IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 奥野製薬工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013121
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】無電解めっき用触媒付与液
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
C23C18/18
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115474
(22)【出願日】2020-07-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 寛生
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 佳
(72)【発明者】
【氏名】田中 克幸
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】長尾 敏光
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022BA03
4K022BA14
4K022BA18
4K022CA06
4K022CA14
4K022CA19
4K022CA22
4K022CA23
4K022DA01
(57)【要約】
【課題】金属材料上に無電解めっきを行う際の前処理に使用する触媒付与液であって、めっき析出性、選択析出性、バリア特性、接合性等がより優れた無電解めっき皮膜を形成するために有用であり、また浴安定性がより優れた触媒付与液を提供すること。
【解決手段】コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解めっき用触媒付与液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解めっき用触媒付与液。
【請求項2】
前記還元剤がアミン化合物を含む、請求項1に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項3】
前記アミン化合物が、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項4】
錯化剤を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項5】
前記錯化剤がカルボン酸を含む、請求項4に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項6】
前記カルボン酸がヒドロキシカルボン酸又はジカルボン酸を含む、請求項5に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項7】
前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項8】
さらに、金属塩を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項9】
コバルト含有量が金属100質量%に対して50質量%以上である、請求項1~8のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項10】
前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、且つ
前記無電解めっきが、銅及び/又は銅合金が表面に露出している材料に対する、無電解パラジウムめっき、無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっきである、
請求項1~9のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【請求項11】
(1)無電解めっき対象材料と、請求項1~10のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液とを接触させる工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法。
【請求項12】
(1)無電解めっき対象材料と、請求項1~10のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液とを接触させる工程、及び
(2)工程(1)後に、無電解めっき処理する工程
を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法。
【請求項13】
金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核1、及び前記触媒核1上の皮膜2を含み、且つ
前記触媒核1がコバルトを含有し、
前記皮膜2が無電解めっき皮膜である、
