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特開2022-131203リハビリ用歩行車及び歩行訓練用システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131203
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】リハビリ用歩行車及び歩行訓練用システム
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030025
(22)【出願日】2021-02-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼刊行物名:令和2年東北地区若手研究者研究発表会,「音・光・電波・エネルギー・システムとその応用」,講演資料/第77頁~第78頁 発行者名:東北地区若手研究者研究発表会事務局 発行日:令和2年2月29日 ▲2▼集会名:丸山次人名誉教授の最終講義 開催場所:東北工業大学八木山キャンパス1号館131教室 開催日:令和3年2月15日 ▲3▼刊行物名:令和2年東北地区若手研究者研究発表会,「音・光・電波・エネルギー・システムとその応用」,講演資料/第179頁~第180頁 発行者名:東北地区若手研究者研究発表会事務局 発行日:令和2年2月29日
(71)【出願人】
【識別番号】597124316
【氏名又は名称】学校法人東北工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000222026
【氏名又は名称】東北電子産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 次人
(72)【発明者】
【氏名】中山 英久
(72)【発明者】
【氏名】針生 重好
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 望美
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046AA33
4C046AA42
4C046BB01
4C046BB07
4C046CC01
4C046DD26
4C046DD27
4C046DD33
4C046DD47
4C046EE05
4C046EE24
4C046EE25
4C046EE32
(57)【要約】
【課題】使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に判断しやすい有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることができるリハビリ用歩行車及び歩行訓練用システムを提供する。
【解決手段】リハビリ用歩行車1は、使用者Pが歩行動作時に、左右の肘を各々載せ得る一対の肘載せ部3L,3Rと、左右の手で各々把持し得る一対のグリップ4L,4Rと、肘載せ部3L,3Rに使用者Pの肘から作用する肘荷重を検出する荷重センサ11L,11Rと、グリップ4L,4Rに使用者Pの手から作用する手荷重を検出する荷重センサ12L,12Rと、肘荷重及び手荷重の検出値に関する報知情報を出力する情報処理装置6(60,65)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上を移動自在なフレームと、該フレームの上部に配置され、使用者が左右の肘を各々載せ得るように該フレームに搭載された一対の肘載せ部と、該肘載せ部の前方に配置され、前記使用者が左右の手で各々把持し得るように該フレームに搭載された一対のグリップとを備え、前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せた状態、又は前記使用者がその各手で前記グリップを把持した状態、又は前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せ,かつその各手で前記グリップを把持した状態で、該使用者の歩行動作に伴い、該使用者と共に移動し得るように構成されたリハビリ用歩行車であって、
前記使用者の各肘を載せた前記肘載せ部のそれぞれに該肘から作用する荷重である肘荷重を検出する第1荷重センサと、
前記使用者の各手で把持された前記グリップのそれぞれに該手から作用する荷重である手荷重を検出する第2荷重センサと、
前記肘荷重及び前記手荷重の検出値に関する報知情報を出力する情報処理装置とを備えることを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項2】
請求項1記載のリハビリ用歩行車において、
前記第1荷重センサが検出する前記肘荷重は、少なくとも上下方向の荷重を含み、前記第2荷重センサが検出する前記手荷重は、少なくとも上下方向の荷重又は前記使用者の前方方向への荷重を含むことを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリハビリ用歩行車において、
前記情報処理装置は、前記使用者の歩行動作中に該使用者が視認し得る表示器を備えており、該使用者の歩行動作中に、所定種類の前記報知情報である表示対象報知情報を逐次更新しながら該表示器に表示させる機能を有するように構成されていることを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項4】
請求項3記載のリハビリ用歩行車において、
前記表示器に表示させる前記表示対象報知情報は、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第1状態量と、該使用者の左側における前記第1状態量と該使用者の右側における前記第1状態量との比率又は差又は絶対差である第1左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第2状態量と、該使用者の左側における前記第2状態量と該使用者の右側における前記第2状態量との比率又は差又は絶対差である第2左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第3状態量と、該使用者の左側における前記第3状態量と該使用者の右側における前記第3状態量との比率又は差又は絶対差である第3左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における該使用者の前方方向への前記手荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第4状態量と、該使用者の左側における前記第4状態量と該使用者の右側における前記第4状態量との比率又は差又は絶対差である第4左右状態量とのうちのいずれかの状態量を示す情報、又は当該状態量と当該状態量に対する適正範囲との対比を示す情報を少なくとも含むことを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項5】
請求項3又は4記載のリハビリ用歩行車において、
前記情報処理装置は、前記表示器に表示させる前記表示対象報知情報に関して、前記使用者の左右のバランスの度合いの適否を判定する機能を有し、前記表示対象報知情報を前記表示器に表示させることと併せて、当該判定の結果を示す報知情報を前記使用者に対して逐次出力する機能をさらに有するように構成されていることを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項6】
請求項5記載のリハビリ用歩行車において、
前記情報処理装置が、前記バランスの度合いの適否を判定する対象の前記表示対象報知情報は、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第1状態量と、該使用者の左側における前記第1状態量と該使用者の右側における前記第1状態量との比率又は差又は絶対差である第1左右状態量と、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第2状態量と、該使用者の左側における前記第2状態量と該使用者の右側における前記第2状態量との比率又は差又は絶対差である第2左右状態量とのうちのいずれかの状態量を少なくとも含むことを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のリハビリ用歩行車において、
前記情報処理装置は、前記肘荷重及び前記手荷重の検出値の収集データから、前記使用者の歩行動作に関する所定種類の評価指標を算出する機能をさらに有し、該情報処理装置が出力する報知情報には、該所定種類の評価指標が含まれることを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項8】
請求項7記載のリハビリ用歩行車において、
前記所定種類の評価指標は、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第1状態量と、該使用者の左側における前記第1状態量と該使用者の右側における前記第1状態量との比率又は差又は絶対差である第1左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第2状態量と、該使用者の左側における前記第2状態量と該使用者の右側における前記第2状態量との比率又は差又は絶対差である第2左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第3状態量と、該使用者の左側における前記第3状態量と該使用者の右側における前記第3状態量との比率又は差又は絶対差である第3左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における該使用者の前方方向への前記手荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第4状態量と、該使用者の左側における前記第4状態量と該使用者の右側における前記第4状態量との比率又は差又は絶対差である第4左右状態量とのうちのいずれかの状態量である評価対象状態量の平均値を示す情報、該評価対象状態量のばらつき度合いを示す情報、及び該評価対象状態量が適正範囲から逸脱した期間の全歩行期間に対する時間比率である逸脱時間比率を示す情報のうちの1つ以上の情報を含むことを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のリハビリ用歩行車において、
前記情報処理装置は、当該リハビリ用歩行車が直進状態であるか否かを判定する機能をさらに有し、当該当該リハビリ用歩行車が直進状態であると判定される状況での前記肘荷重及び手荷重の少なくとも一方の検出値、又は当該状況での前記肘荷重及び手荷重の少なくとも一方の検出値から算出してなる値に基づいて、出力する前記報知情報を生成するように構成されていることを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のリハビリ用歩行車において、
