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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130911
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B25J19/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029561
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 潤悟
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐介
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS12
3C707CY03
3C707CY05
3C707CY06
3C707CY12
(57)【要約】
【課題】ロアアームの連通口からロアアームの中空部に異物が進入することがあり、このような異物が中空部内に堆積し過ぎると、ロボットの動作に不具合いが生じることが懸念される。
【解決手段】ロアアーム30には、長手方向Lに沿って形成された中空部34と、中空部34に連通した連通口38Aと、が形成されており、中空部34を形成する内壁面34a、34bのうち下端面34dが露出するように、連通口38Aよりも下方において、中空部34に連通する開口部39が形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に載置され、前記基台に対して、第1軸の周りに旋回する旋回フレームと、
前記旋回フレームに対して、第2軸の周りに回動自在に枢着されたロアアームを有した多関節アームと、
を有した産業用ロボットであって、
前記ロアアームには、長手方向に沿って形成された中空部と、前記中空部に連通した連通口と、が形成されており、
前記中空部を形成する内壁面のうち下端面が露出するように、前記連通口よりも下方において、前記中空部に連通する開口部が形成されていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記開口部の開口縁のうち下端縁は、前記下端面に一致するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記中空部を形成する内壁面のうち、前記開口部と対向する位置には、前記下端面と連続し、前記開口部に向かって傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記連通口は、前記ロアアームの長手方向に沿った側壁に形成された肉抜き部であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記開口部の上端縁と下端縁とをわたすように、前記開口部から、前記開口部と対向する前記中空部の内壁面まで延在した補強リブが形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節アームを有した産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の産業用ロボットとして、特許文献1には、基台に対して、第1軸周りに旋回する旋回フレームと、旋回フレームに対して、第2軸周りに回動自在に枢着された多関節アームを有した産業用ロボット(ロボット)が提案されている。多関節アームは、旋回フレームに対して第2軸周りに回動自在に取付けられたロアアームと、ロアアームに回動自在に取付けられたアッパアームと、を有している。
【0003】
さらに、産業用ロボットは、多関節アームの先端にエンドエフェクタを備えており、エンドエフェクタには、流体を噴射する清掃機構がさらに設けられている。産業用ロボットは、清掃機構の流体が噴出する噴出口を、清掃対象部位に向くように、制御部で多関節アームを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-84657公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロボットの制御の応答性、ロボットの軽量化を図るため、ロアアームに中空部を設けることがあり、ロアアームの中空部とロボットの外部とを連通させる連通口を、ロアアームに設けることがある。しかしながら、ロアアームの連通口からロアアームの中空部に異物が進入することがあり、このような異物が中空部内に堆積し過ぎると、ロボットの動作に不具合いが生じることが懸念される。
【0006】
