(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130994
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】水洗大便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 5/10 20060101AFI20220831BHJP
E03D 5/01 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E03D5/10
E03D5/01
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029703
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏村 英明
(72)【発明者】
【氏名】田中 碩樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 謙治
(72)【発明者】
【氏名】高野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】安達 善勝
(72)【発明者】
【氏名】元岡 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 勇樹
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA01
2D039AC04
2D039CB01
2D039DB00
2D039FC00
(57)【要約】
【課題】停電発生時にはリム側給水路へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整を行うことで、タンクが満水となる事態やタンク外へと漏水する事態を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器装置は、便器本体と、タンクと、リム側給水路と、タンク側給水路と、流路切替部と、制御部と、停電検知部とを備える。便器本体は、ボウル部、リム吐水口、排水トラップ管路を有する。タンクは、洗浄水を貯留する。リム側給水路は、リム吐水口へ洗浄水を供給する。タンク側給水路は、タンクへ洗浄水を供給する。流路切替部は、リム側給水路およびタンク側給水路のいずれか一方または両方へ供給される洗浄水量を調整する。停電検知部は、停電を検知する。流路切替部は、タンク側給水路へ洗浄水が供給されている際に停電した場合、タンク側給水路へと供給する洗浄水を減少させ、リム側給水路へと供給する洗浄水を増加させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水によって汚物を排水管へと排出する水洗大便器装置であって、
汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部へと洗浄水を吐出するリム吐水口と、前記ボウル部の底部に接続され該ボウル部からの汚物を前記排水管へと排出する排水トラップ管路とを有する便器本体と、
給水路から供給される洗浄水を貯留するタンクと、
前記給水路を開閉する開閉弁と、
前記給水路の下流側に設けられた分岐部を介して前記リム吐水口へと洗浄水を供給するリム側給水路と、
前記分岐部を介して前記タンクへと洗浄水を供給するタンク側給水路と、
前記分岐部に設けられ、前記リム側給水路および前記タンク側給水路のいずれか一方または両方へと供給される洗浄水の水量を調整するよう動作する流路切替部と、
前記開閉弁および前記流路切替部を制御する制御部と、
停電を検知する停電検知部と
を備え、
前記流路切替部は、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記タンク側給水路へと供給する洗浄水を減少させ、前記リム側給水路へと供給する洗浄水を増加させること
を特徴とする水洗大便器装置。
【請求項2】
前記流路切替部は、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記タンク側給水路へと洗浄水を供給しないこと
を特徴とする請求項1に記載の水洗大便器装置。
【請求項3】
前記水洗大便器装置における各部位の駆動用の電力を供給するコンデンサを備え、
前記制御部は、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記流路切替部が前記タンク側給水路へと洗浄水を供給しないよう前記コンデンサからの電力供給を制御すること
を特徴とする請求項1または2に記載の水洗大便器装置。
【請求項4】
前記コンデンサにおいて、前記流路切替部の駆動用コンデンサを別途有すること
を特徴とする請求項3に記載の水洗大便器装置。
【請求項5】
前記停電検知部が停電を検知した場合に、前記流路切替部に対して付勢力を付与することで該流路切替部へと駆動力を付与するバネを備え、
前記バネは、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記流路切替部が前記タンク側給水路へと洗浄水を供給しないよう該流路切替部に対して付勢力を付与すること
を特徴とする請求項1または2に記載の水洗大便器装置。
【請求項6】
前記流路切替部は、その内部に動力伝達用のギヤを有し、
前記ギヤは、前記流路切替部が前記リム側給水路への給水状態から前記タンク側給水路への給水状態へと動作した後、前記流路切替部の動作した後の状態が変化しない範囲で逆回転されること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の水洗大便器装置。
【請求項7】
前記流路切替部は、前記リム側給水路へと洗浄水を供給するリム側開口部と、前記タンク側給水路へと洗浄水を供給するタンク側開口部とを有し、回転軸を中心に回転して前記リム側開口部および/または前記タンク側開口部を開放し、
前記タンク側開口部は、前記流路切替部の前記リム側開口部を開放するような回転方向について、前記回転方向の下流側が凸状に形成されていること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の水洗大便器装置。
【請求項8】
前記流路切替部は、前記リム側給水路へと洗浄水を供給するリム側開口部と、前記タンク側給水路へと洗浄水を供給するタンク側開口部とを有し、回転軸を中心に回転して前記リム側開口部および/または前記タンク側開口部を開放し、
前記リム側開口部の開口面積は、前記タンク側開口部の開口面積よりも大きいこと
