(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131451
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】把持不要ハンドル及びそのハンドルを備えた開き戸のドア
(51)【国際特許分類】
E05B 1/00 20060101AFI20220831BHJP
E06B 3/36 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E05B1/00 311R
E06B3/36
E05B1/00 311F
E05B1/00 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030404
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】松崎 俊也
(72)【発明者】
【氏名】古久保 美咲
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014DB03
(57)【要約】
【課題】開き戸のドアを、汚れをいずれの部分にも付着させることなく、差し込んだ手首により手前に引くだけで簡単に開いて、ドアとドア枠との間の開口部を安定した姿勢で通過できるようにする。
【解決手段】開き戸のドア2を開く際に手前に引く操作側となるアーム部11と、ドア2への取付側となるステム部12とが連なるハンドル1において、アーム部11の先端をステム部12から戸先側へ向けてドア2に取り付けられ、ドア2への取付状態では、アーム部11の裏面と、これに対向するドア2の表面及びその延長面を含む仮想的な基準面2aとの最大間隔が60mm以上となるようにする。そして、ドア2を開く際、アーム部11の裏面とドア2側の基準面2aとの間に差し込んだ手首を、アーム部11に対し相対的に回動できるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き戸のドア(2)を開く際に手前に引く操作側となるアーム部(11)と、ドア(2)への取付側となるステム部(12)とが連なるハンドル(1)において、
前記アーム部(11)の先端を前記ステム部(12)から戸先側へ向けてドア(2)に取り付けられ、ドア(2)への取付状態では、前記アーム部(11)の裏面と、これに対向するドア(2)の表面及びその延長面を含む仮想的な基準面(2a)との最大間隔が60mm以上となるようにしたことを特徴とする把持不要ハンドル(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の把持不要ハンドル(1)を備えたドア(2)において、前記アーム部(11)の先端がドア(2)の戸先よりも突出していることを特徴とする開き戸のドア(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開き戸のドアを手前に引いて開けるハンドル及びそのハンドルを備えたドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、
図9に示すように、開き戸のドア2に取り付けられるハンドル20として、ドア2を開く際に引く操作側となるアーム部21と、ドア2への取付側となるステム部22とが連なる平面視L字状の形状であり、アーム部21の先端をステム部22から戸尻側に向けてドア2に取り付けられ、アーム部21を手前に引くだけの操作により、ドア2を開けるものが使用されている。(例えば、下記特許文献1(
図5(c))参照)。
【0003】
このようなハンドル20を備えたドア2を開いて、ドア2とドア枠3との間の開口部を通過するには、ドア2がドアクローザーにより閉じる方向へ付勢されている場合、
図9に順次示す手順により、ドア2を開けることとなる。
【0004】
すなわち、
図9(1)に示すように、まず、手掌又は手首をアーム部21に掛け、同図(2)に示すように、アーム部21を手前に引く。次に、同図(3)に示すように、ドア2がある程度開くと、体の向きを変えて、ハンドル20の取付面とは反対側のドア2の表面を、アーム部21に掛けた手とは反対側の手掌で押す。そして、同図(4)に示すように、ドア2をさらに開き、アーム部21から手を離し、その手掌でハンドル20の取付面とは反対側のドア2の表面を押して、ドア2をさらに開いた状態とし、同図(5)に示すように、ドア2とドア枠3との間の開口部を通過する。
