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン等の色素;各種フルーツのフレーバーやエッセンス等の香料;リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、食塩、グルタミン酸及びその塩、みりん、食酢、天然果汁、野菜・果実・海産物等の裁断物又は粉末化物等の調味剤;アガリクス、シイタケエキス、レイシ、ヤマブシタケ等のキノコ類又はそのエキス;防腐剤;pH調整剤;コンドロイチン硫酸、グルコサミン、セラミド、ヒアルロン酸等のその他機能性素材等が挙げられるが、これらに限定されない。有効成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。有効成分の含有量は、成分の種類や用途などに応じて適宜設定される。
【0012】
本発明に用いることのできる原料としては、例えば以下のものが挙げられる。
ゲル化剤としては、例えばゼラチンやペクチンが用いられる。ゼラチンとしては、動物の骨や皮、魚の鱗など各種由来のものを用いることができる。本願発明の目的を達成できれば、その他のゲル化剤を用いることもできる。
糖質としては、グラニュー糖、上白糖などの砂糖、その他の二糖類、ソルビトールなどの糖アルコール、還元水あめ、酸糖化水あめ、酵素分解水あめ、単糖、三糖類、オリゴ糖、トレハロース、イソマルツロース等を用いることができる。イソマルツロース還元物であれば、「シュガーレス」を主張できる。
果汁等としては、りんご、ぶどう、いちご、キウイ、もも、みかん等の果汁、にんじん、ほうれん草、セロリ、ピーマン、ケール、キャベツ、クレソン等の野菜汁、またはそれらの混合物などを例示できる。
【0013】
上記以外にも必要に応じて乾燥果実、増粘多糖類、酸味料、香料、着色料等を用いることができる。
本発明に用いられるピログルタミン酸とは、グルタミン酸のγカルボキシル基とαアミノ基が分子内脱水縮合した環状アミノ酸であり、光学異性体上L体、D体、D,L体の混合物が存在する。ピログルタミン酸としては、好ましくはL体を用いることができる。ピログルタミン酸は、味噌や醤油の醸造熟成中において、タンパク原料から遊離した呈味性のグルタミン酸が非酵素的な環化反応を受けて、多量に蓄積することが知られている。ピログルタミン酸は、無味無臭で、水への溶解性がよく、溶解液は透明である。ピログルタミン酸が、グミに含まれていてもグミ自体への味、におい、色などへの影響がない。ピログルタミン酸の含有量は、最終製品のグミ組成物に対して、0.02質量%以上が好ましく、0.08質量%以上が更に好ましい。
【0014】
グミ組成物やグミキャンディは、例えば次のようにして製造できる。
糖質と仕込水を加熱して溶解したものに乳化剤を加え、煮詰めを行い煮飴を得る(主原料溶解工程)。予め60℃前後の温水にゼラチンを溶かしておいたものを加える(ゲル化剤添加工程)。必要に応じて、果汁、香料等の副原料を添加する(副原料添加工程)。これらを十分に混合してグミキャンディ生地を得る(混合工程)。混合した生地は、スターチモールド等の通常のグミキャンディ成形方法を用い、所望の形状となるよう成形する(成形工程)。型から取り出した後は、必要に応じて表面に油脂や光沢剤、グラニュー糖、酸味料、粉末オブラート、でんぷん、粉末カルシウム、粉末マグネシウム等を塗布することができる(表面塗布工程)。
ピログルタミン酸は、上記主原料溶解工程、ゲル化剤添加工程、副原料添加工程のいずれの工程で含ませても良い。但し、副原料添加工程は任意の工程であることから、主原料溶解工程またはゲル化剤添加工程のいずれかの工程で添加することが好ましい。主原料として混合することで工程管理が行いやすくなることから、主原料溶解工程で混合することが好ましい。
【0015】
以下、実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<比較例1> コントロールグミキャンディ
100%みかん果汁3000g、水820g、グラニュー糖2000g、ゲル化剤(ネオソフトGE-361:太陽化学株式会社製)500gを混合し、湯煎にて溶解した。溶解液にグラニュー糖3500gを混合した。クエン酸150gを500gの水に溶解したものを添加して加熱し、ブリックス(Bx.)75になるまで煮詰めた。その後、加熱を止め、みかん果汁香料30gを添加してよく混合し、グミキャンディベース原料液約10kgを得た。グミキャンディベース原料液を常法に従って、成形型に流し込んで冷却、固化した後、乾燥させた。乾燥後に型から取り出し、表面に適量のでんぷん、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム粉末の混合物を塗布した。1粒あたりの質量を約6.5g、縦約15mm×横約25mm×厚み約10mmの直方体のグミキャンディを得た。これを比較例1とした。
