(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131307
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】押出加工装置および押出加工方法
(51)【国際特許分類】
B21C 29/04 20060101AFI20220831BHJP
B21C 23/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B21C29/04
B21C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030184
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】林 沛征
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 栄徳
(72)【発明者】
【氏名】吉村 英樹
【テーマコード(参考)】
4E029
【Fターム(参考)】
4E029AA01
4E029AA05
4E029AB01
4E029AB06
4E029SA01
4E029SA04
4E029SA08
4E029UA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる押出加工装置および押出加工方法を提供する。
【解決手段】押出加工装置10は、押出ダイス11を備えて構成され、押出ダイス11は、アルミニウム若しくはアルミニウム合金を導入するビレット導入口12Aが形成されたバッフル12と、バッフル12に連結されると共にビレット導入口12Aを経由したアルミニウム若しくはアルミニウム合金を押出形材の形状に成形するベアリング部13Aおよびベアリング部13Aに連続しかつ押出形材を下流側にガイドする第1ガイド穴13Bが形成されたダイス13と、ダイス13に連結されかつ第1ガイド穴13Bに連続しその第1ガイド穴13Bを経由した押出形材を外部に送出する第2ガイド穴14Aが形成されたバックダイ14とで構成され、ベアリング部13A近傍を加熱する加熱手段20が着脱可能に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材供給装置から連続して供給されるアルミニウム若しくはアルミニウム合金を押出ダイスを介して成形する押出加工装置であって、
前記押出ダイスを、
前記アルミニウム若しくはアルミニウム合金を導入する部材導入口が形成されたバッフルと、
前記バッフルに連結されると共に前記部材導入口を経由した前記アルミニウム若しくはアルミニウム合金を前記押出形材の形状に成形するベアリング部および当該ベアリング部に連続しかつ前記押出形材を下流側にガイドする第1ガイド穴が形成されたダイスと、
前記ダイスに連結されると共に前記第1ガイド穴に連続し当該第1ガイド穴を経由した前記押出形材を外部に送出する第2ガイド穴が形成されたバックダイとで構成し、
前記ダイスにおけるベアリング部近傍を加熱する加熱手段を着脱可能に設けたことを特徴とする押出加工装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の押出加工装置において、
前記加熱手段を棒状ヒーターで構成すると共に、この棒状ヒーターは、前記バックダイの外端面から前記ベアリング部近傍まで延びて形成されたヒーター挿入用孔に着脱自在に挿入され、
このヒーター挿入用孔を、前記ベアリング部の長手方向中央部に当該ベアリング部を挟んで両側に設けたことを特徴とする押出加工装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の押出加工装置において、
前記ヒーター挿入用孔を、前記両側のそれぞれの1箇所に形成したことを特徴とする押出加工装置。
【請求項4】
前記請求項2に記載の押出加工装置において、
前記ヒーター挿入用孔を、前記両側のそれぞれの複数個所に形成したことを特徴とする押出加工装置。
【請求項5】
前記請求項3または4に記載の押出加工装置において、
前記各ヒーター挿入用孔を、前記ベアリング部に対してそれぞれ対称位置に形成したことを特徴とする押出加工装置。
【請求項6】
前記請求項2ないし5のいずれか一項に記載の押出加工装置において、
前記棒状ヒーターは治具に取付けられていることを特徴とする押出加工装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の押出加工装置において、
前記治具はヒーター取付け治具で構成され、
このヒーター取付け治具は、前記棒状ヒーターの前記ヒーター挿入用孔への挿脱時に使用されると共に、前記棒状ヒーターを取付ける平面部と、この平面部の長さ方向両端部に設けられた立上り部とで構成されていることを特徴とする押出加工装置。
【請求項8】
素材供給装置から連続して供給されるアルミニウム若しくはアルミニウム合金を押出ダイスを介して成形する押出加工方法であって、
前記押出ダイスを予め設定された温度に加熱する第1の工程と、
この第1の工程後、前記押出ダイスに形成された前記請求項2または3に記載のヒーター挿入用孔に加熱用の棒状ヒーターを挿入すると共に、この加熱用の棒状ヒーターによりベアリング部近傍を加熱する第2の工程と、
この第2の工程後、前記棒状ヒーターを前記ヒーター挿入用孔から抜き出す第3の工程と、
この第3の工程後、前記押出ダイスにボルスターを当接させて配置すると共にこれらの押出ダイスとボルスターとを押出ダイスタックに設置する第4の工程と、
この第4の工程後、前記押出ダイスタックを押出加工機に設置して押出作業を開始する第5の工程と、を有することを特徴とする押出加工方法。
【請求項9】
前記請求項8に記載の押出加工方法において、