材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき用触媒付与液等に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板、半導体パッケージ、電子部品等のエレクトロニクス関連分野において、製造時における最終工程の一つに、導体回路、端子部分等に無電解ニッケルめっきを施し、更に無電解金めっきを行う処理がある。この方法で形成される無電解ニッケル/金めっき皮膜は、銅回路表面の酸化を防止して良好なはんだ接続性能を発揮させることや、半導体パッケージとその上に実装される電子部品とのワイヤーボンディング性を向上させることなどを目的として用いられている。無電解ニッケルめっき皮膜を形成した後、置換金めっき皮膜を形成する場合には、下地のニッケルめっき皮膜の状態によっては、ニッケルが局所的に溶解して、ニッケルの腐食、いわゆるブラックパッドが発生することや、熱処理による下地金属拡散によってAu表面が汚染されることなどの問題点がある。この様な問題点を解決する手段として、無電解ニッケルめっきと金めっきの間に、バリア皮膜として無電解パラジウムめっきを行う、無電解ニッケル/パラジウム/金めっき処理が増加している。更に、プリント配線板の高密度化に伴う銅配線の微細化に対応するために、最も膜厚の高い無電解ニッケルめっき皮膜を省略した無電解パラジウム/金めっき処理が開発されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-327187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の金属材料上に無電解めっきを行う際に、めっき析出性等を向上させる目的で、金属材料上に置換反応にて触媒核となるパラジウム金属を析出させる触媒付与処理を行うことがある。本発明者は研究を進める中で、この触媒付与処理を行う場合、めっき析出性は良好であるものの、バリア特性及び接合性において不十分であることを見出した。この原因について調べていく中で、上記触媒付与処理を行う場合、金属材料の過剰溶解が生じる場合があり、その後に無電解めっき(ニッケルやパラジウムなど)処理を行うと析出しためっき皮膜と金属材料の間に、ところどころに微小な空隙(ボイド)が生じることを見出した。
【0005】
このため、本発明者は、置換反応ではなく、還元反応によりパラジウム金属を析出させる触媒付与処理を試みた。しかし、めっき析出性、選択析出性、浴安定性、バリア特性、接合性等の特性のいくつかにおいて不十分であった。
【0006】
そこで、本発明は、金属材料上に無電解めっきを行う際の前処理に使用する触媒付与液であって、めっき析出性、選択析出性、バリア特性、接合性等がより優れた無電解めっき皮膜を形成するために有用であり、また浴安定性がより優れた触媒付与液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解めっき用触媒付与液、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解めっき用触媒付与液。
【0009】
項2. 前記還元剤がアミン化合物を含む、項1に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0010】
項3. 前記アミン化合物が、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項2に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0011】
項4. 錯化剤を含有する、項1~3のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0012】
項5. 前記錯化剤がカルボン酸を含む、項4に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0013】
項6. 前記カルボン酸がヒドロキシカルボン酸又はジカルボン酸を含む、項5に記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0014】
項7. 前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1~6のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0015】
項8. さらに、金属塩を含有する、項1~7のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0016】
項9. コバルト含有量が金属100質量%に対して50質量%以上である、項1~8のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0017】
項10. 前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、且つ
前記無電解めっきが、銅及び/又は銅合金が表面に露出している材料に対する、無電解パラジウムめっき、無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっきである、
項1~9のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液。
【0018】
項11. (1)無電解めっき対象材料と、項1~10のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液とを接触させる工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法。
【0019】
項12. (1)無電解めっき対象材料と、項1~10のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与液とを接触させる工程、及び
(2)工程(1)後に、無電解めっき処理する工程
を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法。
【0020】
項13. 金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核1、及び前記触媒核1上の皮膜2を含み、且つ
前記触媒核1がコバルトを含有し、
前記皮膜2が無電解めっき皮膜である、
材料。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金属材料上に無電解めっきを行う際の前処理に使用する触媒付与液であって、めっき析出性、選択析出性、バリア特性、接合性等がより優れた無電解めっき皮膜を形成するために有用であり、また浴安定性がより優れた触媒付与液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0023】
