IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミツミ電機株式会社の特許一覧

特開2022-130862レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ
<>
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図1
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図2
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図3
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図4
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図5
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図6
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図7
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図8
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図9
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図10
  • 特開-レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130862
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】レンズカバーアッセンブリーおよびレンズカバーアッセンブリーを備えるカメラ
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/02 20210101AFI20220831BHJP
   G03B 11/04 20210101ALI20220831BHJP
   G03B 17/08 20210101ALI20220831BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220831BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220831BHJP
【FI】
G03B11/02
G03B11/04 A
G03B17/08
G03B17/02
G02B7/02 D
G02B7/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029498
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】田村 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光弘
【テーマコード(参考)】
2H044
2H083
2H100
2H101
【Fターム(参考)】
2H044AD03
2H044AE09
2H083BB01
2H083BB13
2H083BB16
2H100BB00
2H100EE06
2H101CC53
2H101CC60
(57)【要約】
【課題】薄型化可能なレンズカバーアッセンブリーおよび該レンズカバーアッセンブリーを含むカメラを提供する。
【解決手段】レンズカバーアッセンブリー900は、リング状の本体部911と、本体部910から延伸するリング状の壁部912と、壁部912の内周面上に形成された受け部913と、壁部912の外周面から外側に突出する係合部914と、備えるキャップ910と、キャップ910の受け部913内に収納されるレンズカバー920と、リング状の本体部931と、本体部931の外縁から延伸する壁部932と、壁部932の内周面から内側に突出する爪部933と、を備える固定部材930と、を含む。キャップ910の係合部914と固定部材930の爪部933とを係合させることにより、固定部材930がキャップ910に取り付けられ、キャップ910の受け部913内でレンズカバー920が保持される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラのレンズアッセンブリーを保持するシリンダーの先端部に取り付けられるレンズカバーアッセンブリーであって、
透明材料により形成されたレンズカバーと、
リング状の本体部と、前記本体部から第1の方向に延伸するリング状の壁部と、前記壁部の内周面上に形成され、前記レンズカバーを収納するための受け部と、前記壁部の外周面から外側に突出する係合部と、を備えるキャップと、
リング状の本体部と、前記本体部の外縁から前記第1の方向とは反対の第2の方向へ延伸する壁部と、前記壁部の内周面から内側に突出する爪部と、を備える固定部材と、を含み、
前記キャップの前記係合部と前記固定部材の前記爪部とを係合させることにより、前記固定部材が前記キャップに取り付けられ、前記キャップの前記受け部内で前記レンズカバーが保持されることを特徴とするレンズカバーアッセンブリー。
【請求項2】
前記固定部材は、前記キャップの前記係合部と前記固定部材の前記爪部とのスナップフィットによって前記キャップに着脱可能に取り付けられる請求項1に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項3】
前記固定部材は、前記本体部の内縁から前記第2の方向へ突出する突起をさらに備え、
前記レンズカバーアッセンブリーが前記シリンダーの前記先端部に取り付けられた際、前記固定部材の前記突起が前記レンズカバーを押圧し、前記キャップの前記受け部内において前記レンズカバーを固定することを特徴とする請求項1または2に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項4】
前記受け部は、前記レンズカバーを載置するための底部と、前記レンズカバーを外側から覆う壁部と、を有しており、
前記レンズカバーは、前記キャップの前記受け部の前記底部と前記固定部材の前記突起との間で挟持される請求項3に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項5】
前記キャップは、前記本体部の外周面上に形成された雄ネジ構造をさらに備えており、
前記キャップの前記雄ネジ構造を、前記シリンダーの前記先端部の内周面上に形成された雌ネジ構造と螺合させることにより、前記レンズカバーアッセンブリーが前記シリンダーの前記先端部に取り付けられる請求項3または4に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項6】
前記シリンダーは、前記内周面上に形成されたフランジを備えており、
前記レンズカバーアッセンブリーが前記シリンダーの前記先端部に取り付けられる前の状態において、前記固定部材の前記突起は、前記レンズカバーを押圧しておらず、
前記レンズカバーアッセンブリーを前記シリンダーの前記先端部に取り付けるために、前記キャップの前記雄ネジ構造を、前記シリンダーの前記先端部の前記内周面上に形成された前記雌ネジ構造と螺合させた際、前記固定部材が前記シリンダーの前記フランジに当接し、これにより、前記固定部材が前記レンズカバーに向かって変位し、前記固定部材の前記突起が前記レンズカバーに接触し、押圧する請求項5に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のレンズカバーアッセンブリーを含むことを特徴とするカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、防塵機能を提供するためのカメラのレンズアッセンブリーを保持するシリンダーの先端部に取り付けられるレンズカバーアッセンブリーおよび該レンズカバーアッセンブリーを備えるカメラに関し、より具体的には、レンズカバーと、レンズカバーを収納するための受け部を備えるキャップと、キャップにスナップフィットにより取り付けられる固定部材と、を備えるレンズカバーアッセンブリーおよび該レンズカバーアッセンブリーを備えるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場の生産ラインにおいて、作業の自動化・無人化を図るため、部品の寸法測定、検査、組立、加工等を実行するための産業用ロボットが広く用いられている。産業用ロボットは、工場の生産ラインにおいて、ワークテーブル上に載置された作業対象物(これを「ワーク」という)に対する所定の作業、例えば、部品の取り付け、液体材料の塗布や切削等の加工、導電検査等を行う。このような産業用ロボットは、ロボットアームや可動ステージ等の可動部と、ワークに対する所定の作業を実行するための作業部(例えば、ピックアップハンド、ノズル、コンタクトプローブ)とを備えており、可動部によって作業部とワークとの相対位置を制御することにより、ワークに対する所定の作業を実現する。
