(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131472
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/12 20060101AFI20220831BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20220831BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
E02F9/12 Z
E02F9/00 B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030432
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田和 尚泰
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015BA03
2D015HA03
2D015HB04
(57)【要約】
【課題】角度センサを、外力から保護した状態でセンタジョイントに設ける。
【解決手段】油圧ショベル1は、油圧ポンプ10および作動油タンクと走行用油圧モータ2Fとの間で圧油を流通させるセンタジョイント11と、下部走行体2に対する上部旋回体4の旋回角度を検出する角度センサ30とを備える。センタジョイント11は、筒状のボディ12と、ボディ12の内周側に回転可能に嵌合されたスピンドル17とを含んで構成され、センタジョイント11の上端側には、ボディ12とスピンドル17との嵌合部を上方から覆うカバー部材22が設けられている。角度センサ30は、カバー部材22とスピンドル17との間に設けられている。これにより、落石、粉塵等が角度センサ30に衝突するのをカバー部材22によって抑えることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の油圧モータが設けられた自走可能な下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられ、前記上部旋回体に搭載された作動油タンク内の作動油を圧油として吐出する油圧ポンプと、
前記上部旋回体の旋回中心に位置して前記上部旋回体と前記下部走行体との間に設けられ、前記油圧ポンプおよび前記作動油タンクと前記油圧モータとの間で圧油を流通させるセンタジョイントと、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検出する角度センサとを備え、
前記センタジョイントは、前記上部旋回体に取付けられた筒状のボディと、前記下部走行体に取付けられ前記ボディの内周側に回転可能に嵌合されたスピンドルとを含んで構成してなる建設機械において、
前記センタジョイントの上端側には、前記ボディと前記スピンドルとの嵌合部を上方から覆うカバー部材が設けられ、
前記角度センサは、前記カバー部材と前記スピンドルとの間に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記スピンドルには、前記油圧モータからのドレン油を前記作動油タンクに戻すためのドレン通路が設けられ、
前記カバー部材には、ドレン油を前記作動油タンクに戻すドレンホースが接続されるドレンポートが設けられ、
前記カバー部材と前記センタジョイントとの間には、前記ドレン通路と前記ドレンポートとの間を連通させるドレン流入室が形成され、
前記角度センサは、前記ドレン流入室内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記スピンドルと前記カバー部材との間には、シール部材により液密に封止された密閉空間が形成され、
前記角度センサは、前記密閉空間内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記スピンドルの上端には小径な円筒部が設けられ、
前記角度センサは、前記円筒部を取り囲む環状のステータと環状のロータとを有し、
前記ステータは前記カバー部材側に取付けられ、前記ロータは前記スピンドル側に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
走行用の油圧モータが設けられた自走可能な下部走行体と、
前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられ、前記上部旋回体に搭載された作動油タンク内の作動油を圧油として吐出する油圧ポンプと、
前記上部旋回体の旋回中心に位置して前記上部旋回体と前記下部走行体との間に設けられ、前記油圧ポンプおよび前記作動油タンクと前記油圧モータとの間で圧油を流通させるセンタジョイントと、
前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検出する角度センサとを備え、
前記センタジョイントは、前記下部走行体に取付けられた筒状のボディと、前記上部旋回体に取付けられ前記ボディの内周側に上下方向に延びる軸線を中心として回転可能に嵌合されたスピンドルとを含んで構成してなる建設機械において、
前記センタジョイントの下端側には、前記ボディと前記スピンドルとの嵌合部を下方から覆うカバー部材が設けられ、
前記スピンドルには、前記スピンドルの中心部を軸方向に延び前記スピンドルの下端側に開口した中心孔と、前記中心孔とは異なる部位を軸方向に延び前記油圧モータから前記作動油タンクに戻るドレン油が流れるドレン通路とが設けられ、
前記スピンドルの下端と前記カバー部材との間には、シール部材により液密に封止された密閉空間が形成され、
前記角度センサは前記密閉空間に配置され、前記角度センサに接続されたハーネスは、前記中心孔を通って前記スピンドルの外部に導出されることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば油圧ショベル等の下部走行体と上部旋回体との間にセンタジョイントが設けられた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械を代表する油圧ショベルは、走行用の油圧モータが設けられた自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体に設けられた作業装置とを備えて構成され、作業装置を用いて土砂の掘削作業等を行う。上部旋回体は、下部走行体上に旋回輪を介して旋回可能に搭載され、作動油タンクに貯留された作動油を圧油として吐出する油圧ポンプが設けられている。下部走行体と上部旋回体との間には、上部旋回体の旋回中心に位置してセンタジョイントが設けられている。
