(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131246
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/54 20180101AFI20220831BHJP
F24F 11/755 20180101ALI20220831BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20220831BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/755
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030099
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】593055074
【氏名又は名称】オーナンバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】國平 宰司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 嘉也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA07
3L260BA41
3L260CA12
3L260CB63
3L260EA23
3L260EA27
3L260FA03
3L260FA07
3L260FB12
3L260JA23
(57)【要約】
【課題】複数の空調機と、それらに設定温度と設定風量を指示することができる空調機制御装置とを備えた空調システムにおいて、省エネルギー性と快適性を高いレベルで両立させたものを提供する。
【解決手段】空調機制御装置は、空調機を冷房運転に設定している場合、室温と設定温度との差の絶対値が特定値以下のとき、設定温度-正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように空調機に指示して空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する過冷却モードと、設定温度+正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように空調機に指示して空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する省エネルギーモードとを所定の時間周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行なうように構成されており、過冷却モードでは、空調機は、吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードでは、空調機は、吹き出し風量を弱くするように調節される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空調機と、各空調機に少なくとも設定温度と設定風量を指示することができる空調機制御装置とを備えた空調システムであって、
前記空調機制御装置は、前記空調機を冷房運転に設定している場合、室温と設定温度との差の絶対値(|室温-設定温度|)が特定値以下のとき、設定温度-正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する過冷却モードと、設定温度+正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する省エネルギーモードとを所定の時間周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行なうように構成されており、前記ゆらぎ制御における過冷却モードでは、前記空調機は、吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードでは、前記空調機は、吹き出し風量を弱くするように調節されるように構成されていることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
冷房運転時の設定温度が21℃~29℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記特定値が1.5℃~4.0℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記補正値が0.5℃~2.0℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
一つの空調対象領域内に複数の空調機が存在しており、空調機制御装置が、隣接する空調機の間で過冷却モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の空調システム。
【請求項6】
一つの空調対象領域内に4つ以上の空調機が存在しており、空調機制御装置が、これらの空調機を、それぞれが2つ以上の空調機を含む複数の空調機群に分け、これらの空調機群の間で過冷却モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の空調システム。
