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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131321
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】通信システムおよび位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/029 20180101AFI20220831BHJP
【FI】
H04W4/029
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030204
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山道 昇
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067FF03
5K067JJ53
5K067JJ54
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無線区間に障害物が存在する場合でも、無線通信装置の位置を推定することができる通信システムおよび位置推定方法を提供する。
【解決手段】ゲートウェイ装置1、基地局2および複数の無線通信装置3~3を備え、複数の無線通信装置の少なくとも1つの無線通信装置が中継を行って信号を転送し、基地局と無線通信装置との間でデータの送受信を行う通信システム100であって、無線通信装置は、固定的に配置された1または複数の第1の無線通信装置と、移動体に配置された1または複数の第2の無線通信装置と、を含む。基地局は、1または複数の第1の無線通信装置のうち、所定の第2の無線通信装置に最も近い第1の無線通信装置の位置情報に基づき、所定の第2の無線通信装置の位置を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局および複数の無線通信装置を備え、複数の前記無線通信装置の少なくとも1つの前記無線通信装置が中継を行って信号を転送し、前記基地局と前記無線通信装置との間でデータの送受信を行う通信システムであって、
前記無線通信装置は、
固定的に配置された1または複数の第1の無線通信装置と、
移動体に配置された1または複数の第2の無線通信装置と
を含み、
前記基地局は、
1または複数の前記第1の無線通信装置のうち、所定の前記第2の無線通信装置に最も近い第1の無線通信装置の位置情報に基づき、前記所定の第2の無線通信装置の位置を推定する
通信システム。
【請求項2】
前記第2の無線通信装置は、
周辺の前記第1の無線通信装置からの電波強度を示す電波強度情報を取得し、
取得した前記電波強度情報を前記基地局に対して送信し、
前記基地局は、
前記第2の無線通信装置から受信した前記電波強度情報に基づき、前記第2の無線通信装置に最も近い前記第1の無線通信装置の前記位置情報を取得する
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記無線通信装置は、
複数の状態が設定されるスイッチを有し、
前記スイッチの状態に基づき、前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置のいずれかに設定される
請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
基地局と、固定的に配置された1または複数の第1の無線通信装置および移動体に配置された1または複数の第2の無線通信装置を含む複数の無線通信装置とを備え、複数の前記無線通信装置の少なくとも1つの前記無線通信装置が中継を行って信号を転送し、前記基地局と前記無線通信装置との間でデータの送受信を行う通信システムの位置推定方法であって、
1または複数の前記第1の無線通信装置のうち、所定の前記第2の無線通信装置に最も近い第1の無線通信装置の位置情報に基づき、前記所定の第2の無線通信装置の位置を推定する
位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に配置されたノードの位置を推定する通信システムおよび位置推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチホップ方式を用いた無線通信装置で構成される通信システムでは、無線区間に障害物が存在しない自由空間においては、電波強度を用いて推定距離を算出することにより、無線通信装置の位置を推定することができる。また、このような通信システムでは、マルチホップ数に基づき、無線通信装置の位置を推定することもできる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/013578号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、市街地または工事現場等の無線区間に障害物が存在する場合には、電波の反射等の影響により、電波強度を用いて推定距離を適切に算出できない。そのため、無線通信装置の位置を推定することが困難であった。また、マルチホップ数によって無線通信装置の位置を推定する場合でも、トンネル内および工事現場等の特殊な環境下では、無線の反射が影響し、無線通信装置の位置を推定することが困難であった。