【0003】
ワークに対する所定の作業を実行するためには、ワークテーブル上に載置されたワークの大きさ、形状、および位置を正確に取得する必要がある。そのため、一般的に、産業用ロボットは、ワークを撮影するためのカメラを備えており、カメラを用いてワークを撮影することによって取得される画像から、ワークの大きさ、形状、および位置を取得する。このような産業用ロボットに用いられるカメラにおいて、カメラのレンズアッセンブリー内に塵やゴミ等が浸入することを防止する防塵機能を提供するために、カメラのレンズアッセンブリーを保持するシリンダーの先端部に取り付けられるレンズカバーアッセンブリーが広く利用されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、ガラス等の透明材料から構成されるディスク状のレンズカバー(透明防塵フィルター)と、レンズカバーを載置するためのリング状の受け部材と、レンズカバーを受け部材上に押圧し、受け部材上でレンズカバーを固定するための複数の押圧部材と、を含むレンズカバーアッセンブリーを開示している。しかしながら、特許文献1の押圧部材は、複数の板金および固定ネジを含む多くの部品によって構成される複雑な構成を有しているため、組立の際の要求精度が高く、小型化が困難であった。そのため、複雑な構成を有する特許文献1のレンズカバーアッセンブリーは、産業用ロボットで用いられるような小型化が要求されるカメラに不向きであった。
【0005】
非常にシンプルな構成を有するレンズカバーアッセンブリーとして、図1に示されているような、レンズカバー1510と、レンズカバー1510を収納するためのキャップ1520と、キャップ1520内においてレンズカバー1510を固定するための固定部材1530と、を備えるレンズカバーアッセンブリー1500が広く用いられている。図1に示されているように、キャップ1520は、リング状の本体部1521と、本体部1521の内周面上に形成され、レンズカバー1510を収納するための受け部1522と、本体部1521の内周面のうち、受け部1522よりも基端側の部分に形成された雌ネジ構造1523と、本体部1521の外周面上に形成された雄ネジ構造1524と、を備えている。一方、固定部材1530は、リング状の本体部1531と、本体部1531の外周面上に形成された雄ネジ構造1532と、を備えている。
【0006】
図2は、レンズカバーアッセンブリー1500を組み立てた状態の断面図を示している。図2に示されているように、キャップ1520の受け部1522内にレンズカバー1510が収納される。さらに、キャップ1520の内周面上に形成された雌ネジ構造1523と固定部材1530の本体部1531の外周面上に形成された雄ネジ構造1532とを螺合させることにより、固定部材1530がキャップ1520に取り付けられる。このような構成により、キャップ1520の受け部1522内でレンズカバー1510を固定することができる。
【0007】
さらに、レンズカバーアッセンブリー1500が組み立てられた状態において、キャップ1520の外周面上に形成された雄ネジ構造1524と、カメラのレンズアッセンブリーを保持するシリンダー(図示せず)の先端側開口の内周面上に形成された雌ネジ構造とを螺合させることにより、レンズカバーアッセンブリー1500がシリンダーの先端部に取り付けられ、レンズアッセンブリー内に塵やゴミ等が浸入する防塵機能を提供することができる。このようなレンズカバーアッセンブリー1500は、部品点数が少なく、かつ、非常にシンプルな構成を有しているため、産業用ロボットで用いられるような小型カメラにおいて、広く用いられている。
【0008】
しかしながら、図1および図2に示されているように、ネジ嵌合により固定部材1530をキャップ1520に取り付けるためには、キャップ1520の内周面上に固定部材1530を取り付けるために十分な深さを有する雌ネジ構造1523を形成する必要がある。例えば、最低でも、キャップ1520の内周面上にネジ山を2~3周形成する必要があり、2~3周分のネジ山の山数(図中の「ネジ深さ」)以上に、キャップ1520の厚みを低減させることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-338962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、薄型化可能なレンズカバーアッセンブリーおよび該レンズカバーアッセンブリーを含むカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、以下の(1)~(7)の本発明により達成される。
(1)カメラのレンズアッセンブリーを保持するシリンダーの先端部に取り付けられるレンズカバーアッセンブリーであって、
透明材料により形成されたレンズカバーと、
リング状の本体部と、前記本体部から第1の方向に延伸するリング状の壁部と、前記壁部の内周面上に形成され、前記レンズカバーを収納するための受け部と、前記壁部の外周面から外側に突出する係合部と、を備えるキャップと、
リング状の本体部と、前記本体部の外縁から前記第1の方向とは反対の第2の方向へ延伸する壁部と、前記壁部の内周面から内側に突出する爪部と、を備える固定部材と、を含み、
前記キャップの前記係合部と前記固定部材の前記爪部とを係合させることにより、前記固定部材が前記キャップに取り付けられ、前記キャップの前記受け部内で前記レンズカバーが保持されることを特徴とするレンズカバーアッセンブリー。
【0012】
(2)前記固定部材は、前記キャップの前記係合部と前記固定部材の前記爪部とのスナップフィットによって前記キャップに着脱可能に取り付けられる上記(1)に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【0013】
(3)前記固定部材は、前記本体部の内縁から前記第2の方向へ突出する突起をさらに備え、
前記レンズカバーアッセンブリーが前記シリンダーの前記先端部に取り付けられた際、前記固定部材の前記突起が前記レンズカバーを押圧し、前記キャップの前記受け部内において前記レンズカバーを固定することを特徴とする上記(1)または(2)に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【0014】
(4)前記受け部は、前記レンズカバーを載置するための底部と、前記レンズカバーを外側から覆う壁部と、を有しており、
前記レンズカバーは、前記キャップの前記受け部の前記底部と前記固定部材の前記突起との間で挟持される上記(3)に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【0015】
(5)前記キャップは、前記本体部の外周面上に形成された雄ネジ構造をさらに備えており、
前記キャップの前記雄ネジ構造を、前記シリンダーの前記先端部の内周面上に形成された雌ネジ構造と螺合させることにより、前記レンズカバーアッセンブリーが前記シリンダーの前記先端部に取り付けられる上記(3)または(4)に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【0016】
(6)前記シリンダーは、前記内周面上に形成されたフランジを備えており、
前記レンズカバーアッセンブリーが前記シリンダーの前記先端部に取り付けられる前の状態において、前記固定部材の前記突起は、前記レンズカバーを押圧しておらず、
前記レンズカバーアッセンブリーを前記シリンダーの前記先端部に取り付けるために、前記キャップの前記雄ネジ構造を、前記シリンダーの前記先端部の前記内周面上に形成された前記雌ネジ構造と螺合させた際、前記固定部材が前記シリンダーの前記フランジに当接し、これにより、前記固定部材が前記レンズカバーに向かって変位し、前記固定部材の前記突起が前記レンズカバーに接触し、押圧する上記(5)に記載のレンズカバーアッセンブリー。
【0017】
(7)上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のレンズカバーアッセンブリーを含むことを特徴とするカメラ。
【発明の効果】
【0018】
本発明のレンズカバーアッセンブリーにおいては、スナップフィットによって固定部材をキャップに取り付け可能となっているため、従来技術と異なり、キャップの内周面上に固定部材を取り付けるための雌ネジ構造を形成する必要がない。そのため、従来技術と比較して、キャップの厚さを低減させることができ、結果として、レンズカバーアッセンブリーを薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来のレンズカバーアッセンブリーの分解斜視図である。
図2図1に示すレンズカバーアッセンブリーの断面図である。
図3】本発明の好適な実施形態に係るカメラを示す斜視図である。
図4図3に示すカメラの断面図である。
図5図3に示すカメラの移動機構を示す分解斜視図である。
図6図5に示す移動機構の送り装置の変形例を示す断面斜視図である。
