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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131294
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
A01K89/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030161
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】堤 わたる
(72)【発明者】
【氏名】清水 栄仁
(72)【発明者】
【氏名】弘田 悠将
(72)【発明者】
【氏名】山口 由美子
(72)【発明者】
【氏名】上野 勇人
(72)【発明者】
【氏名】比留間 祐太
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量化が図れると共に十分な強度が得られるロータを備えた魚釣用スピニングリールを提供する。
【解決手段】魚釣用スピニングリールは、スプールと、ロータ10と、ロータ10に設けられ、前方に向けて突設された一対の支持アーム11,12と、一対の支持アームのそれぞれの先端に配設される一対のベール支持部材14,15と、ベール支持部材15に取着される釣糸案内装置50とを有する。ロータ10は、一対の支持アーム間に位置し、筒壁21に開口部21dが形成された筒状部20を有しており、一対の支持アーム11,12の後端部は、筒壁21の後端で開口部に沿って形成されるリング状連結部25に接続されており、釣糸案内装置が設けられる側の支持アーム12の反ベール側の側部にリング状連結部25に向けて接続される補強部26dを設けたことを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作で前後動し、釣糸が巻回されるスプールと、
前記ハンドルの回転操作で駆動軸と共に回転するロータと、
前記ロータに設けられ、前方に向けて突設された一対の支持アームと、
前記一対の支持アームのそれぞれの先端に配設され、釣糸巻取り位置と釣糸放出位置に振り分け保持される一対のベール支持部材と、
前記一対のベール支持部材の一方に取着される釣糸案内装置と、
を有する魚釣用スピニングリールにおいて、
前記ロータは、前記一対の支持アーム間に位置し、筒壁に開口部が形成された筒状部を有しており、
前記一対の支持アームの後端部は、前記筒壁の後端で前記開口部に沿って形成されるリング状連結部に接続されており、
前記釣糸案内装置が設けられる側の支持アームの反ベール側の側部に、前記リング状連結部に向けて接続される補強部を設けたことを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記釣糸案内装置が設けられていない側の支持アームの後部と前記リング状連結部は、段差のない面一形状となって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記釣糸案内装置が設けられていない側の支持アームは、二股形状になって前記リング状連結部に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記リング状連結部の後端面は、釣糸案内装置が設けられる側の支持アームの後端部を除いて、駆動軸を中心として段差のない円形状に形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関し、詳細には、ロータ部分に特徴を有する魚釣用スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用スピニングリールは、ハンドルの巻き取り回転操作によって、連動回転するロータ及び前後動するスプールを備えた構造となっており、前記ロータには、スプールの周りを回転する一対の支持アーム(アーム部)が一体形成されている。前記一対の支持アームの先端には、それぞれベール支持部材(アームレバー)が釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置に回動可能に支持されており、一方のベール支持部材には、釣糸案内装置が装着されている。また、各ベール支持部材には、釣糸をピックアップするベールの基端部が結合されており、ベールは、ベール支持部材の回動と共に釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置に回動(反転)されるようになっている。
