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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130797
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/187 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B62D1/187
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029388
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 吉康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康介
(72)【発明者】
【氏名】古川 桂之
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DC16
3D030DC17
3D030DD18
3D030DD19
3D030DD26
(57)【要約】
【課題】ハウジングの傾動規制時の打音を抑制する。
【解決手段】インナーチューブ110と、インナーチューブ110を保持するハウジング120と、ハウジング120の傾動軸200を中心とする円弧状の第一長孔131、および第二長孔132が設けられ、ハウジング120を傾動可能に保持する取付部材130と、ハウジング120の傾動を規制可能なロック機構140と、を備え、ロック機構140は、第一長孔131に刺し通される軸体141と、軸体141が刺し通され、第一長孔131に挿入状態される樹脂製の緩衝部材160と、軸体141に刺し通された状態で保持される回転カム143と、カム部148と係合するスライドカム144と、を備え、スライドカム144は、第一突出部151と、第一突出部151の先端から軸体141の軸方向に突出し第二長孔132に挿入される第二突出部と、を備えるステアリングコラム装置100。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材に接続されるコラムシャフトを回転可能に保持する筒状のインナーチューブと、
前記インナーチューブの軸方向において、前記インナーチューブを移動可能に保持するハウジングと、
前記ハウジングの傾動軸を中心とする円弧状の第一長孔、および前記第一長孔と同心状に配置される第二長孔が設けられ、前記ハウジングを傾動可能に保持する取付部材と、
前記取付部材に対する前記ハウジングの傾動を規制可能なロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
前記インナーチューブの外側において前記インナーチューブの軸方向と交差する方向に延在し、前記第一長孔に刺し通される軸体と、
前記軸体が刺し通され、前記第一長孔に挿入状態で配置される樹脂製の緩衝部材と、
刺し通された前記軸体により回転可能に保持され、回転を直動に変換するカム部を有する回転カムと、
刺し通された前記軸体により軸方向に移動可能に保持され、前記カム部と係合する従動部を有するスライドカムと、を備え、
前記スライドカムは、
前記軸体の径方向外向きに突出する第一突出部と、前記第一突出部の先端部から前記軸体の軸方向に突出し前記第二長孔に挿入される第二突出部と、を有する係合部を備える
ステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記スライドカムは、
前記取付部材と対向する面から前記従動部に向かって窪む陥凹部を備える
請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵に関連するステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールなどの操作部材を保持するコラムシャフトと、車体に取り付けられコラムシャフトを進退自在に保持するハウジングを備えたステアリングコラム装置が知られている(例えば特許文献1)。このようなステアリングコラム装置は、ハウジングに刺し通された軸体に保持され、操作レバーによる回転を直動に変換するカム機構を有するロック機構を備えている。ロック機構は、カム機構により変換された直動によりハウジングを縮径させコラムシャフトを締め付けて固定し、ハウジングを拡径することによりコラムシャフトの軸方向の移動を可能としている。
【0003】
