(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131217
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】横型粉末表面成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/00 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
C23C14/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030045
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】丸子 智弘
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA22
4K029CA03
4K029CA05
4K029CA06
4K029CA17
4K029DA01
4K029DC34
4K029FA06
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、乾式法による粉末の攪拌効率を向上し、更には薄膜で表面を被覆した粉末を連続的に製造し、更には、原料粉末に対して均等の成膜量となるように成膜速度を適正にコントロールすることで高い生産性を実現する横型粉末表面成膜装置を提供することである。
【解決手段】本発明に係る横型粉末表面成膜装置100は、横に傾けられたバレル1と、バレル1の主軸を回転軸2として自転させる回転機構7と、バレル1の圧力を大気圧以下の所定の圧力に維持する圧力調整機構23と、バレル1内に設置された成膜機構43と、を有し、バレル1を回転させながらバレル1に入れられた原料粉末42の表面に薄膜を成膜する横型粉末表面成膜装置であって、バレル1は、側壁の内側面を底面44とし、回転軸2を中心としてらせん状に延びる通路45を有し、通路45の天面は開放されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横に傾けられたバレルと、該バレルの主軸を回転軸として自転させる回転機構と、前記バレル内の圧力を大気圧以下の所定の圧力に維持する圧力調整機構と、前記バレル内に設置された成膜機構と、を有し、前記バレルを回転させながら前記バレルに入れられた原料粉末の表面に薄膜を成膜する横型粉末表面成膜装置であって、
前記バレルは、側壁の内側面を底面とし、前記回転軸を中心としてらせん状に延びる通路を有し、該通路の天面は開放されていることを特徴とする横型粉末表面成膜装置。
【請求項2】
前記通路は、隣り合う通路間に仕切りが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項3】
前記仕切りは、連続的ならせん状の仕切り、連続的ならせん階段状の仕切り又は複数の仕切りが互いに一部分が向き合った状態でらせん階段状に配置された断続的ならせん階段状の仕切りであるか、或いは、これら3種の仕切りのうち少なくとも2種を組み合わせた仕切りであることを特徴とする請求項2に記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項4】
前記通路は前記底面に突起を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項5】
前記バレルに衝撃を与えるノッカー又は振動を与える振動子を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項6】
前記バレルの一方の端面側から前記バレルの中に前記原料粉末を供給する粉末供給機構と、前記バレルの他方の端面側から前記薄膜が表面に成膜されている被覆粉末を回収する粉末回収機構とを有し、
前記粉末供給機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第1予備室を有し、該第1予備室は、粉末投入口とつながっており、かつ、前記バレルの一方の端面と第1開閉機構を介してつながっており、
前記粉末回収機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第2予備室を有し、該第2予備室は、前記バレルの他方の端面と第2開閉機構を介してつながっており、かつ、粉末回収口とつながっていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項7】
前記回転機構は、前記バレルの回転数の調節器及び回転方向の正転・逆転の切り換え器を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項8】
前記バレルの一方の端面側から前記バレルの中に前記原料粉末を供給する粉末供給機構と、前記バレルの一方の端面側から前記薄膜が表面に成膜されている被覆粉末を回収する粉末回収機構と、を有し、
前記粉末供給機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第1予備室を有し、該第1予備室は、粉末投入口とつながっており、かつ、前記バレルの一方の端面と第1開閉機構を介してつながっており、
前記粉末回収機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第2予備室を有し、該第2予備室は、前記バレルの一方の端面と第2開閉機構を介してつながっており、かつ、粉末回収口とつながっており、