【0003】
センタジョイントは、下部走行体に設けられた走行用の油圧モータと、上部旋回体に設けられた油圧ポンプおよび作動油タンクとの間で圧油を流通させる。オペレータは、旋回動作時の操作性を向上するために、下部走行体に対する上部旋回体の旋回角度を正確に把握する必要がある。このため、油圧ショベルのセンタジョイントには、通常、角度センサが設けられ、この角度センサによって下部走行体に対する上部旋回体の旋回角度が検出される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による油圧ショベルでは、センタジョイントの上端部に角度センサが設けられている。しかし、センタジョイントの上端部は、上部旋回体のベースとなる旋回フレームから上方に突出しているため、掘削作業時にバケットから落下した岩石(落石)、粉塵、風雨等に常に晒されている。従って、精密機器である角度センサをセンタジョイントの上端部に配置した場合には、落石、粉塵、風雨等によって角度センサが外力を受けることにより、角度センサが故障し易くなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、角度センサを外力から保護した状態でセンタジョイントに設けることができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走行用の油圧モータが設けられた自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられ、前記上部旋回体に搭載された作動油タンク内の作動油を圧油として吐出する油圧ポンプと、前記上部旋回体の旋回中心に位置して前記上部旋回体と前記下部走行体との間に設けられ、前記油圧ポンプおよび前記作動油タンクと前記油圧モータとの間で圧油を流通させるセンタジョイントと、前記下部走行体に対する前記上部旋回体の旋回角度を検出する角度センサとを備え、前記センタジョイントは、前記上部旋回体に取付けられた筒状のボディと、前記下部走行体に取付けられ前記ボディの内周側に回転可能に嵌合されたスピンドルとを含んで構成してなる建設機械において、前記センタジョイントの上端側には、前記ボディと前記スピンドルとの嵌合部を上方から覆うカバー部材が設けられ、前記角度センサは、前記カバー部材と前記スピンドルとの間に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、角度センサは、センタジョイントの上端側に設けられたカバー部材とセンタジョイントとの間に配置されているので、カバー部材によって落石、粉塵等による外力から角度センサを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による油圧ショベルを左側から示す左側面図である。
【
図2】第1の実施の形態によるセンタジョイント、角度センサ、カバー部材等を示す縦断面図である。
【
図3】
図2中のカバー部材等の要部を拡大した要部拡大の断面図である。
【
図4】第2の実施の形態によるセンタジョイント、角度センサ、カバー部材等を示す縦断面図である。
【
図5】
図4中のカバー部材等の要部を拡大した要部拡大の断面図である。
【
図6】第3の実施の形態によるセンタジョイント、角度センサ、カバー部材等を示す縦断面図である。
【
図7】
図6中のカバー部材等の要部を拡大した要部拡大の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、クローラ式の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施の形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0011】
図1ないし
図3は本発明の第1の実施の形態を示している。建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に設けられた上部旋回体4と、上部旋回体4の前部に俯仰動可能に設けられた作業装置5とを備えている。
【0012】
下部走行体2は、上部旋回体4を支持するトラックセンタフレーム2Aと、トラックセンタフレーム2Aの左右両側に配置されたトラックサイドフレーム2B(左側のみ図示)とを有している。左右のトラックサイドフレーム2Bの前側には、それぞれ遊動輪2Cが設けられている。左右のトラックサイドフレーム2Bの後側には、それぞれ駆動輪2Dが設けられている。遊動輪2Cと駆動輪2Dには、履帯2Eが巻回されている。
【0013】
左右の駆動輪2Dには、それぞれ走行用油圧モータ2Fが設けられている。走行用油圧モータ2Fは、コントロールバルブ(図示せず)、センタジョイント11等を介して油圧ポンプ10に接続されている。油圧ポンプ10は、上部旋回体4に搭載された作動油タンク(図示せず)から作動油を吸込んで加圧し、センタジョイント11等を介して走行用油圧モータ2Fに供給する。走行用油圧モータ2Fは駆動輪2Dを回転駆動し、履帯2Eが周回動作を行うことにより油圧ショベル1(下部走行体2)が走行する。
【0014】
旋回輪3は、下部走行体2のトラックセンタフレーム2Aと上部旋回体4の旋回フレーム6との間に設けられている。旋回輪3は、内周側に内歯車が設けられた内輪、および内輪の外周側に回転可能に取付けられた外輪(いずれも図示せず)を含んで構成されている。旋回輪3の内輪はトラックセンタフレーム2Aに取付けられ、旋回輪3の外輪は旋回フレーム6側に取付けられている。旋回フレーム6には旋回モータが取付けられ、旋回モータの出力軸に設けられたピニオンギヤ(いずれも図示せず)は、旋回輪3の内輪に設けられた内歯車に噛合している。従って、旋回モータを回転駆動することにより、上部旋回体4を下部走行体2上で旋回動作させることができる。
