(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131051
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】海底分岐装置、海底分岐装置の構成方法、及び海底ケーブルシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/46 20060101AFI20220831BHJP
G02B 6/50 20060101ALI20220831BHJP
H02G 9/06 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G02B6/46
G02B6/50
H02G9/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029780
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】青木 有香
(72)【発明者】
【氏名】長沢 敏秀
【テーマコード(参考)】
2H038
5G369
【Fターム(参考)】
2H038CA38
2H038CA67
5G369BA04
5G369CA08
5G369DC09
5G369EA01
(57)【要約】
【課題】気密性を保持しつつテールケーブルを複数本に分岐させ、小型化可能な海底分岐装置。
【解決手段】複数本の光ファイバを覆う金属管CPを有する主テールケーブルMTCと、複数本の光ファイバのうちの第1群FG1を覆う金属管CP1を有する第1の分岐テールケーブルBTC1と、複数本の光ファイバのうちの第2群FG2を覆う金属管CP2を有する第2の分岐テールケーブルと、主テールケーブルMTCと第1及び第2の分岐テールケーブルBTC1、BTC2とを連結すると共に、複数本の光ファイバを第1群FG1及び第2群FG2に分岐させる貫通孔21を内部に備える分岐部材20と、を備える海底分岐装置。分岐部材20の貫通孔21の各開口端に、主テールケーブルMTC並びに第1及び第2の分岐テールケーブルBTC1、BTC2の各金属管CP、CP1、CP2の一端部が、ろう付けされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバと、当該複数本の光ファイバを覆う金属管とを有する主テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第1群と、当該第1群を覆う金属管とを有する第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群と、当該第2群を覆う金属管とを有する第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、を備え、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各金属管の一端部が、ろう付けされている、
海底分岐装置。
【請求項2】
前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの金属管の外周面は、いずれも絶縁被覆層によって被覆されており、
前記分岐部材の外周面は、絶縁被覆層によって被覆されており、
前記分岐部材の絶縁被覆層は、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの絶縁被覆層と一体化されている、
請求項1に記載の海底分岐装置。
【請求項3】
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、ザグリ穴が設けられており、
当該ザグリ穴のそれぞれに、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各金属管の前記一端部が、挿入され、ろう付けされている、
請求項2に記載の海底分岐装置。
【請求項4】
前記貫通孔の各ザグリ穴の開口端に、内周面から外側に向かって拡径されたテーパ部が設けられており、
当該テーパ部のそれぞれに、ろう付け部が形成されている、
請求項3に記載の海底分岐装置。
【請求項5】
前記分岐部材において、
前記第1及び第2の分岐テールケーブルの金属管が挿入された一対の前記ザグリ穴の間の部位が、外側に張り出している、
請求項3又は4に記載の海底分岐装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の分岐テールケーブルの金属管の内径よりも前記貫通孔の直径が大きく、当該貫通孔の直径よりも前記主テールケーブルの金属管の内径が大きい、
請求項2~5のいずれか一項に記載の海底分岐装置。
【請求項7】
前記分岐部材の外周面と端面との境界に位置する角部が面取りされている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の海底分岐装置。
【請求項8】
前記分岐部材が、マルエージング鋼からなる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の海底分岐装置。
【請求項9】
複数本の光ファイバを第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材を介して、前記複数本の光ファイバを覆う金属管を有する主テールケーブルと、前記第1群を覆う金属管を有する第1の分岐テールケーブル及び前記第2群を覆う金属管を有する第2の分岐テールケーブルとを連結するステップと、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各金属管の一端部を、ろう付けするステップと、を備える、