比較例1を成形型から取出す際には、成形型との付着性が強く、容易に取り出せなかった。比較例1を重ねて置くと製品同士が互いに付着した。口どけや香り立ちは従来製品と同様のものであり、所望のサクっとした食感の歯ごたえではなかった。
【0016】
<比較例2> グルタミン酸1.5%含有グミキャンディ
100%みかん果汁3000g、水670g、グラニュー糖2000g、ゲル化剤(ネオソフトGE-361:太陽化学株式会社製。主成分として、ゼラチンを含有する乳化剤である)500g、L-グルタミン酸(東京化成工業株式会社製)150gを混合し、湯煎にて溶解した。溶解液にグラニュー糖3500gを混合し、更にクエン酸150gを500gの水に溶解したものを添加して加熱しブリックス(Bx.)75になるまで煮詰めた。その後、加熱を止めみかん果汁香料30gを添加してよく混合し、グミキャンディベース原料液約10kgを得た。グミキャンディベース原料液を常法に従って、成形型に流し込んで冷却、固化した後、乾燥させた。乾燥後に型から取り出し、表面に適量のでんぷん、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム粉末の混合物を塗布した。1粒あたりの質量を約6.5g、縦約15mm×横約25mm×厚み約10mmの直方体のグミキャンディを得た。これを比較例2とした。
比較例2を成形型から取出す際には、成形型との付着性が強く、容易に取り出せなかった。比較例2を重ねて置くと製品同士が互いに付着した。口どけや香り立ちは従来製品と同様のものであり、グルタミン酸の味が強く感じられた。所望のサクっとした食感の歯ごたえではなかった。
【0017】
<実施例1> ピログルタミン酸0.08%含有グミキャンディ
100%みかん果汁3000g、水812g、グラニュー糖2000g、ゲル化剤(ネオソフトGE-361:太陽化学株式会社製)500g、L-ピログルタミン酸(東京化成工業株式会社製)8gを混合し、湯煎にて溶解した。溶解液にグラニュー糖3500gを混合した。クエン酸150gを500gの水に溶解したものを添加して加熱し、ブリックス(Bx.)75になるまで煮詰めた(主原料溶解工程)。その後、加熱を止め、みかん果汁香料30gを添加して(副原料添加工程)よく混合し(混合工程)、グミキャンディベース原料液約10kgを得た。
グミキャンディベース原料液を常法に従って成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥させた(成形工程)。乾燥後型から取り出し、表面に適量のでんぷん、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム粉末の混合物を塗布した(表面塗布工程)。1粒あたりの質量を約6.5g、縦約15mm×横約25mm×厚み約10mmのグミキャンディを得た。これを実施例1とした。
実施例1を成形型から取出す際には、成形型との付着性は少なく、容易に取り出せた。実施例1を重ねて置くと、製品同士に僅かな付着がみられた。実施例1は、比較例1に比べると、噛みごたえが感じられ、口どけや喫食時のみかんの香り立ちは良く、サクっとした食感の歯ごたえがあった。味は比較例1と大きな相違は認められなかった。
【0018】
<実施例2> ピログルタミン酸0.1%含有グミキャンディ
100%みかん果汁3000g、水810g、グラニュー糖2000g、ゲル化剤(ネオソフトGE-361:太陽化学株式会社製)500g、L-ピログルタミン酸(東京化成工業株式会社製)10gを混合し、湯煎にて溶解した。溶解液にグラニュー糖3500gを混合した。クエン酸150gを500gの水に溶解したものを添加して加熱し、ブリックス(Bx.)75になるまで煮詰めた。その後、加熱を止め、みかん果汁香料30gを添加してよく混合し、グミキャンディベース原料液約10kgを得た。
グミキャンディベース原料液を常法に従って成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥させた。乾燥後型から取り出し、表面に適量のでんぷん、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム粉末の混合物を塗布した。1粒あたりの質量約6.5g、縦約15mm×横約25mm×厚み約10mmのグミキャンディを得た。これを実施例2とした。
実施例2を成形型から取出す際には、成形型との付着性はなく、容易に取り出せた。実施例2を重ねて置くと、製品同士で付着することはなかった。喫食時のみかんの香り立ちは良く、口どけとサクっとした食感の歯ごたえが良好であった。味は比較例1と大きな相違は認められなかった。
【0019】
<実施例3> ピログルタミン酸1.5%含有グミキャンディ
