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2022-131457漏れ波アンテナ、その設計方法、その製造方法、測定装置、および、非接触給電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131457
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】漏れ波アンテナ、その設計方法、その製造方法、測定装置、および、非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/20 20060101AFI20220831BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20220831BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
H01Q13/20
H01Q21/08
H01Q21/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030413
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193389
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 智利
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔
(72)【発明者】
【氏名】関野 昇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA01
5J021AA02
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA08
5J021AB00
5J021CA01
5J021HA00
5J021JA05
5J021JA07
5J045AB05
5J045AB06
5J045CA02
5J045CA03
5J045DA00
5J045HA03
5J045MA01
5J045NA00
(57)【要約】
【課題】広帯域、かつ、小型であり、アンテナの偏波および利得を容易に設計・調整でき、周囲の機器との干渉も小さい漏れ波アンテナ、その設計方法、その製造方法、測定装置、および、非接触給電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】漏れ波アンテナは、ユニットセルを複数備える。ユニットセルは独立アンテナであり、直列キャパシタと並列インダクタを備え、略一平面上で互いに異なる所定の角度で配置され、異なる角度の偏波に対応する。

【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットセルを複数備えた漏れ波アンテナであって、
前記ユニットセルは
独立アンテナであり、
直列キャパシタと並列インダクタを備え、
略一平面上で互いに異なる所定の角度で配置され、異なる角度の偏波に対応することを特徴とする、漏れ波アンテナ。
【請求項2】
相互に接続された前記ユニットセルの中心間の距離が、前記ユニットセル同士の接続方向に沿った長さの1.5倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の漏れ波アンテナ。
【請求項3】
前記ユニットセルが10個以下であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項4】
前記所定の角度は略90度であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項5】
前記ユニットセルは略円弧状に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項6】
前記ユニットセルに接続され到来する電波を検知する検知部を備えることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項7】
前記ユニットセルは曲面上に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項8】
2の端子部を有し、1の前記端子部は給電され、他方の前記端子部は外部のアンテナに接続されていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項9】
前記直列キャパシタとしてインターディジタルキャパシタまたはスロットキャパシタを備えることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項10】
前記並列コイルとしてショートスタブを備えることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項11】
同一方向に配置され同じ角度の偏波に対応する前記ユニットセルをさらに有することを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載の漏れ波アンテナ。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の漏れ波アンテナを設計する、漏れ波アンテナの設計方法であって、
前記ユニットセルの配置方向を調整することで偏波方向を調整する偏波方向調整ステップを有することを特徴とする、漏れ波アンテナの設計方法。
【請求項13】
請求項11に記載の漏れ波アンテナを設計する、漏れ波アンテナの設計方法であって、
前記ユニットセルの配置方向を調整することで偏波方向を調整する偏波方向調整ステップ、および、
同一方向に配置され同じ角度の偏波に対応する前記ユニットセルの個数を調整することで利得を調整する利得調整ステップ、を有することを特徴とする、漏れ波アンテナの設計方法。
【請求項14】
請求項12または13のいずれかに記載の漏れ波アンテナの設計方法を実行する設計ステップ、
基板を製造する製造ステップ、および、
基板上に前記ユニットセルを配置する配置ステップ、
を有することを特徴とする、漏れ波アンテナの製造方法。
【請求項15】
前記直列キャパシタの長さまたは前記並列インダクタの長さを調節することで動作周波数を調整する動作周波数調整ステップを有することを特徴とする、請求項14に記載の漏れ波アンテナの製造方法。
【請求項16】
基準測定アンテナ、受信アンテナ、および、電波測定部を備え、
前記電波測定部は、測定の対象となる信号に対して、前記基準測定アンテナで測定された信号を基準として、前記受信アンテナで測定された信号から位相を求めるものであり、
前記基準測定アンテナは請求項1ないし11のいずれかに記載の漏れ波アンテナであることを特徴とする、測定装置。
【請求項17】
非接触給電部、および、給電対象検知部を備え、
前記非接触給電部または前記給電対象検知部は請求項1ないし11のいずれかに記載の漏れ波アンテナを備えることを特徴とする、非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏れ波アンテナ、その調整方法、その製造方法、および、非接触給電装置に関するものであり、特に、直列キャパシタと並列インダクタにより構成されるユニットセルを用いた、その設計方法、その製造方法、および、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インターディジタルキャパシタとショートスタブにより構成されるユニットセルを有する漏れ波アンテナが記載されている。
特許文献2には、基板上層のパッチと基板下部のらせん負荷により構成されたアンテナが記載されている。
特許文献3には素子間にキャパシタを形成した円偏波アンテナ装置が記載されている(段落0060、図13)。
特許文献4(段落0028、図3)には、素子間にキャパシタを形成した非相反複合メタマテリアル伝送線路が記載されている。
特許文献5には、放射状に10個のNCRLH線路を配置した疑似進行波共振アンテナ装置が記載されている。
(段落0040、図15A)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6345325号明細書
【特許文献2】特表2012-508538号公報
【特許文献3】特表2015-129757号公報
【特許文献4】特表2017-184111号公報
【特許文献5】特表2017-152878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造では、ユニットセルの配置方法の関係から、アンテナを設計する上での自由度が低い。また、スモールセルとしての設計のため、垂直方向に多数配置する必要がありアンテナ構造が大型になる。
特許文献2に記載の構造では、ユニットセルの構造上、非常に狭帯域であり、製造した際の誤差によっては良好な特性が得られない可能性がある。
特許文献3,4に記載の構造は、基本的に円偏波に対応するものであり、素子間でキャパシタを構成するため設計の自由度が低く、製造した際の誤差によっては良好な特性が得られない可能性がある。
特許文献5に記載の構造は、放射状であるため、アンテナ構造が大型になるとともに設計の自由度も低く、製造した際の誤差によっては良好な特性が得られない可能性がある。
また、特許文献1,3,4,5に記載の構造は、基本的に相当数の素子を有することを前提にしている点からも設計の自由度が低い。
そして、いずれの構造も、他のアンテナなどの電磁機器との干渉が大きく、例えば他のアンテナと共用する場合に影響が大きいため、他のアンテナとの相互の影響を含めて設計し当該他のアンテナと所定の配置で使用する必要があり、設計においても装置としても制限が多い。

