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特開2022-130979ロック機構およびこれを備える無人航空機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130979
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ロック機構およびこれを備える無人航空機
(51)【国際特許分類】
   F16B 1/02 20060101AFI20220831BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220831BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220831BHJP
   B64D 27/26 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
F16B1/02 L
B64C39/02
B64C27/08
B64D27/26
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029678
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】715001390
【氏名又は名称】株式会社プロドローン
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 友喜
(57)【要約】
【課題】リンク機構を応用したロック機構についてその利便性を向上させる。
【解決手段】四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、リンク部材の一つである第1リンクは、回り対偶の接続部である2つのジョイントと、弾性変形可能な伸縮部と、を有し、第1リンクは、伸縮部が変形することでジョイント間の長さが変化するロック機構、及び、水平回転翼を有する複数のロータと、各ロータを支持する複数本の棒体であるロータアームと、を備え、各ロータアームにはその長さ方向における中途に本発明のロック機構が設けられ、リンク部材の一つは、ロータアームの基端側半体に接合され、又は該基端側半体の一部であり、リンク部材の他の一つは、ロータアームの先端側半体に接合され、又は該先端側半体の一部である無人航空機によりこれを解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、
前記リンク部材の一つである第1リンクは、
回り対偶の接続部である2つのジョイントと、
弾性変形可能な伸縮部と、を有し、
前記第1リンクは、前記伸縮部が変形することで前記ジョイント間の長さが変化する
ロック機構。
【請求項2】
前記第1リンクの前記伸縮部は、前記第1リンクがその隣接する前記リンク部材と直線状に又は平行に配置されたときの圧縮率が、その直前または直後となる位置における圧縮率よりも大きい
請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
前記リンク機構は、前記リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンク、並びに付勢部材を有し、
前記第2リンク、前記第3リンク、及び前記第4リンクは、それぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、
前記第4リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、該第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、
前記第4リンクは前記付勢部材により前記第1方向に付勢されている
請求項1又は請求項2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記リンク機構は、前記リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンクを有し、
前記第2リンク、前記第3リンク、及び前記第4リンクは、それぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、
前記第4リンクは前記第3リンクに接続され、
前記第4リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、該第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、
前記第4リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクを分離不能に固定したときに前記第2リンクに嵌合してこれが前記第3リンクから離れることを阻止する係止部を有する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項5】
前記第4リンクは前記第1リンクに接続され、
前記第4リンクは、その内部に前記第1リンクを収容可能であり、又は前記第1リンクと平行に配置可能であり、
前記第1リンクは、前記第4リンクが前記第2リンク及び前記第3リンクを分離不能に固定したときに、前記伸縮部の復元力により前記第4リンクを前記第1方向へ誘導する
請求項3又は請求項4に記載のロック機構。
【請求項6】
前記第2リンク及び前記第3リンクを分離不能に固定している前記第4リンクを前記第1方向の反対方向である第2方向に回転させるときに、前記第1リンクは、前記第4リンクと前記第1リンクとが直線状に又は平行に重なる位置を境に、前記伸縮部の復元力により前記第4リンクを前記第2方向に付勢する
請求項5に記載のロック機構。
【請求項7】
前記第1リンクの前記伸縮部の復元力は前記付勢部材の復元力よりも大きい
請求項3を引用する請求項6に記載のロック機構。
【請求項8】
前記第4リンクは前記第1リンクに接続され、
前記第4リンクによる前記第2リンク及び前記第3リンクの固定が解除され、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側から離れる方向に回転すると、前記第4リンクはこれに追従して前記第1方向に回転し、
前記第1方向への回転の途中で前記第4リンク及び前記第1リンクが直線状に配置された状態において、前記付勢部材は前記第4リンクを前記第1方向へさらに付勢する
請求項3又は請求項3を引用する請求項4から請求項7のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項9】
前記各リンク部材はそれぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、
