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特開2022-131429火炎監視装置、火炎監視プログラム、及び、火炎監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131429
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】火炎監視装置、火炎監視プログラム、及び、火炎監視方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20220831BHJP
【FI】
F23N5/24 106A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030376
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 亨
(72)【発明者】
【氏名】西口 純也
(72)【発明者】
【氏名】石井 重樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加代
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003SA01
3K003SB01
3K003SB06
3K003SB07
3K003SC01
(57)【要約】
【課題】ユーザが燃焼装置の不調を適切に把握できる火炎強度監視装置などを提供する。
【解決手段】火炎強度監視装置は、バーナの火炎の強さの連続的な時間変化を示す最新の時系列データを取得する取得部21Aと、最新の時系列データと、バーナの火炎の強さの連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる基準時系列データとを、互いに対応する時系列で比較して火炎の強さの差異の時間変化を示す不調スコア時系列データを生成する比較部21Bと、を備える。基準時系列データは、燃焼装置に不調が発生する前かつ最新の時系列データが得られた燃焼シーケンスよりも前に実行される複数回の燃焼シーケンスそれぞれでのバーナの火炎の強さの連続的な時間変化を示す時系列データの集合を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す第1時系列データを取得する取得部と、
前記第1時系列データの前記火炎の活発度と、前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる第2時系列データの前記火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して前記火炎の活発度の差異の連続的な時間変化を示す第3時系列データを生成する比較部と、
を備える火炎監視装置。
【請求項2】
前記バーナの火炎は、前記バーナを備える燃焼装置により実行される燃焼シーケンスにより着火及び制御され、
前記第2時系列データは、前記燃焼装置に不調が発生する前かつ前記第1時系列データが得られた前記燃焼シーケンスよりも前に実行される複数回の前記燃焼シーケンスそれぞれでの前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データの集合を含む、
請求項1に記載の火炎監視装置。
【請求項3】
前記比較部は、前記第1時系列データの前記火炎の活発度の時間変化のグラフと、第3時系列データの前記差異の時間変化のグラフとを関連付けたグラフを出力するように構成されている、
請求項1又は2に記載の火炎監視装置。
【請求項4】
前記比較部は、カーネル密度推定により、前記第1時系列データと前記第2時系列データとの前記火炎の活発度を比較し、
前記差異は、カーネル密度推定量を表す数値である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の火炎監視装置。
【請求項5】
前記バーナの火炎は、前記バーナを備える燃焼装置により実行される燃焼シーケンスにより着火及び制御され、
前記比較部は、前記第3時系列データに基づいて、前記燃焼装置の不調の有無及び不調がある場合のその種類を推定し、推定結果を出力するように構成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の火炎監視装置。
【請求項6】
コンピュータに、
バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す第1時系列データを取得する取得ステップと、
前記第1時系列データの前記火炎の活発度と、前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる第2時系列データの前記火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して前記火炎の活発度の差異の連続的な時間変化を示す第3時系列データを生成する比較ステップと、
を実行させる火炎監視プログラム。
【請求項7】
バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す第1時系列データの前記火炎の活発度と、前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる第2時系列データの前記火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して前記火炎の活発度の差異の連続的な時間変化を示す第3時系列データを生成する比較ステップ、
