(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131121
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】引き込み装置を備えた引き戸装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/16 20060101AFI20220831BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E05F1/16 B
E05D15/06 125Z
E05D15/06 125C
E05D15/06 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029895
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000125990
【氏名又は名称】株式会社くろがね工作所
(72)【発明者】
【氏名】田上 峰
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034CA04
2E034CA11
2E034CB00
2E034DA05
2E034DA17
2E034EA05
(57)【要約】
【課題】
本発明は、引き込み装置を安定的に作動させることができ、引き込み装置の耐久性を上げることが可能な引き戸装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
扉を、自動で引き込む引き込み装置を備えた引き戸装置において、引き込み装置は、引き込み装置本体と、引き込み装置本体のトリガーと係合し引き込み装置を作動させる係止突起からなり、引き戸装置は、扉を開閉自在に吊り下げるレール部材を備えるとともに、引き込み装置用のガイドレールを備え、ガイドレールは、引き込み装置本体がスライド移動可能であって、かつ、係止突起が設置されるものであって、さらに、トリガーと係止突起との係合時の係合距離を一定間隔内に安定させるもので、ガイドレールをレール部材とは別に引き戸装置に備えた構成にする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を、自動で引き込む引き込み装置を備えた引き戸装置において、引き込み装置は、少なくとも引き込み装置本体と、引き込み装置本体のトリガーと係合し引き込み装置を作動させる係止突起からなり、引き戸装置は、扉を開閉自在に吊り下げるレール部材を備えるとともに、引き込み装置用のガイドレールを備え、ガイドレールは、引き込み装置本体を扉の開閉方向にスライド移動可能にするもので、かつ、前記係止突起が設置されるものであって、さらに、前記トリガーと係止突起との係合時の係合距離を一定間隔内に安定させるもので、該ガイドレールをレール部材とは別に引き戸装置に備えていることを特徴とする引き込み装置を備えた引き戸装置。
【請求項2】
引き込み装置本体は転動可能なローラーを備え、該ローラーによって引き込み装置本体がガイドレールに沿ってスライド移動可能とされ、該ローラーとガイドレールの接触強さが調整可能とされたことを特徴とする請求項1に記載の引き戸装置。
【請求項3】
ガイドレールは、レール部材に対して、引き戸装置の扉が開放された時の出入り方向側に並列に配置されることを特徴とする請求項1、あるいは、請求項2に記載の引き戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を閉止、あるいは、開放する時に、扉を自動で引き込む引き込み装置を備えた引き戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、引き戸を戸閉側端部に強制的、かつ、引き戸の速度を減速させながら引き寄せ、戸閉動作を行う引き込み装置を備えた引き戸が提案されている。
このような引き込み装置を引き戸枠の戸先側に設置し、引き戸の戸先側に引き込み装置を起動させる係止突起を設置することによって引き戸を引き込み閉鎖させているが、引き戸枠の戸袋部となる戸尻側にも引き込み装置を設置し、引き戸の戸尻側に引き込み装置を起動させる係止突起を設置することによって引き戸の開放時においても戸尻側に引き戸を引き込み、引き戸を開放させていることがある。
そして、このような引き込み装置は、引き込み装置と引き戸扉を支持スライドさせるローラーを一体化させた吊り下げユニットとされ、吊り下げユニットで扉を吊り下げ、固定部材に設置されたガイドレール内を、吊り下げユニット(ローラー)が走行することにより、扉がスライド開閉し、ガイドレールに設置された引き込み装置作動用の作動部材と引き込み装置のトリガーが係止することにより引き込み装置が作動するものである。
このような吊り下げユニットは、通常、小さいローラーと高さを抑えたガイドレールで構成されたもので、主に比較的軽量な木製建具用として提供されている。
そのため、スチール扉などの重量の重い扉で使用すると、ローラー部が破損することや、引き込み装置の耐久性が悪くなるといった問題がある。
【0003】
一方、スチール扉などの重量の重い扉に引き込み装置を組み合わせたものとして特許文献2のようなものがある。
特許文献2のものは、重量の重い扉用に設定されたスライドレールと、スライドレールとは別体の引き込み装置を組み合わせたものである。
このような、組み合わせの場合、スライドレールには十分な耐久性が備えられているため、スライドレールが容易に破損することがない。
そして、スライドレールとは別体で設置された引き込み装置は、スライドレール側に設けられた係止突起と、引き込み装置側の引き込み係止体(トリガー)が係合することにより引き込み装置が作動する。
このような、スライドレールと別体引き込み装置の場合、係止突起と引き込み係止体(トリガー)の位置関係を引き戸装置の接地時に都度調整する必要があることや、扉の出入り方向の振れが係止突起に伝わり、係止突起と引き込み係止体(トリガー)との係止位置が安定しないといった問題がある。
特に、扉を勢いよく開閉した場合、係止突起と引き込み係止体(トリガー)が係止した瞬間、衝撃力で係止突起や引き込み装置の撓みなどで、係止突起と引き込み係止体の係止が外れるといったことが起きやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5384975号公報