そこで、本発明は、広帯域、かつ、小型であり、アンテナの偏波および利得を容易に設計・調整できる漏れ波アンテナ、その設計方法、その製造方法、測定装置、および、非接触給電装置を提供することを目的とする。
さらに、周囲の機器との干渉が小さい漏れ波アンテナ、その設計方法、その製造方法、測定装置、および、非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、従来の漏れ波アンテナが多くの構造の繰り返しにより全体として1つのアンテナを構成されていたのに対し、本発明におけるユニットセルでのアンテナは個別のアンテナとして独立して機能できる点に着目し、それぞれをユニットセルとして独立させたうえで、ユニットセルの配置により所望の性能を得た漏れ波アンテナである。

本発明の請求項1に係る漏れ波アンテナは、
ユニットセルを複数備えた漏れ波アンテナであって、
ユニットセルは
独立アンテナであり、
直列キャパシタと並列インダクタを備え、
略一平面上で互いに異なる所定の角度で配置され、異なる角度の偏波に対応することを特徴とする、漏れ波アンテナである。
本構成により、ユニットセルの間隔や相互の配置方向を自由に設計し所望の性能を有する漏れ波アンテナを容易に構成することができる。

本発明の請求項2に係る漏れ波アンテナは、
相互に接続されたユニットセルの中心間の距離が、ユニットセル同士の接続方向に沿った長さの1.5倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の漏れ波アンテナである。

本発明の請求項3に係る漏れ波アンテナは、
ユニットセルが10個以下であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。