前記回転機構は、前記バレルの回転数の調節器及び回転方向の正転・逆転の切り換え器を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項9】
前記バレルの主軸の傾きを調整する角度調整機構を有することを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の横型粉末表面成膜装置。
【請求項10】
前記成膜機構は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法又はアトムビーム法による成膜源を有することを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の横型粉末表面成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末の各粒子の表面に薄膜を形成させるための粉末表面成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末に、新しい機能を付与するために、粒子の表面に薄膜を形成させる場合がある。例えば、メッキ法やゾルゲル法などの湿式法で、粒子の表面に薄膜を形成することは従来から広く使われている。湿式法では大量生産出来るメリットがある一方で、粒子表面という複雑な表面に多元素を含有する薄膜を形成することは難しい。更に、湿式であるが故に、その溶媒が粉末表面、薄膜の内部、更には薄膜の表面に残存してしまい、目的とする機能が発揮出来ない問題があった。
【0003】
そこで、乾式法での粉末表面薄膜形成技術が望まれていた。乾式法を用いた成膜技術としてスパッタリング法があり、スパッタリング法を用いた粉末への成膜装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
また、従来の課題である多元素同時成膜を実現した技術や粉末攪拌を改善した技術も提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3を参照。)。特許文献2及び特許文献3には、粉末表面成膜装置に攪拌板及びスクレーパを設置し、原料粉末の攪拌を促して原料粉末に対して等しくスパッタリングする装置が開示されている。また、粉末表面へ多元素薄膜の形成を可能とし、更には粉末を効果的に成膜可能な領域に誘導し、かつ、攪拌を行う治具を有する粉末表面成膜装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3068947号公報
【特許文献2】特許第6789217号公報
【特許文献3】特許第6715003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乾式法による粉末表面への成膜は、粉末へ高機能を付加することのできる有効な手段であることは明白である。しかし、特許文献1~3に開示の技術では、バレル形状の容器を横型に配置して粉末をその内部に入れ、これを回転させて攪拌を図り、更には粉末接触部へ攪拌治具を設置することで攪拌の改善は図られているものの、バレルの回転速度が速いと遠心力などによって粉末がバレルにくっついて安息角が高い位置まで上昇してしまい、安息角を超えて粉末が落下するとき、粉末がバレル中を飛散することによって成膜装置に付着することや、成膜中の放電が安定しなくなることがある。また、被覆粉末の粉末から膜の剥離などの問題を考慮すると、攪拌治具を速く動かせないことから十分に攪拌効率が良いとはいえなかった。また、粉末の連続投入が出来ず、バッチ式になることで生産性を著しく害する構造となっていた。
【0007】
そこで本開示の目的は、乾式法による粉末の攪拌効率を向上し、更には薄膜で表面を被覆した粉末を連続的に製造し、更には、原料粉末に対して均等の成膜量となるように成膜速度を適正にコントロールすることで高い生産性を実現する横型粉末表面成膜装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、横型の回転バレルの内面に、バレルの回転軸を中心としてらせん状に延びる通路を設けることによって、この通路に置かれた粉末はバレルの回転によって自動的に攪拌されながらバレルの一方の端から他方の端に搬送され、又はバレルの一方の端から他方の端に搬送されたのちバレルの他方の端から一方の端に逆方向に搬送され、さらに搬送途中で成膜を行えば原料粉末の表面に均一に薄膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る横型粉末表面成膜装置は、横に傾けられたバレルと、該バレルの主軸を回転軸として自転させる回転機構と、前記バレル内の圧力を大気圧以下の所定の圧力に維持する圧力調整機構と、前記バレル内に設置された成膜機構と、を有し、前記バレルを回転させながら前記バレルに入れられた原料粉末の表面に薄膜を成膜する横型粉末表面成膜装置であって、前記バレルは、側壁の内側面を底面とし、前記回転軸を中心としてらせん状に延びる通路を有し、該通路の天面は開放されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記通路は、隣り合う通路間に仕切りが設けられていることが好ましい。通路に置かれた原料粉末をバレルの回転によって確実にかつ効率的に攪拌しつつバレルの主軸方向に沿って移動させることができ、また、仕切り自体はその端面の面積が小さいことから、原料粉末はより広い面積に広かった状態で成膜されることができ、成膜効率が高くなる。
