(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131221
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ソーラパネル装置
(51)【国際特許分類】
H02S 40/42 20140101AFI20220831BHJP
【FI】
H02S40/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030052
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】515086687
【氏名又は名称】ヒカリレンタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】片町 光晴
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151BA18
5F151JA01
5F151JA05
5F151JA09
5F151JA27
5F151JA30
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で電力を使用せずにソーラパネルの効率的な冷却が可能となるソーラパネル装置を提供する。
【解決手段】ソーラパネル装置は、太陽光を表面で受光して発電を行うソーラパネル(100)とソーラパネル(100)の裏面の少なくとも一部に接着した層状の冷却部材(103)とからなる。冷却部材は主成分としての水酸化カルシウムに増粘剤を加えて所望の粘度にした冷却材料を乾燥させることで形成することができ、特に層状の冷却部材は塗布、シート貼り付けあるいはスプレー噴霧により形成することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を表面で受光して発電を行うソーラパネルと、
前記ソーラパネルの裏面の少なくとも一部に接着した層状の冷却部材と、
からなることを特徴とするソーラパネル装置。
【請求項2】
前記層状の冷却部材は、主成分としての水酸化カルシウムに増粘剤を加えて所望の粘度にした冷却材料を乾燥させることで形成されたことを特徴とする請求項1に記載のソーラパネル装置。
【請求項3】
前記層状の冷却部材は前記冷却材料を前記ソーラパネルの裏面に塗布して乾燥させることにより形成されたことを特徴とする請求項2に記載のソーラパネル装置。
【請求項4】
前記層状の冷却部材は、前記冷却材料をシート基材上に塗布することで冷却シートを形成し、前記冷却シートを前記ソーラパネルの裏面に貼り付けることにより形成されたことを特徴とする請求項2に記載のソーラパネル装置。
【請求項5】
前記層状の冷却部材は、前記冷却材料をスプレー噴霧することにより前記ソーラパネルの裏面に形成されたことを特徴とする請求項2に記載のソーラパネル装置。
【請求項6】
前記増粘剤はフコイダンおよび/またはリグニンを含む天然成分からなることを特徴とする請求項1-5の何れか1項に記載のソーラパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光発電に用いる太陽光電池(セル)を複数配列したパネル(以下、ソーラパネルという。)の冷却技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラパネルの発電効率はパネル温度が25℃以上になると急速に低下することが知られている。特に日照量が多くなる夏場ではパネル表面温度が日中60~80℃以上に達することもあり、これにより発電量が30%近く低下することが確認されている。逆に言えば、パネルを冷却することで発電量を向上させることが可能となる。そこで、発電ロスを抑制する種々のパネル冷却技術が提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1に開示された冷却システムは、パネル上部に流体噴霧器を設け、流体噴霧器からパネル外面にシート状の流体を流して冷却する構成を採用している。また、特許文献2に開示された冷却装置は、パネル背面にパネル冷却管を設け、パネル冷却管内の冷却用の熱媒体が熱を吸収することで自然対流が生じ、それにより熱媒体を循環させる構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2016-503284
【特許文献2】特開2015-213395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パネル外面に流体を流す冷却システムでは流体を収集して循環させる必要があるために、冷却用の流体を循環させる設備を必要とし、さらにパネル冷却のために電力を消費するという問題がある。
