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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131097
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】インサート着脱式ホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/10 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
B23B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029844
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】萩原 隆行
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046BB07
(57)【要約】
【課題】工具先端部が細幅の切削工具においても、クーラントの供給を確実に行うことができるインサート着脱式ホルダを提供する。
【解決手段】インサート着脱式ホルダ10は、ホルダ本体20と、ノズル部材30と、を備え、ホルダ本体20は、先端部20sにおいて、上下方向Zの上側に設けられ、インサート100が装着可能な取付座22と、先端部20sにおいて上下方向Zの下側に設けられ、ノズル部材30が接続される接続面28と、を備え、ノズル部材30は、接続面28に取り付けられる取付面32と、ノズル部材30内に設けられ、クーラントの流路を形成するノズル内流路部と、ノズル内流路部に連通してノズル内流路部内のクーラントを外部に噴射する噴射口36と、を備え、接続面28は、工具軸方向Xに直交する面に対して、上下方向Zの上側から下側に向けて傾斜する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切刃を有するインサートが先端部に着脱可能に装着されるホルダ本体と、
クーラントを噴射するノズル部材と、を備え、
前記ホルダ本体は、
前記先端部において、前記ホルダ本体の前記先端部と基端部とを結ぶ第一方向に交差する第二方向の第一側に設けられ、前記インサートが装着可能な取付座と、
前記先端部において前記第二方向の第二側に設けられ、前記ノズル部材が接続される接続面と、を備え、
前記ノズル部材は、
前記接続面に取り付けられる取付面と、
前記ノズル部材の内部に設けられ、クーラントの流路を形成するノズル内流路部と、
前記ノズル内流路部に連通して前記ノズル内流路部内の前記クーラントを外部に噴射する噴射口と、を備え、
前記接続面は、前記第一方向に直交する面に対して、前記第二方向の第一側から第二側に向けて傾斜する、
インサート着脱式ホルダ。
【請求項2】
前記接続面は、前記第二方向の第一側から第二側に向かって、前記第一方向で前記先端部側から前記基端部側に傾斜する、
請求項1に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項3】
前記ホルダ本体は、外部からクーラントが送給され、前記接続面に接続開口を有するクーラント供給孔を備え、
前記ノズル部材は、前記取付面に設けられて前記ノズル内流路部に連通するノズル側開口をさらに備える、
請求項1又は2に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項4】
前記ホルダ本体は、
前記接続面において前記接続開口の径方向外側に設けられ、前記接続面に前記ノズル部材を固定するためのネジが締結される複数のネジ穴をさらに備え、
前記複数のネジ穴のそれぞれは、前記接続開口の開口中心に対し、前記第一方向および前記第二方向に直交する第三方向の一方の側において前記第二方向の第一側の第一領域と、前記第三方向の他方側において前記第二方向の第二側の第二領域とに、配置される、
請求項3に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項5】
前記ホルダ本体の前記先端部は、前記接続開口の前記開口中心に対して前記第三方向の他方側の幅寸法よりも、前記接続開口の前記開口中心に対して前記第三方向の一方側の幅寸法が小さく、