そこで、特許文献1に示す清掃機構を、ロボットに搭載したとしても、清掃機構は、エンドエフェクタに取付けられているため、ロアアームの内部まで、流体を流して清掃することは容易にできない。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ロアアームの連通口からロアアームの中空部に異物が進入したとしても、中空部から、この異物を簡単に取り除くことができる産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を鑑みて、本発明に係る産業用ロボットは、基台と、前記基台に載置され、前記基台に対して、第1軸のまわりに旋回する旋回フレームと、前記旋回フレームに対して、第2軸の周りに回動自在に枢着されたロアアームを有した多関節アームと、を有した産業用ロボットであって、前記ロアアームには、長手方向に沿って形成された中空部と、前記中空部に連通した連通口と、が形成されており、前記中空部を形成する内壁面のうち、下端面が露出するように、前記連通口よりも下方において、前記中空部に連通する開口部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、ロアアームには、長手方向に沿った中空部が形成されており、この中空部に連通した連通口から、中空部内に異物が進入し、連通口から進入した異物は、中空部内において自重で落下し、中空部を形成する内壁面のうち、下端面に到達し、堆積する。本発明では、中空部を形成する下端面が露出するように、連通口よりも下方において、中空部に連通する開口部を、ロアアームに形成するので、下端面から堆積した異物を簡単に取り除くことができる。
【0010】
このような開口部は、中空部に形成された下端面が露出していれば、下端面に堆積したごみを、保持できるような位置に形成されていてもよい。しかしながら、より好ましい態様としては、前記開口部の開口縁のうち下端縁は、前記下端面に一致するように形成されている。
【0011】
この態様によれば開口部の開口縁のうち下端縁が、中空部の下端面に一致しているので、中空部の下端面に堆積した異物は、開口部の下端縁を通過し易い。これにより、たとえば、旋回アームに対してロアアームが回動した際の振動等により、下端面から開口部を介して、異物を排出することができる。また、中空部を形成する下端面に、異物が堆積しても、刷毛、吹き付けた流体等により、下端面から堆積した異物を簡単に排出することができる。
【0012】
ここで、中空部を形成する内壁面のうち、開口部と対向する位置には、鉛直方向に沿った壁面が形成されていてもよいが、より好ましい態様としては、前記中空部を形成する内壁面のうち、前記開口部と対向する位置には、前記下端面と連続し、前記開口部に向かって傾斜した傾斜面が形成されている。
【0013】
この態様によれば、開口部に対向する位置には、中空部を形成する下端面に連続し、前記開口面に向かって傾斜した傾斜面が形成されているので、中空部に進入した異物は、傾斜面を滑り落ちるように下端面に向かい、開口部から放出され易くなる。これにより、中空部を形成する下端面に異物が堆積することを抑えることができる。
【0014】
より好ましい態様としては、前記ロアアームは、減速機を介して前記旋回フレームに連結しており、前記減速機のハウジングには、前記第2軸を軸心とした周面が形成されており、前記開口部よりも下側には、前記周面が形成されている。
【0015】
この態様によれば、中空部に進入した異物は、開口部から放出された際に、開口部から下方に落下する。開口部よりも下側には、減速機のハウジングの周面が形成されているため、落下した異物は、旋回フレームの旋回または減速機の振動等により、ハウジングの周面を滑って落下させることができる。これにより、旋回フレームまたはその近傍のある程度決まった位置に、異物を堆積させることができるため、落下した異物を清掃し易い。
【0016】
ここで、中空部に連通することができるのであれば、連通口の位置は、特に限定されるものではないが、より好ましい態様としては、前記連通口は、前記ロアアームの長手方向に沿った側壁に形成された肉抜き部であることが好ましい。
【0017】
このような肉抜き部を設けることにより、エンドエフェクタに取付けられた溶接装置からのスパッタなどの異物が、ロアアームの側壁に付着しにくく、肉抜き部に入り易い。この結果、肉抜き部から進入したスパッタなどの異物は、ロアアームの中空部を落下し、落下した異物を、中空部を形成する下端面から開口部を介して、排出することができる。
【0018】
ここで、ロアアームに形成された開口部に、補強リブを設けてもよいが、より好ましい態様としては、前記開口部の上端縁と下端縁とをわたすように、前記開口部から、前記開口部と対向する前記中空部の内壁面まで延在した補強リブが形成されている。
【0019】
この態様によれば、補強リブは、開口部の上端縁と下端縁とをわたすように、前記開口部から、前記開口部と対向する前記中空部の内壁面まで延在しているので、ロアアームの基端側の剛性を高めることができるため、ロアアームの撓み等を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ロアアームの連通口からロアアームの中空部に異物が進入したとしても、中空部から、この異物を簡単に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る産業用ロボットを正面側から視た斜視図である。
図2図1に示す産業用ロボットを他の方向から視た斜視図である。
図3図1に示す産業用ロボットを背面側から視た斜視図である。
図4図1に示す産業用ロボットのロアアームからカバーを外した状態の要部斜視図である。
図5図1に示す産業用ロボットの模式的断面図である。
図6図2に示す産業用ロボットのロアアームの要部の拡大斜視図である。