を有する火炎監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナの火炎の活発度を監視する、火炎監視装置、火炎監視プログラム、及び、火炎監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のサブシーケンス(「パイロットトライアル」、「パイロットオンリー」、「メイントライアル」、及び、「メイン安定」)それぞれ毎にバーナの火炎の活発度(ここでは、火炎の強さ)を監視し、この火炎の活発度がサブシーケンスごとに定められている正常な範囲内であるが通常の状態からずれていた場合、燃焼装置が不調な状態にあると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-60573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術も有用であるが、この技術では、あるタイミングでの火炎の活発度に基づいて燃焼装置が不調な状態であるか否かが判別されてしまう。このため、上記技術では、前記あるタイミング以外のタイミングで燃焼装置の不調が現れたときに、ユーザが燃焼装置の不調を把握することが難しい。
【0005】
本発明は、ユーザが燃焼装置の不調を適切に把握できる、火炎監視装置、火炎監視プログラム、及び、火炎監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る火炎監視装置は、バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す第1時系列データを取得する取得部と、前記第1時系列データの前記火炎の活発度と、前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる第2時系列データの前記火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して前記火炎の活発度の差異の連続的な時間変化を示す第3時系列データを生成する比較部と、を備える。
【0007】
前記バーナの火炎は、前記バーナを備える燃焼装置により実行される燃焼シーケンスにより着火及び制御され、前記第2時系列データは、前記燃焼装置に不調が発生する前かつ前記第1時系列データが得られた前記燃焼シーケンスよりも前に実行される複数回の前記燃焼シーケンスそれぞれでの前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データの集合を含む、ようにしてもよい。
【0008】
前記比較部は、前記第1時系列データの前記火炎の活発度の時間変化のグラフと、第3時系列データの前記差異の時間変化のグラフとを関連付けたグラフを出力するように構成されている、ようにしてもよい。
【0009】
前記比較部は、カーネル密度推定により、前記第1時系列データと前記第2時系列データとの前記火炎の活発度を比較し、前記差異は、カーネル密度推定量を表す数値である、ようにしてもよい。
【0010】
前記バーナの火炎は、前記バーナを備える燃焼装置により実行される燃焼シーケンスにより着火及び制御され、前記比較部は、前記第3時系列データに基づいて、前記燃焼装置の不調の有無及び不調がある場合のその種類を推定し、推定結果を出力するように構成されている、ようにしてもよい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る火炎監視プログラムは、コンピュータに、バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す第1時系列データを取得する取得ステップと、前記第1時系列データの前記火炎の活発度と、前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる第2時系列データの前記火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して前記火炎の活発度の差異の連続的な時間変化を示す第3時系列データを生成する比較ステップと、を実行させる。
【0012】
本発明の第3の観点に係る火炎監視方法は、バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す第1時系列データの前記火炎の活発度と、前記バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる第2時系列データの前記火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して前記火炎の活発度の差異の連続的な時間変化を示す第3時系列データを生成する比較ステップ、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザが燃焼装置の不調を適切に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る火炎監視装置を有する燃焼システムの構成図である。
図2図2は、火炎監視装置のハードウェア構成図である。
図3図3は、火炎監視装置の構成図である。
図4図4は、取得部により実行される時系列データ格納処理のフローチャートである。
図5図5は、比較部により実行される基準時系列データ処理のフローチャートである。
図6図6は、比較部により実行される比較処理のフローチャートである。