前記第1リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第2リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第3リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第4リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第2リンク及び前記第3リンクが前記第4リンクに固定された状態で、前記リンク機構を前記各ジョイントの軸線方向にみたときに、前記第1リンクと前記第4リンクとを接続する前記ジョイントである第1ジョイントは、前記第1リンクと前記第2リンクとを接続する前記ジョイントである第2ジョイントが移動する円弧軌道上の該第2ジョイントの固定位置における接線よりも前記第4リンクの前記第1方向側にある
請求項3から請求項8のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項10】
前記リンク機構は、前記リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンクを有し、
前記第2リンク、前記第3リンク、及び前記第4リンクは、それぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、
前記第4リンクは前記第1リンクに接続され、
前記第4リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、該第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、
前記第4リンクによる前記第2リンク及び前記第3リンクの固定が解除され、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側から離れる方向に回転すると、前記第4リンクはこれに追従して前記第1方向に回転し、
前記第1方向への回転の途中で前記第4リンク及び前記第1リンクが直線状に配置された状態において、前記第4リンクはそこからさらに前記第1方向へ回転可能である
請求項2又は請求項2を引用する請求項3から請求項9のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項11】
前記リンク機構は四節リンク機構であり、
前記各リンク部材はそれぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、
前記第1リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第2リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第3リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第4リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第2リンク及び前記3リンクは他部材が接合される接合部を有し、
前記第2リンク及び前記3リンクは一方が固定節である
請求項3から請求項10のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項12】
前記第1リンクの前記伸縮部は素線断面が矩形状のコイルばねを有する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項13】
前記付勢部材の復元力は前記第1リンクの前記伸縮部の復元力よりも大きい
請求項3に記載のロック機構。
【請求項14】
前記第1リンクは、
軸体と、
ボルト部材と、
コイルばねと、
他の前記リンク部材との接続部である連結部材と、を有し、
前記軸体はその軸線方向における一方の端面に前記ボルト部材が螺合されるねじ穴を有し、
前記連結部材は、前記ボルト部材の軸部の直径よりも一回り大きな穴径の貫通穴である遊嵌穴を有し、
前記ボルト部材の前記軸部は、前記遊嵌穴に挿通されて前記ねじ穴に螺合され、
前記コイルばねは、前記ボルト部材の前記軸部に装着され、前記軸体の前記端面と前記連結部材との間に挟まれている
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項15】
水平回転翼を有する複数のロータと、
前記各ロータを支持する複数本の棒体であるロータアームと、を備え、
前記各ロータアームにはその長さ方向における中途に請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のロック機構が設けられ、
前記リンク部材の一つは、前記ロータアームの基端側半体に接合され、又は該基端側半体の一部であり、
前記リンク部材の他の一つは、前記ロータアームの先端側半体に接合され、又は該先端側半体の一部である
無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可動部材の固定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、リンク機構を用いた自転車の折り畳み構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/171232(A1)号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に開示されたヒンジ機構(図13)のように、可動部の位置を簡便にロックする手段として、四節リンク機構の仕組みを応用したロック機構が用いられることがある。このような機構を用いる場合、例えばその機器の使用時と保管・運搬時とで可動部を異なる位置に固定するときには、通常、保管・運搬時用のロック手段を別途用意する必要がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、リンク機構を応用したロック機構についてその利便性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のロック機構は、四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、リンク部材の一つである第1リンクは、回り対偶の接続部である2つのジョイントと、弾性変形可能な伸縮部と、を有し、第1リンクは、伸縮部が変形することでジョイント間の長さが変化することを要旨とする。
【0007】
リンク機構を構成するリンク部材に、その長さが弾性をもって伸縮するリンク部材(第1リンク)を含めることにより、剛体のリンク部材のみからなるリンク機構では不可能な範囲までリンク機構を揺動させることが可能となる。さらに、各リンク部材の長さを調節して、第1リンクがその弾性により反発する(遠ざかろうとする)位置を設けることにより、自然状態における第1リンクをその復元力の限りにおいて所望の位置範囲や角度範囲に保つことが可能となる。