【0003】
すなわち、前記ベールを釣糸放出位置に回動させると、釣糸はスプールから放出され、前記ベールを釣糸巻き取り位置に反転復帰させると、釣糸はベールにピックアップされて、釣糸案内装置の釣糸案内部(ラインローラ)を介してスプールの釣糸巻回胴部に案内される。これにより、リール本体に設けられたハンドルの回転操作に同期して、前後に往復動されるスプール、及び、回転駆動されるロータに設けられスプールの周りで回転する釣糸案内部によって、釣糸は釣糸巻回胴部に均等に巻回される。
【0004】
上記したような構成の魚釣用スピニングリールでは、釣糸巻き取り時において、釣糸案内装置が設けられる支持アーム部分に大きな負荷が作用するため、例えば、特許文献1に開示されているように、支持アーム部分を補強した魚釣用スピニングリールが知られている。この公知技術は、一対の支持アームのそれぞれの側部から、ロータの本体の後部に向けて延出する帯状(略U字形状)の補強部材を、支持アームの基部側に移行するに連れて離間するようにロータの本体に接続することで、支持アームにおける強度維持とロータの軽量化を図る構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4939573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した公知技術は、一対の支持アームに加わる負荷を支えるために、支持アーム間に略U字形状で所定の幅を有するアーチ形状の補強部材を配設するため、十分な軽量化を図ることはできず、また、負荷をアーチ状の部分でのみ支えることから、十分な剛性を得ることはできない。さらに、釣糸巻き取り時では、釣糸案内部に案内される釣糸から大きな力が作用し、アーチ状の補強部材に対して均等に負荷が作用しないことから、補強と軽量化のバランスが最適ではない。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軽量化が図れると共に十分な強度が得られるロータを備えた魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用スピニングリールは、リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作で前後動し、釣糸が巻回されるスプールと、前記ハンドルの回転操作で駆動軸と共に回転するロータと、前記ロータに設けられ、前方に向けて突設された一対の支持アームと、前記一対の支持アームのそれぞれの先端に配設され、釣糸巻取り位置と釣糸放出位置に振り分け保持される一対のベール支持部材と、前記一対のベール支持部材の一方に取着される釣糸案内装置と、を有しており、前記ロータは、前記一対の支持アーム間に位置し、筒壁に開口部が形成された筒状部を有しており、前記一対の支持アームの後端部は、前記筒壁の後端で前記開口部に沿って形成されるリング状連結部に接続されており、前記釣糸案内装置が設けられる側の支持アームの反ベール側の側部に、前記リング状連結部に向けて接続される補強部を設けたことを特徴とする。
【0009】
上記した構成の魚釣用スピニングリールのロータは、一対の支持アームの後端部を、筒状部の筒壁の後端で開口部に沿って形成されるリング状連結部に接続することで、支持アーム部分に作用する力を支えるようにしている。このようにリング状連結部で、支持アーム部分に作用する力を支える構成であるため、軽量化を図りながら剛性を高めることが可能となる。また、前記釣糸案内装置が設けられる側の支持アームの反ベール側の側部に、リング状連結部向けて延びて接続される補強部を設けており、釣糸巻き取り時に大きな負荷が作用する部分を重量化することなく効果的に補強することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量化が図れると共に十分な強度が得られるロータを備えた魚釣用スピニングリールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一実施形態を示す側面図。
図2図1に示した魚釣用スピニングリールを反対側から見た側面図。
図3図1に示した魚釣用スピニングリールを前方の上方側から見た斜視図。
図4】ロータを斜め上方側から見た斜視図。
図5】ロータの筒状部の前壁を分解して、ロータを上方側から見た斜視図。
図6】ロータの正面図。
図7】ロータを釣糸案内装置が設けられていない側から見た側面図。
図8】ロータを釣糸案内装置が設けられている側から見た側面図。