【0005】
そこで、無線区間に障害物が存在する場合でも、無線通信装置の位置を推定することができる通信システムおよび位置推定方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る通信システムは、基地局および複数の無線通信装置を備え、複数の前記無線通信装置の少なくとも1つの前記無線通信装置が中継を行って信号を転送し、前記基地局と前記無線通信装置との間でデータの送受信を行う通信システムであって、前記無線通信装置は、固定的に配置された1または複数の第1の無線通信装置と、移動体に配置された1または複数の第2の無線通信装置とを含み、前記基地局は、1または複数の前記第1の無線通信装置のうち、所定の前記第2の無線通信装置に最も近い第1の無線通信装置の位置情報に基づき、前記所定尾第2の無線通信装置の位置を推定するものである。
【0007】
また、本発明に係る位置推定方法は、基地局と、固定的に配置された1または複数の第1の無線通信装置および移動体に配置された1または複数の第2の無線通信装置を含む複数の無線通信装置とを備え、複数の前記無線通信装置の少なくとも1つの前記無線通信装置が中継を行って信号を転送し、前記基地局と前記無線通信装置との間でデータの送受信を行う通信システムの位置推定方法であって、1または複数の前記第1の無線通信装置のうち、所定の前記第2の無線通信装置に最も近い第1の無線通信装置の位置情報に基づき、前記所定の第2の無線通信装置の位置を推定するものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、固定的に配置された第1の無線通信装置の位置情報に基づき、移動体に配置された第2の無線通信装置の位置が推定される。そのため、無線区間に障害物が存在する場合でも、無線通信装置の位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1のGW装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図1の基地局の構成の一例を示すブロック図である。
図4図3のCPUの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5図1の無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図6図5のCPUの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図7】各ノード間のコストについて説明するための概略図である。
図8図7に示すノードcのルーティングテーブルの一例を示す概略図である。
図9】スイッチ定義情報について説明するための概略図である。
図10】実施の形態1に係る通信システムの無線通信装置によるアドレス設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図11】実施の形態1に係る通信システムの無線通信装置による電波強度情報取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】実施の形態1に係る通信システムの基地局による位置推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本発明は、以下の各実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態1に係る通信システムについて説明する。
【0012】
[通信システム100の構成]
図1は、本実施の形態1に係る通信システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、通信システム100は、ゲートウェイ装置(以下、「GW装置」と適宜称する)1と、基地局2と、複数の無線通信装置3~3(nは2以上の整数)とを含んで構成されている。
【0013】
GW装置1は、この通信システム100における上位装置の一つであり、図示しないネットワークを介して、GW装置1を含む図示しない上位装置と接続される。GW装置1は、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を通信プロトコルとして用いて、基地局2との間で通信を行う。GW装置1と基地局2との間で行われる通信として、シリアル通信が用いられる。
【0014】
基地局2は、無線通信装置3~3に対する親局装置であり、無線通信装置3~3と上位装置との間で行われる通信を中継する。基地局2および無線通信装置3~3は、例えば、基本仕様が無線通信規格IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.15.4によって規定された近距離無線通信プロトコルを用いて通信する。基地局2は、GW装置1が無線通信装置3~3と通信するための情報を有線でGW装置1から通知された場合に、この情報を無線で各無線通信装置3~3に通知するために、メディア変換を行う役目を果たす。
【0015】