海底分岐装置の構成方法。
【請求項10】
主海底ケーブルと、
第1及び第2の分岐海底ケーブルと、
前記主海底ケーブルを前記第1及び第2の分岐海底ケーブルに分岐する海底分岐装置と、を備え、
前記海底分岐装置は、
複数本の光ファイバと、当該複数本の光ファイバを覆う金属管とを有すると共に、前記主海底ケーブルに接続する主テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第1群と、当該第1群を覆う金属管とを有すると共に、前記第1の分岐海底ケーブルに接続する第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群と、当該第2群を覆う金属管とを有すると共に、前記第2の分岐海底ケーブルに接続する第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、を備え、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各金属管の一端部が、ろう付けされている、
海底ケーブルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は海底分岐装置、海底分岐装置の構成方法、及び海底ケーブルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、1本の海底ケーブルを複数の海底ケーブルに分岐させる海底分岐装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
関連する海底分岐装置の内部では、1本の海底ケーブルに接続された1本のテールケーブルが、海水の浸入を防ぐ気密構造部材に接続される。この気密構造部材の内部において、テールケーブルに含まれる複数本の光ファイバを複数グループに分岐させる。そして、複数グループに分岐させた光ファイバを気密構造部材から導出する複数本のテールケーブルが、それぞれ海底ケーブルに接続されている。
【0005】
このように、関連する海底分岐装置では、気密構造部材の内部において、テールケーブルに含まれる複数本の光ファイバを複数グループに分岐させる必要がある。気密構造部材は容器状であり、所定の空間を占有するため、海底分岐装置が大型化する問題があった。
【0006】
これに対し、気密性を保持しつつテールケーブルを複数本に分岐させることができれば、気密構造部材を介さずに、海底ケーブルを分岐させることができる。すなわち、気密構造部材が不要となり、海底分岐装置を小型化できる。
しかしながら、複数本の光ファイバが金属管に覆われたテールケーブルを、気密性を保持しつつ複数本に分岐させるのは難しかった。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑み、気密性を保持しつつテールケーブルを複数本に分岐させ、小型化可能な海底分岐装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る海底分岐装置は、
複数本の光ファイバと、当該複数本の光ファイバを覆う金属管とを有する主テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第1群と、当該第1群を覆う金属管とを有する第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群と、当該第2群を覆う金属管とを有する第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、を備え、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各金属管の一端部が、ろう付けされているものである。
【0009】
本開示の一態様に係る海底分岐装置の構成方法は、
複数本の光ファイバを第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材を介して、前記複数本の光ファイバを覆う金属管を有する主テールケーブルと、前記第1群を覆う金属管を有する第1の分岐テールケーブル及び前記第2群を覆う金属管を有する第2の分岐テールケーブルとを連結するステップと、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各金属管の一端部を、ろう付けするステップと、を備えるものである。
【0010】
本開示の一態様に係る海底ケーブルシステムは、
主海底ケーブルと、
第1及び第2の分岐海底ケーブルと、
前記主海底ケーブルを前記第1及び第2の分岐海底ケーブルに分岐する海底分岐装置と、を備え、
前記海底分岐装置は、
複数本の光ファイバと、当該複数本の光ファイバを覆う金属管とを有すると共に、前記主海底ケーブルに接続する主テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第1群と、当該第1群を覆う金属管とを有すると共に、前記第1の分岐海底ケーブルに接続する第1の分岐テールケーブルと、
前記複数本の光ファイバのうちの第2群と、当該第2群を覆う金属管とを有すると共に、前記第2の分岐海底ケーブルに接続する第2の分岐テールケーブルと、
前記主テールケーブルと前記第1及び第2の分岐テールケーブルとを連結すると共に、前記主テールケーブルが含む前記複数本の光ファイバを前記第1群及び第2群に分岐させる貫通孔を内部に備える分岐部材と、を備え、
