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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130959
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】姿勢制御装置および飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64C 17/02 20060101AFI20220831BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20220831BHJP
   B64D 11/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B64C17/02
B64C13/18 Z
B64D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029648
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】520401550
【氏名又は名称】quintuple air株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】特許業務法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】薩川 誠司
(72)【発明者】
【氏名】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅子
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑えつつ機体の姿勢制御を支援可能な技術を提供する。
【解決手段】ある態様の姿勢制御装置は、飛行体の傾きを検出する検出部と、検出された飛行体の傾きに応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、を備える。ある態様の飛行体は、機体の傾きを検出する検出部と、検出された機体の傾きに応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体の傾きを検出する検出部と、
検出された傾きに応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、
を備える姿勢制御装置。
【請求項2】
前記通知部は、前記乗客の姿勢または着席位置の変更を誘導する通知処理を実行する、請求項1に記載の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記通知部は、前記乗客への要請を示唆する通知処理を実行する、請求項1又は2に記載の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記通知部は、前記飛行体のキャビンに設けられた、前記乗客が視認可能な表示領域に演出画像を表示させ、検出された傾きに応じて前記演出画像の表示を変更する、請求項1~3のいずれかに記載の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記通知部は、前記乗客の反射的動作を促す通知処理を実行する、請求項1~4のいずれかに記載の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記通知部は、前記飛行体のキャビンに設けられた、前記乗客が視認可能な表示領域に所定の三次元オブジェクトを表示させ、検出された傾きに応じて前記三次元オブジェクトの位置を変化させる、請求項1~5のいずれかに記載の姿勢制御装置。
【請求項7】
複数の通知情報を格納する通知情報格納部と、
検出された傾きに応じて前記複数の通知情報のいずれかを選択する通知情報選択部と、
をさらに備え、
前記通知部は、選択された通知情報に基づいて前記乗客への通知処理を実行する、請求項1~6のいずれかに記載の姿勢制御装置。
【請求項8】
前記通知情報として画像情報および音声情報の少なくとも一方を含む、請求項7に記載の姿勢制御装置。
【請求項9】
前記通知情報として、前記飛行体の傾きに応じて前記乗客の姿勢または着席位置の変更を誘導するよう予め設定された情報を含む、請求項7又は8に記載の姿勢制御装置。
【請求項10】
前記通知情報選択部は、前記飛行体の傾き度合いに対応づけられた複数の通知情報から、検出された傾きに対応する通知情報を選択する、請求項7~9のいずれかに記載の姿勢制御装置。
【請求項11】
乗客を収容する装置本体と、
前記乗客に見せる画面を表示する表示部と、
前記装置本体の傾きを検出する検出部と、
検出された傾きに応じて前記表示部の画面を変更する表示制御部と、
を備える姿勢制御装置。
【請求項12】
飛行体の巡航情報を取得する情報取得部と、
取得された巡航情報に応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、
を備える姿勢制御装置。
【請求項13】
機体の傾きを検出する検出部と、
検出された傾きに応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、