また、前記ハウジングは、車体に取り付けられる取付部材に傾動可能に保持されている。前記取付部材には傾動軸を中心とした円弧状の長孔が設けられており、前記長孔に刺し通された状態で係合する前記カム機構のボスと長孔の端部とが当接することによりハウジングの傾動が所定の範囲に規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-152332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ハウジングを規制端まで傾動させると、長孔の端部とボスとが接触することにより打音が発生していた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ハウジングを規制端まで傾動させる際に発生する打音を抑制するステアリングコラム装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つであるステアリングコラム装置は、操舵部材に接続されるコラムシャフトを回転可能に保持する筒状のインナーチューブと、前記インナーチューブの軸方向において、前記インナーチューブを移動可能に保持するハウジングと、前記ハウジングの傾動軸を中心とする円弧状の第一長孔、および前記第一長孔と同心状に配置される第二長孔が設けられ、前記ハウジングを傾動可能に保持する取付部材と、前記取付部材に対する前記ハウジングの傾動を規制可能なロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記インナーチューブの外側において前記インナーチューブの軸方向と交差する方向に延在し、前記第一長孔に刺し通される軸体と、前記軸体が刺し通され、前記第一長孔に挿入状態で配置される樹脂製の緩衝部材と、刺し通された前記軸体により回転可能に保持され、回転を直動に変換するカム部を有する回転カムと、刺し通された前記軸体により軸方向に移動可能に保持され、前記カム部と係合する従動部を有するスライドカムと、を備え、前記スライドカムは、前記軸体の径方向外向きに突出する第一突出部と、前記第一突出部の先端部から前記軸体の軸方向に突出し前記第二長孔に挿入される第二突出部と、を有する係合部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、緩衝部材によりハウジングを規制端まで傾動させる際に発生する打音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ハウジングを上端側に傾動させたステアリングコラム装置を示す斜視図である。
図2】ハウジングを下端側に傾動させたステアリングコラム装置を示す斜視図である。
図3】ロック機構、およびその周辺を分解状態で示す斜視図である。
図4】スライドカムを第一側壁部材側から示す斜視図である。
図5】多板機構を示す斜視図である。
図6】スライドカムの別例1を第一側壁部材側から示す斜視図である。
図7】スライドカムの別例2を第一側壁部材側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るステアリングコラム装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0011】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。
【0012】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0013】
図1は、ハウジングを上端側に傾動させたステアリングコラム装置を示す斜視図である。図2は、ハウジングを下端側に傾動させたステアリングコラム装置を示す斜視図である。図3は、ロック機構、およびその周辺を分解状態で示す斜視図である。ステアリングコラム装置100は、操舵者が操舵するステアリングホイールなどの操舵部材(不図示)を、コラムシャフト111を介して回転可能に保持し、操舵部材の位置をコラムシャフト111の軸方向、および上下方向に変更することができる装置であって、インナーチューブ110と、ハウジング120と、取付部材130と、ロック機構140とを備えている。なお、ステアリングコラム装置100は、コラムシャフト111、およびコラムシャフト111に連結されるインターミディエイトシャフトなどのシャフト部材、ラックアンドピニオン機構などの転舵機構を備える場合があるが、これらの図示および説明は省略する。
【0014】
本実施の形態の場合、ステアリングコラム装置100は、取付部材130により車体に吊り下げ状態で取り付けられる。ステアリングコラム装置100は、ハウジング120を取付部材130に対して傾動させることにより、操舵者の体格などに応じて操舵部材の上下方向(図中Z軸方向)のポジションを変更することができる。また、ステアリングコラム装置100は、ハウジング120に対しインナーチューブ110を軸方向(図中Y軸方向)にスライドさせることにより操舵部材の前後方向のポジションを変更することもできる。また、操舵部材のポジションは、ロック機構140により固定することができる。
【0015】
コラムシャフト111は、操舵者が操舵する操舵部材が先端部(図中Y軸負側の先端部)に取り付けられる部材であり、インナーチューブ110を介してハウジング120の内方に挿通状態で回転可能に保持される。本実施の形態の場合、コラムシャフト111は、操舵部材の操舵角をラックアンドピニオンなどの転舵機構に伝達する。コラムシャフト111は、軸受(不図示)を介してインナーチューブ110に保持されており、インナーチューブ110に対し軸方向に固定され、周方向には回転可能となっている。コラムシャフト111は、スプライン嵌合構造などを備え、ハウジング120に対するインナーチューブ110の出没に伴って伸縮し、かつ操舵角の伝達を維持できるように構成されている。
【0016】