図9】ロータの底面図。
図10】ロータを底側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリールの実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1から図3は、本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの一構成例を示す図である。最初に魚釣用スピニングリールの全体構成の概略について説明する。なお、以下の説明において、ロータの前方及び後方は、図1及び図2で示す方向を意味する。
【0013】
魚釣用スピニングリール1のリール本体2には、釣竿に装着される脚部2Aが形成されている。前記リール本体内には、ハンドル軸が軸受を介して回転可能に支持されており、ハンドル軸の端部には、巻き取り操作されるハンドル3が装着されている。また、前記ハンドル軸には、公知の駆動力伝達機構が連結されており、ハンドル3の回転操作に伴ってロータ10を回転駆動すると共に、公知のオシレーティング機構を介してスプール5を前後動させるようになっている。
【0014】
前記スプール5は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の比重の軽い金属、或いは、合成樹脂材等で形成されており、釣糸が巻回される釣糸巻回胴部5aと、釣糸巻回胴部5aの糸巻量を前後方向で規定する前フランジ部5b及び後フランジ部(スカート部)5cとを有している。
【0015】
前記ロータ10には、一対の支持アーム11,12が略180°間隔で、軸方向前方に延出して対向するように形成されており、前記スプール5は、一対の支持アーム間に位置して前後に往復駆動される。各支持アーム11,12の先端部11A,12Aには、ベール支持部材14,15の回動支持部14a,15aが、釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で回動可能に支持されている(図4参照)。また、それぞれのベール支持部材14,15には、半環状のベール17の基端部が取着されており、ベール17は、前記ベール支持部材14,15と共に回動可能となっている。そして、一方のベール支持部材15の先端には、釣糸をスプールに案内する釣糸案内装置50が配設されている(図2参照)。
【0016】
前記釣糸案内装置50は、公知のように、釣糸をスプール5に案内する釣糸案内部(ラインローラ)51と、釣糸をベール17からラインローラ51へ誘導する釣糸誘導部(ラインスライダ)53とを備えており、釣糸誘導部53には、ベール17の一方の基端部17aが結合されている。前記ベール17は、中空形状に形成されており、釣糸誘導部53の装着部53aに一体的に結合されているが、ベール17は、中実構造で釣糸誘導部53の装着部53aに一体的に結合される構成であっても良いし、釣糸誘導部53の装着部53aからそのまま延出させて釣糸誘導部53と共に一体形成される構成であっても良い。また、釣糸誘導部53の装着部53aとベール17の基端部17aとは段差なく面一状に結合されていることが好ましい。
【0017】
図1から図3は、釣糸巻き取り状態を示しており、この状態でハンドル3を回転操作すると、駆動力伝達機構を介してロータ10が回転駆動され、オシレーティング機構を介してスプール5は前後に往復駆動される。これにより、釣糸は、ロータ10と共に回転するベール支持部材15の釣糸案内装置50のラインローラ51を介してスプール5の釣糸巻回胴部5aに均等に巻回される。
【0018】
前記ベール17は、図に示す釣糸巻き取り状態からベール支持部材14,15の回動と共に釣糸放出位置に回動(矢印A方向の回動)されると、スプール5に巻回されている釣糸は放出状態(図示せず)となる。そして、この釣糸放出状態で釣糸を放出した後、ベール17を釣糸放出位置から釣糸巻き取り位置に回動すると、釣糸は、ベール17によってピックアップされて釣糸誘導部53に沿ってラインローラ51に案内され、図に示す釣糸巻き取り状態となる。
【0019】
上記した構成において、魚が掛かった状態で釣糸を巻回する際には、釣糸に大きな引張力が作用しており、この状態でロータを巻き取り方向(図2図3の矢印R方向)に回転すると、ベール支持部材15を介して支持アーム12には大きな負荷が作用する。この負荷は、特に、支持アーム12の反ベール側の側部(図2の点線領域B)に作用することから、この部分の強度を向上しないと全体の剛性バランスが低下してしまう。本発明では、重量を増加させることなく、この部分の剛性を高めるように、後述するような補強部を設けている。