図7】本発明の好適な実施形態に係るレンズカバーアッセンブリーの斜視図である。
図8図7に示すレンズカバーアッセンブリーの分解斜視図である。
図9図7に示すレンズカバーアッセンブリーの別の角度からの分解斜視図である。
図10図7に示すレンズカバーアッセンブリーの断面図、キャップの係合部および固定部材の爪部の周辺領域の拡大図、およびレンズカバーと固定部材の突起の周辺領域の拡大図である。
図11図7に示すレンズカバーアッセンブリーをシリンダーの先端部に取り付けた状態のレンズカバーアッセンブリーおよびシリンダーの一部断面図、キャップの係合部および固定部材の爪部の周辺領域の拡大図、およびレンズカバーと固定部材の突起の周辺領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のレンズカバーアッセンブリーおよびカメラを、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて、説明する。なお、以下で参照する各図は、本発明の説明のために用意された模式的な図である。図面に示された各構成要素の寸法(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法を反映したものではない。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。
【0021】
図3は、本発明の好適な実施形態に係るカメラを示す斜視図である。図4は、図3に示すカメラの断面図である。図5は、図3に示すカメラの移動機構を示す分解斜視図である。図6は、図5に示す移動機構の送り装置の変形例を示す断面斜視図である。以下の説明において、カメラのレンズカバーアッセンブリーが取り付けられている側を先端側または前方といい、その反対側を基端側または後方ということがある。
【0022】
図3に示すカメラ100は、FA(ファクトリーオートメーション)用のカメラである。典型的には、カメラ100は、部品の組み立て、加工、検査等を実行するFA用ロボットのアーム等に取り付けられ、部品の形状や位置、部品とロボットのアームとの間の相対関係等を取得するために、部品を撮影する。ただし、カメラ100の用途は、これに限定されず、カメラ100を様々な用途で利用可能である。
【0023】
図4に示すように、カメラ100は、ケーシング200と、ケーシング200の前方に装着されたシリンダー300と、シリンダー300内に保持されたレンズアッセンブリー400と、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内で光軸Lに沿って移動させる移動機構500と、シリンダー300の先端部に取り付けられたレンズカバーアッセンブリー900と、を有する。また、カメラ100は、レンズアッセンブリー400から入った光を受光する撮像素子600と、撮像素子600を支持する第1回路基板710と、第1回路基板710と電気的に接続された第2回路基板720と、を有する。撮像素子600、第1回路基板710および第2回路基板720は、それぞれ、ケーシング200に収容されている。また、カメラ100は、図示しない外部装置との電気的な接続を行う端子800を有する。端子800は、ケーシング200に設けられ、外部に露出している。なお、以下では、説明の便宜上、光軸Lに沿う方向すなわち光軸Lと平行な方向を「光軸方向LL」とも言う。
【0024】
カメラ100では、移動機構500によってレンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させることによりレンズアッセンブリー400と撮像素子600との離間距離Dを変更、調整することができる。そのため、撮影距離(撮像対象物との距離)に応じて離間距離Dを調整することによりフォーカス調整(ピント合わせ)が可能となる。特に、後述するように、移動機構500は、レンズアッセンブリー400に対してその後方から光軸方向LLの力Fを加える。そのため、レンズアッセンブリー400の光軸方向LL以外への変位が抑制され、レンズアッセンブリー400が光軸Lに対して傾斜するのを抑制することができる。そのため、安定した撮像特性を発揮することができ、良質な画像を取得することができる。以下、カメラ100を構成する各部について、順次詳細に説明する。
【0025】
<シリンダー300>
まず、シリンダー300について説明する。図4に示すように、シリンダー300は、円筒形状を有している。また、シリンダー300の内径は、その軸方向に沿って一定である。また、シリンダー300は、その内周面から中心軸に向けて突出するよう形成されたリング状のフランジ390を有する。フランジ390は、シリンダー300の先端側開口300A付近の内周面上に設けられている。フランジ390は、例えば、シリンダー300の強度を高めるリブとしての機能や、レンズカバーアッセンブリー900の度当たりとしての機能や、レンズアッセンブリー400のそれ以上の先端側への移動を規制するストッパーとしての機能を有する。また、シリンダー300の先端側開口300Aの内周面であって、フランジ390よりも先端側の部分には、雌ネジ構造380が形成されている。雌ネジ構造380は、レンズカバーアッセンブリー900をシリンダー300に取り付けるために用いられる。
【0026】
また、シリンダー300は、小外径部310と、小外径部310よりも外径が大きい中外径部320と、中外径部320よりも外径が大きい大外径部330と、を有する。これらは、先端側から小外径部310、中外径部320、大外径部330の順に光軸方向LLに並んで一体的に形成されている。また、シリンダー300は、小外径部310と中外径部320との境界に形成され、先端側を向く段差面340と、中外径部320と大外径部330との境界に形成され、先端側を向く段差面350と、を有する。段差面340、350は、それぞれ、光軸Lに直交する平坦面である。
【0027】
図5に示すように、小外径部310の外周には、雄ネジ構造311が形成されている。また、中外径部320の外周面の上部と下部には、円筒状の外周面の一部を切り欠いた平坦面であるDカット面321が、それぞれ形成されている。Dカット面321は、中外径部320の上側と下側とに等角度間隔(180°間隔)で一対形成されており、互いに対向している。同様に、大外径部330の外周面の上部と下部には、円筒状の外周面の一部を切り欠いた平坦面であるDカット面331が、それぞれ形成されており、互いに対向している。Dカット面331は、大外径部330の上側と下側とに等角度間隔(180°間隔)で一対形成されており、互いに対向している。
【0028】
このような構成のシリンダー300は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するシリンダー300が得られ、内部に収容されたレンズアッセンブリー400を安定して保持することができる。また、シリンダー300は、例えば、NC(Numerical Control)旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度でシリンダー300を形成することができる。そのため、シリンダー300内でのレンズアッセンブリー400のガタつきを抑え、かつ、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができる。ただし、シリンダー300の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0029】
<ケーシング200>
次に、ケーシング200について説明する。図4に示すように、ケーシング200は、シリンダー300の後方に位置している。また、ケーシング200は、基端側上部を略矩形状に切り欠いた形状となっている。そのため、ケーシング200は、シリンダー300を保持する高背部201と、高背部201の後方に位置し、高背部201よりも背が低い低背部202と、を有する。そして、高背部201の基端側壁から後述する送り装置550が突出している。また、低背部202の基端側壁に端子800が設けられている。このように、低背部202の基端側壁すなわちケーシング200の最後方に位置する部分に端子800を設けることにより、端子800の周囲にスペースを確保し易くなり、端子800へのアプローチが容易となる。
【0030】
また、ケーシング200は、その下側部分を構成するベースシャーシ210と、上側部分を構成するアッパーケース220と、を有する。そして、ベースシャーシ210とアッパーケース220とでシリンダー300の基端部を挟み込むことにより、シリンダー300を保持している。ただし、ケーシング200の構成は、特に限定されない。
【0031】
ベースシャーシ210およびアッパーケース220は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するケーシング200が得られ、シリンダー300を安定して保持することができる。特に、本実施形態では、ベースシャーシ210およびアッパーケース220は、ダイカストすなわち鋳造品である。このように、ダイカストを用いることにより、安価なベースシャーシ210およびアッパーケース220が得られる。また二次加工により部分的に高い寸法精度を出すことができる。ただし、ベースシャーシ210およびアッパーケース220の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0032】
