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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131347
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】動力伝達ユニット
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/68 20060101AFI20220831BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20220831BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20220831BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20220831BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20220831BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A01D34/68 M
B60L15/00 Z
H02K7/116
H02K7/102
F16H1/06
F16D65/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030249
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清岡 晃司
(72)【発明者】
【氏名】井馬 昭博
(72)【発明者】
【氏名】西澤 尚史
【テーマコード(参考)】
2B083
3J009
3J058
5H125
5H607
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA15
2B083DA03
2B083DA07
2B083EA02
2B083EA19
2B083HA17
2B083HA22
3J009DA17
3J009EA05
3J009EA11
3J009EA21
3J009EA32
3J009EA43
3J009FA06
3J058AA44
3J058AA53
3J058AA70
3J058BA18
3J058CB12
3J058CB17
3J058CD24
3J058CD26
3J058CD34
3J058FA14
5H125AA20
5H125AB01
5H125AC12
5H125CB00
5H125FF30
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB05
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE31
5H607EE36
(57)【要約】
【課題】動力伝達ユニットにおいて、ブレーキ装置を作動させるための操作力を小さくすることである。
【解決手段】動力伝達ユニット41は、入力軸72と、出力軸60と、入力軸72から出力軸60に動力を減速して伝達する歯車機構80とが収容されたトランスミッションケース42と、トランスミッションケース42またはトランスミッションケースに固定されたモータケースの内側に配置されたモータ70とを含む。入力軸72はモータ70のロータが外周面に固定されるモータ軸であり、入力軸72の歯車機構80側にブレーキロータ91が相対回転不能に設けられるか、または、入力軸72と出力軸60との間に配置された中間軸82に多板式のブレーキロータが相対回転不能に設けられる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、出力軸と、前記入力軸から前記出力軸に動力を減速して伝達する歯車機構とモータが収容されたトランスミッションケースと、を備え、
前記入力軸は前記モータのロータが外周面に固定されるモータ軸であり、前記入力軸の前記歯車機構側にブレーキロータが相対回転不能に設けられるか、または、前記入力軸と前記出力軸との間に配置された中間軸に多板式のブレーキロータが相対回転不能に設けられる、
動力伝達ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達ユニットにおいて、
前記入力軸は前記モータの前記ロータが外周面に固定される前記モータ軸であり、前記入力軸の前記歯車機構側に前記歯車機構の歯車が噛み合う軸歯車部が直接に形成され、
前記ブレーキロータの中心孔に形成されたスプライン部が、前記軸歯車部に噛み合って、前記ブレーキロータが前記入力軸に相対回転不能に嵌合される、
動力伝達ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の動力伝達ユニットにおいて、
前記入力軸と前記出力軸との間に配置された前記中間軸に多板式の前記ブレーキロータが相対回転不能に設けられ、
前記歯車機構を形成する歯車が、前記ブレーキロータを形成する複数枚のロータプレートのうち、1枚の前記ロータプレートとして用いられる、
動力伝達ユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動力伝達ユニットにおいて、