1.触媒付与液
本発明は、その一態様において、コバルト化合物及び還元剤を含有する、無電解めっき用触媒付与液(本明細書において、「本発明の触媒付与液」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0024】
コバルト化合物は、めっき液に可溶性であるものである限り、特に制限されない。コバルト化合物としては、例えば有機又は無機のコバルト塩が挙げられ、より具体的には例えば硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、次亜リン酸コバルト、リン酸コバルト、硫酸コバルトアンモニウム、塩化コバルトアンモニウム、硫酸コバルトカリウム、スルファミン酸コバルト、酢酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ギ酸コバルト、シュウ酸コバルト、ステアリン酸コバルト、クエン酸コバルト、酒石酸コバルト、乳酸コバルトなどが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の観点から、好ましくは無機コバルト塩が挙げられ、より好ましくは硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、リン酸コバルト、次亜リン酸コバルト等が挙げられ、さらに好ましくは硫酸コバルト、塩化コバルトが挙げられる。
【0025】
コバルト化合物は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0026】
本発明の触媒付与液中のコバルト濃度は、例えば0.05g/L以上である。該コバルト濃度は、本発明の効果の観点から、好ましくは0.05~50g/L、より好ましくは0.1~30g/L、さらに好ましくは0.2~20g/L、よりさらに好ましくは0.4~15g/L、とりわけ好ましくは0.6~10g/L、特に好ましくは0.7~6g/Lである。
【0027】
本発明の触媒付与液中のコバルト含有量は、コバルトを含む遷移金属元素の含有量100質量%に対して、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%であり、或いは80質量%以上、又は90質量%以上である。
【0028】
還元剤としては、コバルト金属を析出させることが可能な還元剤である限り特に制限されず、還元めっきで使用され得る還元剤を使用することができる。還元剤としては、例えばアミン化合物、ホウ素含有化合物、リン含有化合物等が挙げられる。還元剤は、これらの複数に属するものも存在する。例えば、アミン化合物であり且つホウ素含有化合物である還元剤も存在する。その場合、その還元剤を含有する場合は、アミン化合物を含有するといえ、且つホウ素含有化合物を含有するといえる。
【0029】
アミン化合物としては、例えばアミンボラン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体等が挙げられる。
【0030】
アミンボランは、ボラン(例えばBH)とアミンとの錯体であるアミンボラン錯体である。アミンボランを構成するアミンとしては、鎖状アミン(非環状アミン)、環状アミンのいずれでもよいが、好ましくは鎖状アミンであり、より好ましくは鎖状アミンの中でも、一般式(1):
【0031】
【化1】
【0032】
[式中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。]
で表される鎖状アミンが挙げられる。
【0033】
アルキル基には、直鎖状、分枝鎖状、及び環状のいずれのものも包含される。アルキル基は、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状であり、より好ましくは直鎖状である。該アルキル基の炭素数は、特に制限されないが、例えば1~8、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2、よりさらに好ましくは1である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0034】
本発明の好ましい一態様においては、R、R及びRの内、いずれか2つ又は全て(より好ましくは2つ)がアルキル基であり、残りは水素原子である。
【0035】
ボラン錯体を構成するアミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メトキシエチルアミン、ジシクロへキシルアミン、t-ブチルアミン、アミノピリジン、エチレンジアミン、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、メトキシエチルアミン、ジシクロへキシルアミン等が挙げられ、より好ましくはジメチルアミン等が挙げられる。
【0036】
アミンボランの好適に具体例としては、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン等が挙げられる。
【0037】
ヒドラジン誘導体としては、無電解めっきの還元剤として使用し得るものであれば、特に制限されない。
【0038】
ホウ素含有化合物としては、例えば水素化ホウ素化合物、より具体的には、例えばアミン化合物でもある上記アミンボラン、アミンボラン以外のボラン錯体(ボランと他の化合物との錯体)、水素化ホウ素アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0039】