前記情報処理装置は、前記使用者の歩行動作の直進性の高低を判定し、その判定結果を示す報知情報を出力する機能をさらに備えることが特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のリハビリ用歩行車において、
前記情報処理装置は、前記使用者の歩数及び移動加速度の少なくとも一方を計測可能な運動計測機器との通信を介して該使用者の歩数及び移動加速度の少なくとも一方の計測データを取得する機能と、該計測データを用いて生成した報知情報を出力する機能とをさらに有するように構成されていることを特徴とするリハビリ用歩行車。
【請求項12】
床面上を移動自在なフレームと、該フレームの上部に配置され、使用者が左右の肘を各々載せ得るようにも該フレームに搭載された一対の肘載せ部と、該肘載せ部の前方に配置され、前記使用者が左右の手で各々把持し得るように該フレームに搭載された一対のグリップとを備え、前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せた状態、又は前記使用者がその各手でグリップを把持した状態、又は前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せ,かつその各手で前記グリップを把持した状態で、該使用者の歩行動作に伴い、該使用者と共に移動し得るように構成されたリハビリ用歩行車を使用する歩行訓練用システムであって、
前記使用者の各肘を載せた前記肘載せ部のそれぞれに該肘から作用する荷重である肘荷重を検出し得るように前記リハビリ用歩行車に搭載された第1荷重センサと、
前記使用者の各手で把持された前記グリップのそれぞれに該手から作用する荷重である手荷重を検出し得るように前記リハビリ用歩行車に搭載された第2荷重センサと、
前記肘荷重及び前記手荷重の検出値に関する報知情報を出力する情報処理装置とを備えることを特徴とする歩行訓練用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリ用歩行車と、これを使用した歩行訓練用システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自立歩行が困難な使用者の歩行を補助するための歩行車として、例えば特許文献1、2に見られる如き歩行車が提案されている。これらの歩行車は、車輪を介して床面上を移動可能なフレームを備えると共にそのフレームの上部に、起立した使用者が左右の肘を各々載せることができる一対の肘載せ部を備えている。そして、使用者は、左右の肘を肘載せ部に載せることで、自身の上体を支え、この状態で、歩行動作を行うことが可能である。また、特許文献1に見られる歩行車では、さらに、歩行車を停止させるためのブレーキ操作部として、使用者が左右の手で各々把持し得る一対のグリップが肘載せ部の前方に備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-126023号公報
【特許文献2】特開2014-226412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に見られる如き歩行車は、病院や介護施設等において、脚の運動機能の不具合や衰え等によって自立歩行が困難な使用者の歩行訓練等のリハビリ用途でしばしば使用される。この場合、医師や、看護師、介護士、セラピスト等、歩行訓練に携わるスタッフが、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを適宜、判断する必要がある。例えば、使用者が、肘載せ部を有する歩行車を使用せずとも、シルバーカー、もしくは杖を使用して歩行動作を行い得る状態に回復したのか否かの判断等を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、従来、当該判断は、使用者の歩行動作の目視による観察結果や、使用者の感想、スタッフの経験等に基づいて行われることが一般的である。このため、当該判断が客観性に欠けるものとなりやすいと共に、スタッフによってばらつきを生じやすい。ひいては、当該判断が不適切なものとなる懸念がある。
また、使用者にとっても、従来の歩行車では、歩行訓練の効果や、歩行機能の回復度合いを定量的に認識し難いため、歩行訓練のモチベーションを高めにくい。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に判断しやすい有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることができるリハビリ用歩行車及び歩行訓練用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のリハビリ用歩行車は、上記の目的を達成するために、
床面上を移動自在なフレームと、該フレームの上部に配置され、使用者が左右の肘を各々載せ得るように該フレームに搭載された一対の肘載せ部と、該肘載せ部の前方に配置され、前記使用者が左右の手で各々把持し得るように該フレームに搭載された一対のグリップとを備え、前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せた状態、又は前記使用者がその各手で前記グリップを把持した状態、又は前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せ,かつその各手で前記グリップを把持した状態で、該使用者の歩行動作に伴い、該使用者と共に移動し得るように構成されたリハビリ用歩行車であって、
前記使用者の各肘を載せた前記肘載せ部のそれぞれに該肘から作用する荷重である肘荷重を検出する第1荷重センサと、
前記使用者の各手で把持された前記グリップのそれぞれに該手から作用する荷重である手荷重を検出する第2荷重センサと、
前記肘荷重及び前記手荷重の検出値に関する報知情報を出力する情報処理装置とを備えることを特徴とする(第1発明)。
【0008】
ここで、本願発明者の様々な検討によれば、肘載せ部及びグリップを備えるリハビリ用歩行車に対して使用者から付与される前記肘荷重及び前記手荷重は、使用者が歩行動作時に自身の体重(自身に作用する重力)を支えるために、肘載せ部やグリップに作用させる荷重であるので、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いに対して高い相関性を有する。
【0009】
例えば、使用者の脚力がある程度回復すると(使用者が、歩行動作時に、自身の体重を、ある程度、両脚で支えることができるようになると)、使用者は、上下方向の肘荷重や上下方向の手荷重をさほど大きくせずに、歩行動作を行うことができるようになる。また、例えば、使用者が片手で杖を突きながら、歩行動作を行うことが可能になる程度に使用者の歩行機能が回復すると、使用者は、片手の手荷重が比較的大きくなるような態様で歩行動作を行うことができるようになる。
【0010】
そこで、第1発明のリハビリ用歩行車では、情報処理装置により、肘荷重及び手荷重の検出値に関する報知情報を出力する。この報知情報によって、使用者の歩行訓練に携わるスタッフや、使用者は、該使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に認識することが可能になる。
【0011】
よって、第1発明のリハビリ用歩行車によれば、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に判断しやすい有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることが可能となる。
【0012】
上記第1発明では、前記第1荷重センサが検出する前記肘荷重は、少なくとも上下方向の荷重を含み、前記第2荷重センサが検出する前記手荷重は、少なくとも上下方向の荷重又は前記使用者の前方方向への荷重を含むことが好ましい(第2発明)。この場合、前記手荷重に関しては、上下方向の荷重を少なくとも含むことがより好適である。
【0013】
ここで、前記肘荷重のうちの上下方向の荷重は、例えば、使用者が、歩行動作時に、自身の体重のうちの、どの程度の重量を、肘載せ部に載せた肘で支えているかの指標になる。また、前記手荷重のうち、上下方向の荷重と使用者の前方方向への荷重とは、例えば、使用者が片手で杖を突いて歩行動作を行う場合に、どの程度の荷重を杖で支えつつ、前方へ踏み出すことができるかの指標になる。よって、第2発明によれば、スタッフや使用者は、該使用者の歩行訓練の進捗度合いや、歩行機能の回復度合いを判断する上で、特に有用な情報を得ることが可能となる。
【0014】
上記第1発明又は第2発明では、前記情報処理装置は、前記使用者の歩行動作中に該使用者が視認し得る表示器を備えており、該使用者の歩行動作中に、所定種類の前記報知情報である表示対象報知情報を逐次更新しながら該表示器に表示させる機能を有するように構成されていることが好ましい(第3発明)。
【0015】
これによれば、使用者は、前記肘荷重及び前記手荷重の検出値に関する表示対象報知情報を、リアルタイムで表示器を介して確認しながら、リハビリ用歩行車を使用した歩行動作を行うことができるので、歩行機能の回復度合いや、歩行訓練中の歩行動作の指針を定量的に認識しやすくなる。
【0016】
上記第3発明では、前記表示器に表示させる前記表示対象報知情報は、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第1状態量と、該使用者の左側における前記第1状態量と該使用者の右側における前記第1状態量との比率又は差又は絶対差である第1左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第2状態量と、該使用者の左側における前記第2状態量と該使用者の右側における前記第2状態量との比率又は差又は絶対差である第2左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第3状態量と、該使用者の左側における前記第3状態量と該使用者の右側における前記第3状態量との比率又は差又は絶対差である第3左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における該使用者の前方方向への前記手荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第4状態量と、該使用者の左側における前記第4状態量と該使用者の右側における前記第4状態量との比率又は差又は絶対差である第4左右状態量とのうちのいずれかの状態量を示す情報、又は当該状態量と当該状態量に対する適正範囲との対比を示す情報を少なくとも含むことが好ましい(第4発明)。この場合、前記表示対象報知情報は、前記第1状態量、前記第2状態量、前記第3状態量及び前記第4状態量のいずれかの状態量を含むことが特に好ましい。また、例えば、使用者の歩行訓練の進捗度合い又は歩行機能の回復度合い等に応じて、前記表示対象報知情報の種類を変化させてもよい。
【0017】
なお、本発明における使用者の体重は、質量の単位での体重、あるいは、重力換算値の体重(=重力加速度×質量)のいずれでもよい。このことは、第4発明に限らず、後述の他の発明でも同様である。
【0018】