【請求項7】
前記空調機制御装置は、空調機を暖房運転に設定している場合、室温と設定温度との差の絶対値(|室温-設定温度|)が特定値以下のとき、設定温度+正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する過加熱モードと、設定温度-正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する省エネルギーモードとを所定の時間周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行なうように構成されており、前記ゆらぎ制御における過加熱モードでは、前記空調機は、吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードでは、前記空調機は、吹き出し風量を弱くするように調節されるように構成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の空調システム。
【請求項8】
暖房運転時の設定温度が18℃~26℃の範囲にあることを特徴とする、請求項7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記特定値が1.5℃~4.0℃の範囲にあることを特徴とする、請求項7又は8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記補正値が0.5℃~2.0℃の範囲にあることを特徴とする、請求項7~9のいずれかに記載の空調システム。
【請求項11】
一つの空調対象領域内に複数の空調機が存在しており、空調機制御装置が、隣接する空調機の間で過加熱モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、請求項7~10のいずれかに記載の空調システム。
【請求項12】
一つの空調対象領域内に4つ以上の空調機が存在しており、空調機制御装置が、これらの空調機を、それぞれが2つ以上の空調機を含む複数の空調機群に分け、これらの空調機群の間で過加熱モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、請求項11に記載の空調システム。
【請求項13】
空調機制御装置が、複数の空調機のそれぞれに対して前記特定値及び/又は補正値を個別に設定するように構成されていることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空調機に少なくとも設定温度と設定風量を指示することができる空調機制御装置を持つ空調システムにおいて、省エネルギー性と快適性を高いレベルで両立させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調システムの制御方法としては、室温が常に所定の目標温度になるように制御するのが一般的である。この従来法では、目標温度を外気温度に近づければ省エネルギー性が向上するが、それに応じて室内の快適性も低下する。
【0003】
省エネルギー性と快適性の向上を両立させようとした空調システムとしては、特許文献1が提案されている。特許文献1では、空調機の所定の空調動作を室内温度の如何に拘らず、所定の停止時間だけ強制的に停止させて、間欠動作を行なうことを特徴とし、具体的には、空調機のオン動作とオフ動作を室内の快適性を損なわない範囲で交互に繰り返し、それによってオフ動作で停止期間中のエネルギーを確実に削減し、空調機の省エネルギー性を向上させている。
【0004】
また、対象エリアの複数の空調機を制御して省エネルギー性をさらに高めたものとして、特許文献2が提案されている。特許文献2では、対象エリア内の空調機が、設定温度を目標とする通常動作と、通常動作より空調能力を制限する省エネルギー動作を交互に繰り返すゆらぎ制御を行ない、対象エリアの空調機を複数のグループに分類したうえで、分類した同じグループ間では同じ位相の通常動作と省エネルギー動作を行ない、異なるグループ間では通常動作の位相を所定時間ずらすようにさせている。
【0005】
しかしながら、特許文献1は、省エネルギー性が不十分であり、特許文献2は快適性に問題があるように、従来の空調システムは、いずれも省エネルギー性と快適性の両立を高度なレベルで達成することができておらず、さらなる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-292149号公報
【特許文献1】特開2014-9895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、複数の冷房又は暖房空調機と、それらに設定温度と設定風量を指示することができる空調機制御装置とを備えた空調システムにおいて、省エネルギー性と快適性を高いレベルで両立させたものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、冷房運転時には室温が(設定温度-正の補正値)からなる目標温度になるように空調機の吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する過冷却モードと、室温が(設定温度+正の補正値)からなる目標温度となるように空調機の吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