無線通信装置3~3は、例えばセンサにより、自装置が配置された位置に関する各種の情報をセンサ情報として取得するセンサユニットである。無線通信装置3~3のそれぞれは、他の無線通信装置を中継器として間接的に通信対象となる装置と通信を行うマルチホップ方式を用いて、基地局2との間で通信を行う。無線通信装置3~3は、例えば電源としての電池を用いて駆動するユニットであり、取得したセンサ情報を含むパケットを、基地局2を介してGW装置1に対して定期的に送信する。
【0016】
(GW装置1)
図2は、図1のGW装置の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、GW装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、フラッシュメモリ13、保守用通信部14、外部出力用通信部15およびGW側有線通信部16を備えている。
【0017】
フラッシュメモリ13は、不揮発性メモリであり、GW装置1の起動時においてCPU11に実行させる基本プログラムであるBOOTおよび各種プログラムを記憶する。CPU11は、フラッシュメモリ13に記憶されたプログラムに従い、演算処理等の各種処理を実行する。RAM12は、CPU11がプログラムを実行する際、フラッシュメモリ13から読み出されたプログラムを記憶する。また、RAM12は、CPU11によって演算処理が行われた際の演算結果を記憶する。
【0018】
保守用通信部14は、デバッグ時に保守用のPC(Personal Computer)が接続される通信インタフェースである。外部出力用通信部15は、外部装置等に対して出力を行う際に使用される通信インタフェースである。外部出力用通信部15は、例えばシリアルポートである。GW側有線通信部16は、基地局2と通信するための通信インタフェースである。GW側有線通信部16は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ポートである。
【0019】
(基地局2)
図3は、図1の基地局の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、基地局2は、CPU21、RAM22、フラッシュメモリ23、第1無線通信部24、外部出力用通信部25および基地局側有線通信部26を備えている。
【0020】
フラッシュメモリ23は、不揮発性メモリであり、基地局2の起動時においてCPU21に実行させる基本プログラムであるBOOTおよび各種プログラムを記憶する。CPU21は、フラッシュメモリ23に記憶されたプログラムに従い、演算処理等の各種処理を実行する。CPU21の機能および具体的な処理については、後述する。
【0021】
RAM22は、CPU21がプログラムを実行する際、フラッシュメモリ23から読み出されたプログラムを記憶する。また、RAM22は、CPU21によって演算処理が行われた際の演算結果を記憶する。例えば、本実施の形態1において、RAM22は、無線通信装置3~3から取得する電波強度情報のうち、最大のものとして設定された最大強度等を記憶する。また、RAM22は、各ノードから取得する電波強度情報に対する閾値を記憶する。閾値は、例えば「-90dB」に設定される。
【0022】
第1無線通信部24は、無線通信装置3~3と通信する際に使用される通信インタフェースである。第1無線通信部24は、所定の無線通信装置に対して直接的に、あるいは他の無線通信装置を介して間接的に、下り方向のパケットを送信する。また、第1無線通信部24は、所定の無線通信装置から直接的に、あるいは他の無線通信装置を介して間接的に、上り方向のパケットを受信する。
【0023】
外部出力用通信部25は、外部装置等に対して出力を行う際に使用される通信インタフェースである。外部出力用通信部25は、例えばシリアルポートである。基地局側有線通信部26は、GW装置1と通信するための通信インタフェースである。基地局側有線通信部26は、例えばUSBポートである。
【0024】
(CPU21)
図4は、図3のCPUの構成の一例を示す機能ブロック図である。図4に示すように、CPU21は、リスト収集部211、判定部212、パラメータ設定部213および送受信処理部214を有している。なお、ここでは、本実施の形態1に係る機能を実行するための構成のみを示し、それ以外の構成については、説明を省略する。
【0025】
リスト収集部211は、それぞれのノードである無線通信装置3~3から基地局2に対して定期的に送信されるブロードキャストフレームである制御パケットに基づき、接続リストの収集および更新を行う。接続リストは、基地局2と通信可能なノードを管理するためのものである。本実施の形態1において、接続リストには、無線通信装置3~3のうち、基地局2と通信可能な無線通信装置が含まれている。
【0026】
具体的には、リスト収集部211は、各ノードである無線通信装置3~3から基地局2に対して接続が要求され、当該要求に対して基地局2が認証した場合に、認証した無線通信装置を接続リストに追加する。また、各無線通信装置から基地局2に対して定期的に送信される制御パケットが一定の期間送信されない場合に、リスト収集部211は、当該ノードを接続リストから削除する。
【0027】