上記第4発明によれば、使用者は、歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いとの相関性が高い定量的な指標となる表示対象報知情報(第1状態量、第1左右状態量、第2状態量、第2左右状態量、第3状態量、第3左右状態量、第4状態量、あるいは、第4左右状態量)を表示器で逐次確認しながら歩行訓練を行うことができる。このため、使用者は、歩行動作での自身の動きと、表示対象報知情報との関係性を認識しながら、歩行訓練の効果を高め得るように歩行動作を実施することが可能となる。
【0019】
例えば、上記第1状態量によって、使用者は、自身の体重のうちのどの程度の重量を、肘載せ部に載せた左右の肘で支えているのか、あるいは、左右の肘での上下方向の肘荷重を自身の体重に対してどの程度、小さくすることができるのかを等を定量的に認識できる。また、上記第1左右状態量によって、使用者は、上下方向の肘荷重が左右の肘でバランスがとれているのか否か等を定量的に認識できる。
【0020】
また、上記第2状態量によって、使用者は、自身の体重のうちのどの程度の重量を、グリップを把持した左右の手で支えることができるのか等を認識することができる。また、上記第2左右状態量によって、使用者は、上下方向の手荷重が左右の手でバランスがとれているか否か、あるいは、一方の手による上下方向の手荷重を、他方の手による上下方向の手荷重よりも十分に大きくすることができるのか否か等を定量的に認識できる。
【0021】
また、上記第3状態量によって、使用者は、左右のそれぞれの側において、上下方向の手荷重を上下方向の肘荷重に比して、どの程度大きくすることができるのか等を定量的に認識することができる。また、上記第3左右状態量によって、使用者は、左右の一方側の第3状態量を、他方側の第3状態量よりもどの程度大きくすることができるのか等を定量的に認識できる。
【0022】
また、上記第4状態量によって、使用者は、グリップを把持した左右の手で、前方方向への手荷重を上下方向の手荷重に比して大きくするようにグリップに荷重を付与することができるのか等を定量的に認識することができる。また、上記第4左右状態量によって、使用者は、左右の一方側の第4状態量を、他方側の第4状態量よりもどの程度大きくすることができるのか等を定量的に認識できる。
【0023】
さらに、これらの各状態量と、該状態量の適正範囲との対比を示す表示対象報知情報を表示器に表示させることによって、使用者は、歩行動作時に、該状態量を適正範囲に収めるために、どの程度の荷重を左右のグリップや肘載せ部に付与すべきかの指針を定量的に認識しやすくなる。
【0024】
上記第3発明又は第4発明では、前記情報処理装置は、前記表示器に表示させる前記表示対象報知情報に関して、前記使用者の左右のバランスの度合いの適否を判定する機能を有し、前記表示対象報知情報を逐次前記表示器に表示させることと併せて、当該判定の結果を示す報知情報を前記使用者に対して逐次出力する機能をさらに有するように構成されていることが好ましい(第5発明)。
【0025】
これによれば、使用者は、表示器に表示される表示対象報知情報に関して、左右のバランスの度合いの適否をリアルタイムで容易に認識することができ、ひいては、そのバランスの度合いを改善することを意識して歩行動作を行うことが可能になる。なお、当該バランスの度合いの適否の判定結果の出力は、表示器による視覚的な報知に限らず、音声もしくは警報音等による聴覚的な報知や、振動子等による触覚的な報知であってもよい。
【0026】
上記第5発明では、前記情報処理装置が、前記バランスの度合いの適否を判定する対象の前記表示対象報知情報は、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第1状態量と、該使用者の左側における前記第1状態量と該使用者の右側における前記第1状態量との比率又は差又は絶対差である第1左右状態量と、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第2状態量と、該使用者の左側における前記第2状態量と該使用者の右側における前記第2状態量との比率又は差又は絶対差である第2左右状態量とのうちのいずれかの状態量を少なくとも含むことが好ましい(第6発明)。この場合、前記バランスの度合いの適否を判定する対象の前記表示対象報知情報は、前記第1左右状態量又は前記第2左右状態量を含むことが特に好適である。
【0027】
ここで、使用者が左右の肘を肘載せ部に載せた状態で、歩行動作を行う場合には、左右の肘荷重(上下方向の肘荷重)のバランスがとれている(左右の肘荷重が互いに同程度の大きさになる)ことが好ましい。このため、左右の第1状態量、あるいは第1左右状態量のバランスの度合いの適否の判定結果を表示器に逐次表示させることで、使用者は、左右の肘荷重(上下方向の肘荷重)のバランスがとれるように歩行動作を行うことを意識して歩行訓練を行うことが可能となる。
【0028】
また、使用者が片手で杖を突きながら歩行することを目指して歩行訓練を行う場合、グリップを把持する左右の一方側の手(使用者の利き手)で体重を支えることができるようになることが好ましい。このため、左右の第2状態量、あるいは第2左右状態量のバランスの度合いの適否の判定結果を表示器に逐次表示させることで、使用者は、左右の一方側(利き手側)の第2状態量が、他方側の第2状態量に比して,自身の体重を支えるだけ十分大きくなるように歩行動作を行うことを意識して歩行訓練を行うことが可能となる。
【0029】
上記第1~第6発明では、前記情報処理装置は、前記肘荷重及び前記手荷重の検出値の収集データから、前記使用者の歩行動作に関する所定種類の評価指標を算出する機能をさらに有し、該情報処理装置が出力する報知情報には、該所定種類の評価指標が含まれることが好ましい(第7発明)。
これによれば、スタッフや使用者は、上記所定種類の評価指標によって、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを適宜、定量的に把握することが可能となる。
【0030】
上記第7発明では、前記所定種類の評価指標は、前記使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第1状態量と、該使用者の左側における前記第1状態量と該使用者の右側における前記第1状態量との比率又は差又は絶対差である第1左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記手荷重の検出値と該使用者の体重との比率である第2状態量と、該使用者の左側における前記第2状態量と該使用者の右側における前記第2状態量との比率又は差又は絶対差である第2左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における上下方向の前記肘荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第3状態量と、該使用者の左側における前記第3状態量と該使用者の右側における前記第3状態量との比率又は差又は絶対差である第3左右状態量と、該使用者の左右のそれぞれの側における該使用者の前方方向への前記手荷重の検出値と上下方向の前記手荷重の検出値との比率である第4状態量と、該使用者の左側における前記第4状態量と該使用者の右側における前記第4状態量との比率又は差又は絶対差である第4左右状態量とのうちのいずれかの状態量である評価対象状態量の平均値を示す情報、該評価対象状態量のばらつき度合いを示す情報、及び該評価対象状態量が適正範囲から逸脱した期間の全歩行期間に対する時間比率である逸脱時間比率を示す情報のうちの1つ以上の情報を含むことが好ましい(第8発明)。この場合、前記所定種類の評価指標は、前記評価対象状態量の平均値を示す情報を含むことが特に好適である。また、例えば、使用者の歩行訓練の進捗度合い又は歩行機能の回復度合い等に応じて、報知情報として出力する評価指標の種類を変化させてもよい。
【0031】
これによれば、上記の評価対象状態量(第1状態量、第1左右状態量、第2状態量、第2左右状態量、第3状態量、第3左右状態量、第4状態量、又は第4左右状態量)は、前記したように、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いとの相関性が高い指標であるので、スタッフや使用者は、該評価対象状態量の平均値を示す情報、該評価対象状態量のばらつき度合いを示す情報(例えば該評価対象状態量の分散、又は標準偏差)、及び該評価対象状態量の逸脱時間比率を示す情報のうちの1つ以上の情報から、歩行訓練の指針を明確にし得ると共に、歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを適切に把握することが可能となる。
【0032】
上記第1~第8発明では、前記情報処理装置は、当該リハビリ用歩行車が直進状態であるか否かを判定する機能をさらに有し、当該リハビリ用歩行車が直進状態であると判定される状況での前記肘荷重及び手荷重の少なくとも一方の検出値、又は当該状況での前記肘荷重及び手荷重の少なくとも一方の検出値から算出してなる値に基づいて、出力する前記報知情報を生成するように構成されていることが好ましい(第9発明)。
【0033】
これによれば、情報処理装置は、直進状態であるか否かを判定する機能により、使用者の歩行動作時の方向転換に起因する肘荷重や手荷重の変動が生じない状況での該肘荷重や手荷重の少なくとも一方の検出値、又は当該状況での前記肘荷重及び手荷重の少なくとも一方の検出値から算出してなる値に基づいて、出力する報知情報を生成するので、歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いとの相関性が高く、しかも信頼性の高い報知情報を出力することが可能となる。
【0034】
上記第1~第9発明では、前記情報処理装置は、前記使用者の歩行動作の直進性の高低を判定し、その判定結果を示す報知情報を出力する機能をさらに備えることが好ましい(第10発明)。
これによれば、上記判定結果を示す報知情報によって、スタッフや使用者は、使用者の歩行動作が高い直進性で行われるのか、あるいは、ふらつきやすい(直進性が低い)のかを認識できる。このため、該報知情報を使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを評価するための1つの指標として活用できる。なお、直進性の高低は、例えば該直進性の高低に感応するセンサ(例えば角速度センサ)の検出値のばらつき度合い(例えば、分散、標準偏差等)に基づいて判定することが可能である。
【0035】
上記第1~第10発明では、前記情報処理装置は、前記使用者の歩数及び移動加速度の少なくとも一方を計測可能な運動計測機器との通信を介して該使用者の歩数及び移動加速度の少なくとも一方の計測データを取得する機能と、該計測データを用いて生成した報知情報を出力する機能とをさらに有するように構成され得る(第11発明)。なお、上記運動計測機器としては、例えばスマートフォン、歩数計、専用センサ等、使用者が携帯もしくは装着し得る機器を使用し得る。
【0036】