【0006】
また、熱媒体の自然対流を利用する冷却装置は、自然対流を利用することで冷却に要する電力消費を低減できるものの、温度センサや排出弁の稼働に電力を必要とし、また熱媒体を循環させる設備は必要となるために装置構成の複雑化、大型化を避けることが困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡易な構成で電力を使用せずにソーラパネルの効率的な冷却が可能となるソーラパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるソーラパネル装置は、太陽光を表面で受光して発電を行うソーラパネルと、前記ソーラパネルの裏面の少なくとも一部に接着した層状の冷却部材と、からなることを特徴とする。冷却部材を裏面に接着させるだけで冷却効果が得られるために、複雑な冷却装置が不要となり、電力も消費せずソーラパネルの効率的な冷却が可能となる。
前記層状の冷却部材は、主成分としての水酸化カルシウムに増粘剤を加えて所望の粘度にした冷却材料を乾燥させることで形成され得る。冷却効果が長期間持続しソーラパネルの冷却に適している。
前記層状の冷却部材は前記冷却材料を前記ソーラパネルの裏面に塗布して乾燥させることにより形成され得る。塗布という簡単な工程だけで冷却効果が長期間持続しソーラパネルの冷却に適している。
前記層状の冷却部材は、前記冷却材料をシート基材上に塗布することで冷却シートを形成し、前記冷却シートを前記ソーラパネルの裏面に貼り付けることにより形成され得る。シート状に形成して貼り付けるという簡単な工程で形成でき、またシート基材を挟むことで密着性が向上し、より高い冷却効果が得られる。
前記層状の冷却部材は、前記冷却材料をスプレー噴霧することにより前記ソーラパネルの裏面に形成され得る。スプレー噴霧により冷却材料を均一に密着形成でき、冷却能力のばらつきを抑制できる。
前記増粘剤はフコイダンおよび/またはリグニンを含む天然成分から形成されても良い。入手しやすい天然成分を用いることで廃棄時の環境汚染を軽減できる。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明によれば簡易な構成で電力を使用せずにソーラパネルの効率的な冷却が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態によるソーラパネル装置の表側(受光面)を示す平面図(A)および裏側を示す底面図(B)である。
【
図2】本実施形態によるソーラパネル装置の模式的な側面断面図である。
【
図3】本実施形態によるソーラパネル装置の製造方法の第1例を示す製造工程図である。
【
図4】本実施形態によるソーラパネル装置の製造方法の第2例を示す製造工程図である。
【
図5】本実施形態によるソーラパネル装置の製造方法の第3例を示す製造工程図である。
【
図6】本発明の他の実施形態によるソーラパネル装置の裏側を示す底面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態によるソーラパネル装置の配線を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に述べる図面は本実施形態を説明するための模式的な図示であり、図示された構成は構成部材の実際の寸法比を必ずしも反映したものではない。また以下に述べる実施形態の説明は本発明の技術範囲を限定する趣旨ではない。
【0012】
1.一実施形態
図1および
図2に例示するように、本発明の一実施形態によるソーラパネル装置は、ソーラパネル100がフレーム102に固定され、ソーラパネル100のバックシート101側の全面に冷却部材103が層状に形成されている。ソーラパネル100の熱は冷却部材103の内部接触面から吸収され、冷却部材103の表面から空中へ放散する。冷却部材103は、後述するように、いくつかの方法により形成することができる。
【0013】
ソーラパネル100は一般的に入手できるものでよく、通常、複数のセルが配列されて封止され、その受光面とは反対側の裏面にバックシート101が設けられている。さらに裏面には複数のセルによる起電力を出力するためのケーブルを束ねたケーブルボックス104が設けられている。
【0014】
<冷却部材>