前記トランスミッションケースは、軸方向一方側を形成する第1ケースを含み、
前記第1ケースは、内側に前記モータが配置されるモータケース部を有し、かつ、前記第1ケースの前記歯車機構側の部分と前記モータケース部とは、互いを仕切る壁を共通とする、
動力伝達ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、芝刈り機を備える芝刈り車両等の車両において、車輪を電動モータで駆動し走行可能とすることが知られている。特許文献1には、左右車輪を電動モータで共通に駆動する芝刈り車両が記載されている。特許文献2には、左右車輪を互いに独立して駆動可能とし、左車輪を左電動モータで駆動し、右車輪を右電動モータで駆動する芝刈り車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0069964号明細書
【特許文献2】特開2014-117026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように1つまたは2つのモータで左右車輪を駆動する車両では、モータの動力を車輪に伝達する動力伝達ユニットが用いられる。また、動力伝達ユニットの内部の回転軸に、走行ブレーキや駐車ブレーキのためのブレーキロータを相対回転不能に設けて、ブレーキロータを両側からブレーキパッド等の押圧部で挟み込んで、車輪を制動することが考えられる。このとき、必要とされる制動トルクが高い等によりブレーキ容量が大きくなると、ブレーキ装置を作動させる操作力が大きくなる原因となる。これにより、ブレーキ装置を操作する運転者の腕や足にかかる負荷が大きくなったり、ブレーキ装置をアクチュエータで作動させる場合にアクチュエータが大型化する原因となる。
【0005】
本発明の目的は、動力伝達ユニットにおいて、ブレーキ装置を作動させるための操作力を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る動力伝達ユニットは、入力軸と、出力軸と、前記入力軸から前記出力軸に動力を減速して伝達する歯車機構とモータが収容されたトランスミッションケースと、を備え、前記入力軸は前記モータのロータが外周面に固定されるモータ軸であり、前記入力軸の前記歯車機構側にブレーキロータが相対回転不能に設けられるか、または、前記入力軸と前記出力軸との間に配置された中間軸に多板式のブレーキロータが相対回転不能に設けられる、動力伝達ユニットである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る請求項1の動力伝達ユニットによれば、入力軸の歯車機構側にブレーキロータが相対回転不能に設けられるか、または、入力軸と出力軸との間に配置された中間軸に多板式のブレーキロータが相対回転不能に設けられる。入力軸の歯車機構側にブレーキロータが相対回転不能に設けられる場合には、入力軸の回転速度が出力軸の回転速度より高いので、ブレーキロータを制動するのに必要となる制動トルクが低くなる。これにより、ブレーキ容量を小さくできるので、ブレーキ装置を作動させるための操作力を小さくできる。また、中間軸にブレーキロータが相対回転不能に設けられる場合には、中間軸の回転速度が入力軸の回転速度より低いので必要となる制動トルクが大きくなるが、ブレーキロータが多板式であるのでブレーキロータとブレーキロータに摩擦力を加える押圧部との接触面積を大きくできる。これにより、ブレーキ装置を作動させるための操作力を小さくしながら、必要なブレーキ容量を確保できる。
【0008】
さらに本発明に係る請求項2の動力伝達ユニットによれば、入力軸はモータのロータが外周面に固定されるモータ軸であり、入力軸の歯車機構側に歯車機構の歯車が噛み合う軸歯車部が直接に形成され、ブレーキロータの中心孔に形成されたスプライン部が、軸歯車部に噛み合って、ブレーキロータが入力軸に相対回転不能に嵌合されるため、モータ軸と入力軸とを異なる2部材として、互いに継手を介して接続する必要がないので、軸方向についての動力伝達ユニットの長さを小さくできる。さらにモータ軸と入力軸とを異なる2部材とする場合と異なり、部品点数を少なくできると共に、部品の組付け工数低減により製造コストを低減できる。さらに、入力軸の入力軸歯車部を小径化できるので、動力伝達ユニット全体を小型化できる。さらに、入力軸歯車部にブレーキロータを相対回転不能に篏合すると共に、入力軸歯車部に歯車機構の中間歯車が噛み合っているので、入力軸の加工工数を低減できると共に、入力軸の形状を単純化できることにより、入力軸の強度を高くできる。
【0009】
さらに本発明に係る請求項3の動力伝達ユニットによれば、入力軸と出力軸との間に配置された中間軸に多板式のブレーキロータが相対回転不能に設けられ、歯車機構を形成する歯車が、ブレーキロータを形成する複数枚のロータプレートのうち、1枚のロータプレートとして用いられることにより、カム軸が制動状態となるように回転した場合には、ブレーキシューとブレーキパッドとでロータプレート、固定側プレート、中間歯車が挟まれて、ブレーキロータ及び車輪を回転停止させる。このため、ギヤ室の容積を過度に大きくすることなく、中間歯車と複数のロータプレートとによって摩擦面積を大きくできるので、ブレーキ容量を大きくできる。さらに、中間歯車をロータプレートとして使用する分、ブレーキロータ専用のロータプレートの枚数を少なくできるので、部品点数を少なくできる。
