(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131168
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】昇降式シェルター住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04H9/14 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029975
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】516311869
【氏名又は名称】ソフィアルクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】安田 美加
(72)【発明者】
【氏名】安田 俊彦
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AA07
2E139AA15
2E139AB24
2E139AC19
2E139AC32
(57)【要約】
【課題】住宅部分を地上に安定して固定可能な昇降式シェルター住宅を提供する。
【解決手段】 昇降式シェルター住宅1は、住宅部2と、住宅部2に設けられ、住宅部2の底面から下方に突出するネジ軸32を有するとともにネジ軸32にネジ部32aが形成されたアンカーボルト3と、アンカーボルト3を回転駆動する回転駆動装置100と、を備え、アンカーボルト3は、住宅部2が地上にある基準位置では、ネジ部32aの一部が、地面を掘り下げて構成され且つ住宅部2の居住部分を含む少なくとも一部を収容可能な地下区画5の収容空間61の底部に穿設された、内周面にアンカーボルト3のネジ部32aを螺合可能なネジ溝72aを有するボルト孔7のネジ孔部72に螺合した状態で固定され、住宅部2の少なくとも一部が地下区画5の収容空間61に収容された収容位置ではネジ部32aの全体がネジ孔部72に螺合された状態で固定されるように構成した。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅部と、
前記住宅部に設けられ、当該住宅部の底面から下方に突出する突出部を有するとともに当該突出部にネジ部が形成されたアンカーボルトと、
前記アンカーボルトを回転駆動する回転駆動部と、を備え、
前記アンカーボルトは、前記住宅部が地上にある基準位置では、地下区画の底部に穿設されたボルト孔に前記ネジ部の一部が螺合された状態で固定され、前記住宅部が前記地下区画に収容された収容位置では前記ネジ部の全体が前記ボルト孔に螺合された状態で固定されるように構成され、
前記地下区画は、地面を掘り下げて構成され且つ前記住宅部の居住部分を含む少なくとも一部を収容可能に構成されており、
前記ボルト孔は、内周面に前記アンカーボルトのネジ部を螺合可能なネジ溝を有することを特徴とする昇降式シェルター住宅。
【請求項2】
請求項1において、
前記アンカーボルトは、前記住宅部に対して軸周りに回転可能に設けられ、
前記回転駆動部は、前記アンカーボルトを回転駆動して当該アンカーボルトのネジ部を前記ボルト孔にねじ込む際の下降方向の力と、前記アンカーボルトを逆回転駆動して前記ネジ部を前記ボルト孔から抜き出す際の上昇方向の力とを利用して前記住宅部を昇降するように構成されている昇降式シェルター住宅。
【請求項3】
請求項1において、
前記住宅部は、有天且つ有底の円筒形状に構成され、
前記アンカーボルトは、前記住宅部の底部に当該住宅部と同心に固定されており、
前記回転駆動部は、前記住宅部とともに前記アンカーボルトを回転駆動するとともに、前記住宅部及び前記アンカーボルトの下降又は上昇に追随して下降又は上昇するように構成されている昇降式シェルター住宅。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
地上に立設され、前記住宅部の下端部の外周に沿って当該下端部を前記基準位置において包囲する支持壁を備える昇降式シェルター住宅。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記住宅部及び前記アンカーボルトは、水に浮く密度に構成されている昇降式シェルター住宅。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記住宅部の下端外周部を前記基準位置において包囲する地上部分には、上方から下方へと外側に向かって斜めに延びる傾斜部が設けられている昇降式シェルター住宅。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、
前記住宅部は、内周部に接続された平面視で十字又は略十字の壁部によって内側が区画されている昇降式シェルター住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降式シェルター住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風による天災地変、核戦争などによる放射能汚染などの危機から身を守るために、シェルターの重要性が高まっている。現状、各国の人口あたりのシェルターの普及率は、例えば、スイス、イスラエルで100%、ノルウェーで98%、アメリカで82%、ロシアで78%となっている。これに対して、日本はたったの0.02%となっている。
【0003】
しかし、専用のシェルターは、地下に小規模の空間を設けて且つ固定されているものが主流であり、狭い空間でのストレスの発生や、長期間の避難に向いていないなどの問題も多い。そのため、危機的状況が長期化した場合、ストレスの増大や食料難などにより、危険な外部へ出ていくなどの選択肢を迫られる可能性がある。即ち、使用者のストレス等を考慮すると、普段の生活空間がそのままシェルターとして利用できることが望ましく、そのようなシェルターとして例えば特許文献1に記載の潜水式シェルターが開示されている。
【0004】
