(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130807
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23B 27/22 20060101AFI20220831BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B23B27/22
B23B27/20
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029408
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰岳
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046JJ02
3C046JJ03
3C046JJ11
3C046JJ12
(57)【要約】
【課題】とくに高切込み状態での高送り加工や低送り加工の際における切りくずの排出性などを改善し、切削時におけるいわば送りの自由度を向上させることができるようにする。
【解決手段】切削インサートの切れ刃体30は、柱体状である切れ刃体30の周側面30sと上面30uとの交差稜線上に形成された切れ刃であって、長手方向の一端側に形成された正面切れ刃31と、短手方向の一端側に形成された側面切れ刃32と、当該切れ刃体30の上面30のうち側面切れ刃32の短手方向後段に設けられた凹状部33と、該凹状部33の一部に形成された波状壁面34W、および該波状壁面34Wと側面切れ刃32との間となる位置に形成された、長手方向に沿って断続する複数の面を含む断続壁面34Pを有する壁部34と、を備える。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切れ刃が形成された切れ刃体を有する切削インサートであって、
前記切れ刃体は、
長手方向と該長手方向に垂直な短手方向とを有する柱体状であり、
当該柱状体である切れ刃体の周側面と上面との交差稜線上に形成された切れ刃であって、前記長手方向の一端側に形成された正面切れ刃と、
前記短手方向の一端側に形成された側面切れ刃と、
当該切れ刃体の前記上面のうち前記側面切れ刃の前記短手方向後段に設けられた凹状部と、
該凹状部の一部に形成された波状壁面と、該波状壁面と前記側面切れ刃との間となる位置に形成された、前記長手方向に沿って断続する複数の面を含む断続壁面と、を有する壁部と、
を備えることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
前記正面切れ刃と前記側面切れ刃とがコーナ切れ刃を介して接続されている、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記正面切れ刃が前記切れ刃体の長手方向に対し垂直に形成されており、該正面切れ刃に垂直であって当該正面切れ刃を二等分する仮想垂直平面に対し前記凹状部が前記短手方向の一端側と他端側とに非対称に形成されている、請求項1または2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記断続壁面の設置間隔は、前記長手方向に沿って前記正面切れ刃から離れるに従って短くなるように設定されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記波状壁面は、前記長手方向に沿って前記正面切れ刃から離れるに従って小さくなるように形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記正面切れ刃と前記側面切れ刃は、各切れ刃に垂直な断面にて正のすくい角を有するすくい面と接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項7】
前記正面切れ刃と前記側面切れ刃は、各切れ刃と前記すくい面との間に形成されたランド部を介して前記すくい面と接続されている、請求項6に記載の切削インサート。
【請求項8】
前記断続壁面は、前記側面切れ刃に垂直な平面による仮想断面にて前記上面と90°以上の角度を成す壁面として設けられている、請求項1から7のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項9】
前記切れ刃体の上面視にて、前記長手方向に沿って波形の周期形状を有する前記波状壁面と断続的な前記断続壁面とが接続するように構成されている。請求項1から8のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記基体は、前記切れ刃体の前記上面よりも上方に突出する凸状部を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項11】
前記凸状部は、前記基体の前記長手方向の一端である正面から所定値離れた位置に形成されている、請求項10に記載の切削インサート。
【請求項12】
前記側面切れ刃は、前記正面から前記所定値離れた位置を超える位置まで形成されている、請求項11に記載の切削インサート。
【請求項13】
前記凸状部は、上面視にて前記側面切れ刃に対し傾斜している傾斜面を有する、請求項10から12のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項14】
前記傾斜面は、前記正面から離れるしたがい前記側面切れ刃が形成された前記短手方向の一端側に近接するように形成されている、請求項13に記載の切削インサート。
【請求項15】
前記傾斜面は、上面視にて前記短手方向に対し60~80°の角度に形成されている、請求項14に記載の切削インサート。