判定部212は、基地局2による処理の際に行われる各種の判定を行う。本実施の形態1において、判定部212は、無線通信装置3~3のアドレスが固定アドレスであるか否かを判定する。固定アドレスは、ノードに対して固定的に割り当てられるアドレスであり、当該ノードが固定的に配置されたものであることを示す。すなわち、判定部212は、無線通信装置3~3のアドレスが固定アドレスである場合に、当該無線通信装置が固定的に配置されたものであると判定することができる。また、判定部212は、無線通信装置3~3アドレスが固定アドレスでない場合に、当該無線通信装置が移動体に配置されたものであると判定することができる。
【0028】
また、判定部212は、無線通信装置3~3に送信された測定パケットに対する応答の受信の有無、ならびに、受信した応答に基づき取得された電波強度の有効性を判定する。さらに、判定部212は、電波の最大強度と、取得された電波の強度とを比較し、いずれの値が大きいのかを判定する。測定パケットは、無線通信装置3~3の電波強度を測定するために、無線通信装置3~3に送信される信号である。
【0029】
電波強度が有効であるか否かの判定は、例えば、取得された電波強度の大きさに基づき行われる。これは、電波強度が弱い場合には、受信する電波が反射等の誤差によるものと考えられるからである。この場合、判定部212は、RAM22に記憶された電波強度に対する閾値と取得した電波強度とを比較し、比較結果に基づいて電波強度の有効性を判定する。
【0030】
パラメータ設定部213は、テーブルインデックスiおよび電波の最大強度等の各種パラメータを設定する。テーブルインデックスiは、各無線通信装置3~3の電波強度を確認する際に用いられるパラメータである。送受信処理部214は、無線通信装置3~3に対する測定パケットの送信、ならびに、無線通信装置3~3からの測定パケットに対する応答の受信等を行う。
【0031】
(無線通信装置3~3
図5は、図1の無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。なお、それぞれの無線通信装置3~3は同一の構成であるため、ここでは無線通信装置3の構成について説明する。図5に示すように、無線通信装置3は、CPU31、RAM32、フラッシュメモリ33、第2無線通信部34、外部出力用通信部35、センサ36およびスイッチ37を備えている。
【0032】
フラッシュメモリ33は、不揮発性メモリであり、無線通信装置3の起動時においてCPU31に実行させる基本プログラムであるBOOTおよび各種プログラムを記憶する。CPU31は、フラッシュメモリ33に記憶されたプログラムに従い、演算処理等の各種処理を実行する。CPU31の機能および具体的な処理については、後述する。
【0033】
RAM32は、CPU31がプログラムを実行する際、フラッシュメモリ33から読み出されたプログラムを記憶する。また、RAM32は、CPU31によって演算処理が行われた際の演算結果を記憶する。また、RAM32は、スイッチ37のスイッチ番号を記憶するとともに、スイッチ番号と動作とを関連付けたスイッチ定義情報を記憶する。スイッチ定義情報の詳細については、後述する。
【0034】
第2無線通信部34は、基地局2または無線通信装置3~3と通信する際に使用される通信インタフェースである。第2無線通信部34は、基地局2または他の無線通信装置3~3のいずれかを介してGW装置1等の上位装置から自装置に対して送られた下り方向のパケットを受信する。また、第2無線通信部34は、基地局2または他の無線通信装置3~3を介して、上り方向のパケットをGW装置1等の上位装置に送信する。例えば、第2無線通信部34は、ブロードキャストフレームである制御パケットを定期的に送信する。
【0035】
外部出力用通信部35は、外部出力を行う際に使用される通信インタフェースである。センサ36は、無線通信装置3における各種の状態を検出し、検出結果を示すセンサ情報を出力する。センサ36として、例えば、温度を検出する温度センサ、湿度を検出する湿度センサ、浸水を検出する浸水センサ、および振動を検出する加速度センサ等が用いられる。
【0036】
スイッチ37は、複数の状態が設定できるようになっているものである。本実施の形態1において、スイッチ37は、自装置の番号を設定するために設けられており、ユーザによって番号が設定される。設定される番号は、それぞれの無線通信装置3~3に固有のものであり、スイッチ37は、設定された番号を示すスイッチ番号をCPU31に供給する。スイッチ37として、例えばロータリースイッチが用いられる。
【0037】
(CPU31)
図6は、図5のCPUの構成の一例を示す機能ブロック図である。図6に示すように、CPU31は、スイッチ設定取得部311、スイッチ番号判定部312、情報取得部313、アドレス設定部314および送受信処理部315を有している。なお、ここでは、本実施の形態1に係る機能を実行するための構成のみを示し、それ以外の構成については、説明を省略する。
【0038】
スイッチ設定取得部311は、スイッチ37に設定されたスイッチ番号を取得し、取得したスイッチ番号をRAM32に記憶する。スイッチ番号判定部312は、後述するアドレス設定処理および電波強度情報取得処理の際に、スイッチ番号が0であるか否かを判定する。
【0039】
情報取得部313は、外部から受信した情報、あるいは、自装置のセンサ36等によって得られた情報等の各種の情報を取得する。本実施の形態1において、情報取得部313は、他の無線通信装置から受信した制御パケットに基づき、当該無線通信装置の電波強度を示す電波強度情報を取得する。