【0010】
さらに本発明に係る請求項4の動力伝達ユニットによれば、トランスミッションケースは、軸方向一方側を形成する第1ケースを含み、第1ケースは、内側にモータが配置されるモータケース部を有し、かつ、第1ケースの歯車機構側の部分とモータケース部とは、互いを仕切る壁を共通とする。これにより、第1ケースとモータケースとが異なる2部材である場合と異なり、第1ケースとモータケースとの対向する端部にそれぞれの壁が形成されて動力伝達ユニットの軸方向の全長が大きくなることを防止できる。さらに、それぞれの壁と入力軸及びモータ軸との間に設けられる2つの軸受及び2つの油のシールをそれぞれ1つの軸受とシールとに少なくできるので、軽量化及びコストの低減を図れる。さらに、異なる2部材の第1ケースとモータケースとを結合する場合に生じるケース間の不可避な微小隙間をなくせることによって、モータからの熱がトランスミッションケースに伝達されやすくなり、放熱部を大きくできるので、モータの冷却性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の動力伝達ユニットを搭載する車両の斜視図である。
図2A図1の車両の右側の車輪についての実施形態の動力伝達ユニットの断面図である。
図2B図2Aの後側部分の拡大図である。
図3図2BのA-A断面図である。
図4A】左右2つの車輪についての図2BのC-C断面に対応する図である。
図4B】一部を省略して示している図4AのD-D断面図である。
図5図2BのE-E断面図である。
図6図1の車両の右側の車輪についての実施形態の別例の動力伝達ユニットにおいて、一部を省略して示す斜視図である。
図7A図6のF-F断面図である。
図7B図7Aの後側部分の拡大図である。
図8】左右2つの車輪についての図7BのI-I断面に対応する図である。
図9図7BのJ-J断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下では、動力伝達ユニットが、作業車両であり芝刈り車両に搭載される場合を説明するが、動力伝達ユニットが搭載される車両は、これに限定せず、除雪作業、掘削作業、土木作業、農作業のいずれか1つ以上の作業を行う作業機を有する他の作業車両、または荷台を有し、不整地を走行するオフロード型多用途車両(Utility Vehicle)、あるいはバギーと呼ばれるAll Terrain Vehicle(ATV)や、レクリエーショナルビークル(Recreational Vehicle(RV))や、レクリエーショナルオフハイウェイビークル(Recreational Off-highway Vehicle(ROV))としてもよい。また、以下では、車両が2つの後輪を2つのモータで駆動する場合を説明するが、車両は2つの前輪を2つのモータで駆動する構成としてもよい。また、以下では、左右2つの操作レバーを有する左右レバー式操作子を使用する場合を説明するが、これは例示であって、ステアリングハンドルを旋回指示具として使用し、座席の前側に設けられたアクセルペダルを加速指示具として使用してもよい。以下ではすべての図面において同様の要素には同一の符号を付して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1から図5は、第1の実施形態を示している。以下で説明する図面では、前後方向をXで示し、左右方向をYで示し、上下方向をZで示している。また、前側をFrで示し、左側をLhで示し、上側をUpで示している。X,Y,Zは互いに直交する。
【0014】
まず、芝刈り車両10の全体構成を説明し、その後、芝刈り車両10に搭載した動力伝達ユニット41,71(図2A図4A)を詳しく説明する。エンジン非搭載型の乗用型の芝刈り車両10は、車体を構成するメインフレーム16と、左右2つの前輪であるキャスタ輪18,20と、左右2つの後輪である車輪24と、作業機である芝刈り機25と、左右2つの操作レバー34,36と、バッテリを含む電源ユニット40とを備える。図1では左側の車輪の図示を省略している。
【0015】
メインフレーム16は、前後方向中間部の上側に運転席17が固定される。左右のキャスタ輪18,20は、メインフレーム16の前側に支持される。各キャスタ輪18,20は、上下方向の軸を中心とする360度以上の自由操向を可能とする。左右の車輪24は、メインフレーム16の後側に支持される。左右の車輪24は、主駆動輪であり、後述する左右の電動モータである走行用のモータ70(図2A)により駆動される。
【0016】
キャスタ輪18,20は、2つ以外、例えば、1つのみを芝刈り車両10に設けることもでき、3つ以上の複数個を設けることもできる。キャスタ輪と駆動輪とは、本例の構成と前後で逆にしてもよい。
【0017】
芝刈り機25は、メインフレーム16の前後方向中間部で下側に支持されている。芝刈り機25は、モアデッキ26と、モアデッキ26の内側にそれぞれ鉛直方向の軸を中心として回転可能な芝刈り用回転工具である図示しない3つの芝刈りブレードとを含む。芝刈ブレードが回転されることで芝等を破断して刈り取り可能とする。各芝刈りブレードは、モア用のモータ28により駆動される。
【0018】