【特許文献2】特許第6370680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、引き込み装置を安定的に作動させることができ、引き込み装置の耐久性を上げることが可能な引き込み装置を備えた引き戸装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
扉を、自動で引き込む引き込み装置を備えた引き戸装置において、引き込み装置は、引き込み装置本体と、引き込み装置本体のトリガーと係合し引き込み装置を作動させる係止突起からなり、引き戸装置は、扉を開閉自在に吊り下げるレール部材を備えるとともに、引き込み装置用のガイドレールを備え、ガイドレールは、引き込み装置本体を扉の開閉方向にスライド移動可能にするもので、かつ、前記係止突起が設置されるものであって、さらに前記トリガーと係止突起との係合時の係合距離を一定間隔内に安定させるもので、該ガイドレールをレール部材とは別に引き戸装置に備えた構成とする。
【0007】
引き込み装置本体は転動可能なローラーを備え、該ローラーによって引き込み装置本体がガイドレールに沿ってスライド移動可能とされ、該ローラーとガイドレールの接触強さを調整可能にする構成とする。
【0008】
ガイドレールは、レール部材に対して、引き戸扉が開放された時の出入り方向側に並列に配置する構成とする。
【発明の効果】
【0009】
レール部材とは別に引き込み装置用のガイドレールを備えているので、引き込み装置に依存せずに扉重量に対応したレール部材の選定が容易である。
また、引き込み装置に扉を吊り下げる必要がないので、引き込み装置への負担が軽減できるため、引き込み装置の耐久性を上げることが可能となる。
そして、引き込み装置用のガイドレールを備えており、ガイドレールによってトリガーと係止突起との係合時の係合距離を一定間隔内に安定させるため、トリガーと係止突起の係合を確実に行うことができ、引き込み装置を確実に作動せることが可能である。
【0010】
引き込み装置のローラーとガイドレールの接触強さが調整可能であるから、引き込み装置のローラーに一定の荷重をかけることが可能で、ローラーが安定的にガイドレールに沿ってスライド移動することができる。
【0011】
ガイドレールがレール部材に対して並列に配置されているので、引き戸装置の全体の高さを低くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】引き込み装置ユニットと扉の開閉を示す正面概略図
【
図12】ガイドレールの取付位置を変更する他の実施例の断面拡大図
【
図13】ガイドレールと引き込み装置本体を入れ替えた他の実施例の断面拡大図
【発明を実施するための形態】
【0013】
引き込み装置を安定的に作動させることができ、引き込み装置の耐久性を上げることが可能な引き込み装置を備えた引き戸装置を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0014】
図1において、符号1は引き戸枠を示している。
引き戸枠1は、
図2、
図3に示すように、建物用鉄骨11・・・にブラケット12・・・を介して固定された戸尻側縦枠13および戸先側縦枠14と、戸尻側縦枠13と戸先側縦枠14の上端間に、建物用鉄骨11・・・にブラケット12・・・を介して配設された上枠15を有している。
【0015】
そして、戸尻側縦枠13と戸先側縦枠14間で、上枠15の室内側(実施例ではメンテナンス側、いわゆる、引き戸扉等の吊り込み側)と室外側の両面に上端が固定され、室内側中枠3と室外側中枠30が、室内側と室外側に所定間隔を有して配設されている。
以下、戸尻側縦枠13と室内側中枠3及び室外側中枠30間を戸袋側、戸先側縦枠14と室内側中枠3及び室外側中枠30間を出入口側、室内側中枠3と室外側中枠30の方向を出入り方向、戸尻側縦枠13と戸先側縦枠14の方向を開閉方向、メンテナンス側を正面側、室外側を背面側と云う。
尚、実施例では、便宜上、メンテナンス側を室内側として説明しているが、設置場所に対応して、点検側を室外側としても良い事は云うまでもない。
【0016】
図1、
図2において、符号5は上枠15に取り付けられたレール部材を示し、符号6は、レール部材5に吊り下げられた引き戸扉を示し、符号16は、戸袋側の床面全幅にわたって固定されたベース材を示し、符号17は、ベース材16の出入口側端部に、回転自在に設けられるガイドローラー164を示している。
図1、
図3において、符号17・・・は、戸袋側の室内外側の両面上下方向に所定間隔を有して配設された下地桟を示している。
図2において符号7は、上枠15の点検出入口側に取り付けられる室内側ランマ下地パネルを示し、符号19は、上枠15の出入口側に設けられる室外側ランマ下地パネルを示している。
【0017】
そして、上記戸尻側縦枠13、戸先側縦枠14、上枠15、レール部材5が取り付けられたレール取付材50、ベース材16、室内側中枠3、室外側中枠30、下地桟17・・・、室外側ランマ下地パネル19、室内側ランマ下地パネル7(以上の部材が引き戸枠1等の固定部材となる。)が、内装仕上げ(化粧ボード、クロス等の貼り付け)の行われるまでに施工され、内装仕上げが終了した後、室内側ランマ下地パネル7の一部のメンテナンスパネル73を取り外して、引き戸扉6がレール部材5に吊り込まれ、引き戸扉6の摺動確認、閉鎖スピードの調整作業が行われる。
【0018】
以下、各部材について詳述する。
戸尻側縦枠13は、
図3に示すように、横断面略コ字形に形成され、建物用鉄骨11の出入口側面から所定寸法離間した位置に立設され、横向きL字形のブラケット12・・・と建物用鉄骨11が溶接されたあと、鉛直姿勢の状態でブラケット12と溶接され、床面仕上げ時に下端部が床面に埋め込まれる。符号138は、引き戸扉6が全開した時、引き戸扉6の戸尻側端面が当接する、出入口側面に取り付けられた緩衝部材を示している。
【0019】
戸先側縦枠14は、
