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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131413
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/06 20220101AFI20220831BHJP
   H01L 21/26 20060101ALI20220831BHJP
   G01J 5/00 20220101ALN20220831BHJP
【FI】
G01J5/10 B
H01L21/26 T
H01L21/26 G
G01J5/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030353
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大西 脩平
(72)【発明者】
【氏名】北澤 貴宏
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC11
2G066AC20
2G066BC12
2G066BC15
2G066CB01
2G066CB02
(57)【要約】
【課題】基板の表裏面ともに放射率が未知であっても、基板の表面温度を正確に測定することができる熱処理方法を提供する。
【解決手段】表面に熱電対が取り付けられた熱電対付きウェハーをハロゲンランプからの光照射によって加熱しつつ、その熱電対付きウェハーの表面温度を熱電対によって測定するとともに裏面の温度を裏面側放射温度計によって測定する。熱電対によって測定された熱電対付きウェハーの温度に基づいて裏面側放射温度計に設定された放射率を校正する。次に、表面にパターンが形成された半導体ウェハーをハロゲンランプからの光照射によって加熱しつつ、その半導体ウェハーの裏面および表面の温度をそれぞれ裏面側放射温度計および表面側放射温度計によって測定する。裏面側放射温度計によって測定された半導体ウェハーの温度に基づいて表面側放射温度計に設定された放射率を校正する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の温度を測定する温度測定方法であって、
表面に接触式温度計が取り付けられた第1基板を加熱しつつ前記第1基板の裏面の温度を裏面側放射温度計によって測定し、前記接触式温度計によって測定された前記第1基板の温度に基づいて前記裏面側放射温度計に設定された放射率を校正する第1校正工程と、
表面にパターンの形成された第2基板を加熱しつつ前記第2基板の裏面および表面の温度をそれぞれ前記裏面側放射温度計および表面側放射温度計によって測定し、前記裏面側放射温度計によって測定された前記第2基板の温度に基づいて前記表面側放射温度計に設定された放射率を校正する第2校正工程と、
光照射によって加熱される前記第2基板の表面温度を前記表面側放射温度計によって測定する温度測定工程と、
を備えることを特徴とする温度測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の温度測定方法において、
前記第1校正工程および前記第2校正工程では、連続点灯ランプからの光照射によって前記第1基板および前記第2基板を加熱することを特徴とする温度測定方法。
【請求項3】
請求項2記載の温度測定方法において、
前記第1校正工程では、前記連続点灯ランプからの光照射によって前記第1基板を所定温度に維持しているときに前記接触式温度計および前記裏面側放射温度計によって前記第1基板の温度を測定し、
前記第2校正工程では、前記連続点灯ランプからの光照射によって前記第2基板を所定温度に維持しているときに前記裏面側放射温度計および前記表面側放射温度計によって前記第2基板の温度を測定することを特徴とする温度測定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の温度測定方法において、
前記温度測定工程では、フラッシュランプから前記第2基板の表面にフラッシュ光を照射したときに昇温する前記第2基板の表面の温度を前記表面側放射温度計によって測定することを特徴とする温度測定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の温度測定方法において、
前記第1基板を挟んで前記接触式温度計の取り付け位置と前記裏面側放射温度計の温度測定位置とは対称な位置であり、
前記第2基板を挟んで前記裏面側放射温度計の温度測定位置と前記表面側放射温度計の温度測定位置とは対称な位置であることを特徴とする温度測定方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の温度測定方法において、
前記第2基板の表面温度を測定する際に前記表面側放射温度計の受光素子を0℃以下に冷却することを特徴とする温度測定方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の温度測定方法において、
前記第1基板および前記第2基板を収容するチャンバーの壁面を冷却することを特徴とする温度測定方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の温度測定方法において、
前記接触式温度計は熱電対であることを特徴とする温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)の温度を非接触にて測定する温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプアニールに限らず、半導体ウェハーの熱処理においては、ウェハー温度の管理が重要となる。典型的には、熱処理中の半導体ウェハーの温度は放射温度計によって非接触で測定される。放射温度計によって高精度の温度測定を行うためには、被測定物の放射率を正確に放射温度計に設定する必要がある。従って、フラッシュ光照射時に急激に変化する半導体ウェハーの表面温度を放射温度計によって正確に測定するためには、半導体ウェハーの表面の放射率を放射温度計に設定する必要がある。
【0006】
ところが、フラッシュ光が照射される半導体ウェハーの表面には何らかのパターンが形成されていることが多い。半導体ウェハーの表面の放射率はパターンに依存する。すなわち、半導体ウェハーの表面に形成されているパターンが異なると、当該表面の放射率も異なるのである。このため、加熱処理の対象となる半導体ウェハーごとに表面の放射率を求めて放射温度計に設定する必要性が生じる。