リン含有化合物としては、例えば次亜リン酸、次亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、亜リン酸、亜リン酸塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、それらの水和物等が挙げられる。
【0040】
還元剤は、本発明の効果の観点から、アミン化合物を含むことが好ましい。また、この場合、アミン化合物は、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、アミンボラン及びヒドラジンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがさらに好ましく、アミンボランを含むことがよりさらに好ましい。また、還元剤がアミン化合物を含む場合、還元剤は、さらにリン含有化合物を含むことがより好ましい。
【0041】
還元剤は、本発明の効果の観点から、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0042】
還元剤は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0043】
本発明の触媒付与液中の還元剤の濃度は、例えば0.05g/L以上である。該濃度は、本発明の効果の観点から、好ましくは0.05~100g/L、より好ましくは0.2~50g/L、さらに好ましくは0.5~30g/Lである。還元剤がアミン化合物を含む場合、本発明の触媒付与液中の該アミン化合物の濃度は、本発明の効果の観点から、好ましくは0.05~25g/L、より好ましくは0.1~20g/L、さらに好ましくは0.2~15g/L、よりさらに好ましくは0.4~10g/L、とりわけ好ましくは0.6~8g/Lである。還元剤がリン含有化合物を含む場合、本発明の触媒付与液中の該リン含有化合物の濃度は、本発明の効果の観点から、好ましくは1~200g/L、より好ましくは5~150g/L、さらに好ましくは10~100g/L、よりさらに好ましくは20~80g/Lである。
【0044】
本発明の触媒付与液は、本発明の効果の観点から、さらに錯化剤を含有することが好ましい。
【0045】
錯化剤としては、特に制限されず、無電解めっき(特に還元めっき)で使用され得る錯化剤を使用することができる。錯化剤としては、例えば、酢酸、蟻酸等のモノカルボン酸、これらのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等; マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等のジカルボン酸、これらのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等; リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸等のヒドロキシカルボン酸、これらのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等; エチレンジアミンジ酢酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、これらのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等; エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸等のアミノポリカルボン酸やそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等; ピロリン酸等のホスホン酸類やそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等; グリシン、グルタミン酸等のアミノ酸類等が挙げられる。
【0046】
錯化剤は、本発明の効果の観点から、カルボン酸を含むことが好ましい。この場合、カルボン酸は、本発明の効果の観点から、ヒドロキシカルボン酸やジカルボン酸を含むことがより好ましい。ヒドロキシカルボン酸やジカルボン酸の中でも、さらに好ましくはリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、マロン酸、グルコン酸等が挙げられ、よりさらに好ましくはリンゴ酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0047】
錯化剤は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0048】
本発明の触媒付与液が錯化剤を含有する場合、本発明の触媒付与液中の錯化剤の濃度は、例えば0.5g/L以上である。該コバルト濃度は、本発明の効果の観点から、好ましくは1~200g/L、より好ましくは2~150g/L、さらに好ましくは4~120g/L、よりさらに好ましくは6~100g/L、とりわけ好ましくは7~70g/Lである。
【0049】
本発明の触媒付与液は、本発明の効果の観点から、さらに金属塩を含有することが好ましい。
【0050】
金属塩としては、特に制限されないが、例えばコバルト以外の遷移金属元素を含む塩が挙げられる。遷移金属元素としては、例えば金、パラジウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、レニウム等の金属元素が挙げられる。金属塩として、より具体的には、例えば硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、タングステン酸ナトリウム、モリブデン酸2ナトリウム、シアン化金カリウム、亜硫酸金ナトリウム、過レニウム酸アンモニウム等が挙げられる。
【0051】
金属塩は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0052】
