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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131344
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20220831BHJP
   B65D 47/08 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
B65D47/36 100
B65D47/08 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030240
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】江崎 雅治
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084EA02
3E084EB01
3E084EB02
3E084EC03
3E084FA03
3E084FC01
3E084GA06
3E084GB06
3E084HB01
3E084HC03
3E084KB01
3E084LA01
3E084LB02
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】初期開封による確実な注出用開口の形成が可能であると共に、初期開封時の開封力がプルリングを有するヒンジキャップとほぼ同程度まで低減されているプルリングレス機構のヒンジキャップを提供する。
【解決手段】本体と上蓋とをヒンジ連結して成るヒンジキャップにおいて、前記本体は、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下する側壁を有し、前記頂板部には、弱化部により区画された開口予定部、及び該開口予定部を取り囲むように注出用ノズルが形成されており、前記上蓋は、天面と該天面の周縁から垂下するスカート部とから成り、前記本体の前記開口予定部のヒンジと反対側の位置には、キャップ軸方向に延びる突出部が形成されており、該突出部の先端が、上蓋の閉栓状態において前記上蓋の天面内面に固着されていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と上蓋とをヒンジ連結して成るヒンジキャップにおいて、
前記本体は、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下する側壁を有し、前記頂板部には、弱化部により区画された開口予定部、及び該開口予定部を取り囲むように注出用ノズルが形成されており、
前記上蓋は、天面と該天面の周縁から垂下するスカート部とから成り、
前記本体の前記開口予定部のヒンジと反対側の位置には、キャップ軸方向に延びる突出部が形成されており、該突出部の先端が、上蓋の閉栓状態において前記上蓋の天面内面に固着されていることを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
前記上蓋には、上蓋の閉栓状態において、前記突出部の先端を収容可能な環状壁が形成されており、該環状壁内で前記突出部先端が固着される請求項1記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
前記本体の頂板部が、ヒンジ側から注出方向側に向かってキャップ軸方向下方に傾斜する傾斜面を有する請求項1又は2記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
前記開口予定部の形状が、注出方向に行くに従って注出方向と垂直方向の距離が減少する形状を有し、注出方向側端部における先端角度が鋭角である請求項1~3の何れかに記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
前記開口予定部の下面のヒンジ側に、半径方向外方且つ斜め下方に突出する舌片が形成されている請求項1~4の何れかに記載のヒンジキャップ。
【請求項6】
前記突出部が中空である請求項1~5の何れかに記載のヒンジキャップ。
【請求項7】
前記突出部の先端が、前記上蓋内面と溶着されることにより上蓋に固着されている請求項1~6の何れかに記載のヒンジキャップ。
【請求項8】
