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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131392
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】ランナ、移動間仕切り装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/00 20060101AFI20220831BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E05D15/00 C
E05D15/06 119
E05D15/06 125A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030319
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 安能
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034CA02
2E034CB01
(57)【要約】
【課題】横揺れの低減と共にレールの小型化を実現する技術を提供する。
【解決手段】レールの内壁に沿って移動可能なランナであって、パネルを支持する支持軸が挿通される挿通部と、前記挿通部を介して前記支持軸を軸支するローラ部とを備え、前記ローラ部は、前記内壁における一方の側面から突出し前記ランナの移動方向に延びる突起部の先端が内部に位置して該突起部と係合可能な溝部が外周面に形成されることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの内壁に沿って移動可能なランナであって、
パネルを支持する支持軸が挿通される挿通部と、
前記挿通部を介して前記支持軸を軸支するローラ部と
を備え、
前記ローラ部は、前記内壁における一方の側面から突出し前記ランナの移動方向に延びる突起部の先端が内部に位置して該突起部と係合可能な溝部が外周面に形成される
ことを特徴とするランナ。
【請求項2】
前記挿通部の下方に位置して前記支持軸が挿通される下方挿通部と、
前記下方挿通部を介して前記支持軸を軸支する下方ローラ部と
を更に備え、
前記下方ローラ部は、前記内壁における他方の側面から突出し前記移動方向に延びる突起部の先端が内部に位置して該突起部と係合可能な溝部が外周面に形成される
ことを特徴とする請求項1記載のランナ。
【請求項3】
前記下方ローラ部は、前記他方の側面から突出する走行片の上面に当接して回転する
ことを特徴とする請求項2記載のランナ。
【請求項4】
前記突起部は、先細りとなるように上面が傾斜しており、
前記溝部は、上方側内壁面が前記突起部の上面と当接可能に傾斜する
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項記載のランナ。
【請求項5】
前記溝部は、内壁面に前記突起部の上面と下面とが当接するように前記突起部が嵌合する
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項記載のランナ。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のランナを備える移動間仕切り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、パネルをハンガーレールに沿って移動させ、空間の間仕切りを行うためのランナと、当該ランナを備える移動間仕切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスやホテル、結婚式場、店舗、学校、公共施設、体育館などの大きな空間は、使用人数や使用目的など、様々な状況に応じて、その大きさのまま使用されたり、仕切っていくつかの小さい空間として使用されたりする。このように、状況に応じて部屋の大きさや形状を変更することができるものとして移動間仕切り装置が用いられている。移動間仕切り装置は、固定部材を介して天井に支持されたレール内を移動するランナにパネルが吊下げ支持されることによって構成されている。パネルの移動は、人がパネルを持ってこれを押し引きし、パネルに移動方向の推進力を加えることによって行う。パネルに推進力を加えることにより、ランナがレールに沿って移動するため、パネルをレールに沿った所望の位置に移動させて配置することができる。
【0003】