かかる潜水式シェルターは、貯留水を溜めるための貯水槽と、架台を昇降、及び静止させる昇降装置と、架台に固定された筐体とを備え、貯水槽は貯留水を溜める第1貯水槽と、第1貯水槽からあふれ出た貯留水を溜める第2貯水槽とから構成され、筐体は、底部と、扉が設けられた側壁と、天井とを有し、昇降装置は、筐体の全体が貯留水の中に水没する状態から、扉が貯留水の水面上に位置する状態まで昇降可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、貯留槽の腐敗を防止するために貯留槽に送水する送水管と、貯留槽の水を排出する配水管とを備えている。そのため、例えば、送水管が破損して送水出来ない状態で貯留水の排出が行われた場合に、貯留槽内の水が減少する一方となって、貯留水による浮力が減少し昇降装置であるウインチのワイヤーロープに付加された重量が増大する場合がある。このような状態では、例えばワイヤーロープに経年劣化や災害による破損が生じている場合に、ワイヤーロープの破断によって筐体が貯水槽内へと落下する恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、住宅部分を地上に安定して固定可能な昇降式シェルター住宅を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の昇降式シェルター住宅は、住宅部と、 前記住宅部に設けられ、当該住宅部の底面から下方に突出する突出部を有するとともに当該突出部にネジ部が形成されたアンカーボルトと、前記アンカーボルトを回転駆動する回転駆動部と、を備え、前記アンカーボルトは、前記住宅部が地上にある基準位置では、地下区画の底部に穿設されたボルト孔に前記ネジ部の一部が螺合された状態で固定され、前記住宅部が前記地下区画に収容された収容位置では前記ネジ部の全体が前記ボルト孔に螺合された状態で固定されるように構成され、前記地下区画は、地面を掘り下げて構成され且つ前記住宅部の居住部分を含む少なくとも一部を収容可能に構成されており、前記ボルト孔は、内周面に前記アンカーボルトのネジ部を螺合可能なネジ溝を有する。
【0009】
〔発明2〕 さらに、発明2の昇降式シェルター住宅は、発明1の昇降式シェルター住宅において、前記アンカーボルトは、前記住宅部に対して軸周りに回転可能に設けられ、前記回転駆動部は、前記アンカーボルトを回転駆動して当該アンカーボルトのネジ部を前記ボルト孔にねじ込む際の下降方向の力と、前記アンカーボルトを逆回転駆動して前記ネジ部を前記ボルト孔から抜き出す際の上昇方向の力とを利用して前記住宅部を昇降するように構成されている。
【0010】
〔発明3〕 さらに、発明3の昇降式シェルター住宅は、発明1の昇降式シェルター住宅において、前記住宅部は、有天且つ有底の円筒形状に構成され、前記アンカーボルトは、前記住宅部の底部に当該住宅部と同心に固定されており、前記回転駆動部は、前記住宅部とともに前記アンカーボルトを回転駆動するとともに、前記住宅部及び前記アンカーボルトの下降又は上昇に追随して下降又は上昇するように構成されている。
【0011】
〔発明4〕 さらに、発明4の昇降式シェルター住宅は、発明1乃至3のいずれか1の昇降式シェルター住宅において、地上に立設され、前記住宅部の下端部の外周に沿って当該下端部を前記基準位置において包囲する支持壁を備える。
〔発明5〕 さらに、発明5の昇降式シェルター住宅は、1乃至4のいずれか1の昇降式シェルター住宅において、前記住宅部及び前記アンカーボルトは、水に浮く密度に構成されている。
【0012】
〔発明6〕 さらに、発明6の昇降式シェルター住宅は、発明1乃至5のいずれか1の昇降式シェルター住宅において、前記住宅部の下端外周部を前記基準位置において包囲する地上部分には、上方から下方へと外側に向かって斜めに延びる傾斜部が設けられている。
【0013】
〔発明7〕 さらに、発明7の昇降式シェルター住宅は、発明1乃至6のいずれか1の昇降式シェルター住宅において、前記住宅部は、内周部に接続された平面視で十字又は略十字の壁部によって内側が区画されている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、発明1の昇降式シェルター住宅によれば、住宅部が基準位置にあるときでもアンカーボルトの一部がボルト孔に螺合された状態となるので住宅部を安定して固定することができる。
また、発明2の昇降式シェルター住宅によれば、アンカーボルトを回転駆動してボルト孔にねじ込む際及び逆回転駆動してボルト孔から抜き出す際の昇降方向の力によって住宅部を昇降するようにしたので、住宅部ごと回転駆動する構成と比較して、回転駆動部を小型化することができる。その結果、昇降式シェルター住宅全体を小型化できるとともに、回転駆動装置にかかるエネルギーやコストを低減することができる。
【0015】
また、発明3の昇降式シェルター住宅によれば、アンカーボルトとともに住宅部も回転駆動するようにしたので、回転分の上昇又は下降は伴うが基準位置にて住宅部を回転させることが可能となり、適宜の回転位置で停止することで、例えば、希望の部屋を景色(眺め)の良い方向や太陽に向く方向などに回転させることができる。
【0016】
また、発明4の昇降式シェルター住宅によれば、住宅部が基準位置にあるときに、アンカーボルト3のしなり等によって住宅部2が傾いたときに当接して傾くのを防止したり、傾く角度を低減したりすることができる。
また、発明5の昇降式シェルター住宅によれば、例えば、津波などの水害によって、地上が水没してしまった場合などに、住宅部及びアンカーボルトが水に浮かぶことができるので、水底に取り残されるといった事態を回避することができる。
【0017】
また、発明6の昇降式シェルター住宅によれば、大雨が降った際に、傾斜部分によって雨水を外側に押し流すことができるので、地下区画に大量の水が貯まるのを防ぐことができる。
また、発明7の昇降式シェルター住宅によれば、十字又は略十字の壁部によって住宅部の強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態に係る昇降式シェルター住宅1の構成例を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る昇降式シェルター住宅1の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【
図3】(a)は、昇降式シェルター住宅1の一部を断面表示した図であり、(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
【
図4】昇降式シェルター住宅設置用の地下施設10の一例を示す図であり、図中において地下施設10は断面表示している。
【
図5】昇降式シェルター住宅1を住宅部2が地上にある基準位置で地下施設10に設置した状態を示す図であり、図中において地下施設10は断面表示している。
【
図6】昇降式シェルター住宅1を住宅部2の一部が地下に収容された収容位置で地下施設10に設置した状態を示す図であり、図中において地下施設10は断面表示している。