【0020】
前記ベール17は、釣糸放出位置と釣糸巻き取り位置との間で回動され、いずれか一方の位置に振り分け保持されるようになっている。この場合、釣糸放出位置から釣糸巻取り位置への回動(反転復帰)は、ベール17を手で把持して手動で行なう、或いは、ハンドル3を巻き取り操作した際、反転機構を介して行なうことが可能である。この反転機構は公知であるためその構成については省略するが、支持アーム11,12の一方の内部に組み込むことが可能であり、釣糸案内装置50が装着される側の支持アーム12内に組み込まれている。このため、支持アーム12の外側には、反転機構を収容するための凹部12B´が形成されており、凹部12B´の開口部は支持アーム12に取着されるカバー部材12Bによって閉塞されるようになっている(図8参照)。
【0021】
前記釣糸案内装置50のラインローラ51は筒状に形成されて、前記ベール支持部材15と釣糸誘導部53との間で回転可能に支持されている。本実施形態のラインローラ51は、前記釣糸誘導部53をベール支持部材15に対して固定する取着部材(本実施形態ではネジ部材)55の軸部に、図示しない公知の軸受を介在させることで回転可能に支持されている。
【0022】
前記釣糸誘導部53は、軽量で摺動性の良い金属材料、例えば、薄膜のステンレス合金やアルミ合金で一体形成されており、ベール支持部材15側で略円形に開口した開口53bを有すると共に、その開口53bの反対側でベール17の基端部17aと結合される前記装着部53aを備えている。
【0023】
また、前記釣糸誘導部53には、前記取着部材55の頭部55aを外側に突出させることなく収容する凹部53Aが形成されている。この凹部53Aは、前記装着部53aからベール支持部材側に向けて、軸方向に沿って、両サイドで次第に広がると共に上昇する一対の傾斜部53d間に形成されている。そして、凹部53Aの両サイドの前記一対の傾斜部53dの上端側は、リング状の環状部53eに一体化されてベール支持部材側が前記開口53bを形成しており、前記一対の傾斜部53dの下端側は、前記装着部53aと一体化されている。
【0024】
上記した構成では、取着部材55がベール17側から差し込まれ(図4の矢印D1方向)、取着部材の軸部の中間部に軸受を介在してラインローラ51が回転可能に支持されている。更に、その軸部の端部に形成された雄ネジ部がベール支持部材15の内面に設けられた雌ネジ部に螺合、固定されて、釣糸誘導部53はベール支持部材15に固定される。このため、釣糸誘導部53をベール支持部材15に取着する取着部材55は、図2及び図3に示すように、ベール17側に面しており、ベール支持部材15の外側面から露出しないため、外側面を滑らかな面に形成して釣糸の絡みを抑制することが可能となる。
【0025】
次に、ロータ10の基本構造について、図1から図3に加え、図4から図10を参照して詳細に説明する。
前記ロータ10の本体10Aは、例えば、アルミ合金やマグネシウム合金、硬質樹脂など、軽量で強度が高い材料で一体形成されている。前記本体10Aには、前記一対の支持アーム11,12が、略180°の間隔をおいて、スプール軸に沿って前方に突出するように一体形成されており、一対の支持アーム11,12間には、筒状部20が形成されている。
【0026】
前記筒状部20の筒壁21は、前方側が前壁22によって閉塞されており、後端は略円形に開口されている。この場合、筒壁21は、略円筒形状に形成されており、その筒壁21には、軽量化が図れるように開口部が形成されている。本実施形態の開口部は、筒壁21の上側から筒壁21の下端縁部に至る領域まで、周方向に沿って円弧状に形成されており、前記一対の支持アーム11,12と対向している一定範囲の円弧壁21a,21b以外の領域は、略同じ形状の開口部21d,21eが形成されている(図4から図6参照)。なお、円弧壁21a,21bのそれぞれの下端は、支持アーム11,12の下端部と接続されており、各円弧壁の表面は、支持アームに対して一定間隔をおいて対向している。
【0027】
このように、開口部21d,21eを、筒壁21の後端縁を欠いて大きく形成したことで、開口部21d,21eが形成されている領域は空間となっており、この部分に、筒壁21の後端縁と略同一面内で、径方向に突出するように形成されたリング状連結部25が配設されている。このリング状連結部25は、開口部21d,21eに沿うように形成されてロータの後端部(筒壁21の後端部)を構成すると共に、前記支持アーム11,12の各両側部同士を連結している。すなわち、リング状連結部25は、前記支持アーム11,12の後端部に接続されて、支持アーム11,12と一体化されており、好ましくは、同一の素材によって一体形成されている。
