(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131271
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】レーザアニール装置およびレーザアニール方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
H01L21/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030131
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 純一
(72)【発明者】
【氏名】針谷 香織
(72)【発明者】
【氏名】木下 理裕
【テーマコード(参考)】
5F152
【Fターム(参考)】
5F152AA20
5F152BB03
5F152CC02
5F152CE05
5F152EE02
5F152EE03
5F152FF02
5F152FF05
5F152FF09
5F152FF10
5F152FF32
5F152FG01
5F152FG05
5F152FG19
5F152FG22
5F152FH03
(57)【要約】
【課題】結晶化用膜に改質するまでの生産効率を向上し、省スペース化および低コスト化を可能とするレーザアニール装置を提供すること。
【解決手段】
脱水素化用レーザビームを出射する脱水素化用光学ヘッドを備え、前記脱水素化用光学ヘッドは、前記脱水素化用レーザビームが、前記結晶化用レーザビームに先駆けて前記非晶質シリコン膜における少なくとも改質予定領域を照射して前記非晶質シリコン膜の脱水素化を行うように、前記非晶質シリコン膜に対して前記スキャン方向へ相対的に移動される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に成膜された非晶質シリコン膜における改質予定領域に向けて、連続発振されたレーザ光が収束するように加工された結晶化用レーザビームを出射する結晶化用光学ヘッドを備え、当該結晶化用光学ヘッドは、前記結晶化用レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記非晶質シリコン膜に対して相対的にスキャン方向に沿って移動されて前記非晶質シリコン膜における前記改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、
脱水素化用レーザビームを出射する脱水素化用光学ヘッドを備え、
前記脱水素化用光学ヘッドは、前記脱水素化用レーザビームが、前記結晶化用レーザビームに先駆けて、少なくとも前記改質予定領域を照射して前記非晶質シリコン膜の脱水素化を行うように、前記非晶質シリコン膜に対して前記スキャン方向に沿って相対的に移動される、
ことを特徴とするレーザアニール装置。
【請求項2】
前記脱水素化用光学ヘッドは、連続発振されたレーザ光が収束するように加工された前記脱水素化用レーザビームを出射し、前記脱水素化用レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する、
請求項1に記載のレーザアニール装置。
【請求項3】
前記非晶質シリコン膜の表面に照射される前記脱水素化用レーザビームのビームスポットは、前記非晶質シリコン膜の表面に照射される前記結晶化用レーザビームのビームスポットよりも、前記スキャン方向の上流側に配置され、
前記脱水素化用レーザビームの前記ビームスポットの幅寸法は、前記結晶化用レーザビームの前記ビームスポットの幅寸法よりも、長く設定されている、
請求項1または請求項2に記載のレーザアニール装置。
【請求項4】
前記結晶化用光学ヘッドは、結晶化用光源から結晶化用光ファイバを介してレーザ光が導かれ、
前記脱水素化用光学ヘッドは、脱水素化用光源から脱水素化用光ファイバを介してレーザ光が導かれる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザアニール装置。
【請求項5】
前記結晶化用光学ヘッドと前記脱水素化用光学ヘッドとが共通化された単一の光学ヘッドでなる、
請求項4に記載のレーザアニール装置。
【請求項6】
前記結晶化用光学ヘッドと前記脱水素化用光学ヘッドとが共通化された単一の光学ヘッドでなり、
前記光学ヘッドに、光源から単一の光ファイバを介してレーザ光が導かれ、
前記光ファイバの出射端面に、結晶化用開口部と脱水素化用開口部とが離隔して形成された絞りが、前記結晶化用開口部と脱水素化用開口部とが前記出射端面に対向するように配置され、
前記結晶化用開口部から前記結晶化用レーザビームが出射され、前記脱水素化用開口部から前記脱水素化用レーザビームが出射される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザアニール装置。
【請求項7】
前記光ファイバの出射側は、前記出射端面に向けて径寸法が大きくなるように拡大する形状である、
請求項6に記載のレーザアニール装置。
【請求項8】
前記改質予定領域は、薄膜トランジスタのチャネル半導体層である、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレーザアニール装置。
【請求項9】
基板の上に成膜された非晶質シリコン膜における改質予定領域に向けて、連続発振されたレーザ光が収束するように加工された結晶化用レーザビームを出射し、前記結晶化用レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記非晶質シリコン膜に対してスキャン方向へ相対的に移動されて前記非晶質シリコン膜における前記改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、
脱水素化用レーザビームを、前記結晶化用レーザビームに先駆けて前記非晶質シリコン膜における少なくとも前記改質予定領域を照射して脱水素化を行うように、前記非晶質シリコン膜に対して前記スキャン方向へ相対的に移動させる、
ことを特徴とするレーザアニール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TFT基板において非晶質シリコン膜を疑似単結晶シリコン膜に改質させるレーザアニール装置およびレーザアニール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Electroluminescence Display)などの薄型ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)において、大型化および高精細化が進んでいる。
【0003】
FPDは、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が形成されたTFT基板を備える。TFT基板は、マトリクス状に配置された画素のそれぞれにアクティブ駆動するための微細なTFTを形成した基板であり、例えば、フルHD(1920×1080ドット)の解像度で120Hz駆動のディスプレイの場合、1000万個以上の画素が形成されている。
【0004】