これによれば、情報処理装置は、上記運動計測機器を利用して、使用者の歩数や移動加速度の計測データを取得てきるので、リハビリ用歩行車のコスト増を抑制できる。また、これらの取得データを、出力する報知情報に反映させることができるので、報知情報の有用性を高めることが可能となる。
【0037】
また、本発明の歩行訓練用システムは、前記の目的を達成するために、
床面上を移動自在なフレームと、該フレームの上部に配置され、使用者が左右の肘を各々載せ得るようにも該フレームに搭載された一対の肘載せ部と、該肘載せ部の前方に配置され、前記使用者が左右の手で各々把持し得るように該フレームに搭載された一対のグリップとを備え、前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せた状態、又は前記使用者がその各手でグリップを把持した状態、又は前記使用者がその各肘を前記肘載せ部に載せ,かつその各手で前記グリップを把持した状態で、該使用者の歩行動作に伴い、該使用者と共に移動し得るように構成されたリハビリ用歩行車を使用する歩行訓練用システムであって、
前記使用者の各肘を載せた前記肘載せ部のそれぞれに該肘から作用する荷重である肘荷重を検出し得るように前記リハビリ用歩行車に搭載された第1荷重センサと、
前記使用者の各手で把持された前記グリップのそれぞれに該手から作用する荷重である手荷重を検出し得るように前記リハビリ用歩行車に搭載された第2荷重センサと、
前記肘荷重及び前記手荷重の検出値に関する報知情報を出力する情報処理装置とを備えることを特徴とする(第12発明)。
【0038】
これによれば、前記第1発明と同様に、使用者の歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを定量的に判断しやすい有用な情報を使用者やスタッフが適切に得ることが可能となる。かかる歩行訓練用システムは、例えば、トレッドミル型のウォーキングマシンに等に組み込み得る。なお、第12発明では、前記第2~第11発明と同様の態様を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施形態のリハビリ用歩行車の全体の斜視図。
図2】実施形態のリハビリ用歩行車の前部の斜視図。
図3】実施形態のリハビリ用歩行車の情報処理に関する構成を示すブロック図。
図4】歩行訓練の実行中に表示器に表示される報知情報の一例を示す図。
図5】歩行訓練の終了後に表示器に表示される報知情報の第1例を示す図。
図6】歩行訓練の終了後に表示器に表示される報知情報の第2例を示す図。
図7】歩行訓練の終了後に表示器に表示される報知情報の第3例を示す図
図8】歩行訓練の終了後に表示器に表示される報知情報の第4例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の一実施形態を、以下に図1図8を参照して説明する。図1及び図2を参照して、本実施形態のリハビリ用歩行車1(以降、単に歩行車1という)は、床面上を移動自在なフレーム2と、フレーム2の上部に配置され、使用者Pが左右の肘を各々載せ得るようにフレーム2に搭載された一対の肘載せ部3L,3Rと、肘載せ部3L,3Rの前方に配置され、使用者Pが左右の手で各々把持し得るようにフレーム2に搭載された一対の第1グリップ4L,4R及び一対の第2グリップ5L,5Rとを備える。
【0041】
なお、本実施形態の歩行車1は、歩行訓練用システムとしての機能を併せ持つ。また、本実施形態の歩行車1では、第1グリップ4L,4Rが、本発明におけるグリップとして機能するものであり、第2グリップ5L,5Rは、歩行車1を停止させるブレーキ操作を行うための付加的なグリップである。また、本実施形態の歩行車1では、フレーム2の前後方向及び左右方向(又は歩行車1の前後方向及び左右方向)は、図1及び図2に示す方向である。以降の説明では、特に言及しない限り、「前後方向」及び「左右方向」は、図1及び図2に示す方向を意味する。また、本実施形態の説明では、「L」を付加した参照符号は、歩行車1の左側の部材を示す参照符号、「R」を付加した参照符号は、歩行車1の右側の部材を示す参照符号である。ただし、左右を区別する必要が無いときは、「L」、「R」の付加を省略することがある。
【0042】
フレーム2は、上下に間隔を存して配置された上部フレーム21及び下部フレーム22と、上部フレーム21及び下部フレーム22を連結する縦フレーム23L,23Rと、下部フレーム22に組付けられた4つの車輪24とを備える。
【0043】
上部フレーム21及び下部フレーム22は、いずれも、上方から見て概略U字型に形成されたフレームであり、それぞれの開放側端部を後方に向けるように配置されている。
【0044】
縦フレーム23L,23Rは、上部フレーム21及び下部フレーム22の左側と右側とに各々上下方向に延在して配置されている。そして、縦フレーム23L,23Rのそれぞれの上端部が、上部フレーム21の左側部と右側部とに各々固定され、それぞれの下端部が、下部フレーム22の左側部と右側部とに各々固定されている。これにより、上部フレーム21と下部フレーム22とが左右の縦フレーム23L,23Rを介して連結されている。
【0045】
4つの車輪24は、下部フレーム22の左右それぞれの側部の前部と後部とに各々配置され、下部フレーム22の下側で床面に接地して、該床面上を転動し得ると共に、ヨー方向(上下方向の軸周り方向)に転回し得るように下部フレーム22に組付けられている。これらの各車輪24は、例えば自在キャスター等により構成され得る。
【0046】
本実施形態では、フレーム2は、上記の如く構成されているので、床面に接地された車輪24が転動し、さらに、適宜、転回することによって、床面上を任意の方向に移動可能である。
【0047】
肘載せ部3L,3Rは、それぞれ、前後方向に長尺な形状に形成されていると共に、その上面がクッション性を有する平坦面状に形成されている。そして、肘載せ部3L,3Rのそれぞれは、上部フレーム21の左右の各側部の上側で各側部に各々装着されている。この場合、各肘載せ部3は、フレーム2に対する前後方向の位置あるいは左右方向の位置を調整し得るように、上部フレーム21の左右の各側部に装着されていてもよい。
【0048】
第1グリップ4L,4Rのそれぞれは、左右の肘載せ部3L,3Rのそれぞれの前方にて、左右方向に延在するように配置されている。そして、第1グリップ4L,4Rは、図2に示すように、上部フレーム21の前部(左右の両側部を連結する部分)の上面から前方に張り出すように延設された平板状の第1基台41に、取付部材42と、一対のプレート部材43L,43Rとを介して取り付けられている。
【0049】
具体的には、取付部材42は、第1基台41の上面のうち左右方向の中央箇所に、左右方向に延在するように配置され、該第1基台41に固定されている。また、プレート部材43L,43Rは、取付部材42の左寄りの箇所と右寄りの箇所とから、それぞれの法線方向を前後方向に向けた姿勢で上方に向かって起立するように、該取付部材42に取り付けられている。なお、図2では、各プレート部材43に複数の穴が穿設されているが、これらの穴は無くてもよい。
【0050】
そして、左側の第1グリップ4Lは、左側のプレート部材43Lの上部の左端部から左向きに延在するように該プレート部材43Lに装着され、右側の第1グリップ4Rは、右側のプレート部材43Rの上部の右端部から右向きに延在するように該プレート部材43Rに装着されている。この場合、第1グリップ4L,4Rは、例えばプレート部材43L,43Rのそれぞれから突設された図示しない芯材を第1グリップ4L,4Rのそれぞれに挿入することで、プレート部材43L,43Rに各々装着される。
【0051】
第2グリップ5L,5Rのそれぞれは、第1グリップ4L,4Rのそれぞれの前側で、上下方向に延在するように配置されている。そして、第2グリップ5L,5Rは、図2に示すように、それぞれの下端部が、上部フレーム21の前部の左寄りの部分と右寄りの部分とのそれぞれに、取付部材51L,51Rのそれぞれを介して取り付けられている。
また、第2グリップ5L,5Rには、車輪24のうちの左右の後輪(下部フレーム22の後部側の車輪24)にワイヤー53L,53Rを介して制動力を作用させるためのブレーキレバー52L,52Rが各々付設されている。
【0052】
本実施形態の歩行車1の機構的構成は以上の如く構成されている。このように構成された歩行車1では、使用者Pは、図1に示すように、上部フレーム21及び下部フレーム22の左右の両側部の間に起立した状態で、左右の肘をそれぞれ肘載せ部3L,3Rに載せたり、左右の手で第1グリップ4L,4Rのそれぞれ(又は第2グリップ5L,5Rのそれぞれ)のそれぞれを把持することが可能である。そして、使用者Pが、第1グリップ4L,4Rのそれぞれ(又は第2グリップ5L,5Rのそれぞれ)を把持した状態で歩行動作を行うことで、歩行車1が使用者Pと共に床面上を移動する。
【0053】
本実施形態の歩行車1には、さらに、図3に示すように、表示器61を含む情報処理装置6と、複数のセンサとが搭載されている。複数のセンサには、車輪24のうちのいずれかの車輪24の回転数(回転速度)を検出するための車輪回転数センサ10と、使用者Pの左右の肘を各々載せる左右の肘載せ部3L,3Rのそれぞれに使用者Pの左右の肘のそれぞれから作用する荷重(肘荷重)を検出するための第1荷重センサ11L,11R(以降、肘荷重センサ11L,11Rという)と、使用者Pの左右の手で各々把持される左右の第1グリップ4L,4Rのそれぞれに使用者Pの左右の手のそれぞれから作用する荷重(手荷重)を検出するための第2荷重センサ12L,12R(以降、手荷重センサ12L,12Rという)と、歩行車1のヨー方向の角速度(ヨーレート)を検出するための角速度センサ13とが含まれる。
【0054】
車輪回転数センサ10と、例えばフォトリフレクタ、ロータリエンコーダ等により構成され、詳細な図示は省略するが、いずれかの車輪24の所定の回転角度毎にパルス信号を出力し得るように該車輪24に組付けられている。なお、車輪回転数センサ10は、1つの車輪24に限らず、複数の車輪24に組付けられていてもよい。
【0055】
各肘荷重センサ11は、例えば、ロードセル等の力センサにより構成され、図1に示す如く、各肘載せ部3に作用する肘荷重が伝達されるように、各肘載せ部3と上部フレーム21の側部との間に介装されている。この場合、本実施形態では、各肘荷重センサ11は、各肘載せ部3に作用する肘荷重のうち、上下方向の肘荷重を検出し得るように構成されている。なお、各肘荷重センサ11は、上下方向の肘荷重だけでなく、他の方向の肘荷重をも検出し得るように構成されていてもよい。
【0056】
各手荷重センサ12は、例えば、ロードセル等の力センサにより構成され、図2に示す如く、各第1グリップ4に作用する手荷重が各プレート部材43を介して伝達されるように、取付部材42に組付けられている。この場合、本実施形態では、各手荷重センサ12は、各第1グリップ4に作用する手荷重のうち、上下方向の手荷重と前方方向への手荷重とを検出し得るように構成されている。なお、各手荷重センサ12は、2軸方向の手荷重を検出し得る一体型のセンサでもよいが、上下方向の手荷重と前方方向への手荷重とを各別のセンサで検出し得るように構成されたものであってもよい。また、各手荷重センサ12は、上下方向の手荷重及び前方方向への手荷重だけでなく、他の方向の手荷重をも検出し得るように構成されていてもよい。
