(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130788
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B66F9/24 L
B66F9/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029374
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】石崎 将崇
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 敬仁
(72)【発明者】
【氏名】芦田 圭史
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333CA24
3F333CA25
3F333DA02
3F333FA11
3F333FA36
3F333FD11
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】オペレータが前方を向いて車体を後進しても、車体後方の障害物を検出した場合にオペレータに後方の障害物の存在を報知する産業車両の提供にある。
【解決手段】車体11と、車体11に設けられた運転席13と、車体11の後方の障害物を検出する障害物検出器と、警告を発する警告発生器と、警告発生器を制御する制御装置と、を備える産業車両において、警告発生器としての前部警告ランプ45は、少なくとも運転席13より前方に設けられ、制御装置は、車体11の後進時に障害物検出器が車体11の後方の障害物を検出した場合には、前部警告ランプ45を作動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられた運転席と、
前記車体の後方の障害物を検出する障害物検出器と、
警告を発する警告発生器と、
前記警告発生器を制御する制御装置と、を備える産業車両において、
前記警告発生器は、少なくとも前記運転席より前方に設けられ、
前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記警告発生器を作動させることを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記運転席の上部を保護するヘッドガードと、
前記車体に設けられ、前記ヘッドガードを支持するフロントピラーと、を有し、
前記警告発生器は、前記フロントピラーおよび前記ヘッドガードの前部の少なくとも一方に備えられる前部警告ランプであり、
前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記前部警告ランプを点灯させることを特徴とする請求項1記載の産業車両。
【請求項3】
前記車体に設けられ、前記ヘッドガードを支持するリヤピラーと、
前記リヤピラーに備えられ、前記制御装置により制御される後部警告ランプと、を有し、
前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記後部警告ランプを点灯させることを特徴とする請求項2記載の産業車両。
【請求項4】
前記警告発生器は、前記車体において左右一対となるようにそれぞれ設けられ、
前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記障害物に近い側の前記警告発生器を作動させることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の産業車両。
【請求項5】
前記前部警告ランプは、上下方向において前記後部警告ランプよりも高い位置に設けられていることを特徴とする請求項3記載の産業車両。
【請求項6】
前記車体は、運転席の前部に表示装置を備え、
前記表示装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記障害物検出器により検出された障害物の位置を表示することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両に関し、特に、障害物を検出する障害物検出器および障害物の検出を報知する障害物報知器を備えた産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されたフォークリフトの安全装置が知られている。特許文献1に開示されたフォークリフトの安全装置は、フォーク固定用ブラケットに取付けられた昇降ブラケットと、この昇降ブラケットを下方に突出させた状態においてフォーク間の下端部分の前方にある障害物を測定可能な非接触測定器と、を備えている。また、このフォークリフトの安全装置は、昇降ブラケットを出退させる出退機構を備えている。昇降ブラケットは、出退機構によってフォークの上昇時にフォーク固定用ブラケットから下方に所定長さだけ突出され、一方、フォーク下降時においては非接触測定器が床に接触しない程度に後退される。