(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131243
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】鋼板コンクリート構造及び鋼板コンクリート構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
E04B1/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030093
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 智弘
(72)【発明者】
【氏名】籔内 耕一
(72)【発明者】
【氏名】澤田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】古野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋介
(72)【発明者】
【氏名】石木 健士朗
(57)【要約】
【課題】施工に係る部品の取扱いの負担を軽減する鋼板コンクリート構造及びその施工方法を提供する。
【解決手段】鋼板コンクリート構造壁1は、一対の表面鋼板3と、表面鋼板3同士の間の空間に打設されたコンクリートからなるコンクリート部5と、表面鋼板3同士を接続するとともにコンクリート部5に埋込まれた隔壁部9と、を備え、隔壁部9は、各々の表面鋼板3から面外方向に立ち上がるように設けられた板状の鋼製の立設板部17と、立設板部17同士を連結する立設板連結部21と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の表面鋼板と、
前記表面鋼板同士の間の空間に打設されたコンクリートからなるコンクリート部と、
前記表面鋼板同士を接続するとともに前記コンクリート部に埋込まれた隔壁部と、を備え、
前記隔壁部は、各々の前記表面鋼板から面外方向に立ち上がるように設けられた板状の鋼製の立設板部と、前記立設板部同士を連結する立設板連結部と、を有する、鋼板コンクリート構造。
【請求項2】
前記立設板連結部は、立ち上がり方向に互いに間隔をあけて配置された前記立設板部同士の間に架け渡すように配置され前記立設板部同士の連結に介在する複数の添接板を有し、
前記添接板同士が互いに間隔をあけて配置され当該添接板同士の間且つ前記立設板部同士の間に前記隔壁部を貫通する開口が形成されている、請求項1に記載の鋼板コンクリート構造。
【請求項3】
前記表面鋼板は面内方向に連結された複数の鋼製の表面鋼板部品を有しており、
一方の前記表面鋼板における前記表面鋼板部品同士の連結部と、他方の前記表面鋼板における前記表面鋼板部品同士の連結部と、が互いに前記面内方向にずれて位置している、請求項1又は2に記載の鋼板コンクリート構造。
【請求項4】
一対の表面鋼板と、
前記表面鋼板同士の間の空間に打設されたコンクリートからなるコンクリート部と、
前記表面鋼板同士を接続するとともに前記コンクリート部に埋込まれた隔壁部と、を備える鋼板コンクリート構造の施工方法であって、
前記表面鋼板の少なくとも一部をなす鋼製の表面鋼板部品と、前記表面鋼板部品から面外方向に立ち上がるように設けられた板状の鋼製の立設板部と、を有する鋼板ユニットの前記立設板部を他の前記鋼板ユニットの前記立設板部に連結して一対の前記立設板部を含む前記隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備える、鋼板コンクリート構造の施工方法。
【請求項5】
前記隔壁部形成工程を含み一対の前記表面鋼板と前記隔壁部とを有する鋼殻体を形成する鋼殻体形成工程と、
前記鋼殻体の内部に前記コンクリートを打設して前記コンクリート部を形成するコンクリート打設工程と、を備える、請求項4に記載の鋼板コンクリート構造の施工方法。
【請求項6】
前記隔壁部形成工程では、
立ち上がり方向に互いに間隔をあけて配置された前記立設板部同士の間に架け渡すように配置された複数の添接板を介して前記立設板部同士が連結され、
前記添接板同士が間隔をあけて配置され当該添接板同士の間且つ前記立設板部同士の間に前記隔壁部を貫通する開口が形成される、請求項4又は5に記載の鋼板コンクリート構造の施工方法。
【請求項7】