<レンズアッセンブリー400>
次に、レンズアッセンブリー400について説明する。図4に示すように、レンズアッセンブリー400は、シリンダー300内にシリンダー300と同軸となるよう保持されている。また、レンズアッセンブリー400は、シリンダー300に対して光軸方向LLに移動(摺動)可能な円筒状のスリーブ410と、スリーブ410の内側に設けられたレンズユニット420と、を有する。また、レンズユニット420は、スリーブ410に固定された円筒状の鏡筒430と、鏡筒430内に配置されたレンズ群440および絞り450と、を有する。なお、本実施形態のレンズユニット420は、単焦点(固定焦点)のレンズユニットである。単焦点のレンズユニット420を用いることにより、ズーム機能を有するレンズユニット420を用いる場合と比べてレンズの数を減らすことができる。そのため、その分、レンズユニット420を小型化および低コスト化することができる。また、ズーム機能を有するレンズユニット420を用いる場合と比べて明るい画像を取得し易くなる。ただし、レンズユニット420の構成は、特に限定されない。
【0033】
スリーブ410は、円筒形状を有している。また、スリーブ410は、外周面から外側へ突出する一対のリング状のフランジ411、412を有する。フランジ411は、スリーブ410の外周面の先端部上に位置し、フランジ412は、スリーブ410の外周面の基端部上に位置している。スリーブ410は、これらフランジ411、412の外周面においてシリンダー300の内周面と接触している。つまり、スリーブ410は、その中央部を除く両端部においてシリンダー300と接触している。このような構成とすることにより、シリンダー300内でのスリーブ410の姿勢を安定させつつ、シリンダー300とスリーブ410との接触面積を小さくすることができる。そのため、シリンダー300内でのスリーブ410の安定した移動が可能となる。ただし、スリーブ410の構成としては、特に限定されず、例えば、フランジ411、412を省略し、スリーブ410の外周面の全域がシリンダー300の内周面と接触していてもよい。
【0034】
また、スリーブ410は、先端側開口410Aに臨むレンズユニット挿入部413を有する。レンズユニット挿入部413には、レンズユニット420が挿入、装着されている。また、レンズユニット挿入部413は、その後方の部分よりも内径が大きい。そのため、レンズユニット挿入部413の基端側には、先端側を向く段差面414が形成されている。段差面414は、光軸Lに直交する平坦面であり、レンズユニット420の度当たりとして機能する。そのため、スリーブ410に対するレンズユニット420の位置決めが容易となる。
【0035】
なお、本実施形態では、レンズユニット挿入部413は、Sマウント規格で構成されている。そのため、Sマウント規格に対応したものであれば、用途に合わせてレンズユニット420を交換することもできる。また、Sマウント規格で構成することにより、レンズユニット420を小型化することができ、カメラ100の小型化を図ることができる。ただし、レンズユニット挿入部413の規格としては、特に限定されず、例えば、Cマウント規格で構成されていてもよい。
【0036】
このような構成のスリーブ410は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するスリーブ410が得られ、レンズユニット420を安定して保持することができる。特に、本実施形態のスリーブ410は、シリンダー300と同一の材料で構成されている。これにより、シリンダー300とスリーブ410の線膨張係数が等しくなり、昇温によってシリンダー300とスリーブ410との間にガタが生じたり、反対に、スリーブ410の動きが鈍くなったりするのを効果的に抑制することができる。また、スリーブ410は、例えば、NC旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度でスリーブ410を形成することができる。このように、本実施形態では、シリンダー300およびスリーブ410が共にNC旋盤加工により形成されている。そのため、これらのクリアランスを高精度に管理することができ、スリーブ410をシリンダー300に精度よく組み付けることができる。したがって、シリンダー300内でのレンズアッセンブリー400のがたつきが抑えられると共に、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができる。なお、前記「がたつき」には、例えば、シリンダー300内でのスリーブ410の偏心や倒れ(光軸Lに対する傾き)が含まれる。ただし、スリーブ410の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0037】
シリンダー300の内周面とスリーブ410の外周面との間には、これらの摺動抵抗を低減するための図示しない潤滑剤が設けられている。そのため、レンズアッセンブリー400をシリンダー300内でスムーズに動かすことができる。なお、潤滑剤としては、特に限定されないが、本実施形態では、モリブテン系、グラファイト系、フッ素系等の各種固体潤滑剤を用いている。
【0038】
鏡筒430は、円筒形状を有しており、内部にレンズ群440および絞り450が設けられている。このような構成の鏡筒430は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有する鏡筒430が得られ、レンズ群440および絞り450を安定して保持することができる。また、鏡筒430は、例えば、NC旋盤加工により形成されている。NC旋盤加工を用いることにより、優れた寸法精度で鏡筒430を形成することができる。そのため、鏡筒430をスリーブ410に精度よく組み付けることができる。ただし、鏡筒430の材質や形成方法は、特に限定されない。
【0039】
<撮像素子600>
次に、撮像素子600について説明する。図4に示すように、撮像素子600は、レンズアッセンブリー400の後方に設けられ、その受光面が光軸Lに直交している。撮像素子600は、レンズアッセンブリー400から入った光を受光する。撮像素子600としては、特に限定されず、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等を用いることができる。また、撮像素子600の素子サイズ(寸法)、解像度等の各種スペックは、カメラ100に求められるスペックに合わせて適宜設定することができる。
【0040】
<第1回路基板710>
次に、第1回路基板710について説明する。図4に示すように、第1回路基板710は、ケーシング200内において、撮像素子600よりも基端側に設けられ、光軸Lに直交する姿勢で配置されている。また、第1回路基板710は、撮像素子600を支持している。つまり、第1回路基板710は、撮像素子600が搭載されたセンサー基板である。第1回路基板710は、ネジB1によってシリンダー300の基端面にネジ止めされている。ここで、上述したように、シリンダー300は、NC旋盤加工により形成されているため、基端面の形成精度が高く、光軸Lに対する垂直度を高精度に管理することができる。そのため、第1回路基板710をシリンダー300の基端面に固定することにより、撮像素子600を光軸Lに対して精度よく位置決めすることができる。ただし、第1回路基板710の固定方法や固定される対象としては、特に限定されない。
【0041】
<移動機構500>
次に、移動機構500について説明する。移動機構500は、レンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させ、レンズアッセンブリー400と撮像素子600との離間距離Dを変更、調整するための機構である。移動機構500は、図4および図5に示すように、レンズアッセンブリー400に接続されたロッド510と、ロッド510の基端に接続されたロッドヘッド520と、ロッド510を光軸方向LLに誘導するロッドガイド530と、ロッド510を後方に向けて付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね540と、圧縮コイルばね540の力に抗してロッド510を前方に向けて送り出す送り装置550と、を有する。
【0042】
ロッド510は、ケーシング200内において、レンズアッセンブリー400よりも基端側に設けられている。また、ロッド510は、棒状であり、光軸方向LLに延在している。また、光軸方向LLからの平面視において、ロッド510は、スリーブ410と重なっている。また、ロッド510は、その先端部においてスリーブ410の基端部に接続されている。具体的には、ロッド510の先端部がスリーブ410の基端面に形成されたネジ穴415に螺合している。そのため、ロッド510が先端側に移動すると、ロッド510に押されてレンズアッセンブリー400が先端側に移動する。反対に、ロッド510が基端側に移動すると、ロッド510に引っ張られてレンズアッセンブリー400が基端側に移動する。