そして、通知手段が運転席から確認できる位置に設置されており、この通知手段は非接触測定器によって測定された前方の障害物を作業者に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、産業車両としてのフォークリフトでは、例えば、フォークに荷を搭載した状態で、棚等の比較的高い場所に荷置きする場合、作業者はフォーク又は荷と棚との干渉を避けるように、フォークリフトを操作する。そして、作業者は、積み降ろし位置を決めるため、棚に対してフォークリフトの進退を繰り返す場合がある。この場合、作業者は、荷を搭載した状態で後進するとき、フォーク又は荷と棚との干渉を避けるため、荷およびフォークを注視して前方を向いており、後方を確認できないことがある。つまり、フォークリフトが後進するときに後方の確認ができないという問題がある。
【0005】
なお、特許文献1に開示されたフォークリフトの安全装置は、通知手段が非接触測定器によって測定された前方の障害物を作業者に通知するに過ぎない。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、オペレータが前方を向いて車体を後進しても、車体後方の障害物を検出した場合にオペレータに後方の障害物の存在を報知する産業車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体と、前記車体に設けられた運転席と、前記車体の後方の障害物を検出する障害物検出器と、警告を発する警告発生器と、前記警告発生器を制御する制御装置と、を備える産業車両において、前記警告発生器は、少なくとも前記運転席より前方に設けられ、前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記警告発生器を作動させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、産業車両のオペレータが前方を向いている状態で産業車両を後進させたときに産業車両の後方に障害物が検出される場合には、警告発生器が作動される。警告発生器の作動によりオペレータは後方に障害物の存在を認識することができる。警告発生器が少なくとも運転席よりも前方に設けられているので、前方を向いているオペレータは後方の障害物の存在を示す警告を認識し易い。つまり、オペレータが前方を向いて後進しても、車体後方の障害物を検出した場合にはオペレータに後方の障害物の存在を報知することができる。
【0009】
また、上記の産業車両において、前記運転席の上部を保護するヘッドガードと、前記車体に設けられ、前記ヘッドガードを支持するフロントピラーと、を有し、前記警告発生器は、前記フロントピラーおよび前記ヘッドガードの前部の少なくとも一方に備えられる前部警告ランプであり、前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記前部警告ランプを点灯させる構成としてもよい。
この場合、警告発生器である前部警告ランプは、前方を向いているオペレータの視界に含まれている。このため、オペレータが前方を向いている状態で産業車両を後進させたときに産業車両の後方に障害物が検出された場合には、前部警告ランプが点灯され、オペレータは直ちに後方に障害物の存在を認識することができる。
【0010】
また、上記の産業車両において、前記車体に設けられ、前記ヘッドガードを支持するリヤピラーと、前記リヤピラーに備えられ、前記制御装置により制御される後部警告ランプと、を有し、前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記後部警告ランプを点灯させる構成としてもよい。
この場合、産業車両を後進させたときに産業車両の後方に障害物が検出された場合には、前部警告ランプおよび後部警告ランプが点灯される。このため、オペレータが前方を向いているだけでなく、後方を振り向いている場合であっても、オペレータは直ちに後方に障害物の存在を認識することができる。
【0011】
また、上記の産業車両において、前記警告発生器は、前記車体において左右一対となるようにそれぞれ設けられ、前記制御装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記障害物に近い側の前記警告発生器を作動させる構成としてもよい。
この場合、車体の後進時に障害物検出器が車体の後方の障害物を検出した場合には、左右一対の警告発生器のうち障害物に近い側の警告発生器が作動する。このため、オペレータは、警告が発生している警告発生器に近くに障害物が存在することを認識できる。
【0012】
また、上記の産業車両において、前記前部警告ランプは、上下方向において前記後部警告ランプよりも高い位置に設けられている構成としてもよい。
この場合、前部警告ランプは、上下方向において後部警告ランプよりも高い位置に設けられている。このため、前方を向いているオペレータが、比較的高い位置のフォーク上の荷を見上げている状態であっても、前部警告ランプの点灯を直ちに認識することができる。
【0013】