【
図7】(a)は、基準位置における昇降式シェルター住宅1を地上から見た図であり、(b)は、収容位置における昇降式シェルター住宅1を地上から見た図である。
【
図8】第1の実施の形態に係る昇降式シェルター住宅1の全体構成を示す図であり、図中において地下施設10は断面表示している。
【
図9】第1の実施の形態に係る回転駆動装置100の動作を説明する図であり、図中において地下施設10は断面表示している。
【
図10】回転駆動装置100によってシェルター住宅部を収容位置に向けて回転駆動する様子を示す図であり、図中において地下施設10は断面表示している。
【
図11】(a)及び(b)は、第2の実施の形態にかかる昇降式シェルター住宅1Aの構成を示す図であり、(a)は、昇降式シェルター住宅1Aの一部を断面表示した図であり、(b)は、平面図である。
【
図12】第2の実施の形態に係る回転駆動装置200によるアンカーボルト3の回転駆動によって、シェルター住宅部を収容位置に向けて回転駆動する様子を示す図であり、図中において地下施設10は断面表示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施の形態〕
〔構成〕
以下、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1乃至
図10は、第1の実施の形態を示す図である。
まず、昇降式シェルター住宅1の構成を説明する。
図1及び
図2は、第1の実施の形態に係る昇降式シェルター住宅1の回転駆動装置を除いた構成例を示す図であり、
図1(a)及び(b)は正面図及び側面図、
図2(a)及び(b)は平面図及び底面図である。また、
図3(a)は、昇降式シェルター住宅1の一部を断面表示した図であり、
図3(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。また、
図8は、第1の実施の形態に係る昇降式シェルター住宅1の全体構成を示す図であり、図中において地下施設10は断面表示している。また、
図8は、見やすさを考慮して、内周壁6及びボルト孔7のハッチング表示を省略している。
【0020】
昇降式シェルター住宅1は、
図1(a)及び(b)、
図2(a)及び(b)並びに
図8に示すように、住宅部2と、アンカーボルト3と、回転駆動装置100とを備えている。以下、回転駆動装置100を除く住宅部2及びアンカーボルト3を「シェルター住宅部」と称する。
【0021】
住宅部2は、略有底円筒状を成す住宅基礎部21と、住宅基礎部21の各階にそれぞれ設けられた環状窓部22と、住宅基礎部21の1階部分の互いに対向する位置に設けられた外部と通じる2つのスライドドア23と、屋根部40とを備える。
住宅基礎部21の略円筒形状を構成する壁は、例えば、アルミニウム層、チタン層、空気層などの複数の層から構成された多層構造となっている。例えば、免震機能を有した強固な枠材と、この枠材と一体形成された軽量のコンテナ構造の内側部分との二重構造とする。また、この構成に限らず、住宅基礎部21は、例えば、公知の相欠き継ぎのように端部に凹凸形状が形成されたハニカム構造の複数のパネル部材を嵌め合わせて円筒状に組み立てる構成としてもよい。
【0022】
また、昇降式シェルター住宅1は、シェルター住宅部が水に浮かぶ密度で構成されており、住宅基礎部21を構成する材料は、頑丈且つ軽量の金属材料等を用いることが望ましい。また、少なくともシェルター住宅部の居住部分は水密構造となっている。
住宅基礎部21の内部空間は、
図3(a)及び(b)に示すように、床部26Uにて1階の内部空間24Lと2階の内部空間24Uとに区画されているとともに、床部26Lにて1階の内部空間24Lと床下の空間(収容室27)とが区画されている。1階及び2階の内部空間24L及び24Uは、それぞれ、平面視で十字又は略十字に形成された壁部25によって部屋が大きく4つに区画されている。壁部25は、住宅基礎部21の内周部と、天井部及び床部又は屋根部40の基礎構造部及び床部と接続されている。なお、図示省略するが、1階及び2階の壁部25には、隣接する各部屋をつなぐ開口部又は開口部及びドア部が形成されている。また、1階の4つの部屋の少なくとも1つには2階へと上がるための階段が設けられ、この部屋の上部の床部26Uの部分には2階へと通じる階段を設置するための開口部が設けられている。また、壁部25で区画された各階の4つの部屋は、トイレ、浴室、キッチン、玄関を設置するなど、必要に応じてさらに複数の部屋に区画してもよい。
【0023】
壁部25は、金属材料等の頑強な材料による下地壁を有しており、また、住宅基礎部21の内部に平面視十字又は略十字形状に配置されることで住宅基礎部21の強度も高めるように構成されている。なお、水に浮く構成とするため、壁部25の下地壁は、軽量且つ頑丈な材料から構成することが望ましい。また、軽量化のためにシェルター住宅部の外周壁や内周壁の素材に木材を使用してもよい。
【0024】
住宅基礎部21の1階の床部26Lの下には、アンカーボルト3のネジ頭部31を収容且つ固定するための収容室27が形成されており、その床上には、ネジ頭部31が強固に固定されている。
図1及び
図2に戻って、環状窓部22は、住宅基礎部21の円筒形状を構成する壁(以下、「外周壁」と称す)において、壁部25との接続部(
図1中の網掛け部分)及びスライドドア23を除く部分に窓枠を介して設けられている。具体的に、円筒形状に沿った形状の複数の窓を並べて配置した構成となっている。各窓は、例えば、耐熱性及び耐衝撃性を有する強化ガラスや強化プラスチックなどの頑丈且つ透明な材料から構成されている。即ち、環状窓部22は、災害発生時に、火災による熱で溶けにくく且つ津波などにより流されてくる障害物の衝突などによって破壊され難い構成となっている。
【0025】
屋根部40は、住宅基礎部21の上部に固定された略深張りの傘形状の傘状屋根41と、傘状屋根41の上部中央に立設された避雷針を兼ねるアンテナ42と、傘状屋根41に形成され且つアンテナ42を平面視で菱形状に包囲するように形成された連結溝43とを備える。
【0026】
傘状屋根41は、住宅基礎部21の上部開口部を覆うように強固に固定されているとともに、例えば、アルミやチタン等の軽量で強度のある金属材料によって形成された例えば和傘の骨組みのような基礎構造部を有している。
傘状屋根41は、基礎構造部の最外周部の骨組みを窓枠として各開口部には、それぞれ骨組みに沿った形状の天窓が取り付けられている。各天窓は、上記環状窓部22と同様の理由から、例えば、耐熱性及び耐衝撃性を有する強化ガラスや強化プラスチックなどの頑丈且つ透明な材料から構成されている。