【請求項16】
前記傾斜面は、前記正面から離れるにしたがい当該正面の距離が増大する方向に5~10°の角度を有する、請求項13から15のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項17】
前記凸状部が、前記切れ刃体と前記基体とが接する任意の一面と接続する形状に形成されている、請求項13から16のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項18】
前記切れ刃体は、基体に接合される超高圧焼結体である、請求項1から17のいずれか一項に記載の切削インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋削加工用の工具として種々の切削インサートが利用されてきており、また、かかる切削インサートに関し、超硬合金のチップブレーカを残す焼結体工具に関する技術(たとえば特許文献1参照)や、焼結体にチップブレーカを付加する技術(たとえば特許文献2参照)などが提案されてもいる。さらに、従来、超高圧成形された焼結体を超硬基体にロウ付けしてなるインサート(チップ)の切りくず処理性については、向上策が提案されてきた(特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4829197号公報
【特許文献2】特開2017-196693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の切削インサートには未だ種々の課題があり、とくに、被削材の回転軸方向への当該切削インサートの送り速度を比較的速くした際(いわゆる高送り時)、あるいはこれとは逆に比較的遅くした際(いわゆる低送り時)の切りくずの排出性の観点からすればさらなる改善の余地があるといえ、この点からすればいわば切削インサートの送りの自由度にはまだまだ改善すべき点が残っているともいえる。具体例を挙げれば以下のとおりである。
【0005】
たとえば、特許文献1ではバイト本体に有するすくい面に切屑処理用の突起を形成することにより、単純な形状で切りくず処理性の高いロウ付けバイトを実現しようとしているが、このように超硬基体に設けた突起部にチップブレーカ機能を付与する方法では、切削点と突起部の距離が焼結体の大きさに依存する性質がある。従って、焼結体の寸法、ひいては切れ刃長さ等に制限が生じる。そのため、低切込み(被削材に切り込むインサートの刃先の長さが比較的短い状態)、低送り時の切りくず処理性を向上する事は難しい。加えて、特許文献1のごとき切削工具(ロウ付けバイト)では、焼結体の上面がフラットなので、低切込み時や低送り時の切りくずが処理しきれない場合がある。
【0006】
上記のごとき課題の解決策のひとつとしては、特許文献2のごとく、焼結体上面に凹形状を設ける事で、低切込み、低送り条件下の切りくずを処理する技術を挙げることができる。また、特許文献2は変形例としてギザギザなチップブレーカを開示してもいるが、側面切れ刃に対して平行に配置されているにすぎない。プロファイル加工(切削加工のならい(倣い)加工)を念頭においた場合、当該プロファイル加工を主とするインサート(溝加工と横送り外径加工に対応するチップ)の形状について最も重要となるのは高切込み・低送り加工であり、これら特許文献1,2に記載の技術では、粗加工工程を含まないいわば一発仕上げ加工の切りくず処理が十分とはいえず、また、特許文献2は特に低送り加工(仕上げ加工)への対応が不十分であり、これらの点で課題があるといえる。
【0007】
そこで、本発明は、とくに高切込み状態での高送り加工や低送り加工の際における切りくずの排出性などを改善し、切削時におけるいわば送りの自由度を向上させることができるようにした切削インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、切れ刃が形成された切れ刃体を有する切削インサートであって、
切れ刃体は、
長手方向と該長手方向に垂直な短手方向とを有する柱体状であり、
当該柱状体である切れ刃体の周側面と上面との交差稜線上に形成された切れ刃であって、長手方向の一端側に形成された正面切れ刃と、
短手方向の一端側に形成された側面切れ刃と、
当該切れ刃体の上面のうち側面切れ刃の短手方向後段に設けられた凹状部と、
該凹状部の一部に形成された波状壁面と、該波状壁面と側面切れ刃との間となる位置に形成された、長手方向に沿って断続する複数の面を含む断続壁面と、を有する壁部と、
を備えることを特徴とする切削インサートである。
【0009】
上記のごとき態様の切削インサートによれば、凹部の一部に形成された波状壁面と断続壁面とを有する壁部が奏する作用などによって切削時の送りの自由度が向上しうる。すなわち、切りくず厚みは送り条件と相関性を有することに着目した本態様では、その特性を利用して、被削材の回転軸方向に沿って当該切削インサートを比較的速く送るとき(高送り時)の厚い切りくずには変形を加えず、切りくずを詰まらせないようにする一方で、被削材の回転軸方向に沿って当該切削インサートを比較的遅く送るとき(低送り時)の薄い切りくずには変形を加えて切りくずの変形方向を制御し、切りくずを折断容易にする。より具体的には、本態様のごとき切削インサートによれば、高送り時、断続壁面は被削材の切りくずを持ち上げる(別言すれば、切れ刃体の上面から遠ざける)ように作用し、当該切りくずが波状壁面に接触するのを抑制する。また、低送り時、波状壁面は被削材の切りくずに外力を作用させて変形させ、折断容易にする。以上のごとき態様の切削インサートによれば、たとえば高切込み高送り加工の際には基体の凸形状が機能し、低切込み低送り加工の際には切れ刃体の凹形状が持つ十分な切りくず処理性を保有したまま、とくに高切込み低送り加工における切りくず排出性を改善することができる。