このような移動間仕切り装置としては、下記特許文献1に示される可動懸吊建具装置が知られている。これに示される装置は、レールにおける一方の側壁内面上部に上位ランナの外周側面のみと周接する第1のフレ止めが突設されると共に、他方の側壁内面中部に中位ランナの外周側面のみと周接する、第1のフレ止めと相対してなる第2のフレ止めが突設され、下位ランナの底面外周縁のみと接触する側壁内面下部に、断面下内向き傾斜突条の直線傾斜面が形成されている。これによれば吊り戸本体(パネル)移動時の横揺れを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63-053485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した移動間仕切り装置は、レール側壁内面とランナ側面との間にフレ止めとなる突起が形成されているため、レール幅が突起分拡大されることとなり、レールが大型化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、横揺れの低減と共にレールの小型化を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、レールの内壁に沿って移動可能なランナであって、パネルを支持する支持軸が挿通される挿通部と、前記挿通部を介して前記支持軸を軸支するローラ部とを備え、前記ローラ部は、前記内壁における一方の側面から突出し前記ランナの移動方向に延びる突起部の先端が内部に位置して該突起部と係合可能な溝部が外周面に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横揺れの低減と共にレールの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る移動間仕切り装置を示す側面図である。
図2】第1の実施形態に係るハンガーレールの縦断面図である。
図3図2に示されるA-A線断面図である。
図4】第1の実施形態に係るランナ周辺の縦断面図である。
図5図4のB-B線断面図である。
図6】第1の変形例に係るランナの周辺の縦断面図である。
図7】第2の変形例に係るランナの周辺の縦断面図である。
図8】ハンガーレールの配置例を説明するための図である。
図9】ハンガーレールの配置例を説明するための図である。
図10】ハンガーレールを屋内の天井に取り付けた状態を示す縦断面図である。
図11】ハンガーレールを吊りパイプにより吊下げ支持した状態を示す斜視図である。
図12】第1の実施形態に係る移動間仕切り装置のパネルの変形例を示す側面図である。
図13】第1の実施形態に係る移動間仕切り装置のレイアウトを示す概略平面図である。
図14】第2の実施形態に係るランナ周辺の縦断面図である。
図15】第3の実施形態に係る移動間仕切り装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明に係る第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
(装置構成)
先ず、本実施形態に係る移動間仕切り装置の構成について説明する。図1は本実施形態に係る移動間仕切り装置を示す側面図である。なお、図1においてはハンガーレール10のみ縦断面で示されている。図1に示されるように、本実施形態に係る移動間仕切り装置1は、図示しない天井に固定されるハンガーレール10と、ハンガーレール10の内壁に沿って移動可能なランナ20と、ランナ20に吊下げ支持されるパネル30とを備える。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0012】
(ハンガーレール10)
先ず、ハンガーレール10の構成について説明する。図2は、本実施形態に係るハンガーレールの縦断面図であり、図3図2に示されるA-A線断面図である。ハンガーレール10は、ランナ20を支持すると共にランナ20が走行可能な走行経路を形成するものである。ハンガーレール10は、図1及び図2に示されるように、内部にランナ20を収容可能な内部空間100を画成する下方が開放された縦断面略C字状に形成される。このハンガーレール10が複数連結され所望の走行経路をなすよう配設されることにより、パネル30の配設位置、即ちパネル30によって仕切られる空間の大きさや形状が決定される。ハンガーレール10の両側壁110a,110b下部には、互いに対向するように一対のリブ120a,120bが突設されている。
【0013】
図1に示されるように、リブ120aは、ランナ20が有する下方ローラ220bと当接しないように、当該下方ローラ220bと上下方向において離間している。一方、リブ120bは、その一部上面が略水平方向に延在する平面に形成されており、当該上面において下方ローラ220bと一様に当接する。これによりリブ120bは、下方ローラ220bを支持すると共に当該ローラが走行するための走行面を形成している。一対のリブ120a,120bは、それらの先端に縦断面略C字状のジョイント部130が設けられている。ジョイント部130は、自己のハンガーレール10と他のハンガーレール10とを連結するためのレールジョイント40(図10参照)を係止する。当該レールジョイント40によるハンガーレール10間の連結については後述する。