また、上記の産業車両において、前記車体は、運転席の前部に表示装置を備え、前記表示装置は、前記車体の後進時に前記障害物検出器が前記車体の後方の障害物を検出した場合には、前記障害物検出器により検出された障害物の位置を表示する構成としてもよい。
この場合、車体の後進時に障害物検出器が車体の後方の障害物を検出した場合には、運転席の前部に備えられた表示装置が、障害物検出器により検出された障害物の位置を表示する。このため、オペレータは警告発生器が作動した時、表示装置を確認することで障害物の位置を把握することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、オペレータが前方を向いて車体を後進しても、車体後方の障害物を検出した場合にオペレータに後方の障害物の存在を報知する産業車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るフォークリフトの後面図である。
【
図3】(a)はフォークリフトの概略構成を示すブロック構成図であり、(b)は液晶ディスプレイの表示例を示す図である。
【
図4】(a)は前方を向くオペレータにより後進するフォークリフトの側面図であり、(b)は後方を向くオペレータにより後進するフォークリフトの側面図である。
【
図5】(a)は第2の実施形態に係るフォークリフトの後方に障害物が検出されたときの説明図であり、(b)は同実施形態に係るフォークリフトの左後方に障害物が検出されたときの説明図であり、(c)は同実施形態に係るフォークリフトの右後方に障害物が検出されたときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る産業車両について図面を参照して説明する。本実施形態の産業車両はフォークリフトである。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、フォークリフトのオペレータが運転席の運転シートに着座して、フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0017】
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11の前部に荷役装置12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。車体11の後部にはカウンタウエイト16が備えられており、カウンタウエイト16は車両重量の調整と車体11における重量バランスを図るためのものである。本実施形態のフォークリフト10は、操舵輪15が一輪であるバッテリフォークリフトである。
【0018】
車体11における運転席13には、運転シート17が備えられている。運転シート17は、フォークリフト10のオペレータが着座するシートである。運転シート17は、車体11の車幅方向(左右方向)において中心よりも左に位置するほか、右回りに一定の角度まで水平方向に回動可能である。運転シート17は、車体11の車幅方向において中心よりも左に位置し、右回りに一定の角度まで回動することで、フォークリフト10の後進時においてオペレータは車体11の後方の目視が容易となる。
【0019】
本実施形態のフォークリフト10には、
図1、
図2に示すように、運転シート17に座席基準点SIP(Seat Index Point:SIP)が規定される。座席基準点SIPとは、ISO(ISO 5353)あるいはJIS(JIS A 8318)等で定められ、理論上の運転者の胴と腿との関節の近傍に規定された座席の基準点をいう。
図2に示すように、本実施形態の運転シート17は車体11の車幅方向において中心よりも左に位置するため、座席基準点SIPは車体11の車幅方向において中心よりも左に位置する。
【0020】
運転シート17の前方には、インストルメントパネル18が設けられている。インストルメントパネル18には、ステアリングコラム19が設けられている。ステアリングコラム19にはステアリングホイール20が備えられている。
【0021】
荷役装置12はアウタマスト22およびインナマスト23を有するマスト24を備えている。左右一対のアウタマスト22には、アウタマスト22の内側にてスライド可能なインナマスト23が備えられている。車体11とアウタマスト22との間には、油圧により作動するティルトシリンダ(図示せず)が設置されている。マスト24はティルトシリンダの作動により下端部を支点として前後方向に傾動する。マスト24には油圧により作動するリフトシリンダ25が設けられている。リフトシリンダ25の作動により、インナマスト23がアウタマスト22内でスライドして昇降する。
【0022】
マスト24には左右一対のフォーク26がリフトブラケット27を介して設けられ、リフトブラケット27はインナマスト23に対して昇降するように設けられている。つまり、リフトブラケット27はマスト24に対して昇降可能である。なお、左右のフォーク26は互いに同じ構成である。
【0023】