を特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の水洗大便器装置。
【請求項9】
前記停電検知部は、通常状態において通電信号が途切れる時間よりも長く前記通電信号が途切れた場合に停電として検知すること
を特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の水洗大便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リム吐水とジェット吐水とを行う、いわゆるハイブリッド式の水洗大便器装置において、停電時には、電池で便器洗浄バルブを起動させて洗浄水を供給し、洗浄水の供給と同時に排水ソケットのフラッパー弁が便器本体の排水流路を塞いでボウル部に洗浄水を溜め、溜まった洗浄水が流れる勢いで洗浄する手段が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-133360号公報
【特許文献2】特開2016-118021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の水洗大便器装置は、停電時において常時洗浄することを考慮すると、電池を電池ボックスに収納するのが手間となるなど、適切なものではない。また、電池以外でも、たとえば、コンデンサで便器洗浄バルブを起動させる場合、コンデンサが容量切れを起こしていると便器洗浄を行うことができないなど、これも適切なものではない。
【0005】
このため、電力を用いない機械式の洗浄手段として、たとえば、給水用ワイヤと、排水ソケットのフラッパー弁を開閉する排水用ワイヤとの2つのワイヤを操作することで便器洗浄できるものがある。
【0006】
しかしながら、機械式の洗浄手段では、停電が発生した瞬間、便器洗浄バルブがジェット吐水口へと洗浄水を供給するタンクへの給水が多い状態にある場合には、タンクが満水となる事態や、タンク外へと漏水(機外漏水)する事態が発生する可能性がある。
【0007】
実施形態の一態様は、停電発生時にはリム側給水路へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整を行うことで、タンクが満水となる事態やタンク外へと漏水する事態を抑制することができる水洗大便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る水洗大便器装置は、洗浄水によって汚物を排水管へと排出する水洗大便器装置であって、汚物を受けるボウル部と、前記ボウル部へと洗浄水を吐出するリム吐水口と、前記ボウル部の底部に接続され該ボウル部からの汚物を前記排水管へと排出する排水トラップ管路とを有する便器本体と、給水路から供給される洗浄水を貯留するタンクと、前記給水路を開閉する開閉弁と、前記給水路の下流側に設けられた分岐部を介して前記リム吐水口へと洗浄水を供給するリム側給水路と、前記分岐部を介して前記タンクへと洗浄水を供給するタンク側給水路と、前記分岐部に設けられ、前記リム側給水路および前記タンク側給水路のいずれか一方または両方へと供給される洗浄水の水量を調整するよう動作する流路切替部と、前記開閉弁および前記流路切替部を制御する制御部と、停電を検知する停電検知部とを備え、前記制御部は、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記流路切替部は、前記タンク側給水路へと供給する洗浄水を減少させ、前記リム側給水路へと供給する洗浄水を増加させることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、停電が発生した場合、流路切替部がタンクへの給水が多い状態にあったとしても、リム側給水路へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整を行うことができる。これにより、停電時の便器洗浄において、オーバーフロー管の排水性能を超えてタンクが満水となる事態や、タンク外へと漏水する事態を抑制することができる。また、停電時の便器洗浄において、リム吐水口から洗浄水が吐出するため、便器洗浄が行われていることを使用者が視認することができ、停電時における水洗大便器装置を使用することに対する使用者の不安を取り除くことができる。
【0010】
また、上記した水洗大便器装置では、前記流路切替部は、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記タンク側給水路へと洗浄水を供給しないことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、停電が発生した場合の水洗大便器装置の使用状態に関わらず、停電時の便器洗浄において、水洗大便器装置ごとに個体差のないリム側からの洗浄水の一定水量の吐出を可能とする。
【0012】
また、上記した水洗大便器装置では、当該水洗大便器装置における各部位の駆動用の電力を供給するコンデンサを備え、前記制御部は、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記流路切替部が前記タンク側給水路へと洗浄水を供給しないよう前記コンデンサからの電力供給を制御することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、停電が発生した場合の水洗大便器装置の使用状態に関わらず、停電時の便器洗浄において、水洗大便器装置ごとに個体差のないリム側からの洗浄水の一定水量の吐出を可能とする。この場合、コンデンサからの電力供給を制御することで流路切替部へと駆動力を付与することが可能なため、停電発生時におけるタンク側給水路への洗浄水の供給を簡素な構成で抑制もしくは停止することができる。
【0014】
また、上記した水洗大便器装置では、前記コンデンサにおいて、前記流路切替部の駆動用コンデンサを別途有することを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、流路切替部の駆動に対して専用のコンデンサを用いるため、停電発生時におけるコンデンサの容量不足などのおそれがなくなり、流路切替部によるタンク側給水路への洗浄水の供給をより確実に抑制もしくは停止することができる。また、水洗大便器装置の各部位の駆動用コンデンサの容量を低減することができ、さらに、駆動用コンデンサの容量低減に伴い、水洗大便器装置の小型化が可能となる。
【0016】