を備える飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は姿勢制御装置に関し、特に飛行体等の姿勢をより安定化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるドローンの産業利用への関心が世界的に高まっている。自律航行可能なマルチコプタが開発されることで、農業、測量、配送等の多岐にわたる活用が期待され、その実用化が急速に推し進められつつある。そのマルチコプタの技術を電動垂直離着陸機(eVTOL機)などの飛行体に応用することで、旅客輸送サービスとしての需要も見込まれている。
【0003】
ところで、このような飛行体は、飛行中に風等の外乱を受けて機体が傾くことがある。そのような場合でも機体の姿勢を迅速に制御することで安定飛行を確保する必要がある。そこで、例えば飛行体にバッテリなどのペイロードを移動させる機構を設け、機体の傾きを検知したときにそのペイロードの位置を変化させることで姿勢制御を支援する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、飛行試験に活用する装置として、機体に錘とその錘を移動させる機構を別途設け、その錘の位置を変化させることで機体の重心位置を変化させる技術が提案されている(特許文献2参照)。それにより乗客や荷物などのペイロードを搭載したときの重心位置の変化を再現し、飛行試験において姿勢制御の安定性を検証できるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-261414号公報
【特許文献2】特開2019-142441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
各特許文献に記載の技術は、飛行体にペイロードとその移動機構を設け、その移動機構をモータにより駆動する構成が必要となる。このため、そのモータを動作させるために相応の電力が必要となる。バッテリの電力に限りがあることや、電力消費増加による環境への影響(温室効果ガスの排出)などを考慮すると、できるだけ省電力を実現しつつ機体の姿勢制御が可能となることが望まれる。この点につき、発明者は、少なくとも旅客運輸サービスに関しては、飛行体の姿勢制御に際して乗客の協力が自然に得られるよう制御上の工夫をすることで、上述した省電力化が可能になるとの着想に到った。
【0007】
本発明は、上記課題認識に基づいてなされた発明であり、その主たる目的は、消費電力を抑えつつ機体の姿勢制御を支援可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は姿勢制御装置である。この姿勢制御装置は、飛行体の傾きを検出する検出部と、検出された傾きに応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、を備える。
【0009】
本発明の別の態様も姿勢制御装置である。この姿勢制御装置は、乗客を収容する装置本体と、乗客に見せる画面を表示する表示部と、装置本体の傾きを検出する検出部と、検出された傾きに応じて表示部の画面を変更する表示制御部と、を備える。
【0010】
本発明のさらに別の態様も姿勢制御装置である。この姿勢制御装置は、飛行体の巡航情報を取得する情報取得部と、取得された巡航情報に応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、を備える。
【0011】
本発明の別の態様も飛行体である。この飛行体は、機体の傾きを検出する検出部と、検出された傾きに応じて乗客への通知処理を実行する通知部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、消費電力を抑えつつ機体の姿勢制御を支援可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る飛行体の外観を表す斜視図である。
図2】飛行体の構成を模式的に表す平面図である。
図3】飛行体の電気的構成を概略的に表すブロック図である。
図4】姿勢制御装置の機能ブロック図である。
図5】乗客が座席に着席した様子を表す図である。
図6】表示装置に表示される画面例を表す図である。
図7】通知によって乗客に促される動作の例を表す図である。
図8】通知情報選択テーブルの概略構成を表す図である。
図9】姿勢制御装置が実行する姿勢制御処理を表すフローチャートである。
図10】変形例1に係る通知画面を表す図である。
図11】変形例2に係る通知画面を表す図である。
図12】変形例3に係る通知画面を表す図である。
図13】変形例に係る表示装置の配置構成を表す図である。
図14】変形例に係る座席および表示装置の配置構成を表す図である。
図15】変形例に係る姿勢制御方法を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0015】
本実施形態では、飛行体としてドローン型のeVTOL機を例示する。この飛行体は、機内に乗客用の複数の座席を有する有人機であり、飛行中の姿勢制御を行う過程で機体の傾きを検出し、検出された傾きに応じて乗客の姿勢変化を促す通知処理を実行する。この飛行体は、姿勢制御に際してペイロードを移動させることはなく、その制御の一環として乗客の挙動を誘導し、又は乗客への要請を示唆する。それにより省電力を実現しつつ姿勢制御の支援を図る。以下、その詳細について説明する。
【0016】
まず、飛行体の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係る飛行体の外観を表す斜視図である。
本実施形態では、図中のX方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向として説明する(以下同様)。X方向正方向が飛行体1の巡航方向である。