図3に示すように、建物側鉄骨11側の上下方向に所定間隔を有して固定用部材141・・・が設けられ、出入口側方向で室内側に突出して室内側の化粧ボード100の出入り口側端面を隠蔽する室内側ボード閉塞突部146と、出入口側方向で室外側に突出して室外側の化粧ボード100の出入口側端面を隠蔽する室外側ボード閉塞突部147と、室内側ボード閉塞突部146と室外側ボード閉塞突部147間に位置し、上部が室内側ボード閉塞突部146と室外側ボード閉塞突部147より上方に突出し、引き戸扉6の戸先側端部が位置する部分に閉鎖用凹部148が上下方向に渡って設けられた戸当たり部より扁平な略コ字形に形成されている。
【0020】
上枠15は、
図3に示すように、断面下向きコ字形の上枠基板154と、上枠基板154の下面に連結された断面逆L字形の上枠室外側部材155より構成されている。
上枠室外側部材155の室内側にはレール取付材50が連結され、室外側の下半部には室外側ランマ下地パネル19が取り付けられている。
【0021】
戸先側縦枠14と上枠15は上記のように構成され、戸尻側縦枠13が前述のようにして立設された後、上枠15の戸先側を戸先側縦枠14にネジ止めして、上枠15と戸先側縦枠14を仮組みした状態で、上枠15と戸尻側縦枠13を同様にして仮組みする。
次に、上記の状態を維持しながら戸先側のブラケット12・・・及び上枠15側のブラケット12・・・を介して、戸先側縦枠14の固定用部材141・・・及び上枠15の上面基板154を建物用鉄骨11と溶接連結する。
【0022】
ベース材16は、
図1、
図3に示すように、戸袋側の床面全幅に位置する固定面161と、固定面161の室内側(点検側)及び室外側(固定側)の端部に形成された立ち上がり面162、162と、立ち上がり面162、162から内方に突出して形成されたL字形の下地ボード受け面163、163と、固定面161の出入り口側端部に、出入り口側に突出し、扉6の下端面に形成された嵌合溝60内に嵌合するガイドローラー164が装着されている。
そして、ベース材16の出入り口側端部はアンカーボルトにて床面に固定されると共に、ベース材16の出入口側端部は室内側中枠3、室外側中枠30の内面と連結され、さらに、戸尻側端部が戸尻側縦枠13と連結され床面に固定される。
【0023】
室内側中枠3は、
図1、
図3に示すように、上端部が上枠15の室内側にネジ止め連結され、内面側に位置する補強枠31と、補強枠31の出入り口側の端部から室内側に位置する室内側外側枠36より構成され、下端部がベース材16と連結され、床面仕上げ時に下端が床面に埋め込まれて立設される。
【0024】
室外側中枠30は、
図1、
図3に示すように、上端部が上枠15の室外側とネジ止め連結され、内面側に位置する室外側補強枠301と、室外側補強枠301の出入り口側の端部から室外側に位置する室外側外側枠306より構成され、下端部がベース材16と連結され、床面仕上げ時に下端が床面に埋め込まれて立設される。
【0025】
下地桟17は、
図1、
図3に示すように、基板表面部171と、基板表面部171の上下端部をL字形に折り曲げた上下フランジ部172、172より構成され、基板表面部171の戸先側端部と戸尻側端部が戸尻側縦枠13と室内側中枠3及び室外側中枠30にネジ止め連結され上下方向に所定間隔を有して配設されている。
【0026】
室外側ランマ下地パネル19は、
図2に示すように、室外側表面基板191の上端部に形成されたL字形の上部連結用突片192と、室外側表面基板191の下端部に室外側に突出して形成された略コ字形の室外側化粧突部193より形成されている。
すなわち、室外側ランマ下地パネル19は室外側中枠30と戸先側縦枠14の上部間に位置して取付けられ、室外側化粧ボード100が貼り付けられた状態で、室外側化粧突部193だけが露出することとなる。
【0027】
室内側ランマ下地パネル7は、
図2に示すように、基板72と、基板72の下端部に分離可能に設けられたメンテナンスパネル73より構成されている。
そして、基板72は、上枠15にネジ止め連結される、上端に形成された上端連結突片71と、室内側化粧ボード100の下端縁の下面を支持隠蔽する基板側下突片721より構成されている。
【0028】
メンテナンスパネル73は、
図1、
図3に示すように、室内側の上方から基板側下突片721の先端部分に載置され、室内側化粧ボード100に張られたクロスの下縁を隠蔽する載置用突片76と、戸先側縦枠14と室内側中枠3の上端部出入口側内面に取付けられたメンテナンスパネル連結座70、70に下面側が化粧ネジ700、700にて連結され、出入口上部の室内側を閉塞するL字形の室内側閉塞部78より構成されている。
【0029】
メンテナンスパネル連結座70、70は対向した同形に構成されているので一方側についてのみ説明する。
メンテナンスパネル連結座70は、
図2、
図8に示すように、室内側中枠3の上端部出入口側内面にネジ止め連結される連結用壁701と、連結用壁701の上端部に出入口側に突出して連設され、上面が室内側下地パネル7の基板側下突片721の下面に当接し、該下面にネジ止め連結される上部突出壁702と、連結用壁701の上端部に出入口側に突出して連設され、室内側閉塞部78の下面がネジ止め連結される連結用螺孔を有する下部突出壁703より構成されている。
【0030】
室内側ランマ下地パネル7と、メンテナンスパネル連結座70、70は、上記のように形成され、上端連結突片71が上枠15にネジ止めされた状態で、基板72の上方に下地ボード101が貼り付けられ、されに基板72の室内側の表面に室内側化粧ボード100が貼り付けられ、室外側ランマ下地パネル19の下室外側表面基板191の上方に下地ボード101が貼り付けられ、さらに、下室外側表面基板191の室外側表面に室外側化粧ボード100が貼り付けられ、下地桟17・・・のフランジ172、172、ベース材16の下地ボード受面163、上枠15の室内側垂下突片152及び室外側垂下突片153間等に下地ボード101・・・が貼り付けられ、下地ボード101・・・の表面の戸袋側に化粧ボード100が貼り付けられた状態で、出入口以外の表面が建物の壁面と同じ化粧用ボード100で面一に覆われた後、さらに室内側にはクロス等が貼り付けられることとなる。
【0031】
すなわち、戸先側縦枠14の室内側ボード閉塞突部146と、室外側ボード閉塞突部147と、室内側中枠突部32と室外側中枠突部302と、メンテナンスパネル73と室外側化粧突部193が化粧ボード100より外側に突出してあらわれることとなる。