前記開口予定部には、前記突出部のヒンジ側に隣接し、上蓋の閉栓状態において先端が上蓋内面に接触しない第2の突出部が形成されている請求項1~7の何れかに記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップ本体頂板部に形成される注出用開口を初期開封と同時に形成可能なプルリングレス機構を有するヒンジキャップに関するものであり、より詳細には、初期開封による確実な注出用開口の形成が可能であると共に、初期開封時の開封力が低減されているヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
調味料等の液体を収納する容器に装着されて広く利用されているヒンジキャップは、内容物の使用開始の際に、まず上蓋をキャップ本体から外し、次いでキャップ本体に形成されたプルリングを持ち上げ、開口予定部を区画する弱化部を破断してこれを取り除くことにより注出用開口を形成する、という2段階の操作を行うことにより初めて、内容物の注出が可能となる。
しかしながら、このような2段階の開封操作は煩雑であると共に、キャップ本体から取り除かれた開口予定部はごみとして廃棄する必要がある。またキャップの径によってはプルリングの大きさが小さいことから指をかけにくいという問題や、プルリングの引き上げにより弱化部を破断する際に内容物が飛び散るおそれもある。
【0003】
ヒンジキャップにおけるこのような問題を解決するために、プルリングのないヒンジキャップも提案されている。例えば下記特許文献1には、容器口頸部に装着されるキャップ本体と該キャップ本体にヒンジ連結部により連結された上蓋とからなり、前記キャップ本体は天壁と該天壁の外周部から垂下する筒状周壁とからなり、前記上蓋は頂壁と該頂壁の外周縁から垂下するスカート壁とからなり、前記筒状周壁端部に形成された上蓋側係止部と前記天壁上面から上方に突出形成されたキャップ本体側係止部とが係合されてなり、前記キャップ本体と前記上蓋との間に前記天壁に無端状弱化線により区画形成された注出口形成用裂破部を上蓋開栓時に前記天壁から剥ぎ取る注出口開口手段を有してなるヒンジキャップにおいて、前記注出口開口手段が、前記キャップ本体の注出口形成用裂破部と前記上蓋の天壁内面とを連結する連結機構と、上蓋開栓時に少なくとも前記ヒンジ連結部と反対側の前記キャップ本体側係止部と前記上蓋側係止部との係合解除より遅れて前記無端状弱化線を破断させるための遅延伝達機構を備えてなることを特徴とするヒンジキャップが記載されている。
【0004】
また下記特許文献2には、容器口部に装着されるキャップ本体と、前記キャップ本体の本体側係合部に係合可能な上蓋側係合部を有した上蓋と、前記キャップ本体および前記上蓋をヒンジ連結するヒンジ部とを備え、前記キャップ本体に対して前後方向における後方側に向けて前記上蓋を開く動作によって、前記本体側係合部および前記上蓋側係合部の係合を解除させるとともに弱化部を破断させて内容物の注出を可能にする樹脂製ヒンジキャップであって、前記キャップ本体は、注出案内筒部と、前記注出案内筒部の内周側に形成され前記弱化部によって区画された切取領域を有したインナー壁を備え、前記上蓋は、前記切取領域に接合された切取用突出部を備え、前記インナー壁は、前記切取領域の外周側に、前記前後方向における前記インナー壁の中央を基準として、前方側に位置する前方側領域と、後方側に位置する後方側領域とを有し、前記インナー壁は、前記前方側領域の可撓性が前記後方側領域の可撓性よりも高くなるように形成されていることを特徴とする樹脂製ヒンジキャップが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-111535号公報
【特許文献2】特開2020-97424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載されたヒンジキャップでは、初期開封時の上蓋のキャップ本体からの取り外しと同時に、注出用開口の形成が可能であり、ワンアクションで内容物の注出を開始できると共に、キャップ本体と上蓋の係合解除のタイミングと、注出用開口形成のための弱化部の破断開始のタイミングとをずらすことにより、開封に必要な力を低減させている。
しかしながら、上記特許文献1においては、上蓋と開口予定部の溶着部と破断すべき弱化線が離間しているため、上蓋の開栓力を効率よく弱化線に作用させることができず、開栓力を十分に低減できないおそれがある。
また上記特許文献2においては、上蓋と開口予定部の溶着部が、開口予定部を区画する無端状の弱化部の全周にわたって形成されていることから溶着面が広く、上蓋の開栓動作を阻害する力が大きいため、初期開封操作における開封力のさらなる低減が望まれている。
【0007】
