(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131378
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】マーカーペン
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20220831BHJP
C09D 11/16 20140101ALI20220831BHJP
【FI】
B43K8/02
C09D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030302
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002314
【氏名又は名称】セーラー万年筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】美川 純一郎
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350HA16
4J039AE02
4J039BC07
4J039BC16
4J039BC20
4J039CA04
4J039GA26
(57)【要約】
【課題】筆跡を消去具で消去不能とすることができるマーカーペンを提供すること。
【解決手段】マーカーペン1は、筒状体21と、筒状体21内に設けられたインクタンク22と、インクタンク22に収容され、鉛筆又はシャープペンシルの筆跡の着色成分を紙葉類の表面から内部へ浸透移動させるか、又は、筆跡の着色成分をコーティングするインク23と、インクタンク22に接続されたインク誘導体24と、インク誘導体24に設けられたペン先25と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と、
前記筒状体内に設けられたインクタンクと、
前記インクタンクに収容され、鉛筆又はシャープペンシルの筆跡の着色成分を紙葉類の表面から内部へ浸透移動させるか、又は、前記筆跡の着色成分をコーティングするインクと、
前記インクタンクに接続されたインク誘導体と、
前記インク誘導体に設けられたペン先と、
を備えるマーカーペン。
【請求項2】
前記インクは、溶媒として低分子アルコール類、ケトン類、エステル類などの揮発性かつ水溶性の有機溶媒を5%以上含む、請求項1に記載のマーカーペン。
【請求項3】
前記インクは、前記筆跡の着色成分の定着剤としてのアルコール溶解性樹脂成分を0.5%以上含む、請求項1に記載のマーカーペン。
【請求項4】
前記筆跡の着色成分は、黒色の炭素組成物である、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のマーカーペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の筆記具の筆跡をマークするマーカーペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具として、ボールペンや万年筆等のインクを用いるものが知られている。このようなインクを用いる筆記具は、筆跡を消去不能なインクを用いることで、申請書等の正式書類等に用いられている。
【0003】
また、筆記具として、鉛筆やシャープペンシル等の着色剤を粘土等に混錬して焼成し、棒状に固めた芯を用いるものも知られている。このような筆記具として、鉛筆やシャープペンシル等が知られている。このような筆記具の芯は、紙葉類への筆記時に一部が削り取られて紙の表面に付着する。そして筆記具の筆跡は、芯の成分が紙の上に乗って付着している状態なので、消しゴム等の消去具でこすると消しゴム成分に芯の成分が付着して除去されるため、筆跡は紙面から消去できる。
【0004】
このような鉛筆やシャープペンシルは、学生時代には最も多く使う筆記具であるため、最も使いやすい筆記具であると感じているユーザーも多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクを用いた筆記具では、書き損じの場合に、書き損じに二重線を記載するか、修正液や修正テープを使って、書き損じを隠すことが行われている。しかしながら、申請書等の正式書類を書く場合や、大切な方への手紙をかく場合など、書き損じを修正して済ますことがはばかられる場合があり、書き直し等を要する。
【0006】
一方で、芯を用いた筆記具は、筆跡を消去可能であることから、書類改ざんの虞もあり、申請書等の正式書類に用いることができないことがある。このため、鉛筆やシャープペンシル等の芯を用いた筆跡を任意に消去不能とする技術が求められている。
【0007】
そこで本発明は、筆跡を消去具で消去不能とすることができるマーカーペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、マーカーペンは、筒状体と、前記筒状体内に設けられたインクタンクと、前記インクタンクに収容され、鉛筆又はシャープペンシルの筆跡の着色成分を紙葉類の表面から内部へ浸透移動させるか、又は、前記筆跡の着色成分をコーティングするインクと、前記インクタンクに接続されたインク誘導体と、前記インク誘導体に設けられたペン先と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筆跡を消去具で消去不能とすることができるマーカーペンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るマーカーペンの構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るマーカーペン1について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るマーカーペン1の構成を示す側面図、
図2は、マーカーペンである。
【0012】
図1に示すように、マーカーペン1は、例えば、筆記具本体11と、キャップ12と、を備える。筆記具本体11は、筒状体21と、インクタンク22と、インク23と、インク誘導体24と、ペン先25と、を備えている。
【0013】
筒状体21は、インクタンク22及びインク23を収容するとともに、インク誘導体24及びペン先25を保持する。
【0014】
インクタンク22は、インク23を収容する。インクタンク22は、インク23を収容する容器やインク23を吸蔵する吸蔵体である。吸蔵体は、例えば、インク23を含浸する繊維束、スポンジ、多孔体等である。
