(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013135
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】生海苔異物分離装置
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20220111BHJP
【FI】
A23L17/60 103C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115496
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】391008294
【氏名又は名称】フルタ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】古田 成広
(72)【発明者】
【氏名】鰐部 幸政
(72)【発明者】
【氏名】山内 宏則
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光司
【テーマコード(参考)】
4B019
【Fターム(参考)】
4B019LT04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スリットの詰りがなく、かつ回転板を可変調整する必要性がなく、スリットからの異物吸込みを極力少なくした生海苔異物分離装置の提供。
【解決手段】生海苔異物分離装置における生海苔吸込み口となるスリットと、このスリットの対峙面の一方端面、又は双方端面に設けた鏡面と、を備える構成であり、鏡面により、少なくとも、シーズン中は、スリットの調整を無くすか、又は調整可能で生海苔の異物除去を可能とした生海苔異物分離装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生海苔異物分離装置における生海苔吸込み口となるスリットと、
このスリットの対峙面の一方端面、又は双方端面に設けた鏡面と、
を備える構成であり、
前記鏡面により、少なくとも、シーズン中は、前記スリットの調整を無くすか、又は調整可能で生海苔の異物除去を可能とした生海苔異物分離装置。
【請求項2】
前記スリットは、前記生海苔異物分離装置が備える回転板に設けた外周端面と、前記生海苔異物分離装置が備える選別ケーシングに設けた内周端面で形成された隙間とする構成とした請求項1に記載の生海苔異物分離装置。
【請求項3】
前記回転板(インペラ)は、前記回転板の基軸である回転軸方向に可動可能として、前記スリットの前記隙間を調整可能な構成とした請求項2に記載の生海苔異物分離装置。
【請求項4】
前記回転板(インペラ)は、前記回転軸に固定可能である、又は前記生海苔の大小・厚み、滑らか度合、及び/又は、前記異物の大小、この異物の混合量の何れかの状況下で、前記回転板は、前記回転軸を基軸として移動し、移動位置で固定可能とする、請求項2、又は請求項3に記載の生海苔異物分離装置。
【請求項5】
前記鏡面は、研磨加工と、ペーパ加工、バフ加工、又は表面加工、の中から、何れかを選択して加工する構成とした請求項1から4のいずれか一項に記載の生海苔異物分離装置。
【請求項6】
前記スリットは、隙間ゲージでの寸法により、0.06mm~0.15mmを確保する構成とした請求項1から5のいずれか一項に記載の生海苔異物分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来、生海苔異物分離装置では、選別ケーシング内の生海苔を、スリットから、順次、かつ確実に吸込み、異物の吸込みを無くすことを、最大の目標とする。しかしながら、生海苔は、自然の生物であるとともに、種々の異物が付着し、かつ近年、海洋汚染が進むことから、異物が増えている状況である。そして、市場では、異物が混在、添着する乾海苔は二等品であって、市場価値を損ねる。そこで、本発明では、生海苔混合液中より、異物が含まれない、生海苔の吸込みを図り、良質な乾海苔を製造できる、選別された生海苔を次の工程に供給できる、生海苔異物分離装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来は、スリットの対峙面を、面加工でする構成であり、生海苔の詰り、及び/又は、吸込み量の減少等が発生した暁には、スリットの隙間を拡大する手法が採用されている。この手法では、詰り等の解消が図れる反面で、異物が通過する(吸込まれる)ことが発生し易く、品質の劣化とクレーム発生の蓋然性が大きい。
【0003】
この詰り等の解消を意図し、本出願人は、スリットの対峙面を、鏡面とする手法を考え、種々の工夫をした。その結果として、鏡面の条件設定が、略、確定したことに鑑み、ここに、特許出願をし、請求項1~6を提案する運びとなった。
【0004】
そこで、生海苔異物分離装置における鏡面の言葉が開示されている文献を調査した結果、本出願人が取得する特許第3295381号公報に記載がある。すなわち、「僅かなクリアランスでの生海苔の詰りを解消する目的で、前記先行技術発明等は、回転板及び/又は選別ケーシング(以下、原則として回転板等とする。)の外面又は内面を鏡面又は鏡面に近い滑面とし、当該回転板等への生海苔の密着(付着)防止を図っている。」とある。
【0005】