前記第二領域に配置された前記ネジ穴の前記開口中心に対する前記第三方向における離間寸法が、前記第一領域に配置された前記ネジ穴の前記開口中心に対する前記第三方向における離間寸法よりも小さく、
請求項4に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項6】
前記取付座に装着される前記インサートは、前記第二方向から見て円弧状の切刃を有し、
前記噴射口は、前記第二方向から見て円弧状に設けられる、
請求項1~5の何れか一項に記載のインサート着脱式ホルダ。
【請求項7】
前記ノズル部材は、前記ホルダ本体に設けられるクーラント供給孔、及び前記噴射口よりも流路断面積が大きいバッファ部をさらに備える、
請求項1~6の何れか一項に記載のインサート着脱式ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート着脱式ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具を用いて旋削などの切削加工を行う場合、工具の切刃による切削部位に、クーラントを連続的に供給することが行われている。例えば、特許文献1には、工具本体顎部に対応する角部に切込み部が形成され、この切込み部と顎部との間に、工具の逃げ面に向けて開口する噴出口が形成された構成の旋削工具が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-285703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溝加工等を行うための切削工具には、工具先端部の幅が細いものがある。このような工具先端部が細幅の切削工具においては、上記のような構成の噴出口を形成する部品を工具本体に取り付けるのが困難となる場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、工具先端部が細幅の切削工具においても、クーラントの供給を確実に行うことができるインサート着脱式ホルダを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインサート着脱式ホルダの一つの態様は、切刃を有するインサートが先端部に着脱可能に装着されるホルダ本体と、クーラントを噴射するノズル部材と、を備え、前記ホルダ本体は、前記先端部において、前記ホルダ本体の前記先端部と基端部とを結ぶ第一方向に交差する第二方向の第一側に設けられ、前記インサートが装着可能な取付座と、前記先端部において前記第二方向の第二側に設けられ、前記ノズル部材が接続される接続面と、を備え、前記ノズル部材は、前記接続面に取り付けられる取付面と、前記ノズル部材の内部に設けられ、クーラントの流路を形成するノズル内流路部と、前記ノズル内流路部に連通して前記ノズル内流路部内の前記クーラントを外部に噴射する噴射口と、を備え、前記接続面は、前記第一方向に直交する面に対して、前記第二方向の第一側から第二側に向けて傾斜する。
【0007】
本発明のインサート着脱式ホルダの一つの態様によれば、ホルダ本体にノズル部材を取り付けるための接続面が、ホルダ本体の先端部と基端部とを結ぶ第一方向に直交する面に対し、第二方向の第一側から第二側に向けて傾斜している。このため、接続面の第二方向における寸法を抑えつつ、接続面の面積を確保することができる。したがって、ホルダ本体の先端部における、第一方向および第二方向に直交する第三方向の幅寸法が小さい場合であっても、接続面の面積を確保し、ノズル部材をホルダ本体に強固に取り付けることができる。その結果、工具先端部が細幅の切削工具においても、クーラントの供給を確実に行うことが可能となる。
【0008】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記接続面は、前記第二方向の第一側から第二に向かって、前記第一方向で前記先端部側から前記基端部側に傾斜してもよい。
【0009】
この場合、接続面が設けられた部分において、ホルダ本体の第一方向における厚み寸法が、第二方向の第二側から第一側、つまり取付座側に向かって漸次大きくなる。したがって、取付座に装着するインサートの支持剛性が高められる。
【0010】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記ホルダ本体は、外部からクーラントが送給され、前記接続面に接続開口を有するクーラント供給孔を備え、前記ノズル部材は、前記取付面に設けられて前記ノズル内流路部に連通するノズル側開口をさらに備えてもよい。