そして、最終仕上げが施された(引き戸扉6等が取り付けられた)後、メンテナンスパネル73の載置用突片76を基板側下突片721に外側上方から載置し、メンテナンスパネル連結座70、70に室内側閉塞部78が下面からネジ止め連結されて出入口の上部にメンテナンスパネル73が着座自在に設けられる。
【0032】
レール取付材50は、
図2に示すように、レール部材5が室内側に連結されるレール部材連結壁501を有し、上枠15(上枠室外側部材155)の室内側に、出入口側と戸袋側のほぼ全幅にわたって、かつ、水平状態連結される。
レール部材5は、ボールベアリング式のスライドレールであって、レール取付材50の長尺側の長さより短い長さに設定され、レール取付材50に出入り口側と戸袋側に渡って配設され、
図2に示すように、断面略C字形で、レール取付材50よりやや短目のレール補強部材500と、レール補強部材500の室内側にネジ止め連結される断面略C字形で、レール補強部材500とほぼ同長の室外側メンバー51と、室外側メンバー51の略3分の2程度の長さのボールリテーナに回転自在に保持されたボールを介して、室外側メンバー51に摺動自在に保持される、室外側メンバーの略3分の1程度の長さの移動側メンバー54より構成され、移動側メンバー54の室内側には、移動側メンバー54と同程度の長さの吊り下げ用金具55が固着されている。
【0033】
吊り下げ用金具55は、
図2に示すように、移動側メンバー54の室内側に固着される連結固着部551と、連結固着部551の下端部に連設された室内側が開口するコ字形の吊り下げ支持部552より構成されている。
そして、吊り下げ支持面552の開閉方向側両端部には、室内側が開口する吊り下げボルト挿通孔が形成されている。
【0034】
吊り下げ用金具55に吊り下げられる引き戸扉6は、前記吊り下げボルト挿通孔に対応する位置で、上端面に吊り下げボルト61、61が設けられたパネル形状をなし、下端面の開閉方向に前記ガイドローラー164が嵌合する嵌合溝60が形成され(
図2に示す。)、引き戸扉6の戸先側端面には、引き戸の閉鎖状態で戸先側縦枠14の閉鎖用凹部148内に位置する戸当たり部材600(
図3に示す。)が、戸先側縦枠14方向に突出して設けられている。
【0035】
吊り下げボルト61は、螺軸部とボルト頭部よりなり、メンテナンスパネル73が取り外された状態の出入口の室内側より、吊り下げボルト61、61の螺軸部が、吊り下げ支持部552の吊り下げボルト挿通孔を挿通して、ボルト頭部が吊り下げ用支持部552に保持され、必要に応じて頭部をスパナで回動して引き戸扉6を所定の高さに位置調整した後、ボルト保持体65、65が吊り下げ用支持部552に室内側より連結されて、レール部材5に吊り下げ用金具55を介して吊り下げられる。
そして、引き戸扉6を吊り下げた後、メンテナンスパネル73を取り付ける。
この状態で引き戸扉6は、レール部材5によって、スライド移動可能に吊り下げられ、引き戸扉6によって、出入口開口部は閉塞され、引き戸扉6のスライド移動により出入口開口部は開放されるようになる。
メンテナンスパネル73は、引き戸装置の調整時に外されるもので、メンテナンスパネル73を取り外して臨む部分がメンテナンス開口であり、メンテナンスパネル73が設置される側がメンテナンス側(正面側)となる。
以上が、引き戸装置の基本構成である。
【0036】
次に、このような引き戸装置に装備される引き込み装置ユニット900について説明する。
引き込み装置ユニット900は、
図2~
図5に示すように、引き込み装置本体80と、係止突起体8、8それぞれに設けられた引き込み装置本体80のトリガー82と係合し引き込み装置を作動させる係止突起8b、8bとで構成される引き込み装置800と、引き込み装置本体80のスライド移動を可能にし、引き込み装置800の該係合を安定的に行うためのガイドレール9からなる。
【0037】
係止突起体8は
図2、
図5~8に示すように、ガイドレール9の上面に下方に突出するように取り付けられるものであって、該取付部であるベース材8aとベース材8aから突出する係止突起8bで形成され、ベース材8aには、取付用の上下方向に貫通する取付孔が設けられ、係止突起8bは、後述する引き込み装置本体80のトリガー82の押圧体82cと起動片82dに間に内包される大きさに設定されている。
係止突起体8は、戸先側用と、戸袋側用の2体用意され、戸袋側用は、ベース材8a戸先側の一端が長く伸ばされ、伸ばされた戸先側端近傍に上下方向に貫通する取付孔が設けられている。
【0038】
引き込み装置本体80は
図6、
図7に示すように主に、本体ケース81と、本体ケース81の内部空間内に組み込まれる前後のトリガー82、82と引き込みバネ83、83と、ブレーキ装置84と、引き込み装置本体80をガイドレール9でスライドさせるためのローラーユニット85と、引き込み装置本体80を安定的に作動させるガイド86より構成されている
【0039】
本体ケース81は、開閉方向に長い細長長方形を成し、内部に空間を有する筐体であって、
図6、
図7で示すように本体ケース81内に戸先案内溝811、戸尻案内溝812が設けられる。
戸先案内溝811は、引き戸扉6の摺動方向で水平方向に伸びる引き込み案内溝811aと、案内部811aの戸先側に連接し傾斜しながら戸先側に下がる格納溝811bで形成されている。
戸尻案内溝812は、戸先案内溝811と対称形であって、戸先案内溝812より戸尻側の位置に形成され、引き戸扉6の摺動方向で水平方向に伸びる引き込み案内溝812aと、案内部812aの戸尻側に連接し傾斜しながら戸尻側に下がる格納溝812bで形成されている。
【0040】
トリガー82は、引き込み装置本体80の戸先側と戸尻側に装備されるものであって、係合部82aと案内軸82bが合成樹脂で一体的に成型されており、係合部82aは、前述の係止突起8bを下部から係合するように上向きコ字型に形成され、係止突起8bと係合する押圧体82cと、引き込み動作を起動する起動片82dとを備えており、案内軸82bは、トリガー82の下部に設けられ、戸先案内溝811、戸尻案内溝812内を摺動移動し、トリガー82を戸先案内溝811、戸尻案内溝812と同じ軌道で摺動移動させるガイドである。