この文献は、滑面であり、一つの考えである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、これまでの概念にとらわれず、生海苔の滑りを有効利用する考えを基に、スリットの対峙面(回転板に設けた外周端面と、選別ケーシングに設けた内周端面、即ち、回転板外周端面と、選別ケーシング内周端面)を、鏡面にする手法を考え、某製造所における実験を踏まえて、次のような鏡面条件を導き出したので、以下、順に、説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実験に至る前に、例えば、今年の異物分離装置では、回転板外周端面に、縦溝(超微細なスリット)を入れることで、選別ケーシング(選別ケースリング付き構造も含む)の真空状態を無くす。即ち、スリットにより、詰り防止を回避する手段が採用されていた。この考えは、有効でなく、相変わらず、詰り現象が繰り返されている。
【0009】
さらに、従来の回転板を、軸方向上下動の可変調整により、詰り解消を図る方法は、一面では有効である。しかし、同時に、異物も吸込むこととなり、品質劣化の要因となる課題がある。
【0010】
この課題を解消するのが、本発明の鏡面を備えた、回転板、及び/又は、選別ケースリング等の生海苔異物分離装置であり、その特徴を、下記で詳述する。
1) スリットの詰りがなく、かつ回転板を、軸方向上下動の可変調整する必要性がなくなり、併せて、スリットから異物を吸込むことがなくなり、品質向上が期待できる。
2) スリットの可変調整がなくなり、生海苔の吸込み、及び/又は、異物の吸込み拒否に対する隙間精度を固定できることと、可変調整にかかる手間と、その可変調整に気を遣うこともなくなり、重宝する。
3) 回転板、及び/又は、チップ・選別ケースリング(・選別ケーシング)等の可変調整は、シーズン終わりに、磨り減った分を、次年度調整とすればこと足り、利便性の確保と、かつ、回転板、及び/又は、チップなどの磨り減りも少なく、回転板、及び/又は、チップ・選別ケースリングの寿命は長くなる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、
生海苔異物分離装置における生海苔吸込み口となるスリットと、
スリットの対峙面の一方端面、又は双方端面に設けた鏡面と、
を備える構成であり、
鏡面により、少なくとも、シーズン中は、スリットの調整を無くすか、又は調整可能で生海苔の異物除去を可能とした生海苔異物分離装置であり、
前述した、1)~3)の効果が可能となった。
【0012】
請求項2の発明は、
スリットは、生海苔異物分離装置が備える回転板に設けた外周端面と、生海苔異物分離装置が備える選別ケーシングに設けた内周端面で形成された隙間とする構成とした生海苔異物分離装置であり、
前述した、1)~3)の効果が可能となり、かつスリットの形態の最適化に有益である。
【0013】
請求項3の発明は、
回転板(インペラ)は、回転板の基軸である回転軸方向に可動可能として、スリットの隙間を調整可能な構成とした生海苔異物分離装置であり、
前述した、1)~3)の効果が可能となり、かつ回転板の形態の最適化に有益である。
【0014】
請求項4の発明は、
回転板(インペラ)は、回転軸に固定可能であり、又は生海苔の大小・厚み、滑らか度合、及び/又は、異物の大小、異物の混合量の何れかの状況下で、回転板は、回転軸を基軸として移動し、移動位置で固定可能とする生海苔異物分離装置であり、
前述した、1)~3)の効果が可能となり、かつ回転板の機構の最適化に有益である。
【0015】
請求項5の発明は、
鏡面は、研磨加工と、ペーパ加工、バフ加工、又は表面加工(表面処理)、の中から、何れかを選択して加工する構成とした請求項1に記載の生海苔異物分離装置であり、
前述した、1)~3)の効果が可能となり、かつ鏡面の形態の最適化に有益である。
【0016】
請求項6の発明は、
スリットは、隙間ゲージでの寸法がにより、0.06mm~0.15mmを確保する構成とした生海苔異物分離装置であり、
前述した、1)~3)の効果が可能となり、かつスリットの形態の最適化に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】生海苔異物分離装置の一例と、関連装置の一部を示した縮尺模式図
【
図2】生海苔異物分離装置の要部の拡大断面図、回転板及び選別ケースリング付きの選別ケーシングを拡大して示した図
【
図3】回転板外周端面及び選別ケーシング内周端面の面粗度を示したものであり、研磨加工の後にバフ加工をした状態の、共通の図面代用顕微鏡写真
【
図4】
図3に示した面粗度の端面を製造する際において、条件設定の複数例と図面代用顕微鏡写真
【
図5】回転板外周端面と、選別ケーシング内周端面のそれぞれの形態を示した拡大断面図であり、(イ)~(ハ)は出願済で、(ニ)は新規分であり拡大図
【
図5-1】回転板に調整式プレートリングを載架した前記
図5の(ニ)の縮尺全体図
【
図6-1】他の生海苔異物分離装置の一例と、関連装置の一部を示した分解図
【
図6-2】回転板外周端面と、選別ケーシング内周端面のそれぞれの他の形態を示した拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例に関する構成を順に説明するが、好ましい、一例であり、この説明とか図面に限定されず、本発明の考えと、概念が符合するものは、本発明の範疇である。
【0019】
図1~
図4は、生海苔異物分離装置(異物分離装置)の一例であり、これらの図に限定されない。但し、理解を容易にするために、生海苔異物分離装置1を基に説明する。そして、スリットを通る生海苔の通りをスムースにする。そのための手段は、後述する、スリットを形成する対峙面の双方端面(又は一方端面)に、研磨加工と、ペーパ加工、バフ加工、又は表面加工の中から、選択された加工を行い、鏡面に仕上げる。この鏡面効果は、生海苔の通り確保、及び/又は、生海苔の滑り確保である。