【0008】
このとき、第1リンクの伸縮部は、第1リンクがその隣接するリンク部材と直線状に又は平行に配置されたときの圧縮率が、その直前または直後となる位置における圧縮率よりも大きくなることが望ましい。通常、第1リンクとその隣接するリンク部材とが直線状または平行に配置された姿勢はリンク機構の思案点(死点)となり得る。思案点における第1リンク(伸縮部)の圧縮率をその前後における圧縮率よりも大きくすることで、第1リンクは思案点を境にその位置からいずれか遠ざかる方に誘導される。これにより第1リンクをその復元力の限りにおいて思案点の前か後となる位置に保つことができる。
【0009】
また、本発明のロック機構は、上記リンク機構が、リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンク、並びに勢部材を有し、これら第2リンク、第3リンク、及び第4リンクはそれぞれ回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、第4リンクは、第2リンク及び第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、その第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、さらに第4リンクが付勢部材によりその第1方向に付勢されている構成としてもよい。つまり第4リンクによる第2リンク及び第3リンクのロックが付勢部材の付勢力により加勢される構成としてもよい。これにより、ロック機構を用いた機器の使用中に不意にロックが外れることが防止される。
【0010】
また、本発明のロック機構は、上記リンク機構が、リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンクを有し、これら第2リンク、第3リンク、及び第4リンクはそれぞれ回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、第4リンクは第3リンクに接続され、第4リンクは、第2リンク及び第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、そして第4リンクが、第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定したときに第2リンクに嵌合してこれが第3リンクから離れることを阻止する係止部を有する構成としてもよい。つまり第2リンクが第3リンクから離れないよう、第4リンクが第2リンクを構造的に係止する構成としてもよい。これにより、ロック機構を用いた機器の使用中に不意にロックが外れることが防止される。
【0011】
また、本発明のロック機構は、第4リンクが第1リンクに接続され、第4リンクは、その内部に第1リンクを収容可能であり、又は前記第1リンクと平行に配置可能であり、第4リンクが第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定したときに、第1リンクがその伸縮部の復元力により第4リンクを第1方向へ誘導する構成であることが望ましい。つまり第4リンクによる第2リンク及び第3リンクのロックが第1リンクの復元力により加勢される構成とすることが望ましい。これにより、ロック機構を用いた機器の使用中に不意にロックが外れることが防止される。
【0012】
このとき、本発明のロック機構は、第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定している第4リンクを、第1方向の反対方向である第2方向に回転させるときに、第4リンクと第1リンクとが直線状に又は平行に重なる位置を境に、第1リンクがその伸縮部の復元力により第4リンクを第2方向に付勢することが望ましい。つまりロックされた状態にある第2リンク及び第3リンクをリリース(ロック解除)する際に、第1リンクの復元力がそのリリース操作を加勢する構成とすることが望ましい。これにより第2リンク及び第3リンクの堅牢なロックと、これらの速やかなリリースとが両立される。またこのとき、第1リンクの伸縮部の復元力は付勢部材の復元力よりも大きいことが望ましい。
【0013】
また、本発明のロック機構は、第4リンクが第1リンクに接続され、第4リンクによる第2リンク及び第3リンクの固定が解除されて第2リンク及び第3リンクの一方が他方側から離れる方向に回転すると、第4リンクはこれに追従して第1方向に回転し、その方向への回転の途中で第4リンク及び第1リンクが直線状に配置されてもなお、付勢部材が第4リンクを第1方向に付勢していることが望ましい。第4リンクがリンク機構の思案点(ここでは第4リンク及び第1リンクが直線状に配置される位置)を越える位置まで第1方向に付勢されることにより、その後に原動節が逆方向に回転したときに、第4リンクの従動方向(回転方向)を第1方向側に誘導することができる。つまり、第4リンクが上記思案点を第1方向側に越えた状態で原動節が逆方向に回転すると、第4リンクは元の位置(第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定していた位置)に戻ろうとはせず、その反対側(第1方向)に回転する。この原理を利用することにより、第2リンク及び第3リンクが分離した状態を保つことが可能となる。
【0014】
また、本発明のロック機構は、各リンク部材がそれぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、第1リンクは第2リンク及び第4リンクに接続され、第2リンクは第1リンク及び第3リンクに接続され、第3リンクは第2リンク及び第4リンクに接続され、第4リンクは第1リンク及び第3リンクに接続され、第2リンク及び第3リンクが第4リンクに固定された状態で、リンク機構を各ジョイントの軸線方向にみたときに、第1リンクと第4リンクとを接続するジョイントである第1ジョイントが、第1リンクと第2リンクとを接続するジョイントである第2ジョイントが移動する円弧軌道上の該第2ジョイントの固定位置における接線よりも第4リンクの第1方向側にある構成であることが望ましい。かかる構成によれば、第2リンクを第3リンクから分離する方向に力が加えられ、第1ジョイントが上記軌道上を移動しようとしても、その力は第2ジョイントを第1方向側に動かすように作用する。これにより第4リンクはさらに強固に締められ、第2リンク及び第3リンクの固定状態が維持される。
【0015】
