(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130845
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】熱伝導性シートの製造方法およびマウントヘッド
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20220831BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029480
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑介
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 慶輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】大橋 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】滝原 尚登
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA11
5E322FA04
5F136BA03
5F136BB18
5F136BC03
5F136BC06
5F136BC07
5F136FA11
5F136FA14
5F136FA15
5F136FA16
5F136FA25
5F136FA53
5F136FA55
5F136GA12
(57)【要約】
【課題】熱伝導性シートの加工を精度良く行う。
【解決手段】ヘッドの下降の際に、前記ヘッドに設けられた刃部により熱伝導材料を切断する抜き加工を行う工程と、前記ヘッドの下降の際に、前記刃部により切断された熱伝導材料の表面形状を、前記ヘッドに設けられた形成部により加工する工程と、前記ヘッドの上昇の際に、熱伝導材料を切断し、表面形状を加工されることにより得られた熱伝導性シートをピックアップする工程と、を含むことを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドの下降の際に、前記ヘッドに設けられた刃部により熱伝導材料を切断する抜き加工を行う工程と、
前記ヘッドの下降の際に、前記刃部により切断された熱伝導材料の表面形状を、前記ヘッドに設けられた形成部により加工する工程と、
前記ヘッドの上昇の際に、熱伝導材料を切断し、表面形状を加工されることにより得られた熱伝導性シートをピックアップする工程と、
を含むことを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。
【請求項2】
ピックアップされた熱伝導性シートを指定場所に設置する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項3】
ピックアップされた熱伝導性シートを設置する指定場所は、当該熱伝導性シートの実装場所である、
ことを特徴とする請求項2に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項4】
熱伝導材料を切断する刃部と、
前記刃部により切断された熱伝導材料の表面形状を加工する形成部と、
を備えることを特徴とするマウントヘッド。
【請求項5】
前記形成部は、前記刃部の内側に設けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載のマウントヘッド。
【請求項6】
前記熱伝導材料の表面形状を加工されることにより得られた熱伝導性シートを、ピックアップする治具を備える、
ことを特徴とする請求項4または5に記載のマウントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シートの製造方法およびマウントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンビュータ等の各種電子機器やその他の機器に搭載されている半導体素子においては、電子機器の更なる高性能化に伴って、高密度化、高実装化が進んでいる。半導体素子は、高性能化に伴って、駆動による放熱量は増加する傾向にある。駆動による放熱が蓄積されると半導体素子の駆動や周辺機器へ悪影響が生じることから、半導体素子は、熱を放熱等する各種冷却手段を備えている。半導体素子等の電子部品の冷却方法としては、当該機器にファンを取り付け、機器筐体内の空気を冷却する方式や、その冷却すべき半導体素子に放熱フィンや放熱板等のヒートシンクを取り付ける方法等が知られている。
【0003】
半導体素子にヒートシシクを取り付けて冷却する場合、半導体素子の熱を効率よく放出させるために、半導体素子とヒートシンクとの聞に、効率よく放熱させるための熱伝導性シートが設けられている。
【0004】
ところで、熱伝導性シートを使用する際に、空気(熱伝導率:0.023W/m・K)が入ってしまうと密着性、熱特性に影響を与えてしまう。
【0005】
そこで、特許文献1には、熱伝導性シートを凸レンズ形状にすることで、中央から外側に空気を押し出しながら実装できるようにすることで、密着性や熱特性を良好にできるようにした技術が開示されている。
【0006】