【0007】
特許文献1には、裏面の放射率が既知の半導体ウェハーの当該裏面の温度を正確に測定し、それに基づいて半導体ウェハーの表面の放射率を算定して当該表面の温度を測定する技術が開示されている。また、特許文献2には、放射率が既知のモニタ用ウェハーを測定対象の半導体ウェハーに近接して設置し、モニタ用ウェハーの温度測定値に基づいて半導体ウェハーの放射率を求め、半導体ウェハーの温度を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-185898号公報
【特許文献2】特開平5-299428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、半導体ウェハーの裏面の放射率が既知でなければ適用することができない。一方、特許文献2に開示される技術では、放射率が既知のモニタ用ウェハーを別途用意する必要がある。また、特許文献2に開示される技術では、モニタ用ウェハーを測定対象の半導体ウェハーに接触させるため、当該半導体ウェハーの表面に形成されているパターンに傷をつけてしまうおそれもある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の表裏面ともに放射率が未知であっても、基板の表面温度を正確に測定することができる熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板の温度を測定する温度測定方法において、表面に接触式温度計が取り付けられた第1基板を加熱しつつ前記第1基板の裏面の温度を裏面側放射温度計によって測定し、前記接触式温度計によって測定された前記第1基板の温度に基づいて前記裏面側放射温度計に設定された放射率を校正する第1校正工程と、表面にパターンの形成された第2基板を加熱しつつ前記第2基板の裏面および表面の温度をそれぞれ前記裏面側放射温度計および表面側放射温度計によって測定し、前記裏面側放射温度計によって測定された前記第2基板の温度に基づいて前記表面側放射温度計に設定された放射率を校正する第2校正工程と、光照射によって加熱される前記第2基板の表面温度を前記表面側放射温度計によって測定する温度測定工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る温度測定方法において、前記第1校正工程および前記第2校正工程では、連続点灯ランプからの光照射によって前記第1基板および前記第2基板を加熱することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る温度測定方法において、前記第1校正工程では、前記連続点灯ランプからの光照射によって前記第1基板を所定温度に維持しているときに前記接触式温度計および前記裏面側放射温度計によって前記第1基板の温度を測定し、前記第2校正工程では、前記連続点灯ランプからの光照射によって前記第2基板を所定温度に維持しているときに前記裏面側放射温度計および前記表面側放射温度計によって前記第2基板の温度を測定することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る温度測定方法において、前記温度測定工程では、フラッシュランプから前記第2基板の表面にフラッシュ光を照射したときに昇温する前記第2基板の表面の温度を前記表面側放射温度計によって測定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれかの発明に係る温度測定方法において、前記第1基板を挟んで前記接触式温度計の取り付け位置と前記裏面側放射温度計の温度測定位置とは対称な位置であり、前記第2基板を挟んで前記裏面側放射温度計の温度測定位置と前記表面側放射温度計の温度測定位置とは対称な位置であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る温度測定方法において、前記第2基板の表面温度を測定する際に前記表面側放射温度計の受光素子を0℃以下に冷却することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る温度測定方法において、前記第1基板および前記第2基板を収容するチャンバーの壁面を冷却することを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る温度測定方法において、前記接触式温度計は熱電対であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1から請求項8の発明によれば、接触式温度計によって測定された第1基板の温度に基づいて裏面側放射温度計に設定された放射率を校正し、裏面側放射温度計によって測定された第2基板の温度に基づいて表面側放射温度計に設定された放射率を校正するため、接触式温度計によって得られた正確な温度測定値に基づいて裏面側放射温度計および表面側放射温度計に設定された放射率を2段階で校正することとなり、基板の表裏面ともに放射率が未知であっても、基板の表面温度を正確に測定することができる。
【0020】
特に、請求項3の発明によれば、第1基板および第2基板を所定温度に維持しているときに温度測定を行うため、第1基板および第2基板の表裏面で温度差がなく、裏面側放射温度計および表面側放射温度計に設定された放射率を正確に校正することができる。
【0021】
特に、請求項5の発明によれば、第1基板を挟んで接触式温度計の取り付け位置と裏面側放射温度計の温度測定位置とは対称な位置であり、第2基板を挟んで裏面側放射温度計の温度測定位置と表面側放射温度計の温度測定位置とは対称な位置であるため、第1基板および第2基板の表裏面で温度差がなく、裏面側放射温度計および表面側放射温度計に設定された放射率を正確に校正することができる。
【0022】
特に、請求項6の発明によれば、第2基板の表面温度を測定する際に表面側放射温度計の受光素子を0℃以下に冷却するため、表面側放射温度計の受光素子は高感度を維持することができ、基板の表面温度を正確に測定することができる。
【0023】
特に、請求項7の発明によれば、チャンバーの壁面を冷却するため、裏面側放射温度計および表面側放射温度計に入射する迷光の影響を抑制することができ、温度測定の精度低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る温度測定方法を実施する熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図3】サセプタの平面図である。