【0015】
インク23は、鉛筆又はシャープペンシルの筆跡の着色成分を紙葉類の表面から内部へ浸透移動させるか、又は、前記筆跡の着色成分をコーティングする。本実施形態において、インク23は、鉛筆又はシャープペンシルの筆跡の着色成分を紙葉類の表面から内部へ浸透移動させる。例えば、インク23が紙葉類の表面から内部へ浸透移動させる着色成分は、黒色の炭素組成物である。
【0016】
ここで、紙葉類とは、鉛筆又はシャープペンシルの芯の着色成分が摩擦によって細かい粒子に成り、着色成分(粒子)の軌跡を残すことができ、且つ、該粒子を内部に浸透移動できるものである。例えば、紙葉類は、紙、木材、紙や木材が接着剤等で固められたボード等である。
【0017】
インク23は、溶媒として低分子アルコール類、ケトン類、エステル類などの揮発性かつ水溶性の有機溶媒を5%以上含む。
【0018】
具体例として、インク23は、有機溶媒としての、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコールなどの脂肪族アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2-メチル-1-プロパノールグリセリン等のグリコールエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、などを一種又は複数種含む。
【0019】
また、インク23は、筆跡の着色成分の定着剤を含む。具体例として、インク23は、定着剤としてのアルコール溶解性樹脂成分を0.5%以上含む。例えば、脂肪族アルコールに可溶な樹脂は、粘度の調整、色材の定着性向上のために用いられるものである。
【0020】
例えば、脂肪族アルコールに可溶な樹脂は、具体例として、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。具体例を挙げれば、フェノール樹脂として、タマノール100S、同510(以上、荒川化学工業(株)製)、ヒタノール1501、同2501(以上、日立化成工業(株)製)などが、ケトン樹脂として、ケトンレジンK-90(荒川化学工業(株)製)、ハロン110H(本州化学(株)製)などが、ロジン樹脂として、ハーコリンD、ペンタリン255、同261(以上、理化ハーキュレス(株)製)、ガムロジンWW(倉敷商事(株)製)などが、ブチラール樹脂として、デンカブチラール#2000-L、同#3000-1、同#3000-2、同#3000-4、同#3000-K(以上、電気化学工業(株)製)などが、ポリアミド樹脂として、AQ-ナイロンA-90、同A-70、同A-50、同P-70、同K-80、同K-14(以上、(株)東レ製)、ニューマイド825、同840(以上、ケーシー有限会社製)、トレジンF30、同MF-30、同EF-30T、同M-20、同TK5036(以上、N-メトキシメチル化ナイロン、帝国化学産業(株)製)、バーサミド744、同756、同711(以上、ヘンケル白水(株)製)、トーマイド#90、同#92(以上、富士化成工業(株)製)、サンマイド611DK-1、同615A(以上、三和化学工業(株)製)などが挙げられる。これらは単独であるか又は複数混合して使用できる。
【0021】
また、インク23は、上述した成分以外に、必要に応じて、防腐剤、防黴剤、湿潤剤、粘度調節剤、凍結安定剤、消泡剤、界面活性剤など種々の添加剤を適宜選択して使用することもできる。
【0022】
インク誘導体24は、インクタンク22のインク23をペン先25に誘導する。ペン先25は、インク誘導体24により誘導されたインク23を紙葉類に塗布する。
【0023】
次に、
図2にマーカーペン1の使用の一例を示す。
図2のステップST1に示すように、先ず、鉛筆やシャープペンシル等により紙葉類100に筆記を行う。そして、ステップST1及びステップST2に示すように、紙葉類100の筆跡110上においてペン先25を移動させて、筆跡110を含む領域にインク23を塗布する。そして、ステップST3に二点鎖線で示すように、インク23が乾燥すると、インク23を塗布した領域の筆跡を構成する芯の粒子が、紙葉類100に浸透する。
【0024】
このように構成されたマーカーペン1は、紙葉類に鉛筆やシャープペンシルの筆跡上にインク23を塗ることで、紙葉類上の筆跡の着色成分(粒子)が、インク23によって紙葉類に浸透する。即ち、着色成分(粒子)は、インク23によって紙葉類の表面から内部に移動する。よって、紙葉類の筆跡は、消しゴム等の消去具によって消去不能となる。また、着色成分は、脱色できない炭素組成物であることから、実質的に永久筆跡となる。
【0025】
このため、書類等を作成する場合において、鉛筆及びシャープペンシルで紙葉類に筆記したときは、書き損じは消しゴム等の消去具によって紙葉類の筆跡を消去し、書き直しを行うことができることから、書き損じのない書類を作成できる。そして、その後、マーカーペン1で炭素組成物である着色成分を紙葉類に浸透移動させることで、消去不能とできる。よって、鉛筆等で書類等に筆記して、万一書き損じた場合は消去・書き直しを行い、書類等を完成してから、筆跡を消去不能にすることができる。このため、使い慣れている鉛筆やシャープペンシル等の筆記具であっても、正式書類に用いることもできる。
【0026】
上述したように本発明の実施形態に係るマーカーペン1によれば、鉛筆やシャープペンシルで筆記した紙葉類の筆跡を消去具で消去不能とすることができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述した例では、インク23は、筆跡の着色成分を紙葉類に浸透させる構成を説明したが、これに限定されず、インク23は、筆跡の着色成分をコーティングする構成としてもよい。このような構成とする場合、インク23は、着色成分をコーティング後、消去具で着色成分を除去できない成分とすればよい。
【0028】
また、上述した例では、インク23で紙葉類に浸透させる芯の着色成分が黒色の炭素組成物である例を説明したがこれに限定されず、インク23が紙葉類に着色成分を浸透できる構成であれば、着色成分は適宜設定可能であり、また、着色成分に用いるインク23の成分も適宜設定可能である。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0030】
1…マーカーペン、11…筆記具本体、12…キャップ、21…筒状体、22…インクタンク、23…インク、24…インク誘導体、25…ペン先、100…紙葉類、110…筆跡。