なお、本実施形態のリング状連結部25の外周面は、前記円弧壁21a,21bの表面に沿うように形成されると共に、支持アーム11,12間において、径方向外側にリング状連結部25に沿うように湾曲壁25aを一体形成している。この湾曲壁25aは、後述する補強部26a~26dと一体化されており、補強部の表面と面一状で、リング状連結部25の下端縁から前方に向けて次第に拡径する滑らかなお椀状の表面形状を備えている。
【0028】
前記筒壁21に上記したような開口部21d,21eを形成することで、円弧壁21a,21bの上端側の両サイドは、半環状のフレーム21f,21gによって接続された状態となっている。この場合、開口部21d,21eを大きく形成することで、ロータとして軽量化が図れるが、あまり周方向に広く形成すると、強度が低下してしまう。特に、支持アーム11,12が形成される位置は、大きな負荷が作用することから、少なくとも、支持アーム11,12と対向する一定範囲の円弧領域には開口部を形成しないことが好ましい。また、半環状のフレーム21f,21gについては、筒壁21の上端縁に沿って形成しても良いが、本実施解体では、筒壁21の上端縁よりも下方位置に形成されており、これにより、円弧壁21a,21bの変形を効果的に防止することが可能となる。
【0029】
前記筒状部20の筒壁21の前方側を閉塞する前壁22は、筒壁21の開口前端縁を、所定の幅で径方向に接続する平坦状のブリッジ20Aと、このブリッジ20Aの表面に装着されるキャップ部材22Aによって構成されている。このキャップ部材22Aは、図4及び図5に示すように、円周壁22aと、円周壁の上方開口縁で径方向外方に突出する環状フランジ部22bと、中央領域に略矩形状の開口22dが形成された底部22cとを備えている。前記円周壁22aは、対向する2か所で円弧状に垂下する一対の円弧壁22a´を備えており、底部22cの裏面には、4箇所(何か所であっても良く、位置も限定されることはない)にボス22eが形成されて、ブリッジ20Aに装着できるようになっている。
【0030】
前記ブリッジ20Aには、中央にスプール軸が挿通されると共に、前記駆動力伝達機構の構成要素であるピニオンギアに固定するナットを装着するための開口20aが形成されており、更に、前記キャップ部材22Aのボス22eが嵌入されるように、ボスと対応する位置に孔20bが4箇所(何か所であっても良く、位置も限定されることはない)に形成されている。ブリッジ20Aは、図5に示すように、両支持アーム11,12間で前記筒状部20の筒壁21に橋設された状態となっており、その両側は、前記半環状のフレーム21f,21gとの間で空間部が形成された状態となっている。
【0031】
このようなブリッジ20Aに対して、前記キャップ部材22Aの底部22cをブリッジ20Aの表面に当て付け、孔20bから突出するボス22eを溶着する(図9図10参照)ことで、キャップ部材22Aはブリッジ20Aに装着されて、ブリッジと共に前壁22を構成する(図4参照)。この状態では、ブリッジ20Aの両側にある半環状のフレーム21f,21gとの間の空間部は、キャップ部材22Aの底部22c及び円弧壁22a´によって閉塞された状態となり、フレーム状となった筒壁21の上方部分は効率的に軽量化及び防塵性が図れる。
【0032】
前記リング状連結部25は、筒状部20の筒壁21に上記した開口部21d,21eを形成したことで、筒壁21の円弧壁21a,21bの下端の両側は、半環状のフレーム構造で接続された状態となっており、その接続した部分が前記リング状連結部25となって筒状部20の後端の開口を規定している。この場合、支持アーム11,12の各両側部は、フレーム構造となったリング状連結部25に一体的に接続されており、リング状連結部25と共に一体化されている。これにより、ロータの本体10Aは、大きな負荷が作用する一対の支持アーム11,12が効果的に補強され、必要な強度を維持しつつ、可及的に軽量化を図ることが可能となる。
なお、筒状部20の筒壁21に形成される開口部21d,21eの大きさ、リング状連結部25の肉厚、表面形状、断面形状を種々変形することにより、ロータとして強度の向が図れると共に、軽量化を効果的に達成することが可能となる。
【0033】