図4】サセプタの断面図である。
図5】移載機構の平面図である。
図6】移載機構の側面図である。
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図8】表面側放射温度計および裏面側放射温度計の機能ブロック図である。
図9】本発明に係る温度測定方法の手順を示すフローチャートである。
図10】熱電対の測定値に基づく裏面側放射温度計の放射率校正を模式的に説明する図である。
図11】裏面側放射温度計の測定値に基づく表面側放射温度計の放射率校正を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る温度測定方法を実施する熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0027】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0028】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0029】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0030】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0031】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0032】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aおよび貫通孔61bが穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を表面側放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。一方、貫通孔61bは、半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を裏面側放射温度計20の赤外線センサー24に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aおよび貫通孔61bは、それらの貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、表面側放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、裏面側放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0033】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。
【0034】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0035】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してチャンバー6内の気体が排気される。
【0036】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0037】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0038】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図3は、サセプタ74の平面図である。また、図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0039】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0040】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0041】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0042】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0043】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0044】
また、図2および図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、裏面側放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、裏面側放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。なお、半導体ウェハーWの面内温度分布を測定するため、裏面側放射温度計20を複数設けてもよい。裏面側放射温度計20を複数設ける場合、開口部78も複数設ける必要がある。
【0045】
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0046】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0047】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0048】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0049】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0050】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0051】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0052】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0053】
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0054】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0055】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0056】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0057】