100%みかん果汁3000g、水670g、グラニュー糖2000g、ゲル化剤(ネオソフトGE-361:太陽化学株式会社製)500g、L-ピログルタミン酸(東京化成工業株式会社製)150gを混合し、湯煎にて溶解した。溶解液にグラニュー糖3500gを混合した。クエン酸150gを500gの水に溶解したものを添加して加熱し、ブリックス(Bx.)75になるまで煮詰めた。その後、加熱を止め、みかん果汁香料30gを添加してよく混合し、グミキャンディベース原料液約10kgを得た。
グミキャンディベース原料液を常法に従って成形型に流し込んで冷却、固化、乾燥させた。乾燥後型から取り出し、表面に適量のでんぷん、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム粉末の混合物を塗布した。1粒あたりの質量を約6.5g、縦約15mm×横約25mm×厚み約10mmのグミキャンディを得た。これを実施例3とした。
実施例3を成形型から取出す際には、成形型との付着性はなく、容易に取り出せた。実施例3を重ねて置くと、製品同士は互いに付着することはなかった。喫食時のみかんの香り立ちは良く、口どけとサクっとした食感の歯ごたえが良好であった。味は比較例1と大きな相違は認められなかった。
【0020】
<試験例1> テクスチャ試験
テクスチャ試験について、以下に説明と測定条件を示した。
図1には、クリープメーターを用いてテクスチャ測定を行う際の様子を模式的に示した。クリープメーターには、試料3(グミキャンディ)を載せる試料台4と、その上方に設けられるロードセル1とが設けられている。ロードセル1は、押し返す力や引っ張る力を測定することができる。ロードセル1には、測定する試料3に応じて、適切なプランジャー2(圧縮用器具)が取り付けられる。試料台4は、試料3を載置した状態で、ゆっくりと上側Xまたは下側Yに移動できるようになっている。
テクスチャ試験の実施方法は次の通りである。図1(A)に示すように、試料台4を下降させた状態で試料3を試料台4に載せる。このとき、試料3とプランジャー2とは離間した状態としておく。
次に、試料台4をX方向に上昇させることで、図1(B)に示すように、プランジャー2に試料3を接触させ、試料3を押し付けるときの荷重を測定する。さらに試料台4を上昇させると、プランジャー2が試料3を突き刺す。
【0021】
次に、図1(C)に示すように、試料台4をY方向に下降させ、プランジャー2を試料3から離間させる。
更にもう一度、試料台4を上下方向に移動させることで、2回目の圧縮を行う。
上記操作の間にプランジャー2にかかる荷重または応力(荷重:N、応力:Pa)を時間と共に測定した。
テクスチャ試験の結果を示すグラフ(チャート)を図2に示した。図2の横軸は時間(s)を、縦軸は荷重(N)または応力(N/m2、Pa)を示す。図中の符号F1は「荷重」または「応力」を、A1~A3の「面積」は測定荷重の積分値を意味しエネルギー量を、F3は「付着力(応力)」を、それぞれ示す。A2をA1で除した値(A2/A1)は凝集性であり、一度噛んだ後に試料の弾力が残っている割合を示す。凝集性に荷重を掛けた値(F1・A2/A1)は、ガム性荷重(応力)であり、二度目に噛んだ時の歯ごたえを示す。F3は付着力(応力)をA3は付着性を示し、試料台4が下がるときにプランジャー2が試料3に引っ張られる力を示している。これは、試料3の口の中での粘りを示す。
【0022】
テクスチャ試験の測定条件を下記に示した。
測定機器:YAMADEN Rheoner II Creepmeter RE2-3305B
使用プランジャー:ワイヤープランジャー(線径0.3mm)
菓子サンプル:1粒の質量約6.5g、概ね15mm×25mm×10mmの直方体に成形された試料
測定条件:プランジャー移動速度10mm/秒、測定時温度20℃、湿度60%
測定歪率:70%
比較例1、2、実施例1~3について、上記テクスチャ試験に記載の方法に基づき、測定を行った。比較例1は11個、比較例2は7個、実施例1は11個、実施例2は11個、実施例3は11個のサンプルを測定した。
試験結果を図3図7に示した。
【0023】
図3には、かたさ(荷重)応力の結果を纏めたグラフを示した。比較例1に比べると、比較例2では差がなかった。一方、実施例1~実施例3では、比較例1に比べると、有意に荷重値が低くなった。ピログルタミン酸は、グミの硬度を軟化させ、軟らかい食感にする作用があることが分かった。
【0024】
図4には、凝集性の結果を纏めたグラフを示した。比較例1に比べると、比較例2及び実施例1~3では、有意に荷重値が高くなった。グルタミン酸、ピログルタミン酸は、グミの弾力性を高め、一度目に噛んだ際の弾力を増加させ、歯ごたえを感じさせる作用があることが分かった。
【0025】
図5には、ガム性(荷重)の結果を纏めたグラフを示した。比較例1に比べると、比較例2、実施例1では有意差が認められなかった。一方、実施例2、実施例3では、比較例1に比べると、有意に荷重値が低くなった。ピログルタミン酸によって、一度目の圧縮変形で構造が壊れやすくなり、二度目に噛んだ時の歯ごたえに軟らかさを感じさせる作用があることが分かった。