図7図6に示す産業用ロボットのロアアームの要部の断面図である。
図8図7に示す産業用ロボットのロアアームの変形例に係る要部の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態に係る産業用ロボット1(以下、ロボット1という)を図1図8を参照しながら詳述する。
【0023】
図1および図2に示すように、ロボット1は、その先端に把持装置、溶接装置などのエンドエフェクタが取付けられるものである。
【0024】
1.ロボット1の全体構造
本実施形態に係るロボット1は、マニュピュレータである。なお、ロボット1は、各モータ等を制御する制御装置(図示せず)を備えており、制御装置により、ロボット1の動作が制御される。
【0025】
ロボット1は、基台10と旋回フレーム20とを備えており、基台10は、設置面に固定されている。旋回フレーム20は、減速機を介して基台10に取付けられており、設置面に対して直交する方向に沿った第1軸J1の周りに旋回する。旋回フレーム20は、第1モータ61の出力軸(図示せず)に接続されている。これにより、旋回フレーム20を基台10に対して第1軸J1の周りに旋回させることができる。
【0026】
ロボット1は、多関節アーム1Aをさらに備えている。多関節アーム1Aは、旋回フレーム20に基端が枢着されたロアアーム30と、ロアアーム30の先端に枢着されるアッパアーム40と、アッパアーム40の先端に枢着された支持アーム50と、有している。これらのアームの接続部分が、多関節アーム1Aの関節部分となる。これらのアームは、金属製であり、たとえば、鋳鉄、またはアルニウム合金鋳物等の鋳物からなる。
【0027】
ロアアーム30は、第1軸J1と直交する方向に沿った第2軸J2に、旋回フレーム20に対して回動自在に枢着されており、第2モータ62の動力により、ロアアーム13は、旋回フレーム20に対して第2軸J2の周りに回動する。アッパアーム40は、第2軸J2と平行となる第3軸J3の周りに、ロアアーム30に対して回動自在に枢着されており、第3モータ63の動力により、アッパアーム40は、ロアアーム30に対して第3軸J3の周りに回動する。
【0028】
アッパアーム40は、ロアアーム30の先端に枢着される関節部41と、アッパアーム40の長手方向に沿った第4軸J4の周りに回動自在となるように、関節部41に取付けられたアーム本体42と、を備えている。具体的は、ロアアーム30と関節部41とが、上述した第3モータ63を介して、回動自在に枢着されている。アーム本体42は、第4モータ64の動力により、関節部41に対して第4軸J4の周りに回動する。
【0029】
さらに、アッパアーム40の先端は、ロボット1の手首部に相当する部分であり、エンドエフェクタ(図示せず)を支持する支持アーム50が取付けられている。本実施形態では、アッパアーム40には、支持アーム50をアーム本体42に対して枢動させる第5モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0030】
第5モータは、アッパアーム40に内蔵された動力伝達ベルト等を介して、支持アーム50に接続されている。これにより、第5モータの動力が、アッパアーム40に内蔵された動力伝達ベルト(図示せず)に伝達されることで、支持アーム50は、アーム本体42に対して第5軸J5で枢動(揺動)する。さらに、アッパアーム40には、支持アーム50の軸心(具体的には第6軸J6)の周りに、支持アーム50の先端部(本体部)を回動させる第6モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0031】
ロボット1は、上述した第1~第6モータ等に電力を供給する動力用のケーブル70A(第1ケーブル)と、ロボット1に取付けられたエンドエフェクタ(たとえば、溶接装置)等に電力を供給するアプリケーション用のケーブル(第2ケーブル)70Bと、を備えている。ケーブル70A、70Bは、基台10からロアアーム30の先端に向かって配設されている。
【0032】
2.旋回フレーム20の細部の構造について
図1および図2等で示すように、本実施形態に係る旋回フレーム20は、台座部21と、立ち上がり部22と、連結部23とを備えている。台座部21は、減速機(図示せず)等を介して基台10に取付けらており、第1モータ61を介して、基台10に対して回動する部分である。
【0033】
立ち上がり部22は、台座部21からロアアーム30に向かって立ち上がった部分であり、本実施形態では、ロボット1の前方側に傾斜するように、立ち上がっている。これにより、図2および図3に示すように、立ち上がり部22よりも、ロボット1の後方側(背面側)の台座部21に、ケーブル70A、70Bを中継する中継ボックス29、および第1モータ61を設置するスペースを確保することができる。
【0034】
連結部23は、立ち上がり部22の先端側において、ロアアーム30に連結された部分であり、ロアアーム30は、連結部23に対して、第2軸J2の周りに枢動自在に取付けられている。より具体的には、第2軸J2に沿った立ち上がり部22の一方側において、ロアアーム30が、連結部23に取付けられている。さらに、連結部23には、第2軸J2に沿った立ち上がり部22の他方側において、ロアアーム30を回動させる第2モータ62が、減速機27を介して、取付けられている。