本発明の触媒付与液が金属塩を含有する場合、当該金属塩に含まれる金属の、本発明の触媒付与液中の濃度は、例えば0.005g/L以上である。該濃度は、本発明の効果の観点から、好ましくは0.005~5g/L、より好ましくは0.01~3g/L、さらに好ましくは0.02~2g/L、よりさらに好ましくは0.03~1g/Lである。該濃度は、本発明の触媒付与液中のコバルト濃度の、例えば0.8/1 以下、好ましくは0.6/1 以下であり、或いは0.5/1 以下、0.3/1 以下、0.2/1 以下、0.15/1 以下である。
【0053】
本発明の触媒付与液は、溶媒として主に水を含有する。水以外の溶媒も含有する場合、その含有量は、水を含む溶媒100質量%に対して、例えば10質量%以下、5質量%以下、1質量%、0.1質量%以下である。
【0054】
本発明の触媒付与液には、その他必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば安定剤、pH緩衝剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0055】
安定剤として、例えば硝酸鉛、酢酸鉛等の鉛塩;硝酸ビスマス、酢酸ビスマス等のビスマス塩;チオ硫酸ナトリウム等の硫黄化合物等を1種単独又は2種以上混合して添加することができる。安定剤を添加する場合、その添加量は、特に限定的ではないが、例えば、0.01~100mg/L程度とすることができる。
【0056】
pH緩衝剤として、例えば酢酸、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、炭酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を1種単独又は2種以上混合して添加することができる。pH緩衝剤を添加する場合、その添加量は特に限定的ではないが、浴安定性等の観点から、0.002~1mol/L程度とすることができる。
【0057】
界面活性剤として、例えばノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性等の各種界面活性剤を用いることができる。例えば、芳香族又は脂肪族スルホン酸アルカリ塩、芳香族又は脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。界面活性剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は特に限定的ではないが、例えば0.01~1000mg/L程度とすることができる。
【0058】
本発明の無電解めっき液のpHは、通常、2~12程度とすればよく、好ましくは6~10程度、より好ましくは6.5~9程度、さらに好ましくは6.9(又は7.0)~8.5程度である。
【0059】
2.触媒付与方法
本発明は、その一態様において、(1)無電解めっき対象材料と、本発明の触媒付与液とを接触させる工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、或いは、無電解めっき対象材料を触媒付与処理する方法(本明細書において、「本発明の方法1」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0060】
無電解めっき対象材料は、金属が表面に露出している材料である限り、特に制限されない。例えば、素材として、ガラス繊維強化エポキシ、ポリイミド、PET等のプラスチック類、ガラス、セラミック、金属酸化物、金属、紙、合成又は天然繊維などの材質を1種で又は組み合わせてなるものであり、その形状としては、板、フィルム、布状、繊維状、チューブ等のいずれであってもよい。表面に露出している金属としては、例えば、銅、銅合金、銀、銀合金、金、金合金、白金、白金合金、モリブデン、タングステン等が挙げられる。これらの内で、銅合金、銀合金、金合金及び白金合金としては、それぞれ、例えば、銅、銀、金又は白金を50重量%以上含む合金に対して適用できる。無電解めっき対象材料として、具体的には、例えばプリント配線板、半導体パッケージ、電子部品、セラミック基板等が挙げられる。これらの材料において、表面に露出している金属は、配線を構成し得る。
【0061】
無電解めっき対象材料は、脱脂処理、ソフトエッチング処理等の前処理が施されたものであることが好ましい。
【0062】
本発明の触媒付与液を無電解めっき対象材料に接触させるための具体的な方法については、特に限定的ではないが、通常は、本発明の触媒付与液中に被処理物を浸漬すればよい。その他、無電解めっき対象材料の表面に該触媒付与液を噴霧する方法などによっても触媒付与処理を行うことができる。
【0063】
本発明の触媒付与液を浸漬法によって行う場合には、本発明の触媒付与液の液温は、通常、10~90℃程度とすることが好ましく、40~80℃程度とすることがより好ましく、60~80℃とすることがさらに好ましい。
【0064】
処理時間については、30秒~20分程度とすることが好ましく、1分~5分程度とすることがより好ましい。
【0065】
本発明の方法1により、無電解めっき対象材料の表面金属上にコバルトを含む触媒核が形成される。触媒核は、本発明の無電解めっき液中の成分に応じた組成を有する。例えば、本発明の触媒付与液中の還元剤がホウ素含有化合物及び/又はリン含有化合物を含む場合、触媒核は、Co、並びにB及び/又はPを含む。また、本発明の触媒付与液が金属元素含有化合物を含む場合、触媒核は、Co、及び当該金属を含む。
【0066】
触媒核中のCo含有量は、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%であり、或いは80質量%以上、又は90質量%以上である。
【0067】