【0010】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記仕切りは、連続的ならせん状の仕切り、連続的ならせん階段状の仕切り又は複数の仕切りが互いに一部分が向き合った状態でらせん階段状に配置された断続的ならせん階段状の仕切りであるか、或いは、これら3種の仕切りのうち少なくとも2種を組み合わせた仕切りであることが好ましい。通路と通路との境界は、バレルの側壁の内側面上であってバレルの回転軸を中心としてらせん状に延びる形状を有するところ、この境界線に沿って配置される仕切りは、上記の各種形態をとることができる。
【0011】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記通路は前記底面に突起を有することが好ましい。原料粉末が突起を通過した後、流体のごとく作用し、カルマン渦を形成することで攪拌効果を得ることができる。
【0012】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記バレルに衝撃を与えるノッカー又は振動を与える振動子を有することが好ましい。バレルに与えられる衝撃又は振動により原料粉末が攪拌され、より粉末全体に成膜されやすくなる。
【0013】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記バレルの一方の端面側から前記バレルの中に前記原料粉末を供給する粉末供給機構と、前記バレルの他方の端面側から前記薄膜が表面に成膜されている被覆粉末を回収する粉末回収機構とを有し、前記粉末供給機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第1予備室を有し、該第1予備室は、粉末投入口とつながっており、かつ、前記バレルの一方の端面と第1開閉機構を介してつながっており、前記粉末回収機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第2予備室を有し、該第2予備室は、前記バレルの他方の端面と第2開閉機構を介してつながっており、かつ、粉末回収口とつながっていることが好ましい。バレルの一方から原料粉末を連続的に導入し、原料粉末の導入は真空雰囲気又は所定のガス圧にて行うことができる構造であり、更には、バレルを回転させながら反対側へ原料粉末を連続的に移動させ、その移動中に粉末表面に成膜を行うことができる構造であり、更には、成膜が終了した被覆粉末を連続的に排出させ、バレル内を真空雰囲気又は所定のガス圧に維持しながら、被覆粉末を大気に排出できる構造とすることができる。
【0014】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記回転機構は、前記バレルの回転数の調節器及び回転方向の正転・逆転の切り換え器を有することが好ましい。バレルの動きを多様化させることができ、それによってバレル内の原料粉末をより効率的に攪拌し、その結果、原料粉末に均一に成膜することができる。
【0015】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記バレルの一方の端面側から前記バレルの中に前記原料粉末を供給する粉末供給機構と、前記バレルの一方の端面側から前記薄膜が表面に成膜されている被覆粉末を回収する粉末回収機構と、を有し、前記粉末供給機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第1予備室を有し、該第1予備室は、粉末投入口とつながっており、かつ、前記バレルの一方の端面と第1開閉機構を介してつながっており、前記粉末回収機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第2予備室を有し、該第2予備室は、前記バレルの一方の端面と第2開閉機構を介してつながっており、かつ、粉末回収口とつながっており、前記回転機構は、前記バレルの回転数の調節器及び回転方向の正転・逆転の切り換え器を有することが好ましい。バレルの一方から原料粉末を連続的に導入し、原料粉末の導入は真空雰囲気又は所定のガス圧で行うことができる構造であり、更には、バレルを回転させながら反対の一方へ原料粉末を連続的に移動させ、その移動中に粉末表面に成膜を行うことができる構造であり、更には成膜の厚さを確保するために粉末をバレルの回転軸方向に沿って前後させることができる構造であり、更には、成膜が終了した粉末を、バレルを逆回転させることで、粉末投入側から排出させ、バレル内を真空雰囲気又は所定のガス圧に維持しながら、粉末を大気に排出できる構造とすることができる。さらにバレルの動きを多様化させることができ、それによってバレル内の粉末をより効率的に攪拌し、その結果、原料粉末に均一に成膜することができる。
【0016】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記バレルの主軸の傾きを調整する角度調整機構を有することが好ましい。バレルに傾斜角度を付けることで粉末の移動を容易にし、導入、移動、排出をより確実に行うことができる。
【0017】
本発明に係る横型粉末表面成膜装置では、前記成膜機構は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法又はアトムビーム法による成膜源を有することが好ましい。各種成膜機構を選択することができ、それらのいずれにおいても、均一な被覆粉末を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、乾式法による粉末の攪拌効率を向上し、更には、薄膜で表面を被覆した粉末を連続的に製造し、更には、原料粉末に対して均等の成膜量となるように成膜速度を適正にコントロールすることで高い生産性を実現する横型粉末表面成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置の第1例を示す概略図である。