【0011】
この場合、ノズル部材の取付面をホルダ本体の接続面に突き当てた状態で、ノズル部材をホルダ本体に取り付けることで、ホルダ本体に設けられたクーラント供給の接続開口と、ノズル部材のノズル側開口とが連通する。これにより、ノズル部材をホルダ本体に取り付けるのみで、クーラントを噴出するための流路を設けることができる。このように、少ない部品点数で、クーラントを噴出するための構成が実現でき、コスト上昇を抑えるとともに、インサート着脱式ホルダの組立性を容易に行うことができる。
【0012】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記ホルダ本体は、前記接続面において前記接続開口の径方向外側に設けられ、前記接続面に前記ノズル部材を固定するためのネジが締結される複数のネジ穴をさらに備え、前記複数のネジ穴は、前記接続開口の開口中心に対し、前記第一方向および前記第二方向に直交する第三方向の一方の側において前記第二方向の第一側の第一領域と、前記第三方向の他方側において前記第二方向の第二側の第二領域とに、配置されていてもよい。
【0013】
この場合、ノズル部材をホルダ本体に取り付けるための複数のネジ穴が、接続開口の開口中心に対して、第三方向の一方側において第二方向の第一側の第一領域と、第三方向の他方側において第二方向の第二側の第二領域とに配置される。つまり、複数のネジ穴は、接続開口の開口中心を通る第三方向の両側に配置されていない。このため、ホルダ本体の先端部の第三方向における幅寸法が小さくても、複数のネジ穴を設けることが可能となる。また、複数のネジ穴は、接続開口の開口中心を通る第二方向の両側に配置されていない。このため、複数のネジ穴を設ける接続面の第二方向における寸法が過度に大きくなるのを抑えることができる。
【0014】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記ホルダ本体の前記先端部は、前記接続開口の前記開口中心に対して前記第三方向の他方側の幅寸法よりも、前記接続開口の前記開口中心に対して前記第三方向の一方側の幅寸法が小さく、前記第二領域に配置された前記ネジ穴の前記開口中心に対する前記第第三方向における離間寸法が、前記第一領域に配置された前記ネジ穴の前記開口中心に対する前記第三方向における離間寸法よりも小さくしてもよい。
【0015】
この場合、接続開口の開口中心に対して第三方向の他方側に設けられたネジ穴よりも、接続開口の開口中心に対して第三方向の一方側のネジ穴が、第三方向において接続開口の開口中心に近い位置に設けられる。したがって、第三方向の一方側の幅寸法が小さいホルダ本体の先端部にであっても、第三方向の一方側にネジ穴を配置することができる。
【0016】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記取付座に装着される前記インサートは、前記第二方向から見て円弧状の切刃を有し、前記噴射口は、前記第二方向から見て円弧状に設けられていてもよい。
【0017】
この場合、円弧状の切刃の逃げ面に対して、円弧状の噴射口からクーラントを、より均一に噴射することができる。
【0018】
上記インサート着脱式ホルダにおいて、前記ホルダ本体に設けられるクーラント供給孔、及び前記噴射口よりも流路断面積が大きいバッファ部をさらに備えてもよい。
【0019】
この場合、ホルダ本体に設けられたクーラント供給孔を流れてきたクーラントが、バッファ部に流れ込むことで、クーラントの圧力が下がる。これにより、バッファ部から噴射口にクーラントが、より均一な圧力で噴射口から噴出される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一つの態様のインサート着脱式ホルダによれば、工具先端部が細幅の切削工具においても、クーラントの供給を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具を工具幅方向の一方側から見た図である。
図3】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具を工具軸方向の先端部側から見た図である。