前記開口が施工作業者の移動用通路として利用されて実行される、請求項6に記載の鋼板コンクリート構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板コンクリート構造及び鋼板コンクリート構造の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の鋼板コンクリート壁の施工方法が知られている。この施工方法で用いられる鋼板ブロックは、表面鋼板の一部をなす表裏一対の鋼板部と鋼板部同士を連結する隔壁部とを一体化したものである。この鋼板ブロックを積み上げるとともに各鋼板ブロックの内部にコンクリートを充填し、鋼板ブロックの外壁面端部同士を接合することで、鋼板コンクリート壁が構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の施工方法で使用される鋼板ブロックは、中空構造ではあるものの構築される鋼板コンクリート壁の壁厚に相当する厚みをもち、嵩が大きいものである。このように使用する部品の嵩が大きい場合には、工場から施工現場までの部品の運搬の効率が低下し、施工現場での部品の取り回しや保管のスペースも大きくする必要がある、といったように、部品の取扱いに関する負担が大きくなる。
【0005】
そこで、本発明は、施工に係る部品の取扱いの負担を軽減する鋼板コンクリート構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鋼板コンクリート構造は、一対の表面鋼板と、表面鋼板同士の間の空間に打設されたコンクリートからなるコンクリート部と、表面鋼板同士を接続するとともにコンクリート部に埋込まれた隔壁部と、を備え、隔壁部は、各々の表面鋼板から面外方向に立ち上がるように設けられた板状の鋼製の立設板部と、立設板部同士を連結する立設板連結部と、を有する。
【0007】
立設板連結部は、立ち上がり方向に互いに間隔をあけて配置された立設板部同士の間に架け渡すように配置され立設板部同士の連結に介在する複数の添接板を有し、添接板同士が互いに間隔をあけて配置され当該添接板同士の間且つ立設板部同士の間に隔壁部を貫通する開口が形成されている、こととしてもよい。
【0008】
表面鋼板は面内方向に連結された複数の鋼製の表面鋼板部品を有しており、一方の表面鋼板における表面鋼板部品同士の連結部と、他方の表面鋼板における表面鋼板部品同士の連結部と、が互いに面内方向にずれて位置している、こととしてもよい。
【0009】
本発明の鋼板コンクリート構造の施工方法は、一対の表面鋼板と、表面鋼板同士の間の空間に打設されたコンクリートからなるコンクリート部と、表面鋼板同士を接続するとともにコンクリート部に埋込まれた隔壁部と、を備える鋼板コンクリート構造の施工方法であって、表面鋼板の少なくとも一部をなす鋼製の表面鋼板部品と、表面鋼板部品から面外方向に立ち上がるように設けられた板状の鋼製の立設板部と、を有する鋼板ユニットの立設板部を他の鋼板ユニットの立設板部に連結して一対の立設板部を含む隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備える。
【0010】
鋼板コンクリート構造の施工方法は、隔壁部形成工程を含み一対の表面鋼板と隔壁部とを有する鋼殻体を形成する鋼殻体形成工程と、鋼殻体の内部にコンクリートを打設してコンクリート部を形成するコンクリート打設工程と、を備える、こととしてもよい。
【0011】
隔壁部形成工程では、立ち上がり方向に互いに間隔をあけて配置された立設板部同士の間に架け渡すように配置された複数の添接板を介して立設板部同士が連結され、添接板同士が間隔をあけて配置され当該添接板同士の間且つ立設板部同士の間に隔壁部を貫通する開口が形成される、こととしてもよい。
【0012】
鋼板コンクリート構造の施工方法は、上記開口が施工作業者の移動用通路として利用されて実行される、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工に係る部品の取扱いの負担を軽減する鋼板コンクリート構造及びその施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る鋼板コンクリート構造壁の一部を破断して示す斜視図である。
【
図2】(a)は、鋼殻体の平面図であり、(b)は、鋼殻体の側面図である。
【
図3】(a)は、リブ部の形成方法を示す斜視図であり、(b)は、リブ部材の平面図である。
【
図4】(a)はチャンネル材の平面図、(b)はその側面図であり、(c)は、二分割したチャンネル材を示す斜視図である。
【
図5】(a)~(c)は、鋼殻体の構築方法を順次示す図である。
【
図6】(a)~(c)は、
図5に続いて鋼殻体の構築方法を順次示す図である。
【
図7】(a)は、鋼板ユニットを車両に搭載した状態を示す図であり、(b)は、鋼板ユニットを車両に搭載した他の状態を示す図であり、(c)はH鋼の平面図、(d)はその側面図である。
【
図8】(a),(b)は、SC構造壁に貫通孔を形成する方法を説明する側面図であり、(c),(d)は、SC構造壁に通路用開口を形成する方法を説明する側面図である。
【