インナーチューブ110は、コラムシャフト111を回転可能に保持するコラムジャケット、アッパーチューブなどと称される部材であり、取付部材130を介して車体に取り付けられたハウジング120に保持されることによりコラムシャフト111を介して操舵部材を回転可能に所定の位置に配置する部材である。インナーチューブ110の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、円筒形状(管状)であり、軸方向(図中Y軸方向)に貫通孔を備えたハウジング120に挿入状態で保持される。また、インナーチューブ110は、少なくとも1つの軸受を介して内方にコラムシャフト111を保持しており、保持したコラムシャフト111と共にハウジング120に対して軸方向(図中Y軸方向)に移動するものとなっている。
【0017】
ハウジング120は、車体に対しインナーチューブ110を軸方向(図中Y軸方向)に移動可能に保持する筒状の部分を有する部材である。本実施の形態の場合、ハウジング120は、スリット121と、被締付部122と、ヒンジ部123と、を備えている。
【0018】
スリット121は、インナーチューブ110が刺し通される孔のロック機構140による縮径を容易にするために操舵部材側(図中Y-側)の一端面から軸方向に延在し径方向(図中Z軸方向)に貫通する部分である。スリット121の操舵部材側の一端部は、開放され、反対側の他端部は閉ざされている。
【0019】
被締付部122は、ロック機構140からの締め付け力を受けてインナーチューブ110が刺し通される孔を縮径する部分であり、スリット121の両側からそれぞれ径方向に突出している。被締付部122は、スリット121の貫通方向(図中Z軸方向)、およびインナーチューブ110の軸方向にそれぞれ直交する貫通孔124を備え、後述する軸体141が刺し通される。
【0020】
ヒンジ部123は、インナーチューブ110の軸方向(図中Y軸方向)において、操舵部材と反対側(図中Y+側)のハウジング120本体の端部に設けられる部分であり、インナーチューブ110の軸方向に直交する方向に延在する傾動軸体160を介して取付部材130に傾動可能に取り付けられる。ヒンジ部123、および傾動軸体160によりハウジング120は、傾動軸体160の中心軸である傾動軸200を中心として傾動可能に取付部材130に取り付けられている。
【0021】
取付部材130は、車体に固定的に取り付けられ、ハウジング120を傾動可能に保持するブラケットであり、第一長孔131と、第二長孔132とを備えている。本実施の形態の場合、取付部材130は、前部材133と、後部材134と、第一側壁部材135と、第二側壁部材136と、を備えている。
【0022】
前部材133は、ステアリングコラム装置100の傾動軸200側であって車体の前側に取り付けられる板状の部材である。後部材134は操舵部材側であって車体の後側に取り付けられる板状の部材である。なお、前部材133、および後部材134の形状は、取り付けられる車体の形状に応じて任意に選択される。
【0023】
第一側壁部材135は、ロック機構140のカムが存在する側に配置され、前部材133、および後部材134から垂れ下がるように架橋状に前部材133、および後部材134に取り付けられる板状の部材である。第一側壁部材135は、傾動軸200に垂直な平面部分を備え、当該平面部分にハウジング120の傾動軸200を中心とする円弧状の第一長孔131、および第一長孔131と同心状に配置される第二長孔132が設けられている。第一側壁部材135は、傾動軸体160が刺し通される孔が傾動軸200に沿って設けられている。
【0024】
第一長孔131は、傾動軸200を中心とする円弧状であり、周方向の両端縁はそれぞれ傾動軸200を中心とする放射方向に延在している。第一長孔131は、傾動軸200方向において第一側壁部材135を貫通している。
【0025】
第二長孔132は、第一長孔131より傾動軸200側に配置され、傾動軸200を中心とする円弧状であり、周方向の両端縁はそれぞれ湾曲している。第二長孔132は、傾動軸200方向において第一側壁部材135を貫通している。
【0026】
第二側壁部材136は、ハウジング120に対し、第一側壁部材135の反対側に配置され、前部材133、および後部材134から垂れ下がるように架橋状に前部材133、および後部材134に取り付けられる板状の部材である。傾動軸200、およびインナーチューブ110の軸に垂直な面に対し、第二側壁部材136は、第一側壁部材135と略面対称な形状であり、平面部分には傾動軸200を中心とする円弧状の第一長孔131が設けられている。なお、第二側壁部材136には第二長孔132は設けられていない。第二側壁部材136は、第一側壁部材135と同様に傾動軸体160が刺し通される孔が傾動軸200に沿って設けられている。
【0027】
傾動軸体160が第一側壁部材135、第二側壁部材136、ハウジング120の二つのヒンジ部123に刺し通されることにより、取付部材130は、傾動軸200を中心としてハウジング120を傾動可能に保持している。
【0028】
ロック機構140は、取付部材130に対するハウジング120の傾動を規制する軸力を発生させ、また軸力を解除することにより傾動の規制を解除する機構である。本実施の形態の場合、ロック機構140は、ハウジング120に対するインナーチューブ110の移動をハウジング120の傾動と共に規制し、また規制を解除する。ロック機構140は、図3に分解して示すように、軸体141と、緩衝部材142と、回転カム143と、スライドカム144と、操作レバー145と、を備えている。本実施の形態の場合、ロック機構140は、多板機構146を備えている。なお、ロック機構140の動作は、各構成の説明をした後に説明する。