する省エネルギーモードとを所定の時間周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行なうように空調機制御装置を構成し、過冷却モードで空調機の吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードで空調機の吹き出し風量を弱くすることによって、逆に暖房運転時には、室温が(設定温度+正の補正値)からなる目標温度になるようにした過加熱モードと、室温が(設定温度-正の補正値)からなる目標温度になるようにした省エネルギーモードとを繰り返すゆらぎ制御において過加熱モードで空調機の吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードで空調機の吹き出し風量を弱くすることによって、簡単な方法で省エネルギー性と快適性を高いレベルで両立できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(13)の構成を有するものである。
(1)複数の空調機と、各空調機に少なくとも設定温度と設定風量を指示することができる空調機制御装置とを備えた空調システムであって、
前記空調機制御装置は、前記空調機を冷房運転に設定している場合、室温と設定温度との差の絶対値(|室温-設定温度|)が特定値以下のとき、設定温度-正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する過冷却モードと、設定温度+正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する省エネルギーモードとを所定の時間周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行なうように構成されており、前記ゆらぎ制御における過冷却モードでは、前記空調機は、吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードでは、前記空調機は、吹き出し風量を弱くするように調節されるように構成されていることを特徴とする空調システム。
(2)冷房運転時の設定温度が21℃~29℃の範囲にあることを特徴とする、(1)に記載の空調システム。
(3)前記特定値が1.5℃~4.0℃の範囲にあることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の空調システム。
(4)前記補正値が0.5℃~2.0℃の範囲にあることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載の空調システム。
(5)一つの空調対象領域内に複数の空調機が存在しており、空調機制御装置が、隣接する空調機の間で過冷却モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、(1)~(4)のいずれかに記載の空調システム。
(6)一つの空調対象領域内に4つ以上の空調機が存在しており、空調機制御装置が、これらの空調機を、それぞれが2つ以上の空調機を含む複数の空調機群に分け、これらの空調機群の間で過冷却モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、(5)に記載の空調システム。
(7)前記空調機制御装置は、空調機を暖房運転に設定している場合、室温と設定温度との差の絶対値(|室温-設定温度|)が特定値以下のとき、設定温度+正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する過加熱モードと、設定温度-正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように前記空調機に指示して前記空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する省エネルギーモードとを所定の時間周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行なうように構成されており、前記ゆらぎ制御における過加熱モードでは、前記空調機は、吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードでは、前記空調機は、吹き出し風量を弱くするように調節されるように構成されていることを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載の空調システム。
(8)暖房運転時の設定温度が18℃~26℃の範囲にあることを特徴とする、(7)に記載の空調システム。
(9)前記特定値が1.5℃~4.0℃の範囲にあることを特徴とする、(7)又は(8)に記載の空調システム。
(10)前記補正値が0.5℃~2.0℃の範囲にあることを特徴とする、(7)~(9)のいずれかに記載の空調システム。
(11)一つの空調対象領域内に複数の空調機が存在しており、空調機制御装置が、隣接する空調機の間で過加熱モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、(7)~(10)のいずれかに記載の空調システム。
