(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130948
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】炭化水素化合物製造システム、炭化水素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20220831BHJP
C07C 9/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029632
(22)【出願日】2021-02-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 CCS研究開発・実証関連事業 CCUS技術に関連する調査委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】圓島 信也
(72)【発明者】
【氏名】入江 健一
(72)【発明者】
【氏名】加茂 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 忠輝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 喜昌
(72)【発明者】
【氏名】堤 淳史
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB44
(57)【要約】
【課題】
炭化水素化合物を製造する製造システムにおいて、原料に由来する環境負荷軽減効果を管理可能な炭化水素化合物製造システムを提供する。
【解決手段】
水素を生成する水素製造装置と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、前記水素製造装置により生成された水素および前記二酸化炭素供給装置から供給された二酸化炭素から炭化水素化合物を生成する炭化水素化合物製造装置と、を備え、前記水素製造装置により生成された水素および前記二酸化炭素供給装置から供給された二酸化炭素の少なくともいずれか一方の環境指標に基づいて、前記炭化水素化合物製造装置により生成された炭化水素化合物の環境負荷レベルを分類することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を生成する水素製造装置と、
二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、
前記水素製造装置により生成された水素および前記二酸化炭素供給装置から供給された二酸化炭素から炭化水素化合物を生成する炭化水素化合物製造装置と、を備え、
前記水素製造装置により生成された水素および前記二酸化炭素供給装置から供給された二酸化炭素の少なくともいずれか一方の環境指標に基づいて、前記炭化水素化合物製造装置により生成された炭化水素化合物の環境負荷レベルを分類することを特徴とする炭化水素化合物製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化水素化合物製造システムであって、
前記水素製造装置により生成される水素の環境指標は、再生可能エネルギー由来の電力を利用して水を電気分解して生成される水素、二酸化炭素の回収および貯蔵プロセスを伴い生成される水素、化石燃料を原料として生成過程で二酸化炭素が大気中に放出される水素の3つに分類されることを特徴とする炭化水素化合物製造システム。
【請求項3】
請求項1に記載の炭化水素化合物製造システムであって、
前記水素製造装置の電力源の情報に基づいて、前記水素製造装置により生成される水素の環境指標を決定することを特徴とする炭化水素化合物製造システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の炭化水素化合物製造システムであって、
前記炭化水素化合物製造装置により生成された炭化水素化合物を貯蔵する貯蔵装置と、
前記水素製造装置により生成される水素の環境指標の経時変化をモニタする制御装置と、を備え、
前記制御装置は、モニタした水素の環境指標の経時変化に基づき、前記貯蔵装置内の炭化水素化合物の成分率を決定することを特徴とする炭化水素化合物製造システム。
【請求項5】
請求項1に記載の炭化水素化合物製造システムであって、
前記二酸化炭素供給装置の二酸化炭素供給源の情報に基づいて、前記二酸化炭素供給装置から供給される二酸化炭素の環境指標を決定することを特徴とする炭化水素化合物製造システム。
【請求項6】
請求項5に記載の炭化水素化合物製造システムであって、
前記二酸化炭素供給装置から供給される二酸化炭素の環境指標は、大気から回収した二酸化炭素、バイオマス燃料の燃焼により発生した二酸化炭素、化石燃料の燃焼により発生した二酸化炭素の3つに分類されることを特徴とする炭化水素化合物製造システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の炭化水素化合物製造システムであって、
前記炭化水素化合物製造装置により生成された炭化水素化合物を貯蔵する貯蔵装置と、
前記二酸化炭素供給装置から供給される二酸化炭素の環境指標の経時変化をモニタする制御装置と、を備え、
前記制御装置は、モニタした二酸化炭素の環境指標の経時変化に基づき、前記貯蔵装置内の炭化水素化合物の成分率を決定することを特徴とする炭化水素化合物製造システム。
【請求項8】
水素と二酸化炭素を原料として炭化水素化合物を生成する炭化水素化合物の製造方法であって、