芝刈りブレードの回転により芝の刈り取りが可能であり、刈り取られた芝は、モアデッキ26の内側から車両の幅方向片側に排出される。
【0019】
芝刈り機は、芝刈り用回転工具として、地表に平行に回転軸を有するシリンダに例えばらせん状の刃を配置し、芝等を挟み取って刈り取る機能を有し、デッキモータにより駆動される芝刈りリールを備える構成としてもよい。
【0020】
左右2つの操作レバー34,36は、運転席17の左右両側において、左右方向に向いた水平軸を中心に前後方向の揺動可能に設けられる。各操作レバー34,36が、直立した中立状態であれば走行用のモータ70は回転停止し、揺動するように操作されることにより、揺動方向と揺動量に応じて、対応する側の走行用のモータ70を回転させることが指示される。
【0021】
操作レバー34,36の前後方向の揺動位置が、レバーセンサ(図示せず)で検出される。レバーセンサの検出信号は、走行用のモータ70の回転指示を表す信号として、車両に搭載された制御装置(図示せず)に入力され、制御装置がモータ70をその指示に応じた回転方向に回転させる。各モータ70の動力は、後述の動力伝達ユニット41,71(図2A図4A)の歯車機構80等を介して左右の車輪24に伝達される。これにより、操作レバー34,36の操作に応じて、前側または後側に車両が走行し、左右の操作レバー34,36で操作量を変えることで、左右の車輪24に回転速度差が生じて車両が旋回する。さらに、2つの操作レバー34,36の一方の操作レバーを前側に、他方の操作レバーを後側にそれぞれ倒すことで、左右の車輪24が逆方向に回転し、旋回半径が小さくなることにより車両が急旋回する。
【0022】
さらに、2つの操作レバー34,36は、直立した中立状態から車幅方向外側に開くように傾倒可能に構成され傾倒した位置を駐車ブレーキ位置とする。2つの操作レバー34,36は、駐車ブレーキ位置に移動することにより、駐車ブレーキの作動を指示する機能を有する。車両の上部には操作レバー34,36の移動を案内するT字形の案内穴29が設けられることにより、2つの操作レバー34,36の車幅方向外側への開きが、操作レバー34,36が直立した状態からのみで可能となっている。操作レバー34,36の下端部と、動力伝達ユニット41,71の後述のブレーキ装置90とはリンク機構で連結されており、操作レバー34,36の外側への開きでブレーキ装置90が作動して、対応する車輪24を制動する。
【0023】
以上が芝刈り車両10の全体構成であり、次にこの芝刈り車両10に搭載される動力伝達ユニット41(図2A)を説明する。右の車輪24に右の動力伝達ユニット41が接続され、左の車輪に左の動力伝達ユニット71(図4A)が接続される。以下、右の動力伝達ユニット41を中心に説明するが、左の動力伝達ユニット71の構造は、右の動力伝達ユニット41の構造と、車両幅方向中央に関し対称である。
【0024】
図2Aは、右側の車輪24についての動力伝達ユニット41の断面図である。図2Bは、図2Aの後側部分の拡大図である。図3は、図2BのA-A断面図である。図2A図2Bは、図3のB-B断面に相当する。動力伝達ユニット41は、トランスミッションケース42と、出力軸60と、走行用のモータ70と、歯車機構80とが一体に組み合わされて形成される。
【0025】
トランスミッションケース42は、内側に入力軸72と、出力軸60と、歯車機構80とが収容される。歯車機構80は、入力軸72及び出力軸60間で動力を伝達する機構であり、かつ入力軸72から出力軸60に動力を減速して伝達する。入力軸72と出力軸60とは平行に配置される。入力軸72は、後述するモータ70のモータ軸でもある。トランスミッションケース42は、軸方向一方側である車幅方向内側(左側)を形成する第1ケース43と、軸方向他方側である車幅方向外側(右側)を形成する第2ケース53とが複数のボルト58で結合されることにより一体化される。ここで動力伝達ユニット41の軸方向とは、入力軸72及び出力軸60に平行な方向であり、車幅方向と一致する。
【0026】
第1ケース43は、車幅方向内側に開口するモータケース部44と、車幅方向外側に開口するギヤケース部46とを有し、モータケース部44の内側空間と、ギヤケース部46の内側空間とが軸方向中間部の中間壁48で仕切られている。
【0027】
モータケース部44の内側には、走行用のモータ70が配置される。中間壁48には、軸方向に延びる筒部としてのボス部48aが設けられ、そのボス部48aの内側に、モータ70のロータ軸としての入力軸72が貫通する孔49が形成される。孔49の内周面には軸受50と、ギヤ室の循環油をモータ室に入れないように封止するためのシール51とが固定される。入力軸72は、孔49の内周面に軸受50により回転可能に支持される。ボス部48aは、入力軸72を支持する軸受50固定用の支持部に相当する。
【0028】
入力軸72の歯車機構80側には、歯車機構80の中間歯車81が噛み合う入力軸歯車部73が直接に形成される。また、入力軸72の歯車機構80側には、ブレーキ装置90を構成するブレーキロータ91が相対回転不能に設けられる。ブレーキロータ91は、軸方向両側からブレーキシュー93(図4A)とブレーキパッド94(図4A)とが押し付けられることにより、制動トルクが加わって入力軸72を回転停止させる。ブレーキシュー93とブレーキパッド94は押圧部に相当する。ブレーキロータ91は、歯車機構80のうち、最も回転速度が高くなる入力軸72に固定されるので、押圧部からブレーキロータ91に加えるべき制動トルクを低く抑えることができる。これにより、ブレーキ容量を小さくできるので、ブレーキ装置90を作動させるための操作力を小さくできる。