本発明の請求項4に係る漏れ波アンテナは、
所定の角度は略90度であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。
本構成により、垂直偏波と水平偏波に対応できるうえに、アンテナの面積を効率的に活用することができる。

本発明の請求項5に係る漏れ波アンテナは、
ユニットセルは略円弧状に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。
本構成により、円状の他のアンテナの周囲などのスペースを有効に活用しつつ、ユニットセルごとに互いに異なる偏波方向に対応できる。通常は干渉を避けるために距離を空けるが、本発明に係る漏れ波アンテナであれば、干渉が抑えられるため、このように他のアンテナに近接して配置して使用することが可能となる。

本発明の請求項6に係る漏れ波アンテナは、
ユニットセルに接続され到来する電波を検知する検知部を備えることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。
本構成により、様々な偏波方向に対応できるアンテナにより、その偏波方向が不明な検知対象となる電波を検知することができる。

本発明の請求項7に係る漏れ波アンテナは、
ユニットセルは曲面上に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。
本構成により、例えばフレキシブル基板上などでも、様々な偏波方向に対応した漏れ波アンテナとすることができる。

本発明の請求項8に係る漏れ波アンテナは、
2の端子部を有し、1の端子部は給電され、他方の端子部は外部のアンテナに接続されていることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。
本構成により、外部のアンテナとの間に本装置を接続する簡単な構成で、外部のアンテナの送受信領域をさらに拡大することが可能となる。

本発明の請求項9に係る漏れ波アンテナは、
直列キャパシタとしてインターディジタルキャパシタまたはスロットキャパシタを備えることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。

本発明の請求項10に係る漏れ波アンテナは、
並列コイルとしてショートスタブを備えることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。

本発明の請求項11に係る漏れ波アンテナは、
同一方向に配置され同じ角度の偏波に対応するユニットセルをさらに有することを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載の漏れ波アンテナである。

本発明の請求項12に係る漏れ波アンテナの設計方法は、
請求項1ないし11のいずれかに記載の漏れ波アンテナを設計する、漏れ波アンテナの設計方法であって、
ユニットセルの配置方向を調整することで偏波方向を調整する偏波方向調整ステップを有することを特徴とする、漏れ波アンテナの設計方法である。

本発明の請求項13に係る漏れ波アンテナの設計方法は、
請求項11に記載の漏れ波アンテナを設計する、漏れ波アンテナの設計方法であって、
ユニットセルの配置方向を調整することで偏波方向を調整する偏波方向調整ステップ、および、
同一方向に配置され同じ角度の偏波に対応するユニットセルの個数を調整することで利得を調整する利得調整ステップ、を有することを特徴とする、漏れ波アンテナの設計方法である。

本発明の請求項14に係る漏れ波アンテナの製造方法は、
請求項12または13のいずれかに記載の漏れ波アンテナの設計方法を実行する設計ステップ、
基板を製造する製造ステップ、および、
基板上にユニットセルを配置する配置ステップ、
を有することを特徴とする、漏れ波アンテナの製造方法である。

本発明の請求項15に係る漏れ波アンテナの製造方法は、
直列キャパシタの長さまたは並列インダクタの長さを調節することで動作周波数を調整する動作周波数調整ステップを有することを特徴とする、本発明の請求項14に記載の漏れ波アンテナの製造方法である。

本発明の請求項16に係る測定装置は、
基準測定アンテナ、受信アンテナ、および、電波測定部を備え、
電波測定部は、測定の対象となる信号に対して、基準測定アンテナで測定された信号を基準として、受信アンテナで測定された信号から位相を求めるものであり、
基準測定アンテナは請求項1ないし11のいずれかに記載の漏れ波アンテナであることを特徴とする、測定装置である。