前記支持アーム11,12の各両側部とリング状連結部25を一体化する接続の仕方や、その接続位置については、特に限定されることはない。例えば、支持アーム11,12の後端の両側部とリング状連結部25を一体的に接続したり、更に、支持アーム11,12の剛性を高めるために、支持アーム11,12の後端から前方に至る両側の領域で一体的に接続する等、適宜変形することが可能である。特に、一対の支持アームの内、釣糸案内装置50が配設される側の支持アーム12は、上述したように、反ベール側の側面(図2の点線領域B)に大きな負荷が作用することから、この部分については、効果的に補強するよう構成されている。
【0034】
本実施形態では、支持アーム11,12の各両側部とリング状連結部(ロータの後端部)25との間は、後端部から支持アームの側部に向けて先細となる形状の補強部26a,26b,26c,26dを形成することで接続されている。
【0035】
この場合、前記反転機構が配設されていない側の支持アーム11は、図1及び図7に示すように、その両側に補強部26a,26bが接続されている。この両側の補強部26a,26bは、支持アーム11の後方側(後部)を開口して二股形状に形成され、そのままリング状連結部25に段差のない面一形状となって接続されている。すなわち、両補強部26a,26b間は、略矩形の開口部27が形成された状態となっており、その上方の支持アーム11の外側に前記ベール支持部材14が回動可能に支持されている。
なお、支持アーム11は、単一の板状に形成されてリング状連結部25に面一状に接続され、その両側に補強部を形成する構造であっても良いが、上記したように二股形状の補強部26a,26bの前方側に円板状の先端部11Aを形成し、ここにベール支持部材14の回動支持部14aを回動可能に取着することで、軽量化を図りつつ剛性を高めることができる。
【0036】
また、前記反転機構が配設されている側の支持アーム12には、図2及び図8に示すように、支持アームの後端からベール支持部材15の支持部分にかけて、その両側にリング状連結部に向けて延びる補強部26c,26dが接続されている。この場合、反ベール側の補強部26dと支持アーム12との間には、略三角形の開口部28が形成されており、補強部26dは二股状になってリング状連結部25に接続されている。そして、この支持アーム12の上方の先端部12Aの外側には、前記ベール支持部材15の回動支持部15aが回動可能に支持されている。
【0037】
上記したように、支持アーム11,12にリング状連結部25に接続される補強部26a~26dを形成したことで、支持アーム11,12の剛性を高めることができ、また、各補強部に上記した開口部27,28を形成し、前方に向けて先細となる形状にしたことで、ロータの本体の軽量化を図ることができ、デザインの向上を図ることが可能となる。この場合、各開口部27,28を規定するエッジは、支持アームの表面と直交する方向に形成されていても良いが、本実施形態のように、内側から外側に向けて次第に広がるような傾斜面(傾斜エッジ27a,28a)にすることで、デザインが向上すると共に、釣糸が絡み難くし、糸切れ等を効果的に防止することが可能となる。また、支持アーム11の両側の補強部26a,26bは、リング状連結部25に対して段差のない面一形状となって接続されているため、糸絡みし難く、かつ、糸絡みが生じても抜け易くなる。
【0038】
前記支持アーム11,12にベール支持部材14,15を回動可能に支持するための取着方法は、図5に示すように、各支持アーム11,12の先端部11A,12Aの外側にベール支持部材14,15の回動支持部14a,15aを当て付け、矢印D2で示すように、中心領域から径方向外側に向けて、ワッシャ30aを介在して取着部材(本実施形態では、インサート成形されたピンにE型止め輪を取着した部材)30を締め付けることでなされる(支持アーム11側についても同様に固定される;図10参照)。この場合、支持アーム11,12の先端側の内面には、それぞれU字形状の凹所11a,12aが形成されており、内側から挿入される取着部材30の頭部が突出しないように構成されている。
【0039】
これにより、ベール支持部材14,15の支持領域の外側面から取着部材30が露出することはなく、ベール支持部材の外側面を滑らかな面にすることができ、釣糸が絡み難くすることができる。
【0040】
前記支持アーム12内に収容される反転機構を閉塞するカバー部材12Bには、図8に示すように、その内面にボス12dが形成されている。このボス12dには、メス螺子部が形成されており(タッピンネジを螺入する構成であっても良い)、ここに径方向内側から取着部材(ネジ部材)35を図5の矢印D3方向に螺合することで、カバー部材12Bは支持アーム12に取着される。このため、支持アーム12の反転機構を収容する凹部12B´の底面には、取着されるカバー部材12Bのボス12dと対応する位置にネジ孔12d´が形成されており、この部分に、矢印D3方向に向けて固定部材35を締め付けることでカバー部材12Bは支持アーム12に取着され、凹部12B´に配設される反転機構は閉塞される。