また、上記した水洗大便器装置では、前記停電検知部が停電を検知した場合に、前記流路切替部に対して付勢力を付与することで該流路切替部へと駆動力を付与するバネを備え、前記バネは、前記タンク側給水路へと洗浄水が供給されている際に前記停電検知部が停電を検知した場合、前記流路切替部が前記タンク側給水路へと洗浄水を供給しないよう該流路切替部に対して付勢力を付与することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、停電が発生した場合の水洗大便器装置の使用状態に関わらず、停電時の便器洗浄において、水洗大便器装置ごとに個体差のないリム側からの洗浄水の一定水量の吐出を可能とする。この場合、バネの付勢力によって流路切替部へと駆動力を付与することが可能なため、停電発生時におけるタンク側給水路への洗浄水の供給を簡素な構成で抑制もしくは停止することができる。
【0018】
また、上記した水洗大便器装置では、前記流路切替部は、その内部に動力伝達用のギヤを有し、前記ギヤは、前記流路切替部が前記リム側給水路への給水状態から前記タンク側給水路への給水状態へと動作した後、前記流路切替部の動作した後の状態が変化しない範囲で逆回転されることを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、停電が発生した場合(たとえば、停電が発生した瞬間)において水洗大便器装置が使用されていた場合でも、流路切替部がリム側給水路へと供給される洗浄水を増加させようと動作する際のギヤのバックラッシュを予め低減させることができ、流路切替部による、リム側給水路へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整を確実に行うことができる。
【0020】
また、上記した水洗大便器装置では、前記流路切替部は、前記リム側給水路へと洗浄水を供給するリム側開口部と、前記タンク側給水路へと洗浄水を供給するタンク側開口部とを有し、回転軸を中心に回転して前記リム側開口部および/または前記タンク側開口部を開放し、前記タンク側開口部は、前記流路切替部の前記リム側開口部を開放するような回転方向について、前記回転方向の下流側が凸状に形成されていることを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、たとえば、コンデンサの容量不足や流路切替部へのゴミ噛みなどが原因で流路切替部によるリム側給水路へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整が上手く行われなかったとしても、流路切替部の少しの動作でリム側給水路への洗浄水の供給が増加するようになる。すなわち、停電発生時において流路切替部が想定通りの動作を行わなかった場合でも、オーバーフロー管の排水性能を超えてタンクが満水となる事態や、タンク外へと漏水する事態を抑制することができる。
【0022】
また、上記した水洗大便器装置では、前記流路切替部は、前記リム側給水路へと洗浄水を供給するリム側開口部と、前記タンク側給水路へと洗浄水を供給するタンク側開口部とを有し、回転軸を中心に回転して前記リム側開口部および/または前記タンク側開口部を開放し、前記リム側開口部の開口面積は、前記タンク側開口部の開口面積よりも大きいことを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、たとえば、コンデンサの容量不足や流路切替部へのゴミ噛みなどが原因で流路切替部によるリム側給水路へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整が上手く行われなかったとしても、流路切替部の少しの動作でリム側給水路への洗浄水の供給が増加するようになる。すなわち、停電発生時において流路切替部が想定通りの動作を行わなかった場合でも、オーバーフロー管の排水性能を超えてタンクが満水となる事態や、タンク外へと漏水する事態を抑制することができる。
【0024】
また、上記した水洗大便器装置では、前記停電検知部は、通常状態において通電信号が途切れる時間よりも長く前記通電信号が途切れた場合に停電として検知することを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、停電検知部による停電の検知が簡素な構成で可能となる。
【発明の効果】
【0026】
実施形態の一態様によれば、停電発生時にはリム側給水路へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整を行うことで、タンクが満水となる事態やタンク外へと漏水する事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態に係る水洗大便器装置の全体構成を示す図である。
【
図4】
図4は、停電時の便器洗浄操作の手順の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、(a)流路切替部の可動部および固定部を示す平面図であり、(b)流路切替部の固定部を示す平面図である。
【
図6】
図6は、停電発生時の流路切替部の動作説明図(その1)である。
【
図7】
図7は、停電発生時の流路切替部の動作説明図(その2)である。
【
図8】
図8は、流路切替部における動力伝達の説明図である。
【
図9】
図9は、流路切替部におけるバックラッシュ低減手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
まず、
図1を参照して実施形態に係る水洗大便器装置1の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係る水洗大便器装置1の全体構成を示す図である。
【0030】
図1に示すように、水洗大便器装置1は、便器本体2と、便器洗浄装置3と、排水ソケット4と、手動操作部51,52とを備える。
【0031】
便器本体2は、汚物を受けるボウル部21と、ボウル部21に接続され、ボウル部21内の汚物を排水管23へと導く排水トラップ管路22とを備える。
【0032】
ボウル部21には、排水トラップ管路22に向けて洗浄水を吐出するジェット吐水口24と、ボウル部21の上縁部に形成されたリムから洗浄水を吐出してボウル部21内に洗浄水の旋回流を形成するリム吐水口25とが形成される。
【0033】
排水トラップ管路22は、その入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて排水ソケット4に接続される下降路部分とを有する。なお、ボウル部21から排水トラップ管路22の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水(溜水)が貯留される。