このような観点から本発明者等は、上蓋天面の内面から軸方向に垂下する突出部を形成し、この突出部の先端が開口予定部内のヒンジと反対側の位置に固着されているヒンジキャップを提案した(特願2020-180761)。このヒンジキャップは、初期開封による確実な注出用開口の形成が可能であると共に、初期開封力の低減を図ることができる。
しかしながら、上記突出部の先端は開口予定部を区画する弱化部近傍であることから、固着方法によっては弱化部にダメージを与えるおそれがあることが分かった。
従って本発明の目的は、キャップ成形時の弱化部のダメージが有効に防止されていると共に、プルリングを有するヒンジキャップとほぼ同程度の開封力で確実に注出用開口の形成が可能なプルリングレス機構のヒンジキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、本体と上蓋とをヒンジ連結して成るヒンジキャップにおいて、前記本体は、頂板部と、該頂板部の周縁から垂下する側壁を有し、前記頂板部には、弱化部により区画された開口予定部、及び該開口予定部を取り囲むように注出用ノズルが形成されており、前記上蓋は、天面と該天面の周縁から垂下するスカート部とから成り、前記本体の前記開口予定部のヒンジと反対側の位置には、キャップ軸方向に延びる突出部が形成されており、該突出部の先端が、上蓋の閉栓状態において前記上蓋の天面内面に固着されていることを特徴とするヒンジキャップが提供される。
【0009】
本発明のヒンジキャップにおいては。
1.前記上蓋には、上蓋の閉栓状態において、前記突出部の先端を収容可能な環状壁が形成されており、該環状壁内で前記突出部先端が固着されていること、
2.前記本体の頂板部が、ヒンジ側から注出方向側に向かってキャップ軸方向下方に傾斜している傾斜面を有すること、
3.前記開口予定部の形状が、注出方向に行くに従って注出方向と垂直方向の距離が減少する形状を有し、注出方向側端部における先端角度が鋭角であること、
4.前記開口予定部の下面のヒンジ側に、半径方向外方且つ斜め下方に突出する舌片が形成されていること、
5.前記突出部が中空であること、
6.前記突出部の先端が、前記上蓋内面と溶着されることにより上蓋に固着されていること、
7.前記開口予定部には、前記突出部のヒンジ側に隣接し、上蓋の閉栓状態において先端が上蓋内面に接触しない第2の突出部が形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒンジキャップにおいては、上蓋の閉栓状態における上蓋とキャップ本体の固着部分を上蓋内面に形成することにより、溶着等による固着部分の形成に際して開口予定部を区画する弱化部にダメージを与えることがなく固着することが可能であり、消費者が開口形成するまでの意図外の弱化部の破断が有効に防止されている。
また開口予定部から軸方向に延びる突出部をヒンジと反対側(注出方向側)に形成することにより、ヒンジを軸とする上蓋の旋回による開栓力を効率よく弱化部に作用させることができるため、初期開栓力を低減することが可能となる。すなわち、弱化部の破断は弱化部の破断が開始される際に最も大きな力が必要であり、前述したように、無端状の弱化部の全周にわたって固着部が形成されている場合には、上蓋の開栓力が固着部全体に分散されてしまい、効率よく破断開始点に作用させることができない。また、ヒンジ側にも固着部がある場合には、内容物の注出方向側から弱化部が破断された後も、固着部による上蓋の開栓操作を阻害する力が作用して、開栓力を十分に低減させることができない。これに対して、固着部を注出方向側にのみ形成した場合には、上蓋の開栓操作開始時に弱化部の注出方向側端部に応力を集中させることができると共に、弱化部の破断が開始した後は、弱化部の破断点に上記のような阻害力を受けることがないので、効率よく弱化部の破断を行うことが可能となる。
【0011】
本発明のヒンジキャップにおいては、固着部が開口予定部から離間して形成されているため、開口予定部を含むキャップ本体頂板部を注出方向に傾斜させることが可能になる。その結果、弱化部の破断開始部分に効率よく大きな応力を作用させることが可能となり、初期開封力を低減することが可能になる。
また開口予定部の注出方向側に突出部を形成し、それ以外の部分には側壁を形成しないことにより、開口予定部の可撓性が向上するため、初期開封における上蓋の旋回動作と弱化部破断のタイミングをずらすことが可能になり、開栓力を低減することが可能となる。