【0043】
ロッド510をこのような形状および配置とすることにより、カメラ100の光軸Lに直交する方向への広がり、換言すると、光軸方向LLからの平面視でのカメラ100の輪郭の広がりを抑えることができ、カメラ100の小型化を図ることができる。また、ロッド510をスリーブ410に接続することにより、レンズユニット420がロッド510によって直接押圧されないため、レンズユニット420に加わる負荷を低減することができる。
【0044】
このような構成のロッド510は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。これにより、十分な剛性を有するロッド510が得られ、送り装置550からの押圧力を効率的にレンズアッセンブリー400に伝達することができる。そのため、レンズアッセンブリー400をスムーズに移動させることができる。
【0045】
ロッドヘッド520は、ロッド510の基端部に接続されている。また、ロッドヘッド520は、ロッド510よりも大径な頭部521を有する。頭部521の先端面521aおよび基端面521bは、それぞれ、光軸Lに直交する平坦面である。先端面521aは、圧縮コイルばね540が当接する当接面であり、基端面521bは、送り装置550が当接する当接面である。
【0046】
このような構成のロッドヘッド520は、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の各種樹脂材料で構成されている。PEEKで構成することにより、優れた機械的強度、耐摩擦特性を発揮することができるため、圧縮コイルばね540や送り装置550との接点に用いるのに適した材質となる。ただし、これに限定されず、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成してもよい。これにより、PEEKに比べてロッドヘッド520を安価に製造することができる。
【0047】
ロッドガイド530は、ケーシング200内において、第1回路基板710よりも基端側に設けられている。ロッドガイド530は、第1回路基板710と共に、ネジB1によってシリンダー300の基端面にネジ止めされている。ロッドガイド530は、第1回路基板710に支持された基部531と、基部531から基端側に突出する円錐台形の突出部532と、を有する。
【0048】
基部531は、光軸方向LLを厚さ方向とする板状部分である。基部531の基端面531bは、圧縮コイルばね540が当接する当接面である。基部531には、その外縁部から基端側に突出するフランジ533が設けられている。フランジ533は、圧縮コイルばね540の外周を囲み、ロッドガイド530に対して圧縮コイルばね540を位置決めしている。
【0049】
また、突出部532の頂面と第1回路基板710の先端面との間には、これらを貫通し光軸方向LLに延在する貫通孔Hが形成されている。そして、この貫通孔Hにロッド510が挿通されている。そのため、ロッド510は、光軸方向LLへの移動が許容され、それ以外の方向への移動、特に光軸Lまわりの回転が規制される。これにより、ロッド510の操作性が向上し、レンズアッセンブリー400を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。特に、本実施形態のように突出部532を後方に突出させた構成とすることにより、貫通孔Hを光軸方向LLに長く形成することができる。そのため、上述の効果がより顕著となり、ロッド510の操作性がより向上する。
【0050】
貫通孔Hの内面とロッド510との間には、これらの摺動抵抗を低減するための図示しない潤滑剤が設けられている。そのため、貫通孔Hに対してロッド510をスムーズに動かすことができる。なお、潤滑剤としては、特に限定されないが、本実施形態では、モリブテン系、グラファイト系、フッ素系等の各種固体潤滑剤を用いている。
【0051】
圧縮コイルばね540は、ロッド510の周囲に設けられている。換言すると、ロッド510は、圧縮コイルばね540に挿通されている。また、圧縮コイルばね540は、ロッドガイド530の基部531とロッドヘッド520との間に収縮(圧縮)した状態で配置されている。そのため、圧縮コイルばね540の復元力によって、ロッド510が後方に付勢されている。前述したように、圧縮コイルばね540は、ロッドガイド530によって位置決めされており、その中心軸がロッド510の中心軸J1と一致している。つまり、圧縮コイルばね540は、ロッド510と同軸的に配置されている。そのため、ロッド510に、光軸Lに対して傾斜する方向の力(圧縮コイルばね540の付勢力および送り装置550の押圧力)が加わり難くなる。したがって、ロッド510を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。
【0052】
また、圧縮コイルばね540は、先端側から基端側に向けて径が漸減する円錐コイルばねである。そのため、ロッド510の中心軸J1に向けて力を集中させ易くなる。したがって、当該構成によっても、ロッド510に、光軸Lに対して傾斜する方向の力が加わり難くなる。よって、ロッド510を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。ただし、圧縮コイルばね540としては、特に限定されず、例えば、円筒コイルばね、樽型コイルばね、鼓型コイルばね等を用いてもよい。また、圧縮コイルばね540に替えて、引張コイルばね、板バネ等を付勢部材として用いてもよい。また、引張コイルばねを用いてロッド510を後方へ付勢してもよい。
【0053】
なお、ロッドガイド530の突出部532を円錐台形にしているのは、圧縮コイルばね540の形状に合わせるためである。このように、突出部532および圧縮コイルばね540を共に円錐台形とすることにより、圧縮コイルばね540が収縮する際のこれらの接触を効果的に抑制することができ、ロッド510を光軸方向LLにスムーズに移動させることができる。特に本実施形態では、突出部532のテーパー角は、レンズアッセンブリー400が最も前方に位置する状態(フランジ390に当接した状態)における圧縮コイルばね540のテーパー角と等しい。これにより、上述の効果がより顕著となる。
【0054】
送り装置550は、圧縮コイルばね540の力に抗してロッド510を先端側に向けて押圧する。本実施形態では、送り装置550として、マイクロメーターヘッド550Aを用いている。マイクロメーターヘッド550Aは、公知の構成であり、図4に示すように、押圧子としてのスピンドル551と、スリーブ552と、操作部としてのシンブル553と、ラチェットストップ554と、を有する。マイクロメーターヘッド550Aを用いることにより、離間距離Dをより微細にかつ精度よく調整することができる。なお、本実施形態では、ラチェットストップ554を使用しないため、省略してもよい。
【0055】
マイクロメーターヘッド550Aは、スリーブ552においてケーシング200のアッパーケース220に固定されている。本実施形態では、アッパーケース220に形成された挿通孔221にマイクロメーターヘッド550Aが挿通され、さらにイモネジB3によってケーシング200に対して固定、位置決めされている。
【0056】
マイクロメーターヘッド550Aがケーシング200に固定された状態では、スピンドル551がケーシング200内に位置し、その先端面がロッドヘッド520の基端面521bに当接している。スピンドル551の先端面は、球面形状を有している。そのため、例えば、平坦面で構成されている場合と比べて、スピンドル551およびロッドヘッド520の摩耗や、マイクロメーターヘッド550Aの傾きによる誤差を抑えることができる。一方で、シンブル553およびラチェットストップ554は、ケーシング200外に突出し、露出している。そして、ケーシング200外に突出した部分は、低背部202の上方に位置している。
【0057】
シンブル553を順回転させるとスピンドル551が前進し、スピンドル551に押されたロッド510が圧縮コイルばね540の付勢力に抗して先端側へ移動し、ロッド510に押されたレンズアッセンブリー400が先端側へ移動する。これにより、レンズアッセンブリー400と撮像素子600との離間距離Dが大きくなる。反対に、シンブル553を逆回転させるとスピンドル551が後退し、圧縮コイルばね540の付勢力によってロッド510が基端側へ移動し、ロッド510に引っ張られたレンズアッセンブリー400が基端側へ移動する。これにより、レンズアッセンブリー400と撮像素子600との離間距離Dが小さくなる。このようなマイクロメーターヘッド550Aの操作によりカメラ100のフォーカス調整(ピント合わせ)が可能となる。そのため、レンズユニット420を交換することなく、カメラ100の撮影距離および分解能(物理的解像度)を変更することができる。
