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特開2022-131350空気調和機制御装置、空気調和機、制御方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131350
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】空気調和機制御装置、空気調和機、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/47 20180101AFI20220831BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20220831BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20220831BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20220831BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20220831BHJP
   F24F 11/56 20180101ALI20220831BHJP
   F24F 11/41 20180101ALI20220831BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20220831BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220831BHJP
   F24F 140/60 20180101ALN20220831BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20220831BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20220831BHJP
【FI】
F24F11/47
F24F11/64
F24F11/46
F24F11/61
F24F11/86
F24F11/56
F24F11/41 240
F24F11/80
F25B1/00 371Z
F24F140:60
F24F140:00
F24F110:10
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030252
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤平 達
(72)【発明者】
【氏名】小坂 忠義
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA42
3L260BA64
3L260CA12
3L260CB04
3L260CB78
3L260EA02
3L260EA03
3L260EA07
3L260EA12
3L260EA13
3L260FA03
3L260FA14
3L260FB02
3L260HA06
3L260JA12
(57)【要約】
【課題】消費電力の調整が行われる期間における空気調和機の消費電力の平均値を下がりすぎないように調整する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】単位調整期間における空気調和機又は前記空気調和機に含まれる圧縮機の消費電力の平均値が、下限設定値よりも上の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位調整期間における空気調和機又は前記空気調和機に含まれる圧縮機の消費電力の平均値が、下限設定値よりも上の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する運転制御部を備える空気調和機制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記単位調整期間における前記空気調和機又は前記圧縮機の消費電力の平均値が、上限設定値よりも下の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する請求項1に記載の空気調和機制御装置。
【請求項3】
前記単位調整期間は、電力需給調整型デマンドレスポンスサービスにおいて要求される、消費電力の調整が行われる単位期間であり、
前記上限設定値及び前記下限設定値は、前記電力需給調整型デマンドレスポンスサービスにおいて要求された目標消費電力に基づいて、定まる値である、請求項2に記載の空気調和機制御装置。
【請求項4】
前記単位調整期間における前記圧縮機の運転周波数の平均値の目標値である目標平均周波数を取得する取得部を更に備え、
前記運転制御部は、前記単位調整期間における前記圧縮機の平均の運転周波数を、前記目標平均周波数に合わせるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する請求項1乃至3の何れか1項に記載の空気調和機制御装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記単位調整期間における前記圧縮機の目標の消費電力に基づいて、前記目標平均周波数を導出することで前記目標平均周波数を取得する請求項4に記載の空気調和機制御装置。
【請求項6】
前記運転制御部は、前記単位調整期間において、前記空気調和機の保護制御が予定される場合、前記調整期間における一部の期間において前記保護制御に応じた運転周波数で前記圧縮機の運転を行い、かつ、前記単位調整期間における平均の運転周波数を前記目標平均周波数に合わせるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する調整保護制御を実行する請求項4又は5に記載の空気調和機制御装置。
【請求項7】
前記運転制御部は、平均の運転周波数を前記目標平均周波数に合わせるように、前記調整期間における前記一部の期間と異なる期間において前記圧縮機の運転周波数を前記目標平均周波数よりも下げる制御を行う請求項6に記載の空気調和機制御装置。
【請求項8】
前記運転制御部は、平均の運転周波数を前記目標平均周波数に合わせるように、前記調整期間における前記一部の期間と異なる期間において前記圧縮機を停止させる制御を行う請求項6に記載の空気調和機制御装置。
【請求項9】
前記運転制御部は、
前記目標平均周波数が前記圧縮機の運転周波数の下限閾値以上の場合に、前記単位調整期間における平均の運転周波数を前記目標平均周波数に合わせるように、前記調整期間における前記一部の期間以外の期間において前記圧縮機の運転周波数を前記目標平均周波数よりも下げる制御を行い、
前記目標平均周波数が前記下限閾値未満の場合に、前記単位調整期間における平均の運転周波数を前記目標平均周波数に合わせるように、前記調整期間における前記一部の期間以外の期間において前記圧縮機を停止させる制御を行う、請求項6に記載の空気調和機制御装置。
【請求項10】
前記下限閾値は、前記単位調整期間のうち前記保護制御にかかる期間、前記圧縮機の運転周波数を前記保護制御に対応する周波数にし、前記単位調整期間のうち、前記保護制御に係る前記一部の期間の残りの期間、前記圧縮機の運転周波数を前記圧縮機に設定可能な最低の値にした場合における前記圧縮機の平均の運転周波数以上の値である請求項9に記載の空気調和機制御装置。
【請求項11】
前記運転制御部は、
予め設定された時間間隔で予定される前記保護制御のタイミングが前記単位調整期間に含まれる場合に、前記単位調整期間において前記調整保護制御の実行を予定する請求項6乃至10の何れか1項に記載の空気調和機制御装置。
【請求項12】
前記保護制御のタイミングを予測する予測部をさらに備え、
前記運転制御部は、前記予測部により予測された前記保護制御のタイミングが前記単位調整期間に含まれる場合に、前記単位調整期間において、前記調整保護制御の実行を予定する請求項6乃至10の何れか1項に記載の空気調和機制御装置。
【請求項13】
前記運転制御部は、前記空気調和機の設定温度と前記空気調和機が設置された被空調空間の温度と前記圧縮機の運転周波数との履歴情報に基づいて学習された、前記空気調和機の設定温度と前記被空調空間の温度との差分から前記圧縮機の運転周波数を導出するためのパラメータに基づいて、前記空気調和機の設定温度、又は、前記圧縮機の運転のオン・オフを制御することで、前記圧縮機の運転周波数を制御する請求項1乃至12の何れか1項に記載の空気調和機制御装置。
【請求項14】
前記空気調和機は、複数の室内機を備え、
前記運転制御部は、前記複数の室内機におけるユーザの快適性の度合を示す既定の評価値を最大化するように、前記圧縮機の運転周波数を制御する請求項1乃至13何れか1項に記載の空気調和機制御装置。
【請求項15】
前記運転制御部は、前記複数の室内機における前記評価値を最大化するように、前記複数の室内機の設定温度、又は、前記圧縮機の運転のオン・オフを制御することで、複数の前記空気調和機の前記圧縮機それぞれの運転周波数を制御する請求項14に記載の空気調和機制御装置。
【請求項16】
前記空気調和機制御装置は、ネットワークを介して前記空気調和機と通信可能であり、
前記運転制御部は、前記圧縮機の運転周波数を遠隔で制御する請求項1乃至15の何れか1項に記載の空気調和機制御装置。
【請求項17】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の前記空気調和機制御装置と、前記圧縮機と、を備えた空気調和機。
【請求項18】
空気調和機の制御方法であって、