図9】(a)~(e)は、チャンネル材の二分割の各変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る鋼板コンクリート構造及びその施工方法の一実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る鋼板コンクリート構造壁1(以下「SC構造壁1」という)の一部を破断して示す斜視図である。SC構造壁1は、例えば原子力発電所の原子炉建屋の壁に適用される耐震構造や航空機防護構造の鉛直な壁である。以下では、図に示すようにSC構造壁1の高さ方向をZ方向、SC構造壁1の壁厚方向をX方向、SC構造壁1が水平に延在する方向をY方向とし、SC構造壁1の各部の位置関係やSC構造壁1の部品の各部の位置関係の説明にX,Y,Zを用いる場合がある。
【0016】
SC構造壁1は、壁の表裏両面に配置される一対の表面鋼板3と、当該表面鋼板3同士に挟まれたコンクリート部5とを備えている。コンクリート部5は、表面鋼板3同士の間の空間に打設され充填されたコンクリートからなる。このSC構造壁1は、主に鋼板で構成される中空の鋼殻体7が構築され、この鋼殻体7の内部空間にコンクリートが打設されることで構築される。
図2(a)は鋼殻体7の平面図であり、
図2(b)は鋼殻体7の側面図である。
図1及び
図2に示されるように、鋼殻体7は、上記の一対の鉛直な表面鋼板3と、表面鋼板3同士を壁厚方向に連結するように等間隔に配置された鉛直な隔壁部9と、を有するものである。ここでは一例として、SC構造壁1の高さが約6m、壁厚が約2m、隔壁部9同士の間隔が約2.4mであり、表面鋼板3の厚さは約20mmである。SC構造壁1には、配管等を挿通するための貫通孔51やドアが設置され通路として利用される通路用開口53が、当該SC構造壁1をX方向に貫通するように適宜設けられてもよい。
【0017】
表面鋼板3は、Y方向に連結された複数の表面鋼板部品13で構成されている。表面鋼板部品13のZ方向の寸法はSC構造壁1の高さと同じく約6mであり、表面鋼板部品13のY方向の寸法は、隔壁部9同士の間隔と同じく約2.4mである。このような表面鋼板部品13が添接板(「スプライスプレート」とも呼ばれる)15を介したボルト止めによって面内方向(Y方向)に複数連結されて表面鋼板3が構成されている。
【0018】
ここでは、隣接する2つの表面鋼板部品13同士が端面を突き合わせ、表面鋼板部品13同士の境界を跨ぐ添接板15が、表面鋼板部品13を表裏からX方向に挟むように一対設置される。そして、表面鋼板部品13及び表裏一対の添接板15を挿通する複数のボルトが締め付けられることにより、上記2つの表面鋼板部品13同士が面内方向に連結される。なお、図面の煩雑化を避けるために、
図2では添接板15上のボルトの図示が省略されている。ここでは、一方の表面鋼板3における表面鋼板部品13同士の連結部(以下「表面連結部13a」という)と、他方の表面鋼板3における表面鋼板部品13同士の表面連結部13aと、が互いにY方向にずれて位置している。すなわち、SC構造壁1の表裏の表面鋼板3において、表面連結部13aは千鳥配置されている。
【0019】
各表面鋼板3の内壁面3b(コンクリート打設側の面)には、それぞれ対面する位置において、板状の立設板部17が、他方の表面鋼板3側に向けて垂直に立ち上がるように、SC構造壁1の全高に亘って設けられている。立設板部17は、Y方向に直交する姿勢で表面鋼板3の内壁面3bに溶接されている。立設板部17は表面鋼板3と同程度の板厚の鋼板からなる。内壁面3bからのX方向への立設板部17の立ち上がり高さはSC構造壁1の壁厚の約1/3程度である。そして、対向する立設板部17同士はX方向にSC構造壁1の壁厚の約1/3程度の間隔をあけて配置されている。
【0020】
これらの立設板部17同士を添接板19を介して連結する立設板連結部21が設けられている。立設板連結部21の具体的な構成として、立設板連結部21は、対向する立設板部17同士の間に架け渡された一対の添接板19を有している。添接板19同士はX方向の両端部に各立設板部17を挟み込んでY方向に対向している。2枚の添接板19とその間に挟まれた立設板部17の一部位とに挿通された複数のボルトが締め付けられることで、2枚の添接板19の一端が一方の立設板部17に連結される。更に、同様にして2枚の添接板19の他端が他方の立設板部17に連結されることで、対向する立設板部17同士が2枚の添接板19を介して連結された状態となる。
【0021】
上記のような立設板連結部21が一対の立設板部17に対して3箇所設けられており、3箇所の添接板19は、
図1及び
図2(b)に示されるように、互いにZ方向に離れて配置されている。最上部の立設板連結部21はSC構造壁1の上端に沿って位置し、最下部の立設板連結部21はSC構造壁1の下端に沿って位置している。そして、それら2つの立設板連結部21の略中央に中間の立設板連結部21が位置している。以上のような一対の立設板部17と、添接板19を含む3箇所の立設板連結部21(立設板連結部)と、によって前述の隔壁部9が構成されている。このような隔壁部9の構造によれば、添接板19同士の間且つ立設板部17同士の間に、隔壁部9をY方向に貫通する矩形の開口23がほぼ同じ大きさで2箇所形成される。開口23のX方向の幅は約600mm程度でZ方向の高さは約2000mm程度であり、開口23は施工作業者が通過可能な大きさである。