【0034】
排水ソケット4は、接続流路41を備え、排水トラップ管路22と排水管23との間に設けられる。そして、排水ソケット4は、排水トラップ管路22と排水管23とを接続流路41を介して接続する。
【0035】
このように、便器本体2においては、排水トラップ管路22および接続流路41によって、ボウル部21と排水管23とを接続する排水路が形成される。便器本体2は、水道の直圧でリム吐水口25からリム吐水し、排水ソケット4の開閉によって排水する、いわゆるハイブリッド式である。
【0036】
このような便器本体2においては、ジェット吐水口24から吐出される洗浄水によってサイホン作用を効率的に発生させつつ、ボウル部21内の汚物を、上記サイホン作用を利用して排水路へと引き込んで、排水管23へ排出する。
【0037】
また、排水ソケット4は、開閉弁体42を備える。開閉弁体42は、排水路の一部である接続流路41に設けられ、排水路(接続流路41)を開閉する。なお、開閉弁体42には、たとえば、フラッパー弁が用いられる。
【0038】
手動操作部(以下、第1操作部という)51は、使用者による手動操作を伝達する伝達部である第1ワイヤ51aを介して、開閉弁体42に接続される。第1操作部51は、停電時に便器洗浄を行う場合に使用者の手動操作を受け付ける、たとえば、リング状の部材である。
【0039】
また、第1ワイヤ51aとしては、たとえば、レリースワイヤを用いることができる。図示しないが、具体的には、第1ワイヤ51aは、アウターチューブと、アウターチューブの内部に挿設されたインナーワイヤとを備える。第1ワイヤ51aのインナーワイヤは、上記したように、一端が開閉弁体42に接続される一方、他端が第1操作部51に接続される。
【0040】
たとえば、使用者が、第1操作部51を引っ張るなど、第1操作部51に対して手動で操作(引っ張り操作)を行うと、第1ワイヤ51aのインナーワイヤが移動して、開閉弁体42を回動させる。
【0041】
この場合、第1操作部51が操作されていない通常時において、開閉弁体42は、開状態に維持される。したがって、開閉弁体42は、通常時においては接続流路41の流路断面積を変化させてはいない。
【0042】
一方、使用者が第1操作部51を引っ張り操作すると、インナーワイヤの移動に伴って開閉弁体42が回動して閉状態、すなわち、接続流路41の流路断面積を狭くした状態となる。
【0043】
なお、開閉弁体42は、接続流路41を完全に閉じる必要はない。すなわち、リム吐水口25およびジェット吐水口24から供給される洗浄水によってボウル部21内の水位を初期水位よりも上昇させることができればよいため、開閉弁体42と接続流路41との間に多少の隙間が存在していてもよい。
【0044】
なお、第1操作部51は、便器本体2の後方に設けられた化粧パネル(図示せず)の内部に配置され、外部から視認できない状態となっている。使用者は、化粧パネルを取り外すことで、第1操作部51の手動操作が可能となる。
【0045】
また、手動操作部(以下、第2操作部という)52は、伝達部である第2ワイヤ52aを介して、切替部340に接続される。第2操作部52は、上記した第1操作部51と同様、停電時に便器洗浄を行う場合に使用者の手動操作を受け付ける、たとえば、リング状の部材である。
【0046】
また、第2ワイヤ52aとしては、上記した第1ワイヤ51aと同様、たとえば、レリースワイヤを用いることができる。この場合、第2ワイヤ52aは、第1ワイヤ51aと同様、アウターチューブと、アウターチューブの内部に挿設されたインナーワイヤとを備える。第2ワイヤ52aは、手動操作弁(図示せず)と第2操作部52とを連結し、第2操作部52の操作を手動操作弁に伝達する。
【0047】
便器洗浄装置3は、便器本体2の後部に配置される。便器洗浄装置3は、たとえば、外部電源(図示せず)に接続されており、非停電時には、外部電源から供給される外部電力を用いて電磁弁などの部品を駆動させることで、ボウル部21へと洗浄水を供給する。
【0048】
便器洗浄装置3は、定流量弁311と、開閉弁(以下、電磁弁という)312と、リム吐水用バキュームブレーカ313とを備える。給水路314は、洗浄水を貯留するタンク316への給水とリム吐水とを切り替える流路切替部(便器洗浄バルブともいう)315と、タンク316と、加圧ポンプ317と、ジェット吐水用バキュームブレーカ318と、水抜栓319とを有する。
【0049】
また、便器洗浄装置3は、電磁弁312の開閉動作、流路切替部315の切替動作および加圧ポンプ317の加圧動作などを制御する制御部320を有する。
【0050】
定流量弁311は、止水栓321、ストレーナ322および分岐金具323を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞る。たとえば、定流量弁311は、洗浄水の流量を16リットル/分以下に制限する。定流量弁311を通過した洗浄水は、電磁弁312に流入し、電磁弁312を通過した洗浄水は、流路切替部315によって、リム吐水口25またはタンク316へと供給される。
【0051】
電磁弁312は、制御部320の制御によって開閉するダイヤフラム式の電磁開閉弁である。給水路314には、ダイヤフラム324が設けられ、ダイヤフラム324と隣接して圧力室325が設けられる。電磁弁312は、圧力室325の圧力を変化させることで、ダイヤフラム324を動作させ、給水路314における洗浄水の流れを制御する。
【0052】
具体的には、電磁弁312は、制御部320から開信号が入力されると開弁状態となり、圧力室325の圧力が下降してダイヤフラム324が給水路314を開放し、供給された洗浄水を流路切替部315へ流入させる。一方で、電磁弁312は、制御部320から閉信号が入力されると閉弁状態となり、圧力室325の圧力が上昇してダイヤフラム324が給水路314を閉塞し、流路切替部315への洗浄水の供給を停止させる。
【0053】
流路切替部315は、制御部320の制御信号によって切り替えられ、電磁弁312を介して流入した洗浄水を、リム吐水口25から吐出、またはタンク316に流入させる。
【0054】
リム吐水用バキュームブレーカ313は、流路切替部315を通過した洗浄水をリム吐水口25へ導くリム側給水路326の途中に配置され、リム吐水口25からの洗浄水の逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ313は、ボウル部21の上端面よりも上方に配置されることで、逆流を確実に防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ313の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路327を流れてフロート式逆止弁328を介してタンク316に流入する。