【0058】
このように、マイクロメーターヘッド550Aによれば、シンブル553を回転させるだけで離間距離Dを変更することができるため、使用者の操作による過度な応力がカメラ100に加わり難い。そのため、カメラ100を構成する各部品の破損が抑制される。また、マイクロメーターヘッド550Aにはスピンドル551の繰り出し量を表示する図示しない目盛が設けられているため、当該目盛から離間距離Dを読み取ることも可能である。
【0059】
なお、フォーカス調整の方法としては、特に限定されない。例えば、カメラ100で撮像した画像をモニター等に表示し、操作者が当該画像を目視しながらマイクロメーターヘッド550Aを操作することによりフォーカス調整(ピント合わせ)を行ってもよい。また、物理的解像度が最も高くなるようにフォーカス調整(ピント合わせ)を自動で行うソフトウェアを用いてもよい。
【0060】
スピンドル551の移動軸すなわちスピンドル551の中心軸J2は、後方が上側に位置するように、光軸L(=中心軸J1)に対して傾斜している。このように、中心軸J2を光軸Lに対して傾斜させることにより、マイクロメーターヘッド550Aとケーシング200との干渉を防ぎ、マイクロメーターヘッド550Aを配置し易くなる。また、シンブル553の周囲にスペースを確保し易くなり、シンブル553を操作し易くなる。また、中心軸J2が光軸Lと平行な場合と比べて、シンブル553の回転量に対するレンズアッセンブリー400の変位量を小さくすることができる。そのため、離間距離Dをより微細に調整することができる。
【0061】
なお、中心軸J2を光軸Lに対して傾斜させることにより、マイクロメーターヘッド550Aに表示されるシンブル553の送り量とレンズアッセンブリー400の実際の変位量との間に誤差が生じるが、前述したように、フォーカス調整(ピント合わせ)の際にマイクロメーターヘッド550Aの表示を使用しないため特段の問題とならない。光軸Lに対する中心軸J2の傾斜角θとしては、特に限定されないが、例えば、5°~10°程度とすることが好ましく、7°~9°程度とすることがより好ましい。これにより、マイクロメーターヘッド550Aのケーシング200から突出している部分(シンブル553およびラチェットストップ554)がケーシング200の上方へ過度に突出するのを抑制しつつ、上述した効果を十分に発揮することができる。
【0062】
以上、移動機構500について説明した。このような移動機構500によれば、レンズアッセンブリー400に対して、その後方側から光軸方向LLの力Fを加えることにより、シリンダー300内でレンズアッセンブリー400を光軸方向LLに移動させる。そのため、レンズアッセンブリー400に光軸Lに対して傾斜した力が加わり難くなり、レンズアッセンブリー400が光軸Lに対して傾き難くなる。したがって、安定した撮像特性を発揮することができるカメラ100となる。
【0063】
特に、移動機構500は、レンズアッセンブリー400の後方に位置し、レンズアッセンブリー400の基端部に接続されたロッド510と、ロッド510を光軸方向LLの前方側に送り出す送り装置550と、ロッド510を光軸方向LLの後方側に付勢する付勢部材としての圧縮コイルばね540と、を有する。このようなパーツを組み合わせることにより、移動機構500の構成が簡単となる。
【0064】
ただし、送り装置550の構成としては、ロッド510を前方側に送り出すことができれば、特に限定されない。例えば、図6に示すように、ケーシング200に固定された送りねじガイド557と、送りねじガイド557に螺号し、先端がロッドヘッド520に当接する送りねじシャフト558と、送りねじシャフト558を後方に付勢し、送りねじシャフト558の回転を規制する圧縮コイルばね559と、を有する構成であってもよい。このような構成では、圧縮コイルばね559の付勢力に抗して送りねじシャフト558を順回転させることにより、ロッド510を前方へ移動させることができる。反対に、送りねじシャフト558を逆回転させることにより、ロッド510を後方へ移動させることができる。
【0065】
<レンズカバーアッセンブリー900>
次に、図7図11を参照して、本発明の好適な実施形態に係るレンズカバーアッセンブリー900について説明する。図7は、本発明の好適な実施形態に係るレンズカバーアッセンブリーの斜視図である。図8は、図7に示すレンズカバーアッセンブリーの分解斜視図である。図9は、図7に示すレンズカバーアッセンブリーの別の角度からの分解斜視図である。図10は、図7に示すレンズカバーアッセンブリーの断面図、キャップの係合部および固定部材の爪部の周辺領域の拡大図、およびレンズカバーと固定部材の突起の周辺領域の拡大図である。図11は、図7に示すレンズカバーアッセンブリーをシリンダーの先端部に取り付けた状態のレンズカバーアッセンブリーおよびシリンダーの一部断面図、キャップの係合部および固定部材の爪部の周辺領域の拡大図、およびレンズカバーと固定部材の突起の周辺領域の拡大図である。
【0066】
図7に示すレンズカバーアッセンブリー900は、レンズアッセンブリー400を内部において保持するシリンダー300の先端部に取り付けられ、シリンダー300の先端側開口300Aからシリンダー300内部への塵やゴミ等が浸入することを防止する防塵機能を提供するために用いられる。図8および図9に示されているように、レンズカバーアッセンブリー900は、リング状のキャップ910と、キャップ910内部に保持されるレンズカバー920と、キャップ910内部においてレンズカバー920を固定するためにキャップ910に取り付けられるリング状の固定部材(リテイナー)930と、を含む。
【0067】
キャップ910は、レンズカバーアッセンブリー900の先端側に位置し、その内部においてレンズカバー920を保持する部材である。キャップ910は、典型的には、アルミニウム等の金属材料または樹脂材料等の硬質材料により構成することができるが、キャップ910の軽量化および低コスト化の観点からは、樹脂材料によりキャップ910を構成することが好ましい。キャップ910は、リング状の本体部911と、本体部911から基端側(第1の方向)に延伸するリング状の壁部912と、壁部912の内周面上に形成され、レンズカバー920を収納するための受け部913と、壁部912の外周面から外側に突出する係合部914と、を備えている。
【0068】
本体部911は、先端面911aと、先端面911aと対向する基端面911bとを有するリング状の板状部分である。本体部911は、開口915と、自身の外周面上に形成された雄ネジ構造916と、先端面911a上に形成された一対の凹部917と、を有している。開口915は、本体部911と同心の円形形状を有している。開口915は、本体部911の先端面911aから基端面911bに向かって径が漸減するテーパー形状を有している。
【0069】
本体部911の外周面上に形成された雄ネジ構造916は、シリンダー300の先端側開口300Aの内周面上に形成された雌ネジ構造380と螺合するよう構成されている。本体部911を回転させ、本体部911の雄ネジ構造916とシリンダー300の雌ネジ構造380とを螺合させることにより、レンズカバーアッセンブリー900をシリンダー300の先端部に取り付けることができる。一対の凹部917は、本体部911の中心点を対象中心として点対称となるように、先端面911a上に径方向に延伸して形成されている。マイナスドライバー等の工具の先端部を一対の凹部917と係合させ、工具を回転させることにより、本体部911を回転させることができる。前述したように、本体部911の外周面上には、シリンダー300の先端側開口300Aの内周面上に形成された雌ネジ構造380と螺合する雄ネジ構造916が形成されているので、工具を用いて本体部911を回転することにより、レンズカバーアッセンブリー900のシリンダー300の先端部への脱着が可能となる。
【0070】
図9に示されているように、壁部912は、本体部911の基端面911bから基端側に直線状に延伸するリング状部分である。壁部912は、本体部911の基端面911bにおいて開口915を囲むように形成されている。また、壁部912は、本体部911の外径よりも小さい外径を有する。受け部913は、壁部912の内周面上に形成された凹部であり、その内部においてレンズカバー920を収納する。
【0071】
受け部913は、レンズカバー920の形状に応じた形状を有するよう、壁部912の内周面上に形成された凹部である。受け部913は、レンズカバー920の外周部を載置するための底部9131と、底部9131上に載置されたレンズカバー920を外側から覆う壁部9132とから構成されている。図示の形態では、受け部913は、レンズカバー920の形状に応じた円形形状を有している。また、キャップ910とレンズカバー920の当接部分である、受け部913の底部9131上には、ゴムパッキン等の防水機能を有する封止部材が設けられていてもよい。このような封止部材を、受け部913の底部9131上に設けることにより、レンズカバーアッセンブリー900の先端側から、基端側への水の侵入を防止する防水機能を提供することができる。
