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特開2022-131412無線通信端末、受信判定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131412
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】無線通信端末、受信判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/08 20090101AFI20220831BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20220831BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20220831BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W88/06
H04W16/18 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030352
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 実
(72)【発明者】
【氏名】関根 伸浩
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
5K067LL11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】他の通信方式の電波を受信したか否かを簡易に判定することが可能な無線通信端末を提供する。
【解決手段】他の無線通信システムの1のチャネルと周波数帯域が重複する1の無線通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに、選択的に電波を受信する送受信部11と、複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有する電波が送受信部11により受信されたか否かを判定する電界強度判定部14と、複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有すると判定された電波が1の無線通信システムで用いられる電波であるか否かを判定するPHS電波判定部15と、所定以上の電界強度を有する電波を受信したと判定したチャネル数に対する、1の無線通信システムの電波と判定されたチャネル数の割合に基づいて、送受信部11が受信した電波が他の無線通信システムで用いられる電波を含むか否かを判定する判定処理部16と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の無線通信システムで通信を行う無線通信端末であって、
他の無線通信システムの1のチャネルと周波数帯域が重複する前記1の無線通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに、選択的に電波を受信する受信部と、
前記複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有する電波が前記受信部により受信されたか否かを判定する電界強度判定部と、
前記複数のチャネルの各々について、前記電界強度判定部により所定以上の電界強度を有すると判定された電波が前記1の無線通信システムで用いられる電波であるか否かを判定する電波判定部と、
前記複数のチャネルのうち前記所定以上の電界強度を有する電波が受信されたと判定されたチャネル数に対する、当該所定以上の電界強度を有する電波が前記1の無線通信システムの電波で用いられる電波であると判定されたチャネル数の割合に基づいて、前記受信部が受信した電波が前記他の無線通信システムで用いられる電波を含むか否かを判定する受信判定部と、
を有することを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記受信判定部は、前記所定以上の電界強度を有する電波が受信されたと判定されたチャネル数に対する、当該受信された電波が前記1の無線通信システムで用いられる電波であると判定されたチャネル数の割合が所定未満である場合に、前記受信部により受信された電波が前記他の無線通信システムで用いられる電波を含むと判定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記1の無線通信システムはPHS(Personal Handy-phone System)の通信システムであり、
前記電波判定部は、前記受信部が受信した電波の信号データに含まれるユニークワードに基づいて、当該電波がPHSの通信に用いられる電波であるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記他の無線通信システムは、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)又はsXGP(Shared eXtended Global Platform)の通信システムであることを特徴とする請求項3に記載の無線通信端末。
【請求項5】
1の無線通信システムで通信を行う無線通信端末が他の無線通信システムで用いられる電波を受信したか否かを判定する受信判定方法であって、
他の無線通信システムの1のチャネルと周波数帯域が重複する前記1の無線通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに、選択的に電波を受信するステップと、
前記複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有する電波が受信されたか否かを判定するステップと、
前記複数のチャネルの各々について、前記所定以上の電界強度を有すると判定された電波が前記1の無線通信システムで用いられる電波であるか否かを判定するステップと、