【0055】
タンク316は、ジェット吐水口24から吐出すべき洗浄水を貯水する。たとえば、タンク316は、約2.5リットルの内容積を有する。
【0056】
本実施形態では、タンク側給水路329の先端(下端)はフロート式逆止弁328に接続されており、タンク316からタンク側給水路329への逆流を防止している。また、タンク316の内部には、上端フロートスイッチ330および下端フロートスイッチ331が配置されており、タンク316内の水位を検出できるようになっている。
【0057】
上端フロートスイッチ330は、タンク316内の水位が所定の貯水水位に達すると、オンに切り替わり、制御部320がこれを検知して、電磁弁312を閉鎖させる。一方、下端フロートスイッチ331は、タンク316内の水位が所定の水位まで低下すると、オンに切り替わり、制御部320がこれを検知して、加圧ポンプ317を停止させる。
【0058】
加圧ポンプ317は、タンク316に貯留された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口24から吐出させる。加圧ポンプ317は、タンク316から延びるポンプ側給水路332によって接続され、タンク316内に貯留された洗浄水を加圧する。たとえば、加圧ポンプ317は、タンク316内の洗浄水を加圧して、洗浄水を最大約120リットル/分の流量でジェット吐水口24から吐出させる。
【0059】
水抜栓319は、タンク316の下端部付近であって、加圧ポンプ317よりも下方の位置に配置されている。このため、水抜栓319を開放することにより、メンテナンス時などにタンク316内および加圧ポンプ317内の洗浄水を排出することができる。また、加圧ポンプ317の下方には、水受けトレイ333が配置されている。水受けトレイ333は、結露した水滴や漏水を受ける。
【0060】
一方、加圧ポンプ317の流出口は、ジェット側給水路334を介して、ボウル部21の底部のジェット吐水口24に接続されている。ジェット側給水路334の途中は、上方に向けて凸型に形成されており、凸型部分の最も高い部分であるジェット側給水路頂部334aは、タンク316からジェット吐水口24に至る洗浄水管路の中で最も高い部分になっている。また、ジェット側給水路334のジェット側給水路頂部334aよりも下流側は、ジェット吐水口24と同じ高さに設定されている。
【0061】
ジェット側給水路334には、一端にオーバーフロー口335aを有するオーバーフロー管335が接続されている。オーバーフロー口335aは、上端フロートスイッチ330よりも上方に設けられている。タンク316内の水位が上端フロートスイッチ330よりも高くなった場合には、タンク316内の水は、オーバーフロー口335aからオーバーフロー管335に流入し、加圧ポンプ317により加圧され、フラッパー弁336を介してジェット吐水口24から吐出される。
【0062】
ジェット吐水用バキュームブレーカ318は、流路切替部315を通過した洗浄水をタンク316へ導くタンク側給水路329の途中に配置され、タンク316からの洗浄水の逆流を防止している。ジェット吐水用バキュームブレーカ318の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路327を流れてフロート式逆止弁328を介してタンク316に流入するようになっている。
【0063】
制御部320は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁弁312、流路切替部315、加圧ポンプ317を順次作動させ、リム吐水口25およびジェット吐水口24からの吐水を順次開始させて、ボウル部21を洗浄する。また、制御部320は、洗浄終了後、電磁弁312を開放し、流路切替部315をタンク316側に切り替えて洗浄水をタンク316に補給する。タンク316内の水位が上昇し、上端フロートスイッチ330が規定の貯水量を検出すると、制御部320は、電磁弁312を閉鎖して給水を停止する。
【0064】
なお、制御部320は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部(図示せず)に記憶されているプログラムを、RAM(Random Access Memory)を作業領域として実行することで実現される。また、記憶部(図示せず)は、たとえば、RAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ素子などによって実現される。
【0065】
制御部320には、停電検知部350が接続される。停電検知部350は、たとえば、通電信号を監視することで、停電を検知する。停電検知部350は、通常時でも一瞬だけ通電信号が途切れる、いわゆる瞬間停電(瞬停、瞬断ともいう)の時間よりも長い時間通電信号が途切れた場合に停電として検知する。
【0066】
次に、
図2および
図3を参照して水洗大便器装置1の流路切替部315を含む便器洗浄装置3における洗浄水W0,W1,W2の流れについて説明する。
図2は、便器洗浄装置3を示す平面図である。
図3は、流路切替部315を示す側断面図である。
【0067】
図2および
図3に示すように、水洗大便器装置1では、流路切替部315は、洗浄水の分岐部31において、給水路314から供給される洗浄水W0を、リム側給水路326およびタンク側給水路329のいずれか一方または両方へと供給する。このように、流路切替部315は、リム側給水路326およびタンク側給水路329のいずれか一方または両方へと供給する洗浄水の水量を調整するように動作する。
【0068】
流路切替部315によってリム側給水路326へと供給された洗浄水W1は、リム吐水口25(
図1参照)から吐出され、ボウル部21内を洗浄(リム洗浄)する。また、流路切替部315によってタンク側給水路329へと供給された洗浄水W1は、ジェット吐水口24(
図1参照)から吐出される。
【0069】
ここで、
図4を参照して水洗大便器装置1の停電時の便器洗浄操作について説明する。
図4は、停電時の便器洗浄操作の手順の一例を示す図である。
【0070】
図4に示すように、停電時、水洗大便器装置1(
図1参照)は、待機状態では、ボウル部21(
図1参照)内に洗浄水が溜まっており、排水ソケット4の開閉弁体(フラッパー弁)42(
図1参照)が開いた状態である。次いで、使用者によって第2操作部52(