原料である水素および二酸化炭素の少なくともいずれか一方の環境指標に基づいて、生成された炭化水素化合物の環境負荷レベルを分類することを特徴とする炭化水素化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の炭化水素化合物の製造方法であって、
原料である水素の環境指標は、再生可能エネルギー由来の電力を利用して水を電気分解して生成される水素、二酸化炭素の回収および貯蔵プロセスを伴い生成される水素、化石燃料を原料として生成過程で二酸化炭素が大気中に放出される水素の3つに分類されることを特徴とする炭化水素化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の炭化水素化合物の製造方法であって、
原料である水素の製造過程において使用された電力源の情報に基づいて、前記原料である水素の環境指標を決定することを特徴とする炭化水素化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の炭化水素化合物の製造方法であって、
前記原料である水素の環境指標の経時変化をモニタし、
前記モニタした水素の環境指標の経時変化に基づき、生成された炭化水素化合物を貯蔵する貯蔵装置内の成分率を決定することを特徴とする炭化水素化合物の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の炭化水素化合物の製造方法であって、
原料である二酸化炭素の供給源の情報に基づいて、前記原料である二酸化炭素の環境指標を決定することを特徴とする炭化水素化合物の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の炭化水素化合物の製造方法であって、
前記原料である二酸化炭素の環境指標は、大気から回収した二酸化炭素、バイオマス燃料の燃焼により発生した二酸化炭素、化石燃料の燃焼により発生した二酸化炭素の3つに分類されることを特徴とする炭化水素化合物の製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の炭化水素化合物の製造方法であって、
前記原料である二酸化炭素の環境指標の経時変化をモニタし、
前記モニタした二酸化炭素の環境指標の経時変化に基づき、生成された炭化水素化合物を貯蔵する貯蔵装置内の成分率を決定することを特徴とする炭化水素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール等の炭化水素化合物を製造する製造システム及び製造方法に係り、特に、原料に由来する環境負荷軽減効果を管理可能な炭化水素化合物製造システム及び炭化水素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境負荷軽減対策のひとつとして期待されている水素であるが、その生成の過程で二酸化炭素(CO2)が排出されるケースがある。このため、どのように生成された水素ならば環境負荷が小さく、かつ効率的なのか、どういった水素の生成と利用を推進していくべきなのか、という議論が経済界や産業界で活発化し、生成過程の動力源である電力等に着目し、生成された水素を環境負荷に応じて、区別することが考えられている。
【0003】
例えば、再生可能エネルギー由来の電力を利用して水を電気分解して生成される水素をグリーン水素と称し、CO2回収・貯蔵プロセス(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)の過程を伴い、大気中に二酸化炭素を放出することなく生成される水素は水素生成の観点で見るとCO2は排出していないと見なすことができ、ブルー水素と称し、化石燃料を原料とし、生成過程でCO2が大気中に放出される水素をグレー水素と称しているものがある。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には、「天然ガスなどの低級炭化水素から効率よくメタノールを製造するメタノールの製造方法」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、環境負荷軽減においては、原料及び生成物の由来や製造過程を考慮することが重要である。
【0007】
しかしながら、例えば、カーボンリサイクルメタノールの合成に用いられる原料である水素の由来(化石燃料由来と非化石燃料由来の比率)は、時間的に変化するため、製造されたメタノールの由来(化石燃料由来と非化石燃料由来の比率)が不明確となり、製造されたメタノールの環境負荷軽減効果が不透明である。
【0008】
そのため、メタノール製造に利用された水素の環境負荷に関わる由来を把握することで、製造されたメタノールの環境負荷軽減効果が明確になる。
【0009】