【0029】
軸体141は、後部材134の下方、かつインナーチューブ110の上方に配置された棒状の部材であり、軸力を発生させるための基礎となる部材である。なお、説明のため、図3では、軸体141を仮想的に分断した状態で記載している。軸体141は、傾動軸200と平行(インナーチューブ110の軸方向と交差する方向)に延在し、第一側壁部材135、および第二側壁部材136のそれぞれに設けられる第一長孔131に刺し通される棒状の部材である。軸体141の一方の端部であって第一側壁部材135の外側には、フランジ部147が設けられている。軸体141の他方の端部であって第二側壁部材136の外側には、スラストベアリング、ナット(不図示)が設けられている。
【0030】
緩衝部材142は、軸体141が刺し通される孔を有し、第一長孔131に挿入状態で配置される樹脂製の部材である。ハウジング120の傾動は、第一長孔131の端縁に軸体141が緩衝部材142を介して当接することにより所定の範囲に規制される。緩衝部材142は、ハウジング120の傾動が第一長孔131の端縁に当接する際に発生する打音を抑制している。
【0031】
緩衝部材142の形状は、特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、緩衝部材142の形状は、四角柱の軸中心に円形の貫通孔が設けられた角筒形状である。緩衝部材142は、挿入状態の第一長孔131によって軸体141周りの回転が規制されている。緩衝部材142は、ハウジング120の傾動を規制する際は、第一長孔131の端縁と面接触する。これにより、ハウジング120の傾動を規制する際に発生する応力を分散させることができ、緩衝部材142の耐久性を向上させることができる。
【0032】
回転カム143は、刺し通された軸体141により回転可能に保持され、スライドカム144と共に動作することにより、回転を直動に変換する部材である。回転カム143は、軸体141のフランジ部147よりも第一側壁部材135側に配置され、軸体141の軸方向においてフランジ部147と係合している。回転カム143の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、全体視は断面矩形の略円環形状であり、軸体141の周方向の一方に向かうに従い軸体141の軸方向においてスライドカム144に近づくテーパ面を有する複数のカム部148を備えている。
【0033】
スライドカム144は、刺し通された軸体141により軸方向に移動可能に保持され、回転カム143と共に動作することにより、回転カム143の回転を直動に変換し軸力を発生させる部材である。スライドカム144は、少なくとも軸体141のフランジ部147と第一側壁部材135との間に配置される。本実施の形態の場合、スライドカム144は、回転カム143と多板機構146との間に配置されている。スライドカム144の形状は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、全体視は断面矩形の略円環形状であり、カム部148のテーパ面に当接して滑り動く複数の従動部149を備えている。
【0034】
スライドカム144は、円環形状の本体部から軸体141の径方向外向き(図中Y+向き)に突出する第一突出部151と、第一突出部151の先端部から軸体141の軸方向に突出し第二長孔132に挿入される第二突出部152と、を有する係合部150を備えている。第二突出部152は、第二長孔132に沿うように湾曲した円弧状であり、傾動軸200を中心とする周方向において、ハウジング120のいずれの方向の傾動が規制される際でも第二長孔132のいずれの端縁とも当接しない周方向の長さに設定されている。これにより、第二長孔132の端縁と第二突出部152とが当接せず打音の発生を防止することができる。また、第二突出部152は、軸方向にスライドカム144が移動した場合でも第二長孔132に挿入された状態を維持できる軸方向の長さに設定されている。尚、上記では第二突出部152は湾曲した円弧状としたが、第二長孔132と干渉しない形状であればよい。
【0035】
図4は、スライドカムを第一側壁部材側から示す斜視図である。スライドカム144は、従動部149の裏側(図中X+側)であって取付部材130の第一側壁部材135の平面部分と対向し直接、または間接的に平面部分に当接する面から従動部149に向かって窪む陥凹部153を備える。これにより、ロック機構140に軸力が発生しスライドカム144が第一側壁部材135に直接、または間接的に押しつけられる際の陥凹部153に隣接する突出面部154の面圧を高めることができる。また、ハウジング120を傾動させる際に、スライドカム144に発生する摩擦力を軽減するために塗布されるグリースは、突出面部154の高い面圧により機能が抑制され摩擦係数が高まり、ハウジングの傾動を強く規制することが可能となる。また、突出面部154の軸力の発生を解除する際にも突出面部154の面圧を従動部149の面圧より高く維持することができるため、回転カム143との供回りを抑制し、供回りによる打音の発生を抑制する事が可能となる。