図4】本発明の一実施形態のインサート着脱式切削工具を工具幅方向の他方側から見た図である。
図5】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダを示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダを接続面に直交する方向から見た図である。
図7】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダを上下方向の下側から見た図である。
図8】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダのノズル部材を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダのノズル部材を上下方向の上側から見た図である。
図10】本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダのノズル部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態のインサート着脱式ホルダの一例を備えたインサート着脱式切削工具1について、図面を参照して説明する。
【0023】
〔インサート着脱式切削工具の概略構成〕
図1図4に示すように、このインサート着脱式切削工具1は、ホルダ(インサート着脱式ホルダ)10と、ホルダ10に装着されるインサート100とを備えている。
ホルダ10は、ホルダ本体20と、ノズル部材30と、を備えている。
【0024】
〔ホルダ本体の構成〕
図1図7に示すように、ホルダ本体20は、基端部20bと、先端部20sと、を備えている。ホルダ本体20の基端部20bは、インサート100を用いた旋削などの切削加工を行う工作機械に保持される。基端部20bには、上面21Aと、下面21Bと、第一側面21Cと、第二側面21Dと、が設けられる。先端部20sには、インサート100が着脱可能に取り付けられる取付座22が設けられる。
【0025】
以下の説明において、ホルダ本体20において、基端部20bと先端部20sとを結ぶ第一方向を工具軸方向Xとする。また、ホルダ本体20において、工具軸方向Xに直交し、上面21Aと下面21Bとを結ぶ第二方向を上下方向Zとし、上下方向Zにおいて上面21A側を上側(第一側)、上下方向Zにおいて下面21B側を下側(第二側)とする。また、ホルダ本体20において、工具軸方向X、及び上下方向Zに直交し、第一側面21Cと第二側面21Dとを結ぶ第三方向を工具幅方向Yとし、工具幅方向Yにおいて第一側面21C側を一方側、第二側面21D側を他方側とする。
【0026】
ホルダ本体20の基端部20bには、貫通孔23A、23Bと、ブラケット24と、が設けられる。貫通孔23A、23Bは、それぞれ、基端部20bを工具幅方向Yに貫通する。ブラケット24は、第一側面21Cに設けられる。ブラケット24は、第一側面21Cから直交して工具幅方向Yの一方側に突出する。ブラケット24は、上下方向Zに連続して延びる板状である。ブラケット24には、上下方向Zに間隔をあけて貫通孔24A、24Bが設けられる。ホルダ本体20の基端部20bは、貫通孔23A、23Bと、貫通孔24A、24Bとに挿通させたボルト(図示無し)を工作機械の工具保持部に締結することによって、工作機械に取り付けられる。
【0027】
ホルダ本体20の先端部20sには、上下方向Zの中間部に、取付基部25が設けられる。取付基部25は、工具軸方向Xの先端部20s側に突出している。取付基部25の先端面は、上下方向Zからみて円弧状に設けられる。
【0028】
取付座22は、ホルダ本体20の先端部20sにおいて、上下方向Zの上側に設けられる。取付座22は、取付基部25に対して上下方向Zの上側に設けられる。取付座22は、一対の支持壁22A、22Bを有している。一対の支持壁22A、22Bは、工具幅方向Yに間隔をあけて設けられる。一対の支持壁22A、22Bは、取付基部25から上下方向Zの上側に突出する。一対の支持壁22A、22Bは、工具軸方向Xと平行に連続して延びている。
【0029】
ホルダ本体20の先端部20sには、取付座22に対して工具軸方向Xの基端部20b側に、傾斜面21Sが設けられる。傾斜面21Sは、工具軸方向Xの先端部20s側から基端部20b側に向かって、上下方向Zの下側から上側に傾斜し、上面21Aに連続する。