前記複数のチャネルのうち前記所定以上の電界強度を有する電波が受信されたと判定されたチャネル数に対する、当該所定以上の電界強度を有する電波が前記1の無線通信システムの電波で用いられる電波であると判定されたチャネル数の割合に基づいて、受信した電波が前記他の無線通信システムで用いられる電波を含むか否かを判定するステップと、
を含むことを特徴とする受信判定方法。
【請求項6】
1の無線通信システムで通信を行う無線通信端末に、当該無線通信端末が他の無線通信システムで用いられる電波を受信したか否かを判定させるプログラムであって、
前記無線通信端末に、
他の無線通信システムの1のチャネルと周波数帯域が重複する前記1の無線通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに、選択的に電波を受信するステップと、
前記複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有する電波が受信されたか否かを判定するステップと、
前記複数のチャネルの各々について、前記所定以上の電界強度を有すると判定された電波が前記1の無線通信システムで用いられる電波であるか否かを判定するステップと、
前記複数のチャネルのうち前記所定以上の電界強度を有する電波が受信されたと判定されたチャネル数に対する、当該所定以上の電界強度を有する電波が前記1の無線通信システムの電波で用いられる電波であると判定されたチャネル数の割合に基づいて、受信した電波が前記他の無線通信システムで用いられる電波を含むか否かを判定するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末、特にPHSの無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
PHS(Personal Handy-phone System)方式の通信システムと他の方式の通信システムとで通信エリアが重複する場合がある。例えば、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)方式やsXGP(Shared eXtended Global Platform)方式の通信システムは、自営標準PHSシステムと重複する周波数帯域を利用している。
【0003】
このように異なる通信システムの通信エリアが重複した場合に、通信品質を確保するため、電波干渉の発生を検出してチャネルを切り替えることが可能なシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、自営標準PHSシステムの企画であるRCR-STD28の第7版において、自営標準PHSシステムと同帯域を利用するsXGP方式の通信システムに関する対応についての規定が設けられている。当該規定では、sXGP等の他の通信方式の装置の有無を電波測定により調査することが義務付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-120933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、PHSシステムの電波帯域の測定を行う機器は製造が終了しているものもあり、入手が困難な状況にある。一方、sXGP方式やDECT方式等の自営標準PHSと同じ周波数帯域を利用している通信システムにも測定器は存在する。しかし、これらの測定器は同一帯域を利用する他のシステムの有無を調査することを目的としておらず、PHSと同帯域の電波を利用する他の通信方式の機器の有無を簡易に調査する目的で利用することは困難である。
【0007】
また、周波数帯域を測定する測定器としてはスペクトクルアナライザも存在するが、波形のみを画面表示するものであり、波形から他の通信方式の機器があるか否かを推測するのは困難であり、簡易に調査を行うことができないという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、他の通信方式の機器の有無を簡易に判定することが可能な無線通信端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線通信端末は、1の無線通信システムで通信を行う無線通信端末であって、他の無線通信システムの1のチャネルと周波数帯域が重複する前記1の無線通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに、選択的に電波を受信する受信部と、前記複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有する電波が前記受信部により受信されたか否かを判定する電界強度判定部と、前記複数のチャネルの各々について、前記電界強度判定部により所定以上の電界強度を有すると判定された電波が前記1の無線通信システムで用いられる電波であるか否かを判定する電波判定部と、前記複数のチャネルのうち前記所定以上の電界強度を有する電波が受信されたと判定されたチャネル数に対する、当該所定以上の電界強度を有する電波が前記1の無線通信システムの電波で用いられる電波であると判定されたチャネル数の割合に基づいて、前記受信部が受信した電波が前記他の無線通信システムで用いられる電波を含むか否かを判定する受信判定部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る受信判定方法は、1の無線通信システムで通信を行う無線通信端末が他の無線通信システムで用いられる電波を受信したか否かを判定する受信判定方法であって、他の無線通信システムの1のチャネルと周波数帯域が重複する前記1の無線通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに、選択的に電波を受信するステップと、