【0005】
ところで、このようなハンドル20では、食品工場や医療機関等に設置されたドア2を開く際のほか、感染症が流行している状況下でドア2を開く際、手掌の汚れがアーム部21やドア2の表面に付着してしまう恐れがあり、衛生上好ましくない。また、一方の手に荷物を持っている場合、ドア2を開ける操作自体が困難となるほか、体の向きの変化が大きくなるので、姿勢が不安定になり、バランスを崩しやすいという問題もある。
【0006】
このため、アーム部21やドア2に手掌や指が触れないように手首をアーム部21の裏面とドア2の表面との間に差し込んだ状態で、手首によりアーム部21を手前に引くことでドア2を開くことが考えられる。
【0007】
ところが、アーム部21の裏面とドア2の表面との間隔は、通常、40mm~50mm程度しかなく、例えば手首が細い女性の場合は、上述のようにアーム部21の裏面とドア2の表面との間に手首を差し込んでドア2を開けることが可能であっても、一般の成人男性や女性を含めて腕時計やブレスレット等を嵌めている人の場合、アーム部21の裏面とドア2の表面との間に手首を差し込むことができず、手首でアーム部21を手前に引いてドア2を開くことはできない。また、仮に手首を差し込めたとしても、手首でアーム部21を手前に引くことにより、アーム部21やドア2に手掌や指が触れないように、かつ、バランスを崩さないように自然な姿勢を保ったまま、ドア2をドア枠3との間の開口部を通過可能な開度まで開けることができない。
【0008】
一方、下記特許文献2には、
図10に示すように、冷蔵庫のドア9に取り付けられる補助的なハンドル30として、弾性を有する合成樹脂製の帯状部材からなり、取付片31に係止片32が折り返されて連なるJ字形状とされ、取付片31をドア9に粘着テープで貼り付けておき、取付片31と係止片32との間に手掌を開いた状態で手首を差し込んで、係止片32を手掌で把持することなく、ドア9を手前に引いて開けられるようにしたものが記載されており、このようなハンドル30を、
図9に示すドア2に、ハンドル20に代えて横向きに取り付けることも考えられる。
【0009】
しかしながら、
図10に示すハンドル30を、
図9に示すドア2に横向きに取り付けたとしても、取付片31と係止片32との間には、手掌を開いた状態で手首が挿入できる程度の間隔しかなく、手首を係止片32に対し抵抗なく回動させることができるだけの間隔が確保されていない。また、ハンドル30の材料である合成樹脂製の帯状部材は、ある程度の弾性を有するとはいえ、帯状部材として、ドア2の開度に応じて手首とドア2の相対的姿勢を任意に変化できるほどの柔軟なものを使用すると、手首からの力がドア2に伝達されなくなり、ドア2を開くことそのものができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-287259号公報
【特許文献2】特開2003-148005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の問題に鑑み、この発明は、開き戸のドアを、手掌や指の汚れがいずれの部分にも付着しないように、差し込んだ手首により手前に引くだけで簡単に開いて、ドアとドア枠との間の開口部を安定した姿勢で通過できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この発明は、開き戸のドアを開く際に手前に引く操作側となるアーム部と、ドアへの取付側となるステム部とが連なるハンドルにおいて、
前記アーム部の先端を前記ステム部から戸先側へ向けてドアに取り付けられ、ドアへの取付状態では、前記アーム部の裏面と、これに対向するドアの表面及びその延長面を含む仮想的な基準面との最大間隔が60mm以上となるようにしたのである。
【0013】
そして、このような把持不要ハンドルを備えたドアにおいて、前記アーム部の先端がドアの戸先よりも突出しているものとしたのである。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係るハンドルを開き戸のドアに取り付けると、アーム部の裏面とドア側の基準面との間に差し込んだ手首をアーム部に対し相対的に回動させることができるので、ドアクローザーを備えたドアであっても、手首によりアーム部を手前に引くだけで、手掌や指の汚れをいずれの部分にも付着させることなく、ドアとドア枠との間の開口部を通過できる開度まで、ドアを簡単に開くことができ、ハンドルとドアの衛生状態が確保され、感染症の予防等を図ることができる。