図7図7は、基準時系列データのグラフを示す図である。
図8図8は、直近の時系列データと不調スコア時系列データの各グラフを示す図である。
図9図9は、直近の時系列データと不調スコア時系列データの各グラフを示す図である。
図10図10は、直近の時系列データと不調スコア時系列データの各グラフを示す図である。
図11図11は、直近の時系列データと不調スコア時系列データの各グラフを示す図である。
図12図12は、変形例に係る比較部が実行する推定結果出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0016】
(実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る火炎監視装置20は、燃焼システム10に使用される。火炎監視装置20は、燃焼システム10の後述の燃焼機器40が備えるバーナの火炎、より具体的にメインバーナ42及びパイロットバーナ43の火炎の活発度を監視して、燃焼装置30の不調を検出する。「不調」とは、燃焼装置30が運転不可となる前の燃焼装置30が動作可能な程度の異常つまり軽度の異常をいう。
【0017】
燃焼システム10は、火炎監視装置20の他、燃焼を行う燃焼装置30と、燃焼装置30を制御する燃焼制御装置70と、を備えている。以下、燃焼装置30及び燃焼制御装置70を先に説明してから火炎監視装置20について説明する。
【0018】
燃焼装置30は、燃焼機器40と、燃料供給系統50と、空気供給系統60と、制御モータMと、高開度位置センサHSと、低開度位置センサLSと、を備えている。
【0019】
燃焼機器40は、燃焼室R内で燃料ガスを燃焼させる。燃焼機器40は、燃焼室Rを形成する燃焼炉41と、燃料ガスを燃焼させて燃焼室R内を加熱するメインバーナ42と、燃料ガスを燃焼させてメインバーナ42を点火するパイロットバーナ43と、パイロットバーナ43を点火する点火装置(イグナイター)44と、を備えている。点火装置44により点火されたパイロットバーナ43は、メインバーナ42の着火に使用される。このため、点火装置44は、メインバーナ42を着火するときに使用される装置ともいえる。点火装置44は、放電電極等のスパーク発生部44Aを備える。
【0020】
燃焼機器40は、さらに、メインバーナ42及びパイロットバーナ43の火炎の活発度を検出する火炎検出器45と、燃焼室R内の温度を検出する温度センサ46と、を備えている。火炎の活発度は、火炎がどの程度活発に発生しているかを示す度合いであり、ここでは、火炎の強度である。
【0021】
火炎検出器45は、2枚の電極と、この2枚の電極を所定のガスとともに収容したパッケージとを含む放電管45Aを備える。火炎検出器45は、さらに、メインバーナ42又はパイロットバーナ43の火炎から放射される電磁波(ここでは、紫外線とする)を透過して放電管45Aに導く窓45Bも備える。放電管45Aでは、2枚の電極間に電圧が印加された状態で、メインバーナ42又はパイロットバーナ43の火炎から放射される電磁波がパッケージ内に入射されると2枚の電極間で放電が起こる。この放電により火炎検出器45から電気信号が出力される。このようにして、火炎検出器45は、メインバーナ42又はパイロットバーナ43の火炎から放射される電磁波の強度つまり火炎の活発度を電気信号に変換して出力する。出力される電気信号は、ここでは、火炎の活発度に応じて電圧値が変化する電圧信号とするが、当該電気信号は、火炎の活発度に応じて電流値が変化する電流信号であってもよい。前記の電圧信号をフレーム電圧VFともいい、前記の電流信号をフレーム電流IFともいう。フレーム電圧VFの電圧値及びフレーム電流IFの電流値は、火炎の活発度を示す。以下の説明でのフレーム電圧VF及びその電圧値は、フレーム電流IF及びその電流値に変更することができる。
【0022】
図1に戻り、燃料供給系統50は、外部からの燃料ガスを燃焼機器40に供給する。燃料供給系統50は、燃焼機器40に供給される燃料ガスが流れる燃料流路51を備えている。燃料流路51は、外部から燃料ガスが供給される主流路51Aと、主流路51Aが分岐した第1流路51Bおよび第2流路51Cと、を含む。第1流路51Bはメインバーナ42に接続され、第2流路51Cはパイロットバーナ43に接続されている。
【0023】
燃料供給系統50は、さらに、主流路51Aに設けられたガス圧スイッチ52と、第1流路51Bに設けられた安全遮断弁であるメインバルブ54A及び54Bと、第2流路51Cに設けられた安全遮断弁であるパイロットバルブ54C及び54Dと、を備える。ガス圧スイッチ52は、外部から供給される燃料ガスの圧力が所定の圧力以上であるときにONとなる。メインバルブ54A及び54Bは、第1流路51Bを開閉する。パイロットバルブ54C及び54Dは、第2流路51Cを開閉する。燃料供給系統50は、主流路51Aに設けられた燃料流量調整用のダンパ55も備える。
【0024】
空気供給系統60は、燃焼機器40に空気を供給する。空気供給系統60は、燃焼機器40に供給される空気が流れる空気流路61と、空気流路61に空気を供給するブロワ62と、を備えている。空気流路61は、ブロワ62に接続された主流路61Aと、主流路61Aが分岐した第1流路61B及び第2流路61Cと、を備える。第1流路61Bは、メインバーナ42に接続されている。第2流路61Cは、パイロットバーナ43に接続されている。
【0025】