【0040】
アドレス設定部314は、スイッチ番号判定部312による判定結果に基づき、自装置のアドレスを設定する。送受信処理部315は、情報取得部313で取得した電波強度情報を、第2無線通信部34を介して基地局2に送信する処理を行う。
【0041】
[通信システム100の動作]
本実施の形態1に係る通信システム100の動作について説明する。まず、通信システム100における基地局2と無線通信装置3~3との間の基本的な通信動作について説明する。
【0042】
(基本動作)
無線通信装置3~3が、例えば、無線通信規格IEEE802.15.4で定義されるマルチホップ方式を用いて通信を行う場合、基地局2は、定期的に無線通信装置間で通信される経路情報に基づき、無線通信装置3~3からの上りの通信経路を決定する。無線通信装置3~3は、基地局2によって決定された上りの通信経路を利用して、データを上位装置であるGW装置1に送信する。GW装置1は、下りの通信経路を利用し、基地局2を経由して、設定に関する制御情報を含む制御パケットを無線通信装置3~3に送信する。
【0043】
(通信経路の決定)
ここで、通信システム100による通信経路の決定方法について説明する。図7は、各ノード間のコストについて説明するための概略図である。図7では、複数のノードa~gにおけるノード間のリンクコストが示されている。リンクコストは、あるノードの周辺に位置する他のノードとの電波強度によって決定されるコストであり、例えば「1」~「3」の3段階の値で示される。リンクコストは、値が小さいほど距離が短いことを示す。
【0044】
図8は、図7に示すノードcのルーティングテーブルの一例を示す概略図である。なお、図8において、ノードaは、本実施の形態1における基地局2に対応し、ノードb~gは、無線通信装置3~3に対応するものとする。
【0045】
図8のルーティングテーブルにおいて、項目「送信先」は、ノードcがパケットを送信する相手であり、ノードcの親となるノードを示す。項目「リンクコスト」は、上述したように、ノードcの周辺に位置する他のノードに対するコストを示す。項目「パスコスト」は、送信先のノードからGW装置1に対応するノードaまでのコストを示す。この例において、パスコストの値は、ノードcの送信先のノードからノードaまでのコストの値の和となっている。
【0046】
項目「親」は、項目「宛先」に記載されたノードの親となるノードを示す。項目「固定接続」は、リンクコストおよびパスコストの値に関わらず、強制的に親として選択されるノードを示す。固定接続には、スイッチ37によって設定された番号を有するノードが選択される。図8に示す例において、リンクコストおよびパスコストを考慮すると、ノードcの宛先(親)として、ノードbが望ましい。
【0047】
通常の通信システムにおいては、パスコストが優位なノードが親として選択される。これに対して、本実施の形態1に係る通信システム100では、スイッチ37によって固定接続の設定が行われ、固定接続で指定された親が選択される。
【0048】
(スイッチ定義情報)
図9は、スイッチ定義情報について説明するための概略図である。図9では、スイッチ37のスイッチ番号と動作とが、互いに関連付けられている。スイッチ定義情報において、項目「スイッチ番号」は、スイッチ37に設定された番号を示す。なお、番号は16進表記となっている。項目「動作」は、対応するスイッチ番号がスイッチ37に設定された際の動作を示す。
【0049】
例えば、スイッチ番号が「0」に設定された場合、対応する無線通信装置は、「固定接続なし」として動作する。すなわち、当該無線通信装置は、移動体の無線通信装置として動作する。また、スイッチ番号が「1」に設定された場合、対応する無線通信装置は、GW装置1を親とし、固定的に配置されたものとして動作する。さらに、スイッチ番号が「2」~「F」に設定された場合、対応する無線通信装置は、スイッチ番号を固定アドレスとし、固定的に配置されたものとして動作する。
【0050】
具体的には、例えばトンネル内で所定の間隔で配置される無線通信装置、もしくは、ビルの各階に配置される無線通信装置には、固定接続を行うようにスイッチ37のスイッチ番号が「2」~「F」に設定される。また、移動する人または重機に配置される無線通信機には、スイッチ37のスイッチ番号が「固定接続なし」となる「0」が設定される。
【0051】
スイッチ番号が「2」~「F」に設定された場合、対応する無線通信装置は、スイッチ番号に対応するアドレス「0x0002」~アドレス「0x000F」が固定アドレスとして割り当てられ、固定的に配置されたものとして動作する。なお、「0x」は、当該アドレスの値が16進表記であることを示す。また、スイッチ番号が「0」に設定された場合、対応する無線通信装置は、アドレス「0x0010」~アドレス「0xFFFE」の何れかのアドレスが割り当てられ、移動体に配置されたものとして動作する。これらのアドレスは、無線通信装置のMACアドレス等に基づき、基地局2によって割り当てられる。
【0052】
(無線通信装置3~3の位置推定)