【0015】
作業装置5は、旋回フレーム6の前端に左右方向に揺動(スイング)可能に取付けられたスイングポスト5Aと、スイングポスト5Aに俯仰動可能に取付けられたブーム5Bと、ブーム5Bの先端に回動可能に取付けられたアーム5Cと、アーム5Cの先端に回動可能に取付けられたバケット5Dとを有している。これらブーム5B、アーム5C、バケット5Dは、それぞれブームシリンダ5E、アームシリンダ5F、バケットシリンダ5Gによって駆動される。旋回フレーム6とスイングポスト5Aとの間には、スイングポスト5Aを左右方向に揺動させるスイングシリンダ(図示せず)が設けられている。
【0016】
上部旋回体4は、旋回フレーム6と、旋回フレーム6の左側に設けられたキャブ7と、旋回フレーム6の後側に取付けられたカウンタウエイト8とを含んで構成されている。キャブ7は、オペレータが油圧ショベル1を操縦する運転室を画成し、カウンタウエイト8は、作業装置5との重量バランスを保っている。カウンタウエイト8の前側にはエンジン9および油圧ポンプ10が左右方向に並んで設けられ、エンジン9によって油圧ポンプ10が駆動される。旋回フレーム6の右側には作動油タンク(図示せず)が設けられ、作動油タンクには、油圧ショベル1に搭載された走行用油圧モータ2F、旋回モータ、油圧シリンダ5E、5F、5G等の油圧アクチュエータに供給される作動油が貯留されている。
【0017】
旋回フレーム6は、ベースとなる平板状の底板6Aを有し、底板6Aの下面には、旋回輪3の外輪が取付けられている。また、底板6Aには、旋回輪3の中心(上部旋回体4の旋回中心)に位置して、センタジョイント11を構成するボディ12が取付けられている。
【0018】
センタジョイント11は、上部旋回体4の旋回中心O-Oに位置して上部旋回体4と下部走行体2との間に設けられている。センタジョイント11は、上部旋回体4に設けられた油圧ポンプ10および作動油タンクと、下部走行体2に設けられた走行用油圧モータ2Fとの間で圧油を流通させる。
図2および
図3に示すように、センタジョイント11は、上部旋回体4に取付けられた円筒状のボディ12と、下部走行体2に取付けられボディ12の内周側に回転可能に嵌合する円筒状のスピンドル17とを含んで構成されている。
【0019】
ボディ12は、上部旋回体4の旋回フレーム6にボルト(図示せず)を用いて取付けられている。ボディ12は、その中心線を上部旋回体4の旋回中心に一致させた状態で上下方向に延びている。ボディ12の内周面12Aには、軸方向(上下方向)に適度な間隔をもって4本の環状通路13、14、15、16が形成されている。これら4本の環状通路13~16は、それぞれボディ12の内周面に全周に亘って形成された全周溝からなっている。4本の環状通路13~16には、それぞれボディ12の径方向に延びるボディ側接続ポート13A、14A、15A、16Aの一端が連通している。これら4個のボディ側接続ポート13A~16Aの他端はボディ12の外周面に開口し、後述の油圧源側油圧ホース26が接続される。ボディ12の上端12B側は上側円筒部12Cとなり、上側円筒部12Cには、後述するカバー部材22の下側開口部22Aが嵌合している。
【0020】
スピンドル17は、その下端面に固定された板状のストッパ(図示せず)を介して、下部走行体2のトラックセンタフレーム2Aに取付けられている。スピンドル17は、その中心線を上部旋回体4の旋回中心に一致させた状態で上下方向に延び、ボディ12の内周側に回転可能に嵌合している。スピンドル17は、ボディ12の内周面12Aに嵌合する嵌合部17Aと、ボディ12の上端12Bから上方に突出する小径円筒部17Bと、ボディ12の下端12Dから下方に突出する下側突出部17Cとを有している。小径円筒部17Bの外径寸法は嵌合部17Aよりも小さく、嵌合部17Aと小径円筒部17Bとの境界部は環状の平坦面17Dとなっている。下側突出部17Cの外径寸法は、嵌合部17Aよりも大きく、嵌合部17Aと下側突出部17Cとの境界部には、スピンドル17に対するボディ12の下限位置を設定する下側係止部17Eが設けられている。
【0021】
スピンドル17の嵌合部17Aの外周面17Fには、4本の凹陥溝17Gが全周に亘って環状に形成されている。これら4本の凹陥溝17Gは、それぞれボディ12の4本の環状通路13~16に対応する位置に配置され、これら環状通路13~16の一部を構成している。
【0022】
スピンドル17には、軸方向に延びる4本の油通路18が、周方向に90度の角度間隔をもって形成されている(1本のみ図示)。油通路18は、下部走行体2に設けられた左右の走行用油圧モータ2Fに対し、それぞれ圧油を供給、排出するために合計4本設けられている。これら4本の油通路18は、環状通路13、14、15、16に1本づつ接続されるため、軸方向の長さ寸法が異なっている(
図2中の油通路18は、環状通路14に接続されている)。
【0023】
4本の油通路18の下端側には、それぞれスピンドル17の下側突出部17Cの外周面に開口する2個のスピンドル側接続ポート18Aが形成されている。スピンドル側接続ポート18Aには、後述するモータ側油圧ホース27が接続される。これにより、ボディ12のボディ側接続ポート13A~16Aは、環状通路13~16、スピンドル17の油通路18を介して、スピンドル側接続ポート18Aに連通している。従って、油圧源側油圧ホース26とモータ側油圧ホース27とは、センタジョイント11を介して常に連通し、下部走行体2上で上部旋回体4が旋回するときにも、油圧ポンプ10および作動油タンク(油圧源)と走行用油圧モータ2Fとの間で圧油を流通させることができる。
【0024】
ボディ12の内周面12Aと、スピンドル17の嵌合部17Aの外周面17Fとの間には、5本の環状シール19が設けられている。これら5本の環状シール19は、ボディ12の内周面12Aに形成された4本の環状通路13、14、15、16をそれぞれ軸方向で挟む位置に配置され、4本の環状通路13、14、15、16間をシールしている。
【0025】