【0057】
角速度センサ13は、ジャイロセンサ等により構成され、歩行車1のヨー方向(上下方向の軸周り方向)の角速度を検出し得るように、フレーム21の左右方向の中央位置に組付けられている。例えば、図2に例示する如く、前記取付け部材42に角速度センサ13が組付けられ得る。
【0058】
情報処理装置6は、本実施形態では、表示器61を有する本体処理部60と、補助処理部65とを備える。補助処理部65は、主に、計測データの取得処理等を行う機能を有する処理部であり、例えば、図示しないマイコン等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、通信回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。そして、補助処理部65は、歩行車1の任意の適所に搭載されている。例えば、図1に示す如く、フレーム2の縦フレーム23L(又は23R)に補助処理部65が搭載され得る。
【0059】
この補助処理部65には、前記車輪回転数センサ10、肘荷重センサ11L,11R、手荷重センサ12L,12R及び角速度センサ13のそれぞれの検出信号が入力される。そして、補助処理部65は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア)により実現される機能として、車輪回転数センサ10の検出信号から歩行車1の移動速度や移動距離を計測する移動計測部65aと、肘荷重センサ11L,11Rのそれぞれの検出信号から左右それぞれの肘荷重(上下方向の肘荷重)を計測する肘荷重計測部65bと、手荷重センサ12L,12Rのそれぞれの検出信号から左右それぞれの手荷重(上下方向の手荷重及び前方方向への手荷重)を計測する手荷重計測部65cと、角速度センサ13の検出信号から歩行車1が直進状態であるか否かを判定する直進判定部65dと,本体処理部60と有線又は無線による通信を行う通信処理部65eとを有する。
【0060】
ここで、移動計測部65aは、使用者Pの歩行動作中に車輪回転数センサ10から出力されるパルス数(累積パルス数)と、1パルス毎の車輪24の移動距離(既定値)とから、歩行車1の移動距離を算出することができる。さらに、移動計測部65aは、その移動距離を、車輪回転数センサ10から出力されるパルスの累積時間で割ることにより、歩行車1の移動速度を算出することができる。
【0061】
また、直進判定部65dは、例えば、角速度センサ13の検出信号により示されるヨー方向の角速度(ヨーレート)の検出値の絶対値が所定の閾値以下である場合に、歩行車1が直進状態である(換言すれば、使用者Pは直進歩行を行っている)と判定し、ヨー方向の角速度(ヨーレート)の検出値の絶対値が所定の閾値を越えている場合には、歩行車1が直進状態でないと判定する。
【0062】
さらに、本実施形態では、補助処理部65は、使用者Pが適宜、携帯もしくは装着するスマートフォン、スマートウォッチ、歩数計、専用センサ等、使用者の歩数や移動加速度を計測する機能を有する運動計測機器80と、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、赤外線通信等の無線通信方式で通信を行う機能も有する。そして、補助処理部65は、運動計測機器80との通信を通じて、使用者Pの歩数や移動加速度の計測データを適宜、運動計測機器80から取得することが可能である。なお、図3では、運動計測機器80として、例えばスマートフォンを例示している。
【0063】
本体処理部60は、本実施形態では、例えば、液晶ディスプレイ等により構成される表示器61と、スピーカ等により構成される発音器62とを有するタブレット端末、あるいは、モバイルパソコン等により構成される。そして、歩行車1は、本体処理部60を着脱自在に装着可能な端末搭載部63を備えている。
【0064】
具体的には、図1及び図2を参照して、歩行車1は、上部フレーム21の下面から、前記第1基台41の前側まで前方に張り出すように延設された平板状の第2基台64を備えており、この第2基台64の上面の前部(第1基台41の前端よりも前方に張り出した部分)に、端末搭載部63が取り付けられている。
【0065】
この場合、端末搭載部63は、本体処理部60の表示器61が、使用者Pの頭部に向くようにして、本体処理部60を起立姿勢で装着し得るように構成されていると共に、本体処理部60の傾斜角度を調整するための操作部63aが備えられている。なお、図1は、端末搭載部63に本体処理部60を装着した状態を示しており、図2は、端末搭載部63から本体処理部60を取り外した状態を示している。本体処理部60を端末搭載部63に装着した状態では、歩行車1を使用して歩行動作を行う使用者Pが、本体処理部60の表示器61の画面を随時、視認することが可能である
【0066】
上記のように構成された端末搭載部63に装着される本体処理部60は、図示しないマイコン等のプロセッサ、メモリ(RAM、ROM等)、インターフェース回路、通信回路等を含む電子回路ユニットを内蔵していると共に、所要の歩行訓練用アプリケーション(プログラム)があらかじめインストールされている。そして、本体処理部60は、実装されたハードウェア構成と歩行訓練用アプリケーションとにより実現される機能として、歩行訓練に関する様々な報知情報を生成する報知情報生成部60aと、該報知情報を表示器61あるいは発音器62を介して出力させる報知情報出力部と60bと、補助処理部65と有線又は無線による通信を行う通信処理部60cとを有する。
【0067】
補足すると、本体処理部60は、表示器61及び発音器62に一方又は両方を備えない電子回路ユニットにより構成されていてもよい。そして、本体処理部60と別体の表示器又は発音器が歩行車1に着脱自在に装着され、あるいは、あらかじめ搭載されていてもよい。
【0068】
次に、使用者Pの歩行訓練に係る歩行車1の作動を説明する。本実施形態では、歩行訓練を行おうとする使用者Pは、スタッフの指示に従って、歩行車1を使用した歩行訓練を行う。この場合、歩行車1を使用した歩行訓練は、例えば第1~第3の3つのフェーズ(段階)に分類される。第1のフェーズは、使用者Pが左右の肘を肘載せ部3L,3Rに載せて、自身の上体を、主に左右の肘で支えながら歩行動作を行うフェーズ、第2のフェーズは、使用者Pが左右の手で第1グリップ4L,4Rを把持し、自身の上体を、主に左右の手で支えながら歩行動作を行うフェーズ、第3のフェーズは、使用者Pが、少なくとも左右の一方の片手(利き手)で第1グリップ4L又は4Rを把持し、自身の上体を、主に当該一方の片手で支えながら歩行動作を行うフェーズである。
【0069】
第1フェーズの歩行訓練は、使用者Pの脚力を極力回復する(使用者Pがその体重の多くを脚で支えられるようにする)ことを主目的とする歩行訓練である。このため、第1フェーズの歩行訓練では、使用者Pは、左右の肘荷重(上下方向の肘荷重)を極力小さくすることを目標として歩行動作を行うようにスタッフから指示される。また、情報処理装置6の本体処理部60は、スタッフの操作等によって、第1フェーズ用の動作モードでの処理を実行するように設定される。
【0070】
この第1フェーズの歩行訓練では、歩行車1を使用した使用者Pの歩行動作中に、本体処理部60は、第1フェーズ用の表示対象報知情報を逐次更新しながら表示器61に表示させる。具体的には、本体処理部60は、補助処理部65の肘荷重計測部65bから、使用者Pの左右の各肘に関する上下方向の肘荷重の検出値を逐次取得する。
【0071】
そして、本体処理部60は、左右の各肘荷重(上下方向の肘荷重)の検出値と、本体処理部60にあらかじめ入力された使用者Pの体重との比率である第1状態量(=上下方向の肘荷重/体重)を表示対象報知情報として逐次算出することを報知情報生成部60aにより実行する。さらに、本体処理部60は、使用者Pの左右それぞれの第1状態量の算出値を示す表示対象報知情報を、リアルタイムで逐次表示器61に表示させることを報知情報出力部60bで実行する。
【0072】
この場合、本体処理部60の報知情報出力部60bは、第1状態量の算出値を示す表示対象報知情報に加えて、該第1状態量の適正範囲を示す報知情報も、表示対象報知情報として表示器61に表示させる。該第1状態量の適正範囲は、例えば、所定の上限値以下の範囲である。
【0073】
これらの表示対象報知情報は、数値情報として表示器61に表示させてもよいが、例えば、図4に例示する如く、グラフ状の形態で表示器61に表示させてもよい。図4に示す例では、左側の肘荷重に関する第1状態量の算出値(現在値)を示す棒グラフ(図4では左側の実線の棒グラフ)と、右側の肘荷重に関する第1状態量の算出値(現在値)を示す棒グラフ(図4では右側の実線の棒グラフ)とが表示器61に並列して表示されると共に、第1状態量の適正範囲の上限値を表すライン(図4では破線のライン)が表示器61に表示される。なお、図4に示す例では、左右それぞれの第1状態量の前回値(前回の歩行訓練での平均値)を示す棒グラフ(図4では二点鎖線の棒グラフ)も表示されている。
【0074】
このように、左右それぞれの肘荷重に関する第1状態量の算出値を示す表示対象報知情報が、リアルタイムで逐次表示器61に表示されることで、使用者Pは、その表示対象報知情報によって、自身の歩行動作の仕方で左右の第1状態量がどのように変化するのかを、歩行動作を行いながらリアルタイムで定量的に認識できる。このため、使用者Pは、左右の第1状態量が極力小さくなるように(左右の肘荷重が極力小さくなるように)、歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0075】
また、第1状態量の適正範囲の上限値を示す報知情報も表示対象報知情報として表示器61に表示されるので、使用者Pは、自身の歩行動作による左右の第1状態量の算出値と、適正範囲の上限値との大小関係を、歩行動作を行いながらリアルタイムで定量的に認識できる。このため、使用者Pは、左右の第1状態量が上限値を越えないように(左右の肘荷重が大きくなり過ぎないように)、意識して歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0076】
ここで、左右いずれかの第1状態量の算出値が、適正範囲を逸脱した場合(上限値を超えた場合)には、本体処理部60は、その旨を示す警報情報である第1状態量逸脱警報情報を、使用者Pに対して出力するようにしてもよい。この場合、この第1状態量逸脱警報情報の出力形態としては、例えば、表示器61で表示させる表示対象報知情報のうち、適正範囲を逸脱した第1状態量の算出値を示す報知情報の表示色を変化させる、あるいは、該報知情報を点滅させる、あるいは、肘荷重逸脱警報情報を示す文字情報もしくは記号情報等を表示器61に付加的に表示させる等、使用者Pが視覚的に第1状態量逸脱警報情報に気付きやすい任意の出力形態を採用し得る。
【0077】
