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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131171
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20220831BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220831BHJP
   H05H 1/24 20060101ALN20220831BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 648G
H01L21/304 645C
H01L21/304 643A
H01L21/30 572A
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029980
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】西出 基
【テーマコード(参考)】
2G084
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084BB14
2G084CC03
2G084CC08
2G084CC11
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD12
2G084DD22
2G084DD25
2G084DD67
5F146MA02
5F146MA05
5F146MA06
5F146MA10
5F146MA12
5F146MA13
5F146MA17
5F146MA19
5F157AA64
5F157AA91
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BB23
5F157BB64
5F157BG32
5F157BG33
5F157BG34
5F157BG37
5F157BG95
5F157CB01
5F157CB11
5F157CD32
5F157CE07
5F157CF14
5F157CF22
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157CF46
5F157CF48
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】基板の主面上の処理液の膜厚に起因した処理速度のばらつきを低減できる技術を提供する。
【解決手段】基板処理方法は保持工程と液供給工程と膜厚測定工程とプラズマ工程とを備える。保持工程において、基板保持部が基板を保持する。液供給工程において、基板保持部によって保持された基板の主面にノズルから処理液を供給する。膜厚測定工程において、センサが基板の主面上の処理液の膜厚を測定する。プラズマ工程において、センサによって測定された膜厚である測定膜厚に基づいて、プラズマ源と基板との間の距離、プラズマ源に印加される出力電圧、および、プラズマ源と基板との間に供給される処理ガスの流量の少なくともいずれか一つを変化させ、プラズマ源が発生させたプラズマによる活性種を前記液膜に供給する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部が基板を保持する保持工程と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面にノズルから処理液を供給する液供給工程と、
センサが前記基板の前記主面上の前記処理液の膜厚を測定する膜厚測定工程と、
前記センサによって測定された前記膜厚である測定膜厚に基づいて、プラズマ源と前記基板との間の距離、前記プラズマ源に印加される出力電圧、および、前記プラズマ源と前記基板との間に供給される処理ガスの流量の少なくともいずれか一つを変化させ、前記プラズマ源が発生させたプラズマによる活性種を前記基板の前記主面上の前記処理液に供給するプラズマ工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記プラズマ工程において、前記測定膜厚が第1値であるときの前記プラズマ源と前記基板との間の距離が、前記測定膜厚が前記第1値よりも小さい第2値であるときの前記距離よりも短くなるように、前記プラズマ源の位置を変化させる、基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記プラズマ工程において、前記測定膜厚が第1値であるときの前記プラズマ源のプラズマ出力が、前記測定膜厚が前記第1値よりも小さい第2値であるときの前記プラズマ出力よりも大きくなるように、電源から前記プラズマ源への出力電圧を変化させる、基板処理方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の基板処理方法であって、
前記プラズマ工程において、処理ガスを前記プラズマ源と前記基板との間に供給し、前記測定膜厚が第1値であるときの前記処理ガスの前記流量が、前記測定膜厚が前記第1値よりも小さい第2値であるときの前記処理ガスの前記流量よりも大きくなるように、前記処理ガスの流量を変化させる、基板処理方法。
【請求項5】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を吐出するノズルと、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と向かい合う位置に設けられ、プラズマを発生させるプラズマ源と、
前記基板の前記主面上の前記処理液の膜厚を測定するセンサと、
前記センサによって測定された前記膜厚である測定膜厚に基づいて、前記プラズマ源と前記基板との間の距離、前記プラズマ源に印加される出力電圧、および、前記プラズマ源と前記基板との間に供給される処理ガスの流量の少なくともいずれか一つを制御する制御部と
を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板の主面に形成されたレジストを除去する基板処理装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板の主面に硫酸および過酸化水素水の混合液を供給する。硫酸および過酸化水素水が混合されることで、これらが反応してカロ酸が生成される。このカロ酸は効率的に基板のレジストを除去することができる。
【0003】
しかしながら、この処理では硫酸および過酸化水素水を供給し続ける必要があり、硫酸および過酸化水素水の消費量が大きい。環境負荷の低減のためには、硫酸の使用量の削減が求められており、薬液消費量の削減が要求されている。この薬液消費量を低減するために、従来から硫酸を回収して再利用している。しかしながら、硫酸および過酸化水素水を混合することにより、硫酸の濃度が低下するので、高い濃度で硫酸を回収することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-88208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、大気圧プラズマによって酸素ラジカル等の活性種を発生させ、当該活性種を硫酸に作用させることにより、酸化力の高いカロ酸を生成することが考えられる。これによれば、カロ酸の生成に過酸化水素水を供給する必要がないので、より高い濃度で硫酸を回収することができる。なお、硫酸および過酸化水素水を供給する場合であっても、プラズマを用いることで、カロ酸を生成させるための過酸化水素水の必要量を低減させることができるので、プラズマを用いない場合に比べて、より高い濃度で硫酸を回収することができる。
【0006】
より具体的な基板処理装置の構成として、基板を保持しつつ基板を回転させる基板保持部と、回転中の基板の主面に処理液を供給するノズルと、基板の主面上の処理液に活性種を供給するプラズマ源とを設けることが考えられる。これにより、活性種が基板の主面上で処理液に作用して、処理能力の高い成分(例えばカロ酸)を生成させることができる。
【0007】
ところで、基板の主面上に形成される処理液の膜厚は、例えば複数の基板間において、ばらつき得る。基板の主面上の処理液が薄い場合には、活性種は基板の主面の近傍に到達しやすいため、カロ酸等の成分は基板の主面に到達しやすい。よって、基板に対して高い処理速度で処理を行うことができる。一方で、基板の主面上の処理液が厚い場合、活性種が基板の主面の近傍に到達しにくいため、カロ酸等の成分が基板の主面に到達しにくい。よって、比較的に低い処理速度で処理が行われる。
【0008】
以上のように、基板の主面上の処理液の膜厚の相違に起因して、処理速度のばらつきが生じるという問題がある。
【0009】