【0014】
図2及び図3に示されるように、ハンガーレール10の側壁110aには、その内壁面から突出すると共に、内壁面に沿ってレールの延在方向、即ちランナ20の移動方向に延びる上方突起部140aが設けられている。また、ハンガーレール10の側壁110bには、その内壁面から突出すると共に、内壁面に沿ってレールの延在方向に延びる下方突起部140bが設けられている。上方突起部140aは、ランナ20が有する上方ローラ220aの上下方向略中央に位置して設けられ、下方突起部140bは、ランナ20が有する下方ローラ220bの上下方向略中央に位置すると共にリブ120bに近接して設けられている(図1参照)。以上のことから、上方及び下方突起部140a,140bは上下方向に互い違いとなるように配設されている。
【0015】
上方突起部140aと下方突起部140bとは同一構成であり、これらを区別しない場合は突起部140と称して以後説明を行う。突起部140は、先細りとなるように略V字状に突出しており、その上面140-1と下面140-2とが水平方向に対して傾斜面となっている。突起部140は、ランナ20の上方及び下方ローラ220a,220bに形成された詳細は後述する溝部226a,226b(図1参照)と個別に係合することでランナ20の移動時における揺動や横方向(ハンガーレール10の幅方向)へのランナ20の軸ズレ等の横揺れを低減することができる。
【0016】
(ランナ20)
次に、ランナ20の構成について説明する。図4は本実施形態に係るランナ周辺の縦断面図であり、図5図4に示されるB-B線断面図である。なお、図4はランナ20の支軸210軸心に沿った断面が示されている。ランナ20は、図4に示されるように、ハンガーレール10の内部空間100内に配設された支軸210と、当該支軸210の上端部を軸支する所定の間隔を空けて上下方向に連なる上方ローラ220aおよび下方ローラ220bとを有する。上方ローラ220aおよび下方ローラ220bは同一構成であり、これらを区別しない場合はローラ220と称して以後説明を行う。
【0017】
支軸210は、円柱状をなしてその下端部に図示しないネジ部が形成されており、当該ネジ部にナット211(図1参照)が螺合されてこれを介して空間間仕切りのためのパネル30と連結されて支持している。
【0018】
ローラ220は、図5に示されるように支軸210が挿通されるリング状の軸受けであるベアリング内輪221と、ベアリング内輪221の外周を囲繞するように設けられたリング状のベアリング外輪222とを有し、ベアリング内輪221とベアリング外輪222との間にはベアリング内輪221に対するベアリング外輪222の相対回転を可能とする複数の剛球223が介在されている。この剛球223によりベアリング外輪222は、支軸210周りで水平方向に回動自在となっている。また、支軸210上端と上方ローラ220a上面との間には上方ローラ220aの支軸210からの脱落を防止するとともに、上方ローラ220aと支軸210上部との間における回転摩擦を低減するためのリング状のワッシャ224が設けられている。さらに、上方ローラ220aと下方ローラ220bとの間には、各ローラの接触を防止して回転摩擦を低減させるためのリング状のワッシャ225が設けられている。
【0019】
上方ローラ220aの周面、つまり上方ローラ220aのベアリング外輪222の外周面には、その上下方向略中央においてV字状に窪む溝部226aが上方突起部140aと対向するように形成されている。同様に、下方ローラ220bのベアリング外輪222の外周面には、その上下方向略中央において略V字状に窪む溝部226bが下方突起部140bと対向するように形成されている。溝部226a,226bは同一構成であり、これらを区別しない場合は溝部226と称して以後説明を行う。
【0020】
溝部226は、対向する突起部140が嵌合可能な構造となっている。具体的には、その深さ方向に沿って溝幅(上下方向幅)が漸次縮小するように、溝部226の上方側内壁面226-1と下方側内壁面226-2とが水平方向に対して傾斜面となっている。溝部226内には、突起部140の少なくとも先端部が位置しており、これは図4に示されるようにランナ20が横方向における基準位置またはその近傍にある状態においても、横揺れが生じた状態においても維持される。
【0021】
本実施形態では、基準位置において上方ローラ220aは、その周面が両側壁110a,110bの壁面から離間しつつ、溝部226aの上方側内壁面226-1と上方突起部140aの上面140-1とが当接している。一方、下方ローラ220bは、その周面が両側壁110a,110bの壁面から離間しつつ、その下面が走行面であるリブ120b上に当接している。
【0022】