空気供給系統60は、さらに、主流路61Aに設けられ、ブロワ62からの空気の風圧が所定の風圧以上であるときにONとなる風圧スイッチ63も備える。空気供給系統60は、さらに、主流路61Aに設けられた空気流量調整用のダンパ65を備える。
【0026】
燃料又は空気流量調整用のダンパ55及び65は、制御モータMにより、リンケージして駆動され、燃料流路51及び空気流路61の開度を制御する。リンケージによる駆動により、ダンパ55及び65の各開度は、メインバーナ42に供給される燃料と空気との比である空燃比が所望の比率(燃焼に理想的な範囲の比率)を維持するように制御される。ダンパ55及び65の各開度によって、メインバーナ42に供給される燃料及び空気の量が調整され、これにより、各バーナの火炎の活発度が調整されることで、つまり燃焼室Rを加熱する加熱温度が制御される。
【0027】
高開度位置センサHSは、ダンパ55及び65の開度位置が所定の高開度位置へ達したことを検出する。低開度位置センサLSは、ダンパ55及び65の開度位置が所定の低開度位置へ達したことを検出する。各センサHS及びLSは、ダンパ55及び65の開度位置が高開度位置又は低開度位置に達したときにONとなる。
【0028】
燃焼制御装置70は、PLC(Programmable Logic Controller)、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータからなる。燃焼制御装置70は、バーナコントローラとも呼ばれる。燃焼制御装置70は、ガス圧スイッチ52、風圧スイッチ63、高開度位置センサHS、及び、低開度位置センサLSなどの状態(ON/OFF)を監視する。燃焼制御装置70には、火炎検出器45及び温度センサ46などからの各種信号が入力される。燃焼制御装置70は、監視結果及び各種信号に基づいて、点火装置44、メインバルブ54A及び54B、パイロットバルブ54C及び54D、ブロワ62、及び、ダンパ55及び65などを制御する。
【0029】
燃焼制御装置70は、予め定められた燃焼シーケンスに沿って燃焼装置30の運転(メインバーナ42及びパイロットバーナ43を含むバーナの着火及び火炎の制御)を制御する。この燃焼シーケンスは、「スタートチェック」、「プレパージ」、「点火待ち」、「パイロット点火」、「パイロットオンリー」、「メイン着火」、「メイン安定」、「定常燃焼」といったサブシーケンスを含む。これらサブシーケンスの詳細は省略するが、「パイロット点火」では、パイロットバーナ43を点火させるために、パイロットバルブ54C及び54Dが開とされ、点火装置44が動作する。「パイロットオンリー」では、点火装置44の動作が終了する。「メイン着火」では、メインバルブ54A及び54Bが開とされ、パイロットバーナ43の火を種火として、メインバーナ42が着火する。その後、「メイン安定」で、メインバーナ42の火炎を安定させる。その後の「定常燃焼」では、温度センサ46から供給される検出信号が示す燃焼室R内の温度をフィードバック値として、当該温度が目標値となるように、制御モータMがフィードバック制御される。フィードバック制御としては、例えば、比例制御(P制御)、比例・積分制御(PI制御)、又は、比例・積分・微分制御(PID制御)が採用される。ここでは、「メイン安定」、「定常燃焼」において、パイロットバーナ43は点火されたままとするが、これらの期間において、パイロットバーナ43を失火してもよい。なお、パイロットバーナ43を点火したままとする場合、火炎検出器45は、メインバーナ42用の火炎検出器と、パイロットバーナ43用の火炎検出器とを備えてもよい。
【0030】
燃焼制御装置70は、燃焼シーケンスで火炎検出器45から出力されるフレーム電圧VFを所定のサンプリングレートでアナログデジタル変換し、フレーム電圧VFの電圧値により示される火炎の活発度の時間変化を示す時系列データを生成し、火炎監視装置20に出力する。ここでのフレーム電圧VFは、メインバーナ42の火炎の活発度と、パイロットバーナ43の火炎の活発度との和を示す。
【0031】
次に火炎監視装置20について説明する。火炎監視装置20は、燃焼制御装置70から出力される時系列データに基づいて、火炎検出器45で検出されるメインバーナ42及びパイロットバーナ43の火炎の活発度を監視する処理を行う。火炎監視装置20は、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータを含んで構成されている。火炎監視装置20は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ21と、プロセッサ21のメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)22と、プロセッサにより実行する火炎監視プログラムを記憶する不揮発性の記憶装置23と、を備える。記憶装置23には、後述の時系列データ群、及び、基準時系列データも記憶する。火炎監視装置20は、さらに、後述の各種画面を表示するディスプレイ24と、ユーザにより操作される操作装置25と、プロセッサ21が燃焼制御装置70と通信を行うための通信モジュール26と、を備える。
【0032】
この実施の形態では、プロセッサ21は、記憶装置23に記憶された火炎監視プログラムを実行することにより、図3に示す、取得部21A及び比較部21Bとして動作する。
【0033】
取得部21Aは、燃焼制御装置70と通信モジュール26を介して通信し、燃焼シーケンスが実行されるたびに燃焼制御装置70から出力される時系列データを取得し、記憶装置23に格納する。例えば、取得部21Aは、時系列データを取得するたびに、図4に示す時系列データ格納処理を実行する。