そこで、本願は、基板の主面上の処理液の膜厚に起因した処理速度のばらつきを低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基板処理方法の第1の態様は、基板保持部が基板を保持する保持工程と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面にノズルから処理液を供給する液供給工程と、センサが前記基板の前記主面上の前記処理液の膜厚を測定する膜厚測定工程と、前記センサによって測定された前記膜厚である測定膜厚に基づいて、プラズマ源と前記基板との間の距離、前記プラズマ源に印加される出力電圧、および、前記プラズマ源と前記基板との間に供給される処理ガスの流量の少なくともいずれか一つを変化させ、前記プラズマ源が発生させたプラズマによる活性種を前記基板の前記主面上の前記処理液に供給するプラズマ工程とを備える。
【0011】
基板処理方法の第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理方法であって、前記プラズマ工程において、前記測定膜厚が第1値であるときの前記プラズマ源と前記基板との間の距離が、前記測定膜厚が前記第1値よりも小さい第2値であるときの前記距離よりも短くなるように、前記プラズマ源の位置を変化させる。
【0012】
基板処理方法の第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理方法であって、前記プラズマ工程において、前記測定膜厚が第1値であるときの前記プラズマ源のプラズマ出力が、前記測定膜厚が前記第1値よりも小さい第2値であるときの前記プラズマ出力よりも大きくなるように、電源から前記プラズマ源への出力電圧を変化させる。
【0013】
基板処理方法の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記プラズマ工程において、処理ガスを前記プラズマ源と前記基板との間に供給し、前記測定膜厚が第1値であるときの前記処理ガスの前記流量が、前記測定膜厚が前記第1値よりも小さい第2値であるときの前記処理ガスの前記流量よりも大きくなるように、前記処理ガスの流量を変化させる。
【0014】
基板処理装置の態様は、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面に処理液を吐出するノズルと、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面と向かい合う位置に設けられ、プラズマを発生させるプラズマ源と、前記基板の前記主面上の前記処理液の膜厚を測定するセンサと、前記センサによって測定された前記膜厚である測定膜厚に基づいて、前記プラズマ源と前記基板との間の距離、前記プラズマ源に印加される出力電圧、および、前記プラズマ源と前記基板との間に供給される処理ガスの流量の少なくともいずれか一つを制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0015】
基板処理方法の第1から第4の態様および基板処理装置の態様によれば、液膜の膜厚の相違に起因した処理速度のばらつきを低減させることができる。また、基板処理方法の第2の態様によれば、高い応答性かつ高い精度で距離を制御できるので、処理速度のばらつきをより低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】基板処理システムの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】制御部の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。
図3】第1および第2の実施の形態にかかる処理ユニット(基板処理装置)の構成の一例を概略的に示す図である。
図4】プラズマ源の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図5】第1の実施の形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】液供給工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図7】膜厚測定工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図8】プラズマ工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図9】プラズマ工程における処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図10】第2の実施の形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図11】第3の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す図である。
図12】第3の実施の形態にかかる処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照しながら、実施の形態について説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本開示の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法または数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0018】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸または面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0019】
<第1の実施の形態>
<基板処理システム100の全体構成>
図1は、プラズマ発生装置が適用される基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理システム100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0020】
基板Wは例えば半導体基板であり、円板形状を有する。なお、基板Wには、半導体基板の他、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板および光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。また基板の形状も円板形状に限らず、例えば矩形の板状形状など種々の形状を採用できる。
【0021】
基板処理システム100はロードポート101とインデクサロボット110と主搬送ロボット120と複数の処理ユニット130と制御部90とを含む。
【0022】
複数のロードポート101は水平な一方向に沿って並んで配置される。各ロードポート101は、基板Wを基板処理システム100に搬出入するためのインターフェース部である。各ロードポート101には、複数の基板Wを収納したキャリアCが外部から搬入される。各ロードポート101は、搬入されたキャリアCを保持する。キャリアCとしては、例えば、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、または、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)が採用される。
【0023】
インデクサロボット110は、各ロードポート101に保持されたキャリアCと、主搬送ロボット120との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。インデクサロボット110はロードポート101が並ぶ方向に沿って移動可能であり、各キャリアCと対面する位置で停止可能である。インデクサロボット110は、各キャリアCから基板Wを取り出す動作と、各キャリアCに基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。
【0024】
主搬送ロボット120は、インデクサロボット110と各処理ユニット130との間で基板Wを搬送する搬送ロボットである。主搬送ロボット120はインデクサロボット110から基板Wを受け取る動作と、インデクサロボット110に基板Wを受け渡す動作とを行うことができる。また、主搬送ロボット120は各処理ユニット130に基板Wを搬入する動作と、各処理ユニット130から基板Wを搬出する動作とを行うことができる。
【0025】
基板処理システム100には、例えば12個の処理ユニット130が配置される。具体的には、鉛直方向に積層された3個の処理ユニット130を含むタワーの4つが、主搬送ロボット120の周囲を取り囲むようにして設けられる。図1では、3段に重ねられた処理ユニット130の1つが概略的に示されている。なお、基板処理システム100における処理ユニット130の数は、12個に限定されるものではなく、適宜に変更されてもよい。