これにより、上方ローラ220aは、溝部226aが上方突起部140aと係合することで上方突起部140aに周接するように一方向に回転し、下方ローラ220bはリブ120bと当接して他方向に回転する。そのため、上方ローラ220aと下方ローラ220bとが互いに逆方向に相対回転でき、ハンガーレール10内壁に沿ったランナ20の走行が可能となっている。その際、下方ローラ220bの底面の摩耗も抑止可能となる。また、下方ローラ220bがリブ120a及び側壁110aと離間しているが、上方ローラ220aが上方突起部140aに周接している。そのためランナ20は、側壁110a側に傾斜することがなく、支軸210軸心の略鉛直を維持して各ローラ220が回転でき、延いてはランナ20の安定した走行が可能となっている。さらに、上方ローラ220aは側壁110b側とは当接しないため、上方ローラ220aが上方突起部140aに周接することによる一方向への回転が阻害されることはない。同様に、下方ローラ220bは側壁110a側とは当接しないため、下方ローラ220bの下方突起部140bとの係合やリブ120bとの当接による他方向への回転が阻害されることはない。
【0023】
また、パネル30の移動により横揺れが生じたとしても、上方ローラ220a及び下方ローラ220bいずれかの溝部226の上方側内壁面226-1と、突起部140の上面140-1とが当接することから、上方ローラ220a及び下方ローラ220bそれぞれの相対回転を維持しつつ、横揺れを低減させることができる。特に、横揺れ時において、ローラ220は突起部140の上面140-1の傾斜を、支持するパネル30等の重量に抗して上ることとなるため、横揺れの低減効果は極めて高い。
【0024】
また、横揺れが生じた後、ローラ220はパネル30等の重量により突起部140の上面140-1の傾斜に沿って下ることとなり、元の基準位置に戻る作用が働く。したがって自動に基準位置にまでローラ220、延いてはランナ20を位置付けることが可能となる。また、溝部226内に少なくとも突起部140の先端部が収容されているため、横揺れと共に縦揺れをも低減できる。
【0025】
図4に示される例では、ランナ20の基準位置において、溝部226bの上方側内壁面226-1と下方突起部140bの上面140-1とが僅かに離間している。これにより、通常のランナ20の走行時に下方ローラ220bと下方突起部140bとの接触を極力回避しつつ横揺れ低減の効果を奏することができる。一方、ランナ20の基準位置において、上方ローラ220aと同様に、下方ローラ220bにおいても、その溝部226bの上方側内壁面226-1と下方突起部140bの上面140-1とを当接させるようにしてもよい。このようにすることで横揺れ低減の効果をより一層高めることができ、横揺れ後において、ランナ20を基準位置に確実に位置付けることができる。
【0026】
さらに、図6に示されるように各ローラ220の溝部226に突起部140を食い込むように嵌合させてもよい。ここでの嵌合とは、具体的には、溝部226の上方側内壁面226-1と突起部140の上面140-1とが当接すると共に、下方側内壁面226-2と突起部140の下面140-2とが当接することを示す。このように溝部226に突起部140が嵌合することにより、ランナ20の安定した走行を維持しつつ、横揺れを完全に抑止することが可能となる。
【0027】
また、図7に示されるように、上方ローラ220aの溝部226aに上方突起部140aを嵌合させ、溝部226が形成されていないローラ220cを下方ローラ220bに代わり設けるようにしてもよい。この場合においても、下方ローラ220bの外周面に常に周接するよう下方突起部140bを形成すれば、図6に示される形態と同様に横揺れを完全に抑止することができる。
【0028】
(ハンガーレール10の配置例)
次に、ハンガーレール10の配置例を説明する。図8及び図9は、ハンガーレールの配置例を説明するための概略断面図である。なお、図8及び図9は、図2に示されるA-A線断面相当図となっている。図8に示されるように、2つの直線型のハンガーレール10Aの間に、L字型のハンガーレール10Bを介在させて連結させることでランナ20の走行経路をL字分岐とすることができ、ランナ20の走行を直角に変更することができる。また、図9に示されるように、3つの直線型のハンガーレール10Aを、T字型のハンガーレール10Cにそれぞれ連結することでランナ20の走行経路をT字分岐とすることができ、ランナ20の走行を多方向に変更することができる。
【0029】
本実施形態においては、ランナ20が上方ローラ220aと下方ローラ220bとの2段ローラにより構成されており、上述したように上方ローラ220aは上方突起部140aのみと当接し、下方ローラ220bはリブ120b及び/又は下方突起140bのみと当接する。したがって、各ローラ220のハンガーレール10内壁面との接触が少ないため、図8及び図9に示されるような走行経路がL字分岐及びT字分岐となっていても、安定した走行が可能となる。なお、図9に示すT字分岐では、お互いの高さが異なるリブ120aとリブ120bが交差する交差部Cが形成されるが、交差部Cは高低差を吸収する傾斜面に形成されることで、交差部Cにおいて、下方ローラ220bのスムーズな走行が可能となる。