あるいは、表示器61による視覚的な出力形態に加えて、もしくはその代わりに、本体処理部60の発音器62から、音声や警報音等により(聴覚的な出力形態で)、第1状態量逸脱警報情報を出力してもよい。あるいは、肘載せ部3L,3R、あるいは、第1グリップ4L,4R等、歩行車1の所定の部位を振動させることで(触覚的な出力形態で)、第1状態量逸脱警報情報を出力してもよい。このように第1状態量逸脱警報情報を使用者Pに対して出力することで、使用者Pは、左右いずれかの第1状態量の算出値が適正範囲を逸脱したことを容易且つ確実に認識できる。
【0078】
さらに、第1フェーズの歩行訓練では、左右の肘荷重(上下方向の肘荷重)ができるだけ小さくなるだけでなく、左側の肘荷重と右側の肘荷重とのバランスがとれている(左右のそれぞれの肘荷重が互いに同程度の大きさになる)ことが望ましい。
【0079】
そこで、本実施形態では、本体処理部60は、左側の第1状態量と右側の第1状態量との比率である第1左右状態量(=左側の肘荷重と右側の肘荷重との比率)を、左右の肘荷重のバランス度合いを示す指標としてさらに算出し、この第1左右状態量の算出値が、「1」近辺の所定の適正範囲(「1」より若干小さい下限値と、「1」より若干大きい上限値との間の範囲)を逸脱した場合に、その旨を示す警報情報である肘荷重左右バランス警報情報を、使用者Pに対して出力する。
【0080】
なお、左側の第1状態量と右側の第1状態量との差又は絶対差(差の絶対値)を第1左右状態量として算出し、この第1左右状態量が所定の適正範囲を逸脱した場合に、肘荷重左右バランス警報情報を、出力してもよい。この場合、第1左右状態量として、左側の第1状態量と右側の第1状態量との差を採用した場合には、その適正範囲としては、例えば「0」よりも若干小さい下限値と「0」よりも若干大きい上限値との間の範囲を採用し得る。また、第1左右状態量として、左側の第1状態量と右側の第1状態量との絶対差を採用した場合には、その適正範囲としては、例えば「0」よりも若干大きい上限値以下の範囲を採用し得る。このように、第1左右状態量として、左右の第1状態量の比率、差、又は絶対差のいずれか採用するかによって、該第1状態量の適正範囲を上記の如く設定し得る。このことは、後述の第2左右状態量、第3左右状態量、第4左右状態量についても同様である。
【0081】
上記肘荷重左右バランス警報情報の出力形態としては、例えば、表示器61で表示させる報知情報のうち、左側の第1状態量の算出値を示す報知情報と右側の第1状態量の算出値を示す報知情報との両方の表示色を変化させる、あるいは、該両方の報知情報を点滅させる、あるいは、肘荷重左右バランス警報情報を示す文字情報もしくは記号情報等を表示器61に付加的に表示させる等、使用者Pが視覚的に肘荷重左右バランス警報情報に気付きやすい任意の出力形態を採用し得る。
【0082】
あるいは、表示器61での視覚的な出力形態に加えて、もしくはその代わりに、本体処理部60の発音器62から、音声や警報音等により(聴覚的な出力形態で)、肘荷重左右バランス警報情報を出力してもよい。あるいは、肘載せ部3L,3R、あるいは、第1グリップ4L,4R等、歩行車1の所定の部位を振動させることで(触覚的な出力形態で)、肘荷重左右バランス警報情報を出力してもよい。このように肘荷重左右バランス警報情報を使用者Pに対して出力することで、使用者Pは、左右の肘荷重のバランス度合いが低いことを容易且つ確実に認識できる。そのため、使用者Pは、左右の肘荷重のバランスをとるように、意識して歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0083】
補足すると、第1フェーズの歩行訓練では、第1状態量の算出値を示す報知情報や、第1状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させることに加えて、さらに、前記第1左右状態量の算出値を示す報知情報(換言すれば、左右の肘荷重のバランス度合いを示す報知情報)や、該第1左右状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させるようにしてもよい。
【0084】
また、第1状態量の算出値を示す報知情報や、第1状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させる代わりに、左右の肘荷重の検出値を示す報知情報や、該肘荷重の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させてもよい。
【0085】
次に、第2フェーズの歩行訓練は、使用者Pが、シルバーカーの如き歩行補助車を使用して、自身の上体を肘で支えずとも、両手で支えながら歩行動作を行うことができるようにすることを主目的とする歩行訓練である。このため、第2フェーズの歩行訓練では、使用者Pは、左右の手荷重のうちの上下方向の手荷重を極力大きくすることを目標として歩行動作を行うようにスタッフから指示される。また、情報処理装置6の本体処理部60は、スタッフの操作等によって、第2フェーズ用の動作モードでの処理を実行するように設定される。
【0086】
この第2フェーズの歩行訓練では、歩行車1を使用した使用者Pの歩行動作中に、本体処理部60は、第2フェーズ用の表示対象報知情報を逐次更新しながら表示器61に表示させる。具体的には、本体処理部60は、補助処理部65の肘荷重計測部65bと手荷重計測部65cとから、使用者Pの左右の各肘に関する上下方向の肘荷重の検出値と、左右の各手に関する上下方向の手荷重の検出値とを逐次取得する。
【0087】
そして、本体処理部60は、左右の各手荷重(上下方向の手荷重)の検出値と、本体処理部60にあらかじめ入力された使用者Pの体重との比率である第2状態量(=上下方向の手荷重/体重)を表示対象報知情報として逐次算出すると共に、左右それぞれの、上下方向の肘荷重の検出値と上下方向の手荷重の検出値との比率である第3状態量(=上下方向の肘荷重/上下方向の手荷重)を表示対象報知情報として逐次算出することを報知情報生成部60aにより実行する。さらに、本体処理部60は、使用者Pの左右それぞれの第2状態量の算出値を示す表示対象報知情報と第3状態量の算出値を示す表示対象報知情報とを、リアルタイムで逐次表示器61に表示させることを報知情報出力部60bで実行する。
【0088】
この場合、本体処理部60の報知情報出力部60bは、第2状態量及び第3状態量のそれぞれの算出値を示す表示対象報知情報に加えて、該第2状態量及び第3状態量のそれぞれの適正範囲を示す報知情報も、表示対象報知情報として表示器61に表示させる。該第2状態量の適正範囲は、例えば、所定の下限値以上の範囲であり、該第3状態量の適正範囲は、例えば、所定の上限値以下の範囲である。
【0089】
これらの表示対象報知情報は、例えば、前記した第1フェーズ用の表示対象報知情報と同様の表示形態で、表示器61に逐次表示され得る。第2フェーズの歩行訓練では、上記のように、左右それぞれの手荷重に関する第2状態量の算出値と第3状態量の算出値とを示す表示対象報知情報が、リアルタイムで逐次、表示器61に表示されることで、使用者Pは、その表示対象報知情報によって、自身の歩行動作の仕方で左右の第2状態量や第3状態量がどのように変化するのかを、歩行動作を行いながらリアルタイムで定量的に認識できる。このため、使用者Pは、左右の第2状態量が極力大きくなるように(左右の手荷重(上下方向の手荷重)が極力大きくなるように)、歩行動作を調整することや、左右の第3状態量が極力小さくなるように(上下方向の肘荷重が上下方向の手荷重に比して極力小さくなるように)、意識して歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0090】
また、第2状態量の適正範囲の下限値を示す報知情報や、第3状態量の適正範囲の上限値を示す表示情報も表示対象報知情報として表示器61に表示されるので、使用者Pは、自身の歩行動作による左右の第2状態量の算出値と、適正範囲の下限値との大小関係や、左右の第3状態量の算出値と、適正範囲の上限値との大小関係を、歩行動作を行いながらリアルタイムで定量的に認識できる。このため、使用者Pは、第2状態量が下限値よりも小さくならないように(上下方向の手荷重が小さくなり過ぎないように)、歩行動作を調整することや、第3状態量が上限値を越えないように(上下方向の肘荷重が上下方向の手荷重に比して大きくなり過ぎないように)、意識して歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0091】
ここで、左右いずれかの第2状態量の算出値が、適正範囲を逸脱した場合(下限値を下回った場合)には、本体処理部60は、その旨を示す警報情報である第2状態量逸脱警報情報を、使用者Pに対して出力するようにしてもよい。同様に、左右いずれかの第3状態量の算出値が、適正範囲を逸脱した場合(上限値を超えた場合)には、本体処理部60は、その旨を示す警報情報である第3状態量逸脱警報情報を、使用者Pに対して出力するようにしてもよい。これら警報情報の出力形態としては、例えば前記した第1状態量逸脱警報情報の出力形態と同様の出力形態を採用し得る。
【0092】
さらに、第2フェーズの歩行訓練では、左右の手荷重(上下方向の手荷重)ができるだけ大きくなるだけでなく、左側の手荷重と右側の手荷重とのバランスがとれている(左右のそれぞれの上下方向の手荷重が互いに同程度の大きさになる)ことが望ましい。
【0093】
そこで、本実施形態では、本体処理部60は、左側の第2状態量と右側の第2状態量との比率又は差又は絶対差である第2左右状態量を、左右の手荷重(上下方向の手荷重)のバランス度合いを示す指標としてさらに算出し、この第2左右状態量の算出値が、所定の適正範囲を逸脱した場合に、その旨を示す警報情報である手荷重左右バランス警報情報を、使用者Pに対して出力する。この手荷重左右バランス警報情報の出力形態としては、例えば、前記した肘荷重左右バランス警報情報と同様の出力形態を採用し得る。
【0094】
このように上下方向の手荷重に関する手荷重左右バランス警報情報を使用者Pに対して出力することで、使用者Pは、左右の手荷重(上下方向の手荷重)のバンランスの度合いが低いことを容易且つ確実に認識できる。そのため、使用者Pは、左右の手荷重のバランスをとるように、意識して歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0095】
補足すると、第2フェーズの歩行訓練では、第2状態量及び第3状態量のそれぞれの算出値を示す報知情報や、第2状態量及び第3状態量のそれぞれの適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させることに加えて、さらに、例えば、前記第2左右状態量の算出値を示す報知情報(換言すれば、左右の手荷重(上下方向の手荷重)のバランス度合いを示す報知情報)や、該第2左右状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させるようにしてもよい。
【0096】