【
図2】第1例のバレル及び仕切りを示す斜視概略図である。
【
図3】第1例のバレル及び仕切りを示す断面概略図である。
【
図4】本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置の第2例を示す概略図である。
【
図5】第2例のバレル及び仕切りを示す斜視概略図である。
【
図6】本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置の第3例を示す概略図である。
【
図7】第3例のバレル及び仕切りを示す斜視概略図である。
【
図8】第1例を右下に傾けた状態を示す概略図である。
【
図9】第1例を右上に傾けた状態を示す概略図である。
【
図10】本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置の第4例を示す概略図である。
【
図11】第4例のバレル及び仕切りを示す斜視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。図中、各接合体において、同一名称の部位には、形状によらず、同一の符号を付した。
【0021】
次に
図1~
図3を参照しながら、本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置について説明する。本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置100は、横に傾けられたバレル1と、バレル1の主軸を回転軸2として自転させる回転機構7と、バレル1内の圧力を大気圧以下の所定の圧力に維持する圧力調整機構23と、バレル1内に設置された成膜機構43と、を有し、バレル1を回転させながらバレル1に入れられた原料粉末42の表面に薄膜を成膜する横型粉末表面成膜装置であって、バレル1は、側壁の内側面を底面44とし、回転軸2を中心としてらせん状に延びる通路45を有し、通路45の天面は開放されている。
【0022】
バレル1は、筒形状を有することが好ましく、円筒形状又は多角筒形状とすることがより好ましい。また、バレル1の端面は開口を有していることが好ましい。例えば、
図2に示すように、バレル1の端面は、中央に開口46を有する環状平面を有している形態、又は、端面に全く面のない開口47とした形態がある。バレル1は横に傾けられており、バレル1の主軸を回転軸2として自転させる回転機構7を有している。回転機構7は、駆動モータ3と、駆動モータ3によって回転させられる駆動シャフト4と、駆動シャフト4によって回転させられる駆動ロール5と、自在に回転する従属ロール6と、を有する。そして、駆動ロール5及び従属ロール6は、バレル1の側壁の外側面に接している。駆動モータ3が回転すると、駆動ロール5も回転し、バレル1が回転軸2を中心に自転させられる。このとき、従属ロール6も回転し、バレル1の重量バランスを整えている。回転機構7は、バレル1の回転数の調節器(不図示)を有することが好ましい。調節器は、例えば、駆動モータ3の回転調節器又は変速器である。回転機構7は、さらに、駆動シャフト4の回転方向の正転・逆転の切り換え器を有することが好ましい。切り換え器は、例えば、ギアによる回転変換器又は駆動モータ3の回転変換器である。
【0023】
バレル1は、真空室24によって、バレル1の少なくとも開口46,47が覆われている。
図1では、バレル1の側壁の一部を加熱・冷却機構48で覆い、バレル1の開口46,47を含むバレル両端を真空室24で覆った形態を示したが、バレル1の全体が真空室24によって覆われていてもよい。圧力調整機構23は真空室24に繋げられている。圧力調整機構23は、例えば排気ポンプである。圧力調整機構23は、さらに真空室24に接続された配管21と配管21に接続される第1ガス系統18と有することが好ましい。圧力調整機構23は、排気ポンプによる排気及び第1ガス系統18によるガス供給によって、バレル1内の圧力を大気圧以下の所定の圧力に維持し、所定のガス雰囲気に置換することができる。なお、加熱・冷却機構48は、バレル1を加熱することによって原料粉末42を加熱し、原料粉末42に成膜した後にバレル1を冷却しているが、原料粉末42を直接加熱するような機構を有していてもよい。
【0024】
成膜機構43はバレル1内に設置されていることが好ましい。
図1では、成膜機構43が成膜装置25及び成膜材料26を有する形態を図示した。成膜装置25によって成膜材料26からバレル1内の原料粉末42に向かって薄膜形成物質が放出される。原料粉末42は、重力によってバレル1内の側壁の内側面のうち鉛直下方側に集まっている。そこで、成膜機構43による薄膜形成物質の放出は、
図1に示すように、下方に向けられていることが好ましい。成膜機構43は、より具体的には、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法又はアトムビーム法による成膜源を有することが好ましい。各種成膜機構を選択することができ、それらのいずれにおいても、均一な被覆粉末を得ることができる。
【0025】