【0026】
図6には、付着力(応力)の結果を纏めたグラフを示した。比較例1に比べると、比較例2、実施例1では有意差が認められなかった。一方、実施例2、実施例3では、比較例1に比べると、有意に付着値が低くなった。ピログルタミン酸によって、試料台が下がるときにプランジャーが試料に引張られる力が弱まり、口中での粘り気を感じず、サクッとした感じを高める作用があることが分かった。
【0027】
図7には、付着性の結果を纏めたグラフを示した。比較例1に比べると、比較例2、実施例1では有意差が認められなかった。一方、実施例2、実施例3では、比較例1に比べると、有意に付着値が低くなった。ピログルタミン酸によって、試料台が下がるときにプランジャーが試料に引張られる力が弱まり、口中での粘り気を感じず、サクッとした感じを高める作用があることが分かった。
以上より、ピログルタミン酸は、グミの食感について、固さは軟らかいものの、最初の噛み応えは弾力があり、噛み続けるとサクッとした感じを与えるように改良できることが分かった。
【0028】
<試験例2> 官能評価の比較
比較例1、2、実施例1~3について、専門パネルによる官能評価試験を行った。結果を表1に示した。
「食感」は、所望の口どけとサクっとした食感の歯ごたえを併せ持つものかどうかを表している。「香り立ち」(フレーバーリリース)は、25℃にて1ヶ月保存を行った後にグミを食したときに鼻から抜けるフレーバーの質と強さを表している。
【0029】
【表1】
【0030】
表中において、「食感」と「香り立ち」の評価基準は、以下の通りである。
「食感」について
○:本願発明品に期待される口どけとサクっとした食感の歯ごたえを併せもつものである。
△:多少のサクっとした食感の歯ごたえは感じられるが、本願発明品としては不十分なものである。
×:本願発明品として期待するところの食感ではない。
「香り立ち」について
○:本願発明品に期待されるフレーバーの香りが強く感じるものである。
△:フレーバーの香りが強く感じるものの不十分なものである。
×:本願発明品として期待するところのフレーバーの香りが強さではない。
表1に示す通り、ピログルタミン酸は、グミの食感を口どけがよく、サクっとした良好な歯ごたえを与え、香り立ちを良好とする効果が示された。
【0031】
<試験例3>
比較例1、2、実施例1~3について、10名の専門パネルによる咀嚼時間の測定を行った。「咀嚼時間」は、グミの噛み初めから、口中から無くなるまでの秒数の平均値とした。時間が短いほど口どけが良いと判断できる。
結果を図8に示した。比較例1が約20.7秒、比較例2が約18.3秒であった。一方、実施例1が約16.7秒、実施例2が約16.1秒、実施例3が約15.1秒であった。比較例1に比べると、実施例1~3では、有意に口どけ時間が短かった。
以上より、ピログルタミン酸は、口どけ時間を短くする効果があることが分かった。
【0032】
<試験例4>
比較例1、2、実施例1~3について、10名の専門パネルによる口どけ感の評価を行った。評価はグミを喫食した後に、口どけの良さを-2から+2で評価した平均値とした。数値が高いほど口どけが良いと設定した。
結果を図9に示した。比較例1、2では、いずれも-0.6であったのに対し、実施例1、実施例2、実施例3では、それぞれ0.6、0.8、1.0であった。比較例1,2の間には、有意差はなかった。一方、比較例1に比べると、実施例1~3では、有意に口どけ感が良かった。
以上より、ピログルタミン酸は、口どけ感を良くする効果があることが分かった。
【0033】
<試験例5>
比較例1、2、実施例1~3の各例において、それぞれ30個のグミキャンディを、蓋つき透明ビンに入れて蓋をし、25℃にて1ヶ月間に渡って保存した。保存後のグミキャンディについて、個々のグミキャンディが凝塊しているか否かを判断した。
その結果、比較例1、2については、個々のグミキャンディが凝塊しており、塊は解凝できなかった。実施例1については、凝塊していたものの、時間を掛けると解凝することができたことから、凝塊についての抑制効果があることが分かった。実施例2、3については、個々のグミキャンディが凝塊していたものの、簡易に解凝できた。
以上より、ピログルタミン酸には、グミキャンディの凝塊を抑制する効果があることが分かった。
このように、本実施形態によれば、今までになかった口どけとサクっとした食感の歯ごたえを持ち、喫食時の香り立ちのよい新規なグミキャンディを提供できた。また、製造時の装置への付着が抑えられ、製造後の製品同士の付着を抑制できるグミ組成物を大量生産できる製造方法を提供できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9