そして、戸先案内溝811に、一方のトリガー82を、起動片82dが戸尻側、押圧体82cが戸先側になるように案内軸82bを挿入し、他方のトリガー82の起動片82dが戸先側、押圧体82cが戸尻側になるように、案内軸82bを戸尻案内溝812に挿入し、トリガー82、82が本体ケース内を、それぞれ戸先案内溝811、戸尻案内溝812に沿って摺動移動するように取り付けられる。
【0041】
2体用意される引き込みバネ83は、コイル状のバネであって、一端が本体ケース81内の中央付近に固定され、他方端がトリガー82に固定され、常に戸先側のトリガー82を戸尻方向、戸尻側のトリガー82を戸先方向に引っ張るように張設される。
【0042】
ブレーキ装置84は、円柱状のブレーキ本体84aとブレーキ本体84a内を摺動し、ブレーキ本体84a前端部から伸び縮みするように突出するロッド部84bからなり、ブレーキ本体84aは、ロッド84bが格納されるときにブレーキ本体84aに封入されたオイルの作用によって、速度が調整され、ロッド84bが移動する時にブレーキがかかるように構成されている。
ブレーキ本体84a内部にはコイルバネが装備されており、コイルバネでロッド84bを常に伸長させる方向に付勢しており、ロッド部84bを押し、ロッド部84bがブレーキ本体84a内に引き込まれた状態で押すことをやめると、ロッド84bが伸長する。
そして、ブレーキ装置84は、ブレーキ本体84aが戸尻側、ロッド部84bが戸先側に延伸するように開閉方向に水平に本体ケース81内に装着され、ブレーキ本体84aの戸尻側端が、戸尻側のトリガー82の起動片82d近傍の戸先側面に当接し、ロッド84b先端が戸先側のトリガー82の起動片82d近傍の戸尻側面に当接し、戸先側のトリガー82が戸尻側に移動する時と、戸尻側のトリガー82が戸先側に移動する時に、ロッド部84bがブレーキ本体84a内を移動しブレーキがかかるように設置される。
【0043】
ローラーユニット85は、本体ケース81の戸先端に連結固定されるもので、開閉方向に長尺な長方形のユニットベース851と、ユニットベース851に、開閉方向と直行する水平方向(出入り方向)を軸芯として回転する樹脂製で円形のローラー852・・・と、ユニットベース851の下面に下方に突出して取り付けられる連結部材853で構成されている。
連結部材853は、上下方向に延伸する軸状であって、上部に雄ネジ加工がされる固定部853aと、固定部853aの下部で、六角形状に形成される調整部853bと、調整部853bの下部で軸状に形成される連結軸853cと、連結軸853cの下部でフランジ状に形成される掛り部853dで一体的に形成され、固定部853aが、ユニットベース851の下面に設けられて雌ネジ穴に螺合し、調整部853bをスパナで回転させることにより、ユニットベース851に対して上下方向に移動調節が可能とされている。
ガイド86は、ローラーと同じく樹脂製で円形のローラーであって、本体ケースの戸尻側端部に、開閉方向と直行する水平方向(出入り方向)を軸芯として回転するように取り付けられている。
【0044】
このように構成された引き込み装置80の戸先側のトリガー82を戸先側に移動させると、トリガー82の案内軸82bが戸先案内溝811の案内部811aに沿って移動し、格納溝811bに到達すると、格納溝811bの傾斜に沿って、トリガー82が下がる。
そして、格納溝811bの戸先側に到達すると、係合部82aが戸先側に傾いた状態で本体ケース81内の埋没し、本体ケース81の上面から起動片82dが突出して状態で停止する(
図6(イ)の状態)。
同様に、戸尻側のトリガー82を戸袋側に移動させると、係合部82aが戸袋側に傾いた状態で本体ケース81内の埋没し、本体ケース81の上面から起動片82dが突出して状態で停止する(
図7(イ)の状態)。
この状態で、ブレーキ装置84は伸長した状態で、前述のように、ロッド84bの先端が戸先側のトリガー82に当接し、ブレーキ本体84aの戸尻側端が、戸尻側のトリガー82に当接しており、引き込みバネ83、83は、それぞれがトリガー82によって他方端が引っ張られた状態となり、戸先側のトリガー82は戸袋側に、戸尻側のトリガー82は戸先側に引っ張れた状態となっている。このようにトリガー82には、引き込みバネ83の引っ張り力が常にかかった状態になっているが、格納溝811b、812bの傾斜角度を最適化することによって、引き込みトリガー82は移動しない。
そして、この状態が、引き込み装置本体80の作動準備状態である。
【0045】
ガイドレール9は、開閉方向に長尺な金属製のもので、押し出し成型にて製造される。
そして、断面形状は、開閉方向に離間して形成される鉛直面である壁面91、91と、壁面91、91の上端面を連結する上面92と、壁面91、91の下端面からそれぞれ対向するように水平に延伸する下部ガイド93、93と、下部ガイド93、93間に設けられた隙間のスライド溝94と、上面92からやや下方で壁面91、91から対向するように水平に延伸する上部ガイド95、95からなるものである。
上面92には、ガイドレール9を引き戸装置に取り付けるためと、係止突起体8を取り付けるための上下方向に貫通する取付孔・・・が開閉方向に離間して複数個設けられている。
ガイドレール9の長さは、開口側の幅より長く、戸袋側にも配置される長さに設定されるものである。
【0046】
このように引き込み装置ユニット900は構成されているが、次に引き込み装置ユニット900を引き戸装置に装着する方法について説明をする。
尚、前述の引き戸装置の構成において、通常、吊り下げ用金具55に引き戸扉6が吊り下げられる前に引き戸ユニット900は取り付けられる。
【0047】
まず、ガイドレール9の側面から、上面92と上部ガイド95間に戸先側の係止突起体8、戸尻側の係止突起体8が長いベース材8aを戸先側に向けて挿入される。
そして、同じく側面から、下部ガイド93、上部ガイド95間に、作動準備状態の引き込み装置本体80のローラー852、ガイド86を、ローラー852側が戸先側となるように挿入し、引き込み装置本体80が、ガイドレール9をスライド移動可能に挿入される。
次に、戸先側の係止突起体8、戸尻側の係止突起体8が引き込み装置本体80を含むガイドレール9を、戸先側縦枠14と室内側中枠3にそれぞれ取り付けられた取付金具2、2に取り付けられるガイドベース材20にネジにて取り付けられる。