TFTにおけるチャネル領域の移動度を高めるため、非晶質シリコン膜に対して疑似単結晶シリコンを横方向(ラテラル)結晶成長させるレーザアニール方法が知られている。このレーザアニール方法では、エキシマレーザアニールによって形成した微結晶シリコン膜の結晶粒を種結晶として用いる。このレーザアニール方法では、種結晶を起点として、連続発振レーザ光のスキャン方向にラテラル結晶成長させて、移動度の高い疑似単結晶シリコン膜を形成することができる。
【0005】
上述の非晶質シリコン膜のレーザアニール方法では、前処理として、非晶質シリコン膜内に含まれる水素を離脱させるための脱水素処理が必要である。この脱水素処理を行う装置としては、TFT基板を収納して脱水素処理温度で加熱する脱水素処理炉と、TFT基板におけるゲート配線に電流を発生させてこのゲート配線を発熱させる電流発生部と、を備える脱水素処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように、非晶質シリコン膜内に含まれる水素を離脱させる脱水素処理装置を用いた後、TFT基板をレーザアニール装置に移して非晶質シリコン膜のレーザアニールを行った場合、生産効率が低下するという課題がある。また、脱水素処理装置は、TFT基板を収容するスペースが必要となる。このため、上述のレーザアニール方法では、非晶質シリコン膜を結晶化膜(疑似単結晶シリコン膜)に改質させるまでに、高いコストを要するという課題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、レーザアニールして非晶質シリコン膜を結晶化膜に改質するまでの生産効率を向上し、しかも省スペース化および低コスト化を可能とするレーザアニール装置およびレーザアニール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、基板の上に成膜された非晶質シリコン膜における改質予定領域に向けて、連続発振されたレーザ光が収束するように加工された結晶化用レーザビームを出射する結晶化用光学ヘッドを備え、当該結晶化用光学ヘッドは、前記結晶化用レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記非晶質シリコン膜に対して相対的にスキャン方向に沿って移動されて前記非晶質シリコン膜における前記改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール装置であって、脱水素化用レーザビームを出射する脱水素化用光学ヘッドを備え、前記脱水素化用光学ヘッドは、前記脱水素化用レーザビームが、前記結晶化用レーザビームに先駆けて、少なくとも前記改質予定領域を照射して前記非晶質シリコン膜の脱水素化を行うように、前記非晶質シリコン膜に対して前記スキャン方向に沿って相対的に移動されることを特徴とする。
【0010】
上記態様としては、前記脱水素化用光学ヘッドは、連続発振されたレーザ光が収束するように加工された脱水素化用レーザビームを出射し、前記脱水素化用レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置することが好ましい。
【0011】
上記態様としては、前記非晶質シリコン膜の表面に照射される前記脱水素化用レーザビームのビームスポットは、前記非晶質シリコン膜の表面に照射される前記結晶化用レーザビームのビームスポットよりも、前記スキャン方向の上流側に配置され、前記脱水素化用レーザビームの前記ビームスポットの幅寸法は、前記結晶化用レーザビームの前記ビームスポットの幅寸法よりも、長く設定されていることが好ましい。
【0012】
上記態様としては、前記結晶化用光学ヘッドは、結晶化用光源から結晶化用光ファイバを介してレーザ光が導かれ、前記脱水素化用光学ヘッドは、脱水素化用光源から脱水素化用光ファイバを介してレーザ光が導かれることが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記結晶化用光学ヘッドと前記脱水素化用光学ヘッドとが共通化された単一の光学ヘッドでなることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記結晶化用光学ヘッドと前記脱水素化用光学ヘッドとが共通化された単一の光学ヘッドでなり、前記光学ヘッドに、光源から単一の光ファイバを介してレーザ光が導かれ、前記光ファイバの出射端面に、結晶化用開口部と脱水素化用開口部とが離隔して形成された絞りが、前記結晶化用開口部と脱水素化用開口部とが前記出射端面に対向するように配置され、前記結晶化用開口部から前記結晶化用レーザビームが出射され、前記脱水素化用開口部から前記脱水素化用レーザビームが出射されることが好ましい。
【0015】
上記態様としては、前記光ファイバの出射側は、前記出射端面に向けて径寸法が大きくなるように拡大する形状であることが好ましい。
【0016】
上記態様としては、前記改質予定領域は、薄膜トランジスタのチャネル半導体層であることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様は、基板の上に成膜された非晶質シリコン膜における改質予定領域に向けて、連続発振されたレーザ光が収束するように加工された結晶化用レーザビームを出射し、前記結晶化用レーザビームにおいて最も収束するスポット部が、前記非晶質シリコン膜の膜内部に位置する状態で、前記非晶質シリコン膜に対してスキャン方向へ相対的に移動されて前記非晶質シリコン膜における前記改質予定領域を結晶化膜に改質させるレーザアニール方法であって、脱水素化用レーザビームを、前記結晶化用レーザビームに先駆けて前記非晶質シリコン膜における少なくとも改質予定領域を照射して脱水素化を行うように、前記非晶質シリコン膜に対して前記スキャン方向へ相対的に移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法によれば、レーザアニールして非晶質シリコン膜を結晶化膜に改質するまでの生産効率を向上し、しかも省スペース化および低コスト化を可能とするレーザアニール装置およびレーザアニール方法を実現するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置を用いたTFTアレイの製造方法を示す断面説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置の結晶化用光学ヘッドおよび脱水素化用光学ヘッドを示す説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置における結晶化用ファイバアレイおよび脱水素化用ファイバアレイを下方から見た状態を示す下面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置における、非晶質シリコン膜の表面に照射される結晶化用レーザビームのビームスポットと脱水素化用レーザビームのビームスポットとを示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置を用いたTFTアレイの製造方法を示す平面説明図である。
【
図7-1】