【0072】
係合部914は、壁部912の外周面の基端側部分から外側に突出するリング状部分である。図10中のキャップ910の係合部914の周辺領域の拡大図に示されているように、係合部914は、壁部912から遠ざかるにしたがって幅が漸減する台形の断面形状を有しており、係合部914の先端側面および基端側面は、斜面となっている。図9に戻り、係合部914は、壁部912の外周面の基端側部分を完全に取り囲むように形成されており、後述する固定部材930の複数の爪部933と係合する。また、係合部914の外径は、本体部911の外径よりも小さい。そのため、係合部914の先端部は、キャップ910を基端側から平面視で見たときに、本体部911の内側に位置している。
【0073】
レンズカバー920は、ガラスやアクリル等の透明樹脂を含む透明材料により構成されたディスク状部材である。レンズカバー920は、キャップ910の受け部913内に収納される。レンズカバー920の外周部が受け部913の底部9131上に載置され、レンズカバー920の外周部が受け部913の壁部9132によって取り囲まれる。
【0074】
固定部材930は、レンズカバー920をキャップ910の受け部913内において固定するために、キャップ910に取り付けられる部材である。固定部材930は、典型的には、アルミニウム等の金属材料または樹脂材料等の硬質材料により構成することができるが、固定部材930の軽量化および低コスト化の観点からは、樹脂材料により固定部材930を構成することが好ましい。図8に示されているように、固定部材930は、リング状の本体部931と、本体部931の外縁から先端側(第2の方向)に延伸する壁部932と、壁部932の内周面から内側に突出する複数の爪部933と、を備えている。
【0075】
本体部931は、先端面931aと、先端面931aと対向する基端面931bとを有するリング状部分である。また、固定部材930の本体部931の外径は、キャップ910の本体部911の外径と略等しい。本体部931は、開口934と、本体部931の内縁から先端側に突出する複数の突起935と、複数の突起935のそれぞれの両側に形成された切り欠き部936と、を有している。開口934は、本体部931と同心の円形形状を有している。また、固定部材930の開口934の径は、キャップ910の本体部911の開口915の基端部分の径と略等しい。さらに、固定部材930の開口934の径は、本体部911の厚さ方向に沿って一定である。
【0076】
複数の突起935は、開口934を規定する本体部911の内縁から先端側に突出するよう形成されている。また、複数の突起935は、本体部911の内縁において等角度間隔に形成されている。レンズカバーアッセンブリー900を組み立てた状態において、複数の突起935は、キャップ910の受け部913の底部9131上に載置されているレンズカバー920の外周部と対向する。複数の突起935の数は3つ以上であれば特に限定されない。図示の形態では、3つの突起935が、等角度間隔(120°間隔)で、本体部911の内縁から先端側に突出するように形成されている。複数の突起935は、レンズカバーアッセンブリー900をシリンダー300の先端部に取り付けた際に、キャップ910の受け部913内に収納されているレンズカバー920の外周部と接触し、押圧することにより、キャップ910の受け部913内においてレンズカバー920を固定する。
【0077】
切り欠き部936は、複数の突起935のそれぞれの両側に、本体部931の径方向に延伸するよう形成されている。複数の突起935のそれぞれの両側に形成された切り欠き部936により、本体部931と突起935とを接続するアーム部937が規定される。後述するように、レンズカバーアッセンブリー900がシリンダー300の先端部に取り付けられた際、複数の突起935はレンズカバー920の外周部と接触する。アーム部937は、自身の弾性により、複数の突起935からレンズカバー920に印加される押圧力を調整する機能を有している。
【0078】
壁部932は、本体部931の先端面931aの外縁から先端側(第2の方向)に直線状に延伸するリング状部分である。壁部932は、複数の壁部パーツ9321と、複数の壁部パーツ9321の間に形成された切り欠き9322と、を有している。複数の壁部パーツ9321は、本体部931の先端面931aの外縁から、等角度間隔で先端側に直線状に延伸するよう形成されている。複数の壁部パーツ9321の数は、3つ以上であれば、特に限定されないが、図示の形態では、3つの壁部パーツ9321が、等角度間隔(120°間隔)で本体部931の先端面931aの外縁から先端側に直線状に延伸するよう形成されている。固定部材930の複数の壁部パーツ9321のそれぞれの高さは、キャップ910の壁部912の高さと略等しい。また、複数の壁部パーツ9321のそれぞれの厚さは、固定部材930をキャップ910に取り付けた際に、固定部材930の複数の壁部パーツ9321が、キャップ910の壁部912の基端面に接触しないよう、調整されている。このような構成により、固定部材930の複数の壁部パーツ9321が、キャップ910の壁部912の基端面と干渉せず、固定部材930をキャップ910に取り付けることが可能となる。
【0079】
複数の切り欠き9322は、複数の壁部パーツ9321の間に形成されている。図7に示されているように、固定部材930をキャップ910に取り付けた際、切り欠き9322によって、キャップ910の本体部911の基端面911bと固定部材930の本体部931の先端面931aとの間に間隙が形成される。この間隙内に、マイナスドライバー等の工具の先端を差し込み、キャップ910と固定部材930とが離間するように力を加えることにより、固定部材930をキャップ910から取り外すことが可能となる。複数の切り欠き9322のそれぞれの幅は、マイナスドライバー等の工具の先端を差し込むことができれば、特に限定されない。
【0080】
図8に戻り、複数の爪部933は、複数の壁部パーツ9321の内周面の先端側部分から内側に向かって突出する板状部分である。また、図10中のキャップ910の係合部914の周辺領域の拡大図に示されているように、複数の爪部933のそれぞれの先端部の内側角部は切り取られており、複数の爪部933のそれぞれの先端部に傾斜面が形成されている。複数の爪部933は、前述したキャップ910の壁部912の外周面上に形成された係合部914と係合し、固定部材930をキャップ910に取り付けるために用いられる。
【0081】
具体的には、以下のような手順によって、固定部材930がキャップ910に取り付けられる。最初に、キャップ910の受け部913内にレンズカバー920を載置した状態において、基端側から固定部材930がキャップ910に押し付けられる。この際、固定部材930の複数の爪部933の先端部の傾斜面がキャップ910の係合部914の基端側面に接触する。この際、固定部材930の複数の爪部933は、弾性変形しつつ、係合部914の基端側面上をスライドする。固定部材930の複数の爪部933がキャップ910の係合部914を乗り越えると、固定部材930の複数の爪部933が弾性復元し、キャップ910の係合部914の先端側面と係合する。固定部材930の複数の爪部933とキャップ910の係合部914とのこのような係合により、固定部材930がキャップ910に取り付けられる。このような材料の弾性を利用し、受け手側の係合部に爪部を係合させる機械的接合法は、「スナップフィット」と呼ばれる。スナップフィットは、接着剤やネジ等の固定具も不要、かつ、取り外し可能であるので、簡易かつ安価な機械的接合法として知られている。
【0082】
このように、本発明においては、固定部材930のキャップ910に対する取り付けは、キャップ910の係合部914と固定部材930の複数の爪部933とのスナップフィットによって実現される。そのため、図1および2を参照して、背景技術の欄において詳述したような、固定部材1530に形成された雄ネジ構造1532とキャップ1520に形成された雌ネジ構造1523との螺合によって固定部材1530がキャップ1520に取り付けられる従来技術と異なり、本発明のレンズカバーアッセンブリー900においては、固定部材930を取り付けるための雌ネジ構造を、キャップ910の内周面上に形成する必要がない。そのため、従来技術と比較して、キャップ910の厚さを低減させることができ、結果として、レンズカバーアッセンブリー900を薄型化することができる。
【0083】