【0022】
なお、一つの立設板連結部21においては、上記のとおり立設板部17をY方向に挟む一対の添接板19が用いられている。この一対の添接板19同士の狭い間隙には、コンクリートが十分に充填されない可能性があるので、この対策として、当該間隙には予め充填物が充填されてもよい。この充填物としては、立設板部17と同程度の厚さの鋼板が使用されてもよい。また、上記のような間隙が形成されないように、一つの立設板連結部21に対して添接板19を一枚のみ用いて立設板部17同士が連結されるようにしてもよい。
【0023】
各表面鋼板3の内壁面3bには、Y方向に延在する長尺状の水平リブ部27が例えば1m程度の間隔で平行に複数設けられている。
図3(a)に示されるように、水平リブ部27は、長尺の鋼製のリブ部材28が水平の姿勢で内壁面3bに溶接されることで形成されている。水平リブ部27は、鉛直な内壁面3bから水平に立ち上がるとともに先端側が鉛直上方に折曲げられて、全体として断面L字の形状をなしている。
【0024】
図3(a)及び
図3(b)に示されるように、このリブ部材28では、表面鋼板3に溶接される側の縁部28eの輪郭形状が凹凸形状をなしている。すなわち、リブ部材28は、上記縁部28eにおいて長手方向(Y方向)に交互に形成された複数の凸部28a及び凹部28bを有している。縁部28eは、凸部28aの輪郭形状と凹部28bの輪郭形状とが互いに略等しくなるように形成されている。
【0025】
本実施形態では、凸部28aの先端部28hの輪郭線は、リブ部材28の長手方向に延在する直線をなしている。また、凸部28aは溶接される側の縁部28eに近づくほど長手方向の幅が狭くなり、これと対称に、凹部28bは溶接される側の縁部28eに近づくほど長手方向の幅が広くなっている。更に詳細な形状として、凸部28aの輪郭形状はY方向に延在する一辺を含む正六角形H1の一部をなしており、上記一辺が凸部28aの先端部28hの輪郭線に対応している。また、凹部28bの輪郭形状はY方向に延在する一辺を含む上記と同サイズの正六角形H2の一部をなしており、上記一辺が凹部28bの底部の輪郭線に対応している。そして、リブ部材28は、各凸部28aの先端部28hにおいて、表面鋼板3に溶接されている。
【0026】
また、
図1及び
図2に示されるように、各表面鋼板3の内壁面3bには、上記水平リブ部27と同様にして、Z方向に延在する長尺状の鋼製の鉛直リブ部29が例えば1m程度の間隔で平行に複数設けられている。鉛直リブ部29は上記リブ部材28が鉛直の姿勢で内壁面3bに溶接されることにより形成されている。水平リブ部27、鉛直リブ部29、及び立設板部17の各交差箇所では適宜スカラップが形成される。鉛直リブ部29の構成は、その延在方向が鉛直方向であることを除いて水平リブ部27と同じであるので、更なる重複する説明を省略する。なお、図面の煩雑化を避けるために、
図2では、水平リブ部27及び鉛直リブ部29の縁部28eの凹凸形状が省略されている。
【0027】
上記のように、表面鋼板3と、この表面鋼板3の内壁面3bに設けられた水平リブ部27及び鉛直リブ部29と、を有するリブ付き表面鋼板6が、SC構造壁1の両表面に配置されている。この水平リブ部27及び鉛直リブ部29の存在により、表面鋼板3の座屈が回避され、建方時の表面鋼板3の成型が保持され、鋼殻体7の内部空間へのコンクリート打設時における表面鋼板3のハラミが回避され、また、コンクリート部5と表面鋼板3との一体化が図られる。表面鋼板3の内壁面3bにスタッドやタイバーが設けられてもよいが、スタッドやタイバーは省略することも可能である。また、内壁面3bに水平リブ部27及び鉛直リブ部29が設けられることに代えて、内壁面3bにスタッドが設けられてもよい。
【0028】
水平リブ部27及び鉛直リブ部29を構成する上記のリブ部材28は、例えば次のように製作される。まず
図4(a),(b)に示されるような、長尺のチャンネル材31(鋼製部材)を準備する。このチャンネル材31を、ウエブ部の中央において上記の凸部28a及び凹部28bの輪郭形状に対応する切断線31cでジグザグに切断し、短手方向に二分割する。そうすると、
図4(c)に示されるように断面L字のリブ部材28が2本製作される(リブ部材製作工程)。
【0029】
前述したように、凸部28aの輪郭形状と凹部28bの輪郭形状とが互いに略等しいので、2本のリブ部材28の縁部28eは、一方のリブ部材28の凸部28aと他方のリブ部材28の凹部28bとが互いに嵌まり合う形状であり、二分割の切断に起因するチャンネル材31の切れ端も発生しない。なお、凸部28aの輪郭形状と凹部28bの輪郭形状とが互いに「略等しい」とは、例えば、チャンネル材31切断の切断幅に起因して凸部28aの寸法が凹部28bの寸法よりも僅かに小さくなる場合なども含む概念である。
【0030】
続いて、SC構造壁1の施工方法の一例について説明する。
図5(a)に示されるように、鋼板から所定寸法の表面鋼板部品13が切り出される。次に、