【0010】
上記のごとく切りくず排出性などの改善が見込まれる本態様の切削インサートの原理について説明すれば以下のとおりである。まず、切削(転削)時の一般的な現象として、低送りの場合には被削体の周速差による影響が顕在化しやすい反面、高送りにすると高送りゆえの問題点(影響)が顕在化し、低送り時の被削体の周速差による影響が埋没するということが挙げられる。これら一般的な現象をふまえて構成された本態様の切削インサートは、横送り外径加工時などのような低送り条件のときには波状壁面が切りくず断面に変形を加えることで切りくずの折断を容易にし、また、高送り条件のときには断続壁面が切りくずを持ち上げ、当該切りくずが波状壁面と接触するのを抑制する。
【0011】
上記のごとき切削インサートにおいて、正面切れ刃と側面切れ刃とがコーナ切れ刃を介して接続されていてもよい。
【0012】
上記のごとき切削インサートにおいて、正面切れ刃が切れ刃体の長手方向に対し垂直に形成されており、該正面切れ刃に垂直であって当該正面切れ刃を二等分する仮想垂直平面に対し凹状部が短手方向の一端側と他端側とに非対称に形成されていてもよい。
【0013】
上記のごとき切削インサートにおいて、断続壁面の設置間隔は、長手方向に沿って正面切れ刃から離れるに従って短くなるように設定されていてもよい。
【0014】
上記のごとき切削インサートにおいて、波状壁面は、長手方向に沿って正面切れ刃から離れるに従って小さくなるように形成されていてもよい。
【0015】
上記のごとき切削インサートにおいて、正面切れ刃と側面切れ刃は、各切れ刃に垂直な断面にて正のすくい角を有するすくい面と接続されていてもよい。
【0016】
上記のごとき切削インサートにおいて、正面切れ刃と側面切れ刃は、各切れ刃とすくい面との間に形成されたランド部を介してすくい面と接続されていてもよい。
【0017】
上記のごとき切削インサートにおいて、断続壁面は、側面切れ刃に垂直な平面による仮想断面にて上面と90°以上の角度を成す壁面として設けられていてもよい。
【0018】
上記のごとき切削インサートにおいて、切れ刃体の上面視にて、長手方向に沿って波形の周期形状を有する波状壁面と断続的な断続壁面とが接続するように構成されていてもよい。
【0019】
上記のごとき切削インサートにおける基体は、切れ刃体の上面よりも上方に突出する凸状部を有していてもよい。
【0020】
上記のごとき凸状部は、基体の長手方向の一端である正面から所定値離れた位置に形成されていてもよい。
【0021】
上記のごとき切削インサートにおいて、側面切れ刃は、正面から所定値離れた位置を超える位置まで形成されていてもよい。
【0022】
上記のごとき切削インサートにおける凸状部は、上面視にて側面切れ刃に対し傾斜している傾斜面を有していてもよい。
【0023】
上記のごとき切削インサートにおいて、傾斜面は、正面から離れるしたがい側面切れ刃が形成された短手方向の一端側に近接するように形成されていてもよい。
【0024】
上記のごとき切削インサートにおいて、傾斜面は、上面視にて短手方向に対し60~80°の角度に形成されていてもよい。
【0025】
上記のごとき切削インサートにおいて、傾斜面は、正面から離れるにしたがい当該正面の距離が増大する方向に5~10°の角度を有していてもよい。
【0026】
上記のごとき切削インサートにおいて、凸状部が、切れ刃体と基体とが接する任意の一面と接続する形状に形成されていてもよい。
【0027】
上記のごとき切削インサートにおいて、切れ刃体は、基体に接合される超高圧焼結体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一態様である切削インサートが取り付けられたバイトホルダの一例を示す斜視図である。
【
図4】切削インサートの別の角度からみた斜視図である。
【
図8】切削インサートをその長手方向に沿って先端側から見た正面図である。
【
図12】(A)
図7中のXII-XII線における断面図と、(B)当該断面図中の枠部分を拡大して示す図である。
【
図13】(A)
図7中のXIII-XIII線における断面図と、(B)当該断面図中の枠部分を拡大して示す図である。
【
図14】切削インサートの超高圧焼結体(切れ刃体)に形成された切れ刃の部分を拡大して示す平面図である。
【
図15】切削インサートの高送り時に断続壁面にて切削されるワーク(被削材)の切りくずの様子を模式的に示す斜視図である。
【
図16】
図15に示す切りくずを透視した状態で切れ刃などを示す斜視図である。
【
図17】切削インサートの高送り時に断続壁面にて切削されるワークの切りくずの様子を別の角度から模式的に示す斜視図である。
【
図18】切削インサートの低送り時に波状壁面にて切削されるワークの切りくずの様子を模式的に示す斜視図である。
【
図19】
図18に示す切りくずを透視した状態で切れ刃などを示す斜視図である。
【
図20】切削インサートの低送り時に波状壁面にて切削されるワークの切りくずの様子を別の角度から模式的に示す斜視図である。
【
図21】切れ刃体が接合されていない状態の基体の一例を示す斜視図である。
【
図23】(A)
図7中のXXIII(A)-XXIII(A)線における切削インサートの断面図、(B)
図7中のXXIII(B)-XXIII(B)線における切削インサートの断面図である。
【
図24】溝入れ加工時の溝入れ方向および横送り加工時の横送り方向について簡単に説明するワークと切削インサートの斜視図である。
【
図25】溝入れ加工時の溝入れ方向および横送り加工時の横送り方向について簡単に説明するワークと切削インサートの平面図である。