前記第2の工程では前記棒状ヒーターの前記ヒーター挿入用孔への挿入作業、前記第3の工程では前記棒状ヒーターの前記ヒーター挿入用孔から抜き出す作業を、前記棒状ヒーターが取付けられたヒーター取付け治具により行う工程をそれぞれ有していることを特徴とする押出加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料としてのアルミニウム若しくはアルミニウム合金等を押出して製品を成形する押出加工装置および押出加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム合金等は、熱伝導性が高く、かつ、加工性に優れており、断面形状の自由度も高く期待できる等、様々な形状を得ることができることから押出加工に適している。そのため、この押出加工は現在では広く採用されている。
そして、アルミニウム若しくはアルミニウム合金等の押出加工を行う際には、原料となるアルミニウム合金等のビレットを押出加工装置のビレット導入口に導入し、押出加工装置を構成するダイスに圧力をかけて押し込むことによって、ダイスに形成されている貫通孔(ベアリング部)の形状(例えば断面大長辺の矩形形状)に対応した製品としての押出形材を得るようになっている。
【0003】
このような押出ダイスに対して、素材供給装置から連続して押出されたビレットが押出ダイスのビレット導入口に導入されたとき、特に、そのビレット導入口の壁部等にビレットからの圧力や摩擦力により、押出ダイスに形成されているベアリング部が広がってしまう(開いてしまう)という問題がある。
この場合、ベアリング部の長さ方向両端部は、ダイスの内側壁部となっているため、広がろうとする摩擦力は生じるが、広がりようがなく、その結果、例えば、
図19に示すように、ベアリング部103Aの長さ方向略中央部のみが広がった、略樽状に変形した形状となる。
すなわち、
図19において、長さ寸法がWとなったベアリング部103Aの長さ方向両端部の厚さ寸法t1に対して、長さ方向略中央部では、上記両端部の厚さ寸法t1、t1よりも大きな寸法の厚さ寸法t2となっている。なお、符号102Aはビレット導入口を示す。
【0004】
上記のようにベアリング部103Aが略樽状に変形しているので、押出されたビレットがそのベアリング部103Aを通過したとき、変形したベアリング部103Aの形状に沿った断面形状の押出形材が成形されることになる。すなわち、中央部の肉厚が幅方向両端部の肉厚よりも厚くなった押出形材が成形されるようになる。
【0005】
このような変形の押出形材では、要望される製品の規格を満たすことができず、結局、不良品として廃棄されることになり、多くの材料の無駄が生じる。
【0006】
なお、この略樽状の変形は連続して押出加工することで解消する。すなわち、押出ダイスの温度が上昇すると共にダイスのベアリング部が熱膨張し、ベアリング部の開口が広がらない状態、つまり、ベアリング部の隙間間隔が押出加工を行うことで小さくなり、ベアリング部の開口の設定値となる。
そして、押出されたビレットがこのようなベアリング部を通過したとき、幅方向中央部とその両端部側との肉厚差も生じることなく、また、押出先端と後端との肉厚差も生じることがない。その結果、規格に合った良品が得られるようになる。
【0007】
前述のように、押出形材の形状は、押出時のビレットからの圧力や摩擦力だけでなく、それによる温度変化によっても影響を受ける。
したがって、押出開始時から押出終了時まで常に均一な肉厚の押出形材を得るためには、ダイスの温度を制御することが必要である。
【0008】
従来、この課題を解決するために、ダイスを予め加熱して温度を一定にする押出加工装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
特許文献1、特許文献2に開示された押出加工装置では、ダイス側の熱がボルスターに奪われないようにするために、ダイスとボルスター間に配置されているバッカーに複数の加熱手段(ヒーター)を設けた構成となっており、各ヒーターは、ダイスの中心に対して同心上に均等間隔で配置されている構成が開示されている。
また、特許文献3に開示された押出加工装置では、加工部材の形状にする貫通孔が形成された金型の表面に面状の加熱手段が設けられた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平02-011213号公報
【特許文献2】特開平02-011214号公報
【特許文献3】特開2015-123459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記[特許文献1]~[特許文献3]に開示された押出加工装置では、次のような課題が生じている。
すなわち、[特許文献1]、[特許文献2]においては、ダイスの内部温度を一定にするために、加熱手段は、形材の押出方向から見たダイスの中心から離れた位置の同心上に均等間隔で配されている。また、[特許文献3]においても、加熱手段は金型の表面に設けられており、ダイスの中心から離れて配置されている。
【0011】
そのため、このような押出加工の実施においては、前述した
図19に示すようなベアリング部103Aの略樽状の変形を抑えることができず、特に押出加工の初期における不良品の発生を抑制できない恐れがある。
【0012】
[発明の目的]本発明は上記課題を解決するために提案されたものであり、高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる押出加工装置および押出加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の押出加工装置は、素材供給装置から連続して供給されるアルミニウム若しくはアルミニウム合金を押出ダイスを介して成形する押出加工装置であって、前記押出ダイスを、