(12)一つの空調対象領域内に4つ以上の空調機が存在しており、空調機制御装置が、これらの空調機を、それぞれが2つ以上の空調機を含む複数の空調機群に分け、これらの空調機群の間で過加熱モードの動作の位相と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なうように構成されていることを特徴とする、(11)に記載の空調システム。
(13)空調機制御装置が、複数の空調機のそれぞれに対して前記特定値及び/又は補正値を個別に設定するように構成されていることを特徴とする、(1)~(12)のいずれかに記載の空調システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空調システムは、冷房運転時において、所定の時間周期で、(設定温度-正の補正値)を目標温度とする過冷却モードと、(設定温度+正の補正値)を目標温度とする省エネルギーモードとを、暖房運転において、所定の時間周期で、(設定温度+正の補正値)を目標温度とする過加熱モードと、(設定温度-正の補正値)を目標温度とする省エネルギーモードとを交互に繰り返すゆらぎ制御を行なっているので、省エネルギー効果が極めて高い。さらに、冷房運転時において、ゆらぎ制御における過冷却モードで空調機の吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードで吹き出し風量を弱くするように、逆に暖房運転において、ゆらぎ制御における過加熱モードで空調機の吹き出し風量を強くし、省エネルギーモードで吹き出し風量を弱くするように調節しているので、室内の快適性を維持しながら、省エネルギー効果をさらに高めることができる。
【0011】
本発明の空調システムは、一つの空調対象領域内に多数の空調機が存在している場合に、隣接する空調機の間で又は複数の空調機群の間で過冷却モード(冷房運転)又は過加熱モード(暖房運転)と省エネルギーモードとの各々の動作の位相を特定時間ずらすようにゆらぎ制御を行なっているので、室内の快適性を維持しながら、省エネルギー性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の空調システムの全体構成の一例を示す。
【
図2】
図2は、本発明の空調システムの冷房運転時の基本制御のフローチャートの一例を示す。
【
図3】
図3は、本発明の空調システムの暖房運転時の基本制御のフローチャートの一例を示す。
【
図4】
図4は、本発明の空調システムの冷房運転時のゆらぎ制御における吹き出し温度と吹き出し風量のタイミングチャートを示す。
【
図5】
図5は、本発明の空調システムの暖房運転時のゆらぎ制御における吹き出し温度と吹き出し風量のタイミングチャートを示す。
【
図6】
図6は、一つの空調対象領域内に複数の空調機が存在している場合に本発明の空調システムが隣接する空調機の間でゆらぎ制御の各動作の位相をずらす方法を示す説明図である。
【
図7】
図7は、一つの空調対象領域内に複数の空調機群が存在している場合に本発明の空調システムが複数の空調機群の間でゆらぎ制御の各動作の位相をずらす方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の空調システムの実施形態を図面とともに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の空調システムの全体構成の一例を示す。
図1に示すように、本発明の空調システムは、複数の空調機(空調機1、空調機2、・・・・空調機N(Nは2以上の整数))と、これらの空調機に少なくとも設定温度と設定風量を指示することができる空調機制御装置とを備える。各空調機は、独自の識別番号(ID)を与えられ、その識別番号(ID)(例えばID=1,ID=2,・・・・ID=N)に従って各空調機に対して空調機制御装置から個別に指示を出すことができる。
【0015】
各空調機は、空調機制御装置と通信を行なうことができる通信部を有しており、この通信部によって空調機制御装置の通信部と通信し、空調機制御装置からの指示を受けとることができる。また、各空調機には、空調機の電源のオン・オフを制御する電源制御部、吹き出し温度を制御する温度制御部、吹き出し風量を制御する風量制御部、空調機付近の室内温度を測定する室内温度測定部が設けられている。
【0016】
各空調機は、冷房運転及び/又は暖房運転を行なうことができるように構成されており、冷房運転では、設定温度を一般的には21~29℃、特に22~28℃の温度範囲として運転することができ、暖房運転では、設定温度を一般的には18~26℃、特に19~25℃の温度範囲として運転することができる。
【0017】
空調機制御装置には、各空調機の通信部と通信してID、室内温度を取得するとともに各空調機の設定温度、設定風量を指示することができる通信部がある。それ以外に、空調機制御装置には、最適温度算出部、設定温度・設定風量算出部、設定温度修正部、ゆらぎ制御部、吹き出し温度・吹き出し風量決定部が存在する。
【0018】