本発明の請求項17に係る非接触給電装置は、
非接触給電部、および、給電対象検知部を備え、
非接触給電部または給電対象検知部は請求項1ないし11のいずれかに記載の漏れ波アンテナを備えることを特徴とする、非接触給電装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図2】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図3】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図4】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図5】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図6】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図7】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図8】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの構成例を示す。
図9】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの調整方法の例を示す。
図10】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの調整方法の例を示す。
図11】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの製造方法の例を示す。
図12】本発明の一実施例における漏れ波アンテナの製造方法の例を示す。
図13】本発明の一実施例における測定装置の構成例を示す。
図14】本発明の一実施例における非接触給電装置の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1図2は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の構成例を示す。
本実施例において、漏れ波アンテナ100はユニットセル10を複数備える。
ユニットセル10は独立アンテナである。独立アンテナである、とは、配列や個数が制限されず、単体で機能した場合の偏波方向と略同一の方向の電磁波において機能することを示す。つまり、先行技術に記載のような、集合体としてのアンテナではない。
【0008】
ユニットセル10は直列キャパシタ11と並列インダクタ12を備える。
本実施例において、直列キャパシタ11はインターディジタルキャパシタである。直列キャパシタ11としてスロットキャパシタを備えてもよい。また、他のキャパシタでもよい。
本実施例において、並列インダクタ12はショートスタブである。他の種類のコイルを使用してもよい。
【0009】
ユニットセル10は、基板101に略一平面上で互いに異なる所定の角度で配置され、異なる角度の偏波に対応する。ユニットセル10同士は接続導体105を介して接続されている。また、漏れ波アンテナ100は両端部に端子部103,104を備える。なお、異なる所定の角度で配置され、異なる角度の偏波に対応することから、当然、180度以外の角度を含んでいる。
本実施例においては、2つのユニットセル10が90度の角度で配置されている。これにより、例えばVH偏波の双方に対応することが可能となる。
本実施例では、2つのユニットセル10が略くの字型に配置されているが、略コの字型、略ロの字型などに配置してもよい。
本実施例において、漏れ波アンテナ100は、ユニットセル10間ではなく、個々のユニットセル10が直列キャパシタ11と並列インダクタ12を備える。したがって、ユニットセルなどの素子間の長さや配置方向に制限がなく、設計の自由度も高くなり、製造時の微調整も容易となる。
【0010】
本実施例において、漏れ波アンテナ100は、2つの端子部103,104を有し、一方の端子部104は給電され、他方の端子部103は終端されている。
そして、電波を発信することにより、小型アンテナなど発信を行うアンテナとして機能することができる。
本実施例ではユニットセル10は形状や材質が同一のものであるが、CRLH線路を構成するものであれば、目的の感度などに応じて異なるものを有していても良い。
本構成により、ユニットセル10の間隔や相互の配置方向を自由に設計し所望の性能を有する漏れ波アンテナ100を容易に構成することができる。
【0011】
本実施例では、相互に接続されたユニットセル10の中心間の距離が、ユニットセル10同士の接続方向に沿った長さの1.5倍以上である。ユニットセル10の配列方向の長さとは、接続方向に沿った中心間の距離を示す。本実施例では接続導体105の中心に沿うくの字型の線の長さである。
本実施例では、ユニットセル10はすべて直列に接続されているが、もちろん、分岐を設け一部を並列に接続してもよい。
本構成により、出力を抑え、周囲の機器との干渉を抑制することができる。
【0012】
本実施例では、ユニットセル10が10個以下である。