前記アルミニウム若しくはアルミニウム合金を導入する部材導入口が形成されたバッフルと、
前記バッフルに連結されると共に前記部材導入口を経由した前記アルミニウム若しくはアルミニウム合金を前記押出形材の形状に成形するベアリング部および当該ベアリング部に連続しかつ前記押出形材を下流側にガイドする第1ガイド穴が形成されたダイスと、
前記ダイスに連結されると共に前記第1ガイド穴に連続し当該第1ガイド穴を経由した前記押出形材を外部に送出する第2ガイド穴が形成されたバックダイとで構成し、
前記ダイスにおけるベアリング部近傍を加熱する加熱手段を着脱可能に設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の押出加工方法は、素材供給装置から連続して供給されるアルミニウム若しくはアルミニウム合金を押出ダイスを介して成形する押出加工方法であって、
前記押出ダイスを予め設定された温度に加熱する第1の工程と、
この第1の工程後、前記押出ダイスに形成された前記請求項2または3に記載のヒーター挿入用孔に加熱用の棒状ヒーターを挿入すると共に、この加熱用の棒状ヒーターによりベアリング部近傍を加熱する第2の工程と、
この第2の工程後、前記棒状ヒーターを前記ヒーター挿入用孔から抜き出す第3の工程と、
この第3の工程後、前記押出ダイスにボルスターを当接させて配置すると共にこれらの押出ダイスとボルスターとを押出ダイスタックに設置する第4の工程と、
この第4の工程後、前記押出ダイスタックを押出加工機に設置して押出作業を開始する第5の工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の押出加工装置および押出加工方法によれば、ベアリング部近傍が加熱手段により加熱されるので、ベアリング部の温度が上昇し、熱膨張によってベアリング部の特に、長手方向中央部の開口部の開きが小さくなる。これにより、ベアリング部を通過した押出形材の中央部に生じる厚肉部をほとんどなくすことができる。
また、ベアリング部近傍が加熱手段により加熱されるので、押出先端のベアリング部近傍の温度が高くなり、ベアリング部を通過した押出先後端のベアリング部近傍の温度変化が小さくなる。これにより、ベアリング部を通過した押出形材の先後端の肉厚差をほとんどなくすことができる。
さらに、ベアリング部近傍が集中的に加熱手段により加熱されるので、熱膨張によってベアリング部近傍とその両端部側の温度差が改善される。
その結果、高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る押出加工装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図3】
図1におけるa部詳細でヒーター挿通用孔の途中まで棒状のヒーターが挿入されている状態を示す拡大図である。
【
図5】
図4におけるV-V線に沿った縦断面図である。
【
図6】前記第1実施形態の押出ダイスに形成されたヒーター挿入用孔とヒーターとの関係を示す斜視図である。
【
図7】
図6の状態から棒状ヒーターをヒーター挿入用孔に挿入した状態を示す斜視図である。
【
図8】前記第1実施形態の押出ダイス、ダイリングおよびボルスターをダイスタックに装着した状態を示す全体平面図である。
【
図10】本発明に係る押出加工装置の第2実施形態を表し押出ダイスにあけられたヒーター挿入用孔と棒状ヒーターとの関係を示す斜視図である。
【
図11】
図10の状態から棒状ヒーターをヒーター挿入用孔に挿入した状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明の変形形態を表し押出ダイスに棒状ヒーターをベアリング部の幅方向に2個ずつ取付けた状態を示す斜視図である。
【
図13】前記第1実施形態のヒーター取付け部材の変形形態でヒーター挿入用孔と棒状ヒーターとの関係を示す斜視図である。
【
図14】
図13の状態から棒状ヒーターをヒーター挿入用孔に挿入した状態を示す斜視図である。
【
図15】前記第2実施形態のヒーター取付け部材の変形形態でヒーター挿入用孔と棒状ヒーターとの関係を示す斜視図である。
【
図16】
図15の状態から棒状ヒーターをヒーター挿入用孔に挿入した状態を示す斜視図である。
【
図17】本発明に係る押出加工装置により押出成形される形状の異なる押出形材用のベアリング部を示す図で、それぞれ、
図17(A)は断面コ字形状、
図17(B)は断面L字形状、
図17(C)は断面H字形状、
図17(D)は断面N字形状のベアリング部を示す平面図である。
【
図18】本発明に係る押出加工装置により押出成形された押出形材を示す斜視図である。
【
図19】一般的な押出加工装置におけるベアリング部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、
図1~
図8を参照して、本発明の押出加工装置の第1実施形態を説明する。
【0018】
[本発明の全体説明]
本発明の押出加工装置10は押出ダイス11を備えて構成され、上記押出加工装置10を押出機1(
図8参照)の構成要素である機械本体2(
図8参照)の所定位置に設置した後、素材供給装置であるコンテナ3(
図8参照)から供給される熱可塑性材料であるアルミニウム合金等のビレットB(
図1参照)を、押出加工装置10を経由させて押し出し、製品としての幅広形状の押出形材100(
図18参照)を成形するものである。
そして、ビレットBは、コンテナ3内で、押出加工に必要な柔らかさ、例えば、粘土状の柔らかさにされ、かつ、その状態が維持されるようになっている。
【0019】
本実施形態で成形される押出形材100は、
図18に示すように、幅寸法w、厚さ寸法t、および長さ寸法lの薄板で長尺の平板状に形成されている。