【
図26】(A)切削インサートの高送り時に断続壁面にて切削されたワークの切りくずの画像と、(B)その一部を拡大した画像とを示すものである。
【
図27】(A)切削インサートの低送り時に波状壁面にて切削されたワークの切りくずの画像と、(B)その一部を拡大した画像とを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る切削工具の好適な実施形態について詳細に説明する(
図1等参照)。
【0030】
本発明に係る切削インサート10は、主に、小型旋盤用といった自動旋盤工具による旋削用に好適な切削インサートとして構成されているもので、基体(ベースインサート)20に、該基体20よりも高硬度な超高圧焼結体からなる切れ刃体30をろう付けにより接合して形成されている。かかる構成の切削インサート10は極めて優れた耐摩耗性を有することから、鋳鉄や高硬度の金属材料またはアルミニウム等の非鉄合金等、種々の金属材料の切削に利用されうる(
図1、
図2等参照)。本実施形態の切削インサート10はバイトホルダ80に取り付けられ、溝加工時には溝入れ方向に送られ、横送り加工時には横送り方向に送られ、ワーク(被削材)100の切削に用いられる(
図24、
図25参照)。
【0031】
[切れ刃体]
切れ刃体30は、溝入れ方向に延びる長手方向xと、該長手方向xに垂直であり横送り方向に延びる短手方向yと、長手方向xおよび短手方向yの両方に垂直な上下方向zを有する柱体状に形成された超高圧焼結体からなる(
図3、
図4等参照)。切れ刃体30の上面30uおよび基体20への取付面となる下面は略台形に形成されている(
図7等参照)。上面30uと下面との間には周側面30sが形成されている(
図5等参照)。かかる切れ刃体30には、切れ刃(正面切れ刃31、一方の側面切れ刃32、他方の側面切れ刃37)、凹状部33,38、壁部34などが形成されている(
図6~
図11等参照)。
【0032】
切れ刃は、切れ刃体30の周側面30sと上面30uとの交差稜線上に形成された正面切れ刃(長さが限定されることはもちろんないが、参考として一例を挙げれば長さ2mm)31および側面切れ刃(同様に、参考として一例を挙げれば長さ6mm)32からなる(
図5等参照)。正面切れ刃31と側面切れ刃32とは、コーナ切れ刃(大きさが限定されることはないが、参考として一例を挙げればコーナRが半径0.05mm)39を介して接続されている(
図7等参照)。正面切れ刃31は、長手方向xの先端側の面(正面30f(なお、正面30fは周側面30sの一部である))と上面30uとの交差稜線上に形成されていて、ワーク100を溝入れ加工する際に用いられる。本実施形態の正面切れ刃31は、切れ刃体30の長手方向xに対し垂直に形成されている。正面切れ刃31の近傍にはすくい面を含む凹部35が設けられている(
図7、
図13等参照)。
【0033】
側面切れ刃32、37は、正面切れ刃31に垂直であって当該正面切れ刃31を二等分する仮想垂直平面VPに対し短手方向yの一端側と他端側とにそれぞれ形成されている(
図6、
図8等参照)。一方の側面切れ刃32は、短手方向yの一端側の側面(本実施形態の場合、右側面(
図10参照))と上面30uとの交差稜線上に形成されていて、ワーク100を横送り加工する際に用いられる。他方の側面切れ刃37は、短手方向yの他端側の側面(本実施形態の場合、左側面(
図9参照))と上面30uとの交差稜線上に形成されている。他方の側面切れ刃37は、一方の側面切れ刃32よりも長手方向xの長さが短く形成されている(
図7等参照)。
【0034】
凹状部33,38は、上面30uのうち、一方の側面切れ刃32の短手方向yの後段となる位置に形成されている(
図12、
図13等参照)。本実施形態では、正面切れ刃31に垂直であって当該正面切れ刃31を二等分する仮想垂直平面VPに対し短手方向yの一端側と他端側とに一方の凹状部33と他方の凹状部38とが形成されている(
図7等参照)。これら凹状部33,38は、仮想垂直平面VPを挟んで非対称となるように形成されている(
図7等参照)。また、凹状部33の一部(当該凹状部33から上面30uへ立ちあがる部分)には、立ち上がり壁面からなる壁部34が設けられている(
図7、
図14等参照)。
【0035】
凹状部33のうち、側面切れ刃32の直近の部分には当該側面切れ刃32のすくい面32rとして機能する逃げ面が構成されている。側面切れ刃32は、当該側面切れ刃32に垂直な断面にて当該すくい面32rと接続されている(
図12、
図13参照)。本実施形態のすくい面32rは、正のすくい角を有する。特に詳しい図示はしないが、同様に、他方の側面切れ刃37は、当該側面切れ刃37に垂直な断面にて正のすくい角を有するすくい面37rと接続されている(
図7等参照)。正面切れ刃31もまた、当該正面切れ刃31に垂直な断面にて正のすくい角を有するすくい面31rと接続されている(
図7等参照)。これらのすくい面31r,32r,37rの幅は各切れ刃(正面切れ刃31、側面切れ刃32、側面切れ刃37)基準で一様(各切れ刃ごとに一様の大きさ)である。また、各すくい面31r,32r,37rの切れ刃(正面切れ刃31、側面切れ刃32、側面切れ刃37)から離れた側の端部は、切れ刃体30の上面30uと平行な平面に接続している(
図12、
図13参照)。
【0036】