特許文献1に開示の技術によれば、熱伝導性シート形状に該当する金型を準備し、複数の凸レンズ形状を含む多面取りシートを熱プレスにより作製し、作製した多面取りシートを個片に加工することで、凸レンズ形状の熱伝導性シートを作製する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば多面取りシートからの熱伝導性シートの加工は、精度良く行われなければならない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、熱伝導性シートの加工を精度良く行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の熱伝導性シートの製造方法は、ヘッドの下降の際に、前記ヘッドに設けられた刃部により熱伝導材料を切断する抜き加工を行う工程と、前記ヘッドの下降の際に、前記刃部により切断された熱伝導材料の表面形状を、前記ヘッドに設けられた形成部により加工する工程と、前記ヘッドの上昇の際に、熱伝導材料を切断し、表面形状を加工されることにより得られた熱伝導性シートをピックアップする工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱伝導性シートの加工を精度良く行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる熱伝導性シートの外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、熱伝導性シートの外観構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、熱伝導性シートの寸法関係を示す側面説明図である。
【
図4】
図4は、熱伝導性シートを製造する方法の一例を示す工程図である。
【
図5】
図5は、熱伝導性シートの外観構成の変形例を示す側面図である。
【
図6】
図6は、半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、熱伝導性シートの製造方法およびマウントヘッドの実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
以下、本技術が適用された熱伝導性シートの製造方法およびマウントヘッドについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
図1は、実施の形態にかかる熱伝導性シートの外観構成を示す斜視図、
図2は、熱伝導性シートの外観構成を示す側面図、
図3は、熱伝導性シートの寸法関係を示す側面説明図である。
【0016】
図1ないし
図3に示すように、本実施の形態の熱伝導性シート1は、所定の熱伝導材料からなり、例えば四角形状のシート本体部2の一方の面に凸状密着部3が設けられている。熱伝導性シート1は、当該シートの中央部分の厚さが周縁部分の厚さより厚く、全体形状として湾曲面を有する凸レンズ形状となるように構成されている。
【0017】
本発明の場合、シートの材料である熱伝導材料は、従来公知の材料を使用することができる。熱伝導性シートとしては、シリコーン樹脂に炭素繊維等の熱伝導性フィラー等の充填剤を分散含有させたものが広く用いられている。
【0018】
このような熱伝導性シートにおいては、更なる熱伝導率の向上が要求されている。一般には、高熱伝導性を目的として、マトリックス内に配合されている無機フィラーの充填率を高めることにより対応している。無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0019】
しかし、無機フィラーの充填率を高めると、柔軟性が損なわれたり、無機フィラーの充填率が高いことから粉落ちが発生したりするため、無機フィラーの充填率を高めることには限界がある。
【0020】
そこで、高熱伝導率を目的として、窒化ホウ素、黒鉛等の鱗片状粒子、炭素繊維等をマトリックス内に充填させる。これは、鱗片状粒子等の有する熱伝導率の異方性によるものである。例えば、炭素繊維の場合には、繊維方向に約600W/m・K~1200W/m・Kの熱伝導率を有する。窒化ホウ素の場合には、面方向に約110W/m・K、面方向に対して垂直な方向に約2W/m・K程度の熱伝導率を有しており、異方性を有することが知られている。
【0021】
このように炭素繊維、鱗片状粒子の面方向を熱の伝達方向であるシートの厚み方向と同じにする、即ち、炭素繊維、鱗片状粒子をシートの厚み方向に配向させることによって、熱伝導を飛躍的に向上させることができる。
【0022】
なお、凸状密着部3の厚さ(高さ)は特に限定されることはないが、被着体に対する密着性を向上させる観点からは、シート本体部2の厚さTに対し、凸状密着部3の厚さtが0.05T~0.2Tとなるように構成することが好ましい。
【0023】
より具体的には、シート本体部2の厚さTが0.2~5.0mmで、凸状密着部3の厚さtが0.01~1.0mmの熱伝導性シートに好適に適用することができる。
【0024】
なお、本発明は、一般的な熱伝導性シートと同様、30mm×30mm以下の大きさを有する熱伝導性シートに好適に適用することができるものである。
【0025】
次に、熱伝導性シートを製造する方法の一例について説明する。
【0026】
図4は、熱伝導性シートを製造する方法の一例を示す工程図である。
図4に示す例は、シート本体部2の一方の面に凸状密着部3を有する熱伝導性シート1を製造するものである(
図1~
図3参照)。
【0027】
図4に示すように、マウントヘッド20は、形成部20aと、形成部20aの両端部に設けられた刃部20bと、を備える。
【0028】
刃部20bは、熱伝導材料7を切断する。形成部20aは、刃部20bの内側に設けられ、切断された熱伝導材料7の表面形状を凸レンズ形状に加工するカーブ形状を有する。形成部20aおよび刃部20bをこのような構成にすることにより、省スペース化を図ることができる。
【0029】
図4に示すように、マウントヘッド20は、下降時に、熱伝導材料7を刃部20bによって切断する抜き加工を行う(
図4(a)(b)参照)。この際、マウントヘッド20は、刃部20bによって切断される熱伝導材料7の表面形状を形成部20aのカーブ形状によって凸レンズ形状に加工する(
図4(b)参照)。
【0030】
このようにマウントヘッド20は、下降時に、熱伝導材料7を刃部20bによって切断する抜き加工を行うとともに、切断される熱伝導材料7の表面形状を形成部20aのカーブ形状によって凸レンズ形状に加工するため、多面取りシート(熱伝導材料7)からの個片加工を精度よく行うことができる。
【0031】
さらに、マウントヘッド20は、上昇時に、熱伝導材料7を切断し、表面形状を凸レンズ形状に加工されることにより得られた熱伝導性シート1を、例えば刃部20bによって挟んだ状態でピックアップする(