【0048】
ガイドレール9の取付方法の説明より先に、取付金具2、ガイドベース材20について説明する。
取付金具2は、開閉方向に長い横長板状の正面基板21と、正面基板21の開閉方向の一端が90度に折り曲げられて形成される取付片22で形成され、正面基板21には、開閉方向に離れて、縦長の小判状の取付調整孔23、23が設けられ、取付片22には固定孔が設けられている。
取付金具2は、戸先側縦枠14の室内側中枠3に対向する面のメンテナンスパネル73で隠蔽される位置に、戸先側縦枠14に設けられた螺孔に対して、取付片22の固定孔を貫通してネジにて取り付けられる。
室内側中枠3にも同様に、室内側中枠3の戸先側縦枠14に対向する面のメンテナンスパネル73で隠蔽される位置に、室内側中枠3に設けられた螺孔に対して、取付片22の固定孔を貫通してネジにて取り付けられ、
図4に示すように、開閉方向で対向して戸先側縦枠14と室内側中枠3に取り付けられる。
【0049】
ガイドベース材20は、開閉方向に長く、戸先側縦枠14と室内側中枠3間の開口部間より少し短く形成された長尺部材であって、水平面を形成するレールベース201と、レールベース201の正面側を折り曲げて垂下する取付補強片202で断面L字状に形成され、断面L字状に形成されたものであって、断面L字状に形成することにより、ガイドベース材20全体の曲げ剛性を確保している。
そして、レールベース201には、前述のガイドレール9に設けられた取付孔・・・に対応して、上下方向に貫通するレール取付螺孔201a・・・が設けられ、取付補強片201の左右(開閉方向)の両端近傍には、前記取付金具2の取付調整孔23、23に対応して出入り方向に貫通するガイド取付螺孔202a・・・が設けられている。
【0050】
ガイドベース20は、戸先側縦枠14と室内側中枠3に取り付けられた正面基板2a、2aの背面側面に取付補強片201を添わせて、正面側から小ねじにて、取付調整孔23、23を貫通しながら、ガイド取付螺孔202a・・・に螺合して取り付けられる。
【0051】
このように取り付けられたガイドベース20のレールベース201の下面から、引き込み装置本体80を内部に挿入したガイドレール9の上面92を上面にして、戸袋側を、室内側中枠3、室外側中枠30間から戸袋内に挿入し、上面92をレールベース201の下面に押し当て、下面のスライド溝94から小ねじにて、取付孔921、レール取付螺孔201aを使用してレールベース201と上面92を螺合する。
この状態で、ガイドレール9は、戸先側縦枠14と室内側中枠3間に加え、室内側中枠3から戸袋側に延伸した状態となる。
【0052】
次に、引き込み装置本体80を開口側の中央付近に移動させ、戸先側の係止突起体8を戸先側にスライド移動させ、戸先側縦枠14近傍の所定の位置のガイドレール9の上面92の取付孔、レール取付螺孔201aに、ガイドレール9の下面のスライド溝94からネジにて、係止突起体8を固定する。
一方、戸袋側の係止突起体8も戸尻側にスライド移動させ、開口側で、室内側中枠3の近傍の所定の位置の前記取付孔921、レール取付螺孔201aに、ガイドレール9の下面のスライド溝94からネジにて、係止突起体8を固定する。
戸尻側の係止突起体8は、ベース材8aが戸先側に長いので、係止突起8bは、室内側中枠3を超えて戸袋側に配置されることになる。
【0053】
本状態が、引き込み装置ユニット900が引き戸装置に装着された状態であって、引き込み装置800は作動状態にある。
そして、引き込み装置本体80と引き戸扉6を連結することにより、引き戸扉6の引き込み動作が行われるが、先に、引き込み装置800の作動方法について説明する。
【0054】
作動準備状態の引き込み装置本体80を戸先側にスライドさせると、ローラー852、ガイド86が、下部ガイド93の上面を転動しながら引き込み装置本体80がガイドレール9内をスライド移動する(
図6(イ)に示す)。
そして、戸先側の係止突起8bの戸尻側面にトリガー82の起動片82dが接触すると、固定部材である係止突起8bによって、起動片82dが戸袋側に押されることとなる(
図6(ロ)に示す)。
起動片82dが戸袋側に押されると、トリガー82は本体ケース81に対して戸袋側に移動し、作動準備状態が解除され、引き延ばされていた引き込みバネ83が縮むことによって、本体ケース81に対して戸袋側に引っ張られながら移動する。この時、トリガー82によって、ブレーキ装置84のロッド部84bが戸袋側に押圧されるからブレーキ装置84のブレーキ機能によって、トリガー82はゆっくりと戸袋側に移動していく。
【0055】
トリガー82が戸袋側に移動すると、戸先案内溝811に沿って、本体ケース81内に埋没していた押圧体82cが本体ケース81の上面から突き出てくることにより押圧体82cが係止突起8bの戸先側面に接触する(
図6(ハ)に示す)。
押圧体82cが係止突起8bに接触すると、係止突起8bは固定された部材であり、トリガー82は引き込みバネに引っ張られているから、押圧体82cが係止突起8bを戸袋側に押圧することにより、本体ケース81(ローラーユニット85、ガイド86を含む)が、反対側の戸先側にスライド移動する。
そして、トリガー82が引き込みバネ83によって戸先案内溝811による所定の距離を戸袋側に移動すると、戸先側の引き込み動作は停止する(
図6(ニ)に示す)。
この動作が引き込み装置800の引き込み動作である。
【0056】
次に、引き込み装置800が引き込み動作から作動準備状態に復旧する動作を説明する。
引き込み動作中の引き込み装置本体80を戸袋側にスライド移動させると、固定部材である係止突起8bによって押圧体82cが戸先側に押されることとなり、トリガー82は、引き込みバネ83を引き伸ばしながら、戸先側に移動する。同時にブレーキ装置84のロッド部84bも内蔵のコイルバネの作用により伸びていく。
そして、トリガー82が所定の距離を移動すると押圧体82cが本体ケース81に埋没し作動準備状態に復旧する。作動準備状態になると押圧体82cが本体ケース81に埋没するので、押圧体82cは係止突起8bから外れ、引き込み装置本体80は自由にスライド移動可能となる。
【0057】
そして、そのまま引き込み装置本体80を戸袋側にスライド移動させると、前記と同様にローラー852、ガイド86が、下部ガイド93の上面を転動しながら引き込み装置本体80がガイドレール9内をスライド移動する(