前記分岐部材の前記貫通孔の各開口端に、前記主テールケーブル並びに前記第1及び第2の分岐テールケーブルの各金属管の一端部が、ろう付けされているものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、気密性を保持させつつテールケーブルを複数本に分岐させ、小型化可能な海底分岐装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る海底分岐装置の構成を示す模式断面図である。
【
図2】第2の実施形態に係る海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成を示す模式断面図である。
【
図3】関連する海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成を示す模式断面図である。
【
図6】テールケーブルの製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
(第1の実施形態)
<海底分岐装置の構成>
まず、
図1を参照して、第1の実施形態に係る海底分岐装置の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る海底分岐装置の構成を示す模式断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る海底分岐装置は、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2を備えている。
【0015】
主テールケーブルMTCの一端は、海底ケーブル(
図1では不図示)に接続している。主テールケーブルMTCの他端は、分岐部材20を介して分岐テールケーブルBTC1、BTC2に連結されている。主テールケーブルMTCは、全ての光ファイバすなわち光ファイバ群FG1、FG2、及び光ファイバ群FG1、FG2を覆う金属管を含む。
なお、
図1では、理解を容易にするため、ケーブル内部の光ファイバ群FG1、FG2が、太い実線で示されている。
【0016】
図1に示すように、分岐テールケーブル(第1の分岐テールケーブル)BTC1の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC1の他端は、分岐海底ケーブル(
図1では不図示)に接続している。分岐テールケーブルBTC1は、光ファイバ群(第1群の光ファイバ)FG1、及び光ファイバ群FG1を覆う金属管を含む。
【0017】
図1に示すように、分岐テールケーブル(第2の分岐テールケーブル)BTC2の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC2の他端は、分岐海底ケーブル(
図1では不図示)に接続している。分岐テールケーブルBTC2は、光ファイバ群(第2群の光ファイバ)FG2、及び光ファイバ群FG2を覆う金属管を含む。
【0018】
図1に示すように、分岐部材20は、主テールケーブルMTCと分岐テールケーブルBTC1、BTC2とを連結している。さらに、分岐部材20は、主テールケーブルMTCが含む複数本の光ファイバを光ファイバ群FG1、FG2に分岐させる貫通孔21を内部に備えている。
【0019】
ここで、分岐部材20の貫通孔21の各開口端に、主テールケーブルMTC及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2の各金属管の一端部が、ろう付けされている。そのため、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2の内部の気密性が保持され、それらの内部への海水の浸入が抑制される。
分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2が、全体としてテールケーブルを構成している。
【0020】
以上の通り、本実施形態に係る海底分岐装置では、ろう付けされた分岐部材20によって気密性を保持しつつ、主テールケーブルMTCが分岐テールケーブルBTC1、BTC2に分岐している。すなわち、テールケーブルが気密性を保持しつつ分岐している。そのため、気密構造部材に代わり、気密性を保持しつつ分岐したテールケーブルを介して、海底ケーブルを分岐させることができる。その結果、所定の空間を占有する容器状の気密構造部材が不要となり、海底分岐装置を小型化できる。
なお、
図1に示した分岐部材20では、主テールケーブルMTCが含む複数本の光ファイバを2つの群に分岐させているが、3つ以上の群に分岐させてもよい。
【0021】
(第2の実施形態)
<海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成>
次に、
図2を参照して、第2の実施形態に係る海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成について説明する。
図2は、第2の実施形態に係る海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成を示す模式断面図である。
【0022】
図2に示すように、第2の実施形態に係る海底ケーブルシステムは、主海底ケーブルMSC、分岐海底ケーブルBSC1、BSC2、及び海底分岐装置を備えている。第2の実施形態に係る海底分岐装置は、