【0030】
〔接続面の構成〕
ホルダ本体20の先端部20sには、上下方向Zの下側に、接続面28が設けられる。接続面28には、ノズル部材30が取り付けられる。接続面28は、取付基部25に対して上下方向Zの下側に設けられる。接続面28は、平面状で、工具軸方向Xに直交する面に対して、上下方向Zの上側から下側に向けて傾斜する。本実施形態において、接続面28は、上下方向Zの上側から下側に向かって、工具軸方向Xで先端部20s側から基端部20b側に傾斜する。接続面28は、工具軸方向Xに直交する面に対し、例えば、30~60°の傾斜角度θ1(図2参照)で設けるのが好ましい。
【0031】
〔クーラント流路の構成〕
図2図4に示すように、ホルダ本体20内には、すくい面側クーラント流路70と、逃げ面側クーラント流路(クーラント供給孔)80とが設けられる。
すくい面側クーラント流路70、逃げ面側クーラント流路80は、それぞれ流入口71、81を有する。流入口71、81は、第一側面21Cに開口する。すくい面側クーラント流路70、逃げ面側クーラント流路80は、流入口71、81に接続されるクーラント供給配管(図示無し)を通して、外部から液状のクーラントが送給される。
【0032】
すくい面側クーラント流路70は、ホルダ本体20内で上下方向Zの上側に配置される。すくい面側クーラント流路70は、傾斜面21Sに吐出口72を備える。吐出口72は、取付座22に取り付けられたインサート100のすくい面側に、液状のクーラントを吐出する。
【0033】
逃げ面側クーラント流路80は、ホルダ本体20内で、流入口81から工具軸方向Xの先端部20s側に向かって、上下方向Zの上側から下側に傾斜して延びている。逃げ面側クーラント流路80は、接続面28に接続開口82を有している。逃げ面側クーラント流路80は、接続面28において、接続開口82から工具軸方向Xの基端部20b側に向かって上下方向Zの下側から上側に傾斜して延びている。接続開口82から延びる逃げ面側クーラント流路80の延伸方向は、接続面28に直交する方向Kに対し、上下方向Zの下側に傾斜している。
【0034】
〔接続面のネジ穴の配置〕
図4図7に示すように、接続面28には、後述するノズル部材30を固定するための複数のネジ穴83が設けられる。各ネジ穴83には、接続面28に後述するノズル部材30を固定するためのネジ90(図4参照)が締結される。複数のネジ穴83は、接続面28において接続開口82の径方向外側に設けられる。本実施形態において、例えば、ネジ穴83が2つ設けられる。図6に示すように、2つのネジ穴83は、接続開口82の径方向外側で、接続開口82の開口中心82c周りの周方向に間隔をあけて配置される。2つのネジ穴83は、開口中心82cを中心とした同心円上に配置される。
【0035】
2つのネジ穴83のうち、第一のネジ穴83Aは、接続開口82の開口中心82cに対し、工具幅方向Yの一方の側(図6において紙面左側)において上下方向Zの上側の第一領域A1に配置される。2つのネジ穴83のうち、第二のネジ穴83Bは、接続開口82の開口中心82cに対し、工具幅方向Yの他方側(図6において紙面右側)において、上下方向Zの下側の第二領域A2に配置される。換言すると、2つのネジ穴83(83A、83B)は、接続開口82を挟んで、接続開口82cの開口中心82cを通り、上下方向Zに延びる一直線上には配置されていない。2つのネジ穴83(83A、83B)は、接続開口82を挟んで、接続開口82cの開口中心82cを通り、工具幅方向Yに延びる一直線上には配置されていない。2つのネジ穴83は、接続開口82の径方向外側に、上下方向Z、及び工具幅方向Yの双方に対して傾斜した位置に配置される。
第一のネジ穴83Aの中心と、第二のネジ穴83Bの中心との、開口中心82c周りの挟み角(位相)θ2は、例えば135~180°とするのが好ましい。
【0036】
図6図7に示すように、ホルダ本体20の先端部20sには、第一側面21Cに側部傾斜面21Kが設けられる。側部傾斜面21Kは、第一側面21Cにおいて、上下方向Zの下側に設けられる。側部傾斜面21Kは、上下方向Zの上側から下側に向かって、工具幅方向Yの他方側に傾斜する。