触媒核がBを含む場合、その含有量は、例えば2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。該含有量の下限は、例えば0.01質量%、0.05質量%、又は0.07質量%である。
【0068】
触媒核がPを含む場合、その含有量は、例えば0.5~20質量%、好ましくは1.5~15質量%、より好ましくは3~10質量%である。
【0069】
触媒核中の各元素の含有量は、エネルギー分散型X線分析装置(EDX,HORIBA製EMAX X-act)による測定、もしくは高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(日立ハイテクサイエンス製PS3500DDII)を使用した溶解法により同定する。
【0070】
該触媒核を含む無電解めっき対象材料を無電解めっき処理することにより、めっき析出性、選択析出性、バリア特性、接合性等がより優れた無電解めっき皮膜を形成することができる。触媒核は表面活性化の目的であるので、その厚みは、例えば0.05μm以下、0.005~0.05μmであることができる。
【0071】
3.無電解めっき方法
本発明は、その一態様において、(1)無電解めっき対象材料と、本発明の触媒付与液とを接触させる工程、及び(2)工程(1)後に、無電解めっき処理する工程を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、或いは、無電解めっき対象材料を無電解めっきする方法(本明細書において、「本発明の方法2」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0072】
工程(1)については、上記「2.触媒付与方法」の通りである。
【0073】
無電解めっき処理は、工程(1)で得られた触媒核を含む無電解めっき対象材料を、無電解めっき液と接触させることにより行うことができる。
【0074】
無電解めっき液としては特に限定はなく、自己触媒性の無電解めっき液を用いることができる。例えば、無電解パラジウムめっき液、無電解パラジウム合金めっき液、無電解銅めっき液、無電解銅合金めっき液、無電解銀めっき液、無電解銀合金めっき液、無電解ニッケルめっき液、無電解ニッケル合金めっき液、無電解金めっき液、無電解金合金めっき液等を用いることができる。これらの無電解めっき液の具体的な組成については、特に限定はなく、還元剤成分を含む公知の組成の自己触媒性の無電解めっき液を用いればよい。めっき条件についても、使用するめっき液の種類に応じて、通常のめっき条件に従えばよい。
【0075】
本発明の方法2の工程(2)では、無電解めっき液として、無電解パラジウムめっき液、無電解パラジウム合金めっき液、無電解ニッケルめっき液、無電解ニッケル合金めっき液等、無電解金めっき液、無電解金合金めっき液を使用することが好ましい。工程(2)で無電解パラジウムめっき液又は無電解パラジウム合金めっき液を使用した場合は、さらに無電解金めっき又は無電解金合金めっきを行うことが好ましい。また、工程(2)で無電解ニッケルめっき液又は無電解ニッケル合金めっき液を使用した場合は、さらに無電解パラジウムめっき又は無電解パラジウム合金めっきを行うことが好ましく、これに続いてさらに無電解金めっき又は無電解金合金めっきを行うことがより好ましい。また工程(2)で無電解ニッケルめっき液又は無電解ニッケル合金めっき液を使用した場合は、これに続いてさらに無電解金めっき又は無電解金合金めっきを行うことも可能である。また工程(2)で無電解金めっき液、無電解金合金めっき液のみを行うことも可能である。
【0076】
本発明の方法2により、めっき析出性、選択析出性、バリア特性、接合性等がより優れた無電解めっき皮膜を形成することができる。本発明の方法2により、このような無電解めっき皮膜を供える材料、具体的には、金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核1、及び前記触媒核1上の皮膜2を含み、且つ前記触媒核1がコバルトを含有し、前記皮膜2が無電解めっき皮膜である、材料、を得ることができる。
【実施例0077】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0078】
(1)触媒付与液の調製
以下に示す組成からなる無電解めっき用触媒付与液を調製した。溶媒としては水を使用した。
【0079】
(1-1)実施例1~8:Co含有
(実施例1)Co-B
硫酸コバルト・7水和物 5g/L(コバルトとして1g/L)
DL-リンゴ酸 10g/L
ジメチルアミンボラン 3.0g/L
pH 7.5、浴温 70℃。
【0080】
(実施例2)Co-Ni-B
硫酸コバルト・7水和物 5g/L(コバルトとして1g/L)
硫酸ニッケル・6水和物 0.45g/L(ニッケルとして0.1g/L)
DL-リンゴ酸 10g/L
ジメチルアミンボラン 3.0g/L
pH 7.5、浴温 70℃。
【0081】
(実施例3)Co-Pd-B
硫酸コバルト・7水和物 5g/L(コバルトとして1g/L)
塩化パラジウム 0.08g/L(パラジウムとして0.05g/L)
クエン酸 50g/L
ジメチルアミンボラン 1.0g/L
pH 7.5、浴温 70℃。
【0082】
(実施例4)Co-W-B
硫酸コバルト・7水和物 5g/L(コバルトとして1g/L)
タングステン酸ナトリウム・2水和物 1g/L(タングステンとして0.55g/L)
クエン酸 50g/L
ジメチルアミンボラン 1.0g/L
pH 7.5、浴温 70℃。
【0083】
(実施例5)Co-Mo-B
硫酸コバルト・7水和物 20g/L(コバルトとして4g/L)
モリブデン酸2ナトリウム・2水和物 0.5g/L(モリブデンとして0.2g/L)
クエン酸 50g/L
ジメチルアミンボラン 1.0g/L
pH 7.5、浴温 70℃。
【0084】
(実施例6)Co-B-P
硫酸コバルト・7水和物 20g/L(コバルトとして4g/L)