通路45は、バレル1の側壁の内側面を底面44とし、回転軸2を中心としてらせん状に延びる。通路45の天面は開放されている。成膜機構43による薄膜形成物質の放出は下方に向けられているため、通路45の天面が開放されていることによって、バレル1内の側壁の内側面のうち通路45内の鉛直下方側に集まっている原料粉末42の各粒子の表面に薄膜形成物質を供給することができる。
【0026】
通路45内の鉛直下方側に集まっている原料粉末42は、
図2及び
図3に示すように、バレル1が回転軸2を中心に自転するとき、鉛直下方側の底面に居残ろうとするため、通路内のらせん状の方向に自動的に攪拌されながら移動する。このとき、バレル1が同一方向に自転する限りは、原料粉末42は、バレル1の一方の端面側から他方の端面側に移動させられる。また、バレル1が逆方向に自転すると、原料粉末42はバレル1の他方の端面側から一方の端面側に移動、すなわち逆方向に移動させられる。
図1では、前記バレル1の鉛直下方側の底面44を紙面の向こう側に移動する方向に回転させると左から右の方向に原料粉末42は移動させられる。原料粉末42の移動中に成膜機構43を作動させれば、自動的に攪拌されている原料粉末42の表面に薄膜を成膜することができる。
【0027】
通路45は、回転軸を中心としてらせん状に延びる形態であればその形状は特に制限されない。例えば、バレル1の側壁の内表面側に溝を設けた形態が例示される。溝は、断面が例えば、半円形、V字形又はU字形を有する。
【0028】
本実施形態では、通路45は、隣り合う通路45間に仕切り40が設けられていることが好ましい。通路45に置かれた原料粉末42をバレル1の回転によって確実にかつ効率的に攪拌しつつバレル1の主軸方向に沿って移動させることができる。また仕切り40自体はその端面の面積が小さいことから、原料粉末42はより広い面積に広かった状態で成膜されることができ、成膜効率が高くなる。仕切り40としては、例えば、バレル1の側壁の内表面を加工して形成した仕切り壁の形態、又は、柵状の板をらせん状に形を整えて、バレル1の側壁の内表面に固定した仕切り板の形態がある。仕切り板の固定は、機械的に固定される形態、又は、接合されて固定される形態がある。仕切り40の底面44からの高さは、例えば1~20mmとする。原料粉末42は、仕切り40を乗り越えない量を供給されることが好ましい。仕切り40とその隣の仕切りとの間隔は、例えば、50~100mmが好ましい。仕切り40の厚さは、仕切りの端面への成膜を少なくすることを目的として1mm以下であることが好ましい。
【0029】
仕切り40の各種形態について説明する。本実施形態では、仕切り40は、連続的ならせん状の仕切り(
図1~
図3の横型粉末表面成膜装置100における仕切り40として図示。)、連続的ならせん階段状の仕切り(
図4~
図5の横型粉末表面成膜装置200における仕切り40として図示。)又は複数の仕切りが互いに一部分が向き合った状態でらせん階段状に配置された断続的ならせん階段状の仕切り(
図6~
図7の横型粉末表面成膜装置300における仕切り40として図示。)であるか、或いは、これら3種の仕切りのうち少なくとも2種を組み合わせた仕切りであることが好ましい。通路と通路との境界は、バレル1の側壁の内側面上であってバレル1の回転軸2を中心としてらせん状に延びる形状を有するところ、この境界線に沿って配置される仕切りは、上記の各種形態をとることができる。いずれの仕切り40も原料粉末42をらせん状の方向に沿って誘導することができる。仕切り40を組み合わせるとしては、連続的ならせん状の仕切りと連続的ならせん階段状の仕切りの組み合わせ、連続的ならせん状の仕切りと断続的ならせん階段状の仕切りの組み合わせ、連続的ならせん階段状の仕切りと断続的ならせん階段状の仕切りの組み合わせ、又は、連続的ならせん状の仕切りと連続的ならせん階段状の仕切りと断続的ならせん階段状の仕切りの組み合わせがある。
【0030】
本実施形態では、通路45は底面44に突起41を有することが好ましい。原料粉末42が突起41を通過した後、流体のごとく作用し、カルマン渦を形成することで攪拌効果を得ることができる。
図1~
図7では、円錐状を有する突起41を図示したが、円柱状の突起、円筒状の突起、多角柱状の突起、多角筒状の突起又は多角錐状の突起としてもよい。突起41の高さは、仕切り40の高さよりも低い方が好ましい。また、突起41の幅は、通路45の幅に対して、1~20%の長さであることが好ましい。突起41は、回転軸2の回転方向に対して、所定角度ごとに均等に配置することが好ましい。例えば、90°毎に配置する。また、回転軸2の方向に沿って、均等に配置することが好ましい。例えば、
図1に示すように、通路ごとに配置することが好ましい。
【0031】
本実施形態では、
図1に示すように、バレル1に衝撃を与えるノッカー50又は振動を与える振動子50を有することが好ましい。バレル1に与えられる衝撃又は振動により原料粉末42が攪拌され、より粉末全体に成膜されやすくなる。ノッカーと振動子は、両方設けてもよい。また、複数のノッカーを設けてもよく、複数の振動子を設けてもよい。
図1では、バレル1の下にノッカー50又は振動子50を配置したが、バレル1の横又は上に配置してもよい。ノッカーは、機械式、電気式、エアー式などどれでも良い。
【0032】
本実施形態では、
図1に示すように、バレル1の一方の端面側からバレル1の中に原料粉末を供給する粉末供給機構と、バレル1の他方の端面側から薄膜が表面に成膜されている被覆粉末を回収する粉末回収機構とを有し、粉末供給機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第1予備室13を有し、第1予備室13は、粉末投入口9とつながっており、かつ、バレル1の一方の端面と第1開閉機構15を介してつながっており、粉末回収機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第2予備室28を有し、第2予備室28は、バレル1の他方の端面と第2開閉機構27を介してつながっており、かつ、粉末回収口30とつながっていることが好ましい。