本実施の形態1に係る通信システム100による無線通信装置3~3の位置推定について説明する。本実施の形態1に係る通信システム100において、基地局2は、無線通信装置3~3のうち、固定的に配置されていない、人または重機等の移動体に配置された無線通信装置に対して、電波強度を測定するための測定パケットを送信する。そして、基地局2は、移動体の無線通信装置から測定パケットに対する応答を受信し、受信した測定パケットの応答に基づき、移動体の無線通信装置の位置を推定する。
【0053】
このとき、移動体の無線通信装置は、自装置に最も近くに固定的に配置された無線通信装置との間の電波強度を含むパケットを測定パケットに対する応答として、基地局2に対して送信する。
【0054】
このような動作を行うため、本実施の形態1に係る無線通信装置3~3では、以下で説明するアドレス設定処理と電波強度情報取得処理とが行われる。また、基地局2では、以下で説明する位置推定処理が行われる。
【0055】
(無線通信装置3~3によるアドレス設定処理)
図10は、本実施の形態1に係る通信システムの無線通信装置によるアドレス設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、無線通信装置3の動作を例にとって説明する。アドレス設定処理は、それぞれの無線通信装置3~3が固定的に配置されたものであるのか、あるいは、移動体に配置されたものであるのかを設定するための処理である。
【0056】
まず、ステップS1において無線通信装置3が起動されると、ステップS2において、CPU31のスイッチ設定取得部311は、スイッチ37に設定されたスイッチ番号をRAM32から読み出す。
【0057】
次に、ステップS3において、スイッチ番号判定部312は、読み出されたスイッチ番号が0であるか否かを判定する。スイッチ番号が0以外である場合(ステップS3:YES)、アドレス設定部314は、ステップS4において、読み出したスイッチ番号を固定アドレスとして設定する。一方、スイッチ番号が0である場合(ステップS3:NO)、アドレス設定部314は、ステップS5において、自装置のアドレスを「固定アドレスなし」と設定する。
【0058】
このように、無線通信装置3は、スイッチ37の設定に基づき、自装置のアドレスを設定する。すなわち、無線通信装置31は、自装置が人または重機等の移動体に設けられる場合に「固定アドレス」が設定され、固定的に設けられる場合に固定アドレス以外のアドレスが設定される。
【0059】
(無線通信装置3~3による電波強度情報取得処理)
図11は、本実施の形態1に係る通信システムの無線通信装置による電波強度情報取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。ここでは、無線通信装置3の動作を例にとって説明する。電波強度情報取得処理は、自装置が移動体に配置された場合に、固定的に配置された他の無線通信装置に対する電波強度を示す電波強度情報を取得するための処理である。
【0060】
まず、ステップS11において、無線通信装置3は、基地局2から送信された測定パケットを、第2無線通信部34を介して受信する。ステップS12において、CPU31のスイッチ番号判定部312は、RAM32から読み出された自装置のスイッチ番号が0であるか否かを判定する。スイッチ番号が0である場合(ステップS12:YES)、情報取得部313は、ステップS13において、自装置の電波強度情報を取得する。そして、送受信処理部315は、取得した電波強度情報を、受信した測定パケットに対する応答として、第2無線通信部34を介して基地局2に向けて送信する。一方、スイッチ番号が0以外である場合(ステップS12:NO)には、一連の処理が終了する。
【0061】
このように、無線通信装置3は、基地局2から測定パケットを受信した場合で、自装置のアドレスに固定アドレスが設定されていないときに、基地局2からの電波強度測定の要求に対して電波強度を測定する。そして、無線通信装置3は、測定結果である電波強度を基地局2に送信する。
【0062】
(基地局2による位置推定処理)
図12は、本実施の形態1に係る通信システムの基地局による位置推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。位置推定処理は、固定的に配置された無線通信装置の位置情報と、当該無線通信装置に対する電波強度とに基づき、移動体の無線通信装置の位置を推定するための処理である。
【0063】
まず、ステップS21において、CPU21のリスト収集部211は、現在接続している接続リストを収集する。ステップS22において、判定部212は、接続リストにおいて、すべての無線通信装置3~3に対して以下のステップS23~ステップS32の処理が終了したか否かを判定する。すべての無線通信装置3~3に対する処理が終了していない場合(ステップS22:NO)には、処理がステップS23に移行する。すべての無線通信装置3~3に対する処理が終了した場合(ステップS22:YES)には、一連の処理が終了する。
【0064】
ステップS23において、判定部212は、接続リスト中の対象となる無線通信装置のアドレスが固定接続しないアドレスであるか否かを判定する。対象の無線通信装置のアドレスが固定接続しないアドレスである場合(ステップS23:YES)、送受信処理部214は、ステップS24において、この無線通信装置に対し、第1無線通信部24を介して測定パケットを送信する。一方、対象の無線通信装置のアドレスが固定接続しないアドレスでない、すなわち、固定アドレスである場合(ステップS23:NO)には、処理がステップS33に移行する。