図7-1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置を用いたレーザアニール方法を示す平面説明図である。
【
図7-2】
図7-2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置において結晶化用光学ヘッドを回転させてビームピッチを変更した状態を示すTFTアレイの製造方法を示す平面説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置に備えられる光学ヘッドを示す説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置の光学ヘッドにおけるファイバアレイの出射端面を示す下面図である。
【
図10】
図9は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置における、非晶質シリコン膜の表面に照射される結晶化用レーザビームのビームスポットと脱水素化用レーザビームのビームスポットとを示す平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザアニール装置の光学ヘッドの説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4の実施の形態に係るレーザアニール装置の光学ヘッドを示す説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の第5の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
【
図14】
図14は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
【
図15】
図15は、本発明の第7の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
【
図16】
図16は、本発明の第7の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示す側面図である。
【
図17】
図17は、本発明の第8の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
【
図18】
図18は、本発明の第9の実施の形態に係るレーザアニール装置の概略を示す構成図である。
【
図19】
図19は、本発明の第9の実施の形態に係るレーザアニール装置における結像光学系の構成図である。
【
図20】
図20は、本発明の第10の実施の形態に係るレーザアニール装置を示す概略構成図である。
【
図21】
図21は、本発明の第11の実施の形態に係るレーザアニール装置におけるレーザビームの焦点および焦点近傍を含み、エネルギー密度のプロファイルがトップハット型を維持する領域Aを示す説明図である。
【
図22-1】
図22-1は、
図21における(4)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
【
図22-2】
図22-2は、
図21における(2)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
【
図22-3】
図22-3は、
図21における(1)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
【
図22-4】
図22-4は、
図21における(3)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
【
図22-5】
図22-5は、
図21における(5)の領域のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の数、各部材の寸法、寸法の比率、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0021】
[第1の実施の形態]
(レーザアニール装置の構成)
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係るレーザアニール装置1は、光源ユニット2と、光学ヘッド3と、基板10を搬送する図示しない基板搬送手段と、図示しない変位計と、を備えている。
【0022】
光源ユニット2は、結晶化用光源ユニット2Aと脱水素化用光源ユニット2Bとを備える。これら結晶化用光源ユニット2Aと脱水素化用光源ユニット2Bは、同様の構成を有しているため、ここでは、結晶化用光源ユニット2Aの構成について説明し、脱水素化用光源ユニット2Bの詳細な構成の説明は省略する。
【0023】
図2に示すように、結晶化用光源ユニット2Aは、連続発振レーザ光(CWレーザ光)を発振する光源としての複数の半導体レーザLD(LD1~LDn)を備えている。ここで、連続発振レーザ光(CWレーザ光)とは、目的領域に対して連続してレーザ光を照射する所謂疑似連続発振も含む概念である。つまり、レーザ光がパルスレーザであっても、パルス間隔が加熱後のシリコン薄膜(非晶質シリコン膜)の冷却時間よりも短い(固まる前に次のパルスで照射する)疑似連続発振レーザであってもよい。レーザ光源としては、半導体レーザ、固体レーザ、液体レーザ、気体レーザなどの各種のレーザを用いることが可能である。
【0024】
なお、本実施の形態では、半導体レーザLDの予備Rとして、例えば、半導体レーザLD100~LDnを備えている。
【0025】
結晶化用光源ユニット2Aは、上記の複数の半導体レーザLDと、ドライブ回路20と、複数のカップリングレンズ21と、を備えている。ドライブ回路20は、複数の半導体レーザLDのそれぞれに接続されており、それぞれの半導体レーザLDを駆動する。
【0026】
カップリングレンズ21は、それぞれの半導体レーザLDの出射側に接続されている。それぞれのカップリングレンズ21には、導波路としての結晶化用光ファイバ22Aの一端部が接続されている。本実施の形態では、結晶化用光ファイバ22Aとしてマルチモードファイバを適用している。
【0027】
光学ヘッド3は、結晶化用光学ヘッド3Aと、脱水素化用光学ヘッド3Bと、を備える。結晶化用光学ヘッド3Aは、結晶化用ファイバアレイ31Aと、結像光学系32Aと、を備える。結晶化用ファイバアレイ31Aは、結晶化用光ファイバ22Aの他端部が接続されている。
図4に示すように、結晶化用ファイバアレイ31Aに接続された結晶化用光ファイバ22Aの出射端は、結晶化用ファイバアレイ31Aの出射端面において、一つの直線上に沿って等間隔に一列に並ぶように配置されている。
【0028】
図1に示す脱水素化用光源ユニット2Bには、
図3に示すような脱水素化用光ファイバ22Bを介して脱水素化用光学ヘッド3Bが接続されている。
図3に示すように、脱水素化用光学ヘッド3Bは、脱水素化用ファイバアレイ31Bと、結像光学系32Bと、を備える。
【0029】
脱水素化用ファイバアレイ31Bには、脱水素化用光ファイバ22Bの他端部が接続されている。
図4に示すように、脱水素化用ファイバアレイ31Bに接続された脱水素化用光ファイバ22Bの出射端は、脱水素化用ファイバアレイ31Bの出射端面において、一つの直線上に沿って等間隔に一列に並ぶように配置されている。