【0017】
飛行体1は、機体の大部分を構成する胴体2と、胴体2の上方で回転する4つのロータ4と、胴体2から下方に延出する4つの脚部6を備える。胴体2の内部中央にはキャビン8が設けられている。キャビン8には、輸送対象である乗客が搭乗する。4つの脚部6は、キャビン8の四方を取り囲みつつ、キャビン8の下方まで延在している。飛行体1は、有人機ではあるが、コックピットを有さない自動運転機(自動操縦機)である。
【0018】
図2は、飛行体1の構成を模式的に表す平面図である。
胴体2は、平面視正方形状をなし、その中央に平面視長方形状のキャビン8を有する。胴体2から四方へ放射状に延出する4つのアーム10FL,10FR,10RL,10RRが設けられている。これらを特に区別しない場合には「アーム10」と総称する。
【0019】
アーム10FL,10FR,10RL,10RRの各先端部にロータユニット12FL,12FR,12RL,12RRが支持されている。これらを特に区別しない場合には「ロータユニット12」と総称する。各ロータユニット12は、ロータ4とこれを回転駆動するモータ14を有する。4つのロータ4の回転数を個別に制御することにより、飛行体1の巡航時の姿勢、つまりピッチ、ロールおよびヨーの各姿勢を調整できる。
【0020】
4つのロータ4が、平面視において略正方形の4つの頂点にそれぞれ位置する。その正方形領域の内方中央にキャビン8が位置する。このため、その正方形のほぼ中心に飛行体1の重心が位置することとなり、飛行体1は飛行時のバランスを保ちやすい。
【0021】
キャビン8には、最大4人の乗客Mが搭乗できるよう複数の座席16が配設されている。本実施形態では、全ての座席16が前方に向けられており、左右に横並び二列かつ前後二列で配置されている。なお、「座席の向き」は、言うまでもなく座席正面の向きである。キャビン8の内部は、平面視における中心線Lに対してほぼ対称な構成を有する。横並び二列の2つの座席は、その中心線Lに対して対称な位置に配置されている。
【0022】
キャビン8の前方の壁面には全乗客Mが視認できる比較的大画面の表示装置20が配設されている。表示装置20は、乗客Mが視認可能な「表示領域」として機能し、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイからなるものでもよい。一方、キャビン8の後方の壁面に扉22が設けられている。乗客は、扉22が開かれた状態で一人ずつ、キャビン8に乗り込むことができる。
【0023】
図3は、飛行体1の電気的構成を概略的に表すブロック図である。
飛行体1の制御系は、コントローラ26を中心に構成される。コントローラ26は、マイクロコンピュータからなり、CPUおよび各種コプロセッサなどの演算器を含む。
【0024】
コントローラ26は、図示しない通信ラインを介して各ロータユニット12に接続され、それらを駆動制御する。各ロータユニット12には、既に説明したモータ14のほか、モータ14を駆動するモータ駆動回路30、モータ14のモータの回転状態を検出するための回転センサ32などが設けられている。なお、各ロータユニット12には図示略のバッテリが設けられ、モータ駆動回路30や回転センサ32への電力供給がなされる。
【0025】
コントローラ26は、制御プログラムにしたがって各モータ駆動回路30に制御信号を出力することにより、各モータ14の回転を制御する。各モータ14の回転数が調整されることで、飛行体1の巡航速度の制御がなされ、またピッチ制御、ヨー制御、ロール制御がなされる。回転センサ32は、モータ14の回転数を表す信号を出力する。コントローラ26は、この信号を受信することにより、各ロータ4の回転数が制御目標値に達しているか否かを判定する。
【0026】
コントローラ26には、上述した回転センサ32のほか、ジャイロセンサ34、加速度センサ36等の各種センサや、GPS受信機38等が搭載されており、それらの検出信号や受信信号がコントローラ26に入力される。コントローラ26は、ジャイロセンサ34および加速度センサ36の検出信号に基づき機体の姿勢を判定できる。また、GPS受信機38の受信信号に基づき現在の航行位置を判定できる。
【0027】
コントローラ26には、また、上述した表示装置20、スピーカ24、送受信装置25が接続されている。スピーカ24は、アナウンスや音楽等の音声を出力する。送受信装置25は、他の飛行体や外部装置との間でデータの送受信を実行する。コントローラ26は、例えば外部装置から送られる気象情報などの航路情報に基づいて機体が受ける影響を予測し、その影響を軽減する処理を実行することもできる。
【0028】
図4は、姿勢制御装置の機能ブロック図である。
姿勢制御装置100は、飛行体1に搭載され、離発着(垂直離発着を含む)時および巡航時において機体の姿勢を制御する。姿勢制御装置100の各構成要素は、上述したコントローラ26(マイクロコンピュータ)、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバおよびアプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0029】
姿勢制御装置100は、通信部110、データ処理部112、データ格納部114、検出部116、駆動部118および通知出力部120を含む。通信部110は、外部端末との通信処理を担当する。通信部110は情報取得部122を含む。情報取得部122は、先行する飛行体や基地局などの外部装置から航路に関する情報等を取得する。
【0030】