また、本発明のロック機構は、リンク機構が、リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンクを有し、第2リンク、第3リンク、及び第4リンクはそれぞれ回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、第4リンクは第1リンクに接続され、第4リンクは、第2リンク及び第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、その後、第4リンクによる第2リンク及び第3リンクの固定が解除され、第2リンク及び第3リンクの一方が他方側から離れる方向に回転すると、第4リンクはこれに追従して第1方向に回転し、このとき第4リンクが、その第1方向への回転の途中で第4リンク及び第1リンクが直線状に配置された状態からさらに第1方向へ回転可能であることが望ましい。なおこのとき、第1リンクの伸縮部は、第1リンクがその隣接するリンク部材と直線状に配置されたときの圧縮率が、その直前または直後となる位置における圧縮率よりも大きい。第4リンクがリンク機構の思案点(ここでは第4リンク及び第1リンクが直線状に配置される位置)を越える位置まで第1方向に回転すると、第1リンクはその伸縮部の復元力によりその思案点から離れる方向に誘導される。つまり、第4リンクが思案点を第1方向側に越えた状態で原動節が逆方向に回転すると、第4リンクは元の位置(第2リンク及び第3リンクを固定していた位置)に戻ろうとはせず、その反対方向(第1方向)に回転する。この原理を利用することで、第2リンク及び第3リンクが分離した状態を維持することが可能となる。
【0016】
また、本発明のロック機構は、リンク機構が四節リンク機構であり、各リンク部材がそれぞれ回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、第1リンクは第2リンク及び第4リンクに接続され、第2リンクは第1リンク及び第3リンクに接続され、第3リンクは第2リンク及び第4リンクに接続され、第4リンクは第1リンク及び第3リンクに接続され、第2リンク及び3リンクは他部材が接合される接合部を有し、第2リンク及び3リンクの一方が固定節である構成としてもよい。
【0017】
また、第1リンクの伸縮部は素線断面が矩形状のコイルばねにより構成されてもよい。
【0018】
また、本発明のロック機構は、上記付勢部材の復元力を第1リンクの伸縮部の復元力より大きくすることも考えられる。そうすれば、第2リンク及び第3リンクの一方を他方側に当接させたときに、付勢部材の復元力によって第4リンクを自動的に第一方向に回転させることができる。つまり第2リンク及び第3リンクを当接させたときにその位置を自動的にロックすることができる。
【0019】
また、本発明のロック機構は、第1リンクが、軸体と、ボルト部材と、コイルばねと、他のリンク部材との接続部である連結部材と、を有し、軸体がその軸線方向における一方の端面にボルト部材が螺合されるねじ穴を有し、連結部材が、ボルト部材の軸部の直径よりも一回り大きな穴径の貫通穴である遊嵌穴を有し、ボルト部材の軸部は、遊嵌穴に挿通されてねじ穴に螺合され、コイルばねが、ボルト部材の軸部に装着され、軸体の端面と連結部材との間に挟まれている構成としてもよい。かかる構成では、連結部材はコイルばねによりボルト部材の頭部に押し付けられることとなる。つまり連結部材は、コイルばねの圧縮方向にその復元力を超える力が加えられると、軸体側に近づくように移動する。この軸体の軸線方向の長さやコイルばねの伸縮幅(自然長と密着高さの差)を調節することで、第1リンクのジョイント間の長さの変動幅を調節することができる。またコイルばねの復元力を調節することで、例えば第1リンクがロック機構のロック状態を維持する強度を調節することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するため、本発明の無人航空機は、水平回転翼を有する複数のロータと、前記各ロータを支持する複数本の棒体であるロータアームと、を備え、、前記各ロータアームにはその長さ方向における中途に本発明のロック機構が設けられ、前記リンク部材の一つは、前記ロータアームの基端側半体に接合され、又は該基端側半体の一部であり、前記リンク部材の他の一つは、前記ロータアームの先端側半体に接合され、又は該先端側半体の一部であることを要旨とする。
【0021】
複数のロータ及びロータアームを有する無人航空機(いわゆるマルチコプター)のロータアームに本発明のロック機構を適用することにより、無人航空機を使用する際のロータアームの展開作業や、保管・運搬時のロータアームの折り畳み作業の負担が軽減される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明のロック機構によれば、リンク機構を応用したロック機構の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態にかかるマルチコプターの外観を示す斜視図である。
図2】ロータアームの展開時および折り畳み時のロック機構の状態を示す平面図である。
図3】ロック機構を構成するリンク部材の一つである伸縮リンクの構造を示す側面図である。
図4】ロータアームの展開時および折り畳み時におけるロック機構の揺動動作を示す遷移図である。
図5】ロータアームの展開時および折り畳み時におけるロック機構の揺動動作を示す遷移図である。
図6】ロック機構が備えるねじりコイルばねと、可動側連結部およびレバー部の嵌合構造とを示す斜視図(a)及び平面図(b)である。
図7】伸縮リンクによるレバー部のロック加勢作用およびリリース加勢作用を示す平面図である。
図8】伸縮リンクの2つのジョイントの位置関係によりレバー部をロック位置に保持する機能を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、無人航空機であるマルチコプターのロータアームに本発明のロック機構を適用した例である。本形態のロック機構は、四節リンク機構の仕組みを応用したロック機能が付加されたヒンジ機構であり、簡単な操作によりロータアームを展開した状態および折り畳んだ状態に固定することができる。これによりロータアームの展開作業や折り畳み作業の負担が軽減されている。
【0025】
<マルチコプターの構成>
図1は、本形態にかかるマルチコプター90の外観を示す斜視図である。図1(a)はロータアーム91が展開されたマルチコプター90の外観を示す図であり、図1(b)はロータアーム91が折り畳まれたマルチコプター90の外観を示す図である。
【0026】
マルチコプター90は6基のロータ93を有するいわゆるヘキサコプタである。マルチコプター90の機体中央に配置された胴部からは6本のロータアーム91が平面視放射状に延びており、ロータ93はこれらロータアーム91の先端にそれぞれ支持されている。なおマルチコプター90はヘキサコプタに限られず例えば4基のロータで飛行するいわゆるクアッドコプタなどであってもよい。