【0030】
結像光学系32Aは、少なくとも入射側の第1レンズ33Aと、出射側の第2レンズ34Aと、を備えている。
図2および
図3に示すように、結像光学系32Aは、結晶化用ファイバアレイ31Aから出射されたレーザ光が入射される。
図1に示すように、結晶化用光学ヘッド3Aは、レーザ光を下流側(後側)へ向けてスポット部Fで収束する結晶化用レーザビームLB1となるように加工する。
【0031】
本実施の形態では、
図7-1に示すように、結晶化用光学ヘッド3Aの出射側において、結晶化用レーザビームLB1は、一直線の上に沿ってピッチP1で配置された位置から出射される。このピッチP1は、後述するゲートライン12のピッチと同一に設定されている。なお、この実施の形態では、結晶化用レーザビームLB1の並ぶ方向が後述するゲートライン12の延びる方向と直角をなすように設定されている。
【0032】
結像光学系32Bは、上記結像光学系32Aと同様の構成であり、少なくとも入射側の第1レンズ33Bと、出射側の第2レンズ34Bと、を備えている。
図3に示すように、結像光学系32Bには、脱水素化用ファイバアレイ31Bから出射されたレーザ光が入射される。脱水素化用光学ヘッド3Bにおいても、レーザ光を下流側(後側)へ向けてスポット部で収束する脱水素化用レーザビームLB2となるように加工する。
【0033】
結晶化用光学ヘッド3Aの側方には、結晶化用光学ヘッド3Aと基板10との位置ずれを補正する、図示しない変位計が設けられている。この変位計で検出した結晶化用光学ヘッド3Aと基板10との位置ずれ量のデータに基づいて、結晶化用光学ヘッド3Aから出射される結晶化用レーザビームLB1のピント調整を自動で行えるオートフォーカスの機能を備える。なお、本実施の形態では、オートフォーカスの手段として変位計を用いたが、これには限定されず、様々な公知の技術を用いることができる。なお、脱水素化用光学ヘッド3Bの側方にも、同様の変位計を設けて、脱水素化用光学ヘッド3Bと基板10との位置ずれ量のデータに基づいて、脱水素化用光学ヘッド3Bから出射される脱水素化用レーザビームLB2のピント調整を自動で行えるオートフォーカスの機能を備えるようにしてもよい。
【0034】
本実施の形態において、結晶化用レーザビームLB1と脱水素化用レーザビームLB2は、トップハット型形状の特性を持ち、光軸に直交する方向の断面形状が正方形である。なお、結晶化用レーザビームLB1および脱水素化用レーザビームLB2の断面形状は、長方形、六角形などであってもよい。結晶化用レーザビームLB1および脱水素化用レーザビームLB2の断面形状をこのような形状にするには、結晶化用光ファイバ22Aおよび脱水素化用光ファイバ22Bのコアの断面形状を、正方形、長方形、六角形などに設定すればよい。
【0035】
図示しない基板搬送手段は、レーザアニール処理を施す基板10をスキャン方向(本実施の形態ではX方向の一方の向き)へ任意の速度で搬送する機構を備える。したがって、結晶化用光学ヘッド3Aおよび脱水素化用光学ヘッド3Bの位置を固定した状態で基板10側を搬送することによって、基板10に対して結晶化用レーザビームLB1,脱水素化用レーザビームLB2を相対的にスキャンするようになっている。
【0036】
なお、本実施の形態では、
図3に示すように、後述する非晶質シリコン膜15aの表面に照射される結晶化用レーザビームLB1のビームスポットは、非晶質シリコン膜15aの表面に照射される脱水素化用レーザビームLB2のビームスポットよりも、スキャン方向Sの下流側に配置されている。このため、非晶質シリコン膜15aにおける改質予定領域は、結晶化用レーザビームLB1の照射に先駆けて脱水素化用レーザビームLB2の照射が行われる。
【0037】
図5に示すように、脱水素化用レーザビームLB2のビームスポットの幅寸法(Y方向の長さ)は、後述する非晶質シリコン膜15aの表面に照射される結晶化用レーザビームLB1のビームスポットの幅寸法(Y方向の長さ)よりも、長く設定されている。
【0038】
以下、基板10の構成について説明する。
図1に示すように、被レーザアニール処理基板としての基板10は、ガラス基板11を本体とする。このガラス基板11の上には、銅(Cu)でパターン形成された複数のゲートライン12およびその他の金属配線パターン、シリコン窒化膜(Si
3N
4)13、シリコン酸化膜(SiO
2)14、被レーザアニール処理膜としての非晶質シリコン膜15aなどが順次積層されている。複数のゲートライン12は、互いに平行をなすように配置されている。上述したように、ゲートライン12同士のピッチは、上記したピッチP1に設定されている。
【0039】
ゲートライン12は、図示しない画素領域毎に形成されるTFTのゲート電極となる部分を含む。因みに、一例として、ゲートライン12の厚さ寸法は200~700nm、シリコン窒化膜13の厚さ寸法は300nm程度、シリコン酸化膜14の厚さ寸法は50~100nm、非晶質シリコン膜15aの厚さ寸法は50nm程度を挙げることができる。
【0040】
本実施の形態では、非晶質シリコン膜15aの表面に照射される結晶化用レーザビームLB1のビームスポットのビーム径寸法は、例えば、5μm以上300μm以内の任意の寸法に設定されている。また、脱水素化用レーザビームLB2のビームスポットのビーム径は、上記結晶化用レーザビームLB1のビームスポットのビーム径よりも大きく設定することが好ましい。なお、この結晶化用レーザビームLB1のビームスポットのビーム径寸法の範囲は、結晶化用レーザビームLB1の照射面がTFTの半導体活性領域(改質予定領域)に収容され得る大きさである。なお、このレーザビームLBcwの照射面の径寸法は、10μm以上100μm以内であることが好ましい。
【0041】
本実施の形態においては、結晶化用レーザビームLB1が非晶質シリコン膜15aに対して、相対的にスキャンされるスキャン速度は、200mm~500mm/秒であることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、スキャン方向Sに沿って上流側と下流側に配置される結晶化用レーザビームLB1のビームスポットと脱水素化用レーザビームLB2のビームスポットとの間の距離は、光の回折限界以上の距離を離れていればよい。
【0042】
本実施の形態では、結晶化用レーザビームLB1の照射に先駆けて、脱水素化用レーザビームLB2で非晶質シリコン膜15aにおける改質予定領域をゲートライン12の延びる方向に沿って照射することにより、非晶質シリコン膜15aを部分的に脱水素化できる。このように脱水素化された改質予定領域へ結晶化用レーザビームLB1を照射することにより、
図6に示すように、水素の作用により損傷されることがなく、良質な疑似単結晶シリコン膜15Laに改質することができる。
【0043】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1によれば、結晶化用レーザビームLB1および脱水素化用レーザビームLB2におけるパワー密度の高いスポット部Fが非晶質シリコン膜15aの膜内部に位置するため、非晶質シリコン膜15aに重点的に大きな熱量が供給される。そして、スポット部Fから大部分の熱が側方(