【0034】
取得部21Aは、図4の時系列データ格納処理において、時系列データを記憶装置23に設けられている時系列データ記憶領域の中のN番目(初期値は0)の記憶領域に格納する(ステップS11)。その後、取得部21Aは、Nが9であるか判別し(ステップS12)、Nが9でない場合(No)、Nに1を加算する(ステップS13)。取得部21Aは、Nが9である場合(ステップS12;Yes)、Nを0に初期化する(ステップS14)。このような一連の処理により、N=0~9の10個の時系列データが記憶装置23に格納されると、その後に得られる時系列データは、N=0から上書きされていく。これにより、記憶装置23には、最新10個の時系列データが常に格納される。この10個の時系列データのデータ群が時系列データ群である。
【0035】
取得部21Aは、さらに、燃焼装置30の製造後、最初の稼働開始から図5に示す基準時系列データ処理を開始することで、基準時系列データを取得して記憶装置23に格納する。取得部21Aは、図5に示す基準統計データ生成処理において、記憶装置23のN=0~9の各記憶領域を監視し、これら全てに時系列データが格納されるまで待機する(ステップS21)。N=0~9の各記憶領域に時系列データが格納されたとき(ステップS21;Yes)、取得部21Aは、これら記憶領域それぞれから時系列データつまり10個の時系列データを読み出す(ステップS22)。さらに、取得部21Aは、読み出した10個の時系列データの集合を記憶装置23の他の記憶領域に、基準時系列データとして格納する(ステップS22)。なお、基準時系列データを構成する時系列データの数は、10に限らず任意である。
【0036】
図5に示す基準時系列データ処理は、燃焼装置30の製造後の動作テスト前から開始されてもよいし、動作テストの終了後の燃焼装置30の本稼働に入ってから開始されてもよい。前記の製造には、火炎検出器45を補修、修理、改造、交換することで、当該燃焼装置30が新しくなることも含む。また、基準時系列データ処理は、ユーザが基準時系列データを登録したいと考えた任意のタイミングで開始されてもよい。この場合、ユーザは、操作装置25を介してその旨を指示する。基準時系列データ処理は、燃焼装置30に不調が発生していない時期に実行されればよい。つまり、基準時系列データは、燃焼装置30の製造後かつ当該燃焼装置30に不調が発生する前に実行された燃焼シーケンスにより生成される。
【0037】
図3に戻り、比較部21Bは、基準時系列データが記憶装置23に登録された後の任意のタイミングで、そのときに記憶装置23に記憶されている時系列データ群のうちの最新の時系列データを取得し、取得した最新の時系列データを基準時系列データと比較する。この比較により、後述の不調スコア時系列データが生成される。前記の任意のタイミングは、例えば、ユーザが不調スコア時系列データを確認したいとして操作装置25を操作したタイミングなどであればよい。
【0038】
比較部21Bは、取得部21Aが取得した最新の時系列データの火炎の活発度と、基準時系列データの火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して火炎の活発度の差異(不調スコア)の連続的な時間変化を示す時系列データである不調スコア時系列データを生成する。
【0039】
比較部21Bは、例えば、図6に示す比較処理を実行することで前記比較等を行う。図6に示す比較処理において、比較部21Bは、まず、最新の時系列データと基準時系列データとをカーネル密度推定を用いて比較する(ステップS31)。
【0040】
ステップS31で比較される基準時系列データを構成するn=10回分の時系列データX(i=1,2,3・・・n)は、「X=X1,1,X1,2,X1,3,・・・X1,M」、「X=X2,1,X2,2,X2,3,・・・X2,M」、・・・「X=Xn,1,Xn,2,Xn,3,・・・Xn,M」とする。また、基準時系列データを、基準時系列データXともいう。ここで、右辺のXi,1~Xi,Mは、時系列データを構成する各時点での火炎の活発度であり、時系列順に並べられている。Mは、火炎の活発度のデータ個数、つまり、前記時点の個数である。なお、時系列データを得るためのサンプリングタイミングにズレがある場合、又は、火炎の活発度のデータ個数が異なる場合、比較部21Bは、DTW(Dynamic Time Warping)等の既知技術で時間伸縮を行い、サンプリングタイミングとデータ個数を合わるとよい。
【0041】
最新の時系列データを「Y=Y,Y,Y,・・・Y」とすると、比較部21Bは、ある時点mにおける火炎の活発度Yに対するカーネル密度推定量fmを、下記数式(1)から求める。
【数1】
【0042】
数式(1)におけるKはカーネル関数であり、比較部21Bは、例えば下記数式(2)のガウシアン式により算出する。
【数2】
【0043】
上記数式(1)におけるhは、バンド幅と呼ばれる調整パラメータである。比較部21Bは、hを、基準時系列データにおける火炎の活発度Xi,mから交差検証等の方法で求めてもよいし、Scottの方法やSilvermanの方法を用いてヒューリスティックに求めてもよい。なお、ここでは、下記数式(3)を用いたScottの方法が採用されている。下記のsはXi,mのサンプル標準偏差、q(0.75)とq(0.25)は、それぞれサンプルの0.75分位点と0.25分位点であり、min(a,b)は、a,bのうち最小の値を取る関数である.