前記複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有する電波が受信されたか否かを判定するステップと、前記複数のチャネルの各々について、前記所定以上の電界強度を有すると判定された電波が前記1の無線通信システムで用いられる電波であるか否かを判定するステップと、前記複数のチャネルのうち前記所定以上の電界強度を有する電波が受信されたと判定されたチャネル数に対する、当該所定以上の電界強度を有する電波が前記1の無線通信システムの電波で用いられる電波であると判定されたチャネル数の割合に基づいて、受信した電波が前記他の無線通信システムで用いられる電波を含むか否かを判定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプログラムは、1の無線通信システムで通信を行う無線通信端末に、当該無線通信端末が他の無線通信システムで用いられる電波を受信したか否かを判定させるプログラムであって、前記無線通信端末に、他の無線通信システムの1のチャネルと周波数帯域が重複する前記1の無線通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに、選択的に電波を受信するステップと、前記複数のチャネルの各々について、所定以上の電界強度を有する電波が受信されたか否かを判定するステップと、前記複数のチャネルの各々について、前記所定以上の電界強度を有すると判定された電波が前記1の無線通信システムで用いられる電波であるか否かを判定するステップと、前記複数のチャネルのうち前記所定以上の電界強度を有する電波が受信されたと判定されたチャネル数に対する、当該所定以上の電界強度を有する電波が前記1の無線通信システムの電波で用いられる電波であると判定されたチャネル数の割合に基づいて、受信した電波が前記他の無線通信システムで用いられる電波を含むか否かを判定するステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線通信端末を用いて他の通信方式の電波を受信したか否かを判定することにより、当該他の通信方式の機器の有無を簡易に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例の通信端末を含む通信システムの構成を示す図である。
図2】DECT及びsXGPの電波の周波数帯域及びチャネルとPHSのチャネルとの関係を示す図である。
図3】DECTの各チャネルとPHSの各チャネルとの関係を模式的に示す図である。
図4】無線通信端末の構成を示すブロック図である。
図5】PHSの電波とDECT及びsXGPの電波との重なり合いを模式的に示す図である。
図6】本実施例の他装置判定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【0015】
図1は、本実施例の無線通信端末を含む通信システム100の構成を示す図である。通信システム100は、PHS(Personal Handy-phone System)方式で通信を行う無線通信端末10及びPHS通信の基地局であるPHS基地局21から構成されている。本実施例では、無線通信端末10及びPHS基地局21が、それぞれ自営標準PHS端末及び自営標準PHSの基地局である場合を例として、以下説明する。
【0016】
DECT基地局22は、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)方式による通信の基地局である。sXGP基地局23は、sXGP(Shared eXtended Global Platform)方式による通信の基地局である。DECT及びsXGPは、それぞれPHSとは異なる通信システムであり、それぞれPHSの複数チャネル分と周波数帯域が重複するチャネルを有する。
【0017】
図2は、DECT及びsXGPの電波の周波数帯域及びチャネルとPHSのチャネルとの関係を示す図である。また、図3は、DECTの各チャネルとPHSの各チャネルとの関係を模式的に示す図である。
【0018】
DECTのチャネルF1は、中心周波数1895.616MHzの周波数帯域であり、PHSの255~5チャネルと周波数帯域が重複している。DECTのチャネルF2は、中心周波数1897.344MHzの周波数帯域であり、PHSの5~11チャネルと周波数帯域が重複している。DECTのチャネルF3は、中心周波数1899.072MHzの周波数帯域であり、PHSの11~17チャネルと周波数帯域が重複している。DECTのチャネルF4は、中心周波数1900.800MHzの周波数帯域であり、PHSの17~23チャネルと周波数帯域が重複している。DECTのチャネルF5は、中心周波数1902.528MHzの周波数帯域であり、PHSの23~28チャネルと周波数帯域が重複している。DECTのチャネルF6は、中心周波数1904.256MHzの周波数帯域であり、PHSの28~34チャネルと周波数帯域が重複している。また、sXGPのチャネルF0は、中心周波数1899.100MHzの周波数帯域であり、PHSの6~23チャネルと周波数帯域が重複している。
【0019】
このように、DECTの1チャネルはPHSの6チャネル分と重複する周波数帯域を有する。また、sXGPの1チャネルはPHSの18チャネル分と重複する周波数帯域を有する。
【0020】
再び図1を参照すると、本実施例の無線通信端末10は、PHSとは異なる通信システムであるDECT又はsXGPの通信システムで通信を行う装置が自身の通信エリア内(すなわち、電波を受信可能な範囲内)に存在しているか否かを判定する処理である他装置判定処理を実行する機能を有する。他装置判定処理では、無線通信端末10が他の通信システムで用いられる電波を受信したか否かを判定することにより、他方式通信装置の有無を判定する。この他装置判定処理の詳細については、後述する。
【0021】
図4は、無線通信端末10の構成を示すブロック図である。無線通信端末10は、送受信部11、変復調部12、受信データ解析部13、判定処理部16及び出力部17を有する。