車体11には、運転席13の上部を覆うヘッドガード28が設けられている。ヘッドガード28は、車体11の前部から立設された左右一対のフロントピラー29と、車体11の後部から立設された左右一対のリヤピラー30により支持されている。左右のフロントピラー29にはサイドミラー31がそれぞれ備えられている。左のフロントピラー29には、オペレータの乗降を容易とするためのグリップ部32が設けられている。グリップ部32は、フロントピラー29の上下方向においてほぼ中間に位置し、サイドミラー31はグリップ部32よりも高く位置する。フロントピラー29は運転席13よりも前方に位置し、リヤピラー30は運転席13よりも後方に位置する。
【0024】
ヘッドガード28は公知のものである。ヘッドガード28は、中空構造部材によってフロントピラー29と一体となっているサイドビーム33と、左右一対のサイドビーム33の間に設けられる格子状のルーフ部34と、左右一対のサイドビーム33の後端を接続するリヤビーム35と、を有している。
図2に示すように、リヤビーム35の後端面には、左右一対のリヤコンビネーションランプ36が備えられている。リヤコンビネーションランプ36は、方向指示器37、制動灯38および後進灯39が一体的に組み合わされたランプである。
【0025】
本実施形態のフォークリフト10は、後方障害物検出器としてのカメラユニット40を備えている。カメラユニット40は、左右一対のカメラレンズを有するステレオカメラを備えている。本実施形態のステレオカメラは、レーザー測距器(図示せず)を内蔵している。レーザー測距器はステレオカメラの撮影可能範囲においてレーザー光による距離測定を行う。カメラユニット40のレンズが後方を向くように、カメラユニット40はリヤビーム35に取り付けられている。カメラユニット40はフォークリフト10が後進するときに、車体11の後方を撮影する。なお、カメラユニット40はフォークリフト10が停車中のときや、前進するときに、車体11の後方を撮影していてもよい。
【0026】
図3(a)に示すように、車体11には、制御装置としての各部を制御するコントローラ41が搭載されている。カメラユニット40はコントローラ41と接続されており、カメラユニット40によって撮影された撮像画像は、コントローラ41によって画像解析される。撮像画像の画像解析の結果から撮像画像における障害物の有無および障害物までの距離が検出される。コントローラ41の画像解析によって障害物が検出されると、コントローラ41は車体11の後方に障害物が存在することを認識する。なお、コントローラ41は、図示されないが、中央演算処理部(CPU)と、記憶部等と、を有する。中央演算処理部は、各種プログラムを実行し、フォークリフト10の運転に必要な処理を行う。記憶部は各種プログラムや各種データを記憶する。
【0027】
本実施形態のフォークリフト10は、フォークリフト10の後進時にカメラユニット40によって撮影された撮影画像に障害物が検出されたとき、警告を発生する警告発生器としての警告ランプを備えている。警告ランプは、左右一対のフロントピラー29にそれぞれ備えられた前部警告ランプ45と、左右一対のリヤピラー30にそれぞれ備えられた後部警告ランプ46である。
【0028】
前部警告ランプ45は橙色の発光部(図示せず)を備えている。前部警告ランプ45の発光部は間欠的に点灯(点滅)する。前部警告ランプ45は運転シート17に着座したオペレータから発光部を視認し易いように、フロントピラー29の後部に取り付けられている。前部警告ランプ45の上下方向の位置は、フロントピラー29における上下方向の中間よりも高い位置であり、フロントピラー29に設けられているサイドミラー31よりも高い位置に設定されている。なお、前部警告ランプ45は、必ずしもフロントピラー29に直接取り付けられるだけでなく、例えば、左右一対のフロントピラー29にそれぞれ備えられたサイドミラー31に設けられてもよい。あるいは、サイドミラー31の鏡面に、前部警告ランプ45が埋め込まれていてもよい。
【0029】
前部警告ランプ45は、運転シート17に着座したオペレータが前方を向いている状態でオペレータの視野内に存在すればよい。前方を向いているオペレータの上下方向の視野は、フォークリフト10の前方の路面からフォーク26を最も高くしたときにフォーク26を見上げた状態で見える範囲までを含み、左右の視野は少なくとも前方を向いているときに見える範囲を含む。前部警告ランプ45の位置は、少なくとも、上下方向においてSIPよりも上方であって運転シート17よりも前方であればよい。なお、フォーク26を最も高い位置としてオペレータがフォーク26を注視する場合の視野を考慮すると、前部警告ランプ45は、ヘッドガード28と同じ高さとなってもよく、例えば、ルーフ部34の前部に前部警告ランプ45を設けるようにしてもよい。
【0030】
後部警告ランプ46は、前部警告ランプ45と同一構造であり橙色の発光部(図示せず)を備えている。後部警告ランプ46は、運転シート17に着座して後方を振り返った姿勢のオペレータから発光部を視認し易いように、リヤピラー30の前部に取り付けられている。後方を振り返った姿勢のオペレータは上方を見ることは殆どないので、後部警告ランプ46の上下方向の位置は、前部警告ランプ45よりも低い位置となり、本実施形態では、サイドミラー31と同じ高さである。後部警告ランプ46はリヤピラー30の下端部からサイドミラー31の高さと同じ高さとの間に設ければよい。フォークリフト10では後進時にオペレータが右後方を振り返ることが多いので、後部警告ランプ46は少なくとも右のリヤピラー30に設けられることが好ましい。