【0029】
第2ケース53は、車幅方向内側が開口し、車幅方向外側面の一部から軸方向に筒部54が延出される。出力軸60は、この筒部54を貫通する。第1ケース43と第2ケース53とが車幅方向端部の外周縁部を突き合わせるように結合されることでトランスミッションケース42が形成される。トランスミッションケース42の内側にはギヤ室S1が形成される。
【0030】
ギヤ室S1には、入力軸72の歯車機構80側部分と、歯車機構80と、出力軸60とが配置される。出力軸60の車幅方向外端部は、筒部54の先端から突出し、その突出した部分にハブ62が固定される。ハブ62には右側の車輪24が固定される。
【0031】
歯車機構80は、入力軸72に形成された入力軸歯車部73と、入力軸72及び出力軸60の間に配置され、外周面に中間歯車81が固定された中間軸82と、出力軸60に固定された出力歯車84とを含み、入力軸歯車部73に中間歯車81が噛み合い、中間軸82の外周面に直接形成された中間軸歯車部83には、出力歯車84が噛み合っている。出力歯車84の歯数は中間軸歯車部83の歯数より多く、中間歯車81の歯数は入力軸歯車部73の歯数より多い。これにより、入力軸72の回転は、歯車機構80で減速されて出力軸60に伝達される。このため、歯車機構80は、入力軸72から出力軸60に動力を減速して伝達する。
【0032】
入力軸72、中間軸82、出力軸60は、それぞれトランスミッションケース42に設けられた複数の軸受50,55,56,57で回転可能に支持される。
【0033】
トランスミッションケース42の第1ケース43及び第2ケース53は、鉄、アルミニウム合金等の金属製である。各ケース43,53をアルミニウム合金製とすることにより、トランスミッションケース42の軽量化を図れる。トランスミッションケース42のギヤ室S1内には、歯車機構80の潤滑のための油が封入されている。
【0034】
モータ70は、例えば永久磁石式の3相モータである。モータ70は、入力軸72においてモータケース部44内に位置する部分の外周面に固定されたモータロータ74と、モータロータ74の外周面に対向するステータコア75と、ステータコア75に巻回して配置された3相のステータコイル76とを有する。モータロータ74は、例えばロータコアの周方向複数位置に配置された永久磁石を有する。ステータコア75は、モータケース部44の内側に固定される。ステータコイル76にバッテリから3相の交流電力が供給されることにより、ステータコア75に発生した回転磁界と、モータロータ74が生成する磁界との相互作用によりモータ軸である入力軸72が回転する。
【0035】
モータケース部44には、モータケース部44の軸方向外端である車幅方向内端の開口を塞ぐカバー65が、複数のボルト(図示せず)により固定される。カバー65は、鉄またはアルミニウム合金等の金属製である。カバー65の軸方向内側には軸方向に延出される筒部66が形成され、筒部66の内側には、入力軸72の車幅方向内端部を回転可能に支持する軸受61が固定される。カバー65の車幅方向外側面には凹部67が形成され、凹部67の開口端周辺部には、樹脂または金属等により板状に形成されたキャップ68が固定される。これによって、凹部67内への外部からの異物の侵入が防止されている。
【0036】
凹部67内には、入力軸72の回転速度を検出する回転速度検出装置69が設けられる。回転速度検出装置69の代わりに、入力軸72の回転角度を検出する角度検出装置が配置されてもよい。回転速度検出装置69及び角度検出装置の検出信号は、ケーブル69aを介して制御装置に出力される。回転速度検出装置69の検出信号は、制御装置でモータ70の出力制御等に利用される。角度検出装置の検出信号が制御装置に出力される場合には、制御装置でその検出信号に基づいて入力軸72の回転速度を算出する。回転速度検出装置69及び角度検出装置は、例えばレゾルバを含んで構成される。
【0037】
入力軸72について、さらに詳しく説明する。入力軸72は、モータ軸と歯車機構80の入力軸とが一体化された構造を有する。図2B図3に示すように、モータロータ74の内周面にはキー突部74aが形成され、入力軸72のモータ70側の外周面には、キー溝72aが形成される。キー溝72aにキー突部74aが係止されることにより、入力軸72に対するモータロータ74の回転が阻止される。
【0038】
入力軸72の歯車機構80側の外周面には、入力軸歯車部73が直接に形成される。入力軸歯車部73の中間歯車81の隣にはブレーキロータ91が嵌合される。このとき、ブレーキロータ91の内周面に形成された雌スプライン部91aが入力軸歯車部73に噛み合っている。これにより、入力軸72に対するブレーキロータ91の相対回転が防止される。ブレーキロータ91は筒部91bの軸方向一端部外周面に形成された円板状のフランジを有する。雌スプライン部91aは、筒部91bの内周面に形成される。
【0039】