このため、図7に示すように、ホルダ本体20の先端部20sは、接続開口82の開口中心82cに対して工具幅方向Yの他方側の幅寸法W2よりも、接続開口82の開口中心82cに対して工具幅方向Yの一方側の幅寸法W1が小さい。この場合、第一のネジ穴83Aの中心と、第二のネジ穴83Bの中心との、開口中心82c周りの挟み角θ2を、180°未満とするのが好ましい。これにより、第一領域A1に配置されたネジ穴83の開口中心82cに対する工具幅方向Yにおける離間寸法S1が、第二領域A2に配置されたネジ穴83の開口中心82cに対する工具幅方向Yにおける離間寸法S2よりも小さくなる。
【0037】
図4図5に示すように、2つのネジ穴83(83A、83B)は、接続面28に直交して延びる。前述したように、接続開口82から延びる逃げ面側クーラント流路80の延伸方向は、接続面28に直交する方向Kに対し、上下方向Zの下側に傾斜している。これに対し、図5図7に示すように、2つのネジ穴83は、接続開口82に対して、工具幅方向Yの一方側と他方側に設けられるので、逃げ面側クーラント流路80との干渉が抑えられる。
【0038】
図2図4に示すように、ノズル部材30とホルダ本体20の接続面28との間には、Oリング(図示無し)が挟み込まれる。このため、例えば、接続面28には、接続開口82の外周部に、Oリング(図示無し)を収容する収容溝28mが形成される。
【0039】
〔ノズル部材の構成〕
図1図4に示すように、ノズル部材30は、接続面28に取り付けられる。ノズル部材30は、例えば、3Dプリンタを用いた金属積層造形法によって形成される。図1図4図8図10に示すように、ノズル部材30は、取付基部31Aと、ノズル部31Bと、ノズル内流路部34と、を有する。
【0040】
取付基部31Aは、接続面28に対向する取付面32と、前壁面33と、を有する。取付面32は、取付基部31Aにおいて工具軸方向Xの基端部20b側を向いて設けられる。取付面32は、平面状で、接続面28に対向して配置される。取付面32は、ホルダ本体20に取り付けた状態で、接続面28と平行に傾斜する。取付面32には、ノズル内流路部34に連通するノズル側開口37が設けられる。
【0041】
前壁面33は、取付基部31Aにおいて工具軸方向Xの先端部20s側を向いて設けられる。前壁面33は、取付面32の上端部から上下方向Zの下側に向かって延びている。
【0042】
ノズル部31Bは、取付基部31Aの下部から工具軸方向Xの先端部20s側に突出する。ノズル部31Bの先端形状は、上下方向Zから見て円弧状に設けられる。ノズル部31Bは、ノズル面35と、噴射口36と、を有する。ノズル面35は、前壁面33の下端から工具軸方向Xの先端部20s側に延びている。ノズル面35は、上下方向Zの上側を向く。
【0043】
噴射口36は、ノズル面35に設けられる。噴射口36は、上下方向Zから見て、ノズル部31Bの先端形状に沿って、円弧状に連続して設けられる。噴射口36は、ノズル面35において、上下方向Zの上方を向いて開口する。
【0044】
図2図9図10に示すように、ノズル内流路部34は、ノズル部材30内に設けられ、ノズル側開口37と噴射口36とを連通する。ノズル内流路部34は、ノズル側開口37と噴射口36との間に、バッファ部34sを有する。バッファ部34sは、ホルダ本体20に設けられる逃げ面側クーラント流路80の流路断面積、及びノズル側開口37の断面積、噴射口36の開口断面積よりも、流路断面積が大きい。本実施形態において、バッファ部34sは、ノズル部31B内で上下方向Zに交差する面に沿って拡がるように設けられる。
ホルダ本体20に設けられた逃げ面側クーラント流路80からノズル側開口37を経てノズル部材30のノズル内流路部34に流れてきたクーラントは、バッファ部34sに流れ込むことで圧力が下がる。バッファ部34sで圧力が下がったクーラントは、噴射口36を通して上下方向Zの上側に向かって噴射される。
【0045】
図4に示すように、ノズル部材30は、2本のネジ90を用いて接続面28に取り付けられる。図4図10に示すように、ノズル部材30には、2本のネジ90を挿通させる為の挿通孔39A、39Bが設けられる。一方の挿通孔39Aは、前壁面33と取付面32とを貫通する。他方の挿通孔39Bは、ノズル部材30の底面31dと取付面32とを貫通する。取付面32には、挿通孔39A、39Bの一端が、接続面28のネジ穴83に連通する位置に開口する。また、ノズル部31Bには、挿通孔39Aに挿通させるネジ90や、ネジ90を締結するための工具を通すための逃げ凹部31hが設けられる。
【0046】