単位調整期間における前記空気調和機又は前記空気調和機に含まれる圧縮機の消費電力の平均値が、下限設定値よりも上の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する制御方法。
【請求項19】
コンピュータを、
単位調整期間における空気調和機又は前記空気調和機に含まれる圧縮機の消費電力の平均値が、下限設定値よりも上の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する運転制御部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機制御装置、空気調和機、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の需要と供給のバランスをとるため、供給側の要請に応じて需要家側で消費電力の調整を行うデマンドレスポンス(以下、DR)が行われている。空気調和機をDRに対応させるため、空気調和機における冷媒の圧縮機の保護制御を実行するタイミングを変更する技術がある。特許文献1には、「電力料金スケジュール情報に基づいて、電力料金単価が高額な時間帯を避け、より低額な時間帯に油戻し制御を実行するように制御する。」構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-65346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、発電量の調整が難しい太陽光発電等の再生可能エネルギーが増えており、電力供給に対する需要の均衡化により系統の安定運用を図る電力需給調整型DR等のように消費電力の調整要請が行われる場合がある。例えば、電力需給調整型DRでは、需要側が系統運用者からの消費電力の調整指示に応じて、一定の期間において、一定の精度(例えば±10%)で消費電力を維持することが要求される。このように、消費電力の調整要請が行われる場合、空気調和機における消費電力量が下がりすぎないことが求められる場合がある。例えば、電力需給調整型DRでは、消費電力の評価は、所定期間(例えば5分)毎の消費電力の平均値に基づいて行われる。すなわち、電力需給調整型DRでは、所定期間毎の消費電力の平均値が一定の精度で維持されるよう調整される。また、所定期間における消費電力の平均値に所定期間を乗ずることで所定期間の消費電力量となる。そのため、電力需給調整型DRでは、所定期間毎の消費電力量が一定の精度で維持されるよう調整されるともいえる。
特許文献1等の先行技術では、保護制御のタイミングを、電力料金型DRにおける電力料金単価の高い時間帯から変更(先延ばし)することによって電力料金最適化を行うが、一定の期間における空気調和機の消費電力量を下がりすぎないように調整できなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、消費電力の調整が行われる期間における空気調和機の消費電力の平均値を下がりすぎないように調整する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気調和機制御装置であって、単位調整期間における前記空気調和機又は前記空気調和機に含まれる圧縮機の消費電力の平均値が、下限設定値よりも上の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する運転制御部を備える。
【0007】
本発明の他の形態は、制御方法であって、単位調整期間における空気調和機又は前記空気調和機に含まれる圧縮機の消費電力の平均値が、下限設定値よりも上の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する。
【0008】
本発明の他の形態は、プログラムであって、コンピュータを、単位調整期間における空気調和機又は前記空気調和機に含まれる圧縮機の消費電力の平均値が、下限設定値よりも上の値になるように、前記圧縮機の運転周波数を制御する運転制御部として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、消費電力の調整要請に応じた消費電力の調整が行われる期間における空気調和機の消費電力の平均値を下がりすぎないように調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る空気調和システムの構成図である。
図2】DRにおける消費電力の調整の概要を説明する図である。
図3A】保護制御の際の運転周波数を説明する図である。
図3B】保護制御の際の消費電力を説明する図である。
図4】室外制御装置の構成図である。
図5】DRパラメータのデータ構成例を示す図である。
図6】実施形態1に係る圧縮機の制御処理を示すフローチャートである。
図7】保護制御パラメータのデータ構成例を示す図である。
図8】第1の制御における運転周波数を示す図である。
図9】第2の制御における運転周波数を示す図である。
図10】第1の制御、第2の制御で実現可能な目標平均周波数を示す図である。
図11】調整保護制御の処理を示すフローチャートである。
図12A】調整制御の際の運転周波数を説明する図である。
図12B】調整制御の際の消費電力を説明する図である。
図13】実施形態2に係る空気調和システムの構成図である。
図14】空気調和機制御装置の構成図である。
図15】実施形態2に係る圧縮機の制御処理を示すフローチャートである。
図16】設定温度決定処理を示すフローチャートである。
図17】組合せデータのデータ構成例を示す図である。
図18】組合せデータと運転周波数との対応例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1は、第1実施形態に係る空気調和システム1の全体構成図である。空気調和システム1は、空気調和機10、空気調和機10とゲートウェイ140を介して接続されたDRサーバ装置180を含む。空気調和機10は、室外機11と室内機12とを有している。図1においては、1つの室内機12のみを示しているが、空気調和機10は、複数の室内機12を有するものとする。なお、他の例としては、空気調和機10は、1つの室内機12を有することとしてもよい。
【0012】
室内機12は、被空調空間である室内の天井等に設置され、室内の空調を行う。室外機11と室内機12とは、冷媒配管150及び通信網160を介して接続されている。また、各室内機12には、例えば赤外線などでリモコン130が接続される。また、空気調和機10は、通信網160を介して、空気調和機10をコントローラ機能や、インターネット等の外部ネットワーク170を介したDRサーバ装置180との通信を中継するためのプロトコル変換アダプタ機能等を有するゲートウェイ140と接続される。空気調和機10は、通信網160、ゲートウェイ140、外部ネットワーク170を介して、DRサーバ装置180と接続される。室外機11と室内機12との間の通信及び空気調和機10とDRサーバ装置180との間の通信は、有線でも無線でもよく、また、有線と無線との双方でもよく、例えばインターネット等のネットワークを介して行われる。
【0013】
室外機11は、室外制御装置111と、運転周波数を変更可能な圧縮機112と、室外熱交換器113と、室外ファン114と、膨張機構としての室外膨張弁115と、四路切換弁116と、センサ群117と、を備えている。センサ群117には、圧縮機112の消費電力を計測する電力センサや圧力を計測する圧力センサ、外気温度や冷媒配管温度を測定する温度センサが含まれる。なお、センサ群117は、これ以外のセンサを含んでもよい。室外制御装置111は、室外機11が備える機器を制御し、室内制御装置121と通信網160を介して通信しながら、室外機11の運転制御を行う。室外制御装置111は、空気調和機制御装置の一例である。
【0014】
室内機12は、室内制御装置121と、室内ファン122と、室内熱交換器123と、膨張機構としての室内膨張弁124と、風向きを調整する可動式のルーバー125と、室温や吹出し温度等を測定する温度センサ等を含むセンサ群126と、を備えている。室内制御装置121は、室内機12が備える機器を制御し、室外機11及びリモコン130と通信しながら、室内機12の運転制御を行う。なお、図1には所謂天井埋込型と呼ばれる本体を天井材に嵌め込んで設置するタイプの室内機12の断面図を示している。このため、室内熱交換器123が左右に記載されているが、これらは一体に形成されている。
【0015】
冷媒配管150は、圧縮機112、四路切換弁116、室外熱交換器113、室外膨張弁115、室内膨張弁124、及び室内熱交換器123を環状に接続し、空気調和機100の冷凍サイクルを構成している。四路切換弁116が冷媒を可逆的に循環させることにより、冷房運転のサイクルと暖房運転のサイクルが切換わる。
【0016】
リモコン130は、室内機12と赤外線等の専用線で接続する。リモコン130には、ユーザが空気調和機10の運転設定指示を入力するためのボタンスイッチやタッチパネル等が設けられている。ここで、運転設定指示には、設定温度、冷房又は暖房の運転の開始又は停止等の指示がある。リモコン130にはさらに、室外機11及び室内機12の機器からのエラー情報や実際の運転状態等をユーザに提示するための液晶画面等が設けられている。
【0017】
室外機11の室外制御装置111は、通信網160を介して室内機12から得たユーザの運転指示や、各種センサの測定値に基づいて、各機器の運転を制御する。具体的には、室外制御装置111は、圧縮機112の運転周波数、四路切換弁116の冷房モード接続状態と暖房モード接続状態との切換え、室外膨張弁115の開度、及び室外ファン114の回転速度を制御する。室内機12の室内制御装置121は、リモコン130からのユーザ運転指示と各種センサの測定値に基づいて、室内ファン122の回転速度を制御する。これにより、ユーザの設定した室内温度になるよう空調運転が行われる。