図1に示すように、チャンバー6には、表面側放射温度計25および裏面側放射温度計20の2つの放射温度計が設けられている。図8は、表面側放射温度計25および裏面側放射温度計20の機能ブロック図である。表面側放射温度計25は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め上方に設置され、当該半導体ウェハーWの上面の温度を測定する。表面側放射温度計25は、赤外線センサー29、増幅器28および温度測定ユニット27を備える。赤外線センサー29は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を受光する。赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウェハーWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えている。赤外線センサー29は、受光に応答して生じた信号を増幅器28に伝達する。赤外線センサー29から出力された信号は増幅器28によって増幅されてから温度測定ユニット27に入力される。温度測定ユニット27は、図示を省略するA/Dコンバータおよび温度変換回路等を備えており、赤外線センサー29から出力された赤外光の強度を示す信号を温度に変換する。温度測定ユニット27によって求められた温度が半導体ウェハーWの上面の温度である。
【0058】
一方、裏面側放射温度計20は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め下方に設けられ、当該半導体ウェハーWの下面の温度を測定する。裏面側放射温度計20は、赤外線センサー24、増幅器23および温度測定ユニット22を備える。赤外線センサー24は、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を受光する。赤外線センサー24は、受光に応答して生じた信号を増幅器23に伝達する。赤外線センサー24から出力された信号は増幅器23によって増幅されてから温度測定ユニット22に入力される。温度測定ユニット22は、図示を省略するA/Dコンバータおよび温度変換回路等を備えており、赤外線センサー24から出力された赤外光の強度を示す信号を温度に変換する。温度測定ユニット22によって求められた温度が半導体ウェハーWの下面の温度である。
【0059】
また、表面側放射温度計25の赤外線センサー29には冷却素子95が付設されている。冷却素子95としては、例えばペルチェ素子が用いられる。冷却素子95は電力制御部96と電気的に接続されている。電力制御部96が冷却素子95に供給する電力を制御することによって、冷却素子95は赤外線センサー29の受光素子を0℃以下に冷却する。本実施形態では、例えば赤外線センサー29の受光素子を-25℃に冷却する。赤外線センサー29が備えるInSbの受光素子は温度が高くなると検出感度が低下するのであるが、冷却素子95によって当該受光素子を0℃以下に冷却することにより赤外線センサー29は高感度を維持することができる。
【0060】
裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25は、熱処理装置1全体のコントローラである制御部3と電気的に接続されており、裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25によってそれぞれ測定された半導体ウェハーWの下面および上面の温度は制御部3に伝達される。制御部3は、熱処理装置1に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0061】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。当該水冷管に熱処理装置1の外部から冷却水を供給することによって、チャンバー6の壁面を冷却する。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0062】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。ここではまず、製品となる通常の半導体ウェハー(プロダクトウェハー)Wに対する熱処理動作について説明する。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0063】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0064】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0065】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0066】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0067】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、被処理面である表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0068】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0069】
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度は裏面側放射温度計20によって測定される。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、裏面側放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0070】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、裏面側放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0071】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0072】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0073】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇した後、急速に下降する。