【0026】
主搬送ロボット120は、4つのタワーによって囲まれるように設けられている。主搬送ロボット120は、インデクサロボット110から受け取る未処理の基板Wを各処理ユニット130内に搬入する。各処理ユニット130は基板Wを処理する。また、主搬送ロボット120は、各処理ユニット130から処理済みの基板Wを搬出してインデクサロボット110に渡す。
【0027】
制御部90は、基板処理システム100の各構成要素の動作を制御する。図2は、制御部90の内部構成の一例を概略的に示す機能ブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶媒体92を有している。図2の具体例では、データ処理部91と記憶媒体92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体92は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)921および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶媒体921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90がプログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90の機能の一部または全部がハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0028】
制御部90は主制御部と複数のローカル制御部とを有していてもよい。主制御部は基板処理システム100の全体を統括し、ローカル制御部は処理ユニット130ごとに設けられる。ローカル制御部は主制御部と通信可能に設けられ、主制御部からの指示に基づいて処理ユニット130内の各種構成(後述)を制御する。主制御部およびローカル制御部の各々は、図2と同様に、データ処理部91および記憶媒体92を有していてもよい。
【0029】
<基板処理装置(処理ユニット130)>
図3は、処理ユニット(基板処理装置に相当)130の構成の一例を概略的に示す図である。なお、基板処理システム100に属する全ての処理ユニット130が図3に示された構成を有している必要はなく、少なくとも一つの処理ユニット130が当該構成を有していればよい。
【0030】
図3に例示される処理ユニット130は、プラズマを用いた処理を基板Wに対して行う装置である。プラズマを用いた処理は特に制限される必要がないものの、例えば、有機物除去処理を含む。有機物除去処理とは、基板Wの主面に形成された有機物を除去する処理である。有機物は例えばレジストである。有機物がレジストである場合、有機物除去処理はレジスト除去処理であるともいえる。以下では、一例としてレジスト除去処理を採用して説明する。基板Wは例えば半導体基板であり、円板形状を有する。基板Wのサイズは特に制限されないものの、その直径は例えば約300mmである。
【0031】
処理ユニット130は基板保持部2とノズル3とセンサ4とプラズマ源6と移動機構51,52とを含む。図3に例示されるように、処理ユニット130はチャンバ1を含んでいてもよい。チャンバ1は箱形の形状を有しており、その内部空間において基板Wに対する処理が行われる。チャンバ1の内部空間には、基板保持部2、ノズル3、センサ4、プラズマ源6および移動機構51,52が設けられる。
【0032】
<基板保持部2>
基板保持部2はチャンバ1内に設けられており、基板Wを水平姿勢で保持する。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。図3の例では、基板保持部2はステージ21と複数のチャックピン22とを含んでいる。ステージ21は円板形状を有し、基板Wよりも鉛直下方に設けられる。ステージ21は、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。
【0033】
複数のチャックピン22はステージ21の上面に立設されている。複数のチャックピン22の各々は、基板Wの周縁に接触するチャック位置と、基板Wの周縁から離れた解除位置との間で変位可能に設けられる。複数のチャックピン22がそれぞれのチャック位置に移動すると、複数のチャックピン22が基板Wを保持する。複数のチャックピン22がそれぞれの解除位置に移動すると、基板Wの保持が解除される。
【0034】
複数のチャックピン22を駆動する駆動部(不図示)は、例えばモータを含み、モータの駆動力によって複数のチャックピン22を変位させてもよい。あるいは、駆動部は、各チャックピン22に連結された第1固定磁石と、当該第1固定磁石に対して相対的に移動する第2可動磁石とを含み、第2可動磁石の位置により、複数のチャックピン22を変位させてもよい。当該駆動部は制御部90によって制御される。
【0035】
なお、基板保持部2は必ずしも複数のチャックピン22を有する必要はない。例えば、基板保持部2は基板Wの下面を吸引して基板Wを吸着してもよく、あるいは、静電方式により基板Wの下面を吸着してもよい。
【0036】
図3の例では、基板保持部2は回転機構23をさらに含んでおり、回転軸線Q1のまわりで基板Wを回転させる。回転軸線Q1は基板Wの中心部を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。例えば回転機構23はシャフト24およびモータ25を含む。シャフト24の上端はステージ21の下面に連結され、ステージ21の下面から回転軸線Q1に沿って延在する。モータ25は制御部90によって制御される。モータ25はシャフト24を回転軸線Q1のまわりで回転させて、ステージ21および複数のチャックピン22を一体に回転させる。これにより、複数のチャックピン22によって保持された基板Wが回転軸線Q1のまわりで回転する。このような基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。
【0037】
なお、以下では、回転軸線Q1についての径方向および周方向を、それぞれ単に径方向および周方向と呼ぶ。
【0038】
<ノズル3>
ノズル3はチャンバ1内に設けられ、基板Wの主面への処理液の供給に用いられる。ノズル3は供給管31を介して処理液供給源34に接続される。つまり、供給管31の下流端がノズル3に接続され、供給管31の上流端が処理液供給源34に接続される。処理液供給源34は、例えば、処理液を貯留するタンク(不図示)を含み、供給管31に処理液を供給する。処理ユニット130において、基板W上のレジスト等の有機物を除去する場合、処理液としては、例えば、硫酸を用いる。その他、硫酸塩、ペルオキソ硫酸およびペルオキソ硫酸塩の少なくともいずれかを含む液、または、過酸化水素を含む液などの薬液を用いてもよい。また基板Wにおけるプラズマ処理の目的や、除去する対象に依っては、処理液としてSC1(過酸化水素水とアンモニアとの混合液)およびSC2(過酸化水素水と塩酸との混合液)などのいわゆる洗浄用薬液や、フッ酸、塩酸、リン酸などのエッチング用薬液を用いてもよい。
【0039】
図3の例では、供給管31には、バルブ32および流量調整部33が介装されている。バルブ32は制御部90によって制御される。バルブ32が開くことにより、処理液供給源34からの処理液が供給管31を通じてノズル3に供給され、ノズル3の吐出口3aから吐出される。吐出口3aは例えばノズル3の下端面に形成される。流量調整部33は制御部90によって制御され、供給管31を流れる処理液の流量を調整する。流量調整部33は例えばマスフローコントローラである。
【0040】
<移動機構51>
図3の例では、ノズル3は移動機構51によって移動可能に設けられる。移動機構51は制御部90によって制御され、ノズル3をノズル処理位置とノズル待機位置との間で移動させる。ノズル処理位置とは、ノズル3が基板Wの主面(ここでは上面)に向けて処理液を吐出する位置である。ノズル処理位置は、例えば、基板Wよりも鉛直上方であって、基板Wの中心部と鉛直方向において対向する位置である(後述の図6も参照)。ノズル待機位置とは、ノズル3が基板Wの主面に向けて処理液を吐出しない位置であり、ノズル処理位置よりも基板Wから離れた位置である。ノズル待機位置は、基板Wの搬出入時においてノズル3が主搬送ロボット120および基板Wと干渉しない位置でもある。具体的な一例として、ノズル待機位置は、基板Wの周縁よりも径方向外側の位置である。図3の例では、ノズル待機位置で停止するノズル3が示されている。
【0041】