【0015】
また、ドアを開けてドアとドア枠との間の開口部を通過する際、体の向きの変化が小さいので姿勢が安定し、荷物を持っていても、バランスを崩すことなく、ドアとドア枠との間の開口部を通過することができる。
【0016】
また、このハンドルは、構成が非常に簡素であるため、安価に提供でき、プッシュプル錠と組み合わせることにより、一層優れた利便性や操作性を得られ、建屋内の錠のないドアやラッチのないドアにおいても、利便性や操作性が向上する。また、非接触センサー等を用いた自動ドアに改装する必要もなく、電力供給も不要であることから、停電時にドアを開けることができなくなる恐れもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施形態に係るハンドルを取り付けた開き戸のドアを示す斜視図
【
図3】同上のハンドルによりドアを開ける過程を順次示す概略平面図
【
図4】同上のドアを押す側から開ける過程を示す概略平面図
【
図5】同上の他の実施形態に係るハンドルの取付部分を示す拡大平面図
【
図6】同上のハンドルによりドアを開ける過程を順次示す概略平面図
【
図7】同上のT字状としたハンドルを示す拡大平面図
【
図8】同上のアーム部を回転式としたハンドルを示す拡大平面図
【
図9】特許文献1に記載のハンドルによりドアを開ける過程を順次示す概略平面図
【
図10】特許文献2に記載の冷蔵庫のドアに取り付ける補助ハンドルを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、ハンドル1は、開き戸のドア2に取り付けられるものであり、ドア2を開ける際に手前に引く操作側となるアーム部11と、ドア2への取付側となるステム部12とが連なるL字状の形状とされている。ドア2は、戸尻側がドア枠3に図示しない蝶番とドアクローザー4とを介して連結され、ドアクローザー4により閉じる方向へ付勢されている。
【0020】
ドア2には、ハンドル1の取付面とは反対側の表面に、ドア2を開ける際に押す側となるハンドル5が取り付けられ、ドア2の戸先側の部分には、プッシュプル錠6のケースが内蔵されている。ドア枠3には、ドア2の戸先側に対応して、プッシュプル錠6のラッチを受けるストライク7が取り付けられている。
【0021】
図2に示すように、ハンドル1をドア2に取り付けた状態において、アーム部11の先端は、ステム部12からドア2の戸先側へ向けられ、ドア2の戸先よりも突出している。
【0022】
そして、ハンドル1のアーム部11の裏面と、これに対向するドア2の表面及びその延長面を含む仮想的な基準面2aとの最大間隔L1は、60mm以上、より好ましくは70mm以上に設定されている。また、ステム部12からアーム部11の先端までの距離W1は、60mm以上、より好ましくは80mm以上に設定されている。さらに、ドア2の戸先からアーム部11の先端までの距離X1は、40mm以上に設定されている。
【0023】
また、アーム部11は、その裏面とドア2側の基準面2aとの間隔が最大間隔L1となる部分から先端側へかけて、漸次狭くなるように湾曲している。これにより、ドア2を手前に引いて開ける際に、アーム部11の裏面から手首が離脱しにくくなる。
【0024】
なお、最大間隔L1が60mm或いはそれより僅かに大きい程度である場合、手首に腕時計を嵌めているような一般の成人男性が手の甲をドア2の表面に向けてアーム部11とドア2の間に手首を差し込んだ状態で、ドア2が閉じていると、アーム部11の裏面とドア2側の基準面2aとの間に差し込んだ手首を回動させることができない場合があるが、ドア2の戸先を10mm程度以上開ければ、アーム部11のドア2の戸先より突出した部分に沿って手首を回動させることができる。
【0025】
一方、ハンドル5は、ハンドル1と同様の形状であるが、ハンドル1とは逆方向へ向けてドア2に取り付けられ、ハンドル1とハンドル5により、ドア2の開閉に際し、プッシュプル錠6を動作させる。
【0026】
このようなハンドル1を備えたドア2を開いて、ドア2とドア枠3との間の開口部を通過するには、
図3に順次示す手順により、ドア2を開ければよい。
【0027】
すなわち、
図3(1)に示すように、まず最初に手首を、上方或いはアーム部11の先端側から、アーム部11の裏面とドア2側の基準面2aとの間に差し込み、アーム部11を手前に引き始める。そして、同図(2)、(3)及び(4)に示すように、ドア2がある程度開いた状態において、手首をアーム部11に対し相対的に回動させ、ドア2とドア枠3との間の開口部に体を進入させて、アーム部11の裏面と基準面2aとの間から手首を抜き、同図(5)に示すように、ドア2とドア枠3との間の開口部を通過する。