【0035】
本実施形態では、立ち上がり部22には、ケーブル70A、70Bが挿通される貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、連結部23に対してロアアーム30が取付けられた側(立ち上がり部22の一方側)から、連結部23に対して第2モータ62が取付けられた側(立ち上がり部22の他方側)まで、第2軸J2と平行に延在している。貫通孔24には、ケーブル70A、70Bが挿通されている。
【0036】
さらに、図1に示すように、貫通孔24の両端に形成された開口部のうち、立ち上がり部22の他方側に形成された開口部24bに隣接するように、ケーブル70Aが非拘束で挿通されるガイド部材28が設けられている。上述した如く、旋回フレーム20は、鋳鉄等の金属材料からなり、ガイド部材28は、たとえば、ナイロン6等の樹脂材料からなる。
【0037】
3.ロアアーム30の細部の構造について
ロアアーム30には、アーム本体31と、アーム本体31の両端に形成された連結部32、33とが形成されている。連結部32は、ロアアーム30の下端に形成されており、旋回フレーム20の連結部23に回動自在に連結されている。連結部33は、ロアアーム30の上端に形成されており、アッパアーム40に回動自在に連結されている。
【0038】
図4および図5に示すように、アーム本体31には、中空部34が形成されている。本実施形態では、図4に示すように、中空部34は、対向する一対の側壁35A、35Bと、これらの両縁を長手方向に沿って連結する一対の連結壁36、36と、により、形成されている。連結壁36、36は、対向する側壁35Bとは反対側に突出し、ロアアーム30の長手方向Lに沿った側壁35B側には、ケーブル70Aを収容する空間が形成されている。ケーブル70Aは、旋回フレーム20とロアアーム30の外側に向かって湾曲した湾曲部72を有し、さらに、ロアアーム30の長手方向に沿って、結束バンド等の拘束具82、84、85により、ロアアーム30に取付けられた取付け部73を有している。
【0039】
本実施形態では、図1に示すように、このケーブル70Aを収容する空間を塞ぐように、連結壁36、36には、カバー91が取付けられている。さらに、側壁35Bには、連結壁36、36を繋ぐように、補強リブ37が設けられており、補強リブ37には、ケーブル70Aを収容する凹部37aが形成されている。ケーブル70Bは、図1に示すように、カバー91の表面において、結束バンド等の拘束具86、87により、ロアアーム30に拘束されている。
【0040】
さらに、本実施形態では、アーム本体31を形成する壁のうち、対向する側壁35A、35Bには、中空部34に連通する肉抜き部(連通口)38A、38Bが形成されている。具体的には、側壁35Aには、複数の肉抜き部38Aが、ロアアーム30の長手方向Lに沿って、間隔を空けて形成されており、肉抜き部38Aは、ロアアーム30から露出している。側壁35Bにも、複数の肉抜き部38Bが、ロアアーム30の長手方向に沿って、間隔を空けて形成されている。肉抜き部38Bは、カバー91に覆われており、ロアアーム30から露出してない。
【0041】
さらに、側壁35Aの肉抜き部38Aと、側壁35Bの肉抜き部38Aとは、ロアアーム30の長手方向Lに沿ってオフセットした位置に形成されている。即ち、肉抜き部38Aを水平方向から視た際に、肉抜き部38Bは、対向する位置から上下方向にずらした位置に形成されている。これにより、ロアアーム30の強度を確保しつつ、ロアアーム30の軽量化を図ることができる。
【0042】
4.ロアアーム30内の異物を排出する構造について
上述した如く、図4および図5に示すように、ロアアーム30には、長手方向に沿って形成された中空部34と、中空部34に連通した肉抜き部38A、38Bと、が形成されいる。
【0043】
図5および図6に示すように、中空部34を形成する内壁面34f…のうち下端面34dが露出するように、肉抜き部38Aよりも下方において、中空部34に連通する開口部39が形成されている。なお、図5等に示す符号「34f」は、中空部34を形成する内壁面全体を示している。開口部39は、矩形状であり、後述する2つの補強リブ39aにより、3つに分割されている。本実施形態では、開口部39の開口縁39dのうち下端縁39bは、中空部34を形成する下端面34dに一致するように形成されている。すなわち、本実施形態では、開口縁39dと下端面34dとが面一になっている。
【0044】
これに加えて、図7に示すように、中空部34を形成する内壁面34f…のうち、開口部39と対向する位置には、下端面34dと連続し、開口部39に向かって傾斜した傾斜面34eが形成されている。具体的には、肉抜き部38A、38Bが形成された、対向する内壁面34a、34bのうち、一方の内壁面34aには、開口部39が形成され、他方の内壁面34bには、傾斜面34eが形成されている。さらに、図7に示すように、開口部39に隣接した上側に、傾斜面34eに向かって突出した突出面34gを形成してもよい。本実施形態では、傾斜面34eは、凹状の傾斜面であるが、たとえば、平面状または凸状の傾斜面であってもよい。
【0045】