【0036】
操作レバー145は、インナーチューブ110の外側において運転者などにより操作され、ロック機構140のロックと解除とを転換するための部材である。本実施の形態の場合、操作レバーは、ロック機構140のロックと解除に加え、ハウジング120の2つの被締付部122を締め付けてインナーチューブ110の位置決めとその解除をすることができるものとなっている。操作レバー145は、回転カム143に連結され、操作レバー145の先端を運転者が傾動させることで回転カム143を、軸体141を中心に回転させることができるものとなっている。
【0037】
図5は、多板機構を示す斜視図である。多板機構146は、スライドカム144と第一側壁部材135との間に配置され、ロック機構140のロック時にスライドカム144と第一側壁部材135との間の摩擦面を増加させる機構である。多板機構146は、第一側壁部材135に固定される複数の固定板155と、ハウジング120の傾動によって軸体141と共に移動する複数の移動板156と、を備えている。
【0038】
次に、ステアリングコラム装置100の動作を説明する。操作レバー145を軸体141周りに回転させ、回転カム143を回転させていくことにより、スライドカム144が回転カム143に近づき軸力が弱まっていく。この際、スライドカム144の突出面部154と、多板機構146との摩擦力は、弱まっていくが、回転カム143とスライドカム144の摩擦力よりも強いためスライドカム144は、回転カム143と供回りすることなく、打音の発生が抑制される。ロック機構140のロックが解除されると、突出面部154と多板機構146との間のグリースの機能が増え、多板機構146の固定板155と移動板156との間の摩擦力も低下するため、ハウジング120は、取付部材130に対してスムーズに傾動する。また、緩衝部材142が第一長孔131の端縁に当接することで、ハウジング120の傾動が軸体141を介して規制される。
【0039】
操作レバー145を軸体141周りに逆回転させ、回転カム143を逆回転させていくことにより、スライドカム144が回転カム143から遠ざかり軸力を発生させる。これにより、スライドカム144の突出面部154は多板機構146を第一側壁部材135に押しつける。スライドカム144と多板機構146との摩擦力、複数枚の移動板156と複数枚の固定板155との摩擦力、移動板156と第一側壁部材135との摩擦力によりハウジング120は、傾動が規制され取付部材130にロックされる。また、ロック機構140の軸力により二つの被締付部122の間の距離が短くなり、インナーチューブ110が挿通されるハウジング120の孔が縮径することで、インナーチューブ110は、ハウジング120に対してロックされる。
【0040】
以上の構造のロック機構140をステアリングコラム装置100が備えることにより、ロックを解除する際のスライドカム144の回転カム143との供回りを抑制し、供回りによって発生する打音を防止することができる。
【0041】
また、ハウジング120の傾動を規制する際に発生する衝撃を緩衝部材142で弱めることにより、傾動を規制する際の打音の発生を抑制する事ができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0043】
例えば、上記実施の形態ではコラムシャフト111と転舵輪とが機械的に連結されるステアリングコラム装置100を例示したが、コラムシャフト111と転舵輪とが機械的に連結されず、操舵部材の操舵により発生する電気信号に基づき転舵輪を転舵するSBW(steer-by-wire)システムにステアリングコラム装置100が適用されてもかまわない。
【0044】
また、スライドカム144に設けられる陥凹部153の形状は、軸体141の軸を中心に放射状に配置される扇形ばかりでなく、図6に示すような、矩形の帯状、図7に示すような、格子状であってもかまわない。また、陥凹部153は、半球状の窪みであってもかまわない。なお、図7に示す格子状のような場合、複数の陥凹部153が一体になっているとみなしている。
【0045】
また、緩衝部材142の形状は円筒形状などでもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、車両の操舵に関する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
100…ステアリングコラム装置、110…インナーチューブ、111…コラムシャフト、120…ハウジング、121…スリット、122…被締付部、123…ヒンジ部、124…貫通孔、130…取付部材、131…第一長孔、132…第二長孔、133…前部材、134…後部材、135…第一側壁部材、136…第二側壁部材、140…ロック機構、141…軸体、142…緩衝部材、143…回転カム、144…スライドカム、145…操作レバー、146…多板機構、147…フランジ部、148…カム部、149…従動部、150…係合部、151…第一突出部、152…第二突出部、153…陥凹部、154…突出面部、155…固定板、156…移動板、160…傾動軸体、200…傾動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7