図5(b)に示されるように、別途準備された所定寸法の鋼板が表面鋼板部品13の内壁面3bに対し垂直な姿勢で溶接され立設板部17が形成される。立設板部17は表面鋼板部品13の幅方向の中央位置に設置されてもよいが、本実施形態においては、立設板部17は、表面鋼板部品13の中央位置から、当該表面鋼板部品13の幅方向(Y方向)にずれた位置に設置される。また、
図4で説明したように、所定の長さのチャンネル材31が短手方向に二分割されリブ部材28が製作される(リブ部材製作工程)。そして、作製された所定の数量のリブ部材28が、凸部28aの先端部28hで表面鋼板部品13の内壁面3bの所定の位置に溶接され、水平リブ部27と鉛直リブ部29とが形成される(リブ形成工程)。前述したように、内壁面3bにはスタッドを形成する必要がないので、ここでは、スタッド溶植のための設備(例えば、全面アースが取れる大型金属定盤等)は不要である。
【0031】
更に、
図5(c)に示されるように、表面鋼板部品13の外壁面3aに、所定の埋込金物35が溶接によって設置される。埋込金物35は、完成後のSC構造壁1の外壁に設置される配管やケーブル等の設備の取付座として機能するものである。埋込金物35は、当該埋込金物35のアンカー(図示せず)が表面鋼板部品13を貫通して内壁面3b側に突出するように設置される。
【0032】
ここまでの工程は、SC構造壁1の施工現場とは別の工場で行われる。すなわち、表面鋼板部品13、立設板部17、水平リブ部27、鉛直リブ部29、及び埋込金物35が一体となった部品が、鋼殻体7の部品の一単位として上記のように工場で作製される。以下では、1枚の表面鋼板部品13、1枚の立設板部17、水平リブ部27、鉛直リブ部29、及び埋込金物35が一体となった上記の一単位の部品を、「鋼板ユニット37」と呼ぶ。鋼板ユニット37は、工場で作製された後、トラック又はトレーラー等によりSC構造壁1の施工現場に運搬される。
図7(a)は、鋼板ユニット37を工場から施工現場まで運搬するトラック41の一例を車両後方から見た図である。この例では、トラック41の荷台には表面鋼板部品13のY方向を略鉛直に立てるようにした姿勢で鋼板ユニット37が積載される。
図7(b)は、鋼板ユニット37を工場から施工現場まで運搬するトラック41の他の例を車両後方から見た図である。この例では、トラック41の荷台には表面鋼板部品13のY方向を略水平にした姿勢で鋼板ユニット37が積載される。
【0033】
上記トラック41の鋼板ユニット37は施工現場の地組ヤードで荷下ろしされる。地組ヤードでは、複数の鋼板ユニット37を組み合わせてなる鋼板組立体39が組立てられる。具体例として、まず、
図6(a)に示されるように、3つの鋼板ユニット37の表面鋼板部品13同士が前述の添接板15を用いたボルト止めにより面内方向(Y方向)に連結される。そして、このような3連の鋼板ユニット37が2つ準備され、
図6(b)に示されるように3組の立設板部17同士が対向される。そして、上記3組の立設板部17同士の間に架け渡された添接板19を介在させて立設板部17同士が連結され隔壁部9が形成される(隔壁部形成工程)。これにより、合計6つの鋼板ユニット37を組み合わせてなる箱型の鋼板組立体39が組立てられる。なお、SC構造壁1に設置される機電配管の搬入作業や現地施工作業を軽減するために、ここでは、機電の埋設配管等が予め鋼板組立体39に組付けられていてもよい。
【0034】
続いて、
図6(c)に示されるように、上記の鋼板組立体39が大型揚重機で吊り込まれてSC構造壁1の施工予定位置に搬入される。そして、建入れ精度の確認しながら既設の鋼板組立体39に対して仮組みが行われ、前述のように各鋼板組立体39の表面鋼板部品13同士が前述の添接板15を介してボルト止めされることで、鋼板組立体39が組付けられる。このような鋼板組立体39の搬入・組付けが繰り返されることにより、鋼殻体7が完成する。その後、鋼殻体7の内部空間にコンクリートが打設されてコンクリート部5が形成される(コンクリート打設工程)。ここでは、コンクリートの充填性を高めるために高流動コンクリートが使用されてもよい。その後、必要な仕上げ・塗装等が行われて、SC構造壁1が完成する。
【0035】
上記のような鋼殻体7の組立て、コンクリート打設前の鋼殻体7の検査、コンクリート打設工程等の際には、施工作業者が鋼殻体7の内部空間に入って作業を行う場合がある。例えば、コンクリート打設工程では、コンクリート締固めのために、鋼殻体7の内部空間で施工作業者がバイブレータを操作する場合がある。このとき施工作業者は、
図1及び
図2(b)に示されるような隔壁部9の開口23を通過して鋼殻体7の内部空間をY方向に移動しながら上記のような作業を行うことができる。また、このような施工作業者の移動の便のために、各隔壁部9同士の間に開口23を挿通する踏み板が架け渡されてもよい。
【0036】
前述のとおり、1つの鋼板ユニット37においては、