データ格納部114は、各種プログラムやデータを格納する。データ格納部114は、通知情報格納部130を含む。通知情報格納部130は、機体の傾きに応じて乗客に直接的又は間接的に所定の動作を促すための通知情報を格納する。通知情報格納部130は、音声データ格納部132および表示データ格納部134を含む。
【0031】
音声データ格納部132は、乗客への通知に際してスピーカ24から出力する音声のデータ(音声データ)を格納する。表示データ格納部134は、乗客への通知に際して表示装置20に表示させる画像等のデータ(表示データ)を格納する。表示データには、画像データおよび文字データが含まれる。画像データには、予め作成された静止画像や動画像のほか、演出画像を変化させる際のベースとなる2次元又は3次元のモデルデータが含まれてもよい。
【0032】
検出部116は、ジャイロセンサ34および加速度センサ36等からセンサ情報を取得する。駆動部118は、飛行体1の制御に関わるアクチュエータを駆動する。駆動部118は、モータ駆動部124を含む。モータ駆動部124は、モータ駆動回路30を駆動する。通知出力部120は、音声出力部126および表示部128を含む。音声出力部126は、乗客への通知に際してスピーカ24から音声を出力する。表示部128は、乗客への通知に際して表示装置20に通知画面を表示させる。
【0033】
データ処理部112は、通信部110により取得されたデータ、検出部116により検出された情報、およびデータ格納部114に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部112は、通信部110、検出部116、駆動部118、通知出力部120およびデータ格納部114のインタフェースとしても機能する。
【0034】
データ処理部112は、姿勢演算部140、駆動制御部142および通知処理部144を含む。姿勢演算部140は、検出部116が検出した傾き情報に基づき、現在の機体の姿勢を演算する。駆動制御部142は、飛行体1の姿勢を制御するための各種アクチュエータを制御する。駆動制御部142は、姿勢制御部146を含む。姿勢制御部146は、モータ駆動部124に制御指令を出力し、各モータ駆動回路30を個別に駆動する。それにより4つのロータ4の回転数を制御することで機体の姿勢を適正に調整する。
【0035】
通知処理部144は、通知情報管理部150、通知情報選択部152および画像生成部154を含む。通知情報管理部150は、通知情報格納部130に格納された各通知情報(音声データ、表示データ)を通知IDに対応づけて管理する。通知情報選択部152は、機体の傾きに応じて通知IDを特定し、複数の通知情報のいずれかを選択する。
【0036】
通知情報選択部152は、機体の傾き情報と通知IDとが予め対応づけられた通知情報選択テーブル(後述)を保持する。通知IDにはさらに、通知情報として出力すべき音声データおよび表示データが対応づけられている。通知情報選択部152は、通知情報選択テーブルを参照して機体の姿勢情報に対応する通知IDを特定し、その通知IDに対応づけられた通知情報を選択する。画像生成部154は、上記モデルデータをベースに動画像を生成する。
【0037】
通知処理部144は、選択された通知情報を通知出力部120に出力させる。本実施形態において、通知処理部144および通知出力部120が、飛行体の傾きに応じて乗客への通知処理を実行する「通知部」として機能する。通知処理部144は「表示制御部」としても機能する。
【0038】
次に、本実施形態における姿勢制御方法の詳細について説明する。
図5は、乗客Mが座席16に着席した様子を表す図である。図5(A)は正面図、図5(B)は背面図である。図6は、表示装置20に表示される画面例を表す図である。図6(A)は通常画面を示し、図6(B)は通知画面を示す。なお、「通知画面」は乗客Mへの通知を行っている画面であり、「通常画面」はその通知を行っていない画面である。図7は、通知によって乗客Mに促される動作の例を表す図である。図7(A)は正面図、図7(B)は背面図である。
【0039】
図5に示すように、乗客Mは横二列で着席できる(図5(A))。乗客Mの前方やや上方には表示装置20の画面が表示される(図5(B))。飛行体1の安定した巡航時において、表示装置20にはその巡航の様子(機体前方の景色映像)、あるいは乗客Mの娯楽に供するマルチメディアなどが表示される。
【0040】
例えば、図6に示すように、飛行体1の巡航時に、通常画面として景色映像P0が表示されているとする(図6(A))。その巡航中に風などの外乱により機体が左側に所定以上傾いた場合、表示部128は、通知画面を表示させる(図6(B))。図示の例では、景色映像P0が縮小され、その横に通知画像P1が表示されている。通知画像P1では、飛行体1を示す画像P11に傾きの方向を示唆するマークP12(★)が重畳表示されている。さらに、「身体を右側に傾けてください」との文字列P13が表示されている。
【0041】
音声出力部126は、通知画像P1の表示に合わせて、乗客Mの姿勢を誘導する音声を出力する。例えば「少々、機体が左に傾いていますので、気持ち、右側にお身体を傾けてください。より安全な運航へのご協力お願い致します。」などのアナウンスを出力する。すなわち、通知部が、乗客Mの姿勢を誘導する通知処理を実行することとなる。
【0042】
図7に示すように、乗客Mは、このような通知を認識することで、身体を右側に傾けることとなる。より正確には、この通知により乗客Mの協力が得られ、飛行体1の重心が通知された側へ多少なりとも移動することで、姿勢制御部146による機体の姿勢制御を支援できると期待される。なお、乗客Mを誘導することによる重心変化は、姿勢制御部146による姿勢制御を妨げるほど大きくはならない。あくまでも、姿勢制御部146による姿勢制御の補助的位置づけとされている。