【0033】
本実施形態では、
図1に示すように、粉末投入口9は配管10を介してバルブ11に接続されており、バルブ11は配管12を介して第1予備室13に接続されている。第1予備室13はさらに配管14を介して第1開閉機構15に接続されており、第1開閉機構15は配管16を介して、真空室24中のバレル1の一方の端面にある開口46とつながっている。また、第1予備室13は、配管20を介して第2ガス系統17と接続されていて、また、配管22を介して排気ポンプ19とつながっている。配管20及び配管22には、適宜、バルブが配置されていることが好ましい。粉末供給機構は、粉末投入口9、第1予備室13、バルブ11、第1開閉機構15、第2ガス系統17、排気ポンプ19及びこれらを結ぶ配管を有している。さらに、第1ガス系統18が配管21を介して、真空室24中のバレル1の一方の端面にある開口46とつながっている。配管21には、適宜、バルブが配置されていることが好ましい。
【0034】
第1予備室13と粉末投入口9を一体型のケースとした場合には、バルブ11を省略できる。第1開閉機構15としてはバルブ又はシャッターである。
【0035】
第1ガス系統18は、バレル1内のAr、O2、N2などの雰囲気ガスを放出し、又は、バレル1内の成膜用ガスを放出する。第2ガス系統17は、Arなどで第1予備室13の圧力調整用のガスを放出する。第1予備室13の圧力が大気圧とほぼ一致したときバルブ11を開けることができる。
【0036】
排気ポンプ19は、第1予備室13内の真空引き及び第1予備室13の圧力調整を行う。第1予備室13とバレル1内の圧力がほぼ一致したとき第1開閉機構15を開けることができる。
【0037】
本実施形態では、
図1に示すように、粉末回収口30は配管35を介してバルブ29に接続されており、バルブ29は配管34を介して第2予備室28に接続されている。第2予備室28はさらに配管33を介して第2開閉機構27に接続されており、第2開閉機構27は真空室24のうちバレル1の他方の端面にある開口47側の底壁とつながっている。また、第2予備室28は、配管36を介して第3ガス系統31と接続されていて、また、配管37を介して排気ポンプ32とつながっている。配管36及び配管37には、適宜、バルブが配置されていることが好ましい。粉末回収機構は、粉末回収口30、第2予備室28、バルブ29、第2開閉機構27、第3ガス系統31、排気ポンプ32及びこれらを結ぶ配管を有している。
【0038】
第2予備室28と粉末回収口30を一体型のケースとした場合には、バルブ29を省略できる。第2開閉機構27としてはバルブ又はシャッターである。
【0039】
第3ガス系統31は、Arなどで第2予備室28の圧力調整用のガスを放出する。第2予備室28の圧力が大気圧とほぼ一致したときバルブ29を開けることができる。
【0040】
排気ポンプ32は、第2予備室28内の真空引き及び第2予備室28の圧力調整を行う。第2予備室28とバレル1内の圧力がほぼ一致したとき第2開閉機構27を開けることができる。
【0041】
圧力調整機構23はバレル1内にある第1ガス系統18から放出されたAr、O2、N2などの雰囲気ガスを排出する。また、バレル1内の成膜用ガスを排出する。
【0042】
横型粉末表面成膜装置100は、バレルの一方から原料粉末を連続的に導入し、原料粉末の導入は真空雰囲気又は所定のガス圧にて行うことができる構造であり、更には、バレルを回転させながら反対側へ粉末を連続的に移動させ、その移動中に粉末表面に成膜を行うことができる構造であり、更には、成膜が終了した粉末を連続的に排出させ、バレル内を真空雰囲気又は所定のガス圧に維持しながら、粉末を大気に排出できる構造とすることができる。
【0043】
本実施形態では、横型粉末表面成膜装置100は、バレル1の主軸の傾きを調整する角度調整機構8を有することが好ましい。バレル1に傾斜角度を付けることで粉末の移動を容易にし、導入、移動、排出をより確実に行うことができる。
図1ではバレル1の回転軸2と一致する主軸が水平である形態、
図8では主軸が右下に傾いていてバレル1の通路45に原料粉末42があるときは、原料粉末が左から右へ移動しやすくなる形態、
図9では主軸が右上に傾いていてバレル1の通路45に原料粉末42があるときは、原料粉末が右から左へ移動しやすくなる形態を示した。角度調整機構8として角度調整機構8a及び角度調整機構8bを伸縮させることで、バレル1の主軸の傾きを調整することが好ましい。粉末に成膜するときのバレル1の主軸の傾きは、水平方向を0°としたときに、最大20°まで角度調整することが好ましい。
【0044】
次に、
図10及び
図11を参照して変形例である横型粉末表面成膜装置400を説明する。
図10~
図11に示すように、横型粉末表面成膜装置400では、バレル1の一方の端面側からバレル1の中に粉末を供給する粉末供給機構と、バレル1の一方の端面側から薄膜が表面に成膜されている粉末を回収する粉末回収機構と、を有し、粉末供給機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第1予備室13を有し、第1予備室13は、粉末投入口9とつながっており、かつ、バレル1の一方の端面と第1開閉機構15を介してつながっており、粉末回収機構は、圧力調整及び雰囲気調整の可能な第2予備室28を有し、第2予備室28は、バレル1の一方の端面と第2開閉機構27を介してつながっており、かつ、粉末回収口30とつながっており、回転機構は、バレル1の回転数の調節器及び回転方向の正転・逆転の切り換え器を有することが好ましい。