図5(b)に示されているように、立設板部17が表面鋼板部品13の中央位置から幅方向(Y方向)にずれた位置に設置される。このような構成の同じ鋼板ユニット37が多数組み合わされ鋼殻体7が形成されることにより、SC構造壁1においては、一方の表面鋼板3における表面連結部13a(
図1及び
図2(b)参照)と、他方の表面鋼板3における表面連結部13aと、が互いにY方向にずれて位置する、といった前述の構成が実現されている。
【0037】
ここで、SC構造壁1に形成される前述の貫通孔51及び通路用開口53(
図1参照)の形成方法について説明する。
図8(a)に示されるように、貫通孔51の形成位置に対応する一対の鋼板ユニット37の表面鋼板部品13には、それぞれ、円形の開口が形成されている。そして、当該開口の縁部から垂直に立ち上がるように内壁面3bに貫通孔51の小口部近傍を構成する円筒状の小口スリーブ52aが溶接されている。小口スリーブ52aの立ち上がり高さは立設板部17の立ち上がり高さよりも低いので、当該小口スリーブ52aの存在によって鋼板ユニット37の嵩が極端に増加することはない。上記のような表面鋼板部品13の開口加工及び小口スリーブ52aの溶接は、例えば、鋼板ユニット37が工場で製作されるときに行われる。
【0038】
その後、施工現場では、
図8(b)に示されるように、立設板部17同士が立設板連結部21で連結され隔壁部9が形成された後、小口スリーブ52a同士の間に小口スリーブ52aと略同径の円筒状の中間スリーブ52bが挿入される。そして、当該中間スリーブ52bの両端面が、それぞれ、対向する小口スリーブ52aの端面に突合わせ溶接されることで、表面鋼板部品13同士を接続する貫通孔51が形成される。上記のような中間スリーブ52bの溶接は、組立てられた鋼板組立体39に対して地組ヤードで行われてもよく、SC構造壁1の施工予定位置に吊り込まれた鋼板組立体39に対して行われてもよい。
【0039】
同様にして、
図8(c)に示されるように、通路用開口53の形成位置に対応する一対の鋼板ユニット37の表面鋼板部品13の一端部には、それぞれ、矩形の開口が形成されている。そして、当該開口の縁部から垂直に立ち上がるように内壁面3bに通路用開口53の小口部近傍を構成する断面コ字状の通路壁小口部54aが溶接されている。通路壁小口部54aの立ち上がり高さは立設板部17の立ち上がり高さよりも低いので、当該通路壁小口部54aの存在によって鋼板ユニット37の嵩が極端に増加することはない。上記のような表面鋼板部品13の開口加工及び通路壁小口部54aの溶接は、例えば、鋼板ユニット37が工場で製作されるときに行われる。
【0040】
その後、施工現場では、
図8(d)に示されるように、立設板部17同士が立設板連結部21で連結され隔壁部9が形成された後、通路壁小口部54a同士の間に断面コ字状の通路壁中間部54bが挿入される。そして、当該通路壁中間部54bの両端部が、それぞれ、対向する通路壁小口部54aの端部に溶接されることで、表面鋼板部品13同士を接続する通路用開口53が形成される。上記のような通路壁中間部54bの溶接は、組立てられた鋼板組立体39に対して地組ヤードで行われてもよく、SC構造壁1の施工予定位置に吊り込まれた鋼板組立体39に対して行われてもよい。例えばここでは、通路壁小口部54aよりもやや大きいサイズの通路壁中間部54bの両端を、それぞれ通路壁小口部54aの外側に重ねるように設置して通路壁小口部54aと通路壁中間部54bとの溶接を行ってもよい。あるいは、同サイズの通路壁小口部54aと通路壁中間部54bとが、突き合わせ溶接されてもよい。
【0041】
続いて、以上説明したSC構造壁1及びその施工方法による作用効果について説明する。
【0042】
SC構造壁1における鋼殻体7の隔壁部9は、各表面鋼板3から立ち上がる立設板部17と立設板部17同士を連結する立設板連結部21とを有している。そして、隔壁部9を形成する隔壁部形成工程では、上記立設板部17同士が立設板連結部21で連結されて一対の上記立設板部17と立設板連結部21とを含む隔壁部9が形成される。この構成により、立設板連結部21による連結の前においては、隔壁部9を構成する各立設板部17同士が、SC構造壁1の壁厚方向(X方向)に分離されている。従って、SC構造壁1の部品としては、一方の立設板部17を有する一方の表面鋼板3側の部品と、他方の立設板部17を有する他方の表面鋼板3側の部品と、に分離することができる。これらの部品(本実施形態では鋼板ユニット37)のX方向の寸法は、SC構造壁1の壁厚よりも小さく抑えられる。その結果、SC構造壁1の部品の嵩を小さく抑えることができ、施工に係る部品の取扱いの負担が軽減される。そして、部品の嵩が小さいことにより、工場から施工現場までの部品の運搬の効率が向上し、また、施工現場での部品の取り回しや保管に必要なスペースも小さく抑えられる。また、これらの部品が工場で製作される場合には、嵩が小さいことにより、工場での部品の取り回し等も容易であり部品製作の効率が向上する。