図1に示した分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2に加え、筐体10、ジョイントボックスJB、JB1、JB2、及びジョイントカバー30a、30bを備えている。
【0023】
筐体10は、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2を収容する円筒体である。筐体10は、例えば水深8000mの水圧に耐える強度を有しており、例えばベリリウム銅合金等からなる。
図2に示すように、主テールケーブルMTCの一端は、ジョイントボックスJBを介して、主海底ケーブルMSCに接続されている。主テールケーブルMTCの他端は、分岐部材20を介して分岐テールケーブルBTC1、BTC2に連結されている。ここで、主テールケーブルMTCは、筐体10に固定された支持部材40によって支持されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、主テールケーブルMTCは、金属管内に全ての光ファイバ(すなわち光ファイバ群FG1、FG2)を収容している。詳細には後述するように、金属管は、例えば銅管であり、光ファイバ(光ファイバ群FG1、FG2)を保護すると共に、給電線として機能している。ジョイントボックスJBでは、主海底ケーブルMSC及び主テールケーブルMTCの給電線同士及び光ファイバ同士が互いに接続されている。
なお、
図2でも、理解を容易にするため、ケーブル内部の光ファイバ群FG1、FG2が、太い実線で示されている。
【0025】
図2に示すように、分岐テールケーブルBTC1の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC1の他端は、ジョイントボックスJB1を介して、分岐海底ケーブルBSC1に接続されている。ここで、分岐海底ケーブルBSC1は、筐体10に固定された支持部材41によって支持されていてもよい。
【0026】
分岐テールケーブルBTC1は、金属管内に光ファイバ群FG1を収容している。金属管は、例えば銅管であり、光ファイバ群FG1を保護すると共に、給電線として機能している。ジョイントボックスJB1では、分岐海底ケーブルBSC1及び分岐テールケーブルBTC1の給電線同士及び光ファイバ同士が互いに接続されている。
【0027】
図2に示すように、分岐テールケーブルBTC2の一端は、分岐部材20を介して主テールケーブルMTCに連結されている。分岐テールケーブルBTC2の他端は、ジョイントボックスJB2を介して、分岐海底ケーブルBSC2に接続されている。ここで、分岐海底ケーブルBSC2は、筐体10に固定された支持部材42によって支持されていてもよい。
【0028】
分岐テールケーブルBTC2は、金属管内に光ファイバ群FG2を収容している。金属管は、例えば銅管であり、光ファイバ群FG2を保護すると共に、給電線として機能している。ジョイントボックスJB2では、分岐海底ケーブルBSC2及び分岐テールケーブルBTC2の給電線同士及び光ファイバ同士が互いに接続されている。
【0029】
図2に示すように、分岐部材20は、主テールケーブルMTCと分岐テールケーブルBTC1、BTC2とを連結している。さらに、分岐部材20は、主テールケーブルMTCが含む複数本の光ファイバを光ファイバ群FG1、FG2に分岐させる貫通孔21を内部に備えている。
【0030】
ここで、分岐部材20の貫通孔21の各開口端に、主テールケーブルMTC及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2の各金属管の一端部が、ろう付けされている。そのため、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2の内部の気密性が保持され、それらの内部への海水の浸入が抑制される。
分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2が、全体としてテールケーブルを構成している。
分岐部材20の詳細については後述する。
【0031】
ジョイントカバー30aは、筐体10の一端に連結されると共に、ジョイントボックスJBを収容する中空部材である。ジョイントカバー30aの一端は、筐体10に嵌合もしくは螺合され、固定されている。ジョイントカバー30aの他端は、主海底ケーブルMSCを導入するために、開口されており、主海底ケーブルMSC側に向かって径が細くなっている。
【0032】
ジョイントカバー30bは、筐体10の他端に連結されると共に、ジョイントボックスJB1、JB2を収容する中空部材である。ジョイントカバー30bの一端は、筐体10に嵌合もしくは螺合され、固定されている。ジョイントカバー30bの他端は、分岐海底ケーブルBSC1、BSC2を導入するために、2箇所開口されている。
なお、筐体10及びジョイントカバー30a、30bの内部には海水が浸入する。
【0033】
<関連する海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成>
ここで、
図3を参照して、関連する海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成について説明する。
図3は、関連する海底分岐装置及び海底ケーブルシステムの構成を示す模式断面図である。
【0034】
図3に示すように、関連する海底分岐装置は、
図1に示した筐体10に代わり、気密構造部材100を備えている。また、関連する海底分岐装置は、分岐部材20を備えていない。