【0027】
加えて、傘状屋根41は、天窓からの日差しを制御する制御構造を備えている。この制御構造としては、例えば、電気を流すことで非透明となり、電気を流さないことで透明となる特性を有した液晶フィルムを内側から窓に貼りつけ、スイッチ等によって、透明と非透明を切り替えるものを採用している。なお、この構成に限らず、例えば、大量の抗酸化ボールを利用して、このボールによって窓を覆う状態と覆わない状態とを制御することで陽射しの入射及び遮断又は中間の状態を制御する構成や、電動シャッターの開閉によって陽射しの入射及び遮断を制御する構成などが採用可能である。
【0028】
アンカーボルト3は、
図1乃至
図3に示すように、住宅基礎部21の収容室27内に固定して設けられたネジ頭部31と、ネジ頭部31と一体に構成され、住宅基礎部21の底部中央から住宅基礎部21と同軸に下方へと突出するネジ軸32とを備えている。ネジ軸32は、外周面にネジ山が設けられたネジ部32aと、ネジ部32aの下端部に設けられた円錐形状の先端部32bとを備えている。
【0029】
アンカーボルト3は、軽量且つ高強度の材料から構成されることが望ましく、例えば、チタン、チタン合金などから構成されている。なお、より軽量化をするために、強度の許す範囲でネジ軸32等の構成部品を中空構造としてもよい。
次に、昇降式シェルター住宅1を設置する地下施設10の構成を説明する。
【0030】
図4は、昇降式シェルター住宅設置用の地下施設10の一例を示す図であり、図中の地下施設10は断面表示している。また、
図5は、昇降式シェルター住宅1を住宅部2が地上にある基準位置で地下施設10に設置した状態を示す図である。また、
図6は、昇降式シェルター住宅1を住宅部2の一部が地下に収容された収容位置で地下施設10に設置した状態を示す図である。また、
図7(a)は、基準位置における昇降式シェルター住宅1を地上から見た図であり、
図7(b)は、収容位置における昇降式シェルター住宅1を地上から見た図である。なお、
図4及び
図5において、地下施設10は断面表示している。また、見やすさを考慮して、
図5において、内周壁6及びボルト孔7のハッチング表示を省略している。
【0031】
地下施設10は、
図4に示すように、地面Gを掘り下げて構成された地下区画5と、地下区画5に隣接して設けられた避難施設8とを備える。
地下区画5は、内周部を構成する内周壁6と、内周壁6の下端部と接合され、地下区画5の底面に穿設されたボルト孔7とを備える。
【0032】
内周壁6は、円筒形状をなし、崩落等が起こらないように強固な部材(例えば、成型コンクリート、鋼製パネル、鉄筋コンクリート、木材など)から構成されている。内周壁6の地下部分の内側には、シェルター住宅部の一部を収容する収容空間61が形成されている。また、内周壁6の上端部は地上に突出しており、シェルター住宅が基準位置にあるときに住宅部2の下端部を支持する支持壁62として機能する。また、内周壁6には、住宅部2と避難施設8とを地下で接続するための避難施設8と連通する開口部63が形成されている。
【0033】
収容空間61は、住宅部2の住宅基礎部21の外形に沿った形状に形成され、住宅基礎部21の外径よりも大径の内径を有するように構成されている。
支持壁62は、住宅部2の外周部に沿った環状の壁部として地上に突出し、内径が住宅基礎部21の外径よりも大径に構成されている。加えて、住宅基礎部21が傾いて、その外周壁と当接した場合にその重量を支持できる強度に構成されている。例えば、台風や地震等による昇降式シェルター住宅1のアンカーボルト3のしなりによって住宅部2が傾いた際に傾き過ぎないように支持する役割を果たす。
【0034】
また、支持壁62の周囲には、上方から下方へと外側に向かって斜めに延びる緩勾配の傾斜部9が形成されている。この傾斜部9によって、雨水が収容空間61内に流れ込みにくい構成としている。なお、傾斜部9を支持壁62の周囲に設ける構成としたが、この構成に限らず、例えば、支持壁62の外周部を上方から下方へと外側に向かって斜めに延びる緩勾配に形成する構成にしてもよい。
開口部63は、収容位置において、住宅部2のスライドドア23と対面する位置に設けられている。開口部63には、スライドドアや、避難施設8側へと押して開けるドアを設けてもよい。なお、収容空間61内においてスライドドア23と開口部63との間にはシェルター住宅部が回転するための隙間があるため、隙間の大きさに応じて、内周壁6に足場を設けたり、住宅部2側から足場を架けたりするなど、隙間を覆う足場を設ける。
【0035】
ボルト孔7は、収容空間61の底部の地面下に埋設された略円柱形状の基礎部71と、基礎部71に形成されたネジ孔部72とを備えている。
基礎部71は、高強度の金属材料から構成されており、上端部が内周壁6の下端部と接合されて内周壁6と一体的に構成されている。
【0036】
ネジ孔部72は、基礎部71の中央部を、基礎部71が有底円筒状となるように長手方向に穿設するような形で形成されている。ネジ孔部72には、内周面に、アンカーボルト3のネジ部32aと螺合可能なネジ溝72aが形成されており、ネジ孔部72の下端には、アンカーボルト3の先端部32bを収容可能な先端収容部72bが形成されている。
【0037】
このように構成された地下施設10に対して、昇降式シェルター住宅1は、アンカーボルト3のネジ部32aをボルト孔7のネジ孔部72にねじ込むことで設置される。その際、ねじ込む長さによって、
図5に示す、地上で生活をする際の基準位置と、
図6に示す、収容空間61に収容する収容位置との2つの位置へと設置且つ変更が可能となっている。
【0038】
図4に戻って、避難施設8は、収容空間61に隣接して地下に設けられた避難空間81と、避難空間81と地上とを連通する通路83と、通路83を通って避難空間81と地上とをつなぐ梯子84と、通路83の開口部を地上で塞ぐ蓋85とを備える。
避難空間81は、収容位置での長期滞在を考慮して、例えば、非常用の食料、飲料、衣料、医療用具、燃料などを備蓄しておくための倉庫の役割を有している。加えて、例えば津波などの災害が発生して、昇降式シェルター住宅1を収容空間61に収容した後に、津波で流されてきた障害物などで昇降式シェルター住宅1を基準位置まで安全に上昇させられない状況のときなどに梯子84を使って地上に脱出するための脱出路としての役割を有している。
【0039】