移動機構51は、例えば、ボールねじ機構またはアーム旋回機構を有する。アーム旋回機構は、いずれも不図示のアームと支持柱とモータとを含む。アームは水平に延在する棒状形状を有し、アームの先端にはノズル3が連結され、アームの基端が支持柱に連結される。支持柱は鉛直方向に沿って延びており、その中心軸のまわりで回転可能に設けられる。モータが支持柱を回転させることにより、アームが旋回し、ノズル3が中心軸のまわりで周方向に沿って移動する。このノズル3の移動経路上にノズル処理位置とノズル待機位置とが位置するように、支持柱が設けられる。
【0042】
ノズル3がノズル処理位置に位置する状態(図6参照)において、基板保持部2が基板Wを回転させながらバルブ32が開くと、ノズル3から基板Wの上面に向かって処理液が吐出される。処理液は基板Wの上面に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面を広がって基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面には処理液の液膜Fが形成される。基板Wの上面に処理液の液膜Fが形成されると、バルブ32が閉じ、移動機構51がノズル3をノズル待機位置へと移動させる。
【0043】
<ガード5>
処理ユニット130には、基板Wの周縁から飛散する処理液を受け止めるガード5が設けられている。ガード5は、基板保持部2によって保持された基板Wを取り囲む筒状の形状を有している。基板Wの周縁から飛散した処理液はガード5の内周面にあたり、内周面に沿って鉛直下方に流れる。処理液は、例えば、不図示の回収配管を流れて処理液供給源34のタンクに回収される。これによれば、処理液を再利用することができる。
【0044】
なお、図3では図示省略しているものの、処理ユニット130は、複数種類の処理液を基板Wに供給する構成を有していてもよい。例えば、ノズル3は複数の処理液供給源に接続されていてもよい。あるいは、処理ユニット130はノズル3とは別のノズルを含んでいてもよい。当該別のノズルは処理液供給源34とは別の処理液供給源に接続される。複数種類の処理液としては、例えば硫酸等の薬液の他、純水、オゾン水、炭酸水、および、イソプロピルアルコール等のリンス液を採用できる。ここでは、ノズル3が複数の処理液供給源に接続されており、複数種類の処理液を基板Wに個別に供給可能であるものとする。
【0045】
<センサ4>
センサ4はチャンバ1内に設けられており、基板Wの主面上の処理液の膜厚を測定し、その測定結果を示す信号を制御部90に出力する。センサ4は膜厚計とも呼ばれ得る。センサ4は、例えば、光の干渉を利用した反射分光膜厚計などの膜厚計を含む。反射分光膜厚計は例えば、発光器と分光器と受光器とを含む。発光器は測定用の光を基板Wの上面に照射する。当該光の一部は処理液の液膜Fの液面で反射し、当該光の残りの一部は基板Wの上面で反射する。これらの反射光が互いに干渉した干渉光は分光器に入射し、分光器は当該干渉光を分光する。受光器は分光器によって分光された光の強度を測定する。当該受光器によって測定された波長ごとの光の強度に基づいて、処理液の膜厚を算出することができる。
【0046】
センサ4は測定位置とセンサ待機位置との間で移動可能に設けられてもよい。測定位置とは、センサ4が基板Wの主面上の処理液の膜厚を測定するときの位置であり、基板Wの主面と鉛直方向において対向する位置である。センサ待機位置は、測定位置よりも基板Wから離れた位置であり、基板Wの搬出入時において、センサ4が主搬送ロボット120および基板Wと干渉しない位置でもある。より具体的な一例として、センサ待機位置は基板Wの周縁よりも径方向外側の位置である。
【0047】
図3に例示されるように、センサ4はノズル3に一体に固定されていてもよい。図3の例では、センサ4は水平方向においてノズル3と隣り合う位置で、ノズル3に固定される。センサ4がノズル3に固定されているので、移動機構51はノズル3およびセンサ4を一体に移動させることができる。この場合、ノズル3がノズル待機位置で停止しているときのセンサ4の位置がセンサ待機位置となる。移動機構51がノズル3およびセンサ4を一体で移動させる場合には、ノズル3およびセンサ4を互いに独立に移動させる2つの移動機構が設けられる場合に比べて、処理ユニット130の構成を簡易にでき、製造コストを低減させることができる。
【0048】
<プラズマ源6>
プラズマ源6はプラズマを発生させる装置であり、プラズマリアクタとも呼ばれ得る。プラズマ源6はチャンバ1内において、基板保持部2によって保持された基板Wの主面(例えば上面)と鉛直方向において対向する位置に設けられる。プラズマ源6は電源8に電気的に接続されており、電源8からの電力を受け取って周囲のガスをプラズマ化させる。なお、ここでは一例として、プラズマ源6は大気圧下でプラズマを発生させる。ここでいう大気圧とは、例えば、標準気圧の80%以上、かつ、標準気圧の120%以下である。
【0049】
図4は、プラズマ源6の構成の一例を概略的に示す平面図である。図4の例では、プラズマ源6は第1電極部61と第2電極部62とを含んでいる。第1電極部61は複数の第1線状電極611と第1集合電極612とを含み、第2電極部62は複数の第2線状電極621と第2集合電極622とを含む。
【0050】
第1線状電極611は、水平な長手方向D1に沿って延在する棒状形状を有する。複数の第1線状電極611は、長手方向D1に直交する水平な配列方向D2において並んで設けられており、理想的には互いに平行に設けられる。
【0051】
第1集合電極612は複数の第1線状電極611の長手方向D1の一方側の端部(基端)どうしを連結する。図4の例では、第1集合電極612は、長手方向D1の一方側に膨らむ円弧状の平板形状を有している。
【0052】
第2線状電極621は、長手方向D1に沿って延在する棒状形状を有する。複数の第2線状電極621は配列方向D2において並んで設けられており、理想的には互いに平行に設けられる。第2線状電極621の各々は、平面視において、複数の第1線状電極611のうち互いに隣り合う二者の間に設けられている。図4の例では、平面視において、第1線状電極611および第2線状電極621は配列方向D2において交互に配列される。第1線状電極611の各々は第2線状電極621と鉛直方向において対向していない。
【0053】
第2集合電極622は複数の第2線状電極621の長手方向D1の他方側の端部(基端)どうしを連結する。図4の例では、第2集合電極622は、第1集合電極612とは反対側に膨らみ、かつ、第1集合電極612と略同径の円弧状の平板形状を有している。
【0054】
図4の例では、各第1線状電極611は第1誘電管64に覆われている。第1誘電管64は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。この第1誘電管64は、第1線状電極611を第1誘電管64の外側のプラズマから保護することができる。また図4の例では、各第2線状電極621は第2誘電管65に覆われている。第2誘電管65は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。この第2誘電管65は、第2線状電極621を第2誘電管65の外側のプラズマから保護することができる。
【0055】
図4の例では、プラズマ源6には仕切部材66が設けられている。仕切部材66は石英またはセラミックス等の誘電体材料によって形成される。仕切部材66は例えば円板状形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。第1電極部61および第1誘電管64は仕切部材66よりも鉛直下方に設けられ、第2電極部62および第2誘電管65は仕切部材66よりも鉛直上方に設けられている。
【0056】
<電源8>
プラズマ源6には、プラズマ用の電源8によって電圧が印加される。図4の例では、第1電極部61の第1集合電極612が配線81を介して電源8の第1出力端8aに電気的に接続され、第2電極部62の第2集合電極622が配線82を介して電源8の第2出力端8bに電気的に接続される。電源8は例えばインバータ回路等のスイッチング電源回路を有しており、第1電極部61と第2電極部62との間にプラズマ用の電圧を出力する。より具体的な一例として、電源8はプラズマ用の電圧として高周波電圧を第1電極部61と第2電極部62との間に出力する。電源8は例えばパルス電源であり、複数の周期の各々のオン期間において高周波電圧を第1電源部61と第2電源部62との間に出力する。これにより、主としてオン期間においてプラズマが点灯する。この電源8の出力は制御部90によって制御される。よって、プラズマ源6は制御部90によって制御されるといえる。
【0057】