図3に示すように、気密構造部材100は、内部ユニット111が、円筒状の耐圧筐体112に収容された構成を有している。
【0035】
耐圧筐体112には、主テールケーブルMTCに含まれる光ファイバ(光ファイバ群FG1、FG2)を内部ユニット111に導入する導入部130が設けられている。
そして、内部ユニット111の内部において、主テールケーブルMTCに含まれる光ファイバを光ファイバ群FG1、FG2に分岐させる。
【0036】
また、耐圧筐体112には、内部ユニット111から導出された光ファイバ群FG1を分岐テールケーブルBTC1に導出する導出部131が設けられている。さらに、耐圧筐体112には、内部ユニット111から導出された光ファイバ群FG2を分岐テールケーブルBTC2に導出する導出部132が設けられている。導入部130及び導出部131、132などから耐圧筐体112の内部に海水が入り込まないように、耐圧筐体112、導入部130、及び導出部131、132は気密構造を有している。
【0037】
図3に示すように、関連する海底分岐装置では、気密構造部材100の内部において、主テールケーブルMTCに含まれる光ファイバを光ファイバ群FG1、FG2に分岐させる必要がある。ここで、気密構造部材100は容器状であり、所定の空間を占有するため、海底分岐装置が大型化してしまう。
【0038】
これに対し、本実施形態に係る海底分岐装置では、
図2に示すように、ろう付けされた分岐部材20によって気密性を保持しつつ、主テールケーブルMTCが分岐テールケーブルBTC1、BTC2に分岐している。すなわち、テールケーブルが気密性を保持しつつ分岐している。そのため、
図3に示す気密構造部材100に代わり、気密性を保持しつつ分岐したテールケーブルを介して、主海底ケーブルMSCを分岐海底ケーブルBSC1、BSC2に分岐させることができる。その結果、本実施形態に係る海底分岐装置では、所定の空間を占有する容器状の気密構造部材100が不要となり、海底分岐装置を小型化できる。
【0039】
<分岐部材20の詳細>
次に、
図4、
図5を参照して、分岐部材20の詳細について説明する。
図4は、分岐部材20の外観斜視図である。
図5は、分岐部材20の断面斜視図である。
図5に示すように、分岐部材20の内部には、平面視Y字状の貫通孔21が形成されている。Y字状の貫通孔21における3つの開口端には、貫通孔21よりも内径の大きいザグリ穴22、221、222が形成されている。
【0040】
図5に示すように、ザグリ穴22には、主テールケーブルMTCを構成する銅管CPの一端部が例えば数mm程度の深さで嵌入されている。また、
図4に示すように、ザグリ穴22の開口端には、ザグリ穴22の内周面から外側に向かって拡径するようにテーパ部22aが形成されている。
【0041】
テーパ部22aを設けることによって、ザグリ穴22への銅管CPの挿入、及び分岐部材20と銅管CPとのろう付けが容易になる。具体的には、
図5に示すように、このテーパ部22aと銅管CPとの隙間にろう材を充填することによって、リング状のろう付け部が形成されている。
【0042】
図5に示すように、ザグリ穴221、222には、それぞれ分岐テールケーブルBTC1、BTC2を構成する銅管CP1、CP2の一端部が例えば数mm程度の深さで嵌入されている。ザグリ穴22と同様に、ザグリ穴221、222の開口端にも、内周面から外側に向かって拡径するようにテーパ部221a、222aがそれぞれ形成されている。
【0043】
テーパ部を設けることによって、ザグリ穴221、222への銅管CP1、CP2の挿入、及び分岐部材20と銅管CP1、CP2とのろう付けが容易になる。具体的には、
図5に示すように、ザグリ穴221、222のテーパ部221a、222aにも、ザグリ穴22のテーパ部22aと同様に、リング状のろう付け部が形成されている。
【0044】
製造時には、
図5に太い矢印で示すように、分岐テールケーブルBTC1の銅管CP1、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG1を挿通する。同様に、分岐テールケーブルBTC2の銅管CP2、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG2を挿通する。
【0045】
そのため、
図5に示した例では、貫通孔21において、銅管CP1、CP2と銅管CPとを接続する経路は、それぞれ平面視で弧を描くように、なめらかに形成されている。このような構成によって、光ファイバ群FG1、FG2の屈曲を抑制できる。
【0046】
また、
図5に示した例では、銅管CP1、CP2の内径よりも貫通孔21の直径が大きく形成されていると共に、貫通孔21の直径よりも銅管CPの内径が大きく形成されている。そのため、光ファイバ群FG1、FG2を挿通させる際、銅管CP1、CP2の内周面と貫通孔21との段差、あるいは貫通孔21と銅管CPの内周面との段差に、光ファイバ群FG1、FG2の先端が引っ掛かることを抑制できる。
【0047】
分岐部材20は、水深8000mの水圧に耐える強度を有しており、例えば鉄鋼材料、銅、銅合金(例えばベリリウム銅合金)等からなる。また、気密性を確保するため、上述の通り、分岐部材20は、主テールケーブルMTCの銅管CPの端部及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2の銅管CP1、CP2の端部と、ろう付けされている。さらに、分岐部材20は、銅管CP、CP1、CP2と同様に、光ファイバ群FG1、FG2を保護すると共に、給電線としても機能している。