通路83は、避難空間81を地上へとつなげる通路であり、梯子84は、避難空間81の床上から通路83を通って地上付近まで延びる長さを有しており、避難空間81からこの梯子84を登ることで、通路83の上部開口部から地上へと出ることができる。
蓋85は、通路83の上部開口部を覆うように構成されており、覆った状態のときに通路83へと水が侵入するのを防ぐ構成となっている。なお、蓋85には、例えば、潜望鏡を設けて、蓋85を開けることなく外の状況を見ることができる構成としてもよい。または、潜望鏡の代わりに外の様子を撮影できるように且つ災害時の水や障害物等で壊れないようにビデオカメラを設置し、その映像を避難空間81内に設置した表示装置に表示して、梯子84を登ることなく外の状況を把握できる構成としてもよい。なお、収容空間61に収容時の昇降式シェルター住宅1の上部及びその周辺の状況を確認できるように、複数のビデオカメラを設置したり、カメラの撮影軸線を上下左右方向に遠隔で回転できる構成にしたりすることが望ましい。
【0040】
次に、昇降式シェルター住宅1の基準位置及び収容位置での設置状態について説明する。
図5に示す基準位置への設置状態では、アンカーボルト3のネジ部32aの一部がボルト孔7のネジ孔部72に螺合した状態となっている。この螺合長さは、地上にある住宅部2の基礎として十分な強度を確保できる長さとすることが望ましい。
【0041】
また、基準位置では、
図7(a)に示すように、住宅部2の下端側の周囲を支持壁62が包囲するようになっている。これにより、アンカーボルトのしなりによる住宅部2の傾きに対して、傾きが大きいときには支持壁62が当接して支持し、傾く量を抑えるようになっている。
【0042】
また、基準位置では、回転駆動装置100によって、昇降式シェルター住宅1の1回転分(360°)の回転及び任意の回転位置での停止を行えるように構成されている。住宅部2には、1階及び2階に環状窓部22が設けられているため、回転することで、壁部25で区画された各部屋のうち特定の部屋に陽射しが入るようにしたり、特定の部屋から希望の景色が見られるようにしたりすることが可能となる。なお、基準位置からねじ込む方向(以下、「正方向」とする)又は抜き取る方向(以下、「逆方向」とする)に回転させるときに、下降又は上昇距離を短くするため、この回転位置に該当する位置のネジ部32aのネジ山のピッチを短く構成してもよい。
【0043】
また、シェルター住宅部の初期の地下区画5への設置は、例えば、完成したシェルター住宅部をクレーンで吊り上げて設置する、または、別途回転駆動装置100を移動式とした構成の回転駆動装置を用意してクレーンでの吊り上げと移動式の回転駆動装置との組み合わせで設置する。または、地下施設10を建築後に、例えば、ノックダウン方式によって地下区画5内で部品を組み立ててシェルター住宅部を完成させることで行う。
【0044】
一方、
図6に示す収容位置への設置状態では、アンカーボルト3のネジ部32aの全体がボルト孔7のネジ孔部72に螺合された状態となる。この状態では、アンカーボルト3の先端部32bがネジ孔部72の先端収容部72bに収容された状態となる。
加えて、
図7(b)に示すように、支持壁62の一部が屋根部40の傘状屋根41の内側に収容された状態となる。このとき、図示省略するが、傘状屋根41が支持壁62の上部に乗っかった状態となる。
【0045】
さらに、住宅部2の大部分が収容空間61内に収容されるとともに住宅部1階のスライドドア23と内周壁6の開口部63とが対向した状態となる。即ち、アンカーボルト3及びボルト孔7は、収容位置においてこの位置関係となるようにネジ部32a及びネジ孔部72の長さやピッチが構成されている。また、収容位置に収容された状態では、スライドドア23を開いて例えば足場(不図示)をかけることで、開口部63を通って避難空間81へと移動することができる。
【0046】
なお、基準位置、収容位置又は部屋の向きを任意の向きに変更したときにおいては、シェルター住宅部が外力によって勝手に回転しないように回転動作をロックする機構を設ける構成としてもよい。このロック機構は、回転駆動装置100のブレーキ動作で実現してもよいし、別途アンカーボルト3や地下区画5などにロックする機構を設けることで実現してもよい。
【0047】
次に、昇降式シェルター住宅1の回転駆動装置100の構成について説明する。
図9は、第1の実施の形態に係る回転駆動装置100の動作を説明する図である。また、
図10は、回転駆動装置100によってシェルター住宅部を収容位置に向けて回転駆動する様子を示す図である。なお、
図9及び
図10において、地下施設10を断面表示しており、また、見やすさを考慮して、内周壁6及びボルト孔7のハッチング表示を省略している。
【0048】
昇降式シェルター住宅1は、
図8に示すように、住宅部2及びアンカーボルト3から構成されるシェルター住宅部を回転駆動するための回転駆動装置100を備える。
回転駆動装置100は、
図8及び
図9に示すように、基準位置にあるシェルター住宅部及び地下施設10を跨ぐようにして立設されており、互いに対向する位置に立設された2本の支柱101と、回転駆動部102と、回転駆動部102の左右両端部にそれぞれ接続された2本のアーム103と、各アーム103にそれぞれ接続された移動部104とを備える。
【0049】
2本の支柱101は、高い剛性を有する金属材料から構成されている。例えば、I形鋼又はH形鋼などから構成され、互いの対向する側に上下方向に延びる案内溝が形成されている。それぞれの案内溝を形成する対向する壁部は、2本の支柱101の対向する側の端部に、内側に突出する爪部が形成され略L字状に構成されている。即ち、案内溝の端部は爪部によって溝幅が狭くなっている。
【0050】
回転駆動部102は、公知の電動ドライバのような仕組みの回転ドライバ111と、回転ドライバ111の静止部に取り付けられ回転ドライバ111をアーム103と接続する接続部112とを備えている。
回転ドライバ111は、筐体に内蔵された電動モータ113及びモータ制御部114と、電動モータ113の回転軸に回転可能に接続されたビットチャック(図示略)と、ビットチャックに接続されたビット115とを備えている。
【0051】
接続部112は、回転ドライバ111の筐体に固定されており、左右両端部には、アーム103の一端部がそれぞれ接続されている。これにより、アーム103の上下動に応じて回転ドライバ111を上下動することができる。