このような押出形材100は、例えば建築材、あるいは自動車部品用として使用される。
【0020】
図1~5に示すように、前記押出ダイス11は、それぞれ、所定の板厚で形成されたバッフル12と、このバッフル12に連結されたダイス13と、このダイス13に連結されたバックダイ14とを備えて構成されている。
【0021】
前記バッフル12には、前記ビレットBを導入する部材導入口であるビレット導入口12Aが形成されており、このビレット導入口12Aは、水平方向に長い略直方体状に形成され、コンテナ3側の表面から上記ダイス13側に向けて、かつダイス13の表面近傍まで掘り下げられている。
また、ビレット導入口12Aの底面部は段差に形成されており、長手方向に沿って幅の狭い段落部がビレットガイド部12Bとなっている。
【0022】
前記ダイス13には、上記ビレット導入口12Aを経由したビレットBを前記押出形材100 の形状に成形するベアリング部13A、およびこのベアリング部13Aに連続しかつ押出形材100を下流側にガイドする第1ガイド穴13Bが形成されている。
ベアリング部13Aは、
図3に詳細を示すように、ダイス13の表面(バッフル12の底面との当接面)から底面側に向けてビレット導入口12Aに沿って形成されている。
ベアリング部13Aは、厚さ寸法t、深さ寸法dに形成されており、また、
図2に示すように、幅寸法wの形状となっている。
そして、押出されたビレットBがベアリング部13Aを通過するとき、厚さ寸法tと幅寸法wからなる断面形状の前記押出形材100が成形されることになる。
なお、
図1において、矢印YはビレットBの押出方向を示す。
【0023】
ダイス13において、ベアリング部13Aの下方には、上述のように、ベアリング部13Aに繋がる前記第1ガイド穴13Bが形成されている。この第1ガイド穴13Bは、
図1,3に示すように、ベアリング部13Aの長手方向、つまり、ビレット導入口12Aの長手方向に沿った方向に断面略ハ字状に形成されている。
また、第1ガイド穴13Bの
図1における紙面直交方向の端部は、
図5に示すように、上記ベアリング部13Aの端面より所定寸法だけ広くなった逃げ部13Cとなっている。
【0024】
前記バックダイ14には、上記ダイス13に形成されている第1ガイド穴13Bに連続し、かつこの第1ガイド穴13Bを経由した前記押出形材100を外部に送出する第2ガイド穴14Aが形成されている。
【0025】
第2ガイド穴14Aは、
図2に示すように、ダイス13における第1ガイド穴13Bに繋がって形成されている。この第2ガイド穴14Aは、第1ガイド穴13Bの略ハ字状の後端部の幅寸法よりわずかに大きな幅に形成され、また、第2ガイド穴14Aの
図1における紙面直交方向の端部は、
図5に示すように、上記第1ガイド穴13Bの端面より所定寸法 だけ広くなった逃げ部14Bとなっている。つまり、第2ガイド穴14Aは矩形形状の貫通孔となっている。
【0026】
前記バッフル12、ダイス13およびバックダイ14は、一体的に連結されている。
すなわち、例えば、バックダイ14側からバッフル12まで連通する均等配置された複数本のボルト(図略)でバッフル12、ダイス13およびバックダイ14が一体的に連結されている。
【0027】
以上のように構成された押出ダイス11は、
図1,2に示すように、押出ダイス11の全体が、周辺工具としてのダイリング15によって覆われている。
すなわち、ダイリング15は、円筒形状に形成されており、上記押出ダイス11の外周に嵌め込まれるようになっている。このようなダイリング15は、バッフル12、ダイス13およびバックダイ14を合わせた厚さと略等しい高さに形成されており、ダイリング15のバッフル12側端部は、バッフル12の一端部と入れ子状になって嵌合している。
そして、押出ダイス11、ダイリング15および後述するボルスター16(
図8参照)を備えて、前記押出加工装置10が構成されている。
【0028】
本発明は、予め所定温度、例えば450℃に加熱された押出ダイス11を、押出機1による押出加工前に、さらに押出加工時の温度、例えば485℃にするために、ダイス加熱手段20により加熱するものである。
【0029】
次に、
図1,6等を参照して、上記ダイス加熱手段20について説明する。
ダイス加熱手段20は、例えば、Φ10~25程度の大きさの棒状ヒーター21と、この棒状ヒーター21に接続されているリード線22と、このリード線22に電流を供給する電源(図略)とで構成されている。
この棒状ヒーター21は、一般的に市販されているものが使用されており、各棒状ヒーター21の能力は、例えば、約1kW~2kWのものを使用することが好ましい。
そして、これらの各棒状ヒーター21を使用して、押出開始時の押出ダイス11のベアリング近傍部の温度を480℃以上、好ましくは、485℃に設定することが行われる。この485℃は、連続押出加工時に生じる押出加工熱の温度と略等しい温度であり、また、押出ダイス11の初期の設定温度、例えば450℃より約35℃高く設定されている。
【0030】
本実施形態では、上記のような棒状ヒーター21が前記ダイス13におけるベアリング部13Aの近傍を加熱できるように構成されている。
すなわち、棒状ヒーター21は、
図1に示すように、押出ダイス11の外端面、詳しくは、前記バックダイ14の外端面から前記ダイス13におけるベアリング部13Aの近傍にわたって形成されたヒーター挿入用孔20Aに挿入されるようになっている。
【0031】
このヒーター挿入用孔20Aは、上記バックダイ14の外端面からバッフル12のベアリング部13Aの深さ位置近傍まで達する長さに形成されている。
また、ヒーター挿入用孔20Aは、ベアリング部13Aの長手方向の略中央部に、かつ当該ベアリング部13Aを挟んで両側に形成されている。そして、実施形態では、ベアリング部13Aを挟んだ対称位置に形成されている。