上記特許文献1では、水素の由来は考慮されておらず、また、上述したような環境指標に基づく水素の分類についても何ら触れられていない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、炭化水素化合物を製造する製造システムにおいて、原料に由来する環境負荷軽減効果を管理可能な炭化水素化合物製造システム及びそれを用いた炭化水素化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、水素を生成する水素製造装置と、二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給装置と、前記水素製造装置により生成された水素および前記二酸化炭素供給装置から供給された二酸化炭素から炭化水素化合物を生成する炭化水素化合物製造装置と、を備え、前記水素製造装置により生成された水素および前記二酸化炭素供給装置から供給された二酸化炭素の少なくともいずれか一方の環境指標に基づいて、前記炭化水素化合物製造装置により生成された炭化水素化合物の環境負荷レベルを分類することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、水素と二酸化炭素を原料として炭化水素化合物を生成する炭化水素化合物の製造方法であって、原料である水素および二酸化炭素の少なくともいずれか一方の環境指標に基づいて、生成された炭化水素化合物の環境負荷レベルを分類することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭化水素化合物を製造する製造システムにおいて、原料に由来する環境負荷軽減効果を管理可能な炭化水素化合物製造システム及びそれを用いた炭化水素化合物の製造方法を実現することができる。
【0014】
これにより、製造された炭化水素化合物を環境負荷レベル毎に分類することができる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る炭化水素化合物製造システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例2に係る炭化水素化合物製造システムの概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施例3に係る炭化水素化合物製造システムの概略構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施例4に係る炭化水素化合物製造システムの概略構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例5に係る炭化水素化合物製造システムの概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の実施例5に係る環境指標テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0018】
図1を参照して、本発明の実施例1の炭化水素化合物製造システムとそれを用いた炭化水素化合物の製造方法について説明する。
図1は、本実施例の炭化水素化合物製造システムの概略構成を示す図である。
【0019】
本実施例では、本発明の基本的なコンセプトを説明する。
【0020】
上述したように、カーボンリサイクルメタノールの合成に用いられる水素の由来(化石燃料由来と非化石燃料由来の比率)は時間的に変化するため、製造されたメタノールの由来(化石燃料由来と非化石燃料由来の比率)が不明確になり得る。
【0021】
水素の由来の例としては、再生可能エネルギーの電力(再生可能エネルギーであると見なす電力を含む)のみから製造された水素、系統電力を用いて製造された水素、貯蔵された水素、及び副生水素やCCS付き水素、そして、前者が複合した水素などが挙げられる。
【0022】
製造された水素の由来を明確にするため、次のことが考えられる。(1)供給される水素の由来の時間的変化を計測し、製造されたメタノールの由来を計算する、(2)メタノール貯蔵タンク内のメタノールの由来を計算する、(3)由来に応じたメタノールの取引が可能となり、由来に応じたプレミア、もしくは炭素税の付加が可能となる。
【0023】
そこで、本実施例のメタノール製造システム1は、
図1に示すように、主要な構成として、水素7を生成する水素製造装置4と、二酸化炭素8を供給する二酸化炭素供給装置5と、水素製造装置4により生成された水素7および二酸化炭素供給装置5から供給された二酸化炭素8からメタノール9を生成するメタノール製造装置2を備えている。
【0024】
水素製造装置4は、電力源6から供給される電力を利用して、水素7を生成する。
【0025】
メタノール製造装置2には、水素製造装置4により生成された水素7を供給する系統とは別に、CO2回収・貯蔵プロセス(CCS)を伴い生成される水素7dを供給する系統も接続されており、水素製造装置4により生成された水素7を利用せずに、CO2回収・貯蔵プロセス(CCS)を伴い生成される水素7dを利用して、メタノール9を生成することも可能である。
【0026】
メタノール製造装置2で生成されたメタノール9は、貯蔵装置3に一時的に貯蔵される。
【0027】
ここで、本実施例のメタノール製造システム1は、水素製造装置4により生成された水素7および二酸化炭素供給装置5から供給された二酸化炭素8の少なくともいずれか一方の環境指標に基づいて、メタノール製造装置2により生成されたメタノール9の環境負荷レベルを分類する。CO2回収・貯蔵プロセス(CCS)を伴い生成される水素7dを利用する場合は、水素7dの環境指標に基づいて、メタノール9の環境負荷レベルを分類する。
【0028】
原料である水素7や7d、二酸化炭素8のそれぞれの環境指標に基づいて、生成物であるメタノール9の環境負荷レベルを分類することで、貯蔵装置3から外部に供給(出荷)されるメタノール10を環境負荷レベル毎に分類することができる。
制御装置11は、モニタした各情報(環境指標)に基づいて、貯蔵装置3から外部に供給(出荷)されるメタノール10を環境負荷レベル毎に分類して、その結果を出力装置12に出力(表示)し、管理者に通知する。なお、出力装置12は、メタノール製造システム1に組み込むことも可能である。