なお、特に図示してはいないが、これらのすくい面31r,32r,37rは複数の面で構成されていてもよく、そのうち、各切れ刃(正面切れ刃31、側面切れ刃32、側面切れ刃37)にもっとも近い面(第1すくい面)がランド部(幅が狭い第1すくい面)として機能するように構成されていてもよい。このようなランド部が形成されている場合、各切れ刃(正面切れ刃31、側面切れ刃32、側面切れ刃37)は、各ランド部を介してすくい面(のうちその他の部分)と接続される。具体例を挙げるなら、図示してはいないが、正面切れ刃31と側面切れ刃32,37に対して平行なランド部が例えば0.05mmの幅で設けられていてもよい。また、各切れ刃(正面切れ刃31、側面切れ刃32、側面切れ刃37)の垂直平面における断面上で、21°のすくい角を有するすくい面が形成され、各切れ刃に平行な平面(ランド部)にて構成されるすくい面が接続していてもよい。なお、すくい面31r,32r,37rを含む各凹状部は、コスト面などを考慮して必要最低限の深さで形成されていてもよい。
【0037】
壁部34は、波状壁面34Wと、断続壁面34Pとを有するように構成されている(
図14等参照)。本実施形態の壁部34においては、切れ刃体30の上面視にて、長手方向xに沿って波形の周期形状を有する波状壁面34Wと断続的な断続壁面34Pとが接続するように構成されている(
図7等参照)。
【0038】
波状壁面34Wは、長手方向xに連なるとともに、短手方向yに沿って波打つように湾曲する複数の凹状の曲面で構成されている(
図14等参照)。波状壁面34Wを構成する壁面の数はとくに限定されないが、少なくとも3つ以上の壁面を設け、少なくとも3周期以上の波形を有する波状壁面34Wとすることが好適である。
【0039】
断続壁面34Pは、波状壁面34Wと側面切れ刃32との間となる位置に形成された、長手方向xに沿って断続する複数の面を含む壁面で構成されている(
図14等参照)。断続壁面34Pを構成する複数の壁面は、すくい面32rおよび上面30uと平行な平面の接続線(つまりは、
図13において符号34cで示す交差稜線)を端とし、波状壁面34Wと接続する平面として形成されている。また、断続壁面34Pを構成する複数の壁面は、それぞれ、側面切れ刃32に垂直な平面による仮想断面にて切れ刃体30の上面30uと成す角度(
図13において符号αで示す)が90°以上となる壁面(一例として、本実施形態ではα=135°となるようにした壁面)として設けられている(
図13参照)。なお、本実施形態では、超高圧焼結体からなる切れ刃体30の全体ではなく一部のみを切れ刃として用いており、当該切れ刃体30には切れ刃およびすくい面がない部分がある(
図7等参照)。
【0040】
また、本実施形態の切れ刃体30において、波状壁面34Wおよび断続壁面34Pは以下のように形成されている。すなわち、波状壁面34Wについては、当該波状壁面34Wを構成する複数の壁面が、長手方向xに沿って正面切れ刃31から離れるに従って徐々にその大きさ(幅、振幅)が小さくなるように形成されている(
図7等参照)。また、断続壁面34Pについては、当該断続壁面34Pを構成する複数の壁面が、その設置間隔が長手方向xに沿って正面切れ刃31から離れるに従い短くなるように形成されている(
図7等参照)。また、波状壁面34Wのうちの最奥壁部(側面切れ刃32からもっとも離れている部分)は、切れ刃体30の長手方向xと平行に(別言すれば、長手方向xに平行な直線に沿って)配置されている(
図14中において一点鎖線で示す部分を参照)。一方で、断続壁面34Pは、側面切れ刃32が並ぶライン(
図14中において破線で示す部分を参照)と平行に(別言すれば、側面切れ刃32に平行な直線に沿って)配置されている(
図14中において実線で示す部分を参照)。
【0041】
[基体]
基体(ベースインサート)20は、ろう付けで接合された切れ刃体30を保持するための部材であり、ねじ止めによりバイトホルダ80に取り付けられる(
図1、
図2参照)。基体20には、バイトホルダ80にねじ22でねじ止めするための、たとえば切れ刃体30の短手方向yに貫通するねじ穴21が設けられている(
図2、
図3等参照)。ねじ止めにより、切削インサート10はバイトホルダ80に縦置き状態(切れ刃体30の正面30fが、バイトホルダ80の長手方向の先端側を向いた状態)で取り付けられる(
図1等参照)。
【0042】
また、基体20には、切れ刃体30の一部よりも上方に突出する凸状部24が形成されている(
図5、
図10等参照)。たとえば本実施形態の切削インサート10であれば、凸状部24は、切れ刃体30のうち上下方向zのもっとも上方となる位置(すなわち上面30u)よりもさらに上方に突出するように形成されている。凸状部24は、短手方向yの一端側(本実施形態の場合、一方の側面切れ刃32が形成されている側)とは逆となる他端側において、所定の切削条件下で生じる切りくずを好適に処理することができるように、場合によってはチップブレーカとして機能しうる形状に形成されている(
図3等参照)。たとえば本実施形態の凸状部24は以下のように形成されている。
【0043】
まず、凸状部24は、上面視にて側面切れ刃32に対し傾斜している傾斜面24sを有する形状とされている(
図6等参照)。この傾斜面24sは、切れ刃体30の正面から離れるしたがい、短手方向yの他端側から、一端側(本実施形態の場合、側面切れ刃32が形成されている側)に徐々に近接するように傾斜して形成されている(
図6、
図7等参照)。基準の一例として上面視での短手方向yに対する傾斜面24sの角度をβとした場合(
図7参照)、後述の切りくず処理性の観点からしてこの角度βはたとえば60~80°の範囲内に設定されていることが好適である。
【0044】
また、凸状部24は、上下方向zに垂直な面(x―y平面)に対する傾斜角γが5~10°の角度を有するように形成されていて(
図10参照)、切れ刃体30の正面30fから離れるにしたがい上方に突出し最大突出部分に至る形状となっている。さらに、凸状部24は、鉛直方向に延びる面(たとえば、切れ刃体30の周側面30sの一部と接する基体20の壁面20sを延長した面)に対する傾斜面24sの傾斜角δが所定の範囲の角度(たとえば5~70°、より好適には5~10°)の角度となるように形成されている(