図10は、レンズカバーアッセンブリー900の断面図、キャップ910の係合部914および固定部材930の爪部933の周辺領域の拡大図、およびレンズカバー920と固定部材930の突起935の周辺領域の拡大図を示している。図10に示されているように、レンズカバーアッセンブリー900が組み立てられた状態において、キャップ910の係合部914と固定部材930の複数の爪部933とが係合しているが、キャップ910の本体部911の基端面911bと固定部材930の壁部932の先端部との間には間隙が存在している。したがって、図10に示されているレンズカバーアッセンブリー900が組み立てられ、シリンダー300の先端部に取り付けられる前の状態において、固定部材930はキャップ910に対して回転可能に取り付けられている。前述したように、キャップ910の係合部914は、キャップ910の壁部912の外周面の基端側部分を完全に取り囲むように形成されているため、固定部材930をキャップ910に対して回転させたとしても、キャップ910の係合部914と固定部材930の複数の爪部933の係合は解除されず、固定部材930がキャップ910から離脱しない。
【0084】
一方、前述したように、固定部材930のキャップ910に対する取り付けは、キャップ910の係合部914と固定部材930の複数の爪部933とのスナップフィットによって実現されている。そのため、キャップ910の本体部911の基端面911bと固定部材930の本体部931の先端面931aとの間に形成された間隙(図7参照)に、マイナスドライバー等の工具の先端を差し込み、キャップ910と固定部材930とが離間するように力を加え、固定部材930の複数の爪部933を弾性変形させることにより、キャップ910の係合部914と固定部材930の複数の爪部933の係合を解除し、固定部材930をキャップ910から取り外すことができる。そのため、レンズカバー920が傷ついたり、レンズカバー920に汚れ等が付着した場合、固定部材930を取り外し、汚れ等が付着したレンズカバー920を洗浄したり、傷ついたレンズカバー920を新しいレンズカバーと交換する等の目的で、容易に固定部材930をキャップ910から取り外すことができる。
【0085】
さらに、図10のレンズカバー920と固定部材930の突起935の周辺領域の拡大図に示されているように、レンズカバーアッセンブリー900が組み立てられ、シリンダー300の先端部に取り付けられる前の状態において、レンズカバー920と固定部材930の複数の突起935との間には間隙が存在している。そのため、レンズカバーアッセンブリー900が組み立てられ、シリンダー300の先端部に取り付けられる前の状態において、固定部材930の複数の突起935は、キャップ910の受け部913の底部9131上に載置されたレンズカバー920の外周部と間隙を介して対向しており、レンズカバー920の外周部を押圧していない。したがって、この状態において、キャップ910の受け部913内においてレンズカバー920は固定されておらず、レンズカバー920は、キャップ910の受け部913内で回転可能に保持されている。
【0086】
上述したレンズカバーアッセンブリー900は、組み立てられた後、シリンダー300の先端部に取り付けられる。具体的には、以下の手順で、レンズカバーアッセンブリー900がシリンダー300の先端部に取り付けられる。最初に、レンズカバーアッセンブリー900をシリンダー300の先端側開口300A内に挿入する。次に、マイナスドライバー等の工具の先端を、キャップ910の本体部911の先端面911aに形成された一対の凹部917に係合させ、工具を操作し、レンズカバーアッセンブリー900を回転させる。このような操作により、キャップ910の本体部911の外周面上に形成された雄ネジ構造916とシリンダー300の先端側開口300Aの内周面上に形成された雌ネジ構造380とが螺合し、レンズカバーアッセンブリー900がシリンダー300内部にねじ込まれる。レンズカバーアッセンブリー900のシリンダー300内へのねじ込みは、レンズカバーアッセンブリー900の固定部材930の基端面931bが、シリンダー300の内周面上に形成されたフランジ390に当接することにより終了する。なお、シリンダー300のフランジ390と固定部材930との当接部分である、固定部材930の本体部931の基端面931bまたはフランジ390の先端面上には、ゴムパッキン等の防水機能を有する封止部材が設けられていてもよい。このような封止部材を、固定部材930の本体部931の基端面931bまたはフランジ390の先端面上に設けることにより、固定部材930の先端側から基端側への水の侵入を防止する防水機能を提供することができる。
【0087】
図11は、レンズカバーアッセンブリー900をシリンダー300の先端部に取り付けた状態の断面図、キャップ910の係合部914および固定部材930の爪部933の周辺領域の拡大図、およびレンズカバー920と固定部材930の突起935の周辺領域の拡大図を示している。図11に示されているように、レンズカバーアッセンブリー900の固定部材930の基端面931bが、シリンダー300の内周面上に形成されたフランジ390に当接すると、固定部材930が先端側に押し出され、レンズカバー920に向かって変位する。この結果、固定部材930の壁部932の先端部が、キャップ910の本体部911の基端面911bに接触する。このような構成により、固定部材930がキャップ910に対して押し付けられるため、固定部材930は、キャップ910に対して回転不能となる。
【0088】
さらに、固定部材930が先端側に押し出され、レンズカバー920に向かって変位すると、固定部材930の複数の突起935がレンズカバー920の外周部と接触する。この結果、固定部材930の複数の突起935がレンズカバー920の外周部を押圧し、レンズカバー920の外周部が、キャップ910の受け部913の底部9131と固定部材930の複数の突起935との間で挟持され、これにより、レンズカバー920がキャップ910の受け部913内で固定される。このように、レンズカバー920の外周部が、キャップ910の受け部913の底部9131と固定部材930の複数の突起935との間で挟持されるため、固定部材930の複数の突起935からレンズカバー920に印加される押圧力によって生じるレンズカバー920の変形を最小限に抑えることができる。このため、レンズカバー920を強度の低いアクリル等の透明樹脂で形成した場合であっても、キャップ910の開口915と固定部材930の開口934との間に位置し、光を通過させるレンズカバー920の露出エリアが、固定部材930の複数の突起935から印加される押圧力によって変形することを抑制することができる。
【0089】
このように、本発明のレンズカバーアッセンブリー900においては、スナップフィットによって固定部材930をキャップ910に取り付け可能となっているため、従来技術と異なり、固定部材930を取り付けるための雌ネジ構造を、キャップ910の内周面上に形成する必要がない。そのため、従来技術と比較して、キャップ910の厚さを低減させることができ、結果として、レンズカバーアッセンブリー900を薄型化することができる。
【0090】
以上、本発明のレンズカバーアッセンブリーおよびカメラを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
100…カメラ 200…ケーシング 201…高背部 202…低背部 210…ベースシャーシ 220…アッパーケース 221…挿通孔 300…シリンダー 300A…先端側開口 310…小外径部 311…雄ネジ構造 320…中外径部 321…Dカット面 330…大外径部 331…Dカット面 340…段差面 350…段差面 380…雌ネジ構造 390…フランジ 400…レンズアッセンブリー 410…スリーブ 410A…先端側開口 411…フランジ 412…フランジ 413…レンズユニット挿入部 414…段差面 415…ネジ穴 420…レンズユニット 430…鏡筒 440…レンズ群 450…絞り 500…移動機構 510…ロッド 520…ロッドヘッド 521…頭部 521a…先端面 521b…基端面 530…ロッドガイド 531…基部 531b…基端面 532…突出部 533…フランジ 540…圧縮コイルばね 550…送り装置 550A…マイクロメーターヘッド 551…スピンドル 552…スリーブ 553…シンブル 554…ラチェットストップ 557…送りねじガイド 558…送りねじシャフト 559…圧縮コイルばね 600…撮像素子 710…第1回路基板 720…第2回路基板 800…端子 900…レンズカバーアッセンブリー 910…キャップ 911…本体部 911a…先端面 911b…基端面 912…壁部 913…受け部 9131…底部 9132…壁部 914…係合部 915…開口 916…雄ネジ構造 917…凹部 920…レンズカバー 930…固定部材 931…本体部 931a…先端面 931b…基端面 932…壁部 9321…壁部パーツ 9322…切り欠き 933…爪部 934…開口 935…突起 936…切り欠き部 937…アーム部 1500…レンズカバーアッセンブリー 1510…レンズカバー 1520…キャップ 1521…本体部 1522…受け部 1523…雌ネジ構造 1524…雄ネジ構造 1530…固定部材 1531…本体部 1532…雄ネジ構造 B1…ネジ B3…イモネジ D…離間距離 F…力 H…貫通孔 J1…中心軸 J2…中心軸 L…光軸 LL…光軸方向 θ…傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11