図7(イ)に示す)。
そして、戸袋側の係止突起8bの戸先側面に戸尻側のトリガー82の起動片82dが接触すると、固定部材である係止突起8bによって、起動片82dが戸先側に押されることとなる(
図7(ロ)に示す)。
起動片82dが戸先側に押されると、トリガー82は本体ケース81に対して戸先側に移動し、作動準備状態が解除され、引き延ばされていた引き込みバネ83が縮むことによって、本体ケース81に対して戸先側に引っ張られながら移動する。この時、トリガー82によって、ブレーキ装置84のブレーキ本体84aが戸先側に押圧されるからブレーキ機能によって、トリガー82はゆっくりと戸先側に移動していく。
【0058】
トリガー82が戸先側に移動すると、戸先案内溝811に沿って、本体ケース81内に埋没していた押圧体82cが本体ケース81の上面から突き出てくることにより押圧体82cが係止突起8bの戸袋側面に接触する(
図7(ハ)に示す)。
押圧体82cが係止突起8bに接触すると、係止突起8bは固定された部材であり、トリガー82は引き込みバネ83に引っ張られているから、押圧体82cが係止突起8bを戸先側に押圧することにより、本体ケース81(ローラーユニット85、ガイド86を含む)が、反対側の戸袋側にスライド移動する。
そして、トリガー82が引き込みバネ83によって戸尻案内溝812による所定の距離を戸袋側に移動すると、戸袋側の引き込み動作は停止する(
図7(ニ)に示す)。
このように、戸袋側の引き込み装置800の動作は、戸先側の引き込み動作と対称となる動作である。したがって、戸袋側の引き込み動作から作動準備状態に復旧する動作についても戸先側の動作と対称の動作となる。
尚、このような、本体ケース、トリガー、案内溝、引き込みバネ、ブレーキ装置、係止突起によって構成された引き込み装置は、公知技術であって多くの種類のものが提供されている。
【0059】
このような引き込み装置800を含む引き込み装置ユニット900と、レール部材5に吊り下げされ開閉可能とされた引き戸扉6が連結されて、引き戸扉6の引き込みが可能となる。次に、引き込み装置ユニット900と引き戸扉6の連結方法について説明する。
引き込み装置ユニット900と引き戸扉6との連結は、連結ベース4と連結金具40によって行われるもので、連結ベース4を引き戸扉6の戸先側端部近傍の上面に取り付け、連結金具40を引き込み装置80の連結部材853の連結軸853cに引っ掛けて、連結ベース4と連結金具40を固定することによって引き込み装置800と引き戸扉6は連結される。
【0060】
連結ベース4は
図9、10に示すように、引き戸扉6の上面に載置する板状の基板4と、基材の正面端側から上方の立ち上がる連結座42で形成され、基板4には上下方向に貫通する取付孔41aが設けられ、連結座42には、出入り方向に貫通する横長小判型の調整孔42aが設けられている。
連結金具40は、連結座42に対応した鉛直面の板状の固定片401と、固定片401の上端から正面側に延伸する連結片402で断面L字状を成し、固定片401には、出入り方向に貫通する固定螺孔401aが設けられ、連結片402には、上下方向に貫通する、前端面側に開口部が設けられたU字状の貫通孔の係合孔402aと、係合孔402aの開閉方向側に離れて螺孔402b、402bが設けられている。
【0061】
そして、連結ベース4を、引き戸扉6の上面の戸先側近傍の所定の位置に、固定片401を引き戸扉6の上面に載置し、連結片402aが正面を向くように、引き戸扉6の上面に設けられた下穴と取付孔41aを使用してネジ止めする。
そして、連結ベース4が取り付けられた引き戸扉6を前述の要領で吊り下げ金具55に吊り下げて固定し、引き戸扉6をスライド開閉可能とする。
【0062】
次に、連結金具40の係合孔402aに引き込み装置80の連結部材853の連結軸853cが差し込まれるように、連結金具40を引っ掛ける。
この状態で、連結片402下面の係合孔402a周辺に、連結部材853の掛り部853dの上面が引っかかるので、連結金具40は容易には連結部材853から脱落しない。
そして、連結金具40の固定片401が背面側、係合孔402aの開口側が正面側に向くように配置し、引き戸扉6、あるいは、引き込み装置本体80をスライド移動させ、連結片402の背面側に、固定片401が位置するように配置する。
そして、連結ベース4と連結金具40を、正面側から、ネジを、調整孔42aを貫通させ、固定螺孔401aに対して螺合し仮固定する。
【0063】
この状態で、引き戸扉6と引き込み装置ユニット900は連結されているので、引き戸扉6を開閉すると、連結金具40、連結部材853を介して、引き込み装置本体80がガイドレール9内を引き戸装置6の開閉に合わせてスライド移動する(
図4(ロ)の状態)。
そして、引き戸扉6が戸先側、あるいは戸尻側に近傍に達すると、前述のとおり、引き込み装置ユニット900の引き込み動作が開始し、引き戸扉6は、引き込まれることとなる。
また、引き込まれた状態(
図4(イ)もしくは
図4(ハ)の状態)から引き戸扉6を開放、もしくは閉止方向にスライドさせると、同じく連結金具40、連結部材853を介して引き込み装置ユニット900の作動準備状態に復旧する動作が開始する。
【0064】
次に、引き戸扉6と引き込み装置ユニット900の調整方法を説明する。
引き戸扉6は、レール部材5によってスライド移動可能であるが、ガイドレール9とレール部材5が平行になっていないと、引き込み装置本体80がスムーズにスライドできないことになるので、ガイドベース材20と取付金具2を固定しているネジを緩めて、取付調整孔23間でガイドベース材20の平行度を調整することができる。
【0065】
引き戸扉6が戸先に引き込まれた状態で、戸先側縦枠14と引き戸扉6との間に隙間が発生する場合は、連結金具40を固定している小ねじを緩め、調整孔42a間で連結ベース4を戸先側に移動させることで隙間調整ができる。
【0066】