図1における矢印h方向)に向けて非晶質シリコン膜15a内を伝達される。スポット部Fの後側(下側)では、ビームが拡散するため、下地のシリコン酸化膜14等に到達する光のパワー密度が低くなり、非晶質シリコン膜15aの下層側を過熱することを抑制できる。このため、本実施の形態に係るレーザアニール装置1によれば、ゲートライン12やその他の配線パターンやガラス基板11などが過熱により損傷されることを回避できる。
【0044】
特に、本実施の形態では、別工程で非晶質シリコン膜の脱水素化を施すことが必要ないため、レーザアニールして非晶質シリコン膜15aを疑似単結晶シリコン膜(結晶化膜)に改質するまでの生産効率を向上し、しかも省スペース化および低コスト化を可能とする。
【0045】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1によれば、TFTのチャネル半導体層とすべき改質予定領域のみに脱水素化用レーザビームLB2と結晶化用レーザビームLB1とを照射すればよいため、エネルギー効率を高めることができる。
【0046】
なお、上記スポット部Fは、パワー密度がトップハット型形状の特性を維持する範囲として、光軸方向に有限の幅(余裕)を持っても構わない。このような範囲内であれば均一なアニール処理が可能であり、非晶質シリコン膜15aにエネルギーが集中する状態が維持されるからである。スポット部Fにおけるパワー密度がトップハット型形状の特性を維持する範囲については、第8の実施の形態において後述する。
【0047】
また、本発明においては、結晶化用レーザビームLB1のビーム径は、トップハット型形状の平坦部の径寸法として考えることができる。これは、改質予定領域に均一なアニール処理を施すことができればよく、結晶化用レーザビームLB1および脱水素化用レーザビームLB2におけるトップハット型形状の平坦部の外側ではパワー密度が急激に減少するため、熱的損傷の回避とエネルギー利用効率の改善とを両立することが可能となるからである。
【0048】
さらに、基板全面に非晶質シリコン膜15aが形成されていて、かつ、ビーム径(照射領域の幅)がゲートライン間の距離よりも十分小さい場合であれば、ビーム径が改質予定領域より大きくても構わない。熱の発生は非晶質シリコン膜15aに集中し、従来のようなラインビームでのアニール処理に比べてエネルギー利用効率が大きく改善されるからである。ここで、ビーム径がゲートライン間の距離より十分小さいとは、例えば、ビーム径がゲートライン間の距離の1/10以下である。
【0049】
図7-2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1の結晶化用光学ヘッド3Aを図示しない回転駆動部により回転可能に駆動されるように設定した実施例である。この場合、結晶化用光学ヘッド3Aでは、ゲートライン12同士のピッチP2が
図7-1に示すゲートライン12のピッチP1より短い場合に適用できる。
図7-2に示すように、複数のゲートライン12に結晶化用レーザビームLB1が対応するように結晶化用光学ヘッド3Aを回転調整することにより、ゲートライン12の上方の非晶質シリコン膜15aの改質予定領域に的確に結晶化用レーザビームLB1を照射することが可能となる。
【0050】
なお、
図7-2に示すように斜めに回転移動させた結晶化用光学ヘッド3Aを基板10に対して相対的にスキャンした場合、適正な改質予定領域に結晶化用レーザビームLB1が照射されるタイミングは、ゲートライン12毎に順次ずれるため、ドライブ回路20で半導体レーザLDへの出力タイミングを順次遅延させるように設定すればよい。
【0051】
この実施例によれば、結晶化用レーザビームLB1が照射される列同士のピッチを結晶化用光学ヘッド3Aの回転により変えることができる。したがって、基板におけるゲートライン12のピッチが変更された場合にも適用できるレーザアニール装置を実現できる。なお、同様に、脱水素化用光学ヘッド3Bも回転駆動してゲートライン12のピッチが変更された場合に適用できるようにしてもよい。
【0052】
[レーザアニール方法]
次に、本実施の形態に係るレーザアニール方法について説明する。レーザアニール方法は、レーザアニール装置1を用いて基板10における改質予定領域に疑似単結晶シリコン膜15Laを形成するためのレーザアニール処理方法である。
【0053】
まず、このレーザアニール方法では、
図1に示すように、ガラス基板11の上に互いに平行をなす複数のゲートライン12が形成され、複数のゲートライン12の上層にこれらゲートライン12の全体を覆うように非晶質シリコン膜15aが成膜された基板10を用意する。
【0054】
次に、基板10を図示しない基板搬送手段に基板10をスキャン方向Sに相対的に移動させながら、非晶質シリコン膜15aにおける改質予定領域に向けて、
図3に示すように、脱水素化用レーザビームLB2を結晶化用レーザビームLB1に先駆けて照射させる。
【0055】
ここで、結晶化用レーザビームLB1および脱水素化用レーザビームLB2において最も収束するスポット部Fが、非晶質シリコン膜15aの膜内部に位置する状態を維持するようにする。この結果、
図6に示すように、TFTのチャネル半導体層となるべき領域を疑似単結晶シリコン膜15Laに改質できる。
【0056】
本実施の形態のレーザアニール方法では、TFTのチャネル半導体層を形成すべき領域だけに疑似単結晶シリコン膜15Laを形成できるため、エネルギー効率のよいアニールを行うことができる。このため、このレーザアニール方法では、レーザアニールして非晶質シリコン膜15aを結晶化膜に改質するまでの生産効率を向上し、しかも従来のようなファーネス炉を必要とせず、省スペース化および低コスト化を実現できる。
【0057】
また、本実施の形態のレーザアニール方法では、ゲートライン12やガラス基板11などを熱的に損傷させることがないため、歩留まりの高いTFT基板の製造を実現することができる。
【0058】
[第2の実施の形態]
図8は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示している。本実施の形態では、上記第1の実施の形態における結晶化用ファイバアレイ31Aと脱水素化用ファイバアレイ31Bとが共通化された単一のファイバアレイ31でなる。結晶化用レーザビームLB1は、図示しない結晶化用光源から比較的断面積の小さい結晶化用光ファイバ22Aを介して導かれたレーザ光で形成される。脱水素化用レーザビームLB2は、図示しない脱水素化用光源から比較的断面積の大きい脱水素化用光ファイバ22Bを介して導かれたレーザ光で形成される。
【0059】
図9に示すように、本実施の形態では、単一のファイバアレイ31の出射端面に複数の結晶化用光ファイバ22Aと複数の脱水素化用光ファイバ22Bの端部を配列することができる。
【0060】
図8に示すように、本実施の形態では、結晶化用レーザビームLB1と脱水素化用レーザビームLB2との両方を、共通の第1レンズ33と第2レンズ34とで、収束するように加工する。本実施の形態においても、