【0018】
本実施形態の空気調和機10は、電力需給調整型のデマンドレスポンスサービス(以下、「DRサービス」と称する)に対応した運転を行うことができる。空気調和機10は、DRサービスに対応した運転として、DRサービスにおいて要求される目標消費電力に基づいた運転を行う。
【0019】
DRサーバ装置180は、DRサービスに応じた制御の開始の指示、目標消費電力の指示(消費電力の目標値の指定、どのくらい消費電力を変動する(上げる、下げる)かを示す調整量の指定等)、さらに、DRサービスの終了の指示等を室外機11に送信する情報処理装置である。DRサーバ装置180は、通信網160に接続する室外機11及び室内機12の消費電力を取得し、評価する。
【0020】
本実施形態の室外制御装置111は、通常制御と調整制御とを行う。ここで、通常制御は、ユーザ等により設定された、運転モード(冷房モード、暖房モード等)や温度等の設定条件に従った制御、すなわち通常の空調運転の制御である。一方、調整制御は、DRサービスに応じた制御である。すなわち、調整制御は、消費電力を調整しつつ空調運転(冷暖房)を行う制御である。調整制御においては、消費電力の調整が優先されるため、設定条件を満足できない制御が行われる場合がある。本実施形態では、室外制御装置111は、DRサービスに応じた制御として、調整制御を行う。このように、調整制御は、DRサービスに応じた運転を実現するために、消費電力の調整の要請に応じて実行される制御である一方で、通常制御は、DRサービスに応じた運転を開始していない場合に実行される制御である。
【0021】
通常制御には、設定された温度になるよう空調運転を実施するための制御である通常空調制御と、保護制御を行うための通常保護制御と、が含まれる。ここで、保護制御とは、圧縮機112の保守のために行われる圧縮機112の運転周波数の制御である。本実施形態では、保護制御は、油戻し制御であるとするが、圧縮機112の運転周波数を通常制御の場合よりも上げる制御であればよく、他の例としては、除霜制御等であってもよい。
【0022】
調整制御には、調整空調制御と、調整保護制御とが含まれる。調整空調制御は、DRサービスの要求に対応すべく、消費電力が制限された範囲で、設定温度になるように空調運転を行う制御である。調整保護制御は、消費電力が制限された範囲で保護制御を実行する制御である。本実施形態においては、調整制御は、圧縮機112の運転周波数の制御とする。すなわち、調整制御においては、目標消費電力に応じて、圧縮機112の運転周波数が制限される。
【0023】
室外制御装置111は、通常制御中に、DRサーバ装置180から、DRサービスの開始指示を受けると、制御モードを通常制御から調整制御へと切換える。そして、室外制御装置111は、DRサービスの開始に応じて、DRサーバ装置180から指定された目標消費電力に応じて、調整制御を行う。さらに、室外制御装置111は、DRサービスが継続する期間が終了すると、通常制御に戻る。また、室外制御装置111は、通常制御中に保護制御のタイミングになると、保護制御として通常保護制御を行い、調整制御中に保護制御のタイミングになると、調整保護制御を行う。
【0024】
図2を用いて、DRサービス中における電力調整の概要を説明する。図2に示すグラフの横軸は時刻、縦軸は空気調和機10の消費電力を示す。図2に示す例においては、DRサービスに応じた制御が3時間行われた場合の消費電力の変化を示している。DRサービスにおいては、DRサーバ装置180から、既定の間隔(図2の例では30分)で目標消費電力が指示される。DRサービスに対応した運転では、例えば5分など一定期間における空気調和機10の消費電力の平均値が、指示された目標消費電力から既定の範囲以内(図2の例では、±10%)に収まるように電力を制御することが要求される。これに対し、室外制御装置111は、DRサービスに対応した運転中、一定期間における空気調和機10の実際の消費電力の平均値が目標消費電力になるような制御、すなわち調整制御を行う。以下、消費電力の調整対象となる単位期間を電力評価期間と称する。電力評価期間は、電力の調整が要請される単位調整期間の一例である。
【0025】
図2のグラフに示すように、空気調和機10は、DRサーバ装置180から目標消費電力が指示されると、電力評価期間における実消費電力の平均値が目標消費電力から既定の範囲内になるように、調整制御を行う。
【0026】
しかし、DRサービス中に保護制御が行われる場合、一時的に圧縮機112の運転周波数が急激に上昇してしまい消費電力が突発的に増加する。これにより、DRサービスの要求を満たすことができなくなる可能性がある。図3A及び図3Bは、保護制御による運転周波数及び消費電力の平均値の時間変化を示す図である。図3Aに示すグラフの横軸は時間、縦軸は圧縮機112の運転周波数を示す。図3Aのグラフには、運転周波数の時間変化が示されている。図3Bに示すグラフの横軸は時間、縦軸は、空気調和機10の実消費電力の平均値を示す。図3Bのグラフには、空気調和機10の電力評価期間における実消費電力の平均値の時間変化が示されている。
【0027】
油戻し制御等の保護制御が起こると、図3Aにおいて点線丸印で示すように、一時的に圧縮機112の運転周波数が上昇する。これにより、図3Bの点線の丸印に示すように、評価期間における実消費電力の平均値も上昇し、結果として消費電力量も上昇してしまい、指示された目標値から既定の誤差以内に収まらない事態が生じうる。そこで、本実施形態では、室外機11は、DRサービス中に、保護制御が予定される場合でも、DRサービスの要求を満たすような制御を、調整保護制御として実行する。
【0028】
図4は、室外制御装置111の構成を示す図である。室外制御装置111は、制御部400、記憶部410、通信部420を備える。
【0029】
制御部400は、CPU、ROM、RAM等を備え、記憶部410やROMに記憶された種々のプログラムを実行することにより、室外制御装置111の全体を制御する。記憶部410は、保護制御に用いられるパラメータである保護制御パラメータ411、調整制御に用いられるパラメータであるDRパラメータ412、室内機12と室外機11が搭載する各種センサの測定値であるセンサデータ413、リモコン5等を経由してユーザから入力された設定情報であるユーザ設定データ414等の各種データやプログラムを記憶している。通信部420は、外部の装置と通信網160を介して通信を行う。
【0030】
制御部400は、センサデータ取得部401と、運転制御部402と、圧縮機指示部403と、室外ファン指示部404と、膨張弁指示部405と、四路切換指示部406と、通信処理部407と、の機能を有している。これらの機能は、CPUがROM又は記憶部410に格納されているプログラムを読み出し、このプログラムを実行することにより実現されるものである。また、他の例としては、これらの機能の少なくとも一部は、ハードウェア回路を用いて実現されてもよい。
【0031】
センサデータ取得部401は、室外機11の各所に設置された温度センサ、圧縮機112の圧力センサ、電力センサ等の様々なセンサ16の測定値を定期的に取得して、取得した測定値のデータを、センサデータ413として記憶部410に記録する処理を行う。
【0032】
運転制御部402は、圧縮機112、室外ファン114と、室外膨張弁115、四路切換弁116等の室外機11の各要素を制御する。運転制御部402は、通常空調制御部402a、通常保護制御部402b、調整空調制御部402c、調整保護制御部402d、切換部402e、保護条件判定部402fを含む。
【0033】
通常空調制御部402aは、通常空調制御を実行する。通常保護制御部402bは、通常保護制御を実行する。本実施形態では、通常制御は、通常空調制御部402a、及び、通常保護制御部402bによる圧縮機112の制御である。
【0034】
調整空調制御部402cは、調整空調制御を実行する。調整保護制御部402dは、調整保護制御を実行する。本実施形態では、調整制御は、調整空調制御部402c、及び、調整保護制御部402dによる圧縮機112の制御である。
【0035】
切換部402eは、通常空調制御部402a、通常保護制御部402b、調整空調制御部402c、調整保護制御部402dの何れによる制御を実行するかを切換える。保護条件判定部402fは、圧縮機112の保護制御を実行するための条件である保護条件を満たしているか否かを判定する。
【0036】
圧縮機指示部403、室外ファン指示部404、膨張弁指示部405、四路切換指示部406は、運転制御部402からの指示に応じて、それぞれ、圧縮機112、室外FAN114、室外膨張弁115、四路切換弁116を駆動する。これにより、室外機11と室内機12との間の冷凍サイクルによる冷暖房が実現する。
【0037】
通信処理部407は、通信部420を介して、通信網160経由で他の機器と通信を行う。通信処理部407は、具体的には、室内機12との間の通信、ゲートウェイ140との間の通信を行う。
【0038】
通信処理部407は、室内制御装置121から送られてくる室内機12の運転情報や設定指示を通信網160の通信データの形式で受信し、データ内容を解析し記憶部410に記録する。また、通信処理部407は、運転制御部402からの指示に応じて、運転情報や設定指示の情報を、通信網160の通信データ形式で各室内機12に送信する。
【0039】
また、通信処理部407は、DRサービスに応じた運転の開始指示を行うDRサーバ装置180から、DRサービスに応じた運転の開始、終了の指示、目標電力値等をゲートウェイ140経由で受信する。そして、通信処理部407は、DRサーバ装置180から受信した各種情報のうち、調整制御に用いられるパラメータの情報を、DRパラメータ412として記憶部410に記録する。また、通信処理部407は、センサデータ413に含まれる消費電力等の情報を記憶部410から読み出し、ゲートウェイ140経由でDRサーバ装置180に送信する。