図23参照)。傾斜面24sがこのように形成された凸状部24は、とくに高切込み時に排出される切りくずが当該凸状部24に当たったときにより円滑に流れて処理されるように、これにより抵抗を減らすことを可能にするといった点において好適である。
【0045】
また、凸状部24は、切れ刃体30と基体20とが接合される接合面のうちの任意の一面と接続する形状に形成されていてもよい。例えば本実施形態の切削インサート10であれば、基体20は、切れ刃体30の底面と接する第1の接面(底受け面)20bと、切れ刃体30の周側面30sの一部と接する第2の接面(壁面)20sとにおいて切れ刃体30と接合される(
図21、
図22参照)。これら接面20b,20sのうち、第2の接面(壁面)20sと上述の凸状部24の傾斜面24sとが滑らかに接続する形状となっていれば、これら第2の接面(壁面)と凸状部24の傾斜面24sとの間に段差を設ける必要がなく、両者を面一の面で連続的に構成することや、間に段差がなく両者が連続的に繋がる面で構成することが可能となる。こうすることは、基体20の形状をより簡素なものとし、成形に要するコストの低減を可能にするといった点で好適である。
【0046】
また、凸状部24は、切れ刃体30の正面30fから所定の値X2離れた位置に形成されていて、当該位置から傾斜面24sがバイトホルダ80の基端側へ向けて連なるように設けられている(
図7等参照)。この所定の値X2は、側面切れ刃32の長さX1(
図7参照。なお、ここでいうX1は側面切れ刃32の長さであるが、総じていえば、横送り加工時においてワーク100の切削加工に関与しうる部分の長さ)と比較した場合に、 X2>X1 となるように設定されている。このように設定されているということは、別の表現をすれば、長手方向xの座標がX2を超えてX1に至るまでの範囲において側面切れ刃32と凸状部24の傾斜面24sとが重複しているということである(
図7等参照)。
【0047】
上記のごとく、X2(切れ刃体30の正面30fから凸状部24までの距離)>X1(側面切れ刃の長さ)となるように設定された本実施形態の切削インサート10によれば(
図7等参照)、低切込み時には凹状部33の壁面36によって切りくずを処理し、高切込み時には基体20の凸状部24の傾斜面24sによって切りくず101を処理するという、2段チップブレーカとも呼ぶべき構造が実現されている。
【0048】
[バイトホルダ]
バイトホルダ80は、その先端部分において切削インサート10を保持するバイトであり、自動旋盤工具(図示省略)により溝入れ方向および横送り方向への送りが可能に設けられている(
図24、
図25等参照)。
【0049】
[使用時の態様]
上記のごとく構成された本実施形態の切削インサート10は、バイトホルダ80に取り付けられ、回転中心線Cまわりに回転するワーク(被削材)100に押し付けられて当該ワーク100を切削し、所定の形状を転写する。実際には、切削インサート10はまず切れ刃体30の長手方向xに沿って溝入れ方向に送られて溝加工をし、さらに、長手方向xと垂直な短手方向yに沿って横送り方向に送られて横送り加工をしてワーク100の外径加工をすることで、切れ刃体30の正面切れ刃31の長さ(幅)以上の矩形溝を成形する(
図24、
図25等参照)。
【0050】
[切りくず処理の特徴、送りの自由度]
上記のごとく波状壁面34Wや断続壁面34Pが形成された本実施形態の切削インサート10によれば、これら波状壁面34Wおよび断続壁面34Pのいわば相乗的な効果として下記のごとく切りくず(
図15等にて符号101で示す)を好適に処理して切削加工時の抵抗を抑制し、もって、送りの自由度を向上させることができる。すなわち、切りくず101の厚みは切削インサート10の送り条件と相関性を持つところ、本実施形態では、その特性を利用して、横送り加工の際、高送り(比較的速い送り)条件時に生じる厚い切りくず101には変形を加えず、切りくず101を詰まらせないようにする一方で、低送り(比較的遅い送り)条件時に生じる薄い切りくず101には変形を加えてその変形方向を制御し、折断するようにする。より詳細には以下のとおりとなる(
図15~
図20参照)。
【0051】
<高送り時>
・比較的厚くなる切りくず101を断続壁面34Pが持ち上げ(リフトアップ)、切りくず101が波状壁面34Wに接触するのを抑制する(
図15~
図17参照)。このように切りくず101が波状壁面34Wに接触するのを抑制することで、ワーク100の被削材がとくに延展性に富み溶着しやすい場合においても、切りくず101が溶着によって波状壁面34Wに溶着して埋没させてしまうこと、切りくず101が詰まることを防ぎやすくなる(
図26参照)。また、切りくず101がコイル状となることからわかるとおり(
図26(A)参照)、ムリなく(つまりは切削抵抗が低く)切りくず101が生成されるということができる。
・高送り時の比較的厚い切りくず101を切れ刃体30に設けた断続壁面34Pによって構成されるいわば直線状のチップブレーカ壁面によって加工(処理)することを可能とすることにより、高送り時を含む幅広い加工条件に適用することが可能となる。
【0052】
<低送り時>
・比較的薄くなる切りくず101が波状壁面34Wに沿って排出される。このとき、切りくず101(の断面)に波状壁面34Wが変形を加える(
図18~
図20)。波状壁面34Wから作用する力は、切りくず101が折断することを容易にする(
図27参照)。また、小さく(細かく)分断される切りくず101は(