【0048】
このように、強度、銅管とのろう付け性、電気抵抗等を考慮して、分岐部材20の材料が選択される。なお、給電線全体の電気抵抗としては、銅管の電気抵抗が支配的であるため、分岐部材20の材料を選択する上で、電気抵抗の優先度は低い。
また、分岐部材20の製造では、Y字状に分岐した貫通孔21の機械加工が難しいため、分岐部材20は例えば金属粉末を用いた積層造形(いわゆる金属3Dプリンタ)等によって製造される。
【0049】
一例として、分岐部材20は、マルエージング鋼粉末を用いた積層造形によって製造される。高強度のマルエージング鋼を用いることによって、分岐部材20を薄肉化(すなわち小型化・軽量化)できる。さらに、分岐部材20の薄肉化によって、ろう付け時における抜熱が抑制され、ろう材が溶融し易くなり、溶接性が向上する。ここで、鉄鋼材料は、銅や銅合金に比べ、強度が高いため薄肉化できると共に、熱伝導率が低いためろう付け時の抜熱を抑制できる。例えば、銅管CPとろう付けされるザグリ穴22が形成された部位の肉厚を2mm以下(例えば1.2mm)にできる。
【0050】
図4、
図5に示すように、分岐部材20は、Y字状の貫通孔21に対応したなめらかな外形を有している。他方、分岐部材20では、銅管CP1、CP2が挿入された一対のザグリ穴221、222の間の部位が外側に張り出している。
【0051】
ここで、詳細には後述するように、分岐部材20は絶縁モールドされる。絶縁モールド時、仮にザグリ穴221、222の間に凹部が形成されていると、空隙が生じ易い。
図4、
図5に示した分岐部材20では、ザグリ穴221、222の間の部位が外側に張り出しているため、絶縁モールド時の空隙が抑制され、耐電圧が向上する。
【0052】
また、
図4に示すように、分岐部材20における外周面と端面との境界に位置する角部は面取りされている。絶縁モールド時、仮に分岐部材20に角部が形成されていると、角部に空隙が生じ易い。
図4、
図5に示した分岐部材20では、角部が面取りされているため、絶縁モールド時の空隙が抑制され、耐電圧が向上する。また、角部の電界強度自体も抑制され、耐電圧が向上する。
【0053】
<テールケーブルの製造方法>
次に、
図6を参照して、テールケーブルの製造方法について説明する。
図6は、テールケーブルの製造方法を示す平面図である。
図5も適宜参照する。
上述の通り、テールケーブルは、分岐部材20、主テールケーブルMTC、及び分岐テールケーブルBTC1、BTC2から構成されている。
【0054】
図6の上段に示すように、主テールケーブルMTCは、外周面に絶縁被覆層ICLが被覆された銅管CPを備えている。分岐テールケーブルBTC1は、外周面に絶縁被覆層ICL1が被覆された銅管CP1を備えている。分岐テールケーブルBTC2は、外周面に絶縁被覆層ICL2が被覆された銅管CP2を備えている。絶縁被覆層ICL、ICL1、ICL2は、例えばポリエチレンからなる。
【0055】
まず、
図6の上段に示すように、分岐部材20に挿入する主テールケーブルMTCの一端の絶縁被覆層ICLを除去して銅管CPを露出させる。また、分岐部材20に挿入する分岐テールケーブルBTC1の一端の絶縁被覆層ICL1を除去して銅管CP1を露出させる。同様に、分岐部材20に挿入する分岐テールケーブルBTC2の一端の絶縁被覆層ICL2を除去して銅管CP2を露出させる。また、
図6に示した例では、分岐部材20に銅管CP1、CP2を挿入した後、分岐テールケーブルBTC1、BTC2が平行になるように、露出させた銅管CP1、CP2を予め湾曲させておく。
【0056】
次に、
図6の中段に示すように、分岐部材20に銅管CP、CP1、CP2を挿入して組み付け、ろう付けする。
詳細については、
図5を参照して説明した通りである。
【0057】
次に、
図6の下段に示すように、分岐部材20の外周面及び露出している銅管CP、CP1、CP2の外周面を絶縁モールドし、絶縁被覆層ICL3によって覆う。絶縁モールド時に、絶縁被覆層ICL3は、絶縁被覆層ICL、ICL1、ICL2と一体化される。絶縁被覆層ICL3、絶縁被覆層ICL、ICL1、ICL2と同様に、例えばポリエチレンからなる。
【0058】
その後、
図5に太い矢印で示すように、分岐テールケーブルBTC1の銅管CP1、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG1を挿通する。同様に、分岐テールケーブルBTC2の銅管CP2、分岐部材20の貫通孔21を介して、主テールケーブルMTCの銅管CPに光ファイバ群FG2を挿通する。
【0059】
以上によって、テールケーブルが製造される。テールケーブルは、絶縁被覆層ICL、ICL1~ICL3によって、例えば15kV以上の耐電圧を有する。また、絶縁被覆層ICL、ICL1~ICL3によって、金属製である銅管CP、CP1、CP2及び分岐部材20の腐食を抑制できる。
【0060】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【符号の説明】
【0061】
10 筐体
20 分岐部材
21 貫通孔
22、221、222 ザグリ穴
22a、221a、222a テーパ部
30a、30b ジョイントカバー
40、41、42 支持部材
BSC1、BSC2 分岐海底ケーブル
BTC1、BTC2 分岐テールケーブル
CP、CP1、CP2 銅管(金属管)
FG1、FG2 光ファイバ群
ICL、ICL1~ICL3 絶縁被覆層
JB、JB1、JB2 ジョイントボックス
MSC 主海底ケーブル
MTC 主テールケーブル