【0040】
図5は、DRパラメータ412の一例を示す図である。DRパラメータ412は、予め定められた固定的なパラメータであるDR基本パラメータ501と、DRサーバ装置180から取得したDR指令パラメータ502と、を含む。DR基本パラメータ501は、目標の消費電力に対して許される誤差範囲の情報(誤差の下限、誤差の上限)、DRサービスにおいて電力評価の基準となる単位期間である電力評価期間等を含む。また、DR指令パラメータ502は、例えば、個々の消費電力調整の指示に関する電力調整の開始時刻、継続期間、目標消費電力等を含む。本実施形態では、DR基本パラメータ501については、予め記憶部410に記録されている。制御部400は、DRサーバ装置180からDR指令パラメータを、逐次受信し、記憶部410に記録する。ただし、他の例として、DR基本パラメータ501が予め記憶部410に記録されておらず、制御部400は、DRサーバ装置180からDR基本パラメータ501を受信し、記憶部410に記録することとしてもよい。また、制御部400は、記憶部410に記録されたDR基本パラメータ501を、例えば、指定された内容で上書きしてもよい。
【0041】
図6は、室外制御装置111の制御管理処理を示すフローチャートである。室外制御装置111は、空気調和機10の電源がオンされると、制御管理処理を開始する。
【0042】
S601において、切換部402eは、記憶部410からDRパラメータ412を読み出し、DR指令パラメータ502の開始時刻を参照して、DRサービスにおける目標消費電力の指定に応じた運転期間(以下、DR期間と称する)の開始タイミングか否かを判定する。すなわち、切換部402eは、処理時刻が、DR指令パラメータ502の開始時刻であれば、DR期間の開始タイミングと判定し、処理時刻がDR指令パラメータ502の開始時刻でなければ、DR期間の開始タイミングでないと判定する。切換部402eは、開始タイミングでないと判定した場合、処理をS602に進め、開始タイミングであると判定した場合、処理をS605に進める。
【0043】
S602において、保護条件判定部402fは、記憶部410から、保護制御パラメータ411とセンサデータ413とを取得し、取得した保護制御パラメータ411とセンサデータ413とに基づいて、保護条件を満たしているか否かを判定する。保護条件とは、保護制御を行うタイミングを定めた条件である。
【0044】
図7に、保護制御パラメータ411の一例を示す。本実施形態においては、保護条件の情報は、保護制御パラメータ411として記録されている。図7の例では、保護制御パラメータ411は、油戻し運転に関するパラメータとして、油戻し制御の際の圧縮機112の運転周波数である油戻し周波数、油戻し制御の時間間隔を示す油戻しインターバル、油戻し制御が継続する期間を示す油戻し期間を含む。保護制御が行われる場合の圧縮機112の運転周波数を、保護制御周波数とする。本実施形態では、保護制御周波数は、油戻し周波数である。本実施形態では、保護制御パラメータ411において、圧縮機112の運転周波数が、油戻し周波数である31Hzを下回る状態が、油戻しインターバルの60分間継続するという条件が保護条件として定められ、さらに、保護制御の実行に関し、油戻し期間である1分間、油戻し制御を行うことが定められている。そこで、保護条件判定部402fは、センサデータ413内の圧縮機112の運転周波数を周期的に参照し、油戻し周波数31Hzを下回る状態が60分間継続した時点で保護条件が成立すると判定する。すなわち、本実施形態では、保護条件は、圧縮機112の運転周波数が油戻し周波数31Hzを下回る状態が、油戻しインターバルの期間継続することである。
【0045】
切換部402eは、保護条件判定部402fにより保護条件を満たしていないと判定された場合、通常空調制御部402aに対して通常空調制御を指示し、処理をS603に進める。また、切換部402eは、保護条件判定部402fにより保護条件を満たしていると判定された場合、通常保護制御部402bに対して通常保護制御を指示し、処理をS604に進める。
【0046】
S603において、通常空調制御部402aは、被空調空間の温度が設定された温度に近づくよう圧縮機112の運転周波数を制御する。
【0047】
S604において、通常保護制御部402bは、油戻し期間である1分間、圧縮機112の運転周波数を油戻し周波数である31Hzとするよう、圧縮機指示部403を介して、圧縮機112を制御する。その後、通常保護制御部402bは、処理をS601へ進める。
【0048】
一方、S605において、切換部402eは、DRパラメータ412のDR指令パラメータ502に記録されている、DR期間に対応した電力評価期間における目標消費電力を取得する。そして、切換部402eは、目標消費電力と、DR基本パラメータ501の消費電力誤差下限、及び、消費電力誤差上限と、に基づいて、DR期間において許容される消費電力の範囲である電力許容範囲を特定する。本実施形態の場合、切換部402eは、電力許容範囲として、目標消費電力×(1+消費電力誤差下限)=目標消費電力×0.9よりも大きく、目標消費電力×(1+消費電力誤差上限)=目標消費電力×1.1未満の範囲を特定する。目標消費電力×(1+消費電力誤差下限)は、電力需給調整型DR期間において要求された目標消費電力に基づいて、定まる値であり、下限設定値の一例である。目標消費電力×(1+消費電力誤差上限)は、電力需給調整型DR期間において要求された目標消費電力に基づいて、定まる値であり、上限設定値の一例である。本実施形態では、室外制御装置111は、電力評価期間における消費電力の平均値を、電力許容範囲内の値となるよう調整する。結果として、室外制御装置111は、電力評価期間における消費電力量を、目標消費電力×(1+消費電力誤差下限)×電力評価期間よりも大きく、目標消費電力×(1+消費電力誤差上限)×電力評価期間未満の範囲内に調整する。
【0049】
S606において、切換部402eは、S605で特定した電力許容範囲に基づいて、DR期間中の電力評価期間における圧縮機112の運転周波数の平均値の目標値(以下では、目標平均周波数と称する)を取得する。以下に、目標平均周波数を取得する処理の詳細を説明する。圧縮機112の運転周波数と、圧縮機112の消費電力とは、おおむね比例関係にある。また、空気調和機10の消費電力の大部分が圧縮機112における消費電力であるため、圧縮機112の運転周波数と空気調和機10の消費電力とについても、おおむね比例関係にある。そのため、電力許容範囲の上下限から、目標平均周波数として取りうる値の範囲(以下では、周波数許容範囲)の上下限を導出することができる。本実施形態では、切換部402eは、電力許容範囲に対応した周波数許容範囲を求める。ここで、周波数許容範囲は、電力許容範囲から許容される、圧縮機112の運転周波数の許容範囲である。切換部402eは、電力許容範囲の下限(目標消費電力×0.9)に対応する圧縮機112の運転周波数を、周波数許容範囲の下限として決定する。また、切換部402eは、電力許容範囲の上限(目標消費電力×1.1)に対応する圧縮機112の運転周波数を、周波数許容範囲の上限とする。切換部402eは、例えば、予め決定された、圧縮機112の周波数と電力評価期間における圧縮機112の消費電力との対応情報から、周波数許容範囲の上限、下限の周波数を導出することで、周波数許容範囲を特定する。
【0050】
本実施形態では、切換部402eは、特定した周波数許容範囲内の周波数のうち、設定温度から定まる圧縮機112の運転周波数に最も近い周波数を、目標平均周波数として取得する。これにより、空気調和機10は、調整空調制御として、通常空調制御により近い制御を実行でき、通常空調制御により近い空調を実現でき、ユーザの快適性をより損ねないようにできる。ただし、他の例として、切換部402eは、導出した周波数許容範囲内の中央値の周波数を目標平均周波数としてもよいし、周波数許容範囲内の任意の周波数を目標平均周波数としてもよい。また、S606の処理は、目標平均周波数を取得する取得処理の一例である。
【0051】
S607において、保護条件判定部402fは、次の電力評価期間において保護条件が満たされる可能性があるか否かを判定する。保護条件判定部402fは、処理時刻において、圧縮機112の運転周波数が油戻し運転周波数31Hzを下回る状態が(油戻しインターバル-電力評価期間)=55分間以上継続している場合、次の電力評価期間に保護条件が満たされる可能性ありと判定する。また、保護条件判定部402fは、処理時刻において、圧縮機112の運転周波数が油戻し運転周波数31Hzを下回る状態が55分間以上継続していない場合、次の電力評価期間に保護条件が満たされる可能性なしと判定する。切換部402eは、保護条件判定部402fにより次の電力評価期間に保護条件が満たされる可能性があると判定された場合、次の電力評価期間に調整保護制御が予定されるとして、調整保護制御部402dに対して次の電力評価期間における調整保護制御を指示し、処理をS609に進める。また、切換部402eは、保護条件判定部402fにより次の電力評価期間に保護条件が満たされる可能性がないと判定された場合、調整空調制御部402cに対して次の電力評価期間における調整空調制御を指示し、処理をS608に進める。室外制御装置111は、S607の処理により、DR期間中、油戻しインターバル毎に調整保護制御を実行できる。
【0052】
S608において、調整空調制御部402cは、電力評価期間中、圧縮機112の回転周波数を目標平均周波数となるように圧縮機指示部403を制御することで調整空調制御を実行する。