【数3】
【0044】
その後、算出した各fmについて下記数式(4)により、不調スコアEmを定義する。不調スコアEmは、ある時点mにおいて、処理対象の時系列データYが基準時系列データXの分布(基準時系列データを構成する複数の時系列データの各火炎の活発度がとり得る範囲)に従わないほど大きくなる値である。つまり、不調スコアEmが大きいと、その時点において不調が生じている可能性が高い。上記カーネル密度推定量fm及び不調スコアEmは、時系列データの各時点における火炎の活発度の差異ともいえる。
【数4】
【0045】
このようにして、比較部21Bは、ステップS31において、時系列データYと、基準時系列データX~X(n=10)との、互いに対応する各時点(m=1~M)の火炎の活発度(Y,X1,m,X2,m,X3,m,・・・Xn,m)を比較し、各時点における火炎の活発度の差異(不調スコアEm)を取得する。各時点でのこの差異の集合、つまり、この差異の時間変化を示す時系列データを、以下では不調スコア時系列データEともいう。比較部21Bは、前記の比較及び取得により、不調スコア時系列データEを生成することになる。
【0046】
比較部21Bは、その後、不調スコア時系列データEと、上記最新の時系列データYとを互いに関連付けてグラフ化して、ディスプレイ24に出力し、これら各データのグラフをディスプレイ24に表示する(ステップS32)。ユーザは、ディスプレイ24に表示されたグラフを確認することで、燃焼装置30の不調の有無等を把握する。
【0047】
ここで、基準時系列データXのグラフを図7に示し、ディスプレイ24に表示される時系列データY及び不調スコア時系列データEの各グラフの例を図8図11に示す。
【0048】
図7では、基準時系列データXの10個の時系列データのうちの3個の時系列データが代表して描かれている。図7のグラフは、燃焼装置30に不調が生じていないとき、つまり不調が発生する前の正常時(非異常時)の時系列データのグラフであり、10個の時系列データの実際の各グラフは、同じような形状となる。
【0049】
図8は、不調が生じる前の燃焼装置30の燃焼シーケンスにより得られた時系列データY及び不調スコア時系列データEのグラフを示している。図8に示すように、不調が生じていないときは、不調スコアEmは0に近いところで推移している。特に、火炎の活発度が0付近(点火前)から3.4付近(定常燃焼)まで大きく変化しても、不調スコアEmに大きな変化はない。
【0050】
図9は、火炎検出器45で偽放電(電磁波による放電以外の放電)が発生する頻度が高くなる不調が燃焼装置30に発生しているときのグラフを示している。不調スコアEmの値=10付近に不調の有無の判別の閾値を置けば、不調が周期的に発生していることが分かる。このようなグラフを見たユーザは、不調があること、及び、その不調の種類が火炎検出器45で偽放電(電磁波による放電以外の放電)である可能性があることを把握できる。
【0051】
図10は、火炎検出器45の窓45Bが煤などで汚れている不調が燃焼装置30に発生しているときのグラフを示している。たとえば図9と同様に、不調スコアEmの値=10付近に不調の有無の判別の閾値を置けば、不調が長く継続していることがわかる。なお、グラフ化する際、不調スコアEmに対してはリミッタが設けられており、上限値を超えたとき値は当該上限値に変換されている。図10のグラフを見たユーザは、不調があること、及び、その不調の種類が窓45Bの汚れである可能性があることを把握できる。
【0052】
図11は、メインバーナ42及びパイロットバーナ43に供給される空気と燃料ガスとの比率である空燃比が乱れて予め想定されている範囲から外れているときのグラフを示している。上記同様、不調スコアEmの値=10付近に不調の有無の判別の閾値を置けば、このようなグラフを見たユーザは、燃焼開始付近と終了付近の各期間で不調が発生していることを把握でき、不調の種類が空燃比の乱れである可能性があることを把握することができる。
【0053】
以上のように、ユーザは、不調スコア時系列データEを確認することで、不調スコアEmが高得点の期間があれば、燃焼装置30に不調が生じていると把握できる。特に、不調スコア時系列データEは、不調スコアEm(基準時系列データXの火炎の活発度と、時系列データYの火炎の活発度との差異)の連続的な時間変化を示すので、特定のタイミングではなく、一定の期間全般で不調の発生が確認される。このように、この実施の形態によれば、ユーザは、燃焼装置30の不調の有無を適切に把握できる。燃焼装置30の不調を適切に把握できれば、ユーザは、故障の予兆を察知することができる。
【0054】
この実施の形態では、基準時系列データXと時系列データYとの各火炎の活発度を時系列で対応するもの同士での比較により不調スコアEmが得られている。従って、不調スコアEmに一定の閾値を設定しても、その閾値は時間経過に応じて変化することになる。このため、不調判定のための最適な閾値が設定されることになる。