また、スピンドル17には、4本の油通路18とは異なる部位を軸方向に延びる1本のドレン通路20が設けられている。ドレン通路20は、走行用油圧モータ2Fからのドレン油を作動油タンクに戻す。ドレン通路20の下端は、スピンドル17の下側突出部17Cの外周面に開口するスピンドル側ドレンポート20Aとなり、このスピンドル側ドレンポート20Aには、後述するモータ側ドレンホース29が接続されている。ドレン通路20の上端は、スピンドル17の平坦面17Dに開口し、後述するドレン流入室25に連通している。
【0026】
ストッパ21は、スピンドル17の平坦面17Dにボルト等(図示せず)を用いて取付けられている。ストッパ21は、スピンドル17の嵌合部17Aよりも大径な外径寸法を有し、小径円筒部17Bの外径寸法よりも大きな内径寸法を有する環状の板体により形成されている。ストッパ21は、ボディ12の上端12Bに当接してボディ12を上方に抜止めし、ボディ12の上端12Bは、スピンドル17の平坦面17Dと同一平面上に配置されている。これにより、ボディ12は、スピンドル17の下側係止部17Eとストッパ21とにより、スピンドル17の軸方向に位置決めされている。ストッパ21のうちドレン通路20の上端に対応する部位には、板厚方向に貫通する貫通孔21Aが形成されている。
【0027】
カバー部材22は、センタジョイント11の上端側に設けられ、ボディ12とスピンドル17との嵌合部を上方から覆っている。
図3に示すように、カバー部材22は、ボディ12の上側円筒部12Cに嵌合する下側開口部22Aと、スピンドル17の小径円筒部17Bに嵌合する上側開口部22Bとを有している。下側開口部22Aとボディ12の上側円筒部12Cとの嵌合部には、環状の下側シール部材23Aが設けられている。上側開口部22Bとスピンドル17の小径円筒部17Bとの嵌合部には、環状の上側シール部材23Bと、環状のダストシール24とが設けられている。また、カバー部材22には、スピンドル17の軸方向と直交するようにカバー側ドレンポート22Cが形成されている。カバー側ドレンポート22Cの一端は、ドレン流入室25に開口し、カバー側ドレンポート22Cの他端は、カバー部材22の外周面に開口している。カバー側ドレンポート22Cには、後述するタンク側ドレンホース28が接続される。
【0028】
ドレン流入室25は、カバー部材22とセンタジョイント11との間に形成され、ドレン通路20の上端とカバー部材22のカバー側ドレンポート22Cとの間を連通させている。具体的には、ドレン流入室25は、ボディ12の上端12B、スピンドル17を構成する嵌合部17Aの平坦面17D、小径円筒部17Bの外周面、およびカバー部材22によって囲まれた環状の室として形成され、下側シール部材23A、上側シール部材23B、および環状シール19によってシールされている。従って、走行用油圧モータ2Fからのドレン油は、モータ側ドレンホース29、ドレン通路20、ストッパ21の貫通孔21A等を通じてドレン流入室25に流入し、カバー部材22のカバー側ドレンポート22C、タンク側ドレンホース28等を通じて作動油タンクに戻される。
【0029】
油圧源側油圧ホース26は、上部旋回体4に設けられた油圧源、即ち油圧ポンプ10および作動油タンクとセンタジョイント11との間を接続する。油圧源側油圧ホース26は、2台(左右)の走行用油圧モータ2Fに対して圧油を供給、排出するために2本ずつ、合計4本設けられている。4本の油圧源側油圧ホース26のうち2本は、一端がコントロールバルブ(図示せず)を介して油圧ポンプ10に接続され、他端がボディ12のボディ側接続ポート13A~16Aのうちいずれか2つに接続される。また、4本の油圧源側油圧ホース26のうち他の2本は、一端がコントロールバルブ(図示せず)を介して作動油タンクに接続され、他端がボディ12のボディ側接続ポート13A~16Aのうち残りの2つに接続される。
【0030】
モータ側油圧ホース27は、下部走行体2に設けられた左右の走行用油圧モータ2Fとセンタジョイント11との間を接続する。モータ側油圧ホース27は、2台(左右)の走行用油圧モータ2Fに対して大量の圧油を供給、排出するために、1本の油通路18に対して2本ずつ、合計8本設けられている(2本のみ図示)。これら8本のモータ側油圧ホース27は、一端が油通路18のスピンドル側接続ポート18Aに接続され、他端が走行用油圧モータ2Fに接続される。
【0031】
タンク側ドレンホース28は、作動油タンクとカバー部材22のカバー側ドレンポート22Cとの間を接続する。タンク側ドレンホース28の一端は、作動油タンクに接続され、タンク側ドレンホース28の他端は、カバー部材22のカバー側ドレンポート22Cに接続される。モータ側ドレンホース29は、左右の走行用油圧モータ2Fとセンタジョイント11との間を接続する。モータ側ドレンホース29の一端は、走行用油圧モータ2Fに接続され、モータ側ドレンホース29の他端は、スピンドル17に形成されたドレン通路20のスピンドル側ドレンポート20Aに接続される。
【0032】
角度センサ30は、ドレン流入室25内に位置してカバー部材22とスピンドル17との間に設けられている。角度センサ30は、カバー部材22に取付けられたステータ30Aと、スピンドル17に取付けられステータ30Aに対して相対回転可能となったロータ30Bとを含んで構成され、耐油性を有している。ステータ30Aは、スピンドル17の小径円筒部17Bを外周側から取り囲む環状に形成され、ボルト等を用いてカバー部材22に取付けられている。ロータ30Bも、スピンドル17の小径円筒部17Bを外周側から取り囲む環状に形成され、ステータ30Aとの間に適度な間隔を保った状態でスピンドル17またはストッパ21に取付けられている。
【0033】
角度センサ30のステータ30Aは、角度情報を電気信号として出力するための機構を内包し、上部旋回体4に搭載されたコントローラ31にハーネス30Cを介して電気的に接続されている。角度センサ30は、下部走行体2に対して上部旋回体4が旋回動作を行ったときに、上部旋回体4の旋回角度を常に検出し、この旋回角度に応じた検出信号(電気信号)をコントローラ31に出力する。カバー部材22には、ドレン流入室25に開口するハーネス挿通孔22Dが形成され、ハーネス30Cはハーネス挿通孔22Dを通じて外部に導出される。カバー部材22とステータ30Aとの間には、ハーネス挿通孔22Dの周囲を取り囲むように環状のシール22Eが設けられ、シール22Eは、ハーネス挿通孔22Dをドレン流入室25に対してシールしている。