【0028】
上記のようなハンドル1を開き戸のドア2に取り付けると、アーム部11の裏面とドア2側の基準面2aとの間に差し込んだ手首によりアーム部11を手前に引くだけで、手掌や指の汚れをいずれの部分にも付着させることなく、ドア2とドア枠3との間の開口部を通過できる開度まで、ドア2を簡単に開くことができ、衛生状態が確保され、感染症の予防を図ることができる。
【0029】
また、ドア2を手前に引いて、開いたドア2とドア枠3との間の開口部を通過する際、体の向きの変化が小さいので姿勢が安定し、荷物を持っていても、バランスを崩すことなく、ドア2とドア枠3との間の開口部を通過することができる。
【0030】
また、このハンドル1は、構成が非常に簡素であるため、安価に提供でき、上述のように、プッシュプル錠6と組み合わせることにより、一層優れた利便性や操作性を得られるだけでなく、錠のないドアやラッチのないドアにおいても、利便性や操作性が向上する。また、非接触センサー等を用いた自動ドアに改装する必要もなく、電力供給も不要であることから、停電時にドア2を開けることができなくなる恐れもない。
【0031】
なお、
図4に示すように、ハンドル1のアーム部11のドア2の戸先からの突出量X
1は、押す側からの通行が可能となるだけドア2を開けたとき(例えば、ドア枠3とドア2との間の開口幅Sが40cm程度の時)に、ドア枠3に対する垂直線hよりも突出しない大きさに設定しておくと、押す側からの通行がハンドル1のアーム部11に妨げられることがない。
【0032】
また、ドア2を開ける際に押す側となるドア2の表面には、手の甲や腕などで押しやすい任意形状のハンドルを取り付ければよく、図示のように、表面が平滑で耐摩耗性に優れた押板8などを取り付けてもよい。
【0033】
ところで、上記実施形態では、ハンドル1として、ドア2に取り付けたとき、アーム部11の先端がドア2の戸先より突出するものを例示したが、
図5に示すように、ハンドル1は、ドア2に取り付けた状態において、アーム部11の先端がドア2の戸先から突出せず、アーム部11の裏面とドア2側の基準面2aとの最大間隔L
2が70mm以上になるものとしてもよい。この場合、ステム部12からアーム部11の先端までの距離W
2は、60mm以上に設定しておくとよい。
【0034】
このように、アーム部11の裏面とドア2側の基準面2aとの最大間隔L
2を70mm以上、より好ましくは80mm以上に設定すると、
図6(1)乃至(5)に示すように、アーム部11の先端がドア2の戸先から突出していなくても、また、手首に腕時計を嵌めている場合等においても、アーム部11の裏面とドア2の表面との間に差し込んだ手首を回動させて、ドア2とドア枠3との間の開口部を通過できる開度まで、ドア2を簡単に開くことができ、衛生状態が確保され、感染症の予防を図ることができる。
【0035】
また、上記実施形態では、ハンドル1として、アーム部11がステム部12からドア2の戸先側だけに延びる平面視L字状のものを例示したが、
図7に示すように、介護施設等に取り付けられるハンドル1は、アーム部11がステム部12からドア2の戸先側及び戸尻側の双方へ延びる平面視T字状のものとし、手摺を兼ねるようにしてもよい。
【0036】
また、手掌でアーム部11を把持してドア2を開ける通常の使用方法にも対応可能とするためには、
図8に示すように、ハンドル1のステム部12を、固定部12aと回動部12bとからなるものとし、固定部12aに対する回動部12bの回動に伴い、アーム部11をドア2の戸先側と戸尻側のいずれの方向へも向けられるようにするとよい。
【0037】
そのほか、ハンドル1のドア2への取り付けに際しては、
図2に示すように、プッシュプル錠6を備えるような場合、台座10を介してドア2に取り付けることになるが、このような機構がない場合、
図5に示すように、ステム部12の基部をビス等によりドア2に直接固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ハンドル
2 ドア
2a 基準面
3 ドア枠
4 ドアクローザー
5 ハンドル
6 プッシュプル錠
7 ストライク
8 押板
10 台座
11 アーム部
12 ステム部
12a 固定部
12b 回動部