電源8が第1電極部61と第2電極部62との間に電圧を出力することにより、第1線状電極611と第2線状電極621との間にプラズマ用の電界が生じる。当該電界に応じて、第1線状電極611および第2線状電極621の周囲のガスがプラズマ化する。逆に言えば、当該ガスがプラズマ化する程度の電圧が電源8によって第1電極部61と第2電極部62との間に印加される。電源8がパルス電源である場合、当該電圧は、例えば、十数kVかつ数十kHz程度の高周波電圧である。ここでいう周波数は、例えば、上記周期の逆数である。
【0058】
上述のプラズマ源6によれば、水平な長手方向D1に沿って延在する第1線状電極611および第2線状電極621が水平な配列方向D2において交互に配列される。したがって、プラズマ源6は平面視において広い範囲でプラズマを発生させることができる。
【0059】
<遮断部材7>
図3を参照して、処理ユニット130には遮断部材7が設けられてもよい。遮断部材7は板状形状を有しており、プラズマ源6よりも鉛直上方において、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。遮断部材7は例えば平面視において円形状を有する。遮断部材7はプラズマ源6よりも広くてもよい。つまり、遮断部材7の側面はプラズマ源6よりも径方向外側に位置していてもよい。
【0060】
<移動機構52>
移動機構52は制御部90によって制御され、プラズマ源6を鉛直方向に沿って基板保持部2に対して相対的に移動させる。移動機構52は昇降機構であるともいえる。ここでは一例として、移動機構52は、制御信号により作動するモータ521と、モータ521の回転力を鉛直方向の移動に変換するカムと、カムに固設された棒状または板状の柱材とを含む。移動機構52の柱材はプラズマ源6に固定されており、モータ521を回転させることでプラズマ源6が鉛直方向に移動する。
【0061】
プラズマ源6は遮断部材7に固定し、プラズマ源6および遮断部材7が一体に移動する構成としてもよい。例えばプラズマ源6は不図示の連結部材によって遮断部材7に固定される。この場合、移動機構52は遮断部材7に固定されていてもよい。移動機構52がプラズマ源6および遮断部材7を一体に移動させる場合には、プラズマ源6および遮断部材7を互いに独立に移動させる2つの移動部材が設けられる場合に比べて、処理ユニット130の構成を簡易にでき、製造コストを低減させることができる。
【0062】
以下では、プラズマ源6および遮断部材7の位置を、代表的にプラズマ源6の位置で説明する。移動機構52は、プラズマ源6をプラズマ処理位置とプラズマ待機位置との間で往復移動させる。
【0063】
プラズマ処理位置とは、プラズマ源6によるプラズマを用いて基板Wを処理するときの位置である。プラズマ処理位置において、基板保持部2によって保持された基板Wの上面とプラズマ源6との間の距離Dは例えば数mm程度である(後述の図8も参照)。
【0064】
プラズマ待機位置とは、プラズマを用いた処理を基板Wに対して行わないときの位置であり、プラズマ処理位置よりも基板Wから離れた位置である。プラズマ待機位置は、基板Wの搬出入時において、プラズマ源6が主搬送ロボット120および基板Wと干渉しない位置でもある。具体的な一例として、プラズマ待機位置はプラズマ処理位置よりも鉛直上方の位置である。図3の例では、プラズマ待機位置で停止するプラズマ源6が示されている。なお、移動機構52は、例えば、ボールねじ機構またはエアシリンダなどの移動機構を有していてもよい。
【0065】
プラズマ源6は、例えば、ノズル3がノズル待機位置に退避した状態で、プラズマ待機位置からプラズマ処理位置へと移動することができる。例えば、ノズル処理位置でのノズル3からの処理液の吐出によって基板Wの上面に処理液の液膜Fが形成されると、バルブ32が閉じたうえで、移動機構51がノズル3をノズル処理位置からノズル待機位置に移動させる。その後、移動機構52がプラズマ源6をプラズマ待機位置からプラズマ処理位置へと移動させる。これによれば、基板Wの直上にはノズル3が存在しないので、プラズマ源6を基板Wの上面により近づけることができる。言い換えれば、プラズマ処理位置をより基板Wの近くに設定することができる。
【0066】
そして、プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態において、電源8がプラズマ源6に電圧を出力する。これにより、プラズマ源6は周囲のガスをプラズマ化させる。このプラズマの発生に伴って種々の活性種が生じる。例えば、空気がプラズマ化することにより、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカルおよびオゾンガス等の種々の活性種が生じ得る。これらの活性種は基板Wの上面の処理液(ここでは硫酸)の液膜Fに作用する。逆に言えば、プラズマ処理位置は、活性種が基板W上の液膜Fに作用できる程度の位置に設定される。活性種が処理液に作用することにより、処理液の処理性能が高まる。具体的には、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。カロ酸はペルオキソ一硫酸とも呼ばれる。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを酸化除去することができる。
【0067】
活性種は主として処理液の液膜Fの液面付近から処理液に作用すると考えられる。よって、基板Wの主面上の液膜Fが薄い場合、活性種は基板Wの主面の近傍に到達しやすいため、カロ酸等の成分は基板Wの主面に到達しやすい。よって、基板Wに対して高い処理速度で処理を行うことができる。一方で、基板Wの主面上の液膜Fが厚い場合、活性種が基板Wの主面の近傍に到達しにくいため、カロ酸等の成分が基板Wの主面に到達しにくい。よって、比較的に低い処理速度で処理が行われる。
【0068】
よって、基板Wの主面上に供給される活性種の量が同じであれば、基板Wの主面上の液膜Fの膜厚の相違に起因して、処理速度のばらつきが生じ得る。
【0069】
ところで、活性種は短時間で失活するので、プラズマ源6と基板Wとの間の距離Dが長くなるほど、基板Wの主面上の液膜Fに到達する前に失活してしまう。よって、距離Dが長くなるほど、基板Wの主面上の液膜Fに供給される活性種の量は少なくなる。逆に言えば、移動機構51がプラズマ源6を基板Wに近づけるほど、より多くの活性種を基板Wの主面上の液膜Fに供給することができる。
【0070】
そこで、制御部90はセンサ4によって測定された膜厚(以下、測定膜厚と呼ぶ)に基づいて、移動機構52を制御する。つまり、制御部90は測定膜厚に基づいてプラズマ源6と基板Wとの間の距離Dを調整する。具体的には、制御部90は、測定膜厚が第1値であるときの距離Dが、測定膜厚が第1値よりも小さい第2値であるときの距離Dよりも短くなるように、移動機構52を制御する。つまり、制御部90は測定膜厚が大きいときには、プラズマ源6と基板Wとの間の距離Dが短くなるように移動機構52を制御する。これにより、測定膜厚が大きいときには、液膜Fに供給する活性種の量を増加させることができる。一方で、制御部90は測定膜厚が小さいときにはプラズマ源6と基板Wとの間の距離Dが長くなるように移動機構52を制御する。これにより、測定膜厚が小さいときには、液膜Fに供給する活性種の量を低減させることができる。
【0071】
なお、制御部90は測定膜厚に対して距離Dを連続的に変化させてもよく、あるいは、段階的に変化させてもよい。測定膜厚と距離Dとの対応関係は例えば実験またはシミュレーションにより予め設定され得る。当該対応関係を示す対応関係情報は、例えば記憶媒体921に予め記憶されていてもよい。当該対応関係情報は、例えばルックアップテーブル形式で記憶されてもよく、あるいは、関数式で記憶されてもよい。
【0072】
<処理ユニットの動作例>
図5は、処理ユニット130の動作の一例を示すフローチャートである。まず、基板保持部2が基板Wを保持する(ステップS1:保持工程)。具体的には、主搬送ロボット120が未処理の基板Wを処理ユニット130に搬入し、基板保持部2は、搬入された基板Wを保持する。ここでは、基板Wの上面にレジストが形成されている。
【0073】
次に、基板Wの上面に処理液を供給する(ステップS2:液供給成工程)。図6は、液供給工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。
【0074】
液供給工程において、まず、移動機構51がノズル3をノズル待機位置からノズル処理位置に移動させる。ここでは、ノズル処理位置は基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。そして、基板保持部2が基板Wを回転軸線Q1まわりで回転させ、バルブ32が開く。バルブ32が開くと、ノズル3から処理液が基板Wの上面の中心部に向けて吐出される。処理液は基板Wの上面の中央部に着液し、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの上面を広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。これにより、基板Wの上面に処理液の液膜Fが形成される。