最適温度算出部は、室外の温度・湿度情報を得て、各空調機とは別に室内の最適温度を算出する部分である。設定温度・設定風量算出部は、通信部で通信して取得した各空調機の室内温度や最適温度算出部から取得した最適温度から空調機の設定温度、設定風量を算出する部分である。設定温度修正部は、空調機の設置される場所が出入口や窓側に近いなどの理由で室外の影響を受けやすい場合に必要により影響分を是正して各空調機の設定温度を適切な設定温度に修正する部分である。
【0019】
ゆらぎ制御部は、冷房運転時には設定温度に対して正の補正値をマイナスした目標温度になるような過冷却モードと、設定温度に対して正の補正値をプラスした目標温度になるような省エネルギーモードとを所定の周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行ない、暖房運転時には、設定温度に対して正の補正値をプラスした目標温度になるような過加熱モードと、設定温度に対して正の補正値をマイナスした目標温度になるような省エネルギーモードとを所定の周期で交互に繰り返すゆらぎ制御を行なう部分である。吹き出し温度・吹き出し風量決定部は、冷房運転又は暖房運転時のゆらぎ制御部における各モードの吹き出し温度・吹き出し風量を決定する部分である。ここで正の補正値とは、ゆらぎ制御時に目標温度を設定温度に対して上下にゆらぐようにするための補正値であり、0.5℃~2.0℃、さらには0.5℃~1.5℃の範囲から選択されることが好ましい。
【0020】
上記のゆらぎ制御は、冷房運転時又は暖房運転時において、室温と設定温度との差の絶対値(|室温-設定温度|)が特定値以下のときに行なわれる。ここで特定値を設けたのは、ゆらぎ制御の省エネルギー効果を十分に享受するために、ゆらぎ制御が室温と設定温度がある程度近くなったときに行なわれるようにするためである。この特定値は、1.5℃~4.0℃、さらには2.0℃~3.5℃の範囲であることが好ましい。本発明の空調システムでは、複数の空調機のそれぞれに対して前記特定値及び/又は補正値を個別に設定するように構成されることができる。これにより、室内の様々な環境での空調制御をより適切に行なうことができる。
【0021】
次に、本発明の空調システムの基本制御のフローチャートの一例を示す。
図2は、本発明の空調システムが冷房運転時のもの、
図3は、本発明の空調システムが暖房運転時のものを示す。
【0022】
本発明の空調機制御装置は、空調機を冷房運転に設定している場合、
図2に示すように、まず室温と設定温度との差の絶対値(|室温-設定温度|)が特定値以下であるかどうかが判断される。室温と設定温度の差の絶対値が特定値以下であるときには、ゆらぎ制御に入る。一方、室温と設定温度の差の絶対値が特定値を越えるときには、冷房運転を継続して室温と設定温度の差の絶対値が特定値以下になるようにする。
【0023】
冷房運転時のゆらぎ制御では、過冷却モードと省エネルギーモードとを所定の時間周期(例えば1分~1時間、さらには2分~30分)で交互に繰り返すように運転する。空調機制御装置は、過冷却モードでは、設定温度-正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように空調機に指示して空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節し、省エネルギーモードでは、設定温度+正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように空調機に指示して空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する。そして、空調機制御装置は、空調機に対してゆらぎ制御における過冷却モードでは、吹き出し風量を設定風量より強くし、省エネルギーモードでは、吹き出し風量を設定風量より弱くするように指示する。このゆらぎ制御における各モードでの吹き出し風量の強弱の制御により、冷房運転時の室内の快適性と省エネルギー性を高いレベルに維持することができる。特に、省エネルギーモードでは、過冷却の後で既に周辺の空気が冷えており、目標温度を設定温度より高く設定しているので、空調機のコンプレッサーの出力が低くなり、省エネルギー効果を得ることができる。
【0024】
本発明の空調機制御装置は、空調機を暖房運転に設定している場合、
図3に示すように、まず室温と設定温度との差の絶対値(|室温-設定温度|)が特定値以下であるかどうかが判断される。室温と設定温度の差の絶対値が特定値以下であるときには、ゆらぎ制御に入る。一方、室温と設定温度の差の絶対値が特定値を越えるときには、暖房運転を継続して室温と設定温度の差の絶対値が特定値以下になるようにする。
【0025】
暖房運転時のゆらぎ制御では、過加熱モードと省エネルギーモードとを所定の時間周期(例えば1分~1時間、さらには2分~30分)で交互に繰り返すように運転する。空調機制御装置は、過加熱モードでは、設定温度+正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように空調機に指示して空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節し、省エネルギーモードでは、設定温度-正の補正値を目標温度として、室温が目標温度になるように空調機に指示して空調機が吹き出し温度及び吹き出し風量を調節する。そして、空調機制御装置は、空調機に対してゆらぎ制御における過加熱モードでは、吹き出し風量を設定風量より強くし、省エネルギーモードでは、吹き出し風量を設定風量より弱くするように指示する。このゆらぎ制御における各モードでの吹き出し風量の強弱の制御により、暖房運転時の室内の快適性と省エネルギー性を高いレベルに維持することができる。特に、省エネルギーモードでは、過加熱の後で既に周辺の空気が暖まっており、目標温度を設定温度より低く設定しているので、空調機のコンプレッサーの出力が低くなり、省エネルギー効果を得ることができる。