【0074】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は裏面側放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、裏面側放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0075】
フラッシュ加熱時に瞬間的に昇温する半導体ウェハーWの表面の温度は表面側放射温度計25によって測定される。ところが、一般的には製品となる半導体ウェハーWの表面にはパターンが形成されていることが多い。形成されているパターンによって半導体ウェハーWの表面の放射率も異なる。よって、熱処理装置1にて加熱処理される半導体ウェハーWごとに表面の放射率を求めて表面側放射温度計25に設定しなければ、半導体ウェハーWの表面温度を正確に測定することはできない。本実施形態においては、以下のようにして半導体ウェハーWの表面温度を正確に測定している。
【0076】
図9は、本発明に係る温度測定方法の手順を示すフローチャートである。まず、製品となる半導体ウェハーWの処理に先立って、熱電対付きウェハー(第1基板)TWがチャンバー6内に搬入される(ステップS1)。熱電対付きウェハーTWは、製品となる半導体ウェハーWと同様の円板形状のシリコンウェハーであり、半導体ウェハーWと同様のサイズおよび形状を有する。但し、熱電対付きウェハーTWには、パターン形成や成膜はなされていない。また、熱電対付きウェハーTWの表面には熱電対が取り付けられている。熱電対は金属線にて構成されているため、熱電対付きウェハーTWを搬送ロボットによってチャンバー6内に搬入することはできない。このため、熱電対付きウェハーTWは手動にてチャンバー6内に搬入されてサセプタ74に載置される。
【0077】
熱電対付きウェハーTWが石英のサセプタ74に載置された後、ハロゲンランプHLからの光照射が開始されて熱電対付きウェハーTWが加熱される(ステップS2)。ハロゲンランプHLからの光照射による熱電対付きウェハーTWの加熱は、上述した半導体ウェハーWの予備加熱とほぼ同様である。すなわち、ハロゲンランプHLから出射された光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して熱電対付きウェハーTWの裏面に照射され、熱電対付きウェハーTWの温度が上昇する。ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する熱電対付きウェハーTWの温度は裏面側放射温度計20によって測定される。そして、裏面側放射温度計20による温度測定値に基づいて、熱電対付きウェハーTWの温度が所定温度となるように制御部3によってハロゲンランプHLの出力がフィードバック制御される。熱電対付きウェハーTWの温度が所定温度に到達した後は、ハロゲンランプHLからの光照射によって熱電対付きウェハーTWが当該所定温度に一定時間維持される。
【0078】
熱電対付きウェハーTWの温度が所定温度に維持されている間に、熱電対の測定値に基づいて裏面側放射温度計20の放射率校正が実行される(ステップS3)。図10は、熱電対99の測定値に基づく裏面側放射温度計20の放射率校正を模式的に説明する図である。ハロゲンランプHLからの光照射によって熱電対付きウェハーTWが所定温度に一定時間維持されている。熱電対付きウェハーTWの表面には熱電対99が取り付けられている。ハロゲンランプHLからの光照射によって所定温度に加熱されている熱電対付きウェハーTWの表面の温度は熱電対99によって測定される。
【0079】
一方、ハロゲンランプHLからの光照射によって所定温度に加熱されている熱電対付きウェハーTWの裏面の温度は裏面側放射温度計20によって測定されている。熱電対付きウェハーTWの表面における熱電対99の取り付け位置と熱電対付きウェハーTWの裏面における裏面側放射温度計20の温度測定位置とは熱電対付きウェハーTWを挟んで対称な位置である。また、熱電対付きウェハーTWが所定温度に維持されているときには、熱電対付きウェハーTWの表面と裏面との間に温度差はなく、表面温度と裏面温度とは等しい。よって、熱電対付きウェハーTWの表面における熱電対99の取り付け位置の温度と、熱電対付きウェハーTWの裏面における裏面側放射温度計20の温度測定位置の温度とは完全に等しい。
【0080】
接触式温度計である熱電対99は、熱電対付きウェハーTWの表面温度を正確に測定できる。従って、熱電対99によって測定された熱電対付きウェハーTWの温度に基づいて裏面側放射温度計20に設定された放射率を校正することができる。具体的には、熱電対99によって測定された熱電対付きウェハーTWの表面温度と、裏面側放射温度計20が示す熱電対付きウェハーTWの裏面温度とが一致するように、裏面側放射温度計20に設定されている放射率を調整する。これにより、熱電対付きウェハーTWの裏面の真の放射率が裏面側放射温度計20に設定されることとなり、裏面側放射温度計20に設定された放射率を正確に校正することができる。
【0081】
裏面側放射温度計20の放射率校正が終了した後、熱電対付きウェハーTWはチャンバー6から搬出される。熱電対付きウェハーTWの搬出も手動にて行われる。上述のような熱電対付きウェハーTWを用いた裏面側放射温度計20の放射率校正は、例えば熱処理装置1のメンテナンス時等に行えば良い。
【0082】
次に、製品となる半導体ウェハー(第2基板)Wに対する熱処理が行われる。典型的には、製品となる半導体ウェハーWの表面にはパターンが形成されている。製品となる半導体ウェハーWに対する熱処理動作は上述した通りである。まず、製品となる半導体ウェハーWがチャンバー6内に搬入される(ステップS4)。半導体ウェハーWは搬送ロボットによってチャンバー6内に搬入されてサセプタ74に載置される。
【0083】