このようなネジ90を、挿通孔39A、39Bに挿通させ、ネジ穴83に締結させることで、ノズル部材30が接続面28に取り付けられる。本実施形態において、挿通孔39A、39Bは、前壁面33側から取付面32側に向かって外径が漸次縮小する皿穴、またはベル穴とされる。挿通孔39A、39Bに挿通される2本のネジ90には、皿ねじ、またはベル穴に対応した頭部形状を有するネジが用いられる。これにより、ノズル部材30のノズル側開口37を、接続面28の接続開口82に高い位置精度で芯合わせすることができる。
【0047】
図10に示すように、バッファ部34sは、上下方向において、2つの挿通孔39A、39Bの間に配置される。このようにバッファ部34sを配置することで、挿通孔39A、39Bに対するネジ90の締結動作を阻害することなく、ノズル部材30の内部に十分に広い空間を確保することができる。
【0048】
〔インサートの構成〕
図1図4に示すように、インサート100は、取付座22に取り付けた状態で上下方向Zの上方から見ると、円形状に設けられる。インサート100の上面100tは、上下方向Zの上側を向く。上面100tの外周部には、上下方向Zから見て円弧状の切刃101が設けられる。本実施形態において、切刃101は、上面100tの全周にわたって円形状に設けられる。
【0049】
インサート100は、大径部102と、小径部103と、を有する。大径部102は、インサート100の上下方向Zの上側に設けられる。大径部102は、上下方向Zの上側から下側に向かって、外径寸法が漸次縮小する。小径部103は、大径部102の下側に設けられる。小径部103は、大径部102よりも外径が小さい。小径部103は、上下方向Zの上側から下側に向かって、外径寸法が漸次縮小する。
【0050】
大径部102と小径部103との間には、上下方向Zの上側から下側に向かって、外径寸法が縮小する段部104が設けられる。段部104の外周面には、複数の位置決め凹部105が設けられる。位置決め凹部105は、段部104に設けられる。位置決め凹部105は、段部104に、径方向内側に窪むように設けられる。位置決め凹部105は、上下方向Zから見て、例えば、互いに直交する四方を向いて設けられる。
【0051】
インサート100は、インサート100の中心を挟んで対向する一対の位置決め凹部105に、取付座22の一対の支持壁22A、22Bの上端を下方から突き当てることで、インサート100の中心軸回りの回転が拘束される。
【0052】
上記したようなインサート着脱式切削工具1では、ホルダ本体20の基端部20bを工作機械に取り付けた状態で、取付座22に取り付けたインサート100によって溝などを形成するための切削加工を行う。すくい面側クーラント流路70、逃げ面側クーラント流路80には、流入口71、81に接続されるクーラント供給配管(図示無し)を通して、外部から液状のクーラントが送給される。すくい面側クーラント流路70に送給されたクーラントは、吐出口72からインサート100の上側(すくい面側)に吐出される。逃げ面側クーラント流路80に挿入されたクーラントは、接続開口82、ノズル側開口37を通して、ノズル内流路部34に流入し、噴射口36から上下方向Zの上側に向けて噴射される。噴射口36は、上下方向Zから見て円弧状であるので、インサート100の円弧状の切刃101による切削部位に対して、クーラントが円弧状に噴射される。このとき、取付基部25の先端面が、円弧状に設けられるので、噴射口36から噴射されるクーラントの妨げになることが抑えられる。
【0053】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態のホルダ(インサート着脱式ホルダ)10によれば、ホルダ本体20にノズル部材30を取り付けるための接続面28が、ホルダ本体20の先端部20sと基端部20bとを結ぶ工具軸方向Xに直交する面に対し、上下方向Zの上側から下側に向けて傾斜している。このため、接続面28の上下方向Zにおける寸法を抑えつつ、接続面28の面積を確保することができる。したがって、ホルダ本体20の先端部20sにおける工具幅方向Yの幅寸法が小さい場合であっても、接続面28の面積を確保し、ノズル部材30をホルダ本体20に強固に取り付けることができる。その結果、工具先端部が細幅のインサート着脱式切削工具1においても、クーラントの供給を確実に行うことができる。
【0054】