入力軸72は、例えばSCM420等のクロムモリブデン鋼であり炭素含有量が0.25質量%以下である低炭素合金鋼に浸炭後、高周波焼き入れを施すことにより、中間素材を形成し、その中間素材に焼き入れにより生じた歪をなくすように引っ張り処理及び熱処理である歪取り処理を行うことにより形成される。これにより、入力軸72をモータ軸及び歯車機構80の入力軸として用いる構成で、炭素含有量が低いことにより、浸炭、焼き入れの前に入力軸歯車部73を形成しやすくする。さらに、歪取り処理により入力軸72のモータ70側部分の形状精度を高くして、モータ70の回転時の振れを防止できる。
【0040】
図4Aは、左右2つの車輪24についての図2BのC-C断面に対応する図である。図4Bは、一部を省略して示している図4AのD-D断面図である。ブレーキロータ91には、制動力発生部92から制動力が加えられる。ブレーキロータ91及び制動力発生部92によりブレーキ装置90が形成される。制動力発生部92は、第1ケース43の上部において上下方向に沿って配置されたカム軸96と、ブレーキシュー93と、ブレーキパッド94と、ブレーキアーム95とを備える。
【0041】
カム軸96は、上下方向に延びて、トランスミッションケース42に回転可能に支持され、その上側部分はトランスミッションケース42の上側面から突出している。このために、第1ケース43において入力軸72と前後方向について一致する位置の上端部には、カム軸96を嵌合する貫通孔43aが形成される。貫通孔43aの上側部分は、下側部分より大径となっており、内部にOリング98が設けられ、貫通孔43aとカム軸96の外周面との間をシールする。一方、ギヤ室S1内において、カム軸96の下側には、カム面97を有する断面視半円状の部分が形成される。カム面97は、トランスミッションケース42の軸方向に移動可能なブレーキシュー93と対向する。ブレーキシュー93は、カム軸96とブレーキロータ91との間に配置される。
【0042】
ブレーキパッド94は、ブレーキシュー93と対向する位置でトランスミッションケース42の内壁表面に形成した凹部に保持される。ブレーキロータ91は、ブレーキシュー93とブレーキパッド94との間に配置される。カム面97がブレーキシュー93と平行に配置される場合にはブレーキシュー93がブレーキロータ91から離れて非制動状態となる。一方、カム軸96が回転してカム面97がブレーキシュー93に対し傾斜した場合には、カム面97がブレーキシュー93に押し付けられる。これにより、ブレーキロータ91がブレーキパッド94とブレーキシュー93で両側から挟まれることにより、ブレーキロータ91及び入力軸72から動力が伝達される車輪24が制動する。
【0043】
ブレーキアーム95は、カム軸96の上端部にカム軸96に対し直交する方向に取り付けられて固定された長尺状の部材である。ブレーキアーム95の先端部には、操作レバー34,36(図1)の下端部がリンク機構(図示せず)を介して連結される。トランスミッションケース42の外側面におけるカム軸96の周囲と、ブレーキアーム95との間にはバネ99が配置される。図4Bに示すように、バネ99の両端部が、ブレーキアーム95に固定され下側に突出する第1係合ピン100と、トランスミッションケース42に固定され上側に突出する第2係合ピン101とに係合する。これにより、バネ99がブレーキアーム95を図4Bの状態を維持するように付勢する。このため、カム軸96は、カム面97とブレーキシュー93とが平行になって非制動となるように、バネ99からブレーキアーム95を介して第1回転方向P1(図4B)に付勢される。一方、操作レバー34,36が駐車ブレーキ位置に操作された場合には、ブレーキアーム95の先端部が、バネ99の付勢力に抗して図4Bの矢印Q方向に移動して、カム軸96が、カム面97がブレーキシュー93に対し傾斜してブレーキシュー93をブレーキロータ91に押し付ける第2回転方向P2(図4B)に回転する。これにより、ブレーキ装置90が制動状態となって、ブレーキロータ91及び車輪24の回転が停止し、その状態が維持される。
【0044】
第1ケース43の入力軸72に関して、カム軸96が嵌合する上側の貫通孔43aと反対側の下端部には下側の貫通孔43bが形成され、その貫通孔43bが栓102で塞がれる。2つの貫通孔43a、43bの形状は同じであり、動力伝達ユニット41、71を左右で同じものを使用できるようにするため、トランスミッションケース42の上下方向の向きを逆にした場合に、図4Aで下側の貫通孔43bが上側になってカム軸96を嵌合でき、図4Aで上側の貫通孔43aが下側となって栓102を取り付け可能となっている。
【0045】
なお、操作レバー34,36とブレーキアーム95とをリンク機構で結合せずに、操作レバー34,36が駐車ブレーキ位置に操作されたことを操作レバー34,36の周辺部に設けた駐車位置センサで検出し、駐車位置センサの検出信号を制御装置に出力する構成としてもよい。制御装置は、操作レバー34,36が駐車ブレーキ位置に操作されたことを表す検出信号が入力されたときに、電動アクチュエータを作動させ、電動アクチュエータにケーブルで接続されたブレーキアーム95の先端部を、図4Bの矢印Q方向に移動して、ブレーキ装置90を制動状態とする。この構成によれば、リンク機構を省略できるので、ブレーキ装置90の軽量化と小型化を図れる。
【0046】