図1参照)が引っ張り操作され、第2操作部52が操作されると、ボウル部21への給水が開始される。
【0071】
次いで、使用者によって第1操作部51(
図1参照)が引っ張り操作され、第1操作部51が操作されると、開閉弁体(フラッパー弁)42が閉じた状態となり、ボウル部21内の水位が上昇し、便器洗浄が開始される。
【0072】
次いで、水洗大便器装置1は、使用者による第1操作部51の引っ張り操作が終了すると、開閉弁体(フラッパー弁)42が開いた状態となる。このとき、ボウル部21への給水は継続されているため、ボウル部21へ洗浄水が補給(リフィール)される。そして、水洗大便器装置1は、使用者によって第2操作部52が再度引っ張り操作されると、ボウル部21への給水が停止し、便器洗浄を終了する。
【0073】
このように、本実施形態は、機械式の洗浄手段であるため、流路切替部315によって、待機状態だけでなく、どのような状態(たとえば、リム側給水路326へと洗浄水が供給されている最中や、タンク側給水路329へと洗浄水が供給されている最中など)でも、便器洗浄が可能となる。
【0074】
ところで、タンク側給水路329へと洗浄水が供給されている最中に停電を検知した場合、使用者が給水用の操作部である第2操作部52を引っ張り操作すると、ジェット吐水口24から洗浄水が流れる状態となる。このため、使用者がリム吐水口25から流れる洗浄水を視認できず、給水側の閉め忘れが発生することがあり、タンク316が満水となる事態や、タンク316外へと漏水する事態が発生する可能性がある。
【0075】
また、上記したように、停電が発生した場合、(たとえば、停電が発生した瞬間)、便器洗浄バルブがジェット吐水口へと洗浄水を供給するタンク316への給水が多い状態にある場合も、タンク316が満水となる事態や、タンク316外へと漏水する事態が発生する可能性がある。さらに、タンク316のフロート式逆止弁328にゴミ噛みが発生している場合、タンク316外へと漏水する事態が発生する可能性がある。
【0076】
このため、本実施形態では、停電が発生した瞬間、流路切替部315が、タンクへの給水が多い状態にあったとしても、リム側給水路326へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整を行う。
【0077】
図5は、(a)流路切替部315の可動部32および固定部33を示す平面図であり、(b)流路切替部315の固定部33を示す平面図である。流路切替部315(
図3参照)は、
図5(a)に示すように、可動部(以下、ロータという)32と、固定部(以下、ステータという)33とを備える。
【0078】
ロータ32は、扇板状に形成され、ステータ33と互いの面を対向させ、ステータ33と重なって配置される。ロータ32は、回転軸34を中心として、回転可能に設けられる。
【0079】
図5(b)に示すように、ステータ33は、円板状に形成される。ステータ33は、給水側開口部35と、リム側開口部36と、タンク側開口部37とを有する。給水側開口部35は、給水路314(
図2参照)から供給される洗浄水を流入させる。
【0080】
リム側開口部36は、給水路314(
図2参照)からの洗浄水をリム側給水路326(
図2参照)へと供給する。リム側開口部36は、たとえば、多角形状に形成される。リム側開口部36は、好ましくは、三角形状に形成される。タンク側開口部37は、給水路314からの洗浄水をタンク側給水路329(
図2参照)へと供給する。なお、タンク側開口部37は、リム側開口部36と同様、三角形状に形成されてもよい。
【0081】
図5(a)に示すように、ロータ32は、回転軸34を中心として、回転方向R1へと回転することで、リム側開口部36側をより開放させる。また、ロータ32は、回転軸34を中心として、回転方向R2へと回転することで、タンク側開口部37側をより開放させる。タンク側開口部37は、ロータ32のリム側開口部36を開放するような回転方向R1について、回転方向R1の下流側が凸状に形成されている。このように、回転方向R1の下流側が凸状に形成されることで、ロータ32の少しの回転でリム側給水路326(
図2参照)への洗浄水の供給が増加するようになる。
【0082】
また、リム側開口部36は、ロータ32の回転方向R2の最も下流側の凸部36aが、タンク側開口部37におけるロータ32の回転方向R1の最も下流側の凸部37aよりも回転方向R2の下流側に位置している。このような2つの凸部36a,37aの位置関係によっても、ロータ32の少しの回転でリム側給水路326(
図2参照)への洗浄水の供給が増加するようになる。
【0083】
また、リム側開口部36の開口面積は、タンク側開口部37の開口面積よりも大きいことが好ましい。このように、リム側開口部36の開口面積がタンク側開口部37の開口面積よりも大きいことでも、ロータ32の少しの回転でリム側給水路326(
図2参照)への洗浄水の供給が増加するようになる。
【0084】
図6は、停電発生時の流路切替部315の動作説明図(その1)である。上記したように、制御部320(
図1参照)は、流路切替部315の動作(ロータ32の回転動作)を制御する。
【0085】
制御部320は、
図6(図中、左側)に示すように、ロータ32がステータ33のタンク側開口部37を開放している場合には、停電検知部350(
図1参照)が停電を検知した瞬間、
図6(図中、右側)に示すように、リム側開口部36を開放して、タンク側給水路329(
図1参照)へと供給される洗浄水W2を減少させ、リム側給水路326(
図1参照)へと供給される洗浄水W1を増加させるよう、ロータ32を制御する。より具体的には、制御部320は、リム側給水路326へと供給される洗浄水W1をタンク側給水路329へと供給される洗浄水W2よりも増加させるよう、ロータ32を制御する。
【0086】
なお、制御部320は、停電検知部350が停電を検知した瞬間、リム側開口部36を開放するとともに、タンク側開口部37を閉鎖して、供給される洗浄水W0のすべてを、リム側給水路326へと供給される洗浄水W1とすることが好ましい。
【0087】
水洗大便器装置1は、電磁弁312(
図1参照)などの各部位の駆動用の電力を供給するためのコンデンサを備える。また、水洗大便器装置1は、上記コンデンサにおいて、停電検知部350が停電を検知した瞬間にリム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させるために、ロータ32を駆動するためのコンデンサ71(
図9参照)を別途備える。コンデンサ71は、制御部320へ電力を供給することで、制御部320がロータ32を駆動できるようになることから、制御部320を介してロータ32へと駆動力を付与するものである。