【0032】
図3には、2箇所のヒーター挿入用孔20A,20Aの先端部とベアリング部13A近傍との位置関係の詳細が示されている。
この
図3に示すように、ベアリング部13Aの長手方向中心から、各ヒーター挿入用孔20A,20Aの中心までの間隔m1は、例えば、10mm程度となっており、また、ベアリング部13Aの上端部からヒーター挿入用孔20Aの先端部までの間隔m2は、例えば、35mm程度に設定されている。
【0033】
このような位置にヒーター挿入用孔20A,20Aがあけられているので、ダイス13およびバックダイ14にそれぞれ形成されている第1ガイド用孔13B、第2ガイド用孔14Aとの間で適度な距離が保たれ、これにより、ダイス13およびバックダイ14の強度を確保できる。
また、ヒーター挿入用孔20A,20Aの先端部の位置がベアリング部13Aから近い位置に設けられているので、加熱効率の向上を図ることができる。
【0034】
図6は、
図1におけるバックダイ14の下流側端面から見た斜視図であり、この
図6に示すように、ヒーター挿入用孔20Aへの前記棒状ヒーター21の挿入、およびヒーター挿入用孔20Aからの棒状ヒーター21の取出しは、ヒーター取付け治具25により行われるようになっている。
すなわち、棒状ヒーター21はヒーター取付け治具25に取付けられており、このヒーター取付け治具25は、棒状ヒーター21が取付けられる平面部25Aと、この平面部25Aの長さ方向両端に形成された立上り部25Bとを有し、全体が断面コ字状に形成されている。
そして、棒状ヒーター21の平面部25Aから突出した外側の端部には、前記リード線22の一端部が接続されており、このリード線22の他端部は図示しない電源部に接続されている。
なお、
図6以降の図において記載されている矢印Yはビレットの押出し方向を示す。
【0035】
上記のようなヒーター取付け治具25による棒状ヒーター21のヒーター挿入用孔20A,20Aへの挿入は、
図6,7に示すように行われる。
まず、
図6に示すように、押出ダイス11を構成するバックダイ14の端面の所定位置、つまり、前記第2ガイド穴14Aの短辺方向の間隔s(前記ベアリング部13Aの厚さtに繋がる)を挟んだ対称位置にあけられたヒーター挿入用孔20A,20Aのそれぞれに対応するヒーター取付け治具25および棒状ヒーター21が予め準備されている。
【0036】
作業者は、専用の把持具により、ヒーター取付け治具25の立上り部25B,25Bを把持して棒状ヒーター21を、ヒーター挿入用孔20A,20Aに挿入させる。この状態が
図7に示されている。
なお、棒状ヒーター21のヒーター挿入用孔20A,20Aからの取り出しは、上記と逆の手順で行えばよい、
【0037】
ここで、一般的に、棒状ヒーター21を、例えば、ヒーター挿入用孔20Aに挿入させるだけの作業は、作業者が所定の作業用手袋等を着用して挿入させることができる。
これに対して、棒状ヒーター21により所定の部位を所望の温度に加熱した後、その棒状ヒーター21等をヒーター挿入用孔20Aから取出す作業の場合、棒状ヒーター21等が高温になっているので、作業用手袋等を着用して取外すことは危険でもあり、困難である。
【0038】
加熱されて高温となった棒状ヒーター21をヒーター挿入用孔20Aから取り出す場合、通常は、ジュエリーペンチ、ヤットコ等の工具を使用して取付け取外しを実行することが多い。
しかし、この場合でも、ジュエリーペンチ等で棒状ヒーター21等を把持しての取付け取外し作業は、棒状ヒーター21の場合は掴み難いので、ある程度の慣れが必要であり、不慣れな場合は、作業の効率が悪くなるという問題が生じる。
【0039】
そこで、棒状ヒーター21そのものを把持せず、棒状ヒーター21を予め治具に取付けておいて、その治具を、ヤットコ等の工具で把持しやすい形状にしておくことで、取付け取外し作業が容易となり、作業性の向上を図ることができる。
そして、本実施形態のヒーター取付け治具25は、棒状ヒーター21のヒーター挿入用孔20Aへの挿入は勿論、高温となった棒状ヒーター21の取外しも容易にでき、作業性の向上を図ることを目的として形成されている。
【0040】
上記2本の棒状ヒーター21により所定温度に加熱された前記ダイリング15と一体化された押出ダイス11は、所定の作業台(図略)上に載置され、そこでボルスター16と連結される。この際、ボルスター16と前記バックダイ14とはそれぞれの端面同士が当接され、両者16,14は、図示しないボルト等により一体的に連結される。
【0041】
ボルスター16は、バックダイ14を支持するものであり、ダイリング15と略同一外径、かつ所定の厚さに形成されている。
そして、このボルスター16の内部には、前記バックダイ14に形成されている第2のガイド穴14Aに続く第3のガイド穴16A(
図8参照)が形成されており、前記ベアリング部13Aで成形された押出形材100は、前記第1のガイド穴13B、第2のガイド穴14Aを経由した後、第3のガイド穴16Aを経由して機械本体2側に送られるようになっている。
【0042】
その後、これら押出ダイス11とボルスター16とは、図示しない専用の把持具により把持され、かつ、
図8,9に示すように、押出ダイスタック30の内部に収容される。この押出ダイスタック30は、通常は押出機1の外部に置かれている。
【0043】
押出ダイスタック30は略箱型形状に形成されており、ビレットBの流れ方向に沿った中央部に、一体化された押出ダイス11、ダイリング15、およびボルスター16を一括して収容する断面U字状の収容部30Aが形成されている。
このような収容部30Aの深さは、押出ダイス11およびボルスター16の外径寸法以上の深さとなっている。
【0044】