電動モータ113は、高トルクの直流モータ又は交流モータから構成されており、モータ制御部114からの制御信号に基づいて正方向又は逆方向に回転制御されるとともに、所定の回転位置で停止するブレーキ制御がされるモータである。電動モータ113は、所定角度単位(例えば、10°単位)の回転角度位置を検出可能な回転位置センサを有している。
【0052】
モータ制御部114は、DSP等のプロセッサやメモリを搭載しており、居住部に設けられたコントロールパネルからの指令信号に応じて、電動モータ113及び移動部104の駆動モータ(不図示)を駆動制御するものである。具体的に、住宅部2は、内部に回転駆動部102のコントロールパネルが設けられている。コントロールパネルとモータ制御部114とは、不図示の通信ケーブルによって有線接続されているか、または無線通信装置によって無線接続されており、居住者のコントロールパネルの操作内容に応じた指令信号がモータ制御部114に送信するように構成されている。
【0053】
モータ制御部114は、受信した指令信号に基づいて、電動モータ及び駆動モータの回転速度等を制御して、基準位置内におけるシェルター住宅部の所定回転位置への回転及び停止、基準位置から収容位置への回転駆動及び停止、並びに収容位置から基準位置への回転駆動及び停止の動作を制御する。駆動制御に際しては、例えば、予め回転速度とシェルター住宅部の上下方向への移動距離等を測定しておき、目標位置への移動距離に応じて回転速度を可変制御する。
【0054】
また、モータ制御部114は、国、自治体、携帯電話会社などが発信する緊急警報信号(例えばJアラート)等の災害発生に係る信号を受信するように構成されており、この信号の受信に応じて、電動モータ113を自動制御して、シェルター住宅部を基準位置から収容位置へと回転移動する構成となっている。即ち、就寝時に災害が発生しても自動で収容位置へと移動するように構成されている。
【0055】
また、第1の実施の形態では、シェルター住宅部が水に浮くように構成されているので、昇降式シェルター住宅1は、津波などの水害で地上が水没してしまった場合などに、緊急離脱モードとして、シェルター住宅部が水に浮いて地下施設10から離脱できるように、アンカーボルト3の全体をボルト孔7のネジ孔部72から抜き取るように回転駆動する動作モードを備えている。そして、緊急時に、緊急離脱モードが作動するように構成されている。
【0056】
ビット115は、ビットチャックに対して着脱可能に構成されており、平面視で菱形状の枠部を有する先端部を備えている。ビット115は、先端部が住宅部2の屋根部40に設けられた菱形状の連結溝43に嵌入可能に且つ嵌入時に内側にアンテナ42を収容可能に構成されている。ビット115は、電動モータ113によるビットチャックの回転に伴って回転するように構成されている。
【0057】
アーム103は、他端部が支柱101の案内溝内に収容された移動部104に接続されている。アーム103は、移動部104の上下動に伴って上下動するように構成されている。
移動部104は、図示省略するが、アーム103に接続された筐体部と、筐体部に内蔵された複数の駆動モータと、案内溝内を上下動可能に筐体部の案内溝の爪部及び底部にそれぞれ当接された複数の車輪(例えば、爪側4輪、底側4輪)とを備えている。
【0058】
複数の車輪は、駆動モータによってそれぞれ回転駆動されるように構成されている。移動部104は、駆動モータによる車輪の回転駆動又は停止動作によって、全体を案内溝に沿って上下動させるとともに任意の位置で停止させる。移動部104が上下動することで、アーム103が上下動し、これに伴って回転ドライバ111が上下動する(
図9を参照)。
【0059】
即ち、回転ドライバ111の回転によるシェルター住宅部の回転駆動によってアンカーボルト3のボルト孔7のネジ孔部72へのねじ込み動作又はネジ孔部72からの抜き出し動作が行われると、連結溝43が上下動する。そのため、収容位置側又は基準位置側に移動するシェルター住宅部に追随させて回転ドライバ111を上下動させるように構成されている。
【0060】
例えば、
図8に示すモータ制御部114による各種モータの駆動制御によるアンカーボルト3のネジ孔部72へのねじ込み動作を行った場合は、
図10に示すように、シェルター住宅部の全体がねじ込み方向に回転する。モータ制御部114は、このねじ込み方向の回転による下方向への移動に追随して移動部104が下方向に移動するように駆動モータを駆動制御する。これにより、シェルター住宅部の下方向への移動に追随して移動部104がアーム103及び回転ドライバ111を伴って下方向に移動する。一方、モータ制御部114による各種モータの駆動制御によるアンカーボルト3のネジ孔部72からの抜き出し動作を行った場合も同様に、シェルター住宅部の上方向への移動に追随して、移動部104が上方向に移動するように駆動モータが駆動制御される。
【0061】
なお、移動部104は、
図8に示す、ビット115が連結溝43に嵌入されていない待機位置への移動及び停止と、基準位置又は収容位置にてビット115を連結溝43に嵌入した初期位置への移動にのみ駆動モータを駆動制御し、それ以外は、車輪を自由回転状態にする駆動制御を行う構成としてもよい。即ち、基準位置から収容位置への回転移動時は、回転ドライバ111の重さを利用して重力によって下方向に移動させる。一方、収容位置から基準位置への回転移動時は、ボルト孔7から抜き出す際の上方向の力で上方向に移動させる。なお、下方向への移動時のみ車輪を自由回転状態にし、上方向の移動時は駆動モータによって移動部104の車輪を回転駆動する構成としてもよい。
【0062】
〔第1の実施の形態の効果〕
次に、第1の実施の形態の効果を説明する。
第1の実施の形態では、昇降式シェルター住宅1を、住宅部2と、住宅部2に設けられ、住宅部2の底面から下方に突出するネジ軸32を有するとともにネジ軸32にネジ部32aが形成されたアンカーボルト3と、住宅部2及びアンカーボルト3からなるシェルター住宅部を回転駆動する回転駆動装置100と、を備え、アンカーボルト3は、住宅部2が地上にある基準位置では、地下区画5の収容空間61の底部に穿設されたボルト孔7のネジ孔部72にネジ部32aの一部が螺合した状態で固定され、住宅部2の居住部を含む少なくとも一部が地下区画5に収容された収容位置ではネジ部32aの全体がネジ孔部72に螺合された状態で固定される構成とした。
【0063】
このような構成であれば、住宅部2が地上にあるときでもアンカーボルト3のネジ部32aの一部がボルト孔7のネジ孔部72に螺合された状態となるので、基準位置にて住宅部2を安定して固定することができる。