冷却部材103は持続的な冷却効果を有し、かつ容易に入手できる材料であることが望ましい。またソーラパネル装置の廃棄を考慮して、冷却部材103を天然成分から製造することが更に望ましい。冷却部材103は容易に入手できる材料から生成される。本実施形態によれば、冷却効果を示す水酸化カルシウムあるいは炭酸マグネシウムを主成分とし、それに天然成分の増粘剤を加えて所望の粘度を有する冷却材料を生成する。増粘剤としては、褐藻類に含まれるフコイダン、木材に含まれるリグニンを用いることができる。
【0015】
冷却部材103の原料として例えば水酸化カルシウム、フコイダンおよびリグニンを用い、それらを混合しアルカリ水で攪拌することで冷却部材103を製造する。たとえば1Kgの水酸化カルシウム粉末(粒度400メッシュほど)をアルカリ水350ccに入れ、そこにゼラチン状のフコイダン50g、さらにリグニン成分としてカルボキシルメチルセルロース(CMC)粉末を50g投入し混ぜ合わせ、粘土状に粘りが出てきたら暗冷所で1日寝かせることで製造することができる。
【0016】
水酸化カルシウムは漆喰の主成分でもあり、空気中の二酸化炭素を吸収して硬化し、乾燥すると長い年月に渡って冷却効果を保持することが知られている。このような特性を有する水酸化カルシウムは長く使用されるソーラパネル100の冷却に適している。
【0017】
2.製造方法
冷却部材103はソーラパネル100のバックシート101側の全面に層状に形成されるが、その方法として、a)塗布、b)シート貼付、およびc)スプレー噴霧があり、それぞれに適した冷却部材103が用意される。以下詳細に説明する。
【0018】
a)塗布
上述した水酸化カルシウム、フコイダンおよびリグニンを主原料として混ぜ合わせて粘土状の冷却材料を生成し、この冷却材料を以下に示すように漆喰の要領でソーラパネル100のバックシート101側の全面に塗布する。
【0019】
図3(A)に示すように、ソーラパネル100をフレーム102に固定した後、
図3(B)に例示するようにフレーム102内のバックシート101の全面に粘土状の冷却材料103aをこて又はへら等の器具201を用いて塗布する。
図3(C)に示すように、粘土状の冷却材料103aを厚さ1~5mm程度に塗布することで冷却部材103をバックシート101上に形成し乾燥硬化させる。これにより冷却部材103はソーラパネル100の熱を吸収して空中に放出する冷却効果を長年にわたって保持することができる。
【0020】
なお、冷却部材103の放熱効率を向上させるために、ソーラパネル100のバックシート101側に熱伝導率90%以上のシリコン樹脂を下地処理剤として塗布してもよい。この下地層の上に冷却部材103の材料を上述したように塗布することで冷却効果を更に向上させることができる。
【0021】
b)シート貼付
冷却部材103の材料をシート化が可能な強度となるように成分配合し、予めシート状に成型しておくことで、シート状の冷却部材103をカットして貼付するだけでソーラパネル100の裏面に冷却部材103を簡便に形成することができる。
【0022】
先ず、
図4(A)に示すように、シート基材301上に十分な強度と柔軟性を有する冷却材料103bを厚さ1~5mm程度に塗布することで冷却シート300を形成する。シート基材301はレーヨン等の天然素材をベースにした材料である。一例として、冷却材料103bは、上述した水酸化カルシウムを主原料とし、さらにアクリルエマルジョン樹脂あるいは高分子吸収体およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を混練することで生成される。冷却材料103bをシート基材301に塗布し、冷却シート300をロール生産する。
【0023】
続いて、
図4(B)に示すように、冷却シート300をソーラパネル100のサイズに合わせてカッティングし、ソーラパネル100のバックシート101上に貼り付ける。シート基材301により冷却シート300をバックシート101上に密着させることができる。
【0024】
なお、冷却シート300の冷却部材103bの放熱効率を向上させるために、ソーラパネル100のバックシート101側に熱伝導率90%以上のシリコン樹脂を接着層として形成し、その上に冷却シート300を貼り付けてもよい。これにより冷却シート300の冷却性能を高く維持することができる。
【0025】
c)スプレー噴霧
冷却部材103の材料を噴霧可能な物性となるように調整することで、スプレー噴霧により冷却部材103をソーラパネル100の裏面に形成することができる。
【0026】