図27(A)参照)、切削工具やワークにからみつかなくなることから、この、切削インサート10によれば切りくず排出時の処理(排出)が容易になる。
・波状壁面34Wのうちの最奥壁部(側面切れ刃32からもっとも離れている部分)を切れ刃体30の長手方向xと平行に配置し、側面切れ刃32と平行ではない構成として、これら波状壁面34Wのうち正面切れ刃31に近いほど深く凹む構造としている(
図14参照)。この構造は、正面切れ刃31に近いほど切りくず101に断面に付与する変形を大きくすることに寄与する。とくに高切り込み時のときには、波状壁面34Wのうち正面切れ刃31に近い部分と正面切れ刃31から遠い部分とにおけるワーク100の周速差による影響が大きくなるところ、上記のごとき構造は、収束差による影響を抑制し、ワーク100の回転中心線Cに近い部分であっても、回転中心線Cから遠い部分であっても、切削抵抗が極度に偏ることを抑止しつつ、同じように切りくず101を処理する(折断させる)ことを可能とする。このことは、低切込み時の切りくず処理性を向上しつつ、高切込み時に過度な変形を付与しないという効果をもたらす。また、このような切削インサート10(の波状壁面34W)は、特に仕上げ加工の切りくず処理性を向上させうる。
【0053】
以上、本発明の実施形態に係る切削インサート10を説明したが、それらには種々の変更が適用され得る。たとえば、切削インサート10の切れ刃体30は、ダイヤモンド焼結体、立方晶窒化硼素焼結体などの超高圧焼結体、または、これらの硬質材料もしくは超高圧焼結体にCVD法、PVD法等により周期律表4A、5A、6A族金属の炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物、硼窒化物、硼炭窒酸化物、酸化アルミニウム及び窒化チタンアルミニウムよりなる群から選ばれる被腹膜、もしくは、非晶質炭素薄膜等をコーティングしたもので構成されうる。
【0054】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の各実施形態で示した波状壁面34Wの形状は好適な一例にすぎず、適宜、この他の形状、たとえば円弧を含まない形(たとえば折れ線の組み合わせ形状、など)からなる波形の壁面とすることができる。また、波状壁面34Wの周期は一定・一律であってもよい。
【0055】
また、本実施形態のごとき切削インサート10は、後挽き可能な溝入れ工具型多機能インサートなどとして好適であるが、厳密にはチップの用途、形状に関わらず、切りくず処理性、加工面品位の向上を図りうるものであり、用途がとくに限定されることはないものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、切削加工用のインサートに適用して好適である。
【符号の説明】
【0057】
10…切削インサート
20…基体(ベースインサート)
21…ねじ穴
22…ねじ
24…凸状部
24s…凸状部の傾斜面
30…超高圧焼結体(切れ刃体)
30f…正面
30s…周側面
30u…上面
31…正面切れ刃
31r…すくい面
32…側面切れ刃
32r…すくい面
33…凹状部
34…壁部
34P…断続壁面
34c…交差稜線
34W…波状壁面
35…(正面切れ刃近傍の)凹部
37…他方の側面切れ刃
37r…すくい面
38…他方の凹状部
39…コーナ切れ刃
80…バイトホルダ
100…ワーク(被削材)
101…切りくず
C…ワークの回転中心線
VP…正面切れ刃を二等分する仮想垂直平面
x…長手方向
y…短手方向
z…上下方向
【手続補正書】
【提出日】2021-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切れ刃が形成された切れ刃体を有する切削インサートであって、
前記切れ刃体は、
長手方向と該長手方向に垂直な短手方向とを有する柱体状であり、
当該柱体状である切れ刃体の周側面と上面との交差稜線上に形成された切れ刃であって、前記長手方向の一端側に形成された正面切れ刃と、
前記短手方向の一端側に形成された側面切れ刃と、
当該切れ刃体の前記上面のうち前記側面切れ刃の前記短手方向後段に設けられた凹状部と、
該凹状部の一部に形成された波状壁面と、該波状壁面と前記側面切れ刃との間となる位置に形成された、前記長手方向に沿って断続する複数の面を含む断続壁面と、を有する壁部と、
を備えており、
前記断続壁面の設置間隔は、前記長手方向に沿って前記正面切れ刃から離れるに従って短くなるように設定されていることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
切れ刃が形成された切れ刃体を有する切削インサートであって、
前記切れ刃体は、
長手方向と該長手方向に垂直な短手方向とを有する柱体状であり、
当該柱体状である切れ刃体の周側面と上面との交差稜線上に形成された切れ刃であって、前記長手方向の一端側に形成された正面切れ刃と、
前記短手方向の一端側に形成された側面切れ刃と、
当該切れ刃体の前記上面のうち前記側面切れ刃の前記短手方向後段に設けられた凹状部と、
該凹状部の一部に形成された波状壁面と、該波状壁面と前記側面切れ刃との間となる位置に形成された、前記長手方向に沿って断続する複数の面を含む断続壁面と、を有する壁部と、
を備えており、
前記波状壁面は、前記長手方向に沿って前記正面切れ刃から離れるに従って小さくなるように形成されていることを特徴とする切削インサート。
【請求項3】
切れ刃が形成された切れ刃体を有する切削インサートであって、
前記切れ刃体は、
長手方向と該長手方向に垂直な短手方向とを有する柱体状であり、
当該柱体状である切れ刃体の周側面と上面との交差稜線上に形成された切れ刃であって、前記長手方向の一端側に形成された正面切れ刃と、