また、第1の実施の形態では、さらに、住宅部2を、有底円筒状の住宅基礎部21と、住宅基礎部21の上部開口部を覆う屋根部40とを備える構成とし、アンカーボルト3を、ネジ軸32が住宅部2と同心となるように、住宅部2の底部の収容室27にネジ頭部31が固定された構成とし、回転駆動装置100を、回転ドライバ111によって、住宅部2とともにアンカーボルト3を回転駆動するとともに、住宅部2及び前記アンカーボルト3の下降又は上昇に追随して回転ドライバ111が下降又は上昇する構成とした。
【0064】
このような構成であれば、アンカーボルト3とともに住宅部2も回転駆動できるので、回転分の上昇又は下降は伴うが基準位置にて住宅部を回転させることが可能となり、適宜の回転位置で停止することで、例えば、希望の部屋を花壇のある方向や太陽に向く方向などに回転させることができる。
【0065】
また、第1の実施の形態では、さらに、住宅部2の下端部の外周に沿って下端部を基準位置において包囲する支持壁62を設けた。
このような構成であれば、住宅部2が基準位置にあるときに、アンカーボルト3のしなり等によって住宅部2が傾いたときに当接して傾くのを防止したり、傾く角度を低減したりすることができる。
【0066】
また、第1の実施の形態では、さらに、住宅部2及びアンカーボルト3からなるシェルター住宅部を水に浮かぶ密度に構成した。
このような構成であれば、例えば、津波などの水害によって、地上が水没してしまった場合などに、シェルター住宅部が独立して水に浮かぶことができるので、水底に取り残されるといった事態を回避することができる。
【0067】
また、第1の実施の形態では、さらに、住宅部2の下端の外周部を基準位置において包囲する地上部分を、上方から下方へと外側に向かって斜めに延びる緩勾配に構成してなる傾斜部9を設けた。
このような構成であれば、例えば、大雨が降った際に、傾斜部9によって雨水を外側に押し流すことができるので、地下区画5に大量の水が貯まるのを防ぐことができる。
【0068】
また、第1の実施の形態では、さらに、住宅部2の内部空間を、内周部に接続された平面視で十字又は略十字の壁部25によって区画するようにした。
このような構成であれば、十字又は略十字の壁部25によって住宅部2の強度を高めることができる。
〔対応関係〕
第1の実施の形態において、ネジ軸32が発明1の突出部に対応し、回転駆動装置100が発明1及び3の回転駆動部に対応している。
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図11及び
図12は、第2の実施の形態を示す図である。なお、以下、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0069】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態において、外部の回転駆動装置100によって、シェルター住宅部の全体を回転することで、基準位置での回転と基準位置と収容位置との間の上下動を行うのに対して、住宅部2の内部の回転駆動装置200によって、アンカーボルト3のみを回転駆動して上下動を行う点が異なる。
【0070】
図11(a)及び(b)は、第2の実施の形態に係る昇降式シェルター住宅1Aの構成を示す図であり、(a)は、昇降式シェルター住宅1Aの一部を断面表示した図であり、(b)は、平面図である。また、
図12は、第2の実施の形態に係る回転駆動装置200によるアンカーボルト3の回転駆動によって、シェルター住宅部を収容位置に向けて回転駆動する様子を示す図である。なお、見やすさを考慮して、
図12において、内周壁6及びボルト孔7のハッチング表示を省略している。
【0071】
昇降式シェルター住宅1Aは、
図11(a)及び(b)に示すように、住宅部2Aと、アンカーボルト3Aと、回転駆動装置200とを備えている。
住宅部2Aは、住宅基礎部21と、屋根部40Aとを備えている。
屋根部40Aは、上記第1の実施の形態の屋根部40において、連結溝43を有さない構成となっている。
【0072】
アンカーボルト3Aは、上記第1の実施の形態のアンカーボルト3において、ネジ頭部31を有さず、ネジ軸32と略同様の構成のネジ軸32Aを備えている。そして、ネジ軸32Aの上端部が回転駆動装置200の回転軸に接続された構成となっている。即ち、アンカーボルト3Aは、住宅部2Aに対して独立して回転するように構成されている。
【0073】
回転駆動装置200は、図示省略するが、床上に固定された筐体と、筐体に内蔵された電動モータ及びモータ制御部とを備えている。
電動モータは、高トルクの直流モータ又は交流モータから構成されており、モータ回転軸がアンカーボルト3Aの上端部に接続されており、アンカーボルト3Aを直に回転駆動する構成となっている。また、上記第1の実施の形態と同様に、回転位置センサを有している。そして、回転位置センサからのセンサ検出信号及びモータ制御部からの制御信号に基づいて正方向又は逆方向に回転制御されるとともに、所定の回転位置で停止するブレーキ制御がされる。
【0074】
モータ制御部は、上記第1の実施の形態のモータ制御部114と略同様の構成を有している。但し、第2の実施の形態では、住宅部2は回転しないため、住宅部2を回転させる制御は実行しないように構成されている。また、上記第1の実施の形態と同様に、モータ制御部と、コントロールパネルとは、有線又は無線で接続されており、コントロールパネルからの指令信号がモータ制御部に送信されるように構成されている。
【0075】
上記構成の回転駆動装置200によって、アンカーボルト3Aをボルト孔7のネジ孔部72にねじ込む方向に回転駆動すると、
図11に示すように、アンカーボルト3Aがネジ孔部72にねじ込まれることで下方向の力が発生し、この力によってシェルター住宅部が下方向に移動する。このとき、住宅部2Aは回転せず真っすぐに下降していく。
【0076】
一方、回転駆動装置200によって、アンカーボルト3Aをボルト孔7のネジ孔部72から抜き出す方向に回転駆動した場合は、アンカーボルト3Aは、ねじ込むときとは逆方向に回転する。これにより、アンカーボルト3Aがネジ孔部72から抜け出す方向に移動して、上方向の力が発生する。この力によってシェルター住宅部が上方向に移動する。
【0077】
なお、アンカーボルト3Aのネジ軸32Aとボルト孔7のネジ孔部72との摩擦抵抗によっては、住宅部2Aの方が回転してしまう恐れがあるため、例えば、内周壁6に案内レールを設け、住宅部2Aの外周部における案内レールと対向する位置に案内レールと系合する車輪やボールなどを設けて、住宅部2Aを回転させずに安定して真っすぐと上下動させる構成が考えられる。