図10に示すように、脱水素化用レーザビームLB2のビームスポットの幅寸法(Y方向の長さ)は、後述する非晶質シリコン膜15aの表面に照射される結晶化用レーザビームLB1のビームスポットの幅寸法(Y方向の長さ)よりも、長く設定されている。
【0061】
本実施の形態では、光学ヘッド3を構成するファイバアレイ31ならびに第1レンズ33、第2レンズ34がそれぞれ単一であるため、装置をコンパクト化することができる。
【0062】
[第3の実施の形態]
図11は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示している。本実施の形態では、上記第2の実施の形態と同様に、結晶化用ファイバアレイ31Aと脱水素化用ファイバアレイ31Bとが共通化された単一のファイバアレイ31で構成されている。ファイバアレイ31には、光源から単一の径寸法の長い光ファイバ22を介してレーザ光が導かれる。
【0063】
図11に示すように、光ファイバ22の出射端面には、比較的小さい結晶化用開口部40Aと比較的大きい脱水素化用開口部40Bとが離隔して形成された絞り40が、結晶化用開口部40Aと脱水素化用開口部40Bとが光ファイバ22の出射端面に対向するように配置されている。結晶化用開口部40Aからは、結晶化用レーザビームLB1が出射され、脱水素化用開口部40Bからは、脱水素化用レーザビームLB2が出射される。本実施の形態においても、上記第2の実施の形態と同様に、結晶化用レーザビームLB1と脱水素化用レーザビームLB2との両方を、共通の第1レンズ33と第2レンズ34とで、収束するように加工する。
【0064】
本実施の形態においても、光学ヘッド3を構成するファイバアレイ31ならびに第1レンズ33、第2レンズ34がそれぞれ単一であるため、装置をコンパクト化できる。
【0065】
[第4の実施の形態]
図12は、本発明の第4の実施の形態に係るレーザアニール装置の要部を示している。本実施の形態では、上記第2の実施の形態と同様に、結晶化用ファイバアレイ31Aと脱水素化用ファイバアレイ31Bとが共通化された単一のファイバアレイ31で構成されている。ファイバアレイ31には、光源から単一の径寸法の小さい光ファイバ22を介してレーザ光が導かれる。なお、
図12に示すように、光ファイバ22は、ファイバアレイ31において出射端面に向けて径寸法が大きくなるように拡大する形状の拡径部22Eが形成されている。
【0066】
図12に示すように、光ファイバ22の出射端面には、比較的小さい結晶化用開口部40Aと比較的大きい脱水素化用開口部40Bとが離隔して形成された絞り40が、結晶化用開口部40Aと脱水素化用開口部40Bとが光ファイバ22の出射端面に対向するように配置されている。結晶化用開口部40Aからは、結晶化用レーザビームLB1が出射され、脱水素化用開口部40Bからは、脱水素化用レーザビームLB2が出射される。本実施の形態においても、上記第2の実施の形態と同様に、結晶化用レーザビームLB1と脱水素化用レーザビームLB2との両方を、共通の第1レンズ33と第2レンズ34とで、収束するように加工する。
【0067】
本実施の形態においては、細い光ファイバ22を用いているが、光ファイバ22の端部が出射端面に向けて径寸法の長い拡径部22Eが形成されているため、絞り40における結晶化用開口部40Aと脱水素化用開口部40Bとの間の距離が確保できる。
【0068】
[第5の実施の形態]
図13は、本発明の第5の実施の形態に係るレーザアニール装置1Aを示す概略構成図である。なお、本実施の形態では、結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bを備えるが、同様な構成であるため、結晶化用光学ヘッド3Aについて説明し、脱水素化用光学ヘッド3Bの説明を省略する。
【0069】
本実施の形態では、複数の結晶化レーザビームLB1のそれぞれの光量を検出する光量センサD1を備えることを特徴とする。本実施の形態における他の構成は、上記第1の実施の形態に係るレーザアニール装置1と同様であるため、説明を省略する。
【0070】
光量センサD1は、結晶化用光学ヘッド3Aの後方に配置され、結晶化用レーザビームLB1のスポット部Fに順次移動できるようになっている。また、この光量センサD1は、1つ結晶化用レーザビームLB1の光量を検出するときに、隣接する結晶化用レーザビームLB1が入射しないように設定されている。
【0071】
本実施の形態では、光量センサD1で検出したデータは、ドライブ回路20へフィードバックされ、当該結晶化用レーザビームLB1の光源としての半導体レーザLDの出力調整を行うようになっている。
【0072】
本実施の形態では、レーザアニール処理を行う前に、それぞれの結晶化用レーザビームLB1の光量調整を行って、これら結晶化用レーザビームLB1の出力(光量)の均一化を図ることができる。このため、本実施の形態に係るレーザアニール装置1Aによれば、TFT同士のチャネル半導体層の電気的特性の均一化を図ることができる。なお、同様に、脱水素化用レーザビームLB2の光量を図示しない光量センサで検出して、図示しない半導体レーザLDの出力調整を行うようにしてもよい。
【0073】
[第6の実施の形態]
図14は、本発明の第6の実施の形態に係るレーザアニール装置1Bの概略構成図である。本実施の形態では、結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bを備えるが、同様な構成であるため、結晶化用光学ヘッド3Aについて説明し、脱水素化用光学ヘッド3Bの説明を省略する。
【0074】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1Bは、結像光学系32A内の光路にビームスプリッタ35を備え、ビームスプリッタ35の側方に側方レンズ36および光量センサD2が配置されている。本実施の形態では、ビームスプリッタ35で反射された結晶化用レーザビームLB1が側方レンズ36を通して光量センサD2に入射されるように設定されている。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Bの他の構成は、上記第1の実施の形態と略同様である。
【0075】
本実施の形態では、光量センサD2で検出されたデータは、ドライブ回路20へフィードバックされ、当該結晶化用レーザビームLB1の光源としての半導体レーザLDの出力調整を行うようになっている。本実施の形態では、レーザアニール装置1Bを運転しながら、各半導体レーザLDの出力調整を行うことができる。
【0076】
[第7の実施の形態]
図15は、本発明の第7の実施の形態に係るレーザアニール装置1Cを示す概略構成図であり、
図16はレーザアニール装置1Cの要部側面図である。本実施の形態では、結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bを備えるが、これら結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bとは略同様な構成であるため、結晶化用光学ヘッド3Aについて説明し、脱水素化用光学ヘッド3Bの説明を省略する。