【0053】
S609において、調整保護制御部402dは、電力評価期間中に、保護制御(油戻し制御)を行いつつ、圧縮機112の運転周波数の平均値が、周波数許容範囲内となるように、圧縮機指示部403を介して圧縮機112を制御することで、調整保護制御を実行する。本実施形態では、調整保護制御部402dは、電力評価期間における圧縮機112の運転周波数の平均値が、目標平均周波数となるように、圧縮機112を制御する。ただし、調整保護制御部402dは、他の例として、電力評価期間における圧縮機112の運転周波数の平均値が、周波数許容範囲内の値であれば、目標平均周波数以外の値となるように、圧縮機112を制御してもよい。S609の処理の詳細については、図8~11で後述する。
【0054】
S610において、切換部402eは、DR期間が終了したか否かを判定する。より具体的には、切換部402eは、DR指令パラメータ502を参照して、処理時刻が、DR開始時刻から継続時間経過した時刻であれば、DR期間が終了したと判定する。また、切換部402eは、DR指令パラメータ502を参照して、処理時刻が、DR開始時刻から継続時間経過していない時刻であれば、DR期間が終了していないと判定する。切換部402eは、DR期間が終了したと判定した場合、処理をS601に進め、DR指令パラメータ502にS601の処理時点を開始時刻とするレコードがあれば、再び、S605へ進み、調整制御を継続する。また、切換部402eは、DR期間が終了していないと判定した場合、処理をS607に進める。
【0055】
S609における調整保護制御の詳細について説明する。調整保護制御部402dは、以下に示す第1の制御、又は、第2の制御を実行する。
【0056】
第1の制御について説明する。本実施形態では、第1の制御は、電力評価期間内で保護制御パラメータ411の油戻し期間である1分間、圧縮機112の運転周波数を油戻し周波数31Hzにし、残りの期間である4分間、電力評価期間内の平均が目標平均周波数となるように圧縮機112の運転周波数を、目標平均周波数よりも下げる制御である。本実施形態では、調整保護制御部402dは、図8に示すように、電力評価期間内の最初の1分間、圧縮機112の運転周波数を油戻し周波数31Hzにし、その後に、圧縮機112の運転周波数を下げる制御を第1の制御として実行する。
【0057】
本実施形態の圧縮機112は、既定の運転周波数(以下では、運転下限周波数と称する)以下で動作させることができない。そのため、目標平均周波数が運転下限周波数に近い場合には、第1の制御では、保護制御(油戻し)にかかる期間(1分間)以外の残りの期間、圧縮機112の運転周波数を運転下限周波数まで下げても、電力評価期間内の圧縮機112の運転周波数の平均値を目標平均周波数にすることができない場合がある。そこで、調整保護制御部402dは、第1の制御で、電力評価期間内の圧縮機112の運転周波数の平均値を目標平均周波数にすることができない場合、以下の第2の制御を実行する。
【0058】
本実施形態では、第2の制御は、図9に示すように、一旦、圧縮機112の運転を停止(オフ)させ、その後に圧縮機112を再始動(オン)させることで、電力評価期間内の圧縮機112の運転周波数の平均値が目標平均周波数となるようにする制御である。図9の例では、第2の制御は、電力評価期間内の最初の既定の期間、圧縮機112を停止させ、その後に、圧縮機112を再始動させる制御である。
【0059】
図10は、第1の制御、第2の制御それぞれで実現可能な目標平均周波数の範囲を示す図である。図10の例では、斜線領域に対応する目標平均周波数については、第1の制御、第2の制御の何れでも実現可能である。以下では、第1の制御、第2の制御の何れでも実現可能な目標平均周波数の範囲を、重複範囲とする。油戻し周波数以上では、油戻し運転を実施する必要がない。そのため、調整保護制御は、運転下限周波数から油戻し周波数までの範囲内の目標平均周波数に対応する。
【0060】
第1の制御では、(式1)で求まる周波数F未満の目標平均周波数を達成できない。すなわち、周波数Fが重複範囲の下限である。
周波数F=(油戻し周波数×油戻し期間+運転下限周波数×(電力評価期間-油戻し期間))/電力評価期間 ・・・(式1)
【0061】
(式1)で求まる値は、圧縮機112を、油戻し期間だけ油戻し周波数で駆動し、残りの期間を運転下限周波数で駆動した場合における圧縮機112の運転周波数の平均値である。また、第2の制御では、圧縮機112の再始動の際の運転周波数の上限値により、実現できる目標平均周波数の範囲の上限値が決まる。この上限値は、圧縮機112の再始動の際の運転周波数の上限値×(電力評価期間―圧縮機停止期間)/電力評価期間である。ここで、圧縮機停止期間は、圧縮機112の始動の際の運転周波数が油戻し周波数以上となる程度の期間として、予め定められた期間である。
【0062】
重複範囲内の目標平均周波数は、第1の制御、第2の制御の何れでも実現可能である。ただし、圧縮機112の停止と始動とを繰り返すことにより、圧縮機112の寿命が短縮するため、圧縮機112の停止を伴う第2の制御より圧縮機112の停止を伴わない第1の制御を優先させる方が好ましい。そこで、本実施形態では、室外機11は、第1の制御を、第2の制御よりも優先して実行する。すなわち、運転制御部402は、目標平均周波数が周波数F以上であれば、第2の制御で目標平均周波数が実現可能であっても、第1の制御を実行する。このように、運転制御部402は、周波数Fを、第1の制御と、第2の制御と、の何れを実行するかの判定のための閾値(以下では、下限閾値と称する)として用いる。また、他の例として、下限閾値は、周波数Fより大きな値であってもよい。このようにして、運転制御部402は、下限閾値以上の目標平均周波数を実現する際に、第2の制御よりも第1の制御を優先して実行できる。
【0063】
図11は、S609の処理の詳細、すなわち、調整保護制御の詳細を示すフローチャートである。
【0064】
S1101において、調整保護制御部402dは、S606で導出された目標平均周波数が、下限閾値以上であるか否か判定する。調整保護制御部402dは、目標平均周波数が下限閾値以上であると判定した場合、処理をS1102に進め、目標平均周波数が下限閾値未満であると判定した場合、処理をS1104に進める。
【0065】
S1102、S1103において、調整保護制御部402dは、第1の制御による調整保護制御を実行する。より具体的には、S1102において、調整保護制御部402dは、油戻し期間の1分間、圧縮機112の運転周波数を、油戻し周波数31Hzとなるように制御する。そして、S1103において、調整保護制御部402dは、電力評価期間の残りの期間(電力評価期間-油戻し時間=4分間)、圧縮機112の運転周波数を、目標平均周波数よりも下げる。以下では、下げられた運転周波数を、下げ周波数とする。調整保護制御部402dは、電力評価期間中の実平均周波数を目標平均周波数に合わせるために、(式2)を満たす下げ周波数を用いる。
(油戻し周波数×油戻し時間+下げ周波数×(電力評価期間-油戻し時間))/電力評価期間=目標平均周波数・・・(式2)
【0066】
すなわち、調整保護制御部402dは、(式3)により下げ周波数を求めることができる。
下げ周波数=(目標平均周波数×電力評価期間-油戻し周波数×油戻し期間)/(電力評価期間-油戻し期間)・・・(式3)
調整保護制御部402dは、圧縮機112の運転周波数を、下げ周波数に制御して、圧縮機112を(電力評価期間-油戻し期間)の間、駆動を継続する。
【0067】
S1104、S1105において、調整保護制御部402dは、第2の制御による調整保護制御を実行する。S1104において、調整保護制御部402dは、圧縮機指示部403を介して、圧縮機112の運転を停止するように制御する。調整保護制御部402dは、例えば、圧縮機112の運転のオン・オフを直接制御してもよいし、空気調和機10の運転のオン・オフ、室内機12の運転のオン・オフ等を制御することで、間接的に制御してもよい。S1105において、調整保護制御部402dは、S1104での圧縮機112の運転の停止から、既定の圧縮機停止期間経過後に、圧縮機指示部403を介して、圧縮機112を油戻し周波数以上の運転周波数で再始動するよう制御する。以下では、再始動の際の圧縮機112の運転周波数を、始動周波数とする。油戻し周波数以上の始動周波数での圧縮機112の駆動により油戻し制御が実現される。調整保護制御部402dは、電力評価期間中の圧縮機112の運転周波数の平均値を、目標平均周波数に合わせるために、(式4)を満たす始動周波数を用いる。
(始動周波数×(電力評価期間-圧縮機停止時間))/電力評価期間=目標平均周波数・・・式(4)
【0068】
調整保護制御部402dは、(式5)を用いて、始動周波数を求める。
始動周波数=目標平均周波数×電力評価期間/(電力評価期間-圧縮機停止時間)・・・(式5)
そして、調整保護制御部402dは、圧縮機112を求めた始動周波数で始動させ、運転周波数を始動周波数に制御したまま、電力評価期間の終了まで、圧縮機112の駆動を継続する。
【0069】
以上のように、本実施形態では、室外制御装置111は、調整制御を実行する。これにより、室外制御装置111は、電力評価期間における圧縮機112の運転周波数の平均値を、周波数許容範囲内にすることができ、結果として、電力評価期間における空気調和機10、又は、圧縮機112の消費電力量を、目標消費電力×0.9×電力評価期間よりも上の値になるように調整できる。また、室外機11は、電力評価期間における圧縮機112の運転周波数の平均値を、周波数許容範囲内にすることで、電力評価期間における空気調和機10、又は、圧縮機112の消費電力量を、目標消費電力×1.1×電力評価期間よりも下の値になるように調整できる。