【0034】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1の動作について説明する。
【0035】
油圧ショベル1を用いて掘削作業等を行う場合には、オペレータがキャブ7に搭乗してエンジン9を作動させ、キャブ7内に配置された走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、油圧ショベル1を作業現場まで走行させる。
【0036】
このとき、油圧ポンプ10は、エンジン9によって駆動され、作動油タンクから吸込んだ作動油を加圧し、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに向けて圧油を吐出する。油圧ポンプ10から吐出した圧油は、走行用の操作レバーに対する操作に応じてコントロールバルブ、センタジョイント11等を介して左右の走行用油圧モータ2Fに供給される。
【0037】
具体的には、油圧ポンプ10から吐出した圧油は、コントロールバルブから油圧源側油圧ホース26、ボディ12の環状通路13~16、スピンドル17の油通路18、モータ側油圧ホース27等を通じて走行用油圧モータ2Fに供給される。一方、走行用油圧モータ2Fから排出された圧油は、モータ側油圧ホース27、スピンドル17の油通路18、ボディ12の環状通路13~16、油圧源側油圧ホース26、コントロールバルブ等を通じて作動油タンクに戻る。これにより、走行用油圧モータ2Fを回転させ、下部走行体2を走行させることができる。
【0038】
ここで、走行用油圧モータ2Fに供給された圧油の一部は、走行用油圧モータ2Fの摺動部分を潤滑した後、ドレン油となって作動油タンクに戻される。具体的には、走行用油圧モータ2Fから流出したドレン油は、モータ側ドレンホース29、スピンドル17のドレン通路20、ドレン流入室25、タンク側ドレンホース28等を通じて作動油タンクに戻される。
【0039】
一方、土砂の掘削作業等を行う場合には、キャブ7内のオペレータは、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、上部旋回体4を旋回させつつ、作業装置5の動作を制御する。
【0040】
下部走行体2上で上部旋回体4を旋回動作させたときには、角度センサ30が、下部走行体2に対する上部旋回体4の旋回角度を検出し、この旋回角度に応じた検出信号をハーネス30Cを介してコントローラ31に出力する。これにより、コントローラ31は、角度センサ30からの検出信号に基づいて上部旋回体4の旋回角度を演算し、例えばキャブ7内のモニタ(図示せず)に旋回角度を表示する。従って、オペレータは、モニタに表示された旋回角度を目視することにより、操作レバーによって上部旋回体4の旋回動作を正確に制御することができる。
【0041】
第1の実施の形態によれば、センタジョイント11の上端側に、ボディ12とスピンドル17との嵌合部、即ちボディ12の内周面12Aとスピンドル17の嵌合部17Aの外周面17Fとの嵌合部を上方から覆うカバー部材22が設けられている。そして、角度センサ30は、カバー部材22とセンタジョイント11との間に形成されたドレン流入室25内に配置されている。
【0042】
これにより、油圧ショベル1の掘削作業時に、作業装置5からセンタジョイント11に向けて岩石、粉塵等が落下したとしても、これら落石、粉塵等が角度センサ30に衝突するのをカバー部材22によって抑えることができる。この場合、センタジョイント11を構成するボディ12、スピンドル17、およびカバー部材22は、センタジョイント11を流通する圧油の圧力に耐えるだけの強度に設計されている。このため、カバー部材22等に落石が衝突したとしても、この衝撃による外力が角度センサ30に及ぶことがない。
【0043】
さらに、カバー部材22とセンタジョイント11との間は、下側シール部材23A、上側シール部材23B、ダストシール24によってシールされ、角度センサ30は、泥水、雨水等に対してシールされている。この結果、精密機器である角度センサ30の故障を防止して耐久性を高めることができ、長期に亘って角度センサ30からの検出信号に基づいて上部旋回体4の旋回動作を正確に制御することができる。
【0044】
また、センタジョイント11の上端側に角度センサ30を配置することにより、例えばセンタジョイントの下端側に角度センサを配置する場合に比較して、上部旋回体4に設けられたコントローラ31と角度センサ30との間を、ハーネス30Cを介して容易に接続することができる。しかも、ハーネス30Cの長さを可及的に短くできるので、上部旋回体4内でハーネス30Cを配策するときの作業性を高めることができる。
【0045】
かくして、第1の実施の形態による油圧ショベル1は、走行用油圧モータ2Fが設けられた自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体4と、上部旋回体4に設けられ、上部旋回体4に搭載された作動油タンク内の作動油を圧油として吐出する油圧ポンプ10と、上部旋回体4の旋回中心に位置して上部旋回体4と下部走行体2との間に設けられ、油圧ポンプ10および作動油タンクと走行用油圧モータ2Fとの間で圧油を流通させるセンタジョイント11と、下部走行体2に対する上部旋回体4の旋回角度を検出する角度センサ30とを備え、センタジョイント11は、上部旋回体4に取付けられた筒状のボディ12と、下部走行体2に取付けられボディ12の内周側に回転可能に嵌合されたスピンドル17とを含んで構成されている。そして、センタジョイント11の上端側には、ボディ12とスピンドル17との嵌合部を上方から覆うカバー部材22が設けられ、角度センサ30は、カバー部材22とスピンドル17との間に設けられている。
【0046】
この構成によれば、油圧ショベル1の掘削作業時に、落石、粉塵等が角度センサ30に衝突するのをカバー部材22によって抑えることができ、角度センサ30を外力から保護した状態でセンタジョイント11に設けることができる。この結果、精密機器である角度センサ30の故障を防止することができ、角度センサ30からの検出信号に基づいて上部旋回体4の旋回動作を正確に制御することができる。