【0027】
ロータアーム91は円筒形状のパイプ材からなる棒体であり、ロータ93を支持する先端側半体91aと、胴部に固定された基端側半体91bとにより構成されている。これら先端側半体91a及び基端側半体91bはロック機構10により互いに回動可能に接続されている。つまりロック機構10は、ロータアーム91の長さ方向における中途に配置され、これら先端側半体91a及び基端側半体91bを連結するヒンジ機構である。
【0028】
ロック機構10は、図1(a)において一点鎖線で示すように、マルチコプター90を飛行させる際には先端側半体91aと基端側半体91bとが一直線になる位置でこれらを固定するとともに、マルチコプター90の保管・運搬時には先端側半体91aを平面視時計回りに折り曲げた状態で半固定する。本形態のロック機構10は手指で操作可能であり、その操作に工具を用いる必要はない。
【0029】
その他、本形態のマルチコプター90では、ロータアーム91を折り曲げた際にその先端側半体91aが隣のロータアーム91に干渉することを防ぐため、先端側半体91aを水平にではなく、これがその根元から先端に向かってやや上方に傾くように斜めに折り曲げている。つまり本形態のロック機構10は、先端側半体91aが斜めに折り曲げられるようにその配置角度が調節されている。また、本形態のマルチコプター90は、ロータ93の水平回転翼に折畳み式プロペラ931が採用されていることで、飛行や保管・運搬の都度プロペラを着脱する手間が省かれている。
【0030】
<ロック機構の構成>
図2はロータアーム91の展開時および折り畳み時のロック機構10の状態を示す平面図である。図2(a)はロータアーム91が展開されたときのロック機構10の状態を示しており、図2(b)はロータアーム91が折り畳まれたときのロック機構10の状態を示している。以下、図2を参照してロック機構10の全体構造について説明する。
【0031】
本形態のロック機構10は、その基本構造にクローズドループの四節リンク機構を用いている。ロック機構10はこれを構成するリンク部材として、伸縮リンク20(第1リンク)、可動側連結部30(第2リンク)、固定側連結部40(第3リンク)、及びレバー部50(第4リンク)を有している。可動側連結部30及び固定側連結部40は他部材が接合される接合部31,41を有しており、可動側連結部30の接合部31には先端側半体91aが、固定側連結部40の接合部41には基端側半体91bがそれぞれ接合されている。これらリンク部材はそれぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイント11-14を有している。具体的には、伸縮リンク20はジョイント13,14によりレバー部50及び可動側連結部30に接続され、可動側連結部30はジョイント11,14により固定側連結部40及び伸縮リンク20に接続され、固定側連結部40はジョイント11,12により可動側連結部30及びレバー部50に接続され、レバー部50はジョイント12,13により固定側連結部40及び伸縮リンク20に接続されている。本形態のロック機構10は、基本的には固定側連結部40が固定節(静止節)となり、可動側連結部30及びレバー部50のいずれか一方が原動節、他方が従動節となる。よって伸縮リンク20は中間節となる。ただし実際の使用時には各リンク部材を適宜押したり引いたりしながら操作することになるためこの定義は厳密なものではない。また本形態のロック機構10はアクチュエータ等の駆動源は備えず、手動で操作される。
【0032】
ロータアーム91が展開されるときには、可動側連結部30は、ジョイント11を回転中心として反時計回りに回転する。そして可動側連結部30及び固定側連結部40の端面同士が当接した状態でレバー部50が締められる(レバー部50がジョイント12を回転中心として時計回りに限界まで回される)ことでこれらの相対位置が固定される。以降の説明では、図2(a)に示す可動側連結部30と固定側連結部40の位置関係を、これらの「閉位置」ともいう。
【0033】
ロータアーム91が折り畳まれるときには、可動側連結部30は、ジョイント11を回転中心として時計回りに回転する。可動側連結部30はそのジョイント11の周辺に、ジョイント11の径方向外側に張り出した膨出部である肩部33を有している。一方、固定側連結部40は、肩部33が時計回りに旋回するときのその旋回軌道上に配置されたストッパ部70を有している。ロータアーム91が折り畳まれるときには、可動側連結部30はその肩部33がストッパ部70に当接する位置まで回転する。そしてレバー部50及び伸縮リンク20がこれらが一直線に連続する位置を越えた位置に置かれることで、可動側連結部30は逆転不能に固定される。ロータアーム91の展開時および折り畳み時における固定原理については後段で詳述する。
【0034】
<伸縮リンクの構造>
図3は、ロック機構10を構成するリンク部材の一つである伸縮リンク20の構造を示す側面図である。以下、図3を参照して伸縮リンク20の構造について説明する。
【0035】
伸縮リンク20は、軸体21と、連結部材22,23、ボルト部材であるキャップボルト241,242、そして、素線断面が矩形状のコイルばねである角ばね25により構成されるリンク部材である。伸縮リンク20は、角ばね25により実現されている伸縮部Tが圧縮・伸張することで、ジョイント13,14間の長さが変化する。
【0036】
軸体21はその両端面にねじ穴(ボルト穴)が形成された棒状の部材であり、そのねじ穴にはキャップボルト241,242が螺合されている。連結部材22,23は、伸縮リンク20を他のリンク部材である可動側連結部30及びレバー部50に回転可能に接続するジョイント部材である。連結部材22,23には、キャップボルト241,242の軸部の直径よりも一回り大きな穴径の貫通穴である遊嵌穴22a,23a(いわゆるバカ穴)が形成されている。キャップボルト241,242の軸部は連結部材22,23の遊嵌穴22a,23aに挿通され、軸体21のねじ穴に螺合されている。角ばね25はキャップボルト241の軸部に装着され、軸体21の端面と連結部材22との間に挟まれている。
【0037】
ここで、伸縮リンク20とレバー部50とを接続する連結部材23は、キャップボルト242の頭部と軸体21の端面との間に挟まれ、その位置が固定されている。一方、伸縮リンク20と可動側連結部30とを接続する連結部材22は、角ばね25によってキャップボルト241の頭部に押し付けられているにすぎない。つまり連結部材22は、角ばね25の圧縮方向にその復元力を超える力が加えられると、軸体21側に近づくように移動する。このように本形態のロック機構10は、これを構成するリンク部材の一つに、その長さが弾性をもって伸縮する伸縮リンク20を含めることにより、剛体のリンク部材のみからなるリンク機構では不可能な揺動動作を可能としている。