【0070】
本実施形態の処理を適用した場合における圧縮機112の運転周波数の推移の一例を図12Aに示す。点線の楕円印で囲まれた部分は、第1の制御、第2の制御が実行された際の運転周波数を示す。この場合における電力評価期間毎の空気調和機10の消費電力の平均値の推移を図12Bに示す。点線の楕円印で囲まれた部分は、第1の制御、第2の制御が実行された際の電力評価期間における消費電力の平均値を示す。図3Bと比較して、消費電力の平均値の上昇、すなわち消費電力量の上昇が抑えられていることが分かる。
【0071】
本実施形態の第1の変形例を説明する。室外機11でなく室内機12が、通常制御、調整制御を実行することとしてもよい。その場合、室内制御装置121が、運転制御部402と圧縮機指示部403との機能を備える。
【0072】
第2の変形例を説明する。室外機11でなく外部の情報処理装置が、通常制御、調整制御を実行することとしてもよい。その場合、外部の情報処理装置が、運転制御部402と圧縮機指示部403との機能を備え、ゲートウェイ140経由で、空気調和機10に圧縮機112の運転周波数の設定の指示を行う。
【0073】
第3の変形例を説明する。第1の制御における圧縮機112の運転周波数を油戻し周波数31Hzにする期間は、電力評価期間の最初の1分間と異なる期間であってもよい。例えば、電力評価期間の最後の1分間であってもよいし、途中の1分間であってもよい。また、本実施形態では、第1の制御は、電力評価期間における油戻し期間(保護制御にかかる期間)以外の期間、圧縮機112の運転周波数を、目標平均周波数よりも下げる制御である。ただし、第1の制御において圧縮機112の運転周波数を目標平均周波数よりも下げる期間は、電力評価期間における油戻し期間(保護制御にかかる期間)以外の期間のうちの一部の期間としてもよい。例えば、5分の電力評価期間のうち1分間に保護制御が実行され、残りの4分のうち2分間において目標平均周波数よりも周波数を下げ、残りの2分間においては目標平均周波数になるよう制御されてもよい。すなわち、第1の制御は、油戻し期間以外の期間のうちの少なくとも一部の期間において、圧縮機112の運転周波数を目標平均周波数よりも下げることで、目標平均周波数を実現する制御であればよい。一方で、例えば、5分間の電力評価期間のうち1分間に保護制御が実行され、残りの4分すべてにおいて目標平均周波数よりも周波数を下げてもよい。この場合には、周波数変動を少なく抑えることができる。
【0074】
第4の変形例を説明する。第2の制御における圧縮機112を停止させる期間は、電力評価期間における最初の期間と異なる期間であってもよい。例えば、電力評価期間の最後の期間であってもよいし、途中の期間であってもよい。
【0075】
第5の変形例を説明する。本実施形態においては、運転制御部402は、調整保護制御において、電力評価期間における圧縮機112の周波数の平均値が目標平均周波数になるよう制御した。ただし、電力評価期間における消費電力の平均値が目標消費電力になるような制御であればよく、そのための具体的な処理は実施形態に限定されるものではない。他の例としては、目標消費電力から、電力評価期間における総消費電力量を求め、圧縮機112の電力評価期間における実際の総消費電力量が目標消費電力から求まる合計値と等しくなるような制御を行うこととしてもよい。
【0076】
(実施形態2)
次に、第2の実施形態に係る空気調和システム2について、第1の実施形態に係る空気調和システム1と異なる点を主に説明する。
【0077】
図13は、本実施形態における、空気調和システム2の構成の一例を示す図である。本実施形態の空気調和システム2は、空気調和機10、DRサーバ装置180、空気調和機10とDRサーバ装置180と外部ネットワーク170を介して接続された空気調和機制御装置1300を含む。
【0078】
本実施形態の空気調和機10は、2台の室外機1001a、1001bを備える。なお、以下、2台の室外機1001a、1001bを区別する必要がない場合には、室外機1001a、1001bを適宜室外機1001と記載する。室外機1001は、実施形態1の室外機11とほぼ同様である。ただし、室外機1001は、調整空調制御部402c、調整保護制御部402dの機能は備えない。詳細は後述するが、本実施形態においては、各室外機1001の調整空調制御部402c及び調整保護制御部402dの機能は、室外機1001に替えて空気調和機制御装置1300が行う。室外機1001は、実施形態1の室外機11と同様に、要素111~117を含む。空気調和機10は、2台の室外機1001a、1001bを備えるが、室外機の台数は、3台以上でもよい。また、空気調和機10は、4台の室内機12a~12dを備える。なお、以下、4台の室内機12a~12dを区別する必要がない場合には、室内機12a~12dを適宜、室内機12と記載する。本実施形態では、空気調和機10は、4台の室内機12を備えるが、室内機の台数は、3台以下でもよいし、5台以上でもよい。
【0079】
実施形態1では、DRサーバ装置180は、ゲートウェイ140を介して、室外機11とDRサービスに関する通信を行うとしたが、本実施形態では、DRサーバ装置180は、空気調和機制御装置1300との間でDRサービスに関する通信を行う。すなわち、空気調和機制御装置1300は、DRサーバ装置180からDR期間の開始の指示を受信すると、ゲートウェイ140経由で、室内機12の設定温度や空気調和機10のオン・オフの指示等の空気調和機10を制御するための情報を室内機12に送信する。
【0080】
実施形態1では、空気調和機10内部の圧縮機112の運転周波数を制御することで、DRサービスに対応している。これに対し、本実施形態においては、空気調和機10は、DRサービスに対応しない、既成の装置であるとする。本実施形態の空気調和機制御装置1300は、このようにDRサービスに対応しない空気調和機10に対し、圧縮機112の周波数を制御するような指示を出すことで、空気調和機10の運転周波数を制御する。このように、本実施形態においては、空気調和機制御装置1300の制御により、空気調和機10の圧縮機112の運転周波数を制御することで、空気調和機10の電力消費をDRサービスに対応させる。
【0081】
ただし、外部装置である空気調和機制御装置1300からは空気調和機10の運転周波数を直接制御することができない場合がある。しかしながら、圧縮機112の運転周波数は、室内機12の被空調空間の室温と設定温度との差分で定まる空調負荷に応じて制御されるため、設定温度と圧縮機112の運転のオン・オフとにより間接的に圧縮機112の運転周波数を制御することが可能である。そこで、本実施形態の空気調和機制御装置1300は、室内機12の設定温度と室内機12が設置された被空調空間の室温との関係で定まる空調負荷を調節することで、圧縮機112の運転周波数を制御し、消費電力を調整し、DRサービスに対応させることとする。なお、空気調和機制御装置1300は、ゲートウェイ140経由で、室外機1001及び室内機12に備えられた各センサの測定値であるセンサデータを受信し、空気調和機10の制御に活用するとともに、電力実績をDRサーバ装置180に送信する。
【0082】
図14は、空気調和機制御装置1300の構成を示す図である。空気調和機制御装置1300は、制御部1400、記憶部1410、通信部1420を備える。制御部1400は、CPU、ROM、RAM等を備え、記憶部1410やROMに記憶された種々のプログラムを実行することにより、空気調和機制御装置1300、空気調和機10を制御する。記憶部1410は、各種データやプログラムを記憶している。記憶部1410は、実施形態1の記憶部410と同様に保護制御パラメータ411、DRパラメータ412、センサデータ413、ユーザ設定データ414を記憶する。ただし、本実施形態のセンサデータ413は、室内機12と室外機1001の各種センサの測定値である。また、記憶部1410は、さらに、室外機1001の圧縮機112の運転周波数の導出に用いられるパラメータである周波数パラメータ1411を記憶する。
【0083】
制御部1400は、遠隔制御部1401、予測部1402、通信処理部1403を含む。これらの機能は、CPUがROM又は記憶部1410に格納されているプログラムを読み出し、このプログラムを実行することにより実現されるものである。また、他の例としては、これらの機能の少なくとも一部は、ハードウェア回路を用いて実現されてもよい。
【0084】
遠隔制御部1401は、空気調和機10を遠隔で制御する。遠隔制御部1401は、遠隔調整空調制御部1401a、遠隔調整保護制御部1401b、切換部1401c、保護条件判定部1401d、設定温度決定部1401e、快適性評価部1401fを含む。
【0085】
遠隔調整空調制御部1401aは、遠隔で圧縮機112の調整空調制御を実行する。遠隔調整保護制御部1401bは、遠隔で圧縮機112の調整保護制御を実行する。切換部1401cは、遠隔調整空調制御部1401a、遠隔調整保護制御部1401bの何れの制御を実行するかを切換える。保護条件判定部1401dは、圧縮機112の保護制御を行うための条件である保護条件を満たしているか否かを判定する。設定温度決定部1401eは、室内機12の設定温度を決定する。快適性評価部1401fは、室内機12が設置された被空調空間における快適性を評価する。
【0086】