【0031】
前部警告ランプ45および後部警告ランプ46を第1の警告発生器とすると、フォークリフト10は、第2の警告発生器としての警告ブザー47を備えている。警告ブザー47は、フォークリフト10の後進時にカメラユニット40によって撮影された撮影画像に障害物が検出されたときに警告音を発する。警告ブザー47はヘッドガード28に設けられているが、警告ブザー47の発音面が下方の運転シート17へ向けられるようにヘッドガード28のルーフ部34の下面に取り付けられている。警告ブザー47は、運転シート17に着座したオペレータが警告音を聞くことができる位置であれば、ヘッドガード28に限らずどこでもよい。警告ブザー47の発音面が下方の運転シート17へ向けられることで、オペレータは警告音を聴き易くなるほか、発音面に雨水が浸入し難くなる。
【0032】
図4に示すように、前部警告ランプ45、後部警告ランプ46および警告ブザー47は、コントローラ41と接続されておりコントローラ41により制御される。したがって、コントローラ41の画像解析によって障害物が検出されると、前部警告ランプ45と後部警告ランプ46を同時に点滅させるとともに、警告ブザー47から警告音を発生させる。なお、フォークリフト10は、前進と後進とを切り換える前後進切換レバー(図示せず)を備えており、前後進切換レバーの切り換え位置を出力する前後進切換レバーセンサ48がコントローラ41と接続されている。コントローラ41は、前後進切換レバーセンサ48からの出力信号によってフォークリフト10が前進中、後進中および停止中のいずれかであるかを判別できる。前部警告ランプ45、後部警告ランプ46および警告ブザー47は、前後進切換レバーが後進の位置のときに作動可能であり、前後進切換レバーが前進の位置や中立の位置では作動しない。
【0033】
図3(a)に示すように、コントローラ41は、表示装置としての液晶ディスプレイ49と接続されている。
図1、
図2では図示されないが、液晶ディスプレイ49は、インストルメントパネル18におけるステアリングコラム19の左に備えられている。液晶ディスプレイ49は各種の情報を表示する。液晶ディスプレイ49は、フォークリフト10の後進時にカメラユニット40によって撮影された撮影画像に障害物が検出されたとき、表示画面上において障害物を表示する。例えば、
図3(b)に示すように、フォークリフト10に対する障害物の種類(物体G、人H)、障害物の位置および障害物までの距離が簡易表示される。そのため、コントローラ41は、カメラユニット40の撮影画像に基づいて障害物の種類(物体G、人H)を判別し、障害物の位置および障害物までの距離を取得する。
【0034】
液晶ディスプレイ49における画面の左領域は、障害物を表示する第1表示部49Aであり、画面の右領域はその他の情報が表示される第2表示部49Bである。第1表示部49Aは、フォークリフト10を示す図形S1が表示されている。
図3(b)では紙面の上が前であり、紙面の下が後である。フォークリフト10の後方、左後方および右後方が判るように3区分され、それぞれに図形表示域E1、E2、E3が設定されている。図形表示域E1、E2、E3には距離表示部50がそれぞれ設定されている。図形表示域E1、E2、E3では、障害物が検出されたとき、障害物としての物体Gを示す図形S2又は人Hを示す図形S3を選択的に表示する。そして、距離表示部50は表示された障害物と車体11との凡その距離を示す値を表示し、距離の単位はメートルである。図形表示域E1、E2、E3は、障害物が検出されない場合、何も表示されず、距離表示部50は値を表示しない。
【0035】
図3(b)の例では、フォークリフト10の後方の図形表示域E1に物体Gを示す図形S2が表示されている。図形S2の下の距離表示部50には車体11から障害物(物体G)までの距離が2mとする値が表示されている。また、フォークリフト10の左後方の図形表示域E2に人Hを示す図形S3が表示されている。図形S3の下の距離表示部50には車体11から障害物(人H)までの距離を2mとする値が表示されている。フォークリフト10の右後方の図形表示域E3には障害物を示す図形S2、S3は表示されない。つまり、フォークリフト10の右後方には障害物が存在しないことを意味する。したがって、図形表示域E3における距離表示部50は値を表示しない。
【0036】
次に、本実施形態の産業車両の動作について説明する。オペレータは運転シート17に着座した状態でフォークリフト10を運転する。例えば、
図4(a)に示すように、棚Tに対して荷役作業を行う場合、オペレータMが高い位置の荷Wに注意を払いながらフォークリフト10を後進させる。このとき、前後進切換レバーが後進の位置に入っているため、コントローラ41は、前後進切換レバーセンサ48の出力信号によりフォークリフト10が後進中であることを判別している。また、フォークリフト10の後進時にはカメラユニット40が車体11の後方を撮影する。