【0047】
実施形態では、スピンドル17には、走行用油圧モータ2Fからのドレン油を作動油タンクに戻すためのドレン通路20が設けられ、カバー部材22には、ドレン油を作動油タンクに戻すタンク側ドレンホース28が接続されるカバー側ドレンポート22Cが設けられ、カバー部材22とセンタジョイント11との間には、ドレン通路20とカバー側ドレンポート22Cとの間を連通させるドレン流入室25が形成され、角度センサ30は、ドレン流入室25内に配置されている。この構成によれば、カバー部材22とセンタジョイント11との間に形成されたドレン流入室25を利用して、角度センサ30を配置することができる。従って、センタジョイント11と角度センサ30とを、上部旋回体4内にコンパクトに収容することができる。
【0048】
実施形態では、スピンドル17の上端には小径円筒部17Bが設けられ、角度センサ30は、小径円筒部17Bを取り囲む環状のステータ30Aと環状のロータ30Bとを有し、ステータ30Aはカバー部材22側に取付けられ、ロータ30Bはスピンドル17側に取付けられている。この構成によれば、スピンドル17の上端とカバー部材22との間に形成された狭隘なドレン流入室25内に、角度センサ30のステータ30Aとロータ30Bとを効率良く配置することができる。
【0049】
次に、
図4および
図5は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、スピンドルとカバー部材との間にシール部材により密閉された密閉空間が形成され、この密閉空間内に角度センサを配置したことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
第2の実施の形態によるセンタジョイント41は、ボディ12と、スピンドル42とを含んで構成され、センタジョイント41の上端側には、ボディ12とスピンドル42との嵌合部を上方から覆うカバー部材45が設けられている。しかし、スピンドル42およびカバー部材45の形状が、第1の実施の形態によるスピンドル17およびカバー部材22とは相違している。
【0051】
スピンドル42は、ボディ12の内周側に回転可能に嵌合している。スピンドル42は、ボディ12の内周面12Aに嵌合する嵌合部42Aと、ボディ12の上端12Bから上方に突出する中径円筒部42Bと、中径円筒部42Bから上方に突出する小径円筒部42Cと、ボディ12の下端12Dから下方に突出する下側突出部42Dとを有している。中径円筒部42Bの外径寸法は、嵌合部42Aよりも小さく小径円筒部42Cよりも大きくなっている。嵌合部42Aと中径円筒部42Bとの境界部は、環状の下側平坦面42Eとなり、中径円筒部42Bと小径円筒部42Cとの境界部は、環状の上側平坦面42Fとなっている。下側突出部42Dの外径寸法は、嵌合部42Aよりも大きく、嵌合部42Aと下側突出部42Dとの境界部には、スピンドル42に対するボディ12の下限位置を設定する下側係止部42Gが設けられている。
【0052】
スピンドル42の嵌合部42Aの外周面42Hには、4本の凹陥溝42Jが環状に形成され、これら4本の凹陥溝42Jは、それぞれボディ12の4本の環状通路13~16の一部を構成している。スピンドル42の下側平坦面42Eには、ストッパ43がボルト等を用いて取付けられている。ストッパ43は、ボディ12の上端12Bに当接してボディ12を上方に抜止めし、ボディ12の上端12Bは、スピンドル42の下側平坦面42Eと同一平面上に配置されている。ボディ12は、スピンドル42の下側係止部42Gとストッパ43とにより、スピンドル42の軸方向に位置決めされている。
【0053】
スピンドル42には、軸方向に延びる4本の油通路18が、周方向に90度の角度間隔をもって形成されている(1本のみ図示)。4本の油通路18の下端側には、それぞれスピンドル42の下側突出部42Dの外周面に開口する2個のスピンドル側接続ポート18Aが形成されている。また、スピンドル42には、4本の油通路18とは異なる部位を軸方向に延びる1本のドレン通路44が設けられている。ドレン通路44の下端は、スピンドル42の下側突出部42Dの外周面に開口するスピンドル側ドレンポート44Aとなっている。ドレン通路44の上端は、スピンドル42の中径円筒部42Bの外周面に開口し、ドレン流入室47に連通している。
【0054】
カバー部材45は、センタジョイント41の上端側に設けられ、ボディ12とスピンドル42との嵌合部を上方から覆っている。カバー部材45は、ボディ12の上側円筒部12Cに嵌合する下側開口部45Aと、スピンドル42の中径円筒部42Bに嵌合する中間開口部45Bと、スピンドル42の小径円筒部42Cに嵌合する上側開口部45Cとを有している。下側開口部45Aとボディ12の上側円筒部12Cとの嵌合部には、環状の下側シール部材46Aが設けられ、中間開口部45Bとスピンドル42の中径円筒部42Bとの嵌合部には、環状の上側シール部材46Bが設けられている。上側開口部45Cとスピンドル42の小径円筒部42Cとの嵌合部には、環状のダストシール46Cが設けられている。また、カバー部材45には、スピンドル42の軸方向と直交するカバー側ドレンポート45Dが形成されている。カバー側ドレンポート45Dの一端は、ドレン流入室47に開口し、カバー側ドレンポート45Dの他端は、カバー部材45の外周面に開口している。
【0055】
ドレン流入室47は、カバー部材45とセンタジョイント41との間に形成され、ドレン通路44の上端とカバー側ドレンポート45Dとの間を連通させている。具体的には、ドレン流入室47は、ボディ12の上端12B、スピンドル42を構成する嵌合部42Aの下側平坦面42E、中径円筒部42Bの外周面、およびカバー部材45によって囲まれた環状の室として形成され、下側シール部材46A、上側シール部材46B、および環状シール19によってシールされている。走行用油圧モータ2Fからのドレン油は、モータ側ドレンホース29、ドレン通路44等を通じてドレン流入室47に流入し、カバー部材45のカバー側ドレンポート45D、タンク側ドレンホース28等を通じて作動油タンクに戻される。