【0055】
さらに、上記実施の形態では、時系列データYの火炎の活発度の時間変化のグラフと、不調スコア時系列データEの不調スコアEmの時間変化のグラフとを関連付けたグラフがディスプレイ24に出力され、表示されるので、ユーザは、前者と後者の時間変化を対比して確認することができ、どのサブシーケンスで不調が発生しているかなどを適切に把握できる(各サブシーケンスの期間もグラフに表示されるとよい)。特に、この実施の形態では、図8等に示すように、前記の関連付けとして、時系列データYのグラフと、不調スコア時系列データEのグラフとを同じ平面に重畳して表示している。これにより、両グラフがより容易に比較される。なお、両グラフを、横軸を対応させた2つのグラフとして、両グラフを関連付けてもよい。上記関連付けは、前記両グラフが比較可能とすることであればよい。なお、前記の比較は、サブシーケンスごとに行われてもよいし、前記のグラフは、サブシーケンスごとに別個に表示されてもよい。
【0056】
基準時系列データXは、例えば、バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる時系列データであればよい。このため、基準時系列データXは、燃焼装置30と同型の燃焼装置を用いた実験の結果などから求められ予め用意されたデータであってもよいが、この実施の形態では、燃焼装置30で実際に実行された燃焼シーケンスで測定されたフレーム電圧VFに基づいて基準時系列データXが用意される。これにより、複数生産される燃焼装置30の個々の癖を反映した基準時系列データXが得られるので、ユーザは、燃焼装置30の不調をより適切に把握できる。なお、上記バーナは、ここでは、メインバーナ42及びパイロットバーナ43の両者とするが、どちらか一方を対象としてもよい。
【0057】
上記のように、時系列データYと基準時系列データXとの比較をカーネル密度推定により行うので、精度の良い不調スコアEmが得られる。さらに、カーネル推定量fmを表す数値である不調スコアEmをグラフ化することで、当該不調スコアEmが大きければ不調の可能性が高いことをユーザが直感的に把握することができる。なお、時系列データ化及びグラフ化される数値は、カーネル推定量fmを表す数値であればよく、不調スコアEmに限られない。カーネル推定量fmを表す数値は、カーネル推定量fmそのものであってもよい。つまり、カーネル推定量fmが時系列データ化され、グラフ化されてもよい。
【0058】
(変形例)
上記実施の形態の構成は、任意に変更可能である。以下変形例を例示する。各変形例は、少なくとも一部同士組み合わせることもできる。
【0059】
(変形例1)
燃焼装置30の構成は、任意である。例えば、燃焼装置30は、パイロットバーナ43がないメインバーナ42のみを有するタイプであってもよい。
【0060】
(変形例2)
比較部21Bは、不調スコア時系列データEに基づいて、燃焼装置30の不調の有無及び不調がある場合のその種類を推定する処理を行ってもよい。比較部21Bは、例えば、記憶装置23に新たな時系列データが格納されるたびに、図13に示す推定結果出力処理を行ってもよい。
【0061】
比較部21Bは、図12に示すように、不調スコア時系列データEに基づいて、燃焼装置30の不調の有無及び不調がある場合のその種類を推定する(ステップS41)。比較部21Bは、推定の結果、不調ありと判別した場合(ステップS42;Yes)、その推定の結果を出力してもよい(ステップS43)。
【0062】
比較部21Bは、図9に示すように、不調スコアEmが所定の閾値を超える期間が、周期的に発生し、かつ、予め定められた所定の期間未満であれば、燃焼装置30の火炎検出器45で偽放電という不調が発生していると推定する。比較部21Bは、図10に示すように、不調スコアEmが前記所定の閾値を超える期間が、周期的に発生し、かつ、前記所定の期間以上であれば、燃焼装置30の火炎検出器45の窓45Bの汚れという不調が発生していると推定する。比較部21Bは、図11に示すように、不調スコアEmが燃焼開始付近及び終了期間付近それぞれの期間で前記所定の閾値を超えている場合、空燃比の乱れの不調が発生していると推定する。
【0063】
比較部21Bは、上記推定の結果をディスプレイ24に表示する。表示内容としては、例えば、「火炎検出器で偽放電が高い頻度で発生している可能性があります」、「火炎検出器の窓が汚れている可能性があります」、「空燃比が乱れています」などのメッセージが挙げられる。
【0064】
本変形例によれば、燃焼装置30の不調の有無及び不調があった場合のその不調の種類がユーザに報知されるので、ユーザは燃焼装置30の不調をより適切に把握できる。なお、不調スコア時系列データEを、カーネル推定量fmの連続的な時間変化を示す時系列データに適宜変更してもよい。
【0065】
(変形例3)