【0038】
なお、本形態の角ばね25は、ロック機構10の揺動動作のその全体において、圧縮された状態か又は自然長のどちらかであり、引張する(引っ張られて伸びる)ことはない。そして、伸縮リンク20はその隣接するリンク部材と直線状または平行に配置されたときの圧縮率がその前後における圧縮率よりも大きくなる。つまり伸縮リンク20は、その隣接するリンク部材と直線状または平行に配置されたときの反発力がその前後における反発力よりも大きくなり、伸縮リンク20はその位置からいずれか遠ざかる方に誘導される。
【0039】
本形態の伸縮リンク20は、軸体21の軸線方向の長さや角ばね25の伸縮幅を調節することで、伸縮リンク20のジョイント13,14間の長さの変動幅を調節することができる。また、角ばね25の復元力を調節することで、(いずれも後述するが)伸縮リンク20がレバー部材50をロック位置に保つ作用の強度や、折り畳まれた状態のロータアーム91をその状態に保つ作用の強度を調節することができる。
【0040】
<ロック機構の動作および機能>
図4及び図5は、ロータアーム91の展開時および折り畳み時におけるロック機構10の揺動動作を示す遷移図である。図6はロック機構10が備えるねじりコイルばね60と、可動側連結部30及びレバー部50の嵌合構造とを示す斜視図(a)及び平面図(b)である。
【0041】
図4(a)はロータアーム91の展開時におけるロック機構10の状態を示している。このとき、可動側連結部30及び固定側連結部40は閉位置にあり、締められたレバー部50によりその相対位置が固定されている。これによりロータアーム91が展開された状態が保持されている。以降の説明では、図4(a)におけるレバー部50の位置をレバー部50の「ロック位置」ともいう。なおレバー部50がロック位置に配置されたときには、伸縮リンク20はレバー部50の内側に収容される。
【0042】
ここで、図6(a)に示すように、固定側連結部40とレバー部50との接続部(ジョイント12)には、付勢部材であるねじりコイルばね60が配置されている。ねじりコイルばね60は、レバー部50が有するピンであるばね受けピン53を、レバー部50が時計回りに回転する方向に付勢している。つまりレバー部50はねじりコイルばね60の付勢力(復元力)によってもロック位置に保持されている。
【0043】
さらに、図6(a)に示すように、可動側連結部30は閉位置に配置されたときにレバー部50側に突き出す凸部32を有しており、レバー部50には、ジョイント12側の端部およびその近傍部に、この凸部32が嵌合される空間である凹部51が形成されている。凹部51は、凸部32が構造的に引っ掛かることで可動側連結部30が固定側連結部40から離れることを阻止する係止部である。凸部32及び凹部51は、可動側連結部30が閉位置にある状態でレバー部50をロック位置に配置することで嵌合される。
【0044】
図7は、伸縮リンク20によるレバー部50のロック加勢作用およびリリース加勢作用を示す平面図である。図7中の二点鎖線は、レバー部50が回転したときにジョイント13が通る軌道である。図7中の三点鎖線は、伸縮リンク20の角ばね25が仮に最大長のままであったとして、伸縮リンク20がジョイント14を中心に回転したときにジョイント13相当部が通る仮想的な軌道である。なお、説明の便宜上これら二点鎖線および三点鎖線を円形に描いているが、レバー部50も伸縮リンク20も無制限に回転可能というわけではなく、実際にはこれらの揺動範囲は制限されている。
【0045】
レバー部50は伸縮リンク20とは異なり伸縮構造のない通常のリンク部材であるため、レバー部50が回転するとジョイント13は実際に二点鎖線上を通る。一方、伸縮リンク20は二点鎖線と三点鎖線の位置のずれを角ばね25で吸収しながらレバー部50に追従して回転する。図7(a)に示すように、伸縮リンク20は、レバー部50と平行に重なる位置に配置されたときにその直前および直後よりも圧縮される。つまり伸縮リンク20は、その復元力により、レバー部50と平行に配置される位置からいずれか遠ざかる方向に誘導される。そして図7(b)に示すように、レバー部50がロック位置に至ると伸縮リンク20の圧縮率は下がる。つまり伸縮リンク20はレバー部50との平行配置に反発してロック位置に誘導される。すなわち、ロック位置にあるレバー部50は、伸縮リンク20の復元力によってもその位置が保持されている。
【0046】
図8は、伸縮リンク20のジョイント13及びジョイント14の位置関係によりレバー部50のロック位置を保持する機能を示す平面図である。図8の一点鎖線はジョイント11を中心として可動側連結部30が回転するときにジョイント14(第2ジョイント)が通る軌道である。なお、説明の便宜上ジョイント14の軌道を円形に描いているが、実際には円弧形状の軌道となる。直線TGはこの軌道に対する接線であり、レバー部50が可動側連結部30をロックしているときのジョイント14の位置における接線である。本形態では、レバー部50がロック位置にあるときに、ジョイント13(第1ジョイント)は、この直線TGよりもアーム91寄りに、つまり直線TGよりもレバー部50の時計回り側に配置されている。そのため、アーム91の先端側半体91aに対してこれを折り畳む方向(CW)に力が加えられ、ジョイント11を中心としてジョイント14が上記軌道上を移動しようとしても、その力はジョイント13をアーム91側に押し付けるように作用する。これによりレバー部50はさらに強固に締められ、ロック状態が維持される。
【0047】
このように、本形態のレバー部50は、ねじりコイルばね60と伸縮リンク20の付勢力・復元力によりロック位置に押し付けられ、そして、凸部32と凹部51の嵌合により可動側連結部30が構造的にロックされている。これによりマルチコプター90の飛行中にロータアーム91のロックが不意に外れることが防止されている。
【0048】
ロータアーム91を折り畳むときには、まず図4(b)に示すように、レバー部50のノブ52を引いてレバー部50を反時計回り(第2方向)に回転させる。そしてレバー部50と伸縮リンク20とが平行に配置される位置を越えると、伸縮リンク20の復元力はレバー部50を反時計回り方向へ誘導するように作用する。本形態の伸縮リンク20(角ばね25)の復元力はねじりコイルばね60の付勢力よりも大きく、レバー部50は、図4(b)の位置から、可動側連結部30が固定側連結部40から分離しはじめる位置まで、伸縮リンク20の復元力によって自動的に回転する。これにより可動側連結部30及び固定側連結部40の堅牢なロックと、これらの速やかなリリースとが両立されている。
【0049】
なお、本形態では角ばね25の復元力がねじりコイルばね60の付勢力よりも大きくなるように部品が選択されているが、逆に、ねじりコイルばね60の付勢力を角ばね25の復元力より大きくすることも考えられる。その構成では、可動側連結部30が閉位置に配置されたときに、レバー部50がねじりコイルばね60の復元力によって自動的に時計回りに回転する。つまり、可動側連結部30を閉位置に配置したと同時に、その位置をレバー部50により自動的にロックすることができる。