また、例えば、左側の第3状態量と右側の第3状態量との比率又は差又は絶対差である第3左右状態量をさらに算出し、この第3左右状態量の算出値を示す報知情報(換言すれば、左右の第3状態量のバランス度合いを示す報知情報)や、該第3左右状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させたり、該第3左右状態量が適正範囲を逸脱した場合に、その旨を示す警報情報(第3状態量左右バランス警報情報)を使用者Pに対して出力してもよい。
【0097】
また、第2状態量の算出値を示す報知情報や、第2状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させる代わりに、左右の手荷重(上下方向の手荷重)の検出値を示す報知情報や、該手荷重の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させてもよい。
【0098】
また、第2状態量及び第3状態量のそれぞれの算出値を示す報知情報のうち、いずれか一方の報知情報を表示器61に表示させることを適宜、省略してもよい。例えば、第2フェーズの歩行訓練の初期段階では、左右のそれぞれの第3状態量(上下方向の肘荷重/上下方向の手荷重)を極力小さくすることを目標として、第3状態量の算出値を示す報知情報と、該第3状態量の適正範囲を示す報知情報と表示器61に表示させる一方、第2状態量の算出値を示す報知情報を表示器61に表示させることを省略してもよい。
【0099】
そして、左右の肘荷重が十分に小さくなり、ひいては、第3状態量の算出値が十分に小さくなった段階では、左右のそれぞれの第2状態量(上下方向の手荷重/体重)を極力大きくすることを目標として、第2状態量の算出値を示す報知情報と、該第2状態量の適正範囲を示す報知情報と表示器61に表示させる一方、第3状態量の算出値を示す報知情報を表示器61に表示させることを省略してもよい。
【0100】
次に、第3フェーズの歩行訓練は、使用者Pが、片手で杖を突きながら、歩行動作を行うことができるようにすることを主目的とする歩行訓練である。この場合、杖を突きながらの歩行動作では、使用者Pの上体を杖を握る片手(利き手)で支えるために、該利き手の上下方向の手荷重を極力大きくできることが望ましい。さらに、杖を突きながらの歩行動作では、杖を握る利き手の前方方向への手荷重を上下方向の手荷重に比して極力大きくできることが望ましい。
【0101】
このため、第3フェーズの歩行訓練では、使用者Pは、左右の手のうちの利き手の上下方向の手荷重を極力大きくすることを目標として歩行動作を行うようにスタッフから指示される。あるいは、使用者Pは、利き手の上下方向の手荷重に対する前方方向への手荷重を極力大きくすることを目標として歩行動作を行うようにスタッフから指示される。また、情報処理装置6の本体処理部60は、スタッフの操作等によって、第3フェーズ用の動作モードでの処理を実行するように設定される。
【0102】
この第3フェーズの歩行訓練では、歩行車1を使用した使用者Pの歩行動作中に、本体処理部60は、第3フェーズ用の表示対象報知情報を逐次更新しながら表示器61に表示させる。具体的には、本体処理部60は、補助処理部65の手荷重計測部65cから、使用者Pの左右の手に関する上下方向の手荷重の検出値と前方方向への手荷重の検出値とを逐次取得する。
【0103】
そして、本体処理部60は、第2フェーズの歩行訓練に関して前記した左右の第2状態量(=上下方向の手荷重/体重)及び第2左右状態量(例えば左側の第2比率と右側の第2比率との比率)を表示対象報知情報として逐次算出すると共に、左右それぞれの前方方向への手荷重の検出値と上下方向の手荷重の検出値との比率である第4状態量(=前方方向への手荷重/上下方向の手荷重)を表示対象報知情報として逐次算出することを報知情報生成部60aにより実行する。さらに、本体処理部60は、使用者Pの左右それぞれの第2状態量の算出値を示す表示対象報知情報と、第2左右状態量の算出値を示す表示対象報知情報と、第4状態量の算出値を示す表示対象報知情報とを、リアルタイムで逐次、表示器61に表示させることを報知情報出力部60bで実行する。
【0104】
この場合、本体処理部60の報知情報出力部60bは、第2状態量、第2左右状態量、及び第4状態量のそれぞれの算出値を示す表示対象報知情報に加えて、該第2状態量、第2左右状態量、及び第4状態量のそれぞれの適正範囲を示す報知情報も、表示対象報知情報として表示器61に表示させる。
【0105】
該第2状態量の適正範囲は、左右の第2状態量のうち、使用者Pの利き手と同じ側の第2状態量に対する適正範囲であり、例えば、所定の下限値以上の範囲である。また、第4状態量の適正範囲は、左右の第4状態量のうち、使用者Pの利き手と同じ側の第4状態量に対する適正範囲であり、例えば、所定の下限値以上の範囲である。
【0106】
また、第2左右状態量は、例えば、使用者Pの利き手の上下方向の手荷重を、他方の手の上下方向の手荷重で除算してなる比率(=利き手側の第2状態量/他方側の第2状態量)として定義され得る。そして、第3フェーズの歩行訓練は、使用者Pの利き手で上体を支えることができるようにすることを1つの目標とする。このため、上記の如く第2左右状態量を定義した場合、その適正範囲は、所定の下限値以上の範囲として設定される。なお、第2左右状態量は、左右の第2状態量の差又は絶対差として定義されてもよい。
【0107】
第3フェーズ用の上記の表示対象報知情報は、例えば、前記した第1フェーズ用の表示対象報知情報と同様の表示形態で、表示器61に逐次表示され得る。第3フェーズの歩行訓練では、上記のように、左右それぞれの手荷重に関する第2状態量の算出値と第2左右状態量と第4状態量の算出値とを示す表示対象報知情報が、リアルタイムで逐次、表示器61に表示されることで、使用者Pは、その表示対象報知情報によって、自身の歩行動作の仕方で左右の第2状態量や第2左右状態量、第4状態量がどのように変化するのかを、歩行動作を行いながらリアルタイムで定量的に認識できる。
【0108】
このため、使用者Pは、利き手と同じ側の第2状態量が極力大きくなるように(利き手の上下方向の手荷重が極力大きくなるように)、意識して歩行動作を調整すること、あるいは、第2左右状態量が極力大きくなるように(利き手の上下方向の手荷重が他方側の手の上下方向の手荷重に比して極力大きくなるように)、意識して歩行動作を調整すること、あるいは、利き手側の第4状態量が極力大きくなるように、意識して歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0109】
また、利き手側の第2状態量の適正範囲の下限値を示す報知情報や、第2左右状態量の下限値を示す表示情報、利き手側の第4状態量の下限値を示す報知情報も表示対象報知情報として表示器61に表示されるので、使用者Pは、自身の歩行動作による利き手側の第2状態量の算出値と、適正範囲の下限値との大小関係や、第2左右状態量の算出値と、適正範囲の下限値との大小関係、利き手側の第4状態量の算出値と、適正範囲の下限値との大小関係を、歩行動作を行いながらリアルタイムで定量的に認識できる。
【0110】
このため、使用者Pは、利き手側の第2状態量が下限値よりも小さくならないように(利き手側の上下方向の手荷重が小さくなり過ぎないように)、意識して歩行動作を調整すること、あるいは、第2左右状態量が下限値よりも小さくならないように(利き手側の上下方向の手荷重が、他方側の上下方向の手荷重に比して小さくなり過ぎないように)、意識し歩行動作を調整すること、あるいは、利き手側の第4状態量が下限値よりも小さくならないように(利き手側の前方方向への手荷重が、上下方向の手荷重に比して小さくなり過ぎないように)、意識し歩行動作を調整することを行いやすくなる。
【0111】
ここで、使用者Pの利き手側の第2状態量の算出値が、適正範囲を逸脱した場合(下限値を下回った場合)には、本体処理部60は、その旨を示す警報情報である第2状態量逸脱警報情報を、使用者Pに対して出力するようにしてもよい。同様に、第2左右状態量の算出値が適正範囲を逸脱した場合には、本体処理部60は、その旨を示す警報情報である第2左右状態量逸脱警報情報を、使用者Pに対して出力するようにしてもよい。同様に、使用者Pの利き手側の第4状態量の算出値が、適正範囲を逸脱した場合(下限値を下回った場合)には、本体処理部60は、その旨を示す警報情報である第4状態量逸脱警報情報を、使用者Pに対して出力するようにしてもよい。これらの警報情報の出力形態としては、例えば前記した第1状態量逸脱警報情報の出力形態と同様の出力形態を採用し得る。
【0112】
補足すると、第3フェーズの歩行訓練では、第2状態量、第2左右状態量、及び第4状態量のそれぞれの算出値を示す報知情報や、第2状態量、第2左右状態量、及び第4状態量のそれぞれの適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させることに加えて、さらに、例えば、左側の第4状態量と右側の第4状態量との比率又は差又は絶対差である第4左右状態量の算出値を示す報知情報や、該第4左右状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させるようにしてもよい。
【0113】
また、例えば、左側の手荷重と右側の手荷重とバランス度合い(もしくはアンバランスの度合い)示す指標としての第2左右状態量の算出値を示す報知情報を表示器61に表示させることを省略し、該第2左右状態量の算出値が適正範囲を逸脱した場合に、警報情報(第2左右状態量逸脱警報情報)を使用者Pに対して出力するようにしてもよい。
【0114】
また、第2状態量の算出値を示す報知情報や、第2状態量の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させる代わりに、左右の手荷重(上下方向の手荷重)の検出値を示す報知情報や、該手荷重の適正範囲を示す報知情報を表示器61に表示させてもよい。
また、第2状態量の算出値(又は上下方向の手荷重の検出値)を示す報知情報や、第4状態量の算出値を示す報知情報は、使用者Pの利き手側の報知情報だけを表示器61に表示させるようにしてもよい。
また、第3フェーズの歩行訓練の進行度合い等によっては、第2状態量及び第4状態量のいずれか一方の報知情報を表示器61に表示させることを省略してもよい。
【0115】
本実施形態では、情報処理装置6は、第1~第3フェーズのそれぞれのフェーズでの歩行訓練中に、以上説明した如く、各フェーズ用の報知情報を本体処理部60の表示器61もしくは発音器62を介して出力させる処理をリアルタイムで実行する。
【0116】
本実施形態では、さらに、情報処理装置6の本体処理部60は、各回の歩行訓練の終了毎に(又は複数の所定回数の歩行訓練の終了毎に)、スタッフもしくは使用者Pによる本体処理部60の操作に応じて、使用者Pの歩行動作に関する所用の評価指標を生成して、該評価指標を示す報知情報を、表示器61に表示させる機能を有する
【0117】
具体的には、例えば、本体処理部60は、各フェーズでの歩行訓練の実行中に、前記表示対象報知情報として前記した如く算出する状態量(前記第1~第4状態量、及び第1~第4左右状態量のうちの各フェーズに対応する状態量)を、時刻情報と共に、逐次(所定の時間間隔で)記憶保持して収集すると共に、補助処理部65の直進判定部65dから歩行車1が直進状態であるか否かの判定結果を示す情報を時刻情報と共に逐次取得する。