【0026】
次に、本発明の空調システムのゆらぎ制御における吹き出し温度と吹き出し風量のタイミングチャートの一例を示す。
図4は、本発明の空調システムが冷房運転時のもの、
図5は、本発明の空調システムが暖房運転時のものを示す。
【0027】
本発明の空調機制御装置は、空調機をある設定温度に設定して冷房運転を実施していると、室温が徐々に設定温度に近づくが、室温と設定温度との差の絶対値が特定値(例えば2℃)以下に少なくなった場合、例えば
図4に示すように(設定温度-1℃の補正値)を目標温度として吹き出し温度を調節する過冷却モードと、(設定温度+1℃の補正値)を目標温度として吹き出し温度を調節する省エネルギーモードとを5分間の周期(t,t+5分,t+10分,t+15分,t+20分…)で交互に繰り返し、過冷却モードでは吹き出し風量を設定風量より強くし、省エネルギーモードでは吹き出し風量を設定風量より弱くするように空調機に指示するように構成される。
【0028】
本発明の空調機制御装置は、空調機をある設定温度に設定して暖房運転を実施していると、室温が徐々に設定温度に近づくが、室温と設定温度との差の絶対値が特定値(例えば2℃)以下に少なくなった場合、例えば
図5に示すように(設定温度+1℃の補正値)を目標温度として吹き出し温度を調節する過加熱モードと、(設定温度-1℃の補正値)を目標温度として吹き出し温度を調節する省エネルギーモードとを5分間の周期(t,t+5分,t+10分,t+15分,t+20分…)で交互に繰り返し、過加熱モードでは吹き出し風量を設定風量より強くし、省エネルギーモードでは吹き出し風量を設定風量より弱くするように空調機に指示するように構成される。
【0029】
次に、一つの空調対象領域内に複数の空調機が存在する場合の空調制御装置のゆらぎ制御の各モードの位相を特定時間ずらす方法の例を示す。
図6は、隣接する空調機の間でゆらぎ制御の各動作の位相をずらす方法を示し、
図7は、複数の空調機群の間でゆらぎ制御の各動作の位相をずらす方法を示す。
【0030】
本発明の空調機制御装置は、一つの空調対象領域内に複数の空調機が存在する場合、
図6に示すように、隣接する空調機の間(例えばID=1とID=2の間、ID=2とID=3の間)で過冷却モード(冷房運転の場合)又は過加熱モード(暖房運転の場合)と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすことができる。隣接する空調機の間でずらす時間は、特に限定されず、例えば1分~30分であることができる。具体的には、ゆらぎ制御の各モードを繰り返す時間周期の半分の時間を隣接空調機の間でずらすことができる。これにより、広い室内でのゆらぎ制御が片寄ったモードばかりになることが回避され、空調対象領域の節電効果をさらに高めることができる。
【0031】
本発明の空調機制御装置は、
図7に示すように、一つの空調対象領域内に4つ以上の空調機が存在する場合、これらの空調機をそれぞれが2つ以上の空調機を含む複数の空調機群(例えば、ID=1,2,4,5,7の出入口に近い空調機群1と、ID=3,6,9,12,15,18の窓側に近い空調機群2と、それ以外の出入口、窓側の影響が少ないIDの空調機群3)に分け、これらの過冷却モード(冷房運転の場合)又は過加熱モード(暖房運転の場合)と省エネルギーモードの動作の位相を特定時間ずらすことができる。空調機群の間でずらす時間は、特に限定されず、例えば1分~30分であることができる。具体的には、ゆらぎ制御の各モードを繰り返す時間周期の1/3ずつの時間を空調機群の間でずらすことができる。これにより、広い室内でのゆらぎ制御が片寄ったモードばかりになることが回避され、空調対象領域の節電効果をさらに高めることができる。
【0032】
本発明の空調システムを上で詳述したが、本発明の空調システムは、本発明の目的と技術思想に合致する限り、特許請求の範囲で規定される範囲内で当業者に公知の技術を適宜採用して変更することが可能である。例えば、設定温度、設定風量は、各空調機の室内温度、室外温度、湿度情報から計算されて自動設定されるだけでなく、単に人が手動で設定することもできる。また、空調機の全てに対して指示する1つの空調機制御装置を設けるだけでなく、各空調機ごとに1つずつ専用の空調機制御装置を設けることもできる。さらに、空調機制御装置が各空調機と直接通信して制御するだけでなく、各空調機と空調機制御装置の間に集中コントローラを設け、空調機制御装置が集中コントローラに対して各空調機の制御情報を送り、集中コントローラが各空調機の制御を行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の空調システムは、ゆらぎ制御の吹き出し温度と吹き出し風量をともに適切に制御しているので、省エネルギー性と快適性を高いレベルで両立することができ、当業界において極めて有用である。