押出ダイスタック30の収容部30Aを挟んだ両側の肉厚部30B,30Bのうち、押出ダイスタック30の一方側の肉厚部30Bの上面には、収容部30Aの内部に押出ダイス11およびボルスター16を挿脱自在とするキャップ31が設けられている。
【0045】
図8に示すように、キャップ31は、押出ダイスタック30の幅方向の略中央部に設けられており、また、このキャップ31は、一方側の肉厚部30Bの外端部から押出ダイス11等の径方向中心部を越えた位置までの長さとなった略角柱状の形状に形成されている。
キャップ31の一端部は、一方側の肉厚部30Bの上記略中央部に形成された凹部30C内に収容されると共に、
図9にも示すように、凹部30Cの対向する壁間に架けわたされた回転軸32により回動自在となって支持されている。
【0046】
図9に示すように、キャップ31は、上記回転軸32を介して凹部30C内で、矢印X方向(上下方向)に90°開閉自在となっている。
すなわち、
図9において実線で示すキャップ31の位置は、押出ダイス11およびボルスター16等が収容部30Aの内部からの飛び出しを防止する位置(キャップ閉じ位置)であり、また、仮想線で示す位置が、押出ダイス11およびボルスター16を収容部30Aの内部に収容可能な位置(キャップ開き位置)である。
なお、キャップ31を閉じた状態では、押出機1による押出加工時に振動等でキャップ31が動かないように、凹部30Cの対向する壁を跨いでキャップ押え(図略)を設ける等、キャップ31が固定されている。
【0047】
このような押出ダイスタック30は、前述したように、通常は押出機1の外部に設置されている。
そして、押出機1による押出加工に際して、加熱した押出ダイス11(バッフル12、ダイス13、バックダイ14)とダイリング15を押出ダイスタック30の収容部30A内に収容し、その後、押出ダイスタック30をスライドさせて押出機1の所定の位置に移動させてその位置に設置した後、押出加工が開始されるようになっている。
【0048】
次に、押出加工装置10を用いた押出加工方法を説明する。
まず、押出加工開始に先立って、押出ダイス11を、例えば電気炉内に入れて所定の温度、例えば450℃に加熱する(第1の工程)。
次いで、押出ダイス11を電気炉内から取り出し、所定の作業台上に安定状態で載置し、押出ダイス11のバックダイ14とダイス13とにわたって設けられた2箇所のヒーター挿入用孔20A,20Aのそれぞれに、ヒーター取付け治具25を用いて、棒状ヒーター21,21を挿入する(第2の工程)。
【0049】
その後、棒状ヒーター21に接続されたリード線22に電流を流して、棒状ヒーター21により加熱し、ベアリング部13Aの近傍を、押出加工時に生じる温度、つまり、押出加工熱の温度、例えば485℃に加熱する(第2の工程)。
この際、実際には、500℃程度に加熱することが行われている。これは、押出ダイス11等をダイスタック30に載置した後、押出ダイス11のバックダイ14にボルスター16を当接させて配置した状態のダイスタック30を押出機1の所定位置に設置して押出加工が開始されるまで数分掛かる。その間に押出ダイス11等の温度が低くなるので、押出加工の開始時の温度、例えば485℃を確保できるようにするためである。
次に、その温度(500℃)を所定の温度測定器により確認した後、各棒状ヒーター21,21を、ヒーター取付け治具25を用いて、ヒーター挿入用孔20A,20Aから取り出す(第3の工程)。
【0050】
その後、所望の温度(例えば500℃)に加熱された押出ダイス11等とボルスター16を専用の把持具で把持し、押出ダイスタック30のキャップ31を開いておいて、押出ダイス11等とボルスター16を押出ダイスタック30の収容部30A内に収容、載置し、キャップ31を閉じる。
【0051】
キャップ31を閉じて、押出ダイス11等が収容部30A内から飛び出さない状態にしておいて、押出ダイスタック30をスライドさせて押出機1の所定位置にセットする(第4の工程)。 なお、前述のように、この時点では、押出ダイス11の温度は485℃程度になっている。
そして、コンテナ100、機械本体2等の押出機1全体を稼働させ、コンテナ100からビレットBを押出加工装置10に連続して送り込み、加工を開始する(第5の工程)。
そして、所望の数量の押出形材100が得られるまで、押出加工作業が継続される。
【0052】
本第1実施形態の押出加工装置10は以上のように構成されているので、次のような効果を得ることができる。
(1)ベアリング部13A近傍が、加熱手段20を構成する棒状ヒーター21により連続押出加工時に生じる押出加工熱の温度に加熱されるので、ベアリング部13Aの温度が上昇し、熱膨張によってベアリング部13Aの、特に、長手方向中央部の開口部の開きが小さくなる。これにより、ベアリング部13Aを通過した押出形材100の中央部に生じる厚肉部をほとんどなくすことができる。その結果、均一な肉厚の押出形材を得ることができ、高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる。
【0053】
(2)押出加工を開始する前に、棒状ヒーター21,21によりベアリング部13Aの長さ方向中央部が予め加熱されるので、ベアリング部13Aの近傍の温度が高くなり、押出加工時の温度上昇が小さくなる。その結果、押出先後端の肉厚差が小さくなり、均一な肉厚の押出形材を得ることができ、高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる。
【0054】
(3)ベアリング部13Aの長手方向中央部が、ヒーター挿入用孔20A,20Aに挿入された棒状ヒーター21,21により集中的に加熱されるので、ベアリング部13Aの中央部とその両端部側との温度差が小さくなり、中央部と両端部側との肉厚差が小さくなる。その結果、均一な肉厚の押出形材を得ることができ、高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる。