【0050】
図5(a)は図4(c)と同じ状態を示している。凸部32と凹部51の嵌合が解除されたら、今度は先端側アーム91b(可動側連結部30)を時計回りに回転させる。これにより可動側連結部30は固定側連結部40から離れる方向へ回転する。可動側連結部30が固定側連結部40から離れると、レバー部50はこれに追従して再度時計回りに回転する。
【0051】
図5(b)の位置まで可動側連結部30が回転すると、可動側連結部30の肩部33が固定側連結部40のストッパ部70に突き当たる。このとき、伸縮リンク20とレバー部50は一直線に連続するように配置されているか、またはその直前の状態にある。
【0052】
可動側連結部30を原動節とする場合、伸縮リンク20とレバー部50とが一直線に配置された姿勢はロック機構10(リンク機構)の思案点となる。以降の説明では、一直線に配置された伸縮リンク20及びレバー部50をロック機構10の思案点Cという。上でも述べたように、本形態のロック機構10は、思案点Cにおける伸縮リンク20の圧縮率がその前後における圧縮率よりも大きい。そのため伸縮リンク20は、その復元力により思案点Cからいずれか遠ざかる方に誘導される。すなわち本形態のロック機構10は、伸縮リンク20をその復元力の限りにおいて思案点Cの前か後となる位置に保持することができる。
【0053】
そして本形態のロック機構10は、伸縮リンク20とレバー部50とが一直線に配置された状態(思案点C)から、指で押し込めばさらにもう少しだけレバー部50を時計回りに、つまり伸縮リンク20を反時計回りに回転させることができる。思案点Cを反時計回りに越えた伸縮リンク20は思案点Cから遠ざかる方向に、つまり反時計回り方向に誘導されているため、故意に力を加えなければ思案点Cの位置には戻らない。つまり伸縮リンク20の復元力により、伸縮リンク20は思案点Cを反時計回りに越えた位置に、レバー部50は思案点Cを時計回りに越えた位置に保持される。そして、レバー部50はその位置が時計回りに回転可能な限界位置である。
【0054】
ここで、図6(b)に示すように、本形態のねじりコイルばね60は、思案点Cにおいてもなおレバー部50を時計回りに付勢している。つまり本形態のねじりコイルばね60は、レバー部50が思案点Cを時計回りに越えた状態が維持されるように作用する。
【0055】
伸縮リンク20が思案点Cを反時計回りに越えた状態で可動側連結部30が逆方向(反時計回り)に回転すると、伸縮リンク20はさらに反時計回りに回転しようとするため、レバー部50はそれに追従して時計回りに回転しようとする。しかしレバー部50はすでに限界位置にあるためそれ以上は時計回りに回転することができず、結果、可動側連結部30の逆方向への回転は阻止される。これにより、ロータアーム91が折り畳まれた状態が保持される。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。例えば、上記実施形態ではロック機構10がマルチコプター90に適用されているが、本発明のロック機構は他の機器に適用することもできる。また、可動側連結部30及び固定側連結部40の可動側(先端側半体91aに接合される連結部)と固定側(基端側半体91bに接合される連結部)は入れ替えてもよい。また、上記実施形態ではロック機構10の基本構造に四節リンク機構を用いているが、例えば五節以上のリンク機構を用いる場合でも、五節目以降のリンク部材が上記実施形態の動作や効果及びその原理を妨げない態様で用いられている場合には、そのリンク機構は実質的に上記実施形態の四節リンク機構と同等であると見ることができる。また、上記実施形態では可動側連結部30及び固定側連結部40は先端側半体91a及び基端側半体91bとは別部材であるが、可動側連結部30と先端側半体91aとを、又は固定側連結部40と基端側半体91bとを一部品化することも考えられる。
【符号の説明】
【0057】
10:ロック機構,11-14:ジョイント,20:伸縮リンク(第1リンク),21:軸体,22,23:連結部材,22a,23a:遊嵌穴,241,242:キャップボルト,25:角ばね(コイルばね),T:伸縮部,30:可動側連結部(第2リンク),31:接合部,32:凸部,33:肩部,40:固定側連結部(第3リンク),41:接合部,50:レバー部(第4リンク),51:凹部(係止部),52:ノブ,53:ばね受けピン,60:ねじりコイルばね(付勢部材),70:ストッパ部,C:思案点,90:無人航空機,91:ロータアーム,91a:先端側半体,91b:基端側半体,93:ロータ,931:折畳み式プロペラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、
前記リンク部材の一つである第1リンクは、
回り対偶の接続部である2つのジョイントと、
弾性変形可能な伸縮部と、を有し、
前記第1リンクは、前記伸縮部が変形することで前記ジョイント間の長さが変化し、
前記リンク機構はさらに、前記リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンク、並びに付勢部材を有し、
前記第2リンク、前記第3リンク、及び前記第4リンクは、それぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、
前記第4リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、該第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、
前記第4リンクは前記付勢部材により前記第1方向に付勢されている
ロック機構
【請求項2】
四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、
前記リンク部材の一つである第1リンクは、
回り対偶の接続部である2つのジョイントと、
弾性変形可能な伸縮部と、を有し、
前記第1リンクは、前記伸縮部が変形することで前記ジョイント間の長さが変化し、
前記リンク機構はさらに、前記リンク部材である第2リンク、第3リンク、及び第4リンクを有し、
前記第2リンク、前記第3リンク、及び前記第4リンクは、それぞれ、回り対偶の接続部である2つのジョイントを有し、
前記第4リンクは前記第3リンクに接続され、
前記第4リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側に回転して他方側に当接した状態において、該第4リンクの回転方向の一方である第1方向に回転することでこれら第2リンク及び第3リンクを分離不能に固定し、