【0075】
液供給工程では、液膜Fの膜厚が所定範囲内となるように、処理液の流量および基板Wの回転速度が予め設定される。例えば実験またはシミュレーション等により、これらのパラメータが事前に決定される。液膜Fの膜厚の目標値は例えば0.1mm以上かつ2.0mm以下である(具体的な一例として300μm)。ただし、液供給工程において形成される液膜Fの膜厚は、例えば、処理液の流量ばらつき、および、基板Wの回転速度のばらつき等の諸要因により、基板Wごとにばらつき得る。
【0076】
基板W上に液膜Fが形成されると、バルブ32が閉じて、処理液の供給が停止する。液膜Fの形成後には、基板保持部2は基板Wの回転を停止させてもよく、あるいは、基板Wの回転を継続してもよい。基板Wの回転を継続する場合、基板保持部2は液供給工程における回転速度より低い回転速度で基板Wを回転させるとよい。これにより、基板Wの周縁から流れ落ちる処理液の量を低減させることができ、液膜Fをより確実に維持することができる。言い換えれば、基板保持部2は液膜Fを維持できる程度の回転速度で基板Wを回転させればよい。より具体的な一例として、基板保持部2は基板Wの周縁から処理液が流れ落ちない程度の回転速度で基板Wを回転させる。このように処理液の供給を停止しつつ基板Wの上面に液膜Fを維持する処理は、パドル処理とも呼ばれる。
【0077】
次に、液膜Fの膜厚測定が行われる(ステップS3:膜厚測定工程)。図7は、膜厚測定工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。
【0078】
膜厚測定工程において、センサ4は液膜Fの膜厚を測定する。センサ4は一つ位置で基板Wの主面上の液膜Fの膜厚を測定してもよく、あるいは、複数の位置で膜厚を測定してもよい。例えば、移動機構51はセンサ4を基板Wの直上で水平方向に移動させつつ、その移動経路上の複数の位置でセンサ4が膜厚を測定してもよい。この移動経路は平面視において、例えば基板Wの直径に沿う直線経路または円弧経路である。
【0079】
センサ4によって測定された膜厚は制御部90に出力される。複数の測定位置で膜厚が測定された場合、制御部90は複数の測定位置で測定された膜厚を平均化して測定膜厚を算出してもよい。
【0080】
センサ4による膜厚測定が終了すると、移動機構51はノズル3およびセンサ4を一体に待機位置(つまり、ノズル待機位置およびセンサ待機位置)に移動させる。
【0081】
次に、制御部90は測定膜厚に基づいて、プラズマ処理位置を決定する(ステップS4:決定工程)。言い換えれば、制御部90は測定膜厚に基づいて、後述のプラズマ工程(ステップS5)におけるプラズマ源6と基板Wとの間の距離Dを決定する(図8および図9も参照)。具体的には、制御部90は、測定膜厚が第1値であるときの距離D(図8参照)が、測定膜厚が第1値よりも小さい第2値であるときの距離D(図9参照)より短くなるように、距離Dを決定する。
【0082】
ここでは一例として、測定膜厚と距離Dとの対応関係を示す対応関係情報が記憶媒体921に予め記憶される。制御部90は膜厚測定工程において測定された測定膜厚と、記憶媒体921に記憶された対応関係情報とに基づいて、プラズマ源6と基板Wとの間の距離Dを決定する。
【0083】
次に、決定工程において決定された距離Dでプラズマ源6の位置を制御しつつ、プラズマ処理が行われる(ステップS5:プラズマ工程)。図8および図9は、プラズマ工程における処理ユニット130の様子の一例を概略的に示す図である。図8は、液膜Fの膜厚が大きい場合の処理ユニット130を示しており、図9は、液膜Fの膜厚が図8での膜厚よりも小さい場合の処理ユニット130を示している。
【0084】
プラズマ工程においては、移動機構52がプラズマ源6および遮断部材7をプラズマ待機位置からプラズマ処理位置に一体に移動させる。このプラズマ処理位置は、決定工程において決定された位置である。つまり、移動機構52は、決定工程によって決定されたプラズマ源6と基板Wとの間の距離Dで、プラズマ源6を停止させる。これによれば、図8および図9に例示されるように、液膜Fの膜厚が大きいときの距離Dは、液膜Fの膜厚が小さいときの距離Dよりも短くなる。
【0085】
また、このプラズマ工程において、電源8はプラズマ源6に電力を供給する。これにより、プラズマ源6の周囲のガスがプラズマ化する。このプラズマ化に伴って種々の活性種が生成される。例えば、空気がプラズマ化することにより、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカルおよびオゾンガス等の種々の活性種が生じ得る。
【0086】
プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態でプラズマ源6が周囲のガスをプラズマ化させることにより、活性種が基板Wの上面の液膜Fに作用する。具体的には、プラズマ源6と基板Wとの間で生じた活性種が液膜Fに作用する。これにより、処理液の処理性能が高まる。具体的な一例として、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを速やかに酸化除去することができる。
【0087】
上述の例では、プラズマ源6は平面視において広い範囲でプラズマを発生させることができるので、基板Wの上面に対して広い範囲で活性種を供給することができる。したがって、基板Wの上面のレジストをより均一に除去することができる。プラズマ源6は平面視において、基板Wの上面と同程度、もしくは、基板Wの上面よりも広い範囲でプラズマを発生させる程度のサイズを有しているとよい。
【0088】
基板Wの上面のレジストが十分に除去されると、移動機構52はプラズマ源6および遮断部材7をプラズマ処理位置からプラズマ待機位置へ一体に移動させ、また、電源8がプラズマ源6への電力供給を停止する。
【0089】
次に、処理ユニット130は基板Wの上面に対するリンス処理を行う(ステップS6:リンス工程)。具体的には、処理ユニット130はリンス液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面の処理液をリンス液に置換する。
【0090】
次に、処理ユニット130は基板Wに対する乾燥処理を行う(ステップS7:乾燥工程)。例えば基板保持部2が液供給工程よりも高い回転速度で基板Wを回転させることにより、基板Wを乾燥させる(いわゆるスピンドライ)。次に、主搬送ロボット120が処理済みの基板Wを処理ユニット130から搬出する。
【0091】
以後、未処理の基板Wが順次に処理ユニット130に搬入され、その都度、ステップS1からステップS7が行われる。
【0092】
以上のように、処理ユニット130によれば、基板Wの上面の液膜Fの膜厚に基づいて、プラズマ源6と基板Wとの間の距離Dが制御される。具体的には、液膜Fの膜厚が大きいほど距離Dが短くなるように制御される。よって、膜厚が大きいときには、より多くの活性種を基板Wの上面の液膜Fに供給することができ、高い処理性能を有する成分(ここではカロ酸)をより多く生成することができる。したがって、膜厚が大きくても当該成分を基板Wの上面に到達させやすく、膜厚の増加に伴う処理速度の低下を抑制することができる。
【0093】
逆に言えば、液膜Fの膜厚が小さいほど距離Dが長くなるように制御される。よって、膜厚が小さいときには、より少ない活性種を基板Wの上面の液膜Fに供給することができ、高い処理性能を有する成分をより少なく生成することができる。したがって、膜厚が小さくても基板Wの上面に到達する当該成分を過剰に増やすことなく、膜厚の低下に伴う処理速度の不要な増加を抑制することができる。
【0094】
以上のように、液膜Fの膜厚の相違に応じた処理速度のばらつきを低減させることができる。つまり、基板W上に形成される処理液の液膜Fの膜厚は基板Wごとに相違するものの、その膜厚に起因した基板W間の処理速度のばらつきを低減させることができる。
【0095】
また、上述の例では、遮断部材7が設けられている。これによれば、プラズマ工程において、遮断部材7よりも鉛直上方の上部空間のガスがプラズマ源6と基板Wとの間の処理空間に流入することを抑制できる。これによれば、処理空間内の雰囲気の乱れを抑制することができ、処理空間内の活性種をより適切に基板Wの上面の液膜Fに供給することができる。
【0096】
さて、第1の実施の形態では、既述のように、処理ユニット130は液膜Fの膜厚に基づいてプラズマ源6と基板Wとの間の距離Dを制御することで、液膜Fの膜厚に応じて活性種の供給量を制御した。距離Dは高い応答性かつ高い精度で制御することができるので、活性種の供給量を高い応答性かつ高い精度で制御することができる。