【0030】
(ハンガーレール10の取付方法)
次に、ハンガーレール10の取付方法について説明する。図10はハンガーレールを屋内の天井に取り付けた状態を示す縦断面図であり、図11はハンガーレールを吊りパイプにより吊下げ支持した状態を示す斜視図である。図10に示されるように、ハンガーレール10は、ネジ等の固定部材により天井Dに固定することができ、当該固定状態においてジョイント部130に、棒状のレールジョイント40を挿通支持させることで、レールジョイント40を介して他のハンガーレール10と連結することができる。また、図11に示されるように、ハンガーレール10は、天井Dに直接固定せずに吊りパイプ60を介して天井Dや梁等により吊下げ支持するようにしてもよい。この時、2つのハンガーレール10間の継ぎ目部分に、平板状のレールジョイント50をネジ等により締結し、2つのハンガーレール10をより強固に連結させることが好ましい。
【0031】
(移動間仕切り装置1の使用例)
図12は、本実施形態に係る移動間仕切り装置におけるパネルの変形例を示す正面図である。移動間仕切り装置1は様々なパネルを吊下げ支持することができ、例えば図12に示されるようなパネル30Aを吊下げ支持することもできる。パネル30Aは、枠体310と遮蔽膜320とを有し、枠体310の上枠311と中枠312との間が開放されて空気の流動が可能な開放領域Eとなっており、中枠312と下枠313との間に遮蔽膜320が設けられている。また、下枠313は床面Fから離間しており、開放領域Eとなっている。遮蔽膜320は、中枠312と下枠313とにそれぞれ複数設けられた留め具330により着脱自在に支持されており、PET(Polyethylene Terephthalate)に代表される樹脂フィルム等の重量の軽いシート状物が用いられることが好ましい。
【0032】
このようなパネル30Aを吊下げ支持する移動間仕切り装置1によれば、遮蔽膜320の上方と下方とを開放領域Eとして空気の流動を許容することができると共に、遮蔽膜320の領域においては確実に空気の流動を遮蔽することができる。例えば遮蔽膜320を人が着座した際の顔位置前方を十分に覆う程度のサイズとすることで、オフィスのデスク回りや、会議等において個人間にパネル30Aを配置すれば、会話により生じる飛沫拡散の確実な防止ができ、飛沫感染予防を実現できる。この場合、遮蔽膜320表面を抗菌、抗ウイルス仕様とすることが好ましい。さらに、遮蔽膜320上下で空気の流動が可能であることから、パネル30A間における空気の滞留が生じず、換気や空調による空気の流れを遮ることがない。
【0033】
図13は、本実施形態に係る移動間仕切り装置のレイアウトを示す概略平面図である。図13においては、オフィスのデスク回りの作業空間Gを個別に仕切るレイアウト例が示されており、説明上、移動間仕切り装置1としてハンガーレール10とパネル30のみが示されている。なお、1つのパネル30は2つのランナ20により吊下げ支持されることとする。図13に示されるレイアウトでは、作業空間Gを個別に仕切るよう、人の前方側と側方側とを囲うようにハンガーレール10が連結されている。また、1つのパネル30を支持する2つのランナの離間距離と同様の距離分、2つのハンガーレール10を平行に離間させ、当該2つのハンガーレール10端部を1つのハンガーレール10により連結してなるコ字状の収容部70が複数のパネル30を収容可能に形成されている。この収容部70を形成するハンガーレール10と作業空間Gを囲うハンガーレール10とがそれぞれ連結されており、図中矢印に示されるように収容部70の複数のパネル30を移動させて適宜作業空間G回りに配置することも、配置されたパネル30を収容部70へ収容移動させることも容易に行うことができる。
【0034】
以上に説明した本実施形態によれば、少なくとも突起部140の先端部が溝部226内に位置しているため、横揺れ低減機能を実現しつつ、各ローラ220と両側壁110a,110bの壁面との間隙の縮小、即ちハンガーレール10の幅を狭めてレールの小型化が可能となる。また、上下2つのローラ220それぞれにおいて、突起部140と溝部226とが係合可能であるため、ランナ20の傾斜を抑止できる。特に、上方突起部140aが側壁110aの内壁面に突設され、下方突起部140bが走行面を形成するリブ120bを有する側壁110bの内壁面に突設されているため、傾斜の抑止効果は極めて高く、ランナ20の安定した走行を実現できる。なお、ランナ20を小型化し、それに応じてハンガーレール10を小型化したとしても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0035】
<第2の実施形態>
上述した第1の実施形態においては、下方ローラ220b下面が走行面となるリブ120b上面と一様に当接すると説明したがこれに限定するものではなく、下方ローラ220b下面の一部のみがリブ120bに当接するようにしてもよい。本実施形態においては、そのような構成の移動間仕切り装置を説明する。