クエン酸 50g/L
ジメチルアミンボラン 1.0g/L
次亜リン酸ナトリウム 60g/L
pH 7.5、浴温 70℃。
【0085】
(実施例7)Co-B-P
硫酸コバルト・7水和物 20g/L(コバルトとして4g/L)
クエン酸 50g/L
ホウ酸 10g/L
ジメチルアミンボラン 1.0g/L
亜リン酸ナトリウム 20g/L
pH 8.0、浴温 70℃。
【0086】
(実施例8)Co-P
硫酸コバルト・7水和物 20g/L(コバルトとして4g/L)
クエン酸 50g/L
ホウ酸 10g/L
ヒドラジン 2.0g/L
次亜リン酸ナトリウム 20g/L
pH 8.0、浴温 70℃。
【0087】
(1-2)比較例1~5:Co非含有
(比較例1)Ni-B
硫酸ニッケル・6水和物 4.5g/L(ニッケルとして1.0g/L)
DL-リンゴ酸 10g/L
ジメチルアミンボラン 5.0g/L
pH 7.5、浴温 60℃。
【0088】
(比較例2)Ni-B
硫酸ニッケル・6水和物 0.45g/L(ニッケルとして0.1g/L)
DL-リンゴ酸 10g/L
ジメチルアミンボラン 5.0g/L
pH 7.5、浴温 60℃。
【0089】
(比較例3)Ni-B-P
硫酸ニッケル・6水和物 0.45g/L(ニッケルとして0.1g/L)
DL-リンゴ酸 10g/L
ジメチルアミンボラン 5.0g/L
次亜リン酸ナトリウム 10g/L
pH 7.5、浴温 60℃。
【0090】
(比較例4)Pd-B
塩化パラジウム 0.83g/L(パラジウムとして0.5g/L)
エチレンジアミン 10g/L
ジメチルアミンボラン 1.0g/L
pH 7.5、浴温 40℃。
【0091】
(比較例5)Pd
塩化パラジウム 0.83g/L(パラジウムとして0.5g/L)
エチレンジアミン 10g/L
ヒドラジン 1.0g/L
pH 7.5、浴温 40℃。
【0092】
(1-3)比較例6~7:置換反応によるPd触媒付与処理(従来技術)
(比較例6)
塩化パラジウム 0.17g/L(パラジウムとして0.1g/L)
35%塩酸 100 ml/L
浴温 30℃。
【0093】
(比較例7)
硫酸パラジウム 0.19g/L(パラジウムとして0.1g/L)
98%硫酸 20 ml/L
浴温 30℃。
【0094】
(2)評価試験
以下の評価試験では、無電解めっき対象材料を前処理(酸性脱脂、ソフトエッチング)後に、上記した触媒付与液により金属表面上に触媒核を形成し、次いで無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理した。各処理の詳細は、特に断りのない限り以下の通りである。各工程間に流水水洗1分処理を実施した。
【0095】
(a)酸性脱脂
硫酸および界面活性剤を含有する酸性脱脂液(商標名:ICPクリーンS-135K)に、40℃で5分間浸漬した。
【0096】
(b)ソフトエッチング
過硫酸ナトリウム100g/L と98%硫酸10 ml/Lを含有する水溶液中に、室温で1分間浸漬した。
【0097】
(c)触媒付与処理
実施例1~8及び比較例1~5については、触媒核の厚みが0.01μmとなるよう、触媒付与液中に1~5分間浸漬した。比較例6および7については1分間浸漬とした。
【0098】
(d)無電解パラジウムめっき
無電解パラジウムめっき液(商標名:トップパラスPD、奥野製薬工業(製))中に、65℃で5分間浸漬して、膜厚約0.1μmのめっき皮膜を得た。
【0099】
(e)無電解金めっき
無電解金めっき(商標名:トップパラスAU、奥野製薬工業(製))中に、80℃で10分間浸漬した。膜厚約0.05μmのめっき皮膜を得た。
【0100】
(2-1)触媒核の組成測定
無電解めっき対象材料として銅張エポキシ基板を使用し、酸性脱脂、ソフトエッチング、触媒付与処理を実施した後、エネルギー分散型X線分析装置(EDX,HORIBA製EMAX X-act)による測定、もしくは高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(日立ハイテクサイエンス製PS3500DDII)を使用した溶解法により組成を同定した。
【0101】
(2-2)めっき析出性の評価
無電解めっき対象材料として、樹脂基材上に、オーバーレジストタイプの微小銅パッド(直径0.2mm、パッド数30個)を有するBGA(Ball Grid Array)樹脂基板を用いた。無電解めっき対象材料を、酸性脱脂、ソフトエッチング、触媒付与処理、無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理した。各パッドにおけるめっき析出の有無をマイクロスコープ(KEYENCE製VHX-1000)により判定し、以下の評価基準に従って評価した。
【0102】
<めっき析出性の評価基準>
〇:全パッド正常に析出。
×:めっき未析出のパッド有。
【0103】
(2-3)選択析出性の評価
無電解めっき対象材料として、SAP法にて作製した配線幅/配線間隔(L/S)=20/20μmの銅配線パターンを有する樹脂基板を用いた。無電解めっき対象材料を、酸性脱脂、ソフトエッチング、触媒付与処理、無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理した。配線パターン間(樹脂部)へのめっき析出の有無を走査型電子顕微鏡(SEM,日立ハイテクノロジーズ製S-3400N)により判定し、以下の評価基準に従って評価した。
【0104】
<選択析出性の評価基準>
〇:配線パターン間へのめっき析出なし。
△:配線パターン間へわずかにめっき析出。
×:配線パターン間に全面析出。
【0105】
(2-4)浴安定性の評価
めっき析出性の評価で使用後の触媒付与液を、触媒付与処理の浴温+5℃に加温して、72時間放置した。浴分解の有無を目視により判定し、以下の評価基準に従って評価した。
【0106】