【0043】
特に、隔壁部9は、X方向に間隔をあけた立設板部17同士の間に添接板19を架け渡して両者を連結する構造であるので、立設板部17のX方向の寸法が更に小さく抑えられる。その結果、SC構造壁1の部品である鋼板ユニット37の嵩は特に小さく抑えられ、鋼板ユニット37の取扱いの負担は特に軽減されている。例えば、鋼板ユニット37のX方向の寸法は、およそ、内壁面3bからの立設板部17の立ち上がり高さに相当し、すなわち、前述したようにSC構造壁1の壁厚の約1/3程度に抑えられる。例えば、SC構造壁1の壁厚が約2mであれば、鋼板ユニット37のX方向の寸法は、約0.7m程度である。なお、鋼板ユニット37のZ方向の寸法は表面鋼板部品13のZ方向の寸法に相当し約6mであり、Y方向の寸法は表面鋼板部品13のY方向の寸法に相当し約2.4mである。
【0044】
また、
図2(b)に示されるように、隔壁部9においては、立設板部17同士がX方向に離れており、上記添接板19同士もZ方向に間隔をあけて配置されているので、前述したとおり隔壁部9を貫通する開口23が形成される。そして、この開口23は作業時における施工作業者の移動用通路として利用可能であり、施工作業者は開口23を利用して効率良く安全にY方向に移動しながら作業を行うことができるので、作業の効率と安全性の向上が図られる。仮に開口23がない場合には、施工作業者が隔壁部9を越えてY方向に移動するときに、例えば鋼殻体7の上端まで一旦戻る必要があり効率が悪い。また、この開口23は、コンクリート打設工程においてコンクリートをY方向に流動させるための流動路としても機能し、コンクリート部5と鋼殻体7との一体性向上にも寄与する。
【0045】
また、SC構造壁1の一対の表面鋼板3は各々、複数の表面鋼板部品13がY方向に連結されて形成されている。そして、一方の表面鋼板3における表面連結部13aと、他方の表面鋼板3における表面連結部13aと、が互いにY方向にずれて位置している。このように表面連結部13aが千鳥配置されることにより、弱点になり得る表面連結部13aがSC構造壁1の表裏でY方向に分散される。
【0046】
表面鋼板部品13同士のY方向への連結には、ボルト止めが採用されている。また、隔壁部9を形成する際において添接板19を介した立設板部17同士の連結にもボルト止めが採用されている。従って、施工現場では鋼板ユニット37同士をボルト止めで組み合わせることで鋼殻体7を形成することができ、施工現場においては鋼板を溶接する作業が削減される。施工現場で溶接による鋼板の接合を行う場合には、ボルト止めに比較して、溶接作業や溶接検査に時間がかかる場合が多く、また天候に左右される場合もあり、溶接工程がクリティカルパスになり得る。従って、施工現場での溶接作業が削減されることで、工期短縮を図ることができる。また、溶接技術者の確保の負担も低減される。
【0047】
一般的に、車両による運搬対象は幅を約2.4m以下に抑えることが求められるので、この制限に合わせて鋼板ユニット37のY方向の寸法(表面鋼板部品13のY方向の寸法)を2.4m以下に設定するといったことも考えられる。これに対して、前述した
図7(a)の運搬方法を採用した場合には、鋼板ユニット37のY方向の寸法が増加しても車幅方向にはほぼ影響はない。従って、鋼板ユニット37の表面鋼板部品13のY方向の寸法を(例えば2.4m以上まで)拡大できる場合もある。そして、表面鋼板部品13のY方向の寸法を拡大すれば、鋼殻体7における表面連結部13aの数が減少するので、表面鋼板部品13同士の連結作業が減少する。
【0048】
また、SC構造壁1のリブ付き表面鋼板6では、表面鋼板3の内壁面3bに長尺のリブ部材28が溶接されて水平リブ部27及び鉛直リブ部29が形成されている。このリブ部材28は、表面鋼板3側の縁部28eにおいて長手方向に交互に形成された複数の凸部28a及び凹部28bを有しており、各凸部28aの先端部28hにおいて内壁面3bに溶接されている。この構成によれば、表面鋼板3に対するリブ部材28の溶接箇所は長手方向に断続的に存在することになり、また全長に亘ってリブ部材を溶接する場合に比較して、溶接箇所の長さも短い。従って、リブ部材28の溶接に起因して表面鋼板3に生じる溶接歪みが低減される。
【0049】
また、水平リブ部27においては、各凹部28bと内壁面3bとで囲まれる領域に貫通孔が形成される。コンクリート打設工程においては、上記貫通孔が、空気抜き孔として機能するので、水平リブ部27の下面側に気泡が残留する可能性が低減される。従って、水平リブ部27に起因するコンクリート充填性の低下が抑えられる。なお、コンクリート打設工程においては、水平リブ部27、鉛直リブ部29、及び立設板部17の各交差箇所に適宜形成されたスカラップも空気抜き孔として機能する。
【0050】