【0056】
密閉空間48は、ドレン流入室47の上側に位置してカバー部材45とスピンドル42との間に形成されている。具体的には、密閉空間48は、スピンドル42の上側平坦面42F、小径円筒部42Cの外周面、およびカバー部材45によって囲まれた環状の空間として形成されている。密閉空間48は、上側シール部材46Bによってドレン流入室47に対して液密に封止され、センタジョイント41を流通する作動油(圧油)、ドレン油から隔絶されている。また、密閉空間48は、ダストシール46Cによって粉塵、雨水等に対してシールされている。
【0057】
角度センサ49は、密閉空間48内に配置されている。角度センサ49は、第1の実施の形態に用いた角度センサ30と同様に、スピンドル42の小径円筒部42Cを取り囲む環状のステータ49Aとロータ49Bとを含んで構成されている。しかし、角度センサ49は、作動油およびドレン油から隔絶された密閉空間48内に配置されているため、耐油性を有していない。
【0058】
角度センサ49のステータ49Aは、ハーネス49Cを介してコントローラ31に電気的に接続されている。カバー部材45にはハーネス挿通孔45Eが形成され、ハーネス49Cは、ハーネス挿通孔45Eを通じて外部に導出される。この場合、角度センサ49は密閉空間48内に配置されているため、作動油およびドレン油が、ハーネス挿通孔45Eを通じてカバー部材45の外部に漏れることがなく、ハーネス挿通孔45Eの周囲にシール装着用の溝を設ける必要がない。
【0059】
第2の実施の形態による油圧ショベルは、上述の如きセンタジョイント41を備えるもので、センタジョイント41に向けて落下した落石、粉塵等が、角度センサ49に衝突するのをカバー部材45によって防止できるという基本的な作用効果については、第1の実施の形態によるものと同様である。然るに、第2の実施の形態では、センタジョイント41のスピンドル42とカバー部材45との間に、作動油およびドレン油から隔絶された密閉空間48を形成し、この密閉空間48内に角度センサ49を配置している。
【0060】
これにより、角度センサ49を高価な耐油仕様にする必要がなく、角度センサ49に係るコストを低減することができる。また、角度センサ49のハーネス49Cを挿通するためにカバー部材45に形成されたハーネス挿通孔45Eの周囲に、シールおよびシール装着用の溝を設ける必要がなく、カバー部材45に係るコストも低減することができる。
【0061】
次に、
図6および
図7は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、センタジョイントの下端とカバー部材との間に密閉空間が形成され、この密閉空間内に角度センサを配置したことにある。なお、本実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
第3の実施の形態によるセンタジョイント51は、下部走行体2に取付けられた円筒状のボディ52と、上部旋回体4に取付けられボディ52の内周側に回転可能に嵌合する円柱状のスピンドル57とを含んで構成されている。ボディ52およびスピンドル57は、それぞれの中心線を上部旋回体4の旋回中心に一致させた状態で上下方向に延びている。
【0063】
ボディ52は、上端側の外径寸法が小径となった段付き円筒状に形成されている。ボディ52の内周面52Aには、軸方向に適度な間隔をもって4本の環状通路53、54、55、56が形成されている。これら4本の環状通路53~56には、それぞれボディ52の径方向に延びるボディ側接続ポート53A、54A、55A、56Aの一端が連通している。これら4個のボディ側接続ポート53A~56Aの他端は、ボディ52の外周面に開口し、モータ側油圧ホース27が接続される。ボディ52の内周側の下端には、内周面52Aよりも大きな内径寸法を有するストッパ収容部52Bが形成されている。
【0064】
スピンドル57は、ボディ52の内周側に回転可能に嵌合している。スピンドル57は、ボディ52の内周面52Aに嵌合する嵌合部57Aと、ボディ52の上端52Cから上方に突出する上側突出部57Bと、ボディ52の下端52Dから下方に突出する下側突出部57Cとを有している。上側突出部57Bの外径寸法は、嵌合部57Aよりも大きく、下側突出部57Cの外径寸法は、嵌合部57Aよりも小さくなっている。嵌合部57Aと下側突出部57Cとの境界部には、段部57Dが設けられている。下側突出部57Cの下端には、スピンドル57と同心状の円形の凹陥部からなるセンサ取付穴57Eが形成されている。
【0065】
スピンドル57には、軸方向に延びる4本の油通路58が、周方向に90度の角度間隔をもって形成されている(1本のみ図示)。油通路58は、下部走行体2に設けられた左右の走行用油圧モータ2Fに対し、それぞれ圧油を供給、排出するために合計4本設けられている。これら4本の油通路58は、環状通路53、54、55、56に1本づつ接続されている(
図6中の油通路58は、環状通路56に接続されている)。
【0066】
4本の油通路58の上端側には、それぞれスピンドル57(上側突出部57B)の上端面に開口するスピンドル側接続ポート58Aが形成されている。スピンドル側接続ポート58Aには、油圧源側油圧ホース26が接続される。これにより、ボディ52のボディ側接続ポート53A~56Aは、環状通路53~56、スピンドル57の油通路58を介して、スピンドル側接続ポート58Aに連通している。従って、油圧源側油圧ホース26とモータ側油圧ホース27とは、センタジョイント51を介して常に連通している。
【0067】
ボディ52の内周面52Aとスピンドル57の嵌合部57Aの外周面との間には、複数本の環状シール59が設けられている。これら複数本の環状シール59のうち5本は、ボディ52の環状通路53、54、55、56をそれぞれ軸方向で挟む位置に配置され、4本の環状通路53、54、55、56間をシールしている。また、ボディ52の内周面52Aの上端側とスピンドル57の嵌合部57Aの外周面との間には、ダストシール60が設けられている。
【0068】