また、ステアリングハンドルを旋回指示具として使用し、ブレーキペダルを制動指示具として使用し、運転者に操作可能な駐車レバーを設けた構成において、駐車レバーの操作でリンク機構または電動アクチュエータを作動させ、それによって、ブレーキ装置90を制動状態とする構成としてもよい。また、この構成で、ブレーキペダルを操作したときにリンク機構または電動アクチュエータの作動によって、ブレーキ装置90を制動状態とする構成としてもよい。
【0047】
図5は、図2BのE-E断面図である。歯車機構80を構成する中間歯車81は、中心孔が中間軸82の外周面にスプライン係合して固定されている。トランスミッションケース42の第1ケース43において、中間軸82の上側と下側とには、上下方向に貫通する2つの貫通孔43c、43dが形成される。上側の貫通孔43cにはエアブリーザ装置105が貫通して取り付けられる。エアブリーザ装置105は、水等の液体や塵等が上側から侵入することを防止すると共に、ギヤ室S1の内部の空気をトランスミッションケース42の外部と吸排可能とするために設けられる。ギヤ室S1の内圧が上昇すると、エアブリーザ装置105を通じてトランスミッションケース42の外側に空気が排出されることで内圧の過度な上昇を防止できる。下側の貫通孔43dは、栓106によって塞がれる。2つの貫通孔43c、43dの形状は同じであり、トランスミッションケース42の上下方向の向きを逆にした場合には、図5で下側の貫通孔43dが上側になってエアブリーザ装置105を装着でき、図5で上側の貫通孔43cが下側となって栓106を取り付け可能となっている。なお、前記カム軸96の軸径とエアブリーザ装置105の基部とを同サイズにしておくことにより栓102と栓106は部品共用できる。
【0048】
上記の動力伝達ユニット41,71によれば、入力軸72の歯車機構80側にブレーキロータ91が相対回転不能に設けられる。この場合には、入力軸72の回転速度が出力軸の回転速度より高いので、ブレーキロータ91を制動するのに必要となる制動トルクが低くなる。これにより、ブレーキ容量を小さくできるので、ブレーキ装置90を作動させるための操作力を小さくできる。このため、操作レバー34,36等によりブレーキ装置90を操作する運転者にかかる負担を小さくできる。また、電動アクチュエータの作動によってブレーキ装置を制動状態とする構成の場合には、電動アクチュエータを小型化できる。
【0049】
さらに、入力軸72はモータロータ74が外周面に固定されるモータ軸であり、入力軸72の歯車機構80側に歯車機構80の中間歯車81が噛み合う入力軸歯車部73が直接に形成されている。さらに、ブレーキロータ91の中心孔に形成された雌スプライン部91aが、入力軸歯車部73に噛み合って、ブレーキロータ91が入力軸72に嵌合される。これにより、モータ軸と入力軸とを異なる2部材として、互いに継手を介して接続する必要がないので、軸方向についての動力伝達ユニット41,71の長さを小さくできる。さらにモータ軸と入力軸とを異なる2部材とする場合と異なり、部品点数を少なくできると共に、部品の組付け工数低減により製造コストを低減できる。さらに、入力軸72の入力軸歯車部73を小径化できるので、動力伝達ユニット41,71全体を小型化できる。さらに、入力軸歯車部73にブレーキロータ91を相対回転不能に篏合すると共に、入力軸歯車部73に歯車機構80の中間歯車が噛み合っているので、入力軸72の加工工数を低減できると共に、入力軸72の形状を単純化できることにより、入力軸72の強度を高くできる。
【0050】
さらに、トランスミッションケース42の第1ケース43は、内側にモータ70が配置されるモータケース部44を有する。また、第1ケース43の歯車機構80側の部分であるギヤケース部46とモータケース部44とは、互いを仕切る壁としての中間壁48を共通とする。これにより、第1ケースとモータケースとが異なる2部材である場合と異なり、第1ケースとモータケースとの対向する端部にそれぞれの壁が形成されて動力伝達ユニットの軸方向の全長が大きくなることを防止できる。さらに、それぞれの壁と入力軸及びモータ軸との間に設けられる2つの軸受及び2つの油のシールをそれぞれ1つの軸受50aとシール51とに少なくできるので、軽量化及びコストの低減を図れる。さらに、異なる2部材の第1ケースとモータケースとを結合する場合に生じるケース間の不可避な微小隙間をなくせることによって、モータ70からの熱がトランスミッションケース42に伝達されやすくなり、放熱部を大きくできるので、モータ70の冷却性能を向上できる。
【0051】
(実施形態の別例の第1例)
図6から図9は、実施形態の別例の動力伝達ユニット41aを示している。図6は、右側の車輪24についての別例の動力伝達ユニット41aにおいて、一部を省略して示す斜視図である。図7Aは、図6のF-F断面図である。図7Bは、図7Aの後側部分の拡大図である。以下、右の動力伝達ユニット41aを中心に説明するが、左の動力伝達ユニット71a(図8)の構造は、右の動力伝達ユニット41aの構造と、車両幅方向中央に関し対称である。
【0052】