【0043】
図8は、通知情報選択テーブルの概略構成を表す図である。
通知情報選択テーブル170は、巡航制御(水平飛行)が行われている状態で外乱による機体の傾きが検知された場合に参照される。通知情報選択テーブル170では、姿勢演算部140にて算出される機体の傾き情報(姿勢情報)に対して通知IDが対応づけられている。「通知ID」は、音声IDおよび画像IDを含む。音声IDは、音声データ格納部132に格納された音声データに対応づけられている。画像IDは、表示データ格納部134に格納された表示データが対応づけられている。
【0044】
図示の例では、機体が左側に設定角度以上傾いた場合(ロール左傾)に対し、音声IDとして「S00」、画像IDとして「M00」が対応づけられている。音声ID「S00」の音声データによる音声と、画像ID「M00」の表示データによる通知画面により、乗客Mに対して身体を右側に傾けるよう誘導する通知がなされることになる。
【0045】
ここで、「設定角度」については例えば5度とするなど、飛行体1の仕様や性能に基づいて適宜設定できる。設定角度未満である場合、通知処理は実行しない。軽度の傾きであれば通常の姿勢制御で十分に足り、乗客Mの協力を要請するまでもないためである。また、必要以上に乗客Mに負担を負わせないためでもある。
【0046】
同様に、機体が右側に設定角度以上傾いた場合(ロール右傾)に対し、音声ID「S01」、画像ID「M01」が対応づけられている。それにより、乗客Mに対して身体を左側に傾けるよう誘導する通知がなされる。前側に設定角度以上傾いた場合(ピッチ前傾)に対し、音声ID「S10」、画像ID「M10」が対応づけられている。それにより、乗客Mに対して身体を後側に傾けるよう誘導する通知がなされる。後側に設定角度以上傾いた場合(ピッチ後傾)に対し、音声ID「S11」、画像ID「M11」が対応づけられている。それにより、乗客Mに対して身体を前側に傾けるよう誘導する通知がなされる。「設定角度」は傾きの方向に応じて異ならせてもよい。
【0047】
なお、図示の例では各傾き情報に対して通知IDが一つ設定される例が示されているが、各傾き情報に対して通知IDの候補(通知候補)を複数設定しておき、いずれかを選択できるようにしてもよい。また、通知IDとして、音声IDおよび画像IDのいずれかが含まれないものを設定してもよい。
【0048】
また、各傾き情報を例えば5度以上10度未満、10度以上15度未満、15度以上といったように複数段階に設定してもよい。その複数段階の傾き情報について異なる通知IDを対応づける。それにより、例えば「身体をやや傾けてください」、「身体をできるだけ大きく傾けてください」といったように、機体の傾き度合いに応じて通知内容を異ならせることができる。協力要請の緊急性などに応じた柔軟な通知を実現できる。
【0049】
図9は、姿勢制御装置100が実行する姿勢制御処理を表すフローチャートである。
本図の処理は所定の制御周期にて繰り返し実行される。
検出部116は、センサによる検出情報を取得する(S10)。姿勢演算部140は、その検出情報に基づき現在の機体の姿勢(傾き)を演算する(S12)。姿勢制御部146は、姿勢制御中であれば、目標姿勢と現在の姿勢との偏差に基づき、その偏差をゼロに近づけるようフィードバック制御を実行する(S14)。すなわち、モータ駆動部124を制御し、各ロータ4の回転数を制御する。
【0050】
このとき、乗客Mの協力による補正が必要な場合(S16のY)、すなわち偏差が基準値よりも大きい場合(機体の傾きが設定角度以上である場合)、通知情報選択部152は、通知情報選択テーブル170を参照して傾き情報に対応する通知ID(音声ID、画像ID)を設定する(S18)。そして、その通知IDに対応する通知情報(音声データ、表示データ)を通知情報格納部130から取得する(S20)。通知処理部144は、取得された通知情報に基づいて通知処理を実行する(S22)。すなわち、通知出力部120に対して音声出力および画像表示を指示する。表示部128は通知画面を表示し、音声出力部126は通知用の音声を出力する。
【0051】
補正が不要な場合(S16のN)、つまり偏差が基準値よりも小さく、乗客Mの協力を得るまでもない場合(機体の傾きが設定角度未満である場合)、S18からS22の処理はスキップされる。すなわち、S14の姿勢制御にて足りると判断される。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態の飛行体1では機体の傾きを検出し、検出された傾きに応じて乗客Mの姿勢を誘導する通知処理を実行する。飛行体のペイロードを移動させる移動機構を設ける必要がないため、簡易な構成により姿勢制御の支援が可能となる。また、そのような移動機構を駆動するためのモータ等が不要となるため、姿勢制御の支援のための消費電力を抑えることができる。すなわち、本実施形態によれば、飛行体1の姿勢制御に際して乗客Mの協力を得ることで省電力化が可能となる。
【0053】
[変形例]
(通知方法の変形例)
図10は、変形例1に係る通知画面を表す図である。図10(A)は通常画面を示し、図10(B)は通知画面を示す。
変形例1では、姿勢誘導に関する通知処理を娯楽感覚で実現する。本図にはオートバイゲームが例示されている。乗客Mをオートバイに乗るライダーに見立てたものである。
【0054】