本実施例における漏れ波アンテナ100は、独立したアンテナであることから、他の機器との干渉が少ないが、さらに10個以下とすることにより、漏れ波アンテナ100全体としても、干渉が少なく、かつ、コンパクトな構造とすることができる。
【0013】
図3図4は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の構成例を示す。
本実施例において、ユニットセル10は略円弧状に配置されている。円弧状とは、円やS字、1周以上略円弧状などに配置されている渦巻き型を含む。
円状に均等に配置した場合には、様々な偏波方向に対して、電波を送信する場合には出力をほぼ一様とすることができ、また、様々な偏波方向において、電波を受信する場合には感度をほぼ一様とすることができる。
また、所定の点を中心として略渦巻き状に配置した場合には、様々な方向の偏波に対応できるうえに、アンテナの面積を効率的に活用することができる。
【0014】
図5は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の構成例を示す。
本実施例において、漏れ波アンテナ100は、ユニットセル10に検知部110が接続されている。そして、検知部110は到来する電波を検知する。検知部110はユニットセル10に直接でなくとも間接的に接続されていてもよい。
偏波方向が未知である検知対象の電波を、2つ以上の偏波方向を有する2つ以上のユニットセル10により確実に検知することが可能となる。
【0015】
図6は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の構成を示す。
本実施例において、ユニットセル10は曲面上に配置されている。
例えば、電波の送信または受信について、厳密な方向は必要ではないが1方向では不十分である場合、2つの異なる偏波方向に電波を送信または受信することにより、確実に電波を送信あるいは受信することが可能となる。
例えば、フレキシブルな素材上に配置される場合などにも適用できる。本漏れ波アンテナであれば、特にフレキシブルな素材上に配置された場合、2つの異なる偏波方向に対応できるため、1方向の偏波にしか対応できない場合に比べ、ほぼ確実に様々な方向の偏波に対応することができる。
【0016】
図7は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の構成を示す。
本実施例において、漏れ波アンテナ100は、2の端子部103,104を有し、1の端子部104は給電され、他方の端子部103は外部のアンテナに接続されている。
例えば外部アンテナ500が主となるアンテナである場合、漏れ波アンテナ100により、2つの方向に、補助的に電波を送信または受信することができる。
この構成により、外部アンテナ500により、主な出力領域あるいは検知領域を確保しながら、漏れ波アンテナ100を途中に接続するだけで、出力領域あるいは検知領域を容易に補強することができる。
【0017】
図8は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の構成を示す。
本実施例において、漏れ波アンテナ100は、同一方向に配置され同じ角度の偏波に対応するユニットセル10をさらに有する。
ユニットセル10が独立したアンテナであるため、所望の偏波方向に対する、出力あるいは感度について、所望の偏波方向に対応するユニットセル10の配置方向、および、ユニットセル10の個数を設定するだけで、基本的な構成が可能となる。
【0018】
図9は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の設計方法を示す。
本実施例において、漏れ波アンテナ100の設計方法は、ユニットセル10の配置方向を調整することで偏波方向を調整する偏波方向調整ステップを有する。
ユニットセル10が独立したアンテナであるため、所望の偏波方向に対する、出力あるいは感度について、所望の偏波方向に対応するユニットセル10の配置方向を設定するだけで、基本的な構成が可能となる。
【0019】
図10は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の設計方法を示す。
本実施例において、漏れ波アンテナ100の設計方法は ユニットセル10の配置方向を調整することで偏波方向を調整する偏波方向調整ステップ、および、同一方向に配置され同じ角度の偏波に対応するユニットセル10の個数を調整することで利得を調整する利得調整ステップを有する。
ユニットセル10が独立したアンテナであるため、所望の偏波方向に対する、出力あるいは感度について、所望の偏波方向に対応するユニットセル10の配置方向、および、ユニットセル10の個数を設定するだけで、基本的な構成が可能となる。
【0020】
図11は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の製造方法を示す。