【0036】
図14は、本実施形態に係るランナ周辺の縦断面図である。なお、図14はランナ20の支軸210軸心に沿った断面が示されている。図14に示されるように本実施形態に係る移動間仕切り装置1Aは、ハンガーレール10に代わり、ハンガーレール10Aを備える点で第1の実施形態に係る移動間仕切り装置1と異なる。
【0037】
ハンガーレール10Aは、ハンガーレール10と比較すると、側壁110b下部にリブ120bに代わりリブ120cが設けられている。リブ120cは、その上面が、対向するリブ120aの方向に向かって上方から下方に傾斜する傾斜面121となっている。下方ローラ220bは、その下面が略水平となることから周縁部のみが傾斜面121に当接することとなる。そのため、ランナ20の走行の際に下方ローラ220bは、その周縁部のみが傾斜面121に当接して回転する。したがって、第1の実施形態よりも下方ローラ220bの走行面に対する接触面積を低減することができ、ランナ20の走行をより良好なものとすることができる。なお、図14に示されるように、第1の実施形態と同様に上方突起部140と上方ローラ220aの溝部226aとが常に係合することから、下方ローラ220bの周縁部のみが傾斜面121に当接していてもランナ20が側壁110a側に傾斜することなく、略水平状態を維持することができる。
【0038】
<第3の実施形態>
上述した第1の実施形態においては、ランナ20が上方ローラ220aと下方ローラ220bとを有すると説明したがこれに限定するものではなく、ランナ20が1つのローラにより構成されるようにしてもよい。本実施形態においては、そのような構成の移動間仕切り装置について説明する。
【0039】
図15は、本実施形態に係る移動間仕切り装置を示す側面図である。なお、図15においてはハンガーレール10Bのみ縦断面で示されている。図15に示されるように、本実施形態に係る移動間仕切り装置1Bは、ハンガーレール10に代わりハンガーレール10Bを備え、ランナ20に代わりランナ20Bを備える点で第1の実施形態に係る移動間仕切り装置1と異なる。
【0040】
ハンガーレール10Bは、ハンガーレール10と比較すると、側壁110aに上方突起部140aが設けられているものの、下方突起部140bが設けられていない。また、ランナ20Bは、ランナ20と比較すると、上方ローラ220a及び下方ローラ220bに代わり、1つのローラ220dを有している。
【0041】
ローラ220dは、上方突起部140aに対応する箇所に、溝部226a,226bと同構成の溝部226dが形成されており、溝部226dは、その上方側内壁面226-1と上方突起部140aの上面140-1とが当接するように、上方突起部140aの先端部が内部に位置している。なお、溝部226dは、図15に示されるようにローラ220dの上下方向中心位置から上方にオフセットされた位置に設けられ、上方突起部140aもこの位置に対応して設けられることが好ましい。これは、走行面となるリブ120bから溝部226d及び上方突起部140aまでの離間距離が増大するに従い、ランナ20B移動時の横揺れ、特に揺動の低減効果を高めることができるためである。また、ローラ220dの下方部分は、側壁110a側に突出するように側壁110b下部に形成されたガイド部150に近接しており、ガイド部150が横揺れ低減の一機能を果たしている。
【0042】
以上に説明した本実施形態によれば、1つのローラ220dからなるランナ20Bにおいても、上方突起部140a先端が溝部226d内に位置して上方突起部140aと溝部226dとが係合可能となっているため、第1の実施形態に係る移動間仕切り装置1と同様の効果を奏することができる。
【0043】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の各実施形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0044】
1A,1B 移動間仕切り装置
10,10A,10B ハンガーレール
110a,110b 側壁(内壁)
120b リブ(走行片)
140 突起部
140-1 上面
140-2 下面
140a 上方突起部
140b 下方突起部
20,20B ランナ
210 支軸(支持軸)
220a 上方ローラ(挿通部、ローラ部)
220b,220c 下方ローラ(下方挿通部、下方ローラ部)
220d ローラ(挿通部、ローラ部)
221 ベアリング内輪(挿通部、下方挿通部)
222 ベアリング外輪(ローラ部、下方ローラ部)
226,226a,226b 溝部
226-1 上方側内壁面
226-2 下方側内壁面
30,30A パネル
図1
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