予測部1402は、センサデータ413に基づいて、保護制御パラメータ411と周波数パラメータ1411とを予測し、記憶部1410に記憶する。予測部1402は、センサデータ413中の圧縮機112の運転周波数の時系列データに基づいて、圧縮機112の保護制御と推定される急激な運転周波数の上昇(例えば、既定の閾値以上の上昇速度での上昇)を検知する。そして、予測部1402は、保護制御パラメータ411を予測する。例えば、予測部1402は、圧縮機112の運転周波数の急激な上昇を検知した場合、上昇後の運転周波数を、油戻し周波数として予測する。また、例えば、予測部1402は、上昇後の運転周波数での駆動が継続した期間を、油戻し期間として予測する。また、例えば、予測部1402は、圧縮機112の運転周波数の急激な上昇の時点から、圧縮機112の運転周波数の次の急激な上昇の時点までの期間を油戻しインターバルとして予測する。これにより、空気調和機制御装置1300は、保護制御パラメータ411が予めわかっていない場合でも、予測部1402により保護制御パラメータ411を取得できる。
【0087】
予測部1402は、センサデータ413中の室内機12の容量(空調能力)、設定温度、被空調空間の温度(室温)、圧縮機112の運転周波数の時系列データから、周波数パラメータ1411を予測する。周波数パラメータ1411は、設定温度を圧縮機112の運転周波数に換算するための係数である。以下、周波数パラメータ1411及び周波数パラメータ1411を予測する処理についてより詳しく説明する。通常制御の際の圧縮機112の運転周波数は、室内機12の容量と、設定温度と室温との差と、周波数パラメータ1411と、から導出できる。本実施形態では、通常制御の際の圧縮機112の運転周波数は、(式6)のように表される。
運転周波数=Σ(室内機12の容量×((設定温度と室温との温度差)×α+β))・・・(式6)
ここで、Σは、複数の室内機12それぞれについての合計であることを示す。(設定温度と被空調空間との温度差)は、冷房の場合は(被空調空間の温度-設定温度)、暖房の場合は(設定温度-被空調空間の温度)である。パラメータα、βが、周波数パラメータ1411である。周波数パラメータ1411が得られると、設定温度を変更することで、圧縮機の運転周波数を制御することが可能となる。
【0088】
予測部1402は、センサデータ413中の設定温度、室温、圧縮機112の運転周波数の履歴情報と、室内機12の容量と、に基づいて回帰分析を行う。これにより、予測部1402は、圧縮機112の運転周波数を、(式6)のように表すためのパラメータαとβとを学習することで予測する。
ただし、予測部1402は、非線形回帰など、その他の回帰分析手法を用いて、パラメータαとβとを学習してもよい。また、保護制御パラメータ411と周波数パラメータ1411とが既知である場合、制御部1400は、予測部1402の機能を含まなくてもよい。
【0089】
通信処理部1403は、通信部1420を介して、外部ネットワーク170経由で、DRサーバ装置180及びゲートウェイ140と通信を行う。通信処理部1403には、ゲートウェイ140経由で、室内機12及び室外機1001との通信を行う。また、通信処理部1403は、DRサーバ装置180との通信を行う。
【0090】
通信処理部1403は、室内機12及び室外機1001からゲートウェイ140経由で送られてくる空気調和機10の運転情報や設定情報等を外部ネットワーク170の通信データの形式で受信し、データ内容を解析し記憶部1410に記憶する。また、通信処理部1403は、制御部1400からの指示に応じて、室内機12の設定温度や圧縮機112の運転のオン・オフの切換等の制御情報を外部ネットワーク170の通信データ形式で各室内機12及び室外機1001に送信する。
【0091】
また、通信処理部1403は、DRサーバ装置180からのDR期間の開始、終了の指示、目標電力値の指示等を受信し、DRパラメータ412として記憶部1410に記憶する。また、通信処理部1403は、センサデータ413に含まれる処理時点での空気調和機10の消費電力等の情報を記憶部1410から読み出し、DRサーバ装置180に送信する。
【0092】
図15は、切換部1401cの処理を示すフローチャートである。切換部1401cは、DRサーバ装置180からのDR期間の開始の指示と、保護条件を満たすか否かと、に応じて、調整空調制御の実行と調整保護制御の実行とを切換える。
【0093】
S1501において、切換部1401cは、記憶部1410からDRパラメータ412を読み出し、DR指令パラメータ502を参照して、DR期間の開始タイミングか否かを判定する。より具体的には、切換部1401cは、処理時刻が、DR指令パラメータ502の開始時刻であれば、DR期間の開始タイミングが開始されたと判定し、処理時刻がDR指令パラメータ502の開始時刻でなければ、DR期間の開始タイミングでないと判定する。切換部1401cは、DRサービスが開始されていないと判定した場合、処理をS1502に進め、S1502以降の処理を実行することで、室外機1001と室内機12とをDRサービスに対応させるための、圧縮機112に対する調整空調制御を遠隔で行う。切換部1401cは、DR期間の開始タイミングでないと判定した場合、S1501の処理を繰り返す。
【0094】
S1502、S1503の処理は、それぞれ、実施形態1のS605、S606と同様の処理である。
【0095】
S1504において、保護条件判定部1401dは、次の電力評価期間において保護条件が満たされる可能性があるか否かを判定する。保護条件判定部1401dは、処理時刻において、圧縮機112の運転周波数が、予測部1402により予測された油戻し運転周波数を下回る状態が、(予測部1402により予測された油戻しインターバル-電力評価期間)の期間以上継続している場合、次の電力評価期間に保護条件が満たされる可能性ありと判定する。保護条件判定部1401dは、次の電力評価期間において保護条件が満たされる可能性があると判定した場合、処理をS1506に進め、次の電力評価期間において保護条件が満たされる可能性がないと判定した場合、処理をS1505に進める。空気調和機制御装置1300は、S1504の処理により、予測部1402により予測された油戻し制御のタイミングで、調整保護制御を実行できる。
【0096】
S1505において、遠隔調整空調制御部1401aは、設定温度決定部1401eに対して、S1503で取得された目標平均周波数に応じた運転周波数での圧縮機112の駆動を実現するための室内機12の設定温度の決定を指示する。設定温度決定部1401eによる室内機12の設定温度の決定処理の詳細は、図16で後述する。遠隔調整空調制御部1401aは、設定温度決定部1401eにより決定された設定温度に設定するよう、室内制御装置121それぞれに指示する。これにより、遠隔調整空調制御部1401aは、圧縮機112の運転周波数をDRサービスに対応するよう調整できる。
【0097】
S1506において、遠隔調整保護制御部1401bは、S1503で取得された目標平均周波数が、下限閾値以上であるか否か判定する。遠隔調整保護制御部1401bは、目標平均周波数が下限閾値以上であると判定した場合、処理をS1507に進め、目標平均周波数が下限閾値未満であると判定した場合、処理をS1509に進める。
【0098】
S1507において、遠隔調整保護制御部1401bは、油戻し周波数での圧縮機112の駆動を実現するための室内機12の設定温度の決定を、設定温度決定部1401eに要求する。設定温度決定部1401eによる室内機12の設定温度の決定処理の詳細は、図16で後述する。そして、遠隔調整保護制御部1401bは、決定した設定温度への設定を、室内機12それぞれに指示する。
【0099】
S1508において、遠隔調整保護制御部1401bは、電力評価期間の残りの期間、圧縮機112の運転周波数を、下げ周波数に下げる。遠隔調整保護制御部1401bは、電力評価期間中の平均周波数を目標平均周波数に合わせるために、下げ周波数として、(目標平均周波数×電力評価期間-油戻し周波数×油戻し期間)/(電力評価期間-油戻し期間)を用いる。遠隔調整保護制御部1401bは、圧縮機112の下げ周波数での駆動を実現するための室内機12の設定温度の決定を、設定温度決定部1401eに要求する。設定温度決定部1401eによる室内機12の設定温度の決定処理の詳細は、図16で後述する。そして、遠隔調整保護制御部1401bは、決定した設定温度への設定を、室内機12それぞれに指示する。
【0100】
S1509において、遠隔調整保護制御部1401bは、室内機12それぞれに対して運転の停止を指示することで、圧縮機112の運転の停止を空気調和機10に指示する。本実施形態では、遠隔調整保護制御部1401bは、室内機12それぞれに、室内熱交換を停止するような設定温度にするよう指示することで、圧縮機112の運転を停止させる。室内熱交換を停止するような設定温度とは、例えば、(設定温度と室温との温度差)が通常0以下の所定値γ以下となる設定温度であり、冷房の場合は(室温-γ)以上、暖房の場合は、(室温+γ)以下である。ここで、γが既知で無い場合は、予測部1402によってγを予測してもよい。
【0101】
S1510において、遠隔調整保護制御部1401bは、S1509での圧縮機112の停止から、既定の圧縮機停止期間経過後に、圧縮機112を始動周波数で再始動するよう制御する。より具体的には、遠隔調整保護制御部1401bは、電力評価期間中の圧縮機112の運転周波数の平均値を、目標平均周波数に合わせるために、目標平均周波数×電力評価期間/(電力評価期間-圧縮機停止時間)を、始動周波数として用いる。遠隔調整保護制御部1401bは、始動周波数での圧縮機112の駆動を実現するための室内機12の設定温度の決定を、設定温度決定部1401eに要求する。設定温度決定部1401eによる室内機12の設定温度の決定処理の詳細は、図16で後述する。そして、遠隔調整保護制御部1401bは、空気調和機10に対して、室内機12の設定温度の決定された設定温度への変更を指示する。
【0102】