【0037】
後進するフォークリフト10の後方に障害物(物体G)が存在し、カメラユニット40が撮影する撮影画像から障害物が検出される場合には、コントローラ41は前部警告ランプ45、後部警告ランプ46を間欠的に点灯(点滅)させるとともに警告ブザー47を作動させる。さらに、液晶ディスプレイ49は障害物を表示する。液晶ディスプレイ49では、障害物の種類および障害物までの距離が簡易表示される。オペレータMは、前方を向いたままであっても、前部警告ランプ45の点灯を見て、さらに、警告ブザー47の警告音を聴くことにより直感的に後方の障害物の存在を認識し易い。また、オペレータMが、前部警告ランプ45、後部警告ランプ46および警告ブザー47の作動直後に液晶ディスプレイ49を見れば、後方の障害物の種類、位置および距離を直ちに把握できる。
【0038】
一方、
図4(b)に示すように、オペレータMがフォーク26に荷Wの有無に関係なく、後方を振り返りながらフォークリフト10を後進する場合、後方に障害物(人H)が検出される場合には、前部警告ランプ45、後部警告ランプ46および警告ブザー47が作動する。後方を振り返っているオペレータMは、後部警告ランプ46の点灯を見ることになり、直感的に後方の障害物の存在を認識し易い。
【0039】
本実施形態のフォークリフト10は以下の効果を奏する。
(1)フォークリフト10のオペレータが前方を向いている状態でフォークリフト10を後進させたときにフォークリフト10の後方に障害物が検出される場合には、警告発生器が作動される。警告発生器の作動によりオペレータは後方に障害物の存在を認識することができる。警告発生器が少なくとも運転席13の運転シート17よりも前方に設けられているので、前方を向いているオペレータは後方の障害物の存在を示す警告を認識し易い。つまり、オペレータが前方を向いて後進しても、車体11の後方の障害物を検出してオペレータに後方の障害物の存在を報知させることができる。
【0040】
(2)フォークリフト10は、運転席13の上部を保護するヘッドガード28と、車体11に設けられ、ヘッドガード28を支持するフロントピラー29と、を有する。警告発生器は、フロントピラー29に備えられる前部警告ランプ45である。コントローラ41は、車体11の後進時にカメラユニット40が車体11の後方の障害物を検出した場合には、前部警告ランプ45を点灯させる。警告発生器である前部警告ランプ45は、前方を向いているオペレータの視界に含まれている。このため、オペレータが前方を向いている状態でフォークリフト10を後進させたときに後方に障害物が検出される場合には、前部警告ランプ45が点灯され、オペレータは前部警告ランプ45により直ちに後方に障害物の存在を認識することができる。
【0041】
(3)フォークリフト10は、車体11に設けられ、ヘッドガード28を支持するリヤピラー30と、リヤピラー30に備えられ、コントローラ41により制御される後部警告ランプ46と、を有している。コントローラ41は、車体11の後進時にカメラユニット40が車体11の後方の障害物を検出した場合には、前部警告ランプ45および後部警告ランプ46を点灯させる。このため、オペレータが前方を向いているだけでなく、後方を振り向いている場合であっても、オペレータは後部警告ランプ46の点灯により直ちに後方の障害物の存在を認識することができる。
【0042】
(4)前部警告ランプ45は、上下方向において後部警告ランプ46よりも高い位置に設けられている。このため、前方を向いているオペレータが、比較的高い位置のフォーク26上の荷Wを見上げている状態であっても、前部警告ランプ45の点灯を直ちに認識することができる。
【0043】
(5)車体11は、運転席13の前部に液晶ディスプレイ49を備え、液晶ディスプレイ49は、車体11の後進時にカメラユニット40が車体11の後方の障害物を検出した場合には、カメラユニット40により検出された障害物の位置を表示する。このため、オペレータは警告発生器が作動した時、液晶ディスプレイ49を確認することで障害物の位置を把握することができる。
【0044】
(6)前部警告ランプ45は、フロントピラー29の後面に設けられているので、前方を向くオペレータから見え易い。また、後部警告ランプ46は、リヤピラー30の前面に設けられているので、後方を振り返る姿勢のオペレータから見え易い。警告ブザー47の発音部が運転シート17を向いているので、オペレータから警告音を聴き易く、また、雨水が浸入し難く雨水による警告ブザー47の損傷を防止できる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るフォークリフトについて説明する。本実施形態のフォークリフトは、前部警告ランプおよび後部警告ランプの点灯パターンが第1の実施形態と異なる。本実施形態のフォークリフトの構成は第1の実施形態と同一なので共通の符号を用いる。
【0046】
図5(a)~
図5(c)に示すように、本実施形態では、車体11の後方において障害物が検出された場合、コントローラ41は障害物の位置に応じて点灯パターンを変更する。