【0088】
この場合、制御部320は、タンク側給水路329へと洗浄水が供給されている際に停電検知部350が停電を検知した瞬間、流路切替部315(ロータ32)がタンク側給水路329へと洗浄水を供給しないよう、コンデンサ71からの電力供給を制御する。
【0089】
このように、コンデンサ71は、流路切替部315(ロータ32)専用の駆動用コンデンサである。
【0090】
また、制御部320は、モータ(図示せず)によってロータ32を回転させる。なお、モータは、ロータ32へと駆動力を伝達するために、ロータ32までの間において複数の部品(ギヤなど)が連結されている。
【0091】
図8は、停電発生時の流路切替部315の動作説明図(その2)である。
図8に示すように、流路切替部315は、通常時において、待機状態では、リム側開口部36を開放している。また、流路切替部315は、リム吐水からジェット吐水を行っている間、リム側開口部が開放されている。流路切替部315は、ジェット吐水からリム吐水を行っている間も、リム側開口部が開放されている。流路切替部315は、リム吐水からタンク給水へと切り替わり、タンク給水の最中では、タンク側開口部37が開放されている。
【0092】
制御部320は、タンク側給水路329へと洗浄水が供給されている場合に停電検知部350が停電を検知した瞬間、タンク側給水路329へと洗浄水を供給しないよう流路切替部315を制御する。すなわち、制御部320は、流路切替部315を制御して、タンク給水の最中において停電が発生した場合、タンク側開口部37を閉鎖して、リム側開口部36を開放する。
【0093】
図8は、流路切替部315における動力伝達の説明図である。なお、
図8には、モータとロータ32との間における複数のギヤなどの動力伝達部品を、2つのギヤ61,62で模式的に示している。流路切替部315は、
図8に示すように、リム給水では、ステータ33のリム側開口部36が開放されている。
【0094】
流路切替部315は、タンク給水へと切り替わると、ステータ33のタンク側開口部37が開放される。また、流路切替部315は、その内部に動力伝達用の複数のギヤ61,62を有する。リム給水からタンク給水に切り替わる場合には、動力伝達上流側のギヤ61から下流側のギヤへと力F1が伝達される。
【0095】
ここで、流路切替部315は、タンク給水の状態から速やかにリム側開口部36が開放される待機状態に戻ることが好ましい。このため、たとえば、動力伝達上流側のギヤ62は、ロータ32が回転動作した後、ロータ32の回転動作した後の状態が変化しない範囲で僅かに逆回転され、下流側のギヤ62に対して互いの隙間がなくなるように力F2で密着する。これにより、ギヤ61のバックラッシュを予め低減させることができる。
【0096】
また、より具体的なバックラッシュ低減手段の一例を、
図9を参照して説明する。
図9は、流路切替部315におけるバックラッシュ低減手段の説明図である。
【0097】
図9に示すように、流路切替部315におけるバックラッシュ低減手段では、たとえば、停電検知部350(
図1参照)が停電を検知した瞬間においてロータ32へと駆動力を付与するコンデンサ71を用いることができる。コンデンサ71は、上記したように、流路切替部315のための駆動用コンデンサであり、制御部320(
図1参照)へ電力を供給して、制御部320を介してロータ32へと駆動力を付与する。
【0098】
そして、制御部320は、ロータ32が回転動作した後、ロータ32の回転動作した後の状態が変化しない範囲で、たとえば、動力伝達上流側のギヤ61を逆回転させるよう、コンデンサ71を制御する。
【0099】
これにより、停電が発生した瞬間において水洗大便器装置1が使用されていた場合でも、ロータ32がリム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させようと回転動作する際のギヤ61,62のバックラッシュを予め低減させることができ、流路切替部315による、リム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させるような流路調整を素早く、かつ、確実に行うことができる。
【0100】
以上説明したように、実施形態に係る水洗大便器装置1によれば、停電が発生した瞬間、流路切替部315(ロータ32)がタンク316への給水が多い状態にあったとしても、リム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させるような流路調整を行うことができる。これにより、停電時の便器洗浄において、オーバーフロー管335の排水性能を超えてタンク316が満水となる事態や、タンク316外へと漏水する事態を抑制することができる。また、停電時の便器洗浄において、リム吐水口25から洗浄水が吐出するため、便器洗浄が行われていることを使用者が視認することができ、停電時における水洗大便器装置1を使用することに対する使用者の不安を取り除くことができる。
【0101】
また、タンク側給水路329へと洗浄水が供給されている際に停電検知部350が停電を検知した瞬間、タンク側給水路329へと洗浄水を供給しないことで、停電が発生した瞬間の水洗大便器装置1の使用状態に関わらず、停電時の便器洗浄において、水洗大便器装置1ごとに個体差のないリム側からの洗浄水の一定水量の吐出を可能とする。
【0102】
また、制御部320がタンク側給水路329へと洗浄水が供給されている際に停電検知部350が停電を検知した場合に、流路切替部315(ロータ32)がタンク側給水路329へと洗浄水を供給しないようコンデンサ71からの電力供給を制御することで、停電が発生した場合の水洗大便器装置1の使用状態に関わらず、停電時の便器洗浄において、水洗大便器装置1ごとに個体差のないリム側からの洗浄水の一定水量の吐出を可能とする。この場合、コンデンサ71からの電力供給を制御することで流路切替部315(ロータ32)へと駆動力を付与することが可能なため、停電発生時におけるタンク側給水路329への洗浄水の供給を簡素な構成で抑制もしくは停止することができる。
【0103】
また、流路切替部315(ロータ32)の駆動に対して専用のコンデンサ71を用いるため、停電発生時におけるコンデンサ71の容量不足などのおそれがなくなり、流路切替部315によるタンク側給水路329への洗浄水の供給をより確実に抑制もしくは停止することができる。また、水洗大便器装置1の各部位の駆動用コンデンサの容量を低減することができ、さらに、駆動用コンデンサの容量低減に伴い、水洗大便器装置1の小型化が可能となる。
【0104】