更に開口予定部の形状が、弱化部の破断開始点である注出方向側端部における先端角度が鋭角であることにより、弱化部の破断開始からヒンジ部方向への亀裂の伝播が容易になり、開栓力を更に低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のヒンジキャップの一例において、上蓋とキャップ本体を固着する前の状態を説明するための図であり、(A)は上面図、(B)は側断面図、(C)は下面図である。
図2図1に示したヒンジキャップにおいて、上蓋をキャップ本体に固着した状態を示す側断面図である。
図3図2に示したヒンジキャップについて、開封開始した状態を示す側断面図である。
図4図2に示したヒンジキャップについて、完全に開封した状態を示す側断面図である。
図5図4に示した状態から、上蓋をキャップ本体に係合し、再密封した状態を示す側断面図である。
図6】本発明のヒンジキャップの固着部の他の態様を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のヒンジキャップを添付図面に基づいて説明する。
図1図5に示す本発明のヒンジキャップは、キャップ本体1と、キャップ本体1にヒンジ連結(ヒンジ連結部を2で示す)された上蓋3とから成っており、キャップ本体1は、概略的に言って、頂板部11と、頂板部11の周縁部から垂下している筒状側壁12とから成っている。
【0014】
図に示す具体例においては、図1(B)から明らかなように、頂板部11の内面には、筒状側壁12とは間隔を置いて下方に延びているインナーリング13が形成されている。このインナーリング13と筒状側壁12との間の空間に容器口部が嵌め込まれてキャップ本体1は、容器口部(図示せず)に装着されるようになっている。
また頂板部11には、内容物取り出し用の開口となる開口予定部14が、無端状に形成されている弱化部15を介して頂板部11と一体に形成されている。弱化部15を引き裂いて、この開口予定部14を引き剥がすことにより、この開口予定部14が注出用開口(図4においてAで示す)となる。開口予定部14に関しては後述する。
【0015】
頂板部11の上面側には、上記の開口予定部14を取り囲むようにして、注出用ノズル16が形成されており、頂板部11に形成された開口Aを介して取り出される内容物は、この注出用ノズル16に沿って案内される。この注出用ノズル16は、上蓋3とのヒンジ連結部2側の背が低く形成されている。注出用ノズル16よりも外側部分には、上蓋3を保持するために、背の低い周状凸部17が形成されている。
また、キャップ本体1の筒状側壁12の一部は、上端から下方に延びている弧状スリット18により、内側壁12aと外側壁12bとに分断されており、内側壁12aと外側壁12bとが下端で周方向スコア19を介して連なった二重壁構造が形成されている。このような二重壁構造は、容器内容液注出後のキャップ本体1を容器口部から容易に除去するために形成されている。
【0016】
一方、上蓋3は、キャップ本体1の筒状側壁12(スリット18によって形成されている外側壁12b)の上端部分にヒンジ連結されている。このヒンジ連結部2は、図1から理解されるように、中央の幅広のバンド部2aと、その周方向両側部に小幅のバンド部2b,2bから形成されている。
尚、図示していないが、ヒンジ連結部2の近傍には、外側壁12bに、その上端から下端乃至その近傍に延びている軸方向スコアが形成されている。これにより、上蓋3を開栓した状態で下方に引き下ろすことにより、軸方向スコアが引裂かれ、外側壁12bが破断し、次に反時計方向(図1(A)の上面図から見て)に向かって強制することによりの周方向スコア19が破断し、キャップ本体1を容器口部から容易に取り除くことができるようになっている。このようなヒンジキャップを容器口部から取り除く手段自体は公知であり、例えば特開2018-058622号公報に詳細が記載されている。
【0017】
上蓋3は、天板部31と、天板部31の周縁から延びているスカート部32とから形成されている。天板部31の内面には、シール用の周状突起33が形成されている。これにより、図2に示されているように、ヒンジ2を軸として上蓋3を旋回して閉じたとき、シール用の周状突起33が前記注出用ノズル16の内面に密着し、この密着により、開口予定部14を引き剥がして注出開口Aを形成した後のシール性が確保される。
また、上蓋3のスカート部32の内面下方部分には、凹部34が形成されており、前述した周状凸部17の上端が、この凹部34と係合することにより、閉じられた上蓋3が安定に保持されるようになっている。
さらに、上蓋3のスカート部下端の外面には、ヒンジ連結部2とは反対側部分に、開封用の鍔部35が設けられており、この鍔部35を指で引っ掛けて上蓋3を上方に持ち上げることにより上蓋3の開封を容易に行うことができる。