半導体ウェハーWが石英のサセプタ74に載置された後、ハロゲンランプHLからの光照射が開始されて半導体ウェハーWが予備加熱される(ステップS5)。上述した通り、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度は裏面側放射温度計20によって測定される。そして、裏面側放射温度計20による温度測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1となるように制御部3によってハロゲンランプHLの出力がフィードバック制御される。半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後は、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWが予備加熱温度T1に一定時間維持される。
【0084】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に維持されている間に、裏面側放射温度計20の測定値に基づいて表面側放射温度計25の放射率校正が実行される(ステップS6)。図11は、裏面側放射温度計20の測定値に基づく表面側放射温度計25の放射率校正を模式的に説明する図である。ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWが予備加熱温度T1に一定時間維持されている。ハロゲンランプHLからの光照射によって予備加熱温度T1に加熱されている半導体ウェハーWの裏面の温度は裏面側放射温度計20によって測定される。製品となる半導体ウェハーWであっても、その裏面には熱電対付きウェハーTWと同様にパターンが形成されていない。よって、熱電対付きウェハーTWの裏面の放射率と半導体ウェハーWの裏面の放射率とは等しい。ステップS3では、熱電対付きウェハーTWの裏面の放射率が裏面側放射温度計20に設定されて裏面側放射温度計20の放射率校正が完了している。従って、裏面側放射温度計20は、熱電対付きウェハーTWの裏面と同じ放射率を有する半導体ウェハーWの裏面の温度を正確に測定することができる。
【0085】
一方、ハロゲンランプHLからの光照射によって予備加熱温度T1に加熱されている半導体ウェハーWの表面の温度は表面側放射温度計25によって測定されている。半導体ウェハーWの表面における表面側放射温度計25の温度測定位置と半導体ウェハーWの裏面における裏面側放射温度計20の温度測定位置とは半導体ウェハーWを挟んで対称な位置である。また、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1に維持されているときには、半導体ウェハーWの表面と裏面との間に温度差はなく、表面温度と裏面温度とは等しい。よって、半導体ウェハーWの表面における表面側放射温度計25の温度測定位置の温度と、半導体ウェハーWの裏面における裏面側放射温度計20の温度測定位置の温度とは完全に等しい。
【0086】
上記のように裏面側放射温度計20は、半導体ウェハーWの裏面温度を正確に測定している。従って、裏面側放射温度計20によって測定された半導体ウェハーWの温度に基づいて表面側放射温度計25に設定された放射率を校正することができる。具体的には、裏面側放射温度計20が示す半導体ウェハーWの裏面温度と、表面側放射温度計25が示す半導体ウェハーWの表面温度とが一致するように、表面側放射温度計25に設定されている放射率を調整する。これにより、処理対象となっている半導体ウェハーWの表面の放射率が表面側放射温度計25に設定されることとなり、表面側放射温度計25に設定された放射率を正確に校正することができる。
【0087】
表面側放射温度計25の放射率校正が終了した後、フラッシュランプFLから半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う(ステップS7)。照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下のフラッシュ光を照射することによって、半導体ウェハーWの表面は瞬間的に昇温してから急激に降温する。
【0088】
フラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの表面温度は放射率校正済みの表面側放射温度計25によって測定される(ステップS8)。表面側放射温度計25は、InSbの受光素子を備えているため、フラッシュ光照射によって急激に変化する半導体ウェハーWの表面温度を短いサンプリング周期で適切に測定することができる。また、フラッシュ光照射前に、パターンが形成されている半導体ウェハーWの表面の放射率が表面側放射温度計25に設定されて表面側放射温度計25の放射率校正が完了している。従って、表面側放射温度計25は、フラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの表面の温度を正確に測定することができる。
【0089】
本実施形態においては、表面に熱電対99が取り付けられた熱電対付きウェハーTWをハロゲンランプHLからの光照射によって加熱しつつ、その熱電対付きウェハーTWの表面温度を熱電対99によって測定するとともに裏面の温度を裏面側放射温度計20によって測定する。そして、熱電対99によって測定された熱電対付きウェハーTWの温度に基づいて裏面側放射温度計20に設定された放射率を校正している。
【0090】
次に、裏面側放射温度計20の放射率校正が終了した後、表面にパターンが形成された半導体ウェハーWをハロゲンランプHLからの光照射によって加熱しつつ、その半導体ウェハーWの裏面および表面の温度をそれぞれ裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25によって測定する。そして、裏面側放射温度計20によって測定された半導体ウェハーWの温度に基づいて表面側放射温度計25に設定された放射率を校正している。
【0091】
要するに、接触式温度計である熱電対99によって得られた正確な温度測定値に基づいて裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25に設定された放射率を2段階で校正しているのである。このため、半導体ウェハーWの表裏面ともに放射率が未知であっても、裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25に設定された放射率を適正に校正することができ、その表面側放射温度計25によって半導体ウェハーWの表面温度を正確に測定することができる。また、製品となる半導体ウェハーWの表面に物体が接触する工程はないため、半導体ウェハーWの表面に形成されたパターンを損傷することなく当該表面の温度を正確に測定することができる。
【0092】