また、リブ部材28においては、凸部28aと凹部28bとが互いに略等しい輪郭形状をなしている。この構成によれば、2本のリブ部材28を向かい合わせたときに、一方のリブ部材28の凸部28aと他方のリブ部材28の凹部28bとが互いに嵌まり合う形状である。従って、リブ部材28を製作する際には、
図4に示されるとおり、1本のチャンネル材31を凸部28a及び凹部28bの輪郭形状に対応する切断線31cでジグザグに切断し短手方向に二分割することにより、同じ構成のリブ部材28を2本製作することができる。そしてこの場合、切断に起因するチャンネル材31の切れ端も発生しないので、材料の無駄を抑えることができる。
【0051】
リブ部材28の凹凸形状としては、本実施形態における
図3及び
図4の形状には限定されず、例えば、
図9(a)~(e)に示されるような形状も考えられる。
図9(a)の凸部81a及び凹部81bの輪郭線は、矩形をなしている。
図9(b)の凸部82aは溶接される側に向かって長手方向に拡大しており、凹部82bは溶接される側に向かって長手方向に縮小している。
図9(c)の凸部83a及び凹部83bの輪郭線は、円弧の一部をなしている。
図9(d)の凸部84a及び凹部84bの輪郭線は、長手方向に長軸をもつ楕円の一部をなしている。
図9(e)の凸部85a及び凹部85bは、直線的な輪郭線をもつ山形をなしている。
【0052】
また、一例として説明した前述の凸部28a及び凹部28bの輪郭形状は、
図3(b)で説明したとおり、それぞれ長手方向に延在する一辺を含む正六角形H1,H2の一部をなしている。この構成によれば、切断線31cが短く、直線で構成されるのでチャンネル材31の切断加工が比較的容易である。また、凸部28aの先端部28hの輪郭線がリブ部材28の長手方向に延在する直線をなす構成であるので、凸部28aの先端部28hを内壁面3bに対して面接触させて溶接することができる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0054】
例えば、表面鋼板部品13同士のY方向の連結方法としては、ボルト止めに限られず、溶接であってもよく、ボルト接合と溶接接合とのハイブリッド接合としてもよい。また、立設板部17と添接板19との接合方法はボルト止めに限られず、溶接であってもよく、ボルト接合と溶接接合とのハイブリッド接合としてもよい。上記ハイブリッド接合としては、地組ヤードにおいて溶接が行われ、現場組立てにおいてボルト接合が行われてもよい。またこの場合、地組ヤードに余裕がある場合には、表面鋼板部品13を平置き(表面鋼板部品13のX方向を上下方向にする姿勢)にし、下向き溶接で溶接が行われてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、
図6(b)及び
図6(c)に示されるように、SC構造壁1の施工予定位置に吊り込むための鋼板組立体39は、6つの鋼板ユニット37を組み合わせて箱型に構成されているが、この鋼板組立体39は
図6(b)及び
図6(c)に示される構造には限定されない。例えば、SC構造壁1の隔壁部9の施工予定位置の直上に梁などの障害物が存在する場合には、隔壁部9を含まない鋼板組立体39を構成することで、上記障害物に干渉しないように吊り込むようにしてもよい。隔壁部9を含まない鋼板組立体39として、例えば、
図6(a)に示されているような、複数の鋼板ユニット37がY方向に連結された状態で吊り込むようにしてもよい。また、例えば、鋼板組立体39を吊り込むための大型揚重機の能力に応じて、揚重可能な範囲で鋼板組立体39に含まれる鋼板ユニット37の個数を決定してもよい。また、複数の鋼板ユニット37を組み合わせた鋼板組立体39を吊り込むようにすることも必須ではなく、鋼板ユニット37を1つずつ吊り込むようにしてもよい。
【0056】
また、水平リブ部27及び鉛直リブ部29の形状はL字断面には限られず、例えばT字断面であってもよい。この場合、
図7(c)及び
図7(d)に示されるように、チャンネル材31に代えて、H鋼32を短手方向にジグザグに切断してリブ部材28を製作すればよい。また、水平リブ部27及び鉛直リブ部29は平板形状であってもよい。この場合、長尺の平板を短手方向にジグザグに切断してリブ部材28を製作すればよい。
【0057】
また、実施形態では、本発明をSC構造壁1に適用する例を説明したが、本発明は、SC構造床への適用も可能である。この場合、SC構造床は、前述のSC構造壁1をY軸周りに90°回転させた構造とすればよい。またこの場合、SC構造床の上面に該当する表面鋼板3には、コンクリート打設用の打設孔が設けられてもよい。この場合、事前に当該打設孔の周囲の補強等がなされることにより、コンクリート打設後においてこの打設孔が塞がれなくてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…SC構造壁(鋼板コンクリート構造)、3…表面鋼板、5…コンクリート部、7…鋼殻体、9…隔壁部、13…表面鋼板部品、13a…表面連結部、17…立設板部、19…添接板、21…立設板連結部、23…開口、37…鋼板ユニット。