飛行体1の安定した巡航時に、通常画面として真っ直ぐなコースをオートバイが直進する画像(動画像)が表示される(図10(A))。その巡航中に外乱により機体が例えば左側に所定以上傾いた場合、表示部128は、通知画面を表示させる(図10(B))。図示の例では、オートバイが右カーブに差し掛かり、ライダーが重心を右側に傾けるような通知画像P21が表示されている。図示を省略するが、さらにアウトコース(やや左後方)から別のオートバイが幅寄せをしてくるような画像としてもよい。
【0055】
本変形例では、このとき音声出力や文字列の表示により乗客Mの姿勢を直接的に誘導することはないが、通知画像P21は、乗客Mに対して「身体を右側に傾ける」要請を示唆するものとなる。すなわち、通知画像P21は、乗客Mが咄嗟に姿勢変更したくなるような動画像として設計されている(図7参照)。通知部は、乗客Mへの要請を示唆する通知処理(演出による間接的な誘導)を実行することとなる。
【0056】
なお、図示を省略するが、本変形例のコースには右カーブのほか、左カーブ、下り坂、上り坂等も含まれる。左カーブにより「身体を左側に傾ける」、下り坂により「身体を前傾させる」、上り坂により「身体を後傾させる」などの要請を示唆する。また、カーブにはその曲がり度合い(曲率)、坂にはその傾斜度合い(勾配)がそれぞれ複数段階設定されており、その度合いに応じて通知内容も異なることとなる。
【0057】
図11は、変形例2に係る通知画面を表す図である。図11(A)は通常画面を示し、図11(B)は通知画面を示す。
変形例2では、演出表示過程で姿勢誘導に関する通知処理を実行する。飛行体1の安定した巡航時に、通常画面として映画などの演出動画が再生されているとする(図11(A))。その巡航中に外乱により機体が例えば左側に所定以上傾いた場合(ロール左傾)、表示部128は、通知画面を表示させる(図11(B))。図示の例では、正面やや左側に向かってミサイルが飛んでくるような通知画像P31が表示されている。これにより、乗客Mは咄嗟にミサイルを避けるよう身体を右側に傾けるようになる。
【0058】
本変形例においても、このとき音声出力や文字列の表示により乗客Mの姿勢を直接的に誘導することはないが、通知画像P31は、乗客Mがミサイルを避けるよう誘導するものとなる。すなわち、通知画像P31は、乗客Mが姿勢変更したくなるような動画像として設計されている(図7参照)。通知画像P31は、乗客Mの反射的動作を促すものとなり得る。
【0059】
図12は、変形例3に係る通知画面を表す図である。図12(A)は通知画面の一例を示し、図12(B)は通知画面の他の例を示す。
変形例3では、姿勢誘導に関する通知処理を3D画像により実現する。
【0060】
飛行体1の安定した巡航時には、通常画面として上述した景色映像や演出動画等が表示される。その巡航中に外乱により機体が所定以上傾いた場合、表示部128は、通知画面に恐竜を模した三次元オブジェクト(通知画像)を表示させる。具体的には、機体が左側に所定以上傾いた場合(ロール左傾)、通知画像P41を表示させる(図12(A))。図示の例では、恐竜が画面の左前方に飛び出してくるような3D画像が表示されている。これにより、乗客Mは咄嗟に恐竜を避けるよう、例えば身体を右側に傾けるようになる。
【0061】
また、機体が前側に所定以上傾いた場合(ピッチ前傾)、通知画像P42を表示させる(図12(B))。図示の例では、恐竜が画面の中央正面に飛び出してくるような3D画像が表示されている。これにより、乗客Mは咄嗟に恐竜を避けるよう仰け反る(身体を後側に傾ける)ようになる。
【0062】
本変形例では、姿勢制御を支援すべき方向(つまり乗客Mに要請する重心の移動方向)に対し、その方向から逸れる方向、又は画面の正面に対してその方向とは反対方向に3D画像の飛び出し方向(ベクトル)が設定される。
【0063】
本変形例においても、このとき音声出力や文字列の表示により乗客Mの姿勢を直接的に誘導することはないが、通知画像P41,P42は、乗客Mが恐竜を避けるよう反射的動作を促すものとなる。これは、乗客Mの姿勢を特定の方向に誘導するものとなる。
【0064】
なお、上記変形例に示される通知画像は例示に過ぎず、同様の効果を発揮するものであれば、画像コンテンツや演出方法は上記のものに限られない。
【0065】
(表示領域の変形例)
図13は、変形例に係る表示装置の配置構成を表す図である。図13(A)は変形例4、図13(B)は変形例5を示す。図中の矢印はキャビン8の前方を示す。
変形例4では、横並びの列ごとに表示装置220,222が設けられている(図13(A))。変形例5では、一席ごとに表示装置230~236が設けられている(図13(B))。このように座席の所定単位ごとに表示装置を設けることで、通常画面を個別に設定することが可能となる。例えば、ある表示装置にはゲームを表示させ、他の表示装置に映画を表示させるといった自由度が高まる。それにより、乗客Mごとの趣向に応じた視聴サービスを提供し易くなる。
【0066】
図14は、変形例に係る座席および表示装置の配置構成を表す図である。図14(A)は変形例6、図14(B)は変形例7を示す。図中の矢印はキャビン8の前方を示す。
変形例6では、各座席16がキャビン8の側壁に向けて配置されている。すなわち、複数の座席16は、それぞれ機体の幅方向中心(中心線L)に対してオフセットした位置に、機体の幅方向に向けて配設されている。そして、右列の座席16Rに対して正面となる左側壁に表示装置240が設けられ、左列の座席16Lに対して正面となる右側壁に表示装置242が設けられている。
【0067】