【0118】
そして、各回の歩行訓練の終了後にスタッフもしくは使用者Pが本体処理部60の所定の操作を行うと、本体処理部60は、その操作によって指定された状態量(以降、評価対象状態量という)に関する評価指標を生成して、表示器61に表示させる。
【0119】
この場合、本体処理部60は、例えば、各回の歩行訓練中における評価対象状態量の平均値、該評価対象状態量のばらつき度合いを表す標準偏差(もしくは分散)、該評価対象状態量が適正範囲を逸脱した期間の全歩行期間(歩行訓練における歩行動作の開始時から終了時までの期間)に対する時間比率である逸脱時間比率等を評価指標として生成し、当該評価指標を表示器61に表示させる。併せて、本体処理部60は、各回の歩行訓練中における評価対象状態量の時系列グラフも表示器61に表示させる。
【0120】
ここで、歩行訓練中に、使用者Pが歩行車1と共に方向転換を行う状況では、その方向転換時の使用者Pの動作に起因して、評価対象状態量の一時的な(過渡的な)変動が生じやすい。このため、本実施形態では、本体処理部60は、補助処理部65の直進判定部65dから取得した判定結果が、歩行車1の直進状態であることを示す判定結果である期間における評価対象状態量の値だけを用いて、該評価対象状態量の平均値や、標準偏差、逸脱時間比率を算出する。
【0121】
なお、評価対象状態量の平均値や、標準偏差、逸脱時間比率は、補助処理部65の直進判定部65dから取得した判定結果が、歩行車1の直進状態であることを示す判定結果である期間において、肘荷重計測部65bにより計測された肘荷重の検出値と手荷重計測部65cにより計測された手荷重の検出値のうち、当該評価対象状態量に関係する検出値に基づいて算出してもよい。
【0122】
また、本実施形態では、本体処理部60は、例えば、歩行訓練中に、角速度センサ13を介して検出される角速度(ヨーレート)の検出値を、補助処理部65を介して収集し、該角速度の検出値の収集データに基づいて、使用者Pの歩行動作の直進性の判定も行う。この場合、本体処理部60は、例えば、歩行訓練中に収集した角速度の検出値から、該角速度のばらつき度合を示す標準偏差(又は分散)を算出し、該標準偏差(又は分散)が所定の閾値よりも低いか否かによって、使用者Pの歩行動作の直進性の高低を判定する。そして、その判定結果を1つの評価指標として表示器61に表示させる。
【0123】
図5は、かかる処理により表示器61に表示される評価指標やグラフを例示している。この例では、第2フェーズの歩行訓練で算出される左右それぞれの第3状態量(上下方向の肘荷重/上下方向の手荷重)の時系列グラフが表示されると共に、左右それぞれの第3状態量の平均値及び標準偏差と、左右両方の第3状態量の逸脱時間比率と、第3左右状態量としての左/右比率と、直進性の判定結果とが表示されている。なお、図5に示す例では、第3状態量の平均値、標準偏差、逸脱時間比率、及び直進性の判定結果については、さらに、前回の歩行訓練で得られた前回値が括弧書きで表示される。また、第3状態量の時系列グラフには、直進状態であると判定された期間が所定色(図5ではグレー色)の領域として表示される。
第3状態量に関する評価指標の上記の如き表示形態は、第1状態量、第2状態量、あるいは、第4状態量に関する評価指標の表示形態についても同様に採用し得る。
【0124】
また、本体処理部60は、スタッフもしくは使用者Pの操作に応じて、長期的なスパンでの歩行訓練の評価指標の推移を示す報知情報作成して表示器61に表示させることも可能である。例えば、本体処理部60は、第1~第4状態量、あるいは、第1~第4左右状態量のうちの指定された評価対象状態量の月毎の平均値(又は最良値)の推移を示すグラフを報知情報生成部60aで生成し、そのグラフを報知情報出力部60bにより表示器61に表示させることが可能である。
【0125】
図6は、上記の如く表示器61に表示されるグラフ(歩行行訓練の評価指標の推移を示すグラフ)を例示している。この例では、左右のそれぞれの第1状態量(肘荷重/体重)の月毎の平均値(又は最良値)の推移が棒グラフによって示されている。本体処理部60は、他の状態量についても、同様にグラフを作成して表示器61に表示させることが可能である。
【0126】
あるいは、本体処理部60は、使用者Pもしくはスタッフの操作に応じて、例えば、直近の所定回数(例えば10回)の歩行訓練のそれぞれにおける、指定された評価対象状態量の最良値の推移を示すグラフを報知情報生成部60aで生成し、その棒グラフを報知情報出力部60bにより表示器61に表示させることも可能である。この場合、当該グラフは、例えば、図6に示すグラフと同様の形態で表示器61に表示され得る。
【0127】
このように、長期的なスパンでの評価対象状態量の推移を表すグラフを作成して、表示器61に表示させることで、スタッフは、使用者Pの歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを適正に判断することが可能となる。例えば、第2フェーズの歩行訓練での左右それぞれの第3状態量(上下方向の肘荷重/上下方向の手荷重)と、左右それぞれの第2状態量(上下方向の手荷重/体重)との推移から、使用者Pの歩行機能が、歩行車1を使用せずとも、シルバーカーを使用して歩行動作を行うことができる状態まで回復した否かを適正に判断し得る。
【0128】
また、例えば、第3フェーズの歩行訓練での第4状態量(前方方向への手荷重/上下方向の手荷重)と、左右それぞれの第2状態量(上下方向の手荷重/体重)との推移から、使用者Pの歩行機能が、シルバーカーを使用せずとも、杖を使用して歩行動作を行うことができる状態まで回復した否かを適正に判断し得る。
【0129】
また、本実施形態では、本体処理部60は、各フェーズでの歩行訓練中に、使用者Pが携帯もしくは装着する前記運動計測機器80と補助処理部65とが通信を行い得る状況では、補助処理部65の移動計測部65aから歩行車1の移動速度及び移動距離の計測値を、時刻情報と共に逐次取得して記憶保持すると共に、運動計測機器80から使用者Pの歩数の計測値を時刻情報と共に逐次取得して記憶保持する。
【0130】
この場合、歩行車1の移動速度及び移動距離のそれぞれの計測値は、使用者Pの移動速度(歩行速度)及び移動距離(歩行距離)のそれぞれにほぼ一致するとみなし得る。そして、本体処理部60は、さらに、歩行車1の移動距離(使用者Pの歩行距離)の計測値を、歩数の計測値で除算することにより、使用者Pの歩幅を算出することを逐次実行する。
【0131】
本体処理部60は、上記の如く得られた使用者Pの歩行速度(歩行車1の移動速度)、歩行距離(歩行車1の移動距離)、歩数、歩幅のそれぞれの推移を示す時系列グラフや、歩幅及び歩行速度のそれぞれの平均値等の報知情報を、スタッフもしくは使用者Pの操作に応じて表示器61に表示させることができる。
【0132】
図7及び図8は、上記の如く表示器61に表示される報知情報を例示している。図7に示す例では、歩行訓練中の使用者Pの歩行速度の推移を示す時系列グラフと、歩行速度の平均値とが報知情報として表示器61に表示されている。この例では、さらに、前回の歩行訓練時の歩行速度の平均値(前回値)も括弧書きで表示されている。また、前記直進判定部65dにより直進状態であると判定された期間が所定色(図7ではグレー色)の領域として表示される。なお、図示は省略するが、さらに歩行速度のばらつき度合いを示す標準偏差(又は分散)を報知情報として表示器61に表示してもよい。
【0133】
図8に示す例では、歩行訓練中の歩数及び歩幅のそれぞれの推移を示す時系列グラフと、トータルの歩数と、歩幅の平均値とが報知情報として表示器61に表示されている。この例では、さらに、前回の歩行訓練時のトータルの歩数(前回値)及び歩幅の平均値(前回値)も括弧書きで表示されている。また、前記直進判定部65dにより直進状態であると判定された期間が所定色(図8ではグレー色)の領域として表示される。なお、図示は省略するが、さらに歩幅のばらつき度合いを示す標準偏差(又は分散)を報知情報として表示器61に表示してもよい。
【0134】
このように、歩行訓練時の使用者Pの歩行速度、歩数、及び歩幅に関する報知情報を適宜、表示器61で表示させることができるので、スタッフは、これらの報知情報も考慮して、使用者Pの歩行訓練の進捗度合いや歩行機能の回復度合いを判断することができる。
【0135】
さらに、本体処理部60は、使用者Pが所持する前記運動計測機器80と補助処理部65とが通信を行い得る状況では、使用者Pの加速度の計測値を補助処理部65を介して逐次取得することもできる。そして、本体処理部60は、その加速度の計測値の推移を示す時系列グラフ等を、スタッフや使用者Pの操作に応じて、表示器61に表示させることもできる。
【0136】
この場合、スタッフは、加速度の計測値に関する報知情報を表示器61を介して確認することができるので、該加速度の計測値の変化パターン等から、使用者Pの歩容の特徴や、適否等を分析することもできる。
【0137】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に、他の実施形態をいくつか説明する。前記実施形態では、情報処理装置6の全体を歩行車1に搭載したが、情報処理装置6の一部の処理を、歩行車1の外部のサーバ等で実行してもよい。例えば、歩行訓練後に評価指標を作成して出力する処理を、歩行車1の外部のサーバやパソコン等で行うようにしてもよい。この場合、評価指標を表示する表示器は、本体処理部60の表示器61とは別の表示器であってもよい。
【0138】
また、本実施形態では、情報処理装置6を本体処理部60と補助処理部65とで構成したが、例えば補助処理部65は、本体処理部60に組み込まれていてもよい。また、補助処理部65及び本体処理部60の一方の処理部の一部の機能を、他方の処理部に備えてもよい。
【0139】
また、前記実施形態では、第1~第3フェーズのそれぞれの歩行訓練での使用者Pの歩行動作中に、使用者Pが直進状態であるか否かによらずに、各フェーズ用の表示対象報知情報を表示器61で表示させたが、例えば、直進判定部65dによって、使用者Pが直進状態であると判定される状況での表示対象報知情報だけを表示器61に表示させるようにしてもよい。そして、使用者Pが直進状態でないと判定される状況では、例えば、その旨を示す報知情報を表示器61に表示させ、あるいは、発音器62から音声等により出力してもよい。
【0140】
また、前記実施形態の歩行車1では、第1グリップ4L,4Rとは別に、第2グリップ5L,5Rを備えた、これを省略し、第1グリップ4L,4Rにブレーキレバーを付設するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1…リハビリ用歩行車、2…フレーム、3L,3R…肘載せ部、4L,4R…第1グリップ(グリップ)、6…情報処理装置、61…表示器、11L,11R…肘荷重センサ(第1荷重センサ)、12L,12R…手荷重センサ(第2荷重センサ)、80…運動計測機器。
図1
図2
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図6
図7
図8