【0077】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1Cは、結晶化用ファイバアレイ31Aから出射されたレーザ光を、第1レンズ33Aを通して例えば、ガルバノミラーなどのスキャンミラーSMで下方(側方)へ向けて反射させる。スキャンミラーSMで反射された結晶化用レーザビームLB1は、下方に配置された第2レンズ34を通して基板側へ照射される。
図16に示すように、スキャンミラーSMは、傾斜度合いを変更可能にするために、矢印B方向に回転調整可能に設定されている。
【0078】
本実施の形態によれば、装置の高さ寸法を短くして、装置をコンパクトにすることができる。また、スキャンミラーSMを回転調整することにより、結晶化用レーザビームLB1の照射位置や、非晶質シリコン膜15a表面からの膜厚方向におけるスポット部Fの深さ位置を調整することが可能となる。
【0079】
[第8の実施の形態]
図17は、本発明の第8の実施の形態に係るレーザアニール装置1Dの概略構成図である。本実施の形態では、結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bを備えるが、これら結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bとは、略同様な構成であるため、結晶化用光学ヘッド3Aについて説明し、脱水素化用光学ヘッド3Bの説明を省略する。
【0080】
この実施の形態は、上記第5の実施の形態に係るレーザアニール装置1Aの結像光学系32における瞳位置に開口37Aを有するマスク37を配置して構成した結像光学系32Dを備える。本実施の形態に係るレーザアニール装置1Dの他の構成は、上記第5の実施の形態に係るレーザアニール装置1Aと略同様である。
【0081】
本実施の形態によれば、マスク37によって、結像光学系32Dを通過する結晶化用レーザビームLB1のパターンを変更することができる。本実施の形態においても、光量センサD1を備えるため、パターンを変更した結晶化用レーザビームLB1のそれぞれの光量を光量センサD1で検出することができる。
【0082】
[第9の実施の形態]
図18は、本発明の第9の実施の形態に係るレーザアニール装置1Eの概略構成図である。
図19は、レーザアニール装置1Eにおける結像光学系38の概略構成図である。本実施の形態では、結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bを備えるが、これら結晶化用光学ヘッド3Aと図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bとは同様な構成であるため、結晶化用光学ヘッド3Aについて説明し、脱水素化用光学ヘッド3Bの説明を省略する。
【0083】
図18に示すように、本実施の形態に係るレーザアニール装置1Eは、第1の実施の形態と同様に、結晶化用光学ヘッド3Aとして、結晶化用ファイバアレイ31Aと、結像光学系38と、を備える。結晶化用ファイバアレイ31Aは、結晶化用光ファイバ22Aの他端部が接続されている。結晶化用光ファイバ22Aの出射端は、結晶化用ファイバアレイ31Aの出射端面において、一つの直線上に沿って一列に並ぶように配置されている。
【0084】
本実施の形態では、結像光学系38は、テレセントリック光学系で構成されている。また、結晶化用ファイバアレイ31Aは、アクチュエータ39によって光軸方向に沿って変位されるようになっている。本実施の形態では、レーザアニール装置1Eのオートフォーカス時に、アクチュエータ39で結晶化用ファイバアレイ31Aのみを光軸に沿って移動させるようになっている。このとき、結晶化用光源ユニット2Aおよび結像光学系38は、移動しないようになっている。
【0085】
図19に示すように、本実施の形態において、結像光学系38は、光軸方向に沿って順次配置された複数のレンズなどの光学部材L1~L14でテレセントリック光学系を構成している。このようなテレセントリック光学系でなる結像光学系38を備えることにより、基板10に対してピント合わせを行う際に、アクチュエータ39が軽量な結晶化用ファイバアレイ31Aのみを移動させればよいため、迅速な応答性を有するオートフォーカス性能を得ることができる。
【0086】
また、結像光学系38は、テレセントリック光学系でなるため、基板10に対して像のずれがなく、基板10表面における複数の結晶化用レーザビームLB1の照射位置のピッチが変わらないという利点がある。
【0087】
なお、アクチュエータ39としては、ピエゾ圧電効果を応用した位置決め素子であるピエゾアクチュエータを適用することができる。ピエゾアクチュエータは、ナノメータ程度の極めて微小な範囲から数百ミクロンメータまでの位置決めを正確に行うことができる。また、ピエゾアクチュエータは、セラミックで形成されているため非常に硬く、大きな力を生み出すことができる。また、ピエゾアクチュエータは、コンパクトで省エネルギーな駆動を行うことができる。なお、本実施の形態では、アクチュエータ39として、ピエゾアクチュエータを適用したが、リニアモータなどの他の駆動手段を適用することも勿論可能である。
【0088】
このレーザアニール装置1Eでは、軽量な結晶化用ファイバアレイ31Aのみを移動させるだけでよいため、アクチュエータ39の負荷が小さく、迅速なオートフォーカス機能を備えることができる。
【0089】
[第10の実施の形態]
図20は、本発明の第10の実施の形態に係るレーザアニール装置1Fを示す概略構成図である。本実施の形態では、単一の光源としての半導体レーザLDと、カップリングレンズ21と、単一の光ファイバ22と、単一の結晶化用光学ヘッド3Aと、基板10を搬送する図示しない基板搬送手段と、を備えている。本実施の形態においても、図示しない脱水素化用光学ヘッド3Bを備えるが、説明を省略する。
【0090】
半導体レーザLDは、上記の各実施の形態と同様に、連続発振レーザ光(CWレーザ光)を発振する。カップリングレンズ21は、半導体レーザLDの出射側に接続されている。カップリングレンズ21には、導波路としての結晶化用光ファイバ22Aの一端部が接続されている。本実施の形態では、結晶化用光ファイバ22Aとして例えば方形ファイバを適用している。
【0091】
結晶化用光学ヘッド3Aは、結像光学系としての、入射側の第1レンズ33Aと、出射側の第2レンズ34Aと、を備えている。
図20に示すように、結晶化用光学ヘッド3Aには、結晶化用光ファイバ22Aの他端部から出射されたレーザ光が入射される。結晶化用光学ヘッド3Aでは、レーザ光を下流側(後側)へ向けてスポット部Fで収束する結晶化用レーザビームLB1となるように加工する。本実施の形態においても、スポット部Fが非晶質シリコン膜の膜内部(深さ方向の内部)に位置するように設定されている。
【0092】
本実施の形態においても、結晶化用レーザビームLB1は、トップハット型形状の特性を持ち、光軸に直交する方向の断面形状が正方形である。なお、結晶化用レーザビームLB1の断面形状は、長方形、六角形などであってもよい。結晶化用レーザビームLB1の断面形状をこのような形状にするには、結晶化用光ファイバ22Aのコアの断面形状を、正方形、長方形、六角形などに設定すればよい。
【0093】