引き込み装置本体80は、下部で引き戸扉6と連結していることから、引き込み装置本体80に多少の下向き荷重をかけ、ローラー852、ガイド86を走行面である下部ガイド93に押し付けるようにすると引き込み装置本体80は安定してガイドレール9内を移動することができるので、連結部材853の調整部853dを回転させて、連結部材853を上げることにより、掛り部853dの上面と、連結片402下面の係合孔402a周辺とを接触するように調整すると、引き戸扉6の自重が連結金具40を介して掛り部853dに掛かるため、引き込み装置本体80を下部ガイド93に押し付けることができる。
連結部材853の上下調整範囲を超えた調整が必要な場合、前記のようにガイドベース材20を取付調整孔23間で上下に移動させることで、調整範囲を補うことができる。
逆に、引き込み装置本体80に荷重がかかりすぎて、スムーズに移動できない場合は、連結部材853を下げて、引き込み装置本体80への荷重を緩めることができる。
このように、ローラー852と下部ガイド93の接触強さを調整可能にすると、引き戸装置ユニット900の作動を安定させることが可能となる。
【0067】
前記のように、引き戸扉6と引き込み装置ユニット900の調整が完了したあと、連結金具40の連結片402の係合孔402aの正面側に、外れ止め400を、螺孔402b、402bを使用して固定し、係合孔402aの正面の開口から連結軸853cが抜けないようにする。
外れ止め400は、連結片402の係合孔402aと対称形の係合孔400aを有した板状のものであり、螺孔402b、402bに対応した貫通孔が設けられている。
外れ止め400が取り付けられた状態で、係合孔402a、係合孔400aで形成された小判型の係合孔内で、連結軸853cが出入り方向に隙間を有した状態で納まっており、該隙間を設けているのは、引き戸扉6に出入り方向で振れた場合、連結金具40も出入り方向で振れるため、連結軸853cに直接出入り方向の荷重がかからないようにするための逃がしである。
【0068】
以上のように、引き戸装置に装備された引き込み装置ユニット900は作動するが、前述のとおり、引き戸扉6の荷重は、レール部材5で支えるため、引き込み装置本体80には引き込み装置本体80がスムーズに移動できるだけの荷重しかかからないので、引き込み装置本体80への負担を減らすことができるので耐久性が上がる。
また、引き戸扉6を外さなくても、連結金具40と連結部材853の係合を外し、ガイーレール9を取り外すことで、引き込み装置本体80の交換を行うことも可能となる。
【0069】
図9~11に示すように、連結ベース4の連結座の戸先側に全開時ストッパー車4Aを設け、室内側中枠3側の取付金具2に板バネ状の全開時ストッパー4Bを設け、引き戸扉6が全開した時に、全開時ストッパー車4Aと全開時ストッパー4Bを係合させ、引き戸扉6を全開時付近で一旦停止させることが可能で、引き込み機能に必要な部材を利用して設置できるので、部品点数が減りコストを抑えることが可能である。
尚、全開時ストッパーを設ける場合、開放側の引き込み機能が不要になることがあるが、その場合、戸尻側の係止突起体8を取り外すことで、引き込み機能が働かないようにすることができる。
また、引き込み装置本体80を戸先側だけ引き込み機能を有したものとすることでもよい。
【0070】
他の実施例として、
図12に示すように、レール部材5の上方にガイドレール9を設置し、引き戸扉6を吊り下げている吊り下げ用金具55と引き込み装置本体80を連結する方法でもよい。
しかしながら、レール部材5と出入り方向に平行に設置したほうが、引き戸装置全体の高さを低くすることが可能である。
レール部材は本実施例のようなボールベアリング式のスライドレールを用いる他、大径のローラーを用い、扉の戸先側と戸袋側を吊り下げ、ローラーを引き戸枠側に設置された長尺なレール材の上を転動させる方法のレール部材でもよい。
しかしながら、レール部材とガイドレールを出入り方向に平行に設置する場合、出入り方向のスペースが必要なため、レール部材は前述の実施例のようにボールベアリング式のスライドレールを採用した方が、出入り方向の厚みが薄いため、ガイドレール9の設置が容易である。
【0071】
他方、引き戸扉に合わせてスライド移動するようにガイドレール9を設置し、引き込み装置本体80を固定部材として設置してもよい。
図13の場合、ガイドレール9のスライド溝94が上面を向き、ガイドレール9の上方に引き込み装置本体80が固定されているが、この場合、引き込み装置本体80を上方に持ち上げるか、ガイドレール9を下げることにより、ローラー852、ガイド86に上向きの力を加え、上方になる下部ガイド93に押し付けた方が、引き込み装置本体80がガイドレール9をスムーズに移動できる。
すなわち、前記実施例においても同様に、ガイドレール9と引き込み装置本体80間に荷重がかけられる構成とすることで、引き込み装置本体80がスムーズに移動可能である。
尚、この場合、引き込み装置本体80は、戸袋側の室内側中枠3近傍から戸袋内にかけて設置される。
【0072】
本実施例のガイドレール9には上部ガイド94が備わるが、引き戸扉6の開閉の勢いが強いと、係止突起8bと起動片82dが接触した時にその衝撃によって、引き込み装置本体80が上下左右(出入り)方向に暴れる(振れる、撓む、捩じれる)ことがある。
引き込み装置本体80が暴れると、係止突起とトリガーの係合が外れ、引き込み機能が誤作動を起こすことがある。
そのため、上部ガイド94によって、ローラー852、ガイド86が接触して引き込み装置本体80が上下方向に跳ね上がることを防止しているので、係止突起とトリガーの係合を安定させることが可能である。
また、引き込み装置本体80は、ガイドレール9内で、壁面91、91、下部ガイド93、93、上部ガイド94、94で囲われた状態となっており、壁面91、91のローラー852が走行する部分の内面の上下部が、中心方向に向かって傾斜していることから、ローラー852が左右(出入り方向)に振れにくくなり直線状にスムーズに転動が可能となるから係止突起とトリガーの係合を安定させることが可能である。
このように、引き込み装置本体80をスライド可能とし、上下左右方向の振れを抑える専用のガイドレールを設けることで、引き込み機能を安定的に作動させることが可能である。
【0073】
本発明はこのように構成され、戸袋部が壁内に収容された引き戸装置だけではなく、戸袋部が開放された引き戸装置や、折り畳み式ドアであって、扉上部で吊り部をスライド移動させることにより扉を開閉するものでも利用可能である。