【0045】
図1~
図3に示した横型粉末表面成膜装置100との相違点を中心に説明する。下記に示す相違点以外は、横型粉末表面成膜装置100と横型粉末表面成膜装置400とは同様の構成を有している。
【0046】
横型粉末表面成膜装置400は、横型粉末表面成膜装置100の粉末供給機構及び粉末回収機構と同様の粉末供給機構及び粉末回収機構を有している。しかし、横型粉末表面成膜装置100の粉末供給機構が、バレルの一方の端面側に接続され、粉末回収機構が他方の端面側に接続されているのに対して、横型粉末表面成膜装置400では、粉末供給機構と粉末回収機構の両方がバレルの一方の端面側に接続されている。また、横型粉末表面成膜装置100では、
図2に示すように、バレル1の一方の端面側の端面(
図1における左側の端面)は、中央に開口46を有する環状平面を有している形態であり、バレル1の他方の端面側の端面(
図1における右側の端面)は、端面に全く面のない開口47とした形態である。これに対して、横型粉末表面成膜装置400では、
図11に示すように、バレル1の一方の端面側の端面(
図10における左側の端面)は、端面に全く面のない開口47とした形態であり、バレル1の他方の端面側の端面(
図10における右側の端面)は、中央に開口46を有する環状平面を有している形態である。すなわち、薄膜で被覆済みの粉末を回収する側のバレル1の端面を、端面に全く面のない開口47を有する形態としている。なお、仕切り40があると、粉末はバレル1の回転軸2の方向に沿って移動が制限されるため、バレル1の回転を制御することによって、真空室24内に粉末がこぼれることを防止できるため、バレル1の端面を、中央に開口46を有する環状平面を有している形態とせずに、端面に全く面のない開口47を有する形態に統一しても構わない。また、バレル1の端面を、中央に開口46を有する環状平面を有している形態としたとき、環状平面を形成する環状板を取り外し可能としてもよい。
【0047】
横型粉末表面成膜装置400では、バレルの一方から原料粉末を連続的に導入し、原料粉末の導入は真空雰囲気又は所定のガス圧で行うことができる構造であり、更には、バレルを回転させながら反対の一方へ粉末を連続的に移動させ、その移動中に粉末表面に成膜を行うことができる構造であり、更には成膜の厚さを確保するために粉末をバレルの回転軸方向に沿って前後させることができる構造であり、更には、成膜が終了した粉末を、バレルを逆回転させることで、粉末投入側から排出させ、バレル内を真空雰囲気又は所定のガス圧に維持しながら、粉末を大気に排出できる構造とすることができる。さらにバレルの動きを多様化させることができ、それによってバレル内の粉末をより効率的に攪拌し、その結果、原料粉末に均一に成膜することができる。
【0048】
(予備室の変形例)
図1において、第1開閉機構15と真空室24との間に第3予備室を設けてもよい(不図示。)。バレル内と同等の圧力の状態で原料粉末を待機させた状態であれば、バレルに原料粉末を投入するときに投入量を調整していつでも投入できるとともに、第1予備室では新たな原料粉末を粉末投入口から入れることができる。また、真空室24と第2開閉機構27との間に第4予備室を設けてもよい(不図示。)。バレル内と同等の圧力の状態で被覆粉末を待機させた状態であれば、第2予備室に被覆粉末を移動させる量を調整できる。被覆粉末の量が第2予備室の容量を超えてしまったときなどに特に有効である。
【0049】
次に、本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置を用いて、薄膜を表面に被覆した粉末の製造方法について説明する。
【0050】
(原料をバレルに投入する事前工程)
まず、原料粉末は、真空雰囲気、或いは、更に加熱するなどで事前に水分を除去することが好ましい。粉末の凝集を防ぐ効果がある。これらの粉末に本横型粉末表面成膜装置で成膜を行う。次に粉末投入口9から大気解放された第1予備室13に原料粉末を入れ、バルブ11及び第1開閉機構15を閉の状態で、第2ガス系統17及び排気ポンプ19を用いて、第1予備室13を所望の圧力とし、ガス雰囲気に置換する。
【0051】
(バレル内の圧力及び雰囲気調整)
バレル1の内部に原料粉末を供給する前に、第1ガス系統18及び圧力調整機構23を用いて、真空室24及びバレル1内を所望の圧力とし、所望のガス雰囲気に置換する。
【0052】
(バレルへ原料を投入する工程)
第1開閉機構15を開とし、真空室24中のバレル1の内部に原料粉末を供給する。このとき、第1予備室13の圧力と真空室24及びバレル1内の圧力をほぼ一致させておくことが好ましい。また、原料粉末の供給は、一定速度で行うことが好ましい。
【0053】
(バレル内での原料粉末の移動及び成膜)
バレル1の鉛直下方側の底面44を紙面の向こう側に移動する方向に回転させることで、原料粉末42が通路45に沿って移動、すなわち、バレル1の回転軸2に沿って移動する。このとき、成膜機構43を作動させ、成膜を行う。また、バレル1に衝撃を与えるノッカー50又は振動を与える振動子50を作動させることが望ましい。原料粉末42がバレル1の一方の端面から他方の端面に移動する間に十分な膜厚の薄膜を成膜することができたら、原料粉末42を粉末回収口30に向かわせる準備が整う。また、薄膜の膜厚が不十分である場合、バレル1の鉛直下方側の底面44を紙面の手前側に移動する方向に回転方向を逆転させて、成膜を継続する。次いで原料粉末42がバレル1の一方の端面側に戻されたらバレル1の鉛直下方側の底面44を紙面の向こう側に移動する方向に回転方向をさらに逆転させる。こうしてバレル1の回転方向を正転、逆転させて、薄膜の膜厚を所望厚さとする。