まず、上述した水酸化カルシウムを主成分として材料(たとえば水酸化カルシウム、フコイダンおよびリグニン)の各成分を噴霧可能となるように細粒子化する。一例として各成分の粒度を800メッシュまで細粒化する。細粒子化された各成分をPH11~12の強アルカリ水で希釈して攪拌することで粘度を低く抑えた噴霧可能な冷却材料103cを製造する。強アルカリ水を用いることで冷却材料103cが親水性を保ち、噴霧時にパネルとの密着性を向上させることができる。
【0027】
図5(A)に示すように、コンプレッサ202にスプレーガン203を接続することで、噴霧可能な冷却材料103cをコンプレッサ202によりスプレーガン203からスプレー噴霧することができる。
【0028】
図5(B)に示すようにスプレーガン203を移動させることでフレーム102内のバックシート101の全面に冷却材料103cをスプレー噴霧することができる。上述したように冷却材料103cは親水性を持っているので、スプレー噴霧された冷却材料103cはソーラパネル100のバックシート101と密着する。こうして、
図5(C)に示すように所定の厚さ(1~5mm程度)の冷却材料103cをバックシート101上に密着形成することができる。スプレー噴霧により冷却材料103cを均一に密着形成できるので、スプレー噴霧方式は冷却能力にばらつきがないという利点がある。また、冷却材料103cを密着させることができるので、ソーラパネル100のバックシート101側に下地処理剤を塗布する必要がない。
【0029】
所定の厚さの冷却材料103cを乾燥硬化させることで、上述した冷却部材103がバックシート101上に密着形成される。これにより冷却部材103はソーラパネル100の熱を吸収して空中に放出する冷却効果を長年にわたって保持することができる。
【0030】
3.他の実施形態
上述した実施形態ではソーラパネル100のバックシート101の全面に冷却部材103が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、バックシート101の一部、特に発電量の低減を最も効果的に抑制できる部分に冷却部材103を形成することもできる。バックシート101の一部にのみ冷却部材103を形成することで、発電量の低下を効果的に抑制しつつソーラパネル装置の軽量化および低コスト化が可能となる利点がある。
【0031】
以下、本発明の他の実施形態について
図6及び
図7を参照しながら説明する。なお、上記
図1および
図2に示す実施形態と同様の部材には同じ参照番号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
図6に例示するように、本実施形態によれば、冷却部材103がソーラパネル100のバックシート101側の一部に形成される。この形成方法は上述した塗布、貼付あるいはスプレー噴霧を用いることができる。ここでは一例としてケーブルボックス104が設置された上半分のみに冷却部材103が形成され、下半分はソーラパネル100のバックシート101が露出している。
【0033】
図7に例示するように、ソーラパネル100は複数のセルCを直列接続したセル直列接続部401が複数個並列接続された回路を有し、各セル直列接続部401の正電極側のケーブルがケーブルボックス104に収容され、負電極側が共通の接地電極に接続されることで複数のセル直列接続部401が並列接続されている。本実施形態では、各セル直列接続部401の正電極側の半数のセル部分(冷却部材施工範囲)が冷却部材103により冷却される。
図7に示すような上半分の冷却部材施工範囲は、各セル直列接続部401のケーブルボックス104に近い側に相当し、この部分のセル出力を高く維持することでパネル全体の効率を高めることができる。言うまでもなく冷却範囲はセル直接接続部401の正電極側の1/2に限定されるものではなく、効率を高めるセル部分を冷却すれば良く、任意の部分を任意の割合で冷却することができる。
【0034】
このようにバックシート101の一部、特にセル直列接続部401の正電極側の所定割合部分だけに冷却部材103を塗布、貼付あるいは噴霧形成することで、発電量の低減を効果的に抑制でき、全体として発電量を向上させることができると共に装置の軽量化および低コスト化が可能なる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明はどのような種類のソーラパネルの冷却にも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
100 ソーラパネル
101 バックシート
102 フレーム
103 冷却部材
103a、103b、103c 冷却材料
104 ケーブルボックス
201 塗布器具
300 冷却シート
301 シート基材
401 セル直列接続部
C セル(太陽光電池)