【0097】
しかしながら、距離Dの制御以外の方法により、液膜Fへの活性種の供給量を制御してもよい。以下、各実施の形態において当該方法の例を述べる。
【0098】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態にかかる処理ユニット130の構成は第1の実施の形態にかかる処理ユニット130と同様である。ただし、制御部90は、センサ4によって測定された測定膜厚に基づいて、電源8の出力を制御する。
【0099】
制御部90は、例えば、電源8の周波数を高めることにより、プラズマ出力(プラズマ照射出力)を高めることができる。プラズマ出力とは、プラズマ源6の出力を意味し、プラズマ出力を示す指標としては、例えば、プラズマ源6によって生成されるプラズマの量(例えば電子密度)を採用できる。あるいは、プラズマ出力を示す指標として、例えば、プラズマ発光強度を採用してもよい。プラズマ出力が高いほど、より多くの活性種が生成される。
【0100】
制御部90は、測定膜厚が第1値であるときのプラズマ源6のプラズマ出力が、測定膜厚が第1値よりも小さな第2値であるときのプラズマ源6のプラズマ出力よりも大きくなるように、電源8を制御する。具体的な一例として、制御部90は、測定膜厚が第1値であるときの電源8の周波数が、測定膜厚が第1値よりも小さな第2値であるときの周波数よりも高くなるように、電源8を制御する。つまり、制御部90は測定膜厚が大きいときにはプラズマ出力が大きくなるように電源8を制御する。これにより、測定膜厚が大きいときには、液膜Fに供給する活性種の量を増加させることができる。一方で、制御部90は測定膜厚が小さいときにはプラズマ出力が小さくなるように電源8を制御する。これにより、測定膜厚が小さいときには、液膜Fに供給する活性種の量を低減させることができる。したがって、測定膜厚の相違に起因した処理速度のばらつきを低減させることができる。
【0101】
なお、制御部90は、測定膜厚に対して電源8の周波数を連続的に変化させてもよく、あるいは、段階的に変化させてもよい。測定膜厚と周波数との対応関係は例えば実験またはシミュレーションにより予め設定され得る。当該対応関係を示す対応関係情報は、例えば記憶媒体921に予め記憶されていてもよい。当該対応関係情報は、例えばルックアップテーブル形式で記憶されてもよく、あるいは、関数式で記憶されてもよい。
【0102】
また、制御部90は、電源8が高周波電圧をプラズマ源6に出力するオン期間を制御してもよい。オン期間が長くなるほど、プラズマ出力は高くなる。要するに、制御部90は電源8の周期に対するオン期間の比(=デューティ)を制御してもよい。デューティが高くなるほど、プラズマ出力は高くなる。あるいは、制御部90は、デューティに替えて、もしくはデューティとともに、電源8の出力電圧の大きさ(つまり、振幅)を制御してもよい。出力電圧が大きくなるほど、プラズマ出力は高くなる。
【0103】
図10は、第2の実施の形態にかかる処理ユニット130の動作の一例を示すフローチャートである。ステップS11からステップS13はステップS1からステップS3とそれぞれ同じである。
【0104】
制御部90は膜厚測定工程(ステップS13)によって測定された測定膜厚に基づいて、プラズマ工程(ステップS15)において電源8が出力する出力電圧を決定する(ステップS14:決定工程)。具体的には、制御部90は、測定膜厚が第1値であるときの電源8の周波数が、測定膜厚が第1値よりも小さい第2値であるときの周波数よりも高くなるように、周波数を決定する。
【0105】
ここでは一例として、測定膜厚と周波数との対応関係を示す対応関係情報が記憶媒体921に予め記憶される。制御部90は膜厚測定工程において測定された測定膜厚と、記憶媒体921に記憶された対応関係情報とに基づいて、周波数を決定する。
【0106】
次に、決定工程において決定された周波数でプラズマ源6への出力電圧を制御しつつ、プラズマ処理を行う(ステップS15:プラズマ工程)。プラズマ工程においては、移動機構52がプラズマ源6および遮断部材7をプラズマ待機位置からプラズマ処理位置に一体に移動させる。このプラズマ処理位置は例えば予め設定された位置であってもよく、第1の実施の形態のように測定膜厚に応じて決定されてもよい。
【0107】
また、このプラズマ工程において、電源8はプラズマ源6に電力を供給する。具体的には、電源8は、決定工程において決定された周波数で高周波電圧をプラズマ源6に出力する。これにより、プラズマ源6の周囲のガスがプラズマ化する。このプラズマ化に伴って種々の活性種が生成される。プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態でプラズマ源6が周囲のガスをプラズマ化させることにより、活性種が基板Wの上面の処理液の液膜Fに作用する。これにより、処理液の処理性能が高まる。具体的には、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを速やかに酸化除去することができる。
【0108】
基板Wの上面のレジストが十分に除去されると、移動機構52はプラズマ源6および遮断部材7をプラズマ処理位置からプラズマ待機位置へ一体に移動させ、また、電源8がプラズマ源6への電力供給を停止する。
【0109】
次に、処理ユニット130はステップS6と同様にリンス処理を行い(ステップS16:リンス工程)、ステップS7と同様に乾燥処理を行う(ステップS17:乾燥工程)。
【0110】
以上のように、第2の実施の形態では、基板Wの上面の液膜Fの膜厚に基づいて、プラズマ出力が制御される。具体的には、液膜Fの膜厚が大きいほどプラズマ出力が大きくなるように電源8の出力電圧が制御される。よって、膜厚が大きいときには、より多くの活性種を基板Wの上面の液膜Fに供給することができ、膜厚が小さいときには、より少ない活性種を基板Wの上面の液膜Fに供給することができる。したがって、液膜Fの膜厚の相違に応じた処理速度のばらつきを低減させることができる。
【0111】
<第3の実施の形態>
図11は、第3の実施の形態にかかる処理ユニット130の構成の一例を概略的に示す図である。以下では、第3の実施の形態にかかる処理ユニット130を処理ユニット130Aと呼ぶ。処理ユニット130Aは、ガス供給部10を除いて、第1および第2の実施の形態にかかる処理ユニット130と同様の構成を有している。
【0112】
ガス供給部10は制御部90によって制御され、基板保持部2によって保持された基板Wとプラズマ源6との間に処理ガスを供給する。処理ガスは、プラズマが処理ガスに作用することにより活性種を生成するガスであり、例えば、酸素を含む酸素含有ガスである。酸素含有ガスは、例えば、酸素ガス、オゾンガス、二酸化炭素ガス、空気、または、これらの少なくとも二つの混合ガスを含む。ガス供給部10は、さらにキャリアガスも供給してもよい。キャリアガスは、アルゴンガス等の希ガスおよび窒素ガスの少なくともいずれかを含む。
【0113】
ガス供給部10はガスを吐出する給気口11aを有しており、図11の例では、給気口11aは、プラズマ源6と基板Wとの間の空間に対して、径方向外側に位置している。図11の例では、複数の給気口11aが設けられている。複数の給気口11aは例えばプラズマ源6と基板Wとの間の空間に対して径方向外側において、周方向で等間隔に設けられる。
【0114】
給気口11aは給気管11の下流端に形成されており、給気管11の上流端はガス供給源14に接続される。図11の例では、給気管11は複数の分岐管111と共通管112とを含む。各分岐管111の下流端が給気口11aに相当し、各分岐管111の上流端は共通して共通管112の下流端に接続される。共通管112の上流端はガス供給源14に接続される。ガス供給源14は処理ガスを給気管11の上流端(具体的には共通管112の上流端)に供給する。給気管11(より具体的には共通管112)にはバルブ12および流量調整部13が介装されている。バルブ12は制御部90によって制御される。バルブ12が開くことにより、ガス供給源14からの処理ガスが給気管11を流れて各給気口11aから流出する。流量調整部13は制御部90によって制御され、給気管11を流れる処理ガスの流量を調整する。流量調整部13は例えばマスフローコントローラである。
【0115】
図11の例では、給気管11は遮断部材7に取り付けられている。図11の例では、遮断部材7はカバー部71と垂下部72とを含む。カバー部71はプラズマ源6よりも鉛直上方に設けられている。カバー部71は例えば円板形状を有しており、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。カバー部71の側面はプラズマ源6よりも径方向外側に位置している。垂下部72はカバー部71の周縁から鉛直下方に延在し、その先端部がプラズマ源6よりも鉛直下方に位置する。図11の例では、給気管11の下流部分は遮断部材7の垂下部72の先端部を径方向に貫通する。給気口11aは例えば垂下部72の内側面に形成される。