図示しない基板搬送手段は、上記した各実施の形態と同様に、レーザアニール処理を施す基板10をスキャン方向へ任意の速度で搬送する機構を備える。したがって、結晶化用光学ヘッド3Aの位置を固定した状態で基板10側を搬送することによって、基板10に対して結晶化用レーザビームLB1を相対的にスキャンするようになっている。
【0094】
本実施の形態に係るレーザアニール装置1Fによれば、結晶化用レーザビームLB1におけるパワー密度の高いスポット部Fが非晶質シリコン膜の膜内部に位置するため、非晶質シリコン膜に重点的に大きな熱量が供給される。そして、スポット部Fから大部分の熱が側方に向けて非晶質シリコン膜の内部を伝達される。スポット部Fの後側(下側)では、ビームが拡散するため、下地のシリコン酸化膜等に到達する光のパワー密度が低くなり、非晶質シリコン膜の下層側を過熱することを抑制できる。このため、レーザアニール装置1Fによれば、ゲートラインやその他の配線パターンやガラス基板などが過熱により損傷されることを回避できる。
【0095】
[第11の実施の形態]
図21は、本発明の第11の実施の形態に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法の基本原理を示す。
【0096】
上記の第1~10の実施の形態では、結晶化用レーザビームLB1において最も収束するスポット部Fが、改質予定領域の非晶質シリコン膜15aの膜内部に位置する状態で、結晶化用レーザビームLB1をスキャンさせた。これに対して、本実施の形態では、
図21に示すように、結晶化用レーザビームLB1における焦点および焦点近傍を含みビームプロファイルがトップハット型を維持する領域Aが、非晶質シリコン膜15aの膜内部の領域に重なる状態で、結晶化用レーザビームLB1を改質予定領域内でスキャンさせる。すなわち、本実施の形態に係るレーザアニール装置では、
図21に示す結晶化用レーザビームLB1の領域Aに非晶質シリコン膜15aが重なる状態であればよい。
【0097】
図21に示すように、領域Aは、結晶化用レーザビームLB1における(1)、(2)および(3)を含む。
図22-3は、
図21における(1)の範囲のレーザビームの半径方向の位置とパワー密度との関係を示している。
図21に示すように、(1)の領域は、略焦点深度の領域であり、
図22-3に示すように、典型的なトップハット型のビームプロファイルを示す。
図21における(2)の領域は、(1)の領域よりも焦点の手前に位置するが、
図22―2に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせる領域である。
図21における(3)の領域は、(1)の領域よりも焦点よりも後方に位置するが、
図22―4に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせる領域である。
【0098】
図21における(4)の領域は、(2)の領域よりも手前に位置し、
図22―1に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせない形状となる。
図21における(5)の領域は、(3)の領域よりも後方に位置し、
図22―5に示すように、レーザプロファイルがトップハット型とみなせない形状となる。したがって、本実施の形態では、
図21に示す領域Aが、ビームプロファイルがトップハット型を維持する領域と定義される。なお、この領域Aは、光学ヘッド3などの条件によって適宜設定すればよい。
【0099】
図21における(1)の領域は、
図22-3に示すように、非晶質シリコン膜15aをアニールするのに十分なエネルギー密度を有し、必要領域をアニールできる平坦部の幅寸法を有している。
図21における(2)および(3)の領域は、
図22―2および
図22-4に示すように、(1)の領域の特性に近似するが、(4)と(5)の領域は、
図22-1および
図22-5に示すように、エネルギー密度が不十分であり、必要領域をアニールするための平坦部の幅が狭いため、非晶質シリコン膜15aの局所的なアニールには不適切な領域である。
【0100】
以上、本発明の第11の実施の形態について説明したが、他の構成は、上記した第1の実施の形態に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法と同様である。
【0101】
本実施の形態では、例えば、非晶質シリコン膜15aが、
図21に示す(2)の領域に位置する場合に、見かけ上は非晶質シリコン膜15aの下側の基板や配線などに焦点位置が来るが、光の大半が非晶質シリコン膜15aで吸引されるので、非晶質シリコン膜15aの下側の基板、配線などに対して熱的損傷を与えることはない。したがって、本実施の形態によれば、光学ヘッド3などの条件設定が容易となり装置コストを低減することが可能である。
【0102】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0103】
上記の実施の形態では、脱水素化用レーザビームLB2を収束するスポット部を有するように加工して、このスポット部が非晶質シリコン膜の内部に位置するように配置したが、これに限定されるものではなく、単に非晶質シリコン膜の表面に脱水素化用レーザビームLB2を照射する構成であってもよい。
【0104】
上記の実施の形態では、ゲートライン12の上層に当該ゲートライン12を覆うように成膜された非晶質シリコン膜の15aに対してアニールを行ったが、本発明に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法は、非晶質シリコン膜の下方にゲートラインが形成されていない場合にも適用可能である。すなわち、本発明に係るレーザアニール装置およびレーザアニール方法は、ボトムゲート型(逆スタガ型)の構造を有するTFTおよびトップゲート型(スタガ型)の構造を有するTFTの製造に適用可能である。また、本発明では、ゲートラインを設けない基板に成膜された非晶質シリコン膜のレーザアニールにも適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
D1,D2 光量センサ
F スポット部
LD 半導体レーザ
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F レーザアニール装置
2 光源ユニット
2A 結晶化用光源ユニット
2B 脱水素化用光源ユニット
3 光学ヘッド
3A 結晶化用光学ヘッド
3B 脱水素化用光学ヘッド
10 基板(被レーザアニール処理基板)
11 ガラス基板(基板)
12 ゲートライン
13 シリコン窒化膜
14 シリコン酸化膜
15a 非晶質シリコン膜
21 カップリングレンズ
22 光ファイバ
22A 結晶化用光ファイバ
22B 脱水素化用光ファイバ
22E 拡径部
31 ファイバアレイ
31A 結晶化用ファイバアレイ
31B 脱水素化用ファイバアレイ
32,32A,32B 結像光学系
33,33A,33B 第1レンズ
34,34A,34B 第2レンズ
35 ビームスプリッタ
36 側方レンズ
37 マスク
37A 開口
38 結像光学系
39 アクチュエータ
40 絞り
40A 結晶化用開口部
40B 脱水素化用開口部