〔第2の実施の形態の効果〕
次に、第2の実施の形態の効果を説明する。
【0078】
第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の効果に加えて又は代えて以下の効果を奏する。
第2の実施の形態では、昇降式シェルター住宅1Aを、アンカーボルト3Aが、住宅部2Aに対して軸周りに独立に回転可能に設けられ、回転駆動装置200が、アンカーボルト3Aを正方向に回転駆動してこのアンカーボルト3Aのネジ部32aをボルト孔7のネジ孔部72にねじ込む際の下降方向の力と、アンカーボルト3Aを逆方向に回転駆動してネジ部32aをネジ孔部72から抜き出す際の上昇方向の力とを利用してシェルター住宅部を昇降させる構成とした。
【0079】
このような構成であれば、シェルター住宅部ごと回転駆動する上記第1の実施の形態の構成と比較して、回転駆動装置を小型化することができる。その結果、上記第1の実施の形態と比較して、昇降式シェルター住宅全体を小型化できるとともに、回転駆動装置200にかかるエネルギーやコストを低減することができる。
〔対応関係〕
第2の実施の形態において、ネジ軸32Aが発明1の突出部に対応し、回転駆動装置200が発明1及び2の回転駆動部に対応している。
〔変形例〕
上記第1及び第2の実施の形態においては、電動モータによってシェルター住宅部又はアンカーボルト3Aを回転駆動する構成としたが、この構成に限らず、例えば、人力で回転できる構成とするなど他の構成としてもよい。
【0080】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、避難施設8を経由して地上に脱出する構成としたが、この構成に限らず、例えば、2階の部屋に屋根部40又は40Aへと登る梯子などを設けるとともに、屋根部40又は40Aに地上に出られる扉を設けて、住宅部2の内側から地上へと脱出できる構成としてもよい。この構成とした場合に、避難施設8を設けない構成としてもよい。
【0081】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例においては、住宅部2のドアをスライドドアから構成したが、この構成に限らず、内開きのドアなど他のドアから構成してもよい。
また、上記第1の実施の形態及びその変形例においては、移動部104を駆動モータによって移動させる構成としたが、この構成に限らず、別途、ウインチモータとウインチとを設け、移動部をワイヤーロープで吊って上下動させる構成とするなど他の構成としてもよい。
【0082】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、例えば、アンカーボルト3を住宅部2から分離できる構成としてもよい。この構成とすることで、アンカーボルト3を分離する前の状態では水に沈んでしまうが、アンカーボルト3を分離することで水に浮く構成とすることが可能となり、アンカーボルト3の重量条件を緩和することが可能となる。その結果、重量は増えるが廉価な材料を用いるといったことが可能となる。
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、ネジ軸のネジ山のピッチ及びネジ孔部のネジ溝のピッチを比較的細かいピッチに構成したが、この構成に限らず、もっと粗いピッチにするなど他のピッチに構成してもよい。
【0083】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、電気、ガス、水道などの供給源について特に述べていないが、通常の電力会社、ガス会社、水道局からの供給を受ける構成がまず考えられる。また、この構成に限らず、例えば、エネルギーや水の供給を昇降式シェルター住宅1又は1A内で全てを又は一部を賄う構成としてもよい。例えば、昇降式シェルター住宅1又は1Aに、磁力等を利用したフリーエネルギー、太陽光、風、雨水等の自然エネルギー、バイオテクノロジー、ナノ技術を利用したエネルギーなどを利用して必要なエネルギーを賄うシステム、水、酸素などを生成又は浄化するシステム等を付設する構成としてもよい。例えば、酸素の供給施設、室内空気の浄化施設、雨水を貯留且つ浄水する施設、風力や太陽光などを利用した発電施設、太陽光を利用した室温調整施設、バイオテクノロジーを利用したゴミ処理施設及び下水処理施設などが考えられる。これらの施設によって、生活に必要なエネルギー等を供給する。
【0084】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、地下区画5に隣接された避難施設8を介して地上へと脱出できる構成としたが、この構成に限らない。例えば、下水道等の既存の地下施設が近くにある場合に、この地下施設に避難施設8を接続して、既存施設を利用して脱出できる構成としてもよい。
【0085】
また、上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、収容位置にて、昇降式シェルター住宅1の屋根部40又は40Aが地上に残る構成としたが、この構成に限らず、屋根部40を含む全体が収容される構成としてもよい。また、この構成とした場合に、収容後の上部開口部をシャッターや蓋などで閉じる構成としてもよい。
上記第1及び第2の実施の形態並びにその変形例において、アンカーボルトの先端部を円錐形状としたが、この構成に限らず、先端部を平坦な形状とするなど他の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1,1A…昇降式シェルター住宅、 2…住宅部、 3,3A…アンカーボルト、 5…地下区画、 6…内周壁、 7…ボルト孔、 8…避難施設、 9…傾斜部、 10…地下施設、 21…住宅基礎部、 22…環状窓部、 23…スライドドア、 24L,24U…内部空間、 25…壁部、 31…ネジ頭部、 32,32A…ネジ軸、 32a…ネジ部、 32b…先端部、 40,40A…屋根部、 41,41A…傘状屋根、 42…アンテナ、 43…連結溝、 61…収容空間、 62…支持壁、 63…開口部、 71…基礎部、 72…ネジ孔部、 72a…ネジ溝、 72b…先端収容部、 81…避難空間、 83…通路、 84…梯子、 85…蓋、 100,200…回転駆動装置、 101…支柱、 102…回転駆動部、 103…アーム、 104…移動部、 111…回転ドライバ、 112…接続部、 113…電動モータ、 114…モータ制御部、 115…ビット