【0020】
スリットを形成する対峙面を鏡面に仕上げる生海苔異物分離装置1としては、
図1~
図5に示した第1例(一部共通、鏡面に関し)があって、この生海苔異物分離装置1は、生海苔混合液Aをプールする上方開放部を備えた、生海苔混合液槽2と、この生海苔混合液槽2に設けた、上方開放部を備えた、例えば、壺形、瓶形、或いは椀形を呈する選別ケーシング3と、この選別ケーシング3の内底面300より上方に立設した外周壁301に架承した内周端面500を備えた環状形状の選別ケースリング5と、前記選別ケーシング3の内底面300に設けた生海苔吸込み口6と、前記内周端面500との間に間隔(スリット8)を形成する外周端面700を備え、かつ前記上方開放部に設けられるとともに、前記選別ケーシング3に回転自在に支持される回転板7と、この回転板7を支持する、選別ケーシング3の内底面300より垂架した回転軸9と、この回転軸9を支持する選別ケーシング3の中央302に設けた軸受け10と、この回転軸9を回転するモータ11と、で構成されている。
【0021】
前記外周端面700と、前記内周端面500は、原則として、共に(双方端面)鏡面700a、500aを備える。この鏡面700a、500aを加工する手法は、外周端面700と、内周端面500に、図示しないが、加工機による研磨加工をする。写真(イ)は、回転板7、及び/又は、選別ケースリング5の研磨後を、写真(ロ)は、ペーパ加工後、写真(ハ)は、バフ加工後を、それぞれ示している。尚、鏡面700a、500aの面粗度は、シーズン終了後に修理し、修理不可能の状態では、回転板7、及び/又は、選別ケースリング5を交換する。
【0022】
そして、
図4は、実験データによる、鏡面700a、500aの面粗度を示したものであって、一例として、数種類の各例を示しているが、現場の現状であり、今後、この数種類の各例を参考とし、更に研究することを視野に入れている。
1.ペーパ掛け♯400
2.ペーパ掛け♯600
3.ペーパ掛け♯600+バフ粉仕上げ
4.ペーパ掛け♯600+♯2000+バフ粉仕上げ
【0023】
尚、
図5(ハ)は、選別ケースリング5を備えない構造であり、(ニ)は、回転板7に調整式プレートリング7-1を載架した構造で、この調整式プレートリング7-1の外周端面701に鏡面701aを形成する。尚、
図1~
図5においては、回転板7、調整式プレートリング7-1は、図面において、上下動するが限定されない。
【0024】
そして、スリット8は、図示しないが、隙間ゲージでの寸法により、0.06mm~0.15mmを確保するが、0.05mm~0.2mmに拡充することも可能である。即ち、生海苔状況と、異物等の混ざり割合等を考慮して、適正値を確保する。
【0025】
尚、回転板7の上下方向の移動は、経験則と、隙間ゲージ、各種の器具、等を用意する必要があって、ことのほか大変であること、及び/又は、時間を要すること等の問題を抱えている。しかし、本発明では、原則として、これらの経験と手間を要せず重宝する。
【0026】
図6~
図6-2は、別の生海苔異物分離装置1-1を示しており、
図1~
図5の生海苔異物分離装置1との相違点は、環状溝100(選別ケーシング3に相当する)と、この環状溝100に嵌め合い関係となる環状突起101(回転板7に相当する)でなる構造であって、スリット8、外周端面701の鏡面701a、内周端面500の鏡面500a等の考えは、共通する。また、他の構造は、共通する。
【0027】
尚、鏡面700a、500aの面粗度は、例えば、生海苔の滑りと関係が深く、この滑りを確保するために、塩分調整も有効である。よって、経験を含め、塩分センサとそれに関する機器等を配備する。また、鏡面700a、500aの面粗度は、内周端面500、及び/又は、外周端面700の摩耗とも、密接な関係を有しており、例えば、摩耗の減少が少なくなり(回転板等の寿命が長くなり)、修理とか交換頻度の減少化に有効であり、管理と経済面での有利性が確保される。
【0028】
本発明では、図示しない吸込みポンプを利用し、生海苔を、スリット8より選別ケーシング3内に吸込む。その際に、鏡面700a、500aに誘導されるように(面に摩擦を与えることなく、即ち、面接触状態でなく、滑るように)流れる。従って、鏡面700a、500aの摩耗もなく、かつ共回りすることなく、スムースに吸込まれる。また、吸込み量確保に関しても、極めて、有効である。鏡面700a、500aの横筋発生も皆無である。
【0029】
図中12は、回転板7の外周端面700に敷設したチップである。
【0030】
以上で説明した実施例の一例は、好ましい各例を示したものであり、同様な効果と特徴を有する他の構造、手段は、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0031】
1 生海苔異物分離装置
1-1 生海苔異物分離装置
100 環状溝
101 環状突起
2 生海苔混合液槽
3 選別ケーシング
300 内底面
301 外周壁
302 中央
5 選別ケースリング
500 内周端面
500a 鏡面
6 生海苔吸込み口
7 回転板
700 外周端面
700a 鏡面
7-1 調整式プレートリング
701 外周端面
701a 鏡面
8 スリット
9 回転軸
10 軸受け
11 モータ
12 チップ
A 生海苔混合液