【0116】
垂下部72はカバー部71の周縁の全周に立設されていてもよく、あるいは、給気口11aを形成する周方向部分のみに設けられていてもよい。後者の場合、複数の垂下部72が周方向において間隔を空けて設けられる。
【0117】
プラズマ源6がプラズマ処理位置に位置する状態で、ガス供給部10が処理ガスをプラズマ源6と基板Wとの間の処理空間に供給することにより、処理空間において、酸素ラジカル等の活性種を効果的に発生させることができる。また、この処理ガスの流量が大きいほど、酸素ラジカル等の活性種の発生量を増加させることができる。
【0118】
第3の実施の形態では、制御部90は、センサ4によって測定された液膜Fの測定膜厚に基づいて、処理ガスの流量を調整する。具体的には、制御部90は、測定膜厚が第1値であるときの処理ガスの流量が、測定膜厚が第1値よりも小さな第2値であるときの処理ガスの流量よりも大きくなるように、ガス供給部10(より具体的には、流量調整部13)を制御する。つまり、制御部90は測定膜厚が大きいときには処理ガスの流量が大きくなるように、流量調整部13を制御する。これにより、測定膜厚が大きいときには、液膜Fに供給する活性種の量を増加させることができる。一方で、制御部90は測定膜厚が小さいときには処理ガスの流量が小さくなるように流量調整部13を制御する。これにより、測定膜厚が小さいときには、液膜Fに供給する活性種の量を低減させることができる。したがって、液膜Fの膜厚の相違に応じた処理速度のばらつきを低減させることができる。
【0119】
なお、制御部90は、測定膜厚に対して処理ガスの流量を連続的に変化させてもよく、あるいは、段階的に変化させてもよい。測定膜厚と処理ガスの流量との対応関係は例えば実験またはシミュレーションにより予め設定され得る。当該対応関係を示す対応関係情報は、例えば記憶媒体921に予め記憶されていてもよい。当該対応関係情報は、例えばルックアップテーブル形式で記憶されてもよく、あるいは、関数式で記憶されてもよい。
【0120】
図12は、第3の実施の形態にかかる処理ユニット130Aの動作の一例を示すフローチャートである。ステップS21からステップS23はステップS1からステップS3とそれぞれ同じである。
【0121】
制御部90は膜厚測定工程(ステップS23)によって測定された測定膜厚に基づいて、プラズマ工程(ステップS25)において供給される処理ガスの流量を決定する(ステップS24:決定工程)。具体的には、制御部90は、測定膜厚が第1値であるときの処理ガスの流量が、測定膜厚が第1値よりも小さい第2値であるときの処理ガスの流量よりも大きくなるように、処理ガスの流量を決定する。
【0122】
ここでは一例として、測定膜厚と処理ガスの流量との対応関係を示す対応関係情報が記憶媒体921に予め記憶される。制御部90は、膜厚測定工程によって測定された測定膜厚と、記憶媒体921に記憶された対応関係情報とに基づいて、処理ガスの流量を決定する。
【0123】
次に、決定工程において決定された処理ガスの流量で流量調整部13を制御しつつ、プラズマ処理を行う(ステップS25:プラズマ工程)。プラズマ工程においては、移動機構52がプラズマ源6をプラズマ待機位置からプラズマ処理位置に移動させる。このプラズマ処理位置は例えば予め設定された位置であってもよく、第1の実施の形態のように測定膜厚に応じて決定されてもよい。
【0124】
また、このプラズマ工程において、制御部90はバルブ12を開き、決定工程において決定された流量で処理ガスが流れるように流量調整部13を制御する。処理ガスは当該流量で給気管11を流れて給気口11aから流出し、プラズマ源6と基板Wとの間の処理空間内に供給される。
【0125】
また、このプラズマ工程において、電源8はプラズマ源6に電力を供給する。電源8の出力電圧は予め設定されてもよく、あるいは、第2の実施の形態のように測定膜厚に応じて決定されてもよい。プラズマ源6への電力供給により、プラズマ源6の周囲のガスがプラズマ化する。そして、処理空間において、プラズマが処理ガスに作用することにより、酸素ラジカル、ヒドロキシルラジカルおよびオゾンガス等の種々の活性種が生じる。
【0126】
この活性種が基板Wの上面の処理液の液膜Fに作用する。これにより、処理液の処理性能が高まる。具体的には、活性種と硫酸との反応により、処理性能(ここでは酸化力)の高いカロ酸が生成される。当該カロ酸が基板Wのレジストに作用することで、レジストを速やかに酸化除去することができる。
【0127】
基板Wの上面のレジストが十分に除去されると、制御部90はバルブ12を閉じ、移動機構52はプラズマ源6をプラズマ処理位置からプラズマ待機位置へ移動させ、また、電源8がプラズマ源6への電力供給を停止する。
【0128】
次に、処理ユニット130はステップS6と同様にリンス処理を行い(ステップS26:リンス工程)、ステップS7と同様に乾燥処理を行う(ステップS27:乾燥工程)。
【0129】
以上のように、第3の実施の形態では、基板Wの上面の液膜Fの膜厚に基づいて、処理ガスの流量が制御される。具体的には、液膜Fの膜厚が大きいほど処理ガスの流量が大きくなるように制御される。よって、膜厚が大きいときには、より多くの活性種を基板Wの上面の液膜Fに供給することができ、膜厚が小さいときには、より少ない活性種を基板Wの上面の液膜Fに供給することができる。したがって、液膜Fの膜厚の相違に応じた処理速度のばらつきを低減させることができる。
【0130】
以上のように、第1から第3の実施の形態では、調整対象のパラメータとして、プラズマ源6と基板Wとの間の距離D、電源8の出力電圧およびプラズマ源6と基板Wと間に供給される処理ガスの流量が採用された。これらの調整対象をパラメータという概念でまとめた場合の決定工程およびプラズマ工程は以下のように説明できる。
【0131】
各実施の形態における決定工程(ステップS4,S14,S24)は、センサ4によって測定された測定膜厚に基づいて、プラズマ源6と基板Wとの間の距離D、プラズマ源6に印加される出力電圧、および、プラズマ源6と基板Wとの間に供給されるガスの流量の少なくともいずれか一つのパラメータの値を決定する工程に相当する。
【0132】
また、各実施の形態におけるプラズマ工程(ステップS5,S15,S25)は、当該パラメータを決定工程で決定された値に制御しつつ、プラズマ源6が発生させたプラズマによる活性種を基板W上の液膜Fに供給する工程に相当する。
【0133】
以上のように、処理ユニット(基板処理装置)130,130Aおよび基板処理方法は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この処理ユニット130,130Aおよび基板処理方法がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【0134】
例えば、プラズマ源6は図4に限らない。例えば、仕切部材66が設けられていなくてもよい。この場合、第1電極部61および第2電極部62は同一の平面上に設けられてもよい。また、仕切部材66が設けられていない場合には、ガスがプラズマ源6の第1誘電管64および第2誘電管65の間を鉛直方向に通過することができるので、給気口11aはプラズマ源6よりも鉛直上方において、プラズマ源6と鉛直方向に対向する位置に形成されてもよい。例えば給気口11aは遮断部材7のカバー部71の下面に形成されていてもよい。
【0135】
また、例えば、基板Wに対する処理は必ずしもレジスト除去処理に限らない。基板Wに対する処理として、活性種により処理液の処理能力を向上させることができる全ての処理を採用することができる。
【0136】
また、上述の例では、基板W上の処理液の液膜Fの膜厚のばらつきは、処理液の流量ばらつきおよび基板Wの回転速度のばらつき等の諸要因によって生成されるとした。しかしながら、液膜Fの膜厚の目標値が変更される場合もある。この場合であっても、センサ4によって測定された測定膜厚に基づいて、基板W上の液膜Fに供給される活性種の量が適切に調整される。
【符号の説明】
【0137】
10 ガス供給部
130,130A 基板処理装置(処理ユニット)
2 基板保持部
3 ノズル
4 センサ
52 移動機構
6 プラズマ源
8 電源
90 制御部
S1,S11,S21 保持工程(ステップ)
S2,S12,S22 液供給工程(ステップ)
S3,S13,S23 膜厚測定工程(ステップ)
S5,S15,S25 プラズマ工程(ステップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12