変形例7では、変形例6と同様に各座席16がキャビン8の側壁に向けて配置されるとともに、各座席の正面となる側壁に表示装置250~256が設けられている。前後の座席の間には、プライベートを保護するためのパーティション260が設けられている。これらの変形例でも座席の所定単位ごとに表示装置を設けることで、通常画面を個別に設定することが可能となる。
【0068】
(姿勢制御方法の変形例)
図15は、変形例に係る姿勢制御方法を表す図である。図15(A)は変形例8に係る傾き補正方法を示す。図15(B)は通知画面を示す。
変形例8において、通知部は、乗客の着席位置の変更を誘導する通知処理を実行する。具体的には、キャビン8に設置された複数の座席16に空席がある場合、その空席を利用して姿勢制御を支援する。
【0069】
例えば、後列の右側に空席があり(図15(A))、飛行体1の巡航時に通常画面として景色映像が表示されているとする。その巡航中に外乱により機体が左側に所定以上傾いた場合、表示部128は、通知画面を表示させる(図15(B))。図示の例では、景色映像P0の横に通知画像P51が表示されている。通知画像P51では、上記実施形態と同様の画像が表示されるとともに、「右側が空席の方は右側の席にお移りください」との文字列P53が表示されている。
【0070】
音声出力部126は、この通知画像P51の表示に合わせて、該当する乗客Mの姿勢を誘導する音声を出力する。例えば、「少々、機体が左に傾いていますので、右側に空席がある方はお移りください。より安全な運航へのご協力お願い致します。」などのアナウンスを出力する。
【0071】
左側後席に座る乗客Mがこの通知を認識してその右側の席に移動し、飛行体1の重心が通知された側へ移動することで(図15(A)の矢印参照)、姿勢制御部146による機体の姿勢制御を支援できる。このように乗客Mが席を移動することで、単に身体を傾ける場合よりもその支援効果が高まることが期待される。
【0072】
なお、上記実施形態と変形例8とを併用した通知処理を実行してもよい。隣に空席がある乗客には席を移動するよう誘導し、隣に空席がない乗客には身体を傾けるよう誘導する通知画面を表示させてもよい。あるいは、席を移動するか身体を傾けるかのいずれかを要請する通知画面を表示させ、あとは乗客の行動に委ねてもよい。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0074】
上記実施形態では、通知画像として予め作成された動画データを通知情報格納部130に格納しておく構成を例示した。変形例においては、画像生成部154が、表示データ格納部134に格納されたモデルデータをベースにこれを変形させるなどして、通知画像としての動画像を生成してもよい。
【0075】
その場合、図9に示した姿勢制御処理において、通知情報選択部152は、通知IDに対応する表示データ(モデルデータ)を通知情報格納部130から取得する(S20)。画像生成部154は、そのモデルデータをベースに動画像を生成する。通知処理部144は、その動画像を通知情報として表示させる(S22)。例えば、本変形例を上記変形例1(図10参照)に適用した場合、オートバイの直進走行からカーブ走行への切り替わりを動画として連続的に自然な形で表示できる。
【0076】
上記実施形態では述べなかったが、図9に示した姿勢制御処理において、S22の通知処理による効果が小さい場合、つまり乗客Mを期待通りに誘導できなかった場合に、次回の通知を強化するような更新処理を実行してもよい。具体的には、上述のように姿勢制御処理は所定の制御周期で繰り返し実行されるため、S22が連続的に実行される回数をカウントする。そのカウント値が所定回数以上となったとき、傾き情報が前回と同じであったとしても通知のレベルを高めるようにしてもよい。例えば、所定回数未満のときに協力要請が任意であることを示唆する通知とした場合、所定回収以上となったときに協力要請が半強制又は実質的強制であるような通知としてもよい。通知情報選択部152は、そのように通知IDの選択を変更する。
【0077】
上記実施形態では、図6に示したように、画面に文字列P13を表示するとともに音声出力を行うことで、乗客Mへの要請を明示する通知処理を例示した。変形例においては、その文字列P13と音声出力を省略し、飛行体1を示す画像P11とマークP12を表示することで、現在の機体の傾きを示唆してもよい。また、それに対して身体を傾けるよう誘導する示唆をしてもよい。
【0078】
上記実施形態では述べなかったが、通知部は、取得された巡航情報に応じて乗客への通知処理を実行してもよい。例えば、同じ航路を少し離れて巡航する先行の同型機(先行機)があり、その先行機が風の影響を受けている場合を想定する。その場合、情報取得部122は、その先行機の傾き情報を通信により取得し、その傾き情報に応じて機内の乗客に向けて上述の通知処理を実行してもよい。あるいは、先行機から風向や風速などの情報(巡航環境情報)を取得し、その巡航環境情報からその後の機体の傾きを推定し、通知情報を選択してもよい。このような構成により、より応答性の高い姿勢制御が実現できる。
【0079】
上記実施形態では、表示領域を独立した表示装置20に設けたが、キャビン8の壁面や天井などを表示領域とし、プロジェクタ等の投影装置により映像を投影してもよい。
【0080】
上記実施形態では、通知情報選択テーブル170を設け、飛行体1の傾きに応じて複数の通知情報のいずれかを選択する処理を例示した。変形例においては、このようなテーブルを用いることなく通知処理を実行してもよい。例えば、キャビン内の表示領域に景色映像をリアルタイム表示し、機体の傾きが所定以上となったときに「傾きの適正化にご協力ください」といった包括的なアナウンスを音声出力してもよい。通知部は、その単一の通知情報に基づいて乗客への通知処理を行ってもよい。