前記短手方向の一端側に形成された側面切れ刃と、
当該切れ刃体の前記上面のうち前記側面切れ刃の前記短手方向後段に設けられた凹状部と、
該凹状部の一部に形成された波状壁面と、該波状壁面と前記側面切れ刃との間となる位置に形成された、前記長手方向に沿って断続する複数の面を含む断続壁面と、を有する壁部と、
を備えており、
前記切れ刃体が接合される基体は、前記切れ刃体の前記上面よりも上方に突出する凸状部を有しており、
前記凸状部は、前記基体の前記長手方向の一端である正面から所定値離れた位置に形成されており、
前記側面切れ刃は、前記正面から前記所定値離れた位置を超える位置まで形成されていることを特徴とする切削インサート。
【請求項4】
前記正面切れ刃と前記側面切れ刃とがコーナ切れ刃を介して接続されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記正面切れ刃が前記切れ刃体の長手方向に対し垂直に形成されており、該正面切れ刃に垂直であって当該正面切れ刃を二等分する仮想垂直平面に対し前記凹状部が前記短手方向の一端側と他端側とに非対称に形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記正面切れ刃と前記側面切れ刃は、各切れ刃に垂直な断面にて正のすくい角を有するすくい面と接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項7】
前記正面切れ刃と前記側面切れ刃は、各切れ刃と前記すくい面との間に形成されたランド部を介して前記すくい面と接続されている、請求項6に記載の切削インサート。
【請求項8】
前記断続壁面は、前記側面切れ刃に垂直な平面による仮想断面にて前記上面と90°以上の角度を成す壁面として設けられている、請求項1から7のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項9】
前記切れ刃体の上面視にて、前記長手方向に沿って波形の周期形状を有する前記波状壁面と断続的な前記断続壁面とが接続するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項10】
前記切れ刃体が接合される基体は、前記切れ刃体の前記上面よりも上方に突出する凸状部を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項11】
前記凸状部は、前記基体の前記長手方向の一端である正面から所定値離れた位置に形成されている、請求項10に記載の切削インサート。
【請求項12】
前記側面切れ刃は、前記正面から前記所定値離れた位置を超える位置まで形成されている、請求項11に記載の切削インサート。
【請求項13】
前記凸状部は、上面視にて前記側面切れ刃に対し傾斜している傾斜面を有する、請求項11または12に記載の切削インサート。
【請求項14】
前記傾斜面は、前記正面から離れるにしたがい前記側面切れ刃が形成された前記短手方向の一端側に近接するように形成されている、請求項13に記載の切削インサート。
【請求項15】
前記傾斜面は、上面視にて前記短手方向に対し60~80°の角度に形成されている、請求項14に記載の切削インサート。
【請求項16】
前記傾斜面は、前記正面から離れるにしたがい当該正面の距離が増大する方向に5~10°の角度を有する、請求項13から15のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項17】
前記凸状部が、前記切れ刃体と前記基体とが接する任意の一面と接続する形状に形成されている、請求項13から16のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項18】
前記切れ刃体は、基体に接合される超高圧焼結体である、請求項1から17のいずれか一項に記載の切削インサート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一態様は、切れ刃が形成された切れ刃体を有する切削インサートであって、
切れ刃体は、
長手方向と該長手方向に垂直な短手方向とを有する柱体状であり、
当該柱体状である切れ刃体の周側面と上面との交差稜線上に形成された切れ刃であって、長手方向の一端側に形成された正面切れ刃と、
短手方向の一端側に形成された側面切れ刃と、
当該切れ刃体の上面のうち側面切れ刃の短手方向後段に設けられた凹状部と、
該凹状部の一部に形成された波状壁面と、該波状壁面と側面切れ刃との間となる位置に形成された、長手方向に沿って断続する複数の面を含む断続壁面と、を有する壁部と、
を備えることを特徴とする切削インサートである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
上記のごとき切削インサートにおいて、傾斜面は、正面から離れるにしたがい側面切れ刃が形成された短手方向の一端側に近接するように形成されていてもよい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
まず、凸状部24は、上面視にて側面切れ刃32に対し傾斜している傾斜面24sを有する形状とされている(
図6等参照)。この傾斜面24sは、切れ刃体30の正面から離れる
にしたがい、短手方向yの他端側から、一端側(本実施形態の場合、側面切れ刃32が形成されている側)に徐々に近接するように傾斜して形成されている(
図6、
図7等参照)。基準の一例として上面視での短手方向yに対する傾斜面24sの角度をβとした場合(
図7参照)、後述の切りくず処理性の観点からしてこの角度βはたとえば60~80°の範囲内に設定されていることが好適である。