火炎監視装置20は、バーナ(メインバーナ及びパイロットバーナの両方又は少なくとも一方等)の火炎の活発度の連続的な時間変化を示す第1時系列データ(上記では時系列データY)を取得する取得部21Aと、取得部21Aにより取得した第1時系列データの火炎の活発度と、バーナの火炎の活発度の連続的な時間変化を示す時系列データとして用意された基準となる第2時系列データ(上記では基準時系列データ)の火炎の活発度とを、時系列で対応するもの同士で比較して前記火炎の活発度の差異の時間変化を示す第3時系列データ(上記では不調スコア時系列データE又はカーネル推定量fmの連続的な時間変化を示す時系列データ)を生成する比較部21Bと、を備えればよい。取得部21A及び比較部21Bが行う具体的処理は、任意である。例えば、第1時系列データと第2時系列データとの比較は、他の方法により比較されてもよい。上記構成によれば、ユーザは、第3時系列データを確認することで、燃焼装置30の不調を適切に把握できる。
【0066】
(変形例4)
取得部21Aは、燃焼制御装置70が燃焼装置30に設けられた各種のセンサにより適宜計測する空気流量、燃料ガス流量、炉体温度、圧力などの時間変化を示す時系列データを取得してもよい。この場合、例えば、ユーザは、不調スコア時系列データのグラフで気になるところを操作装置25で指定したとき、比較部21Bは、その部分の前後一定期間での、空気流量、燃料ガス流量、炉体温度、圧力などの時間変化を表示してもよい。これにより、ユーザは、燃焼装置30の異常の予兆を的確にとらえて燃焼装置30の適切な保全ができ、これにより燃焼装置30の効率的運用が可能となる。
【0067】
(変形例5)
比較部21Bは、複数の不調スコア時系列データを記憶装置23に格納しておき、これらを関連付けてグラフ化したもの(例えば、各不調スコア時系列データのグラフを同じ平面に重畳表示したグラフ)を出力してもよい。これにより、その不調スコアが、一過性のものなのか、計時劣化などによって徐々に大きくなっているものなのかをユーザが把握できる。これにより、不調スコアが大きくなりやすい場所等をユーザが把握できる。
【0068】
(変形例6)
火炎の活発度は、火炎検出器45の放電管45Aの電極間で起こる放電の単位時間当たりの放電回数により示されてもよい。火炎の活発度が大きい、例えば、紫外線強度が大きい場合、単位時間中の放電回数は多くなる。つまり、放電回数の増加は、上記でのフレーム電圧の電圧値の増加に対応する。なお、偽放電でも放電回数は多くなる。このような場合、燃焼装置70に、当該放電回数をカウントするカウント及びカウント期間を計測する計測部を設けるとよい。
【0069】
(変形例7)
火炎監視装置20のハードウェア構成は任意である。取得部21A及び比較部21Cは、それぞれ、一以上のコンピュータ又は制御回路(ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、又は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)など)から構成されてもよい。前記各部21A及び21B21Bのうちの少なくとも一部は、燃焼制御装置70が備えてもよい。火炎監視装置20は、サーバコンピュータ、クラウドコンピュータ等であってもよい。不調スコア時系列データ、上記推定結果等の出力先は、ユーザ端末などのディスプレイであってもよい。比較結果の出力先は、プリンタ、記憶媒体、ネットワーク、他のコンピュータ等であってもよい。火炎監視装置20などの各装置は、装置の構成要素が一つの筐体にまとめられた装置の他、装置の構成要素が複数の筐体に分散して収容されたシステムを含む。
【0070】
(変形例8)
火炎検出器45は、燃焼炉41に設けられた窓を介して、火炎からの電磁波を取り込んでもよい。この場合、燃焼炉41に設けられたこの窓が煤などにより汚れることで、燃焼装置30を不調とさせる。つまり、上記火炎検出器45の窓45Bの汚れが、燃焼炉41の窓の汚れに代わる。火炎検出器45は燃焼炉41の貫通孔に外側から嵌め込まれてもよく、この場合、燃焼炉41の窓は、火炎検出器45の窓45Bからなってもよい。
【0071】
(火炎監視方法)
上記火炎監視装置20が実行する処理により、基準時系列データXと直近の時系列データYとの比較、不調スコア時系列データEの生成などを行う火炎監視方法が行われているが、当該方法の少なくとも一部は、火炎監視装置20以外の物又は人により行われてもよい。
【0072】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0073】
10…燃焼システム、20…火炎監視装置、21…プロセッサ、21A…取得部、21B……比較部、23…記憶装置、25…操作装置、40…燃焼機器、42…メインバーナ、43…パイロットバーナ、44…点火装置、44A…スパーク発生部、45…火炎検出器、窓…45B、50…燃料供給系統、60…空気供給系統、70…燃焼制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12