【0022】
送受信部11は、例えばアンテナを含み、無線通信に係る電波の送受信を行う。すなわち、送受信部11は、PHS基地局21を介して他の無線通信端末に電波を送信し、PHS基地局21を介して他の無線通信端末からの電波を受信する。
【0023】
なお、本実施例では、DECT方式の通信装置からDECT基地局22を介して送信された電波や、sXGP方式の通信装置からsXGP基地局23を介して送信された電波のように、PHS以外の他の通信システムで用いられる電波も送受信部11によって受信される。また、後述する他装置判定処理において、送受信部11は、PHSの通信システムの複数のチャネルの各々の帯域ごとに選択的に電波を受信する。
【0024】
変復調部12は、送受信部11から送信する信号の変調処理及び送受信部11が受信した電波の復調処理を行う。以下の説明では、送受信部11が受信した電波に復調処理を施したデータを受信データと称する。なお、受信データは、データ本体部である情報データの他、プリアンブル、ユニークワードUW及びCRCビットを含む。
【0025】
受信データ解析部13は、他装置判定処理の前提となる受信電波のデータ解析を実行する機能ブロックである。受信データ解析部13は、電界強度判定部14及びPHS電波判定部15を含む。
【0026】
電界強度判定部14は、送受信部11が受信した電波(以下、受信電波と称する)の電界強度を測定し、測定した電界強度が35dBμV以上であるか否かを判定する。
【0027】
PHS電波判定部15は、電界強度判定部12により電界強度が35dBμV以上であると判定された電波について、その電波が自営標準PHSの電波であるか否かを判定する。PHS電波判定部15は、受信データに含まれるユニークワードUWに基づいて、受信電波がPHS通信による電波か否かを判定する。
【0028】
受信データ解析部13は、DECT又はsXGPの1チャネルと重複するPHSの複数のチャネルの各々に対応する周波数帯域ごとに、電界強度判定部14及びPHS電波判定部15による判定を実行し、その判定結果を判定処理部16に供給する。
【0029】
判定処理部16は、受信データ解析部13の解析結果に基づいて、受信電波にPHS以外の他の通信システムで用いられる電波が含まれるか否かを判定することにより、無線通信端末10の通信エリア内(すなわち、電波を受信可能な範囲内)に当該他の通信システムの装置が存在しているか否かを判定する。
【0030】
具体的には、判定処理部16は、他の通信システムの1チャネルに対応するPHSの複数チャネルのうち、電界強度が35dBμV以上の電波を受信したチャネルに対するPHSの通信システムに係る電波を受信したチャネルの割合が20%未満であるか否かに基づいて、受信電波に当該他の通信システムで用いられる電波が含まれるか否かを判定する。なお、本実施例では、DECTの1チャネル分に対応するPHSのチャネルが6チャネルであるため、周波数帯域が重なる割合を考慮して、判定基準を20%としている。
【0031】
図5は、PHSの電波とDECT及びsXGPの電波との重なり合いを模式的に示す図である。
【0032】
例えば、PHSによる通話等で1chを使用している場合、その周囲1ch分は電波が漏れ出した状態(図の破線の状態)となる。このようにPHSのチャネルが左右1ch分(すなわち、±1ch分)広がっているため、PHSによる通話で使用しているチャネルが多いと、DECTやsXGPに類似した波形になる場合がある。
【0033】
そこで、本実施例の無線通信端末10は、周波数帯域が重複するPHSのチャネルとDECT及びsXGPのチャネルとの対応関係に鑑みて、他の通信システムの1チャネルと重複するPHSの複数のチャネルにおいて、電界強度が所定以上の電波を受信したチャネルに対するPHSの電波を受信したと判定されたチャネルの割合が所定以上(本実施例では20%以上)である場合にはPHSの電波のみを受信していると判定し、割合が所定未満(本実施例では20%未満)である場合にはPHS以外の他の通信システムで用いられる電波を受信している(すなわち、送受信部11が受信した電波に他の通信システムで用いられる電波が含まれる)と判定している。
【0034】
なお、他装置判定処理では、DECT及びsXGPの1チャネルに対応する周波数帯域を判定対象の帯域として設定し、設定された帯域について判定処理を行う。したがって、設定帯域を変えつつ判定処理を繰り返し実行することにより、PHSのチャネルと重複する他の通信システムのチャネルの各々について判定処理を行うことができる。
【0035】
再び図4を参照すると、出力部17は、例えばスピーカや液晶表示パネルを含む表示部から構成され、音声又は画像により判定処理部16の判定結果を出力する。
【0036】
次に、本実施例の無線通信端末10が実行する他装置判定処理の処理ルーチンについて、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
まず、受信データ解析部13は、調査対象となる電波の周波数帯域を設定する(STEP101)。ここでは、他の通信方式の1チャネルに相当する周波数帯域を調査対象の周波数帯域として設定する。例えば、DECTのF1チャネルに相当する周波数帯域が調査対象の周波数帯域として設定される。
【0038】
次に、受信データ解析部13は、STEP101で設定した周波数帯域に対応するPHSの複数のチャネルのうち、1つのチャネルを受信データ解析の対象の周波数帯域として指定する(STEP102)。例えば、DECTF1チャネルに相当する周波数帯域が調査対象の周波数帯域として指定されている場合、これに対応するPHSのチャネル255~5チャネルのうちの第255チャネルに相当する周波数帯域を解析対象のチャネル(周波数帯域)として指定する。なお、受信データ解析部13は、後述するSTEP103~108の処理を繰り返すごとに、隣接する次のPHSのチャネル(周波数帯域)を受信データ解析の対象として指定する。例えば、PHSの第255チャネルに相当する周波数帯域が指定され、STEP103~108の処理が完了した場合、次はPHSの第1チャネルに相当する周波数帯域を解析対象のチャネルとして指定する。