本例の構成では、図1図5の構成と異なり、入力軸72(図7A)にはブレーキロータが嵌合されていない。その代わりに本例の構成では、中間軸82に多板式のブレーキロータ110が相対回転不能に嵌合される。ブレーキ装置90aは、ブレーキロータ110と、制動力発生部92とにより構成される。具体的には、図7A図7Bに示すように、中間軸82の外周面に直接形成された中間軸歯車部83に、ブレーキロータ110を形成する複数枚のロータプレート111の中心孔に形成された雌スプライン部111aが噛み合って相対回転不能に篏合されている。ロータプレート111は、中間軸歯車部83に対し若干の軸方向の摺動が可能である。これにより、中間軸82にブレーキロータ110が相対回転不能に設けられる。複数枚のロータプレート111の間には、トランスミッションケース42に軸方向に移動可能に支持された後述の固定側プレート112が配置される。このとき、中間軸82の回転速度が入力軸72の回転速度より低いので必要となる制動トルクが大きくなるが、ブレーキロータ110が多板式であるのでブレーキロータ110とブレーキロータ110に摩擦力を加える押圧部との接触面積を大きくできる。このため、ブレーキ装置90aを作動させるための操作力を小さくしながら、必要なブレーキ容量を確保できる。なお、図6では図示の簡略化のために、ロータプレート111及び固定側プレート112をそれぞれ1つのみ示している。
【0053】
さらに、中間軸82は、入力軸72より回転速度が低いので、ブレーキロータ110が中間軸82に相対回転不能に嵌合されることで、ブレーキロータ110を入力軸72に設ける場合と異なり、ブレーキロータ110によるトランスミッションケース42内の油の引き摺り抵抗を小さくできる。これによりモータ70の駆動力の損失を低減できる。
【0054】
さらに、後述の図8に示すように、歯車機構80を形成する中間歯車81が、ブレーキロータ110を形成する複数枚のロータプレートのうち、1枚のロータプレートとして用いられる。他のロータプレート111は、ブレーキロータ110専用である。ブレーキパッド94と、ブレーキシュー93との間には、ブレーキシュー93に近い側から、中間歯車81、ロータプレート111、固定側プレート112、ロータプレート111、固定側プレート112、ロータプレート111が順に配置される。固定側プレート112は、上端部に軸方向に貫通する貫通孔が設けられた上端突部113が形成される。上端突部113の貫通孔には、トランスミッションケース42の第2ケース53の内面から軸方向に突出する固定ピン114が摺動可能に貫通している。これにより、カム軸96が制動状態となるように回転した場合には、ブレーキシュー93とブレーキパッド94とでロータプレート111、固定側プレート112、中間歯車81が挟まれて、ブレーキロータ110及び車輪24を回転停止させる。このため、ギヤ室S1の容積を過度に大きくすることなく、中間歯車81と複数のロータプレート111とによって摩擦面積を大きくできるので、ブレーキ容量を大きくできる。さらに、中間歯車81をロータプレートとして使用する分、ブレーキロータ110専用のロータプレート111の枚数を少なくできるので、部品点数を少なくできる。
【0055】
図8は、左右2つの車輪24についての図7BのI-I断面に対応する図である。本例の構成では、図4Aの構成と異なり、第1ケース43において中間軸82と前後方向Xについて一致する位置の上端部には、カム軸96を嵌合する貫通孔43cが設けられる。さらに、図8の構成では、第1ケース43の中間軸82に関して、カム軸96が嵌合する上側の貫通孔43cと反対側の下端部には下側の貫通孔43dが形成され、その貫通孔43dが栓102で塞がれている。2つの貫通孔43c、43dの形状は同じであり、トランスミッションケース42の上下方向の向きを逆にした場合に、図8で下側の貫通孔43dが上側になってカム軸96を嵌合でき、図8で上側の貫通孔43cが下側となって栓102を取り付け可能となっている。
【0056】
図9は、図7BのJ-J断面図である。トランスミッションケース42の第1ケース43において、入力軸72の上側と下側とには、上下方向に貫通する2つの貫通孔43e、43fが形成される。上側の貫通孔43eにはエアブリーザ装置105が貫通して取り付けられる。エアブリーザ装置105は、水等の液体や塵等が上側から侵入することを防止すると共に、ギヤ室S1の内部の空気をトランスミッションケース42の外部と吸排可能とするために設けられる。ギヤ室S1の内圧が上昇すると、エアブリーザ装置105を通じてトランスミッションケース42の外側に空気が排出されることで内圧の過度な上昇を防止できる。下側の貫通孔43fは、栓106によって塞がれる。2つの貫通孔43e、43fの形状は同じであり、トランスミッションケース42の上下方向の向きを逆にした場合には、図9で下側の貫通孔43fが上側になってエアブリーザ装置105を装着でき、図9で上側の貫通孔43eが下側となって栓106を取り付け可能となっている。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【符号の説明】
【0057】
10 車両、18,20 キャスタ輪、24 車輪、41 動力伝達ユニット、42,42a,42b トランスミッションンケース、60 出力軸、70 モータ、72 入力軸、80 歯車機構、82 中間軸、90,90a ブレーキ装置、91 ブレーキロータ、110 ブレーキロータ。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9