【0054】
(成膜済みの粉末の回収の事前工程)
バルブ29及び第2開閉機構27を閉の状態で、第3ガス系統31及び排気ポンプ32を用いて、第2予備室28を所望の圧力とし、ガス雰囲気に置換する。このとき、第2予備室28の圧力と真空室24及びバレル1内の圧力をほぼ一致させておくことが好ましい。
【0055】
(成膜済みの粉末の回収の工程)
第2開閉機構27を開とし、第2予備室28に成膜済みの粉末を移動させる。移動完了後、第2開閉機構27を閉とする。ついで、排気ポンプ32を停止し、第3ガス系統31を用いて第2予備室28内を大気圧にする。次にバルブ29を開とし、粉末回収口30から成膜済みの粉末を取り出す。
【0056】
本実施形態では、連続式となる構造とし、更には、成膜を行うバレル1内にらせん状の通路45を与える機構とすることで、攪拌効率の向上を図ることが可能となった。更には、らせん状の仕切り40により、粉末の移動が制御され、バレル1の回転速度で成膜時間を制御できる。その際、バレル1内の粉末成膜部位に、均等に且つ連続的に原料粉末42を供給することで、成膜効率を上げ、更にはバレル長を、バレル1の回転の正・逆を切り替えることで実質的に長くするなど可変とすることで、成膜生産性の向上を図ることができる。また、バレル1内は、常に真空を保持し、スパッタリングやイオンプレーティング、イオンビーム、アトムビームにて成膜を行う構造を有し、必要なガスを必要なガス圧で維持し続ける構造としている。例えば0.5Paの圧力でアルゴンを入れて維持する構造である。更に原料粉末を大気圧から投入し、原料粉末を保持供給する第1予備室で所定の真空雰囲気を作り、更に、バレル1内と同じガス圧に調整した後、原料粉末をバレル1の端部へ連続的に供給することができる。バレル1に入れられた原料粉末42は、らせん状の仕切り40の間隔に応じて広がり、且つ、重力で底部に存在する。そこに、成膜機構43から成膜成分を飛ばして、粉末の表面に到達させ、成膜を進める。らせん状の仕切り40の間隔に広がる粉末の攪拌は緩やかである為、例えば衝撃や振動を与えることでより攪拌が行われる。ノッカーはバレルの周囲を振動させ、その振動が伝播して粉末を振動させる。この振動により粉末が攪拌され、更に、粉末全体にわたって成膜される。バレル1内の粉末はらせん状の仕切りの下部に集まり移動していくが、らせん形状に対して同方向にバレルを回転させる正回転では排出される粉末は粉末導入の反対側に排出される。粉末供給や排出はバレル内の真空を保持する為、別のチャンバーが必要となるが、
図10及び
図11に示すように、設備を簡素化する為、粉末の導入側を更に排出側とする為、正回転にて成膜した粉末を逆回転で粉末を導入側に戻し排出することも可能である。更には、原料粉末42の成膜時において角度調整機構8によってバレル1を粉末の進行方向に20°以内の角度を付けることで粉末の移動を容易にし、導入、移動、排出を確実に行う事ができる。原料粉末42の成膜時においてバレル1の角度が20°を超えると、らせん状の仕切り40に粉末が凝集してしまい効果的な成膜が出来ない場合がある。粉末の流動性を見ながら、仕切り40同士の間の通路45に広く粉末が分布する角度とする事が必要である。粉末排出を目的とする場合は、これ以上の角度にすることに何ら問題は無い。
【0057】
本実施形態に係る横型粉末表面成膜装置でスパッタリングにて成膜する場合、プラズマ発生ガスとしてAr、Kr又はXeを導入し、そのガス圧は0.01~10Paの間で有ることが好ましい。更に、直流電源にて酸化物、窒化物の高速成膜を行う際には、酸素ガス及び/又は窒素ガスをプラズマガス圧の10%以下となるように添加してプラズマを発生させて粉末表面に成膜を行う。Ar、Kr、Xeのうち、より好ましくはArを使う。これはスパッタ速度が高く、不活性ガスであることから、ターゲットを変質させないことが重要である。更には、10Pa以下の圧力とする。10Paを超える高いガス圧では、ターゲットからスパッタした原子が拡散してしまい、更には、原子の移動エネルギーが下がってしまうことで、粉末へ原子が付着しても剥がれてしまい付着率の低下が発生するからである。更には、通常のスパッタでは0.1~10W/cm2程度とすることが多いが、カソード出力を10W/cm2を超えるようにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0058】
100,200,300,400 横型粉末表面成膜装置
1 バレル
2 回転軸
3 駆動モータ
4 駆動シャフト
5 駆動ロール
6 従属ロール
7 回転機構
8,8a,8b 角度調整機構
9 粉末投入口
10,12,14,16,20~22,33~37 配管
11,29 バルブ
13 第1予備室
15 第1開閉機構
17 第2ガス系統
18 第1ガス系統
19,32 排気ポンプ
23 圧力調整機構
24 真空室
25 成膜装置
26 成膜材料
27 第2開閉機構
28 第2予備室
30 粉末回収口
31 第3ガス系統
40 仕切り
41 突起
42 原料粉末
43 成膜機構
44 底面
45 通路
46,47 開口
48 加熱・冷却機構
50 ノッカー又は振動子