前記第4リンクは、前記第2リンク及び前記第3リンクを分離不能に固定したときに前記第2リンクに嵌合してこれが前記第3リンクから離れることを阻止する係止部を有する
ロック機構
【請求項3】
前記第1リンクの前記伸縮部は、前記第1リンクがその隣接する前記リンク部材と直線状に又は平行に配置されたときの圧縮率が、その直前または直後となる位置における圧縮率よりも大きい
請求項1又は請求項2に記載のロック機構。
【請求項4】
前記第4リンクは前記第1リンクに接続され、
前記第4リンクは、その内部に前記第1リンクを収容可能であり、又は前記第1リンクと平行に配置可能であり、
前記第1リンクは、前記第4リンクが前記第2リンク及び前記第3リンクを分離不能に固定したときに、前記伸縮部の復元力により前記第4リンクを前記第1方向へ誘導する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項5】
前記第2リンク及び前記第3リンクを分離不能に固定している前記第4リンクを前記第1方向の反対方向である第2方向に回転させるときに、前記第1リンクは、前記第4リンクと前記第1リンクとが直線状に又は平行に重なる位置を境に、前記伸縮部の復元力により前記第4リンクを前記第2方向に付勢する
請求項4に記載のロック機構。
【請求項6】
前記第1リンクの前記伸縮部の復元力は前記付勢部材の復元力よりも大きい
請求項1を引用する請求項5に記載のロック機構。
【請求項7】
前記第4リンクは前記第1リンクに接続され、
前記第4リンクによる前記第2リンク及び前記第3リンクの固定が解除され、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側から離れる方向に回転すると、前記第4リンクはこれに追従して前記第1方向に回転し、
前記第1方向への回転の途中で前記第4リンク及び前記第1リンクが直線状に配置された状態において、前記付勢部材は前記第4リンクを前記第1方向へさらに付勢する
請求項1又は請求項1を引用する請求項3から請求項6のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項8】
記第1リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第2リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第3リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第4リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第2リンク及び前記第3リンクが前記第4リンクに固定された状態で、前記リンク機構を前記各ジョイントの軸線方向にみたときに、前記第1リンクと前記第4リンクとを接続する前記ジョイントである第1ジョイントは、前記第1リンクと前記第2リンクとを接続する前記ジョイントである第2ジョイントが移動する円弧軌道上の該第2ジョイントの固定位置における接線よりも前記第4リンクの前記第1方向側にある
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項9】
記第4リンクは前記第1リンクに接続され、
記第4リンクによる前記第2リンク及び前記第3リンクの固定が解除され、前記第2リンク及び前記第3リンクの一方が他方側から離れる方向に回転すると、前記第4リンクはこれに追従して前記第1方向に回転し、
前記第1方向への回転の途中で前記第4リンク及び前記第1リンクが直線状に配置された状態において、前記第4リンクはそこからさらに前記第1方向へ回転可能である
請求項3又は請求項3を引用する請求項4から請求項8のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項10】
前記リンク機構は四節リンク機構であり、
記第1リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第2リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第3リンクは前記第2リンク及び前記第4リンクに接続され、
前記第4リンクは前記第1リンク及び前記第3リンクに接続され、
前記第2リンク及び前記3リンクは他部材が接合される接合部を有し、
前記第2リンク及び前記3リンクは一方が固定節である
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のロック機構。
【請求項11】
四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、
前記リンク部材の一つである第1リンクは、
回り対偶の接続部である2つのジョイントと、
弾性変形可能な伸縮部と、を有し、
前記第1リンクは、前記伸縮部が変形することで前記ジョイント間の長さが変化し、
前記第1リンクの前記伸縮部は素線断面が矩形状のコイルばねを有する
ロック機構
【請求項12】
前記付勢部材の復元力は前記第1リンクの前記伸縮部の復元力よりも大きい
請求項1に記載のロック機構。
【請求項13】
四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、
前記リンク部材の一つである第1リンクは、
回り対偶の接続部である2つのジョイントと、
弾性変形可能な伸縮部と、を有し、
前記第1リンクは、前記伸縮部が変形することで前記ジョイント間の長さが変化し、
前記第1リンクは、
軸体と、
ボルト部材と、
コイルばねと、
他の前記リンク部材との接続部である連結部材と、を有し、
前記軸体はその軸線方向における一方の端面に前記ボルト部材が螺合されるねじ穴を有し、
前記連結部材は、前記ボルト部材の軸部の直径よりも一回り大きな穴径の貫通穴である遊嵌穴を有し、
前記ボルト部材の前記軸部は、前記遊嵌穴に挿通されて前記ねじ穴に螺合され、
前記コイルばねは、前記ボルト部材の前記軸部に装着され、前記軸体の前記端面と前記連結部材との間に挟まれている
ロック機構
【請求項14】
水平回転翼を有する複数のロータと、
前記各ロータを支持する複数本の棒体であるロータアームと、を備え、
前記各ロータアームにはその長さ方向における中途にロック機構が設けられ、
前記ロック機構は、
四節以上のリンク部材により構成されるリンク機構を有し、
前記リンク部材の一つである第1リンクは、
回り対偶の接続部である2つのジョイントと、
弾性変形可能な伸縮部と、を有し、
前記第1リンクは、前記伸縮部が変形することで前記ジョイント間の長さが変化し、
前記リンク部材の一つは、前記ロータアームの基端側半体に接合され、又は該基端側半体の一部であり、
前記リンク部材の他の一つは、前記ロータアームの先端側半体に接合され、又は該先端側半体の一部である
無人航空機。