また、ギヤ61が、流路切替部315(ロータ32)の回転動作した後の状態が変化しない範囲で逆回転されることで、停電が発生した瞬間において水洗大便器装置1が使用されていた場合でも、流路切替部315(ロータ32)がリム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させようと回転動作する際のギヤ61,62のバックラッシュを予め低減させることができる。これにより、流路切替部315(ロータ32)による、リム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させるような流路調整を確実に行うことができる。
【0105】
また、タンク側開口部37が、流路切替部315(ロータ32)のリム側開口部36を開放するような回転方向R1について、回転方向R1の下流側が凸状に形成されていることで、たとえば、コンデンサ71の容量不足やゴミ噛みなどが原因で流路切替部315(ロータ32)によるリム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させるような流路調整が上手く行われなかったとしても、流路切替部315(ロータ32)の少しの回転動作でリム側給水路326への洗浄水W1の供給が増加するようになる。すなわち、停電発生時において流路切替部315(ロータ32)が想定通りの回転動作を行わなかった場合でも、オーバーフロー管335の排水性能を超えてタンク316が満水となる事態や、タンク316外へと漏水する事態を抑制することができる。
【0106】
また、リム側開口部36の開口面積がタンク側開口部37の開口面積よりも大きいことでも、たとえば、コンデンサ71の容量不足やゴミ噛みなどが原因で流路切替部315(ロータ32)によるリム側給水路326へと供給される洗浄水を増加させるような流路調整が上手く行われなかったとしても、流路切替部315(ロータ32)の少しの回転動作でリム側給水路326への洗浄水W1の供給が増加するようになる。すなわち、停電発生時において流路切替部315(ロータ32)が想定通りの回転動作を行わなかった場合でも、オーバーフロー管335の排水性能を超えてタンク316が満水となる事態や、タンク316外へと漏水する事態を抑制することができる。
【0107】
また、停電検知部350が、通常状態において通電信号が途切れる時間よりも長く通電信号が途切れた場合に停電として検知することで、停電の検知が簡素な構成で可能となる。
【0108】
なお、上記した実施形態では、コンデンサ71を用いて流路切替部315(ロータ32)を駆動する構成としているが、コンデンサ71に代えて、バネによってロータ32を駆動する構成としてもよい。バネは、たとえば、ロータ32を駆動する駆動用モータに内蔵され、停電検知部350が停電を検知した場合、流路切替部315(ロータ32)に対して付勢力を付与することで、流路切替部315(ロータ32)へと駆動力を付与する。これにより、制御部320によらない簡素な構成として、流路切替部315(ロータ32)を駆動することができる。
【0109】
また、バネには、たとえば、トーションバネが用いられる。このようなバネは、駆動用モータの出力軸に対して、リム側開口部36を常時開放する向きへとロータ32を付勢している。この場合、電気的制御がないときには、バネによってリム側開口部36が開放されている。そして、電気的制御が加わったときには、バネの付勢力以上のトルクでロータ32を回転し、タンク側開口部37の開放が維持される。なお、タンク側開口部37の開放を維持する際は、バネの付勢力でリム側開口部36の開放状態に戻らないように、駆動用モータに対して常時通電を行う。
【0110】
このような構成によっても、停電が発生した場合の水洗大便器装置1の使用状態に関わらず、停電時の便器洗浄において、水洗大便器装置1ごとに個体差のないリム側からの洗浄水の一定水量の吐出を可能とする。この場合、バネの付勢力によって流路切替部315(ロータ32)へと駆動力を付与することが可能なため、停電発生時におけるタンク側給水路329への洗浄水の供給を簡素な構成で抑制もしくは停止することができる。
【0111】
また、上記した実施形態では、停電検知部350が停電を検知した場合の一例として、停電検知部350が停電を検知した瞬間、タンク側給水路329へと供給される洗浄水W2を減少させ、リム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させる構成としているが、これに限定されず、たとえば、停電検知部350が停電を検知してから所定時間(たとえば、数秒)経過した後にタンク側給水路329へと供給される洗浄水W2を減少させ、リム側給水路326へと供給される洗浄水W1を増加させる構成としてもよい。
【0112】
このように構成しても、停電時の便器洗浄において、オーバーフロー管335の排水性能を超えてタンク316が満水となる事態や、タンク316外へと漏水する事態を抑制することができ、また、停電時の便器洗浄において、リム吐水口25から洗浄水が吐出するため、便器洗浄が行われていることを使用者が視認することができる。
【0113】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0114】
1 水洗大便器装置
2 便器本体
21 ボウル部
22 排水トラップ管路
23 排水管
24 ジェット吐水口
25 リム吐水口
3 便器洗浄装置
31 分岐部
32 可動部(ロータ)
33 固定部(ステータ)
34 回転軸
35 給水側開口部
36 リム側開口部
36a 凸部
37 タンク側開口部
37a 凸部
311 定流量弁
312 開閉弁(電磁弁)
313 リム吐水用バキュームブレーカ
314 給水路
315 流路切替部
316 タンク
317 加圧ポンプ
318 ジェット吐水用バキュームブレーカ
319 水抜栓
320 制御部
321 止水栓
322 ストレーナ
323 分岐金具
324 ダイヤフラム
325 圧力室
326 リム側給水路
327 戻り管路
328 フロート式逆止弁
329 タンク側給水路
330 上端フロートスイッチ
331 下端フロートスイッチ
332 ポンプ側給水路
333 水受けトレイ
334 ジェット側給水路
334a ジェット側給水路頂部
335 オーバーフロー管
335a オーバーフロー口
336 フラッパー弁
340 切替部
350 停電検知部
4 排水ソケット
41 接続流路
42 開閉弁体(フラッパー弁)
51 手動操作部(第1操作部)
51a 第1ワイヤ
52 手動操作部(第2操作部)
52a 第2ワイヤ
61 ギヤ
62 ギヤ
71 コンデンサ