<浴安定性の評価基準>
〇:浴分解せず。
×:浴分解。
【0107】
(2-5)空隙(ボイド)の確認
無電解めっき対象材料として、樹脂基材上に、オーバーレジストタイプの銅パッドを有するBGA(Ball Grid Array)樹脂基板を用いた。無電解めっき対象材料を、酸性脱脂、ソフトエッチング、触媒付与処理、無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理した。続いて、集束イオンビーム加工観察装置を用いて断面加工し,走査イオン顕微鏡によりボイドの有無を観察した(FIB/SIM,日立ハイテクノロジーズ製FB2200)。
〈ボイドの評価基準〉
〇:ボイドなし。
×:ボイドあり。
【0108】
(2-6)バリア特性の評価
無電解めっき対象材料として、樹脂基材上に、オーバーレジストタイプの銅パッドを有するBGA(Ball Grid Array)樹脂基板を用いた。無電解めっき対象材料を、酸性脱脂、ソフトエッチング、触媒付与処理、無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理した。続いて、処理基板を熱処理175℃、16 hした後、Auめっき表面の元素組成を X線光電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社、PHI5000VersaProbe III)で測定した。Au皮膜表面における下地金属(Cu、Co、Ni、Pd)検出の有無に基づいて、以下の評価基準に従って評価した。
【0109】
<バリア特性の評価基準>
〇:Au皮膜表面にて下地金属(Cu、Co、Ni、Pd)が検出されず。
×:Au皮膜表面にて下地金属(Cu、Co、Ni、Pd)が検出。
【0110】
(2-7)接合性の評価
無電解めっき対象材料として、樹脂基材上に、オーバーレジストタイプの微小銅パッド(直径0.6mm、パッド数20個)を有するBGA樹脂基板を用いた。無電解めっき対象材料を、酸性脱脂、ソフトエッチング、触媒付与処理、無電解パラジウムめっき、無電解金めっきの順に処理した。その後、Sn-3Ag-0.5Cuのはんだボール(φ0.76mm)を搭載し、リフロー装置にて加熱(ピーク温度250℃)した後、はんだボールプル試験装置(Dage社製#4000)を用いてプル速度5000μm/秒にてはんだボールプル試験を行った。はんだ内部で破断が生じるもしくは基材が破壊されるモードを良好、はんだボールとめっき皮膜の接合界面で破壊されるモードを不良と判断し、以下の評価基準に従って評価した。
【0111】
<接合性の評価基準>
〇:良好モード50%以上。
△:良好モード0%超50%未満。
×:すべて不良モード(良好モード0%)。
【0112】
(3)結果
結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2020-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト化合物及び還元剤を含有する、
無電解パラジウムめっき、無電解ニッケルめっき、及び無電解金めっきからなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき(但し、触媒金属として銀を使用する無電解めっきを除く)にいるための触媒付与液。
【請求項2】
前記還元剤がアミン化合物を含む、請求項1に記載の触媒付与液。
【請求項3】
前記アミン化合物が、アミンボラン、ヒドラジン、及びヒドラジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の触媒付与液。
【請求項4】
錯化剤を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項5】
前記錯化剤がカルボン酸を含む、請求項4に記載の触媒付与液。
【請求項6】
前記カルボン酸がヒドロキシカルボン酸又はジカルボン酸を含む、請求項5に記載の触媒付与液。
【請求項7】
前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項8】
さらに、金属塩を含有する、請求項1~7のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項9】
コバルト含有量が金属100質量%に対して50質量%以上である、請求項1~8のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項10】
前記還元剤が、ホウ素含有化合物及びリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、且つ
前記無電解めっきが、銅及び/又は銅合金が表面に露出している材料に対する無電解めっきである、
請求項1~9のいずれかに記載の触媒付与液。
【請求項11】
(1)無電解めっき対象材料と、請求項1~10のいずれかに記載の触媒付与液とを接触させる工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法。
【請求項12】
(1)無電解めっき対象材料と、請求項1~10のいずれかに記載の触媒付与液とを接触させる工程、及び
(2)工程(1)後に、無電解めっき処理する工程
を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法。
【請求項13】
金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核1(但し、触媒金属として銀を含有する触媒核を除く)、及び前記触媒核1上の皮膜2を含み、且つ
前記触媒核1がコバルトを含有し、
前記皮膜2が無電解パラジウムめっき皮膜、無電解ニッケルめっき皮膜、及び無電解金めっき皮膜からなる群より選択される少なくとも1種の無電解めっき皮膜である、材料。