【0055】
(4)ビレット1本目の押出形材100が、ベアリング部13Aの長手方向中央部の厚肉部が小さくなると共に、押出先後端の肉厚差が小さくなり、かつ中央部と両端部側との肉厚差が小さくなって均一な肉厚となっているので、ビレット2本目以降の押出形材100を連続して押出加工する場合、ビレット1本目の押出加工と条件が略同じなので、ビレット2本目以降の押出形材100も、押出し開始時から押出し終了時まで常に一定の肉厚で成形することができ、その結果、高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる。
【0056】
(5)棒状ヒーター21は、ヒーター取付け治具25に取付け固定されており、ヒーター取付け治具25の2箇所の立上り部25B,25Bを専用の把治具で掴んで、取付けたり取り外したりすることができる。その結果、高温となった棒状ヒーター21を、ヒーター取付け治具25を使用することで容易に着脱できるので、安全性を確保しつつ、着脱作業性の向上を図ることができる。
【0057】
次に、
図10,11に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。
本第2実施形態の押出加工装置40は、前記第1実施形態で、押出ダイス11にベアリング部13Aの長手方向中央部において、当該ベアリング部13Aを挟んだ対称位置に1個ずつのヒーター挿入用孔20Aが形成されていたものを、対称位置にそれぞれ2個ずつ前記ヒーター挿入用孔20A,20Aを形成したものである。
すなわち、本第2実施形態では、ベアリング部13Aを挟んで、それぞれ並設された2つのヒーター挿入用孔20A,20Aのそれぞれに棒状ヒーター21,21を同時に挿入できるように、ヒーター取付け治具45の平面部45Aに2本の棒状ヒーター21,21を取付けてある。そのため、平面部45Aの長さが、第1実施形態のヒーター取付け治具25の平面部25Aの長さよりも長く形成されている。
【0058】
ヒーター取付け治具45の形状は、第1実施形態のヒーター取付け治具25と略同じとなっており、平面部45Aとその両端に設けられた立上り部45Bとで形成されている。
なお、第2実施形態の押出加工装置40は、押出ダイス41を備えて構成され、この押出ダイス41は、バッフル42、ダイス43、バックダイ44で構成され、これらは前記ダイリング15によって一体連結されている。そして、押出ダイス41の構成は、第1実施形態の押出ダイス11の構成と略同じである。
従って、バッフル42のビレット導入口、ダイス43のベアリング部等の詳細な説明は省略する。また、符号44Aは、バックダイ44に形成されている第2ガイド穴であり、この第2ガイド穴44Aに、ダイス43に形成されたベアリング部(図略)が連通している。なお、矢印Yは、ビレットBの押出し方向を示す。
【0059】
.
上記のようなヒーター取付け治具45を使用しての棒状ヒーター21の前記ヒーター挿入用孔20Aへの挿入は、
図10,11に示すように行われる。
すなわち、
図10に示すように、押出ダイス41を構成するバックダイ44の端面の所定位置、つまり、前記第2ガイド穴14Aの幅を挟んだ対称位置に並列状にあけられたヒーター挿入用孔20A,20Aのそれぞれに対応するヒーター取付け治具45および棒状ヒーター21が予め準備されている。
作業者は、専用の把持具により、ヒーター取付け治具45の立上り部45Bを把持して棒状ヒーター21を、ヒーター挿入用孔20Aに挿入させる。その状態が
図11に示されている。
【0060】
本第2実施形態の押出加工装置40は以上のように構成されているので、前記(1)~(5)と略同様の効果の他、次のような効果を得ることができる。
(6)第2ガイド穴14Aの幅を挟んだ対称位置に、それぞれ2箇所ずつ形成されているヒーター挿入用孔20A,20Aのそれぞれに棒状ヒーター21,21が挿入され、これらの棒状ヒーター21,21によりベアリング部の中央部および中央部の付近も加熱される。その結果、ベアリング部の中央部とその付近部の温度が上昇し、熱膨張によってベアリング部の特に、長手方向中央部の開口部の開きが小さくなる。これにより、ベアリング部を通過した押出形材の中央部に生じる厚肉部をほとんどなくすことができ、その結果、高い寸法精度を有する押出形材を高効率で製造することができる。
【0061】
以上、前記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0062】
例えば、前記第1実施形態では、1個のヒーター取付け治具25に1本の棒状ヒーター21を取付け、これらをベアリング部13A(第2ガイド穴14)の長手方向中央部において、ベアリング部13Aを挟んで両側の対称位置に設けたが、これに限らない。
一変形形態として、
図12に示すように、ヒーター取付け治具25と棒状ヒーター21とを押出加工装置50の第2ガイド穴54(ベアリング部に連通)を挟んで両側のそれぞれに2個ずつ設けてもよい。
【0063】
本変形形態の押出加工装置50は以上のように構成されているので、前記(1)~(5)と略同様の効果の他、次のような効果を得ることができる。
(7)ベアリング部13Aの加熱は勿論、押出ダイス50全体の押出加工時の温度を維持することができる。
【0064】
また、前記第1実施形態では、1個のヒーター取付け治具25に1本の棒状ヒーター21を取付けるように構成されているが、これに限らない。
別の変形形態として、
図13,14に示すように、ベアリング部13A(第2ガイド穴14)の幅方向の対称位置に配置される2個のヒーター取付け治具25を一体化した構成の断面コ字状のヒーター取付け治具55としてもよい。