【0039】
送受信部11は、指定されたチャネル(周波数帯域)の電波を受信する(STEP103)。
【0040】
電界強度判定部14は、送受信部11が受信した電波の電界強度を測定し、測定した電界強度が35dbμV以上であるか否かを判定する(STEP104)。
【0041】
電界強度が35dbμV以上ではない(すなわち、35dbμV未満である)と判定すると(STEP104:NO)、STEP108に移行する。
【0042】
一方、電界強度が35dbμV以上であると判定すると(STEP104:YES)、受信データ解析部13は、当該電波を有効電波としてカウント(すなわち、カウント数を+1)する(STEP105)。
【0043】
次に、STEP105で有効電波としてカウントされた電波に対し、PHS電波判定部15は、当該電波がPHSの電波であるか否かを判定する(STEP106)。なお、PHSの電波であるか否かの判定は、上記の通り受信データに含まれるユニークワードを用いて行う。
【0044】
PHSの電波ではないと判定すると(STEP106:NO)、STEP108に移行する。
【0045】
一方、PHSの電波であると判定すると(STEP106:YES)、受信データ解析部13は、当該電波をPHSの電波としてカウント(すなわち、カウント数を+1)する(STEP107)。
【0046】
受信データ解析部13は、STEP101で調査対象として設定した周波数帯域について調査が完了したか否かを判定する(STEP108)。すなわち、受信データ解析部13は、調査対象として設定した周波数帯域(例えば、DECTのF1チャネル)に含まれる複数の解析対象の周波数帯域(例えば、PHSの255~5チャネル)の各々について調査が完了したか否かを判定する。
【0047】
設定帯域の調査が完了していないと判定すると(STEP108:NO)、STEP102に戻り、PHSの次のチャネル(周波数帯域)を解析対象の周波数帯域として指定する。
【0048】
一方、設定帯域の調査が完了したと判定すると(STEP108:YES)、判定処理部16は、有効電波(すなわち、電界強度が35dbμV以上の電波)を受信したチャネルに対する、PHSの電波を受信したチャネルの割合が20%未満であるか否かを判定する(STEP109)。
【0049】
PHSの電波を受信したチャネルの割合が20%未満であると判定すると(STEP109:YES)、判定処理部16は、受信電波にPHS以外の他の通信方式で用いられる電波が含まれている、すなわち無線通信端末10の通信エリア内にPHS以外の他の通信方式の対象装置があると判定する(STEP110)。
【0050】
一方、PHSの電波を受信したチャネルの割合が20%未満ではない(すなわち、20%以上である)と判定すると(STEP109:NO)、判定処理部16は、受信電波にPHS以外の他の通信方式で用いられる電波が含まれていない、すなわち無線通信端末10の通信エリア内にPHS以外の他の通信方式の対象装置はないと判定する(STEP111)。
【0051】
出力部17は、STEP110又はSTEP111の判定を受け、判定結果を出力する(STEP112)。
【0052】
以上のような一連の処理ステップを経て、PHS以外の他の通信システムの装置が通信エリア内に存在するか否かが判定される。
【0053】
電界強度の測定及びユニークワードによるPHS電波の判定は、既存のPHSの通信端末に備わっている機能であり、この機能を用いて受信データ解析部13及び判定処理部16のような動作を実行させるソフトウェア(プログラム)を無線通信端末10に内蔵させることにより、上記の他装置判定処理を実行させることが可能である。
【0054】
したがって、本実施例の無線通信端末10によれば、専用の機器等を用いることなく、PHSの通信端末としての機能を用いて判定を行うことができるため、当該通信端末が属している電波環境における他の通信方式の機器の有無を簡易に判定することが可能となる。
【0055】
また、PHSと同帯域の他の通信システムの有無を調査することにより、電波干渉による通話等への支障が発生する可能性を把握できるため、通信品質の向上が期待できる。
【0056】
なお、本発明の実施形態は、上記実施例に記載したものに限られない。例えば、上記実施例では、自営標準PHSの端末を用いて自営標準PHSの電波帯域の調査を行う場合を例として説明した。しかし、これに限られず、本実施例の無線通信装置の構成は、自営標準PHS以外の無線通信装置(例えば、DECTの通信装置、sXGPの通信装置)が同様の調査を行う場合にも適用可能である。
【0057】
すなわち、(1)自身の通信システムの電波帯域について電波の受信を行い、電界強度を測定する機能、(2)受信した電波が自身の通信システムで用いられる電波であるか否かを判定し、自身の通信システムで用いられる電波と他の通信システムで用いられる電波とを判別する機能、をそれぞれ有していれば良い。その際、上記実施例では有効電波を受信したチャネルのうちPHSの電波を受信したチャネルの割合が20%未満であるか否かを判定基準として用いたが、その判定基準を、電波の強さや自身の通信システムで用いられる電波と他の通信システムで用いられる電波とが混在する状況に応じて適宜変更することにより、PHS以外の通信端末においても上記実施例と同様の処理を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 通信システム
10 無線通信端末
11 送受信部
12 変復調部
13 受信データ解析部
14 電界強度判定部
15 PHS電波判定部
16 判定処理部
17 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6