また本実施形態では、接続面28が、上下方向Zの上側から下側に向かって、工具軸方向Xで先端部20s側から基端部20b側に傾斜する。このため、接続面28が設けられた部分において、ホルダ本体20の工具軸方向Xにおける厚み寸法が、上下方向Zの下側から上側、つまり取付座22側に向かって漸次大きくなる。したがって、取付座22に装着するインサート100の支持剛性が高められる。
【0055】
また本実施形態では、ノズル部材30の取付面32をホルダ本体20の接続面28に突き当てた状態で、ノズル部材30をホルダ本体20に取り付ける。これにより、ホルダ本体20に設けられたクーラント供給の接続開口82と、ノズル部材30のノズル側開口37とが連通する。したがって、ノズル部材30をホルダ本体20に取り付けるのみで、クーラントを噴出するための流路を構成することができる。このように、少ない部品点数で、クーラントを噴出するための構成が実現でき、コスト上昇を抑えるとともに、ホルダ10の組立性を容易に行うことができる。
【0056】
また本実施形態では、ノズル部材30をホルダ本体20に取り付けるための複数のネジ穴83が、接続開口82の開口中心82cに対して、工具幅方向Yの一方側において上下方向Zの上側の第一領域A1と、工具幅方向Yの他方側において上下方向Zの下側の第二領域A2とに配置される。つまり、複数のネジ穴83は、接続開口82の開口中心82cを通る工具幅方向Yの両側に配置されていない。このため、ホルダ本体20の先端部20sの工具幅方向Yにおける幅寸法が小さくても、複数のネジ穴83を設けることが可能となる。また、複数のネジ穴83は、接続開口82の開口中心82cを通る上下方向Zの両側に配置されていない。このため、複数のネジ穴83を設ける接続面28の上下方向Zにおける寸法が過度に大きくなるのを抑えることができる。
【0057】
また本実施形態では、接続開口82の開口中心82cに対して工具幅方向Yの他方側に設けられたネジ穴83よりも、工具幅方向Yの一方側のネジ穴83が、工具幅方向Yにおいて接続開口82の開口中心82cに近い位置に設けられる。したがって、幅寸法が小さいホルダ本体20の先端部20sにおいて、工具幅方向Yの一方側に、ネジ穴83を効率良く配置することができる。
【0058】
また本実施形態では、円弧状の切刃101の逃げ面に対して、円弧状の噴射口36からクーラントを、より均一に噴射することができる。
【0059】
また本実施形態では、ホルダ本体20に設けられた逃げ面側クーラント流路80を流れてきたクーラントが、バッファ部34sに流れ込むことで、クーラントの圧力が下がる。これにより、バッファ部から噴射口36にクーラントが、より均一な圧力で供給され、噴射口36から噴出されるクーラントの流れの均一化を図ることができる。
また本実施形態では、ノズル部材30を3Dプリンタで製造することで、通常の金型を用いた鋳造や機械加工では製造が困難な、バッファ部34sを内部に有したノズル部材30を容易に製作することができる。
【0060】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0061】
前述の実施形態では、ホルダ本体20、ノズル部材30の具体的な構成の例を挙げたが、これに限らない。ホルダ本体20やノズル部材30の形状、各部の構成は、適宜変更可能である。
【0062】
前述の実施形態では、インサート100の構成の例を挙げたが、これに限らない。インサート100自体の形状や各部の構成、インサート100のホルダ本体20に対する取付構造等は適宜変更してもよい。
【0063】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0064】
10…ホルダ(インサート着脱式ホルダ)
20…ホルダ本体
20b…基端部
20s…先端部
22…取付座
28…接続面
30…ノズル部材
32…取付面
34…ノズル内流路部
34s…バッファ部
36…噴射口
37…ノズル側開口
82…接続開口
82c…開口中心
83…ネジ穴
90…ネジ
100…インサート
101…切刃
A1…第一領域
A2…第二領域
S1…離間寸法
S2…離間寸法
W1…幅寸法
W2…幅寸法
X…工具軸方向(第一方向)
Y…工具幅方向(第三方向)
Z…上下方向(第二方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10