このヒーター取付け治具55は、上記ヒーター取付け治具25を2個縦方向に繋げた形状と同じ形状となっており、縦長の平面部55Aとその両端の立上り部55Bとで形成されている。
【0065】
このような変形形態では、前記(1)~(5)と略同様の効果の他、次のような効果を得ることができる。
(8)2本の棒状ヒーター21,21が1個のヒーター取付け治具55に取付けられており、ヒーター取付け治具55が1個でよいので、製作の手間が少なくて済み、また、棒状ヒーター21,21のヒーター挿入用孔20Aへの挿入作業の簡略化を図ることができる。
【0066】
さらに、前記第2実施形態では、1個のヒーター取付け治具45に2本の棒状ヒーター21,21を取付け、これらを第2ガイド穴44Aの幅方向両側にそれぞれ設けたが、これに限らない。
第3の変形形態として、
図15,16に示すようなヒーター取付け治具65としてもよい。
すなわち、ヒーター取付け治具65は、上記ヒーター取付け治具45を2個縦方向に繋げた形状と同じ形状となっており、縦長の平面部65Aとその両端に形成されている立上り部65Bとで形成されている。
そして、上記ヒーター取付け治具65に、第2ガイド穴44Aの幅方向両側にそれぞれ2本ずつの棒状ヒーター21,21が取り付けられている。
【0067】
このような第3の変形形態では、前記(1)~(5)と略同様の効果の他、次のような効果を得ることができる。
(9)4本の棒状ヒーター21が1個のヒーター取付け治具65に取付けられており、ヒーター取付け治具55が1個でよいので、製作の手間が少なくて済み、また、4本の棒状ヒーター21のヒーター挿入用孔20Aへの挿入作業の簡略化を図ることができる。
【0068】
また、前記第1実施形態では、ベアリング部13Aの形状が、幅寸法W、厚さ寸法tとなっており、幅広の平板状の押出形材100が成形されるようになっていたが、これに限らない。
図17(A)~(D)に示すような各種形状のベアリング部とすることもできる。
すなわち、
図17(A)には、長辺部23Aaと短辺部23Abとでなる断面コ字形状のベアリング部23Aが示されており、長辺部23Aaの長さ方向略中央部に、当該長辺部23Aaを挟んだ対称位置に、仮想線で示す前記ヒーター挿入用孔20Aがあけられている。
なお、符号22Aは、ビレットの導入側を示す。
【0069】
図17(B)には、長辺部33Aaと短辺部33Abとでなる断面L字形状のベアリング部33Aが示されており、長辺部33Aaの長さ方向略中央部に、当該長辺部33Aaを挟んだ対称位置に、仮想線で示すヒーター挿入用孔20Aがあけられている。
なお、符号32Aは、ビレットの導入側を示す。
【0070】
図17(C)には、長辺部43Aaと短辺部43Abとでなる断面H字形状のベアリング部 が示されており、長辺部43Aaの長さ方向略中央部に、当該長辺部43Aaを挟んだ対称位置に、仮想線で示すヒーター挿入用孔20Aがあけられている。
なお、符号42Aは、ビレットの導入側を示す。
【0071】
図17(D)には、長辺部53Aaと短辺部53Abとでなる断面N字形状のベアリング部53が示されており、長辺部53Aaの長さ方向略中央部に、当該長辺部53Aaを挟んだ対称位置に、仮想線で示すヒーター挿入用孔20Aがあけられている。
なお、符号52Aは、ビレットの導入側を示す。
【0072】
そして、
図17(A)~(D)において、上記各ヒーター挿入用孔20Aに棒状ヒーター21が、必要に応じて挿脱自在に取付けられるようになっている。
【0073】
また、前記第1実施形態では棒状ヒーター21がヒーター取付け治具25に、第2実施形態では棒状ヒーター21がヒーター取付け治具45に、それぞれ取付けられており、これらのヒーター取付け治具25,45は、それぞれコ字形状に形成されているが、取付け治具は、このような形状の治具に限らない。
治具に棒状ヒーター21が取付けられており、その治具を把持して棒状ヒーター21をヒーター挿入用孔20Aに挿入できるものであればどのような形状の治具であってもよい。例えば、有底円筒状の治具の底部に棒状ヒーター21を取付けたような形状の治具であってもよい。
【0074】
また、前記各実施形態では、棒状ヒーター21の取付けを、バックダイ14の外端面からダイス13のベアリング部13Aの近傍までわたって形成されたヒーター挿入孔21に挿入して行っていたが、これに限らない。
例えば、バッフル12に形成されているビレット導入口12A内にヒーターを配置して、そのヒーターによりベアリング部13A近傍を押出加工熱の温度に加熱する構成としてもよい。このようにすれば、既存のビレット導入口12Aを利用できるので、ヒーター挿入用孔20Aを形成する手間が不要となり、また、ビレット導入口12Aの底部とベアリング部13Aとはきわめて近接しているのでベアリング部13Aの加熱効率が向上する、という格別の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の押出加工装置および押出加工方法は、例えば、アルミニウム若しくはアルミニウム合金等のビレットを押出加工して製品としての押出形材を成形する際に利用される。
【符号の説明】
【0076】
1 押出機
2 機械本体
3 コンテナ(素材供給装置)
10 押出加工装置(第1実施形態)
11 押出ダイス
12 バッフル
12A ビレット導入口
13 ダイス
13A ベアリング部
14 バックダイ
15 ダイリング
20 ダイス加熱手段
20A ヒーター挿入用孔
21 棒状ヒーター
25 ヒーター取付け治具
25A 平面部
25B 立上り部
30 押出ダイスタック
30A 収容部
31 キャップ
40 押出加工装置(第2実施形態)
45 ヒーター取付け治具(第2実施形態)
100 押出形材(製品)
B ビレット