【0081】
上記実施形態では、飛行体1としてパイロットが搭乗しない自動運転機(自動操縦機)を例示した。変形例においては、パイロットが搭乗可能な飛行体としてもよい。胴体2の内部のキャビン8の前部にコックピットが設けられてもよい。パイロットによる操縦と自動操縦の双方が可能であってもよい。
【0082】
上記実施形態では、機体に対して前後左右に4つのロータ4を設ける構成を例示したが、ロータの数や配置はこれに限られず、適宜設定できる。また、上記実施形態では、飛行体の進行方向(巡航方向)をX方向とする例を示した。変形例においては、その進行方向をY方向とするなど、機体を含む水平面に対していずれの方向に設定してもよい。あるいは、機体に対して進行方向を一意に特定せず、適宜切替可能としてもよい。機体について前後左右の方向性をもたせない構成としてもよい。
【0083】
上記実施形態では述べなかったが、ロータ4を機体に対する角度が可変であるティルトロータとしてもよい。その場合、ロータ4の傾動角度を調整する回動機構と、その回動機構を駆動するモータ(第2モータ)が設けられる。
【0084】
上記実施形態では、飛行体1に4つのロッド状の脚部6を設ける例を示したが、脚部の形状や数はこれに限られず、適宜設定できる。また、脚部6に代えて車輪を設けてもよい。その場合、車輪を胴体内に収納可能な車輪収納機構を設けてもよい。
【0085】
上記実施形態では、飛行体1としてドローン型eVTOL機の一例を示したが、あくまで例示に過ぎず、飛行体のタイプおよび構成がこれに限られないことは言うまでもない。また、上記実施形態および変形例では、キャビン8における座席数を4席としたが、これに限らず適宜設定できる。姿勢制御において飛行体の重量バランスをとり易くする観点からは、キャビン8の中心線(幅方向の中心)に対して対称となるように座席を配置するのが好ましい。
【0086】
上記実施形態では、乗客Mを対象として通知を行う例を示したが、さらに乗務員と乗客を含む「乗員」を対象としてもよい。乗務員については「パイロットを除く乗務員」としてもよい。
【0087】
上記実施形態では、「通知情報」として音声データおよび表示データを例示した。変形例においては、キャビン内の特定部位における光の点灯や点滅による表示データを通知情報としてもよい。例えば、キャビン前方に姿勢誘導方向を示す複数の表示灯を設置してもよい。それらの表示灯を通常時は消灯しておき、乗客の姿勢を誘導すべきときに、その誘導方向を示す表示灯を点灯又は点滅させてもよい。あるいは、キャビン内に配置された特定の構造物の振動を通知情報としてもよい。例えば、キャビン前方に姿勢誘導方向が示された複数の通知部材を設置してもよい。それらの通知部材を通常時は停止しておき、乗客の姿勢を誘導すべきときに、その誘導方向を示す通知部材を振動させてもよい。
【0088】
あるいは、玩具の作動を通知情報としてもよい。例えば、図12に示した3D画像のようにキャビン前方から飛び出し可能な玩具としてもよい。玩具は軽量かつ軟らかいものが好ましい。姿勢制御を支援すべき方向(つまり乗客Mに要請する重心の移動方向)に対し、その方向から逸れる方向、又は画面の正面に対してその方向とは反対方向に玩具の飛び出し方向(ベクトル)が設定される。
【0089】
上記実施形態では、姿勢制御装置100を飛行体1に適用する例を示した。変形例においては、姿勢制御装置をアーケードゲーム、シミュレータその他の装置に適用してもよい。姿勢制御装置は、ユーザを収容する装置本体を備える。装置本体は、そのユーザを乗客として着席させる座席を有する。表示制御部は、装置本体の傾きに応じて表示部に表示させる画面を変更する。
【0090】
上記実施形態では、飛行体の姿勢制御を支援するために乗客の姿勢を誘導する通知処理を例示した。変形例においては、乗客の手荷物などの物品(所有物)の位置を変更するよう要請する通知処理を行ってもよい。例えば、乗客の足元にある荷物を左右のいずれか一方にずらすなどの要請を通知してもよい。
【0091】
上記実施形態では、姿勢制御装置100を飛行体1に搭載する構成を例示した。変形例においては、姿勢制御装置の少なくとも一部の機能を地上に設置された外部装置に設けてもよい。その外部装置を管制塔に配置してもよい。姿勢制御装置の少なくとも一部の機能を地上で操作可能なフライトコントローラ(外部装置)に設けてもよい。飛行体は、外部装置との通信により通知処理を実行する。
【符号の説明】
【0092】
1 飛行体、2 胴体、4 ロータ、6 脚部、8 キャビン、10 アーム、12 ロータユニット、14 モータ、16 座席、20 表示装置、22 扉、100 姿勢制御装置、110 通信部、112 データ処理部、114 データ格納部、116 検出部、120 通知出力部、122 情報取得部、124 モータ駆動部、126 音声出力部、128 表示部、130 通知情報格納部、140 姿勢演算部、142 駆動制御部、144 通知処理部、146 姿勢制御部、150 通知情報管理部、152 通知情報選択部、170 通知情報選択テーブル、M 乗客、P0 景色映像、P1 通知画像、P21 通知画像、P31 通知画像、P41 通知画像、P42 通知画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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