スピンドル57には、軸方向に延びる中心孔61と、ドレン通路62とが設けられている。中心孔61は、スピンドル57の中心部を軸方向に延び、中心孔61の下端はスピンドル57のセンサ取付穴57Eに開口している。中心孔61の上端側には、径方向に延びる横孔61Aが設けられ、横孔61Aの先端は上側突出部57Bの外周面に開口している。中心孔61には、角度センサ69のハーネス69Cが挿通される。
【0069】
ドレン通路62は、中心孔61および4本の油通路58とは異なる部位を軸方向に延びている。ドレン通路62は、走行用油圧モータ2Fからのドレン油を作動油タンクに戻す。ドレン通路62の下端は、スピンドル57の下側突出部57Cの外周面に開口し、後述する環状ドレン通路67に連通している。ドレン通路62の上端は、スピンドル57の上側突出部57Bの外周面に開口するスピンドル側ドレンポート62Aとなり、このスピンドル側ドレンポート62Aにはタンク側ドレンホース28が接続される。
【0070】
カバー部材63は、センタジョイント51の下端側に設けられ、ボディ52とスピンドル57との嵌合部を下方から覆っている。カバー部材63は、ボディ52の下端52Dに取付けられる円筒部63Aと、円筒部63Aの下側を閉塞する底部63Bとを有している。円筒部63Aの内周側には、底部63B側に位置する小径開口部63Cと、小径開口部63Cから上方に向けて円錐台状に拡径する大径開口部63Dとが形成されている。円筒部63Aの外周面にはカバー側ドレンポート63Eが形成され、カバー側ドレンポート63Eは、大径開口部63Dに連通している。
【0071】
カバー部材63は、円筒部63Aの上端をボディ52の下端52Dに当接させた状態で、ボルト(図示せず)を用いてボディ52に取付けられる。カバー部材63がボディ52に取付けられた状態で、カバー部材63の小径開口部63Cは、スピンドル57の下側突出部57Cの外周面に嵌合する。カバー部材63の小径開口部63Cとスピンドル57の下側突出部57Cとの嵌合部には、環状のシール部材64が設けられている。
【0072】
ストッパ65は、センタジョイント51の下端側とカバー部材63との間に設けられている。ストッパ65は、スピンドル57の嵌合部57Aよりも大きな外径寸法を有し、下側突出部57Cの外径寸法よりも大きな内径寸法を有する環状の板体により形成されている。ストッパ65の内周側は、スピンドル57の段部57Dと、下側突出部57Cの外周面に取付けられた止め輪66との間に配置されている。ストッパ65の外周側は、ボディ52のストッパ収容部52Bと、カバー部材63の円筒部63Aの上端面との間に配置されている。これにより、ストッパ65は、スピンドル57をボディ52に対して軸方向に位置決めしている。
【0073】
環状ドレン通路67は、カバー部材63とセンタジョイント51との間に形成され、ドレン通路62の下端とカバー部材63のカバー側ドレンポート63Eとの間を連通させている。具体的には、環状ドレン通路67は、スピンドル57の下側突出部57Cの外周面、ストッパ65、およびカバー部材63によって囲まれた環状の通路として形成されている。従って、走行用油圧モータ2Fからのドレン油は、モータ側ドレンホース29、カバー側ドレンポート63E等を通じて環状ドレン通路67に流入し、スピンドル57のドレン通路62、スピンドル側ドレンポート62A、タンク側ドレンホース28等を通じて作動油タンクに戻される。
【0074】
密閉空間68は、環状ドレン通路67の下側に位置してカバー部材63とスピンドル57との間に形成されている。具体的には、密閉空間68は、スピンドル57の下側突出部57Cの下端面およびセンサ取付穴57E、カバー部材63の円筒部63Aの内周面および底部63Bによって囲まれた空間として形成されている。密閉空間68は、シール部材64によって環状ドレン通路67に対して液密に封止され、センサ取付穴57Eを介して密閉空間68に連通する中心孔61も、環状ドレン通路67に対して液密に封止されている。これにより、密閉空間68および中心孔61は、センタジョイント51を流通する作動油(圧油)、ドレン油から隔絶されている。
【0075】
角度センサ69は、密閉空間68内に配置されている。角度センサ69は、スピンドル57のセンサ取付穴57Eに配置されたステータ69Aと、カバー部材63の底部63Bにボルト70を用いて取付けられたロータ69Bとを含んで構成されている。角度センサ69のステータ69Aは、中心孔61を通ってスピンドル57の外部に導出されたハーネス69Cを介してコントローラ31に電気的に接続されている。
【0076】
第3の実施の形態による油圧ショベルは、上述の如きセンタジョイント51を有するもので、例えば油圧ショベルが不整地を走行するときに、履帯2Eによって跳ね上げられた土砂等がセンタジョイント51に向けて飛散したとしても、この土砂等が角度センサ69に衝突するのをカバー部材63によって防止することができる。
【0077】
さらに、第3の実施の形態では、センタジョイント51のスピンドル57とカバー部材63との間に、作動油およびドレン油から隔絶された密閉空間68を形成し、この密閉空間68内に角度センサ69を配置している。また、スピンドル57の中心部に、作動油およびドレン油から隔絶された中心孔61を形成し、この中心孔61内に角度センサ69のハーネス69Cを配置している。この結果、角度センサ69およびハーネス69Cを高価な耐油仕様にする必要がなく、角度センサ69に係るコストを低減することができる。
【0078】
なお、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベルを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
2F 走行用油圧モータ(油圧モータ)
4 上部旋回体
10 油圧ポンプ
11,41,51 センタジョイント
12,52 ボディ
17,42,57 スピンドル
20,44,62 ドレン通路
22,45,63 カバー部材
22C,45D カバー側ドレンポート
23A,46A 下側シール部材(シール部材)
23B,46B 上側シール部材(シール部材)
25,47 ドレン流入室
28 タンク側ドレンホース
30,49,69 角度センサ
30A,49A,69A ステータ
30B,49B,69B ロータ
48,68 密閉空間
61 中心孔
64 シール部材
69C ハーネス