図4(c)参照)。
【0032】
最後に、マウントヘッド20は、刃部20bによって挟んだ状態でピックアップした熱伝導性シート1を指定場所に設置する(
図4(d)参照)。ここで、ピックアップした熱伝導性シート1を設置する指定場所とは、熱伝導性シート1の実装場所である電子部品(チップなど)51である。なお、マウントヘッド20による熱伝導性シート1のピックアップおよび設置は、エアで吸引するものであってもよいし、磁性金属粉が含まれている熱伝導性シート1をピックアップする場合には、磁場をかけて吸引するものであってもよい。すなわち、エアで吸引する装置や磁場をかけて吸引する装置は、熱伝導性シート1を、ピックアップする治具である。
【0033】
以上の一連の工程を経ることにより、熱伝導性シート1が形成される。なお、熱伝導性シート1は、実使用時に剥離シートが剥離されることにより、粘着性を有する樹脂被覆層が露出され、電子部品等への実装に供される。
図4(e)に示すように、熱伝導性シート1には、ヒートシンク53等がエアを抜きながらマウントされる。
【0034】
上述の工程により形成された熱伝導性シート1は、復元率が90%未満であることが望ましい。復元率が100%では形状を維持しないからである。
【0035】
なお、上記実施の形態では、熱伝導性シート1の全体形状が凸レンズ形状となるように凸状密着部3を形成したが、本発明はこれに限られず、例えば錐体形状又は錐台形状の凸状密着部を設けることもできる。
【0036】
また、シート本体部2の形状も四角形状には限られず、放熱対象である電子部品の形状に対応させて種々の形状とすることができる。
【0037】
さらに、
図5は、熱伝導性シートの外観構成の変形例を示す側面図である。
図5に示すように、本変形例の熱伝導性シート1Aは、上記実施の形態と同様の熱伝導材料からなるもので、例えば四角形状のシート本体部2の両方の面に凸状密着部3(3a、3b)が設けられている。本実施の形態においても、当該シートの中央部分の厚さが周縁部分の厚さより厚く、全体形状として凸レンズ形状となるように構成されている。
【0038】
さらに、シート本体部2の両面側の部分に凸状密着部3(3a、3b)が設けられている熱伝導性シート1Aにおいては、各凸状密着部3(3a、3b)の形状や高さを異ならせることも可能である。
【0039】
このように凸状密着部3(3a、3b)を両面に有する熱伝導性シートを製造する場合、一方の凸状密着部3については、従来のように凸状密着部3の形状に対応する凹部6を有する金型5を用意して、熱伝導材料を加熱加圧するようにすればよい。
【0040】
[使用形態例]
実使用時においては、熱伝導性シート1は、剥離シートが剥離され、例えば、半導体装置等の電子部品や、各種電子機器の内部に実装される。
【0041】
熱伝導性シート1は、例えば、
図6に示すように、各種電子機器に内蔵される半導体装置50に実装され、熱源と放熱部材との間に挟持される。
図6に示す半導体装置50は、電子部品51と、ヒートスプレッダ52と、熱伝導性シート1とを少なくとも有し、熱伝導性シート1がヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。熱伝導性シート1を用いることによって、半導体装置50は、高い放熱性を有し、またバインダ樹脂中の磁性金属粉の含有量に応じて電磁波抑制効果にも優れる。
【0042】
電子部品51としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU、MPU、グラフィック演算素子、イメージセンサ等の各種半導体素子、アンテナ素子、バッテリーなどが挙げられる。ヒートスプレッダ52は、電子部品51の発する熱を放熱する部材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。熱伝導性シート1は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間に挟持される。また熱伝導性シート1は、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に挟持されることにより、ヒートスプレッダ52とともに、電子部品51の熱を放熱する放熱部材を構成する。
【0043】
熱伝導性シート21の実装場所は、ヒートスプレッダ52と電子部品51との間や、ヒートスプレッダ52とヒートシンク53との間に限らず、電子機器や半導体装置の構成に応じて、適宜選択できることは勿論である。また、放熱部材としては、ヒートスプレッダ52やヒートシンク53以外にも、熱源から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであればよく、例えば、放熱器、冷却器、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、金属カバー、筐体等が挙げられる。
【0044】
このように本実施の形態によれば、ヘッドの下降の際に、ヘッドに設けられた刃部により熱伝導材料を切断する抜き加工を行うとともに、刃部により切断された熱伝導材料の表面形状を、ヘッドに設けられた形成部により加工し、ヘッドの上昇の際に、熱伝導材料を切断し、表面形状を加工されることにより得られた熱伝導性シートをピックアップすることにより、多面取りシートからの熱伝導性シート1の加工を精度良く行うことができる。また、熱伝導性シート1の製造のプロセスについては、簡易化・効率化が図られる。また、熱伝導性シート1の形状ごとの在庫管理が容易になる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、加工直後に熱伝導性シート1を実装するので、加工後の運搬時に形状が崩れることがないので、使用時に最適な形状を維持することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1A 熱伝導性シート
2 シート本体部
3、3a、3b 凸状密着部
5 金型
6 凹部
7 熱伝導材料
20 マウントヘッド