【0041】
この場合、上記したロータの筒壁21の円弧壁21a,21bには、図4に示すように、それぞれ開口部21h,21iが形成されており、取着部材35の固定作業が容易に行えるようにしている。すなわち、反転機構を収容した支持アーム12にカバー部材12Bを装着した状態で、取着部材35及びそれを固定する治具(図示せず)を支持アーム11の開口部27及びロータの筒壁21の開口部21h,21iを介して挿入することができ、カバー部材12Bの取着作業を容易に行うことが可能となる。
【0042】
これにより、支持アーム12に取着されるカバー部材12Bの外側面から取着部材35が露出することはなく、外側面を滑らかな面にすることができ、釣糸が絡み難くすることができる。
また、上記した構成では、ロータの筒状部20には、その筒壁21に複数の開口部21d,21e,21h,21iが形成されると共に、前記補強部26a,26b,26c,26dを介して前記リング状連結部25と支持アーム11,12が一体化されたフレーム構造となっているため、強度を維持して可及的に軽量化を図ることが可能となる。特に、大きな負荷が作用する支持アーム11,12部分は、円弧壁21a,21bによって補強されると共に、補強部26a,26b,26c,26dとリング状連結部25によって連結された状態となっているので、バランスが良く、強度の向上が図れるようになる。
【0043】
さらに、上記したリング状連結部25は、図9に示すように、その後端面25A(上記した湾曲壁25aの表面で構成される)が、釣糸案内装置が設けられる側の支持アーム12の後端部を除いて、駆動軸(駆動力伝達機構のピニオンギアの軸心X)を中心として段差のない円形状(二点鎖線Cで示す)に形成されることが好ましい。このような後端面25Aは、周方向に亘って、上記したように、リング状連結部の下端縁から前方向けて次第に拡径する滑らかな表面形状となっているため、釣糸引っ掛かり難く、また、引っ掛かってもその表面形状により、容易に抜けることができる。すなわち、上記したリング状連結部25によれば、軽量化及び剛性の向上を図りつつ糸絡みを抑制することができる。
なお、本実施形態の支持アーム12の後端部は、前記カバー部材12Bの後端が軸心Xに向けて屈曲形成され、この屈曲部12Cが位置する部分となっており、この部分でリング状連結部25は分断されるが、この部分にカバー部材12Bを干渉させることなく、全周に亘って段差のない円形状にしても良い。
【0044】
そして、上記したようなロータ10を有する魚釣用スピニングリールによれば、釣糸誘導部53、ベール支持部材14,15及びカバー部材12Bの夫々を取着するための取着部材55,30,35を、前記カバー部材12Bを含むロータ10及びベール支持部材14の外側面から露出しないように配設されることから、実釣時において釣糸巻き取り時/釣糸放出時に糸絡みを効果的に防止することが可能となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、図に示した支持アーム11,12、ベール支持部材14,15の形状は一例を示しただけであり適宜変形することが可能である。この場合、露出部分の形状については、釣糸が引っ掛かり難い、或いは、引っ掛かってもすぐに外れるようになっていれば、表面に凹凸が存在していても良い。また、ロータの筒状部20の筒壁21に形成される開口部については、リング状連結部25や補強部26a,26b,26c,26dによって強度が確保できれば、その形状、形成個数、形成位置については、適宜、変形することが可能である。また、必要に応じて、上記した構成以外の開口部を形成しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 魚釣用スピニングリール
2 リール本体
3 ハンドル
5 スプール
10 ロータ
10A ロータの本体
11,12 支持アーム
14,15 ベール支持部材
17 ベール
20 筒状部
21 筒壁
21d,21e 開口部
25 リング状連結部
26a~26d 補強部
30,35 ネジ部材(固定部材)
50 釣糸案内装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10