上蓋3の天板部31には、後述するキャップ本体1の開口予定部に形成された突出部20の先端を収容可能な環状壁36が形成されている。環状壁36については後述する。
【0018】
本発明においては、キャップ本体の頂板部11の開口予定部14のヒンジと反対側の位置(注出方向側)に、キャップ軸方向に延びる突出部20が形成されており、この突出部20の先端20aが、上蓋3の閉栓状態において上蓋3の天板部31の内面に固着されていることが重要な特徴である。
この突出部20は、中空の円錐台形状を有しており、先端20aの近傍で段差部20bが形成されている。図2から明なように、先端20aの外側面が後述する上蓋3の環状壁36の内周面と近接(または当接)すると共に、先端20aの上面と上蓋3の天板部31の内面とが当接し、かくして先端20aが環状壁36で区画される凹部37に収容される。また図に示す具体例では、上蓋3の凹部37内に更に環状壁36と同心円状の微小突起38が形成されている。この微小突起38が形成されていることにより、先端20aの上面との溶着に際して溶着面が増加し強固な溶着が可能となる。
【0019】
また突出部20に隣接したヒンジ側に、キャップ軸方向に延び、閉栓状態においてその先端が上蓋3の内面に接触しない第2の突出部21が形成されている。この第2の突出部21により、突出部20が上蓋3の天板部31に接触したときの衝撃を緩和して、意図外に弱化部が破断してしまうことを予防することができる。
尚、突出部20及び第2の突出部21は、いずれも中空の円錐台形状を有していることが好適である。これにより成形時の樹脂のヒケによる寸法安定性の低下を防止できる。また図に示す具体例においては、突出部20の中空の内面の軸方向高さのほぼ中間位置に、環状突条20cが形成されている。キャップ成形の際には突出部の中空部分にピンが挿入されるが、ピンに突出部が密着した状態でピンを抜くと弱化部が破断されるおそれがあるが、上記環状突条20cが存在することにより、このような弱化部の破断を有効に防止できる。
【0020】
また図に示す具体例においては、注出用ノズル16内の開口予定部14を含む頂板部11aは、キャップ水平方向に対して鋭角Θとなる角度で、ヒンジ連結部2側から注出方向側に向かってキャップ軸方向下方に傾斜した傾斜面になっている。これにより、初期開封の際の旋回動作による開封力の方向が開口予定部に対して鋭角になり、弱化線の破断の進行がスムーズになり、初期開封力を低減することが可能になる。鋭角Θは10~20度の範囲にあることが好ましい。上記範囲よりもΘの値が大きいと、内容物の注出調整が難しくなるおそれがあり、その一方上記範囲よりもΘの値が小さい場合には、開口予定部に傾斜を設けるメリットが低減する。
また注出用ノズル16内の頂板部11aを傾斜することに伴い、注出方向側の注出用ノズル16から開口予定部14に向かう頂板部11が斜め下方に傾斜する傾斜面11cとすることによって、内容物の注出をスムーズに行うことができる。
また開口予定部14の下面のヒンジ側には、半径方向外方且つ斜め下方に突出する舌片22,22が2つ形成されている。この舌片22の機能については後述する。
【0021】
本発明のヒンジキャップでは、図1に示すように、上蓋3が開いた状態で成形された後、上蓋3を閉じ、突出部20の先端20aが上蓋3の環状壁36内の凹部37に収容された状態で高周波誘導加熱等の手段で加熱を行うことにより、突出部20の先端20aと上蓋3の天面内面とが注出方向側で固着される(図2)。
このように環状壁36内の凹部37で突出部20の先端20aが固着されることにより、突出部20が上蓋3に安定して固定されるため、上蓋3の開封の際に突出部20が脱落することなく開口形成が容易になると共に、突出部先端を上蓋に溶着する際に樹脂粉が発生した場合にも、樹脂粉がキャップ内に侵入することがないという利点もある。
尚、前述した通り、上蓋3の環状壁36で区画される凹部37内には環状壁36と同心円状の微小突起38が形成されていたが、図6に示すような微小突部39を設け、微小突部39の下面と先端20aの上面とが固着される形態であってもよい。
【0022】
開栓に際しては、図2に示した閉栓状態から、ヒンジ2を軸として上蓋3を旋回することにより、開口予定部14の注出方向側から開口予定部14と頂板部11とを繋いでいる弱化部15の破断が開始し(図3)、更に上蓋3の旋回を進めることにより、開口予定部14は上蓋3と一体になって頂板部11から完全に引き剥がされ、開口予定部14は開放され、注出開口Aが形成される(図4)。