ロアアーム30は、減速機27を介して旋回フレーム20に連結している。減速機27(のハウジング)には、第2軸J2を軸心とした周面27aが形成されており、開口部39よりも下側には、減速機の周面27aが形成されている。より具体的には、開口部39は、連結部32との境界にあるアーム本体31の付け根に形成されている。開口部39を、この位置に設けることにより、連結部32に連結される減速機27の周面27aを、水平方向から視て、開口部39よりも、上側に配置することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、開口部39の上端縁39tと下端縁39bとをわたすように、開口部39から、開口部39と対向する中空部34の内壁面34b(具体的には傾斜面34e)まで延在した補強リブ39aが形成されている。このような補強リブ39aにより、ロアアーム30の基端側の剛性を高めることができるため、たとえ、アーム本体31の付け根に、開口部39を設けたとしても、ロアアーム30の撓み等を低減することができる。
【0047】
本実施形態によれば、ロアアーム30には、長手方向Lに沿った中空部34が形成されており、この中空部34に連通した肉抜き部38Bから、中空部34内に異物が進入する。肉抜き部38Bから進入した異物は、中空部34内において自重で落下し、中空部34を形成する内壁面34a、34bのうち、下端面34dに到達し、堆積する。
【0048】
そこで、本実施形態によれば、図6に示すように、中空部34を形成する下端面34dが露出するように、中空部34に連通する開口部39を、ロアアーム30に形成するので、下端面34dから堆積した異物を簡単に取り除くことができる。
【0049】
特に、本実施形態では、開口部39の下端縁39bが、中空部34の下端面34dに一致しているので、中空部34の下端面34dに堆積した異物は、開口部39の下端縁39bを通過し易い。これにより、たとえば、旋回フレーム20に対してロアアーム30が回動した際の振動等により、下端面34dから開口部39を介して、異物を排出することができる。また、中空部34を形成する下端面34dに、異物が堆積しても、これを刷毛、吹き付けた流体等により、下端面34dから堆積した異物を簡単に排出することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、開口部39に対向した位置に、傾斜面34eを設けることにより、中空部34に進入した異物は、傾斜面34eを滑り落ちるように下端面34cに向かい、開口部39から放出され易くなる。これにより、中空部34を形成する下端面34dに異物が堆積することが抑えることができる。さらに、本実施形態では、開口部39の上側の突出した突出面34gは、傾斜面34eに向かって突出しているので、突出面34gに衝突した異物を傾斜面34eに導くことができる。
【0051】
これに加えて、中空部34に進入した異物は、開口部39から放出された際に、開口部39から下方に落下する。開口部39よりも下側には、減速機27(のハウジング)の周面27aが形成されているため、落下した異物は、旋回フレーム20の旋回時の振動または減速機27の振動等により、減速機27の周面27aを滑って落下させることができる。これにより、旋回フレーム20またはその近傍のある程度決まった位置に、異物を堆積させることができるため、落下した異物を清掃し易い。
【0052】
特に、本実施形態に係るロボット1では、このような肉抜き部38Aを設けることにより、エンドエフェクタ(図示せず)に相当する溶接装置のトーチ(図示せず)からのスパッタなどの異物が、ロアアーム30の側壁35Aに付着し難く、肉抜き部38Aに入り易い。この結果、肉抜き部38Aから進入したスパッタなどの異物は、ロアアーム30の中空部34を落下し、落下した異物を、中空部34を形成する下端面34cから開口部39を介して、排出することができる。
【0053】
ここで、図7に示すように、本実施形態では、中空部34に傾斜面36eを設けたが、図8に示す変形例の如く、開口部39と対向する位置に、鉛直方向に沿った平面34hを形成してもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では、開口部39の開口縁39dのうち下端縁39bは、中空部34を形成する下端面34dに一致するように形成されていた。しかしながら、図8に示す変形例の如く、開口部39の開口縁39dのうち下端縁39bが、中空部34を形成する下端面34dよりも、上端縁39tに向かって突出させてもよい。このように構成することにより、中空部34に、堆積した異物と収容するポケットが形成され、このポケットに収容された異物をまとめて除去してもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0056】
1:ロボット(産業用ロボット)、1A:多関節アーム、10:基台、20:旋回フレーム、30:ロアアーム、38A、38B:肉抜き部(連通口)、34:中空部、34a、34b:内壁面、34c:下端面、34e:傾斜面、39:開口部、39a:補強リブ、39b:下端縁、39d:開口縁、39t:上端縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8