【0065】
ステップS25において、判定部212は、送信した測定パケットに対する応答を受信したか否かを判定する。測定パケットに対する応答を受信した場合(ステップS25:YES)、パラメータ設定部213は、ステップS26において、固定アドレスのテーブルインデックスiと、電波の最大強度とを初期化する。この場合、パラメータ設定部213は、テーブルインデックスiの値を「1」とし、最大強度の値を「0」とする。また、測定パケットに対する応答を受信しない場合(ステップS25:NO)には、処理がステップS31に移行する。
【0066】
ステップS27において、判定部212は、測定パケットに対する応答として取得した電波強度が有効であるか否かを判定する。取得した電波強度が有効である場合(ステップS27:YES)、パラメータ設定部213は、ステップS28において、取得した電波強度を取得強度に設定する。また、取得した電波強度が無効である場合(ステップS27:NO)には、処理がステップS31に移行する。
【0067】
ステップS29において、判定部212は、RAM22に記憶されている電波の最大強度と取得強度とを比較する。比較の結果、取得強度が最大強度よりも大きい場合(ステップS29:YES)、パラメータ設定部213は、ステップS30において、最大強度を取得強度で更新する。また、パラメータ設定部213は、テーブルインデックスiの値に基づき、応答した無線通信装置に最も近い位置に固定的に配置された無線通信装置の位置情報を保持する。位置情報は、テーブルインデックスiの値に対応するスイッチ番号の固定アドレスに基づき判断することができる。一方、取得強度が最大強度以下である場合(ステップS29:NO)には、処理がステップS31に移行する。
【0068】
ステップS31において、CPU21は、テーブルインデックスiの値を1だけインクリメントする。ステップS32において、判定部212は、テーブルインデックスiの値が最大値であるか否かを判定する。テーブルインデックスiの値が最大値である場合(ステップS32:YES)、CPU21は、ステップS33において、接続リストを次のリストに変更する。そして、処理がステップS22に戻る。また、テーブルインデックスiの値が最大値でない場合(ステップS32:NO)には、処理がステップS27に戻る。
【0069】
ステップS22~ステップS32までの処理は、収集した接続リストの数だけ繰り返される。これにより、それぞれの無線通信装置3~3のうち、電波強度が最も大きい固定アドレスの無線通信装置が探索される。
【0070】
このように、基地局2は、無線通信装置3~3のうち、移動体に配置された無線通信装置に対して測定パケットを送信し、測定パケットに対する応答を受信する。そして、基地局2は、受信した応答に含まれる、応答を返した無線通信装置に最も隣接する固定された無線通信装置の位置情報と、当該無線通信装置に対する電波強度情報とを取得する。これにより、基地局2は、応答を返した移動体の無線通信装置の位置を推定することができる。
【0071】
以上のように、本実施の形態1に係る通信システム100において、基地局2は、固定的に配置された第1の無線通信装置のうち、所定の移動体に配置された第2の無線通信装置に最も近い第1の無線通信装置の位置情報に基づき、第2の無線通信装置の位置を推定する。これにより、無線区間に障害物が存在する場合でも、無線通信装置の位置を推定することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態1について説明したが、本発明は、上述した実施の形態1に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形または応用が可能である。例えば、実施の形態1において、無線通信装置3~3は、センサ36で取得したセンサ情報を基地局2に対して送信する場合について説明したが、これに限られず、無線通信装置3~3は、センサ情報以外のデータを基地局2に送信してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ゲートウェイ装置、2 基地局、3~3 無線通信装置、11 CPU、12 RAM、13 フラッシュメモリ、14 保守用通信部、15 外部出力用通信部、16 GW側有線通信部、21 CPU、22 RAM、23 フラッシュメモリ、24 第1無線通信部、25 外部出力用通信部、26 基地局側有線通信部、31 CPU、32 RAM、33 フラッシュメモリ、34 第2無線通信部、35 外部出力用通信部、36 センサ、37 スイッチ、100 通信システム、211 リスト収集部、212 判定部、213 パラメータ設定部、214 送受信処理部、311 スイッチ設定取得部、312 スイッチ番号判定部、313 情報取得部、314 アドレス設定部、315 送受信処理部。
図1
図2
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図5
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図10
図11
図12