図4に示した開栓状態から、上蓋3をキャップ本体1にリシール(再密封)すると、前述したように開口予定部14の下面に形成された舌片22が、注出用ノズル16内のヒンジ側頂板部11の上面と係止して、ヒンジ側の開口予定部14が頂板部11bの下面と係合することを防止することができる(図5)。すなわち、ヒンジ側の開口予定部14がヒンジ側の頂板部11の下面と係合してしまうと、再開封するときにこの係合が解除される衝撃で内容物が飛び散るおそれがあるが、開口予定部14の下面に頂板部11の上面に係止可能な舌片22を形成しておくことにより、開封に際して上記のような衝撃の発生を防止できる。
【0023】
本発明のヒンジキャップにおいては、図に示すように、キャップ本体に形成される開口予定部14は、注出方向に行くに従って注出方向と垂直方向の距離が減少する形状を有し、注出方向側端部における先端角度が鋭角である形状であることが好適である。これにより、初期開封の際に突起部20が形成された注出方向側端部に応力集中させることが可能になり、弱化部の破断をスムーズに解することができる。また注出方向側端部が鋭角であることにより、内容物の注出量を容易に調整することが可能になる。
更に、図に示す具体例のように、ヒンジ側端部においてもヒンジ側端部に行くに従って垂直方向距離が減少する略雫形状とすることが好適である。これにより、開口予定部14を頂板部11からスムーズに取り除くことが可能となり、内容物の飛び散り等が有効に防止できる。
開口予定部の形状は、注出方向側端部が鋭角である限り、種々の形状を採用することができ、これに限定されないが、図に示した略雫形状の他、略紡錘形状の、略四葉、略三つ葉、菱形などであってもよい。
【0024】
更に図に示した具体例では、開口予定部が注出方向側に傾斜していることから、前述した通り初期開封力を低減することが可能であるが、キャップ本体頂板部が傾斜面を有しない場合には、キャップ本体頂板部の下面且つ開口予定部の注出方向側に薄肉部を形成することもできる。これにより、注出方向側の頂板部の可撓性が高くなることから、上蓋を開く際に注出方向側の頂板部が撓んで、弱化部破断開始のタイミングを、上蓋とキャップ本体の係合解除のタイミングよりも遅らせることができるため、開封に要する開栓力を低減させることが可能となる。
【0025】
本発明においては、プルリングを設けることなく、上蓋3の開栓によって注出用開口Aを形成できるため、小径のキャップでも容易に注出用開口Aを形成でき、図に示した容器口部に取り付けられるキャップに限定されない。例えば、袋状容器本体に溶着固定される基部、及び該基部に設けられた内部通路を有する栓体部から成るスパウト本体と、栓体部にヒンジを介して、栓体部の内部通路の先端の開口部を開閉可能に一体に成形されたキャップを有する、キャップ付きスパウトにおいても同様の作用効果を発現できる。
すなわち、スパウトの栓体部の内部通路先端面が閉塞された状態で、この先端面に弱化部で区画された開口予定部を形成すると共に、キャップの天面内面側に突出部を形成し、キャップが栓体部に被せられた状態で、突出部の下端が開口予定部に固着されている。これにより、キャップの初期開封と同時に弱化部が破断されて、開口予定部がキャップと一体となって栓体部から取り除かれて、注出用開口が形成される。
【0026】
本発明のヒンジキャップは、射出成形などにより、図1に示すような上蓋が開放された状態で、上蓋及びキャップ本体を一体形成した後、上蓋を閉じて、突出部を開口予定部に固着することにより製造することができる。また突出部が中空の円錐台形状とすることにより、上蓋及びキャップ本体との一体成形が容易である。
上蓋及びキャップ本体は、一体成形が可能であり、且つ突出部を上蓋に固着できる限り、その材質は問わないが、高周波加熱やヒートシールにより溶着されることが好適であることから、熱溶融可能な熱可塑性樹脂により形成されることが好適である。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 キャップ本体、2 ヒンジ、3 上蓋、11 頂板部、12 筒状側壁、13 インナーリング、14 開口予定部、15 弱化部、16 注出用ノズル、17 周状凸部、18 スリット、19 周方向スコア、20 突出部、21 第2の突出部、22 舌片、31 天板部、32 スカート部、33 周状突起、34 凹部、35 鍔部、36 環状壁、37 凹部、38 微小突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6