図5(a)に示すように、フォークリフト10の後方において障害物が検出された場合、後部警告ランプ46の点滅周期を前部警告ランプ45の点滅周期よりも短くする点灯パターンとする。
【0047】
図5(b)に示すように、フォークリフト10の左後方において障害物が検出された場合には、左の前部警告ランプ45および左の後部警告ランプ46の点滅周期を、右の前部警告ランプ45および左の後部警告ランプ46の点滅周期よりも短くする点灯パターンとする。
図5(c)に示すように、フォークリフト10の右後方において障害物が検出された場合には、右の前部警告ランプ45および右の後部警告ランプ46の点滅周期を、左の前部警告ランプ45および左の後部警告ランプ46の点滅周期よりも短くする点灯パターンとする。このように、本実施形態では、障害物と近い警告ランプの点滅周期を障害物と近い警告ランプ以外の警告ランプの点滅周期よりも短くしている。
【0048】
本実施形態では、障害物の位置に応じて前部警告ランプ45および後部警告ランプ46の点灯パターンを変更するため、オペレータは点滅パターンを確認することにより障害物の位置を認識し易い。また、点滅パターンから障害物の位置が認識できるため、液晶ディスプレイ49に障害物を図形表示する必要がない。
【0049】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0050】
○ 上記の実施形態では、フロントピラーおよびリヤピラーに警告発生器を設けたがこれに限らない。例えば、ヘッドガードの前部に警告発生器を設けてもよい。また、後部警告ランプおよび警告ブザーを設けず、前部警告ランプのみを設けた産業車両としてもよく、あるいは警告ランプを設けず、警告発生器としての警告ブザーのみをフロントピラーおよびリヤピラーに設けるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、フロントピラーおよびリヤピラーに警告発生器を設けたがこれに限らない。産業車両がフォークリフトの場合、運転席の前方として、例えば、荷役装置のマスト、あるいはリフトブラケットに警告発生器を設けてもよい。
○ 上記の実施形態では、産業車両としてのフォークリフトを例示して説明したが、産業車両はフォークリフトに限定されない。産業車両は、例えば、ホイールローダ等の建設車両でもよい。また、産業車両がフォークリフトの場合、実施形態のようなカウンタウエイト式のフォークリフトに限らずリーチ式のフォークリフトであってもよい。
○ 上記の実施形態では、障害物検出器としてステレオカメラを有するカメラユニットを例示したが、ステレオカメラに限らない。障害物検出器は、カメラのほかレンズを備えた測距器(例えば、3D-LiDAR)のほか、レンズを有する発光部を備えた光学センサであってもよい。また、超音波を用いたレーダ類を障害物検出器としてもよい。
○ 上記の実施形態では、警告ランプを間欠的に点灯(点滅)させたが、これに限らない。例えば、警告ランプの点灯は、間欠的な点灯(点滅)に代えて連続的な点灯としてもよい。
○ 第2の実施形態では、点灯パターンとして警告ランプの点滅周期を異なるようにして障害物の位置をオペレータが認識できるとしたがこれに限らない。例えば、警告ランプが点灯できる発光色を複数とし、障害物に近い警告ランプの発光色を変更するような点灯パターンとしてもよい。
○ 上記の実施形態では、フロントピラーおよびリヤピラーに警告発生器をそれぞれ1個設けたがこれに限らない。例えば、複数の警告発生器をフロントピラーおよびリヤピラーに設けてもよい。また、フォークリフトに設ける警告ブザーの数は限定されない。
○ 上記の実施形態では、表示装置としての液晶ディスプレイを運転席の前方としてのインストルメントパネルに設けたが、これに限らない。例えば、表示装置をフロントピラーに設けてもよく、あるいは、表示装置をヘッドガードから吊り下げるように設けてもよい。
○ 上記の実施形態では、コントローラ41は前後進切換レバーセンサ48の出力信号によりフォークリフト10が後進中であることを判別していたが、別の手段で検出してもよい。例えば、カメラユニット40のステレオカメラによって得られた視差画像から、障害物の位置情報を常に算出しているので、障害物の位置情報により対象物の位置がフォークリフト10に対して接近する場合は、後退していると判断してもよい。これにより、車体11の後進時に障害物検出器がフォークリフト10の後方の障害物を検出する。
【符号の説明】
【0051】
10 フォークリフト
11 車体
12 荷役装置
13 運転席
26 フォーク
28 ヘッドガード
29 フロントピラー
30 リヤピラー
33 サイドビーム
34 ルーフ部
40 カメラユニット
41 コントローラ(制御装置)
45 前部警告ランプ(第1の警告発生器)
46 後部警告ランプ(第1の警告発生器)
47 警告ブザー(第2の警告発生器)
48 前後進切換レバーセンサ
49 液晶ディスプレイ(表示装置)
50 距離表示部
E1、E2、E3 図形表示域
S1、S2、S3 図形
W 荷