また、裏面側放射温度計20の放射率を校正するときには、ハロゲンランプHLからの光照射によって熱電対付きウェハーTWを所定温度に維持している間に熱電対99および裏面側放射温度計20によって熱電対付きウェハーTWの温度を測定している。従って、熱電対付きウェハーTWの表面と裏面との間に温度差がなく、熱電対99の温度測定値に基づいて裏面側放射温度計20に設定された放射率を正確に校正することができる。
【0093】
同様に、表面側放射温度計25の放射率を校正するときには、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウェハーWを所定温度に維持している間に裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25によって半導体ウェハーWの温度を測定している。従って、半導体ウェハーWの表面と裏面との間に温度差がなく、裏面側放射温度計20の温度測定値に基づいて表面側放射温度計25に設定された放射率を正確に校正することができる。
【0094】
また、熱電対付きウェハーTWの表面における熱電対99の取り付け位置と熱電対付きウェハーTWの裏面における裏面側放射温度計20の温度測定位置とは熱電対付きウェハーTWを挟んで対称な位置である。よって、それらの間には温度差がなく、熱電対99の温度測定値に基づいて裏面側放射温度計20に設定された放射率をより正確に校正することができる。
【0095】
同様に、半導体ウェハーWの表面における表面側放射温度計25の温度測定位置と半導体ウェハーWの裏面における裏面側放射温度計20の温度測定位置とは半導体ウェハーWを挟んで対称な位置である。よって、それらの間には温度差がなく、裏面側放射温度計20の温度測定値に基づいて表面側放射温度計25に設定された放射率をより正確に校正することができる。
【0096】
また、表面側放射温度計25によって半導体ウェハーWの表面温度を測定する際に表面側放射温度計25の受光素子を冷却素子95によって0℃以下に冷却している。これにより、表面側放射温度計25の赤外線センサー29は高感度を維持することができ、フラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの表面の温度を表面側放射温度計25によって正確に測定することができる。
【0097】
さらに、本実施形態においては、チャンバー6の壁体に水冷管を設け、当該水冷管に冷却水を供給することによって、チャンバー6の壁面を冷却している。これにより、チャンバー6の壁面から放射されて裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25に入射する赤外光(迷光)の影響を抑制することができ、温度測定の精度低下を防止することができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、熱電対付きウェハーTWの表面温度を熱電対99によって測定していたが、これに限定されるものではなく、他の接触式温度計、例えばサーミスタまたは測温抵抗体によって測定するようにしても良い。すなわち、熱電対付きウェハーTWの表面温度は接触式温度計によって正確に測定する形態であれば良い。
【0099】
また、チャンバー6の壁面の冷却に加えて、偏光フィルタを設けることによって裏面側放射温度計20および表面側放射温度計25に入射する迷光を抑制するようにしても良い。これにより、温度測定の精度低下をより効果的に防止することができる。
【0100】
また、裏面側放射温度計20としては、チャンバー6内に形成される雰囲気に応じて適切な測定波長域のものを用いるようにするのが好ましい。例えば、チャンバー6内にアンモニア雰囲気が形成される場合には、アンモニアの吸収波長域とはことなる測定波長域の裏面側放射温度計20を用いるのが好ましい。或いは、測定対象に応じて適宜の波長域の光を透過または遮断するフィルタを設置するようにしても良い。
【0101】
また、上記実施形態において、表面側放射温度計25に内蔵される赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウェハーWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、赤外線センサー29は任意のセンサーとすることができる。例えば、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時の半導体ウェハーWの面内温度分布を測定するため、赤外線センサー29はサーモパイルのような応答性の低いセンサーであっても良い。さらに、表面側放射温度計25を複数備えても良い。これにより、半導体ウェハーWの面内温度分布を測定するための裏面側放射温度計20、および半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するための開口部78を複数設ける必要がなくなる。よって、開口部78を複数設けることで生じるハロゲン加熱部4からの光照射の均一性悪化に起因する加熱時の半導体ウェハーWの面内温度均一性の悪化を未然に防ぐことができる。
【0102】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0103】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて基板を所定温度に維持する加熱処理を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)またはLEDランプを連続点灯ランプとして用いて加熱処理を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0104】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
20 裏面側放射温度計
25 表面側放射温度計
63 上側チャンバー窓
64 下側チャンバー窓
65 熱処理空間
74 サセプタ
95 冷却素子
99 熱電対
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
TW 熱電対付きウェハー
W 半導体ウェハー
図1
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図3
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図11