本実施例において、製造方法は、上述の漏れ波アンテナ100の設計方法を実行する設計ステップS10、基板101を製造する製造ステップS20、および、基板101上にユニットセル10を配置する配置ステップS30を有する。
基板101上にユニットセル10を載置する構成でもよい。
積層基板101として製造する場合には、積層基板101中にユニットセル10を実装するため、例えば、製造ステップの途中から配置ステップを同時に実施する形式でも良い。
【0021】
図12は、本発明の一実施例における漏れ波アンテナ100の製造方法を示す。
本実施例において、漏れ波アンテナ100の製造方法は、設計ステップS10、製造ステップS20、配置ステップS30の後、直列キャパシタ11の長さまたは並列インダクタ12の長さを調節することで動作周波数を調整する動作周波数調整ステップS40を有する。
製造時には誤差が生じるため、従来の製造方法では、所望の周波数特性を達成することが難しく、周波数調整が必要となることが多い。特に、直列キャパシタ11としてインターディジタルキャパシタを用いた場合、および、直列キャパシタ11としてスロットキャパシタを用いた場合には、トリミングなどで微調整が可能となり、調整がさらに容易となる。
【0022】
図13は、本発明の一実施例における測定装置200の構成を示す。
測定装置200は、基準測定アンテナとしての上述の漏れ波アンテナ100、受信アンテナ210、および、電波測定部220を備える。
電波測定部220は、測定の対象となる信号に対して、基準測定アンテナで測定された信号を基準として、受信アンテナで測定された信号から位相を求める。
【0023】
以下に測定の一例を示す。
まず、被測定アンテナ510より信号を送信する。この信号は、振幅、位相ともに未知である。送信された信号を、受信アンテナ210および漏れ波アンテナ100により受信する。受信アンテナ210は振幅と位相を測定する。また、漏れ波アンテナ100は位相を測定する。漏れ波アンテナ100で測定された位相を基準として、受信アンテナ210での位相との位相差から、被測定アンテナ510からの信号の位相が測定できる。漏れ波アンテナ100は、被測定アンテナ510と同じ台座に固定するなどすることにより、被測定アンテナ510と漏れ波アンテナ100との位置関係を固定しつつ、台座を回転させるなどして、被測定アンテナ510の特性を計測できる。
つまり、被測定アンテナ510から電波を放射すると、被測定アンテナ510と漏れ波アンテナ100は測定時に位置関係が変化しないよう設置すれば、漏れ波アンテナ100において常に一定の位相、つまり、基準位相が取得できる。受信アンテナ210では位相および振幅がともに変化するので、そのデータを取得する。振幅は受信アンテナ210で直接測定でき、位相は漏れ波アンテナ100で取得した基準位相に対して、受信アンテナの位相差を取ることで取得できる。
このようにして、漏れ波アンテナ100を参照用のアンテナとして用いた、複素電力パターン測定、つまり、位相および振幅の測定が可能な、OTA(Over the air)測定装置を構成することができる。
通常のアンテナを被測定アンテナ510のそばに配置すると被測定アンテナ510に影響を与えてしまうが、本発明における漏れ波アンテナ100は、干渉が小さいため、被測定アンテナ510のすぐそばに設置しても、被測定アンテナ510への影響が小さい。このため、正確な基準位相の測定が可能となる。
【0024】
図14は、本発明の一実施例における非接触給電装置300の構成を示す。
本実施例における非接触給電装置300は、非接触給電部320、および、給電対象検知部330を備える。
本実施例では、給電対象検知部330が漏れ波アンテナ100である。
この漏れ波アンテナ100は、非接触給電部320を含む周囲の機器との干渉が小さい。
このため、非接触給電部320に影響をほとんど与えることなく、非接触給電と、給電対象の検知とを同時に行える。
【0025】
非接触給電部320にも漏れ波アンテナ100を用いることができる。また、非接触給電部320、および、給電対象検知部330の双方に漏れ波アンテナ100を用いることも、あるいは、1つの漏れ波アンテナ100を非接触給電部320、および、給電対象検知部330として用いることもできる。
【0026】
本発明は以上の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な実施例を含むことは言うでもない。
例えば、検知部を備え到来する電波を検知しながら、同時に漏れ波アンテナとして電波を送信する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 ユニットセル
11 直列キャパシタ
12 並列インダクタ
100 漏れ波アンテナ
101 基板
102 グラウンド
103 端子部
104 端子部
105 接続導体
110 検知部
120 参照用電波発信部
200 測定装置
210 受信アンテナ
220 電波測定部
300 非接触給電装置
310 制御部
320 非接触給電部
330 給電対象検知部
500 外部アンテナ
510 被測定アンテナ
図1
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