S1511において、切換部1401cは、実施形態1のS610の処理と同様に、DR期間が終了したか否かを判定する。切換部1401cは、DR期間が終了したと判定した場合、処理をS1501に進め、DR指令パラメータ502にS601の処理時点を開始時刻とするレコードがあれば、調整制御を継続する。また、切換部1401cは、DR期間が終了していないと判定した場合、処理をS1504に進める。
【0103】
図16は、設定温度決定部1401eの処理を示すフローチャートである。設定温度決定部1401eは、S1505、S1507、S1508、S1510で、遠隔調整空調制御部1401a、遠隔調整保護制御部1401bから室内機12の設定温度の決定の指示(以下では、決定指示とする)を受け付けた場合に図16の処理を開始する。以下では、この指示と併せて、指定された圧縮機112の運転周波数を、指示周波数とする。
【0104】
S1601において、設定温度決定部1401eは、室内機12a~12dの設定温度差の組合せのデータである組合せデータを生成する。ここで、設定温度差とは、室内機12の設定温度と室内機12が設置された被空調空間の室温との差である。本実施形態では、設定温度決定部1401eは、室内機12a~12dそれぞれについての設定温度差として、0℃~2℃の温度範囲における1℃刻みの0℃、1℃、2℃の3通りの設定温度差を用いて、全部で3の4乗=81通りの設定温度差の組合せを組合せデータとして生成する。ただし、他の例として、設定温度決定部1401eは、各室内機12について、0.5℃等1℃以外の温度刻み幅での設定温度差を用いてもよい。また、設定温度決定部1401eは、0℃~2℃の温度範囲と異なる温度範囲(例えば、-2℃~3℃等)を用いてもよい。図17に、組合せデータの一例を示す。
【0105】
S1602において、設定温度決定部1401eは、S1601で生成した組合せデータから、1つの組合せを選択する。以下では、最新のS1602で選択された組合せを、選択組合せとする。そして、設定温度決定部1401eは、周波数パラメータ1411に基づいて、各室内機12のそれぞれの設定温度を、選択組合せに対応する設定温度に設定した場合における圧縮機112の運転周波数を導出する。ここで、選択組合せに対応する設定温度とは、室内機12に対応する室温と、選択組合せにおけるこの室内機12に対応する設定温度差を有する設定温度であり、冷房の場合、設定温度=室温-設定温度差、暖房の場合、設定温度=室温+設定温度差である。図18に、組合せデータのそれぞれに対してS1602で導出された運転周波数の例を示す。
【0106】
S1603において、設定温度決定部1401eは、S1602で導出した運転周波数が、指示周波数から既定の誤差以内の値であるか否かを判定する。この誤差は、目標平均周波数に誤差を加えた運転周波数が周波数許容範囲内となるように予め定められた値である。設定温度決定部1401eは、S1602で導出した運転周波数が、指示周波数から既定の誤差以内の値であると判定した場合、処理をS1604に進める。また、設定温度決定部1401eは、S1602で導出した運転周波数が、指示周波数から既定の誤差以内の値でないと判定した場合、処理をS1607に進める。
【0107】
S1604において、設定温度決定部1401eは、快適性評価部1406に対して、選択組合せに対応する設定温度に室内機12を設定した場合における室内機12の快適性の指標となる快適性評価値を導出する。快適性評価部1406は、快適性評価値として、選択組合せに対応する室内機12の設定温度と、ユーザによる室内機12の設定温度と、の差分の2乗和の逆数を導出する。設定温度がユーザによる設定温度に近いほど好ましいため、快適性評価値が大きいほど、快適性が高い。
【0108】
S1605において、設定温度決定部1401eは、最新のS1604で導出した快適性評価値が、図16の処理の開始から処理時点までに行われたS1604で導出した快適性評価値の中で、最大であるか否かを判定する。設定温度決定部1401eは、最新のS1604で導出した快適性評価値が、図16の処理の開始から処理時点までに行われたS1604で導出した快適性評価値の中で、最大であると判定した場合、処理をS1606に進め、最大でないと判定した場合、処理をS1607に進める。
【0109】
S1606において、設定温度決定部1401eは、選択組合せに対応する室内機12それぞれの設定温度を、室内機12に設定する設定温度の候補として決定する。より具体的には、設定温度決定部1401eは、RAMに室内機12に設定する設定温度の候補として、選択組合せに対応する室内機12それぞれの設定温度を記憶する。設定温度決定部1401eは、既に、RAMに、室内機12に設定する設定温度の候補が記憶されている場合、選択組合せに対応する室内機12それぞれの設定温度で上書きする。
【0110】
S1607において、設定温度決定部1401eは、S1602で組合せデータの全組合せについて選択組合せとして選択したか否かを判定する。設定温度決定部1401eは、S1602で組合せデータの全組合せについて選択組合せとして選択したと判定した場合、処理をS1608に進め、組合せデータの中にS1602で選択組合せとして選択していない組合せがあると判定した場合、処理をS1602に進める。
【0111】
S1608において、設定温度決定部1401eは、最新のS1606でRAMに記憶した設定温度を、決定指示の指示元に通知する。
【0112】
以上のように、本実施形態では、空気調和機制御装置1300は、遠隔で、圧縮機112の調整制御を実行する。これにより、空気調和機制御装置1300は、電力評価期間における圧縮機112の運転周波数の平均値を、周波数許容範囲内にすることができ、結果として、電力評価期間における空気調和機10、又は、圧縮機112の消費電力量をDRサービスの要望に合わせることができる。また、空気調和機制御装置1300は、室内機12の設定温度を制御することで、圧縮機112の運転周波数を制御するとした。これにより、空気調和機制御装置1300は、圧縮機112の運転周波数を直接指定できない場合にも、圧縮機112の運転周波数を制御できる。
【0113】
本実施形態の第1の変形例を説明する。空気調和システム2は、実施形態1と同様に空気調和機制御装置1300を含まずに、室外制御装置111、室内制御装置121の何れかが調整制御を実行してもよい。その場合、例えば、室外制御装置111、室内制御装置121の何れかに、遠隔制御部1401、予測部1402と同様の機能を実現させればよい、具体的には、これらの機能を実現する装置に、これらの機能を実現するためのプログラムをインストールすればよい。また、他の例としては、これらの機能を実現する装置に、これらの機能を実現するための制御装置を追加してもよい。この場合、遠隔制御部1401に係る処理は、外部から遠隔で行われないこととなる。
【0114】
第2の変形例を説明する。設定温度決定部1401eは、快適性評価値を考慮せずに、室内機12の設定温度を決定してもよい。例えば、設定温度決定部1401eは、センサデータ413から室内機12が設置された被空調空間の温度(室温)を取得する。そして、設定温度決定部1401eは、取得した室温と、指示周波数と、パラメータα、βと、室内機12の容量と、に基づいて、(式6)を満たす設定温度を決定してもよい。
【0115】
第3の変形例を説明する。遠隔調整保護制御部1401bは、S1509において、室内機12それぞれに、室内熱交換を停止するような設定温度にするよう指示せずに、室内機12の運転のオフを指示することで、圧縮機112の運転を停止させてもよい。その際、遠隔調整保護制御部1401bは、S1510において、まず、室内機12それぞれに運転オンを指示する。また、遠隔調整保護制御部1401bは、空気調和機10の運転のオフの制御、圧縮機112に対する運転のオン・オフの直接の制御等により、圧縮機112の運転のオン・オフを制御してもよい。
【0116】
第4の変形例を説明する。空気調和機制御装置1300は、快適性評価値として、他の値を用いてもよい。例えば、空気調和機制御装置1300は、快適性評価値として、選択組合せに対応する室内機12の設定温度と、ユーザによる室内機12の設定温度と、の差分の絶対値の逆数等を用いてもよい。
【0117】
第5の変形例を説明する。空気調和機制御装置1300の出荷前に、空気調和機制御装置1300の制御対象の空気調和機10の解析により、周波数パラメータ1411、保護制御パラメータ411の情報が予め求められる等の場合、これらの情報を記憶部1410に記憶させた状態で、空気調和機制御装置1300が出荷されるとしてもよい。この場合、空気調和機制御装置1300は、予測部1402の機能を備えないこととしてもよい。
【0118】
第6の変形例を説明する。空気調和機10に対して圧縮機112の運転周波数の指定が可能な場合、遠隔制御部1401は、設定温度の変更によらずに、圧縮機112の運転周波数を制御してもよい。
【0119】
(その他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また上記の各構成、機能等は、コンピュータ等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また以上の説明で例示した各種のデータの形式は、例えば、CSV(Comma-Separated Values)、XML(eXtensible Markup Language)、バイナリ(binary)等であるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0120】
1 空気調和システム
10 空気調和機
11 室外機
111 室外制御装置
12 室内機
400 制御部
402 運転制御部
410 記憶部
420 通信部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18