IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧

特開2022-13149仕切弁、仕切弁用補助具および仕切弁改修方法
<>
  • 特開-仕切弁、仕切弁用補助具および仕切弁改修方法 図1
  • 特開-仕切弁、仕切弁用補助具および仕切弁改修方法 図2
  • 特開-仕切弁、仕切弁用補助具および仕切弁改修方法 図3
  • 特開-仕切弁、仕切弁用補助具および仕切弁改修方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013149
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】仕切弁、仕切弁用補助具および仕切弁改修方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20220111BHJP
   F16K 43/00 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F16K1/32 C
F16K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115516
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕紀
【テーマコード(参考)】
3H052
3H066
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052CD02
3H066AA01
(57)【要約】
【課題】弁体が弁棒から脱落した場合に、迅速に流路を確保可能な仕切弁を提供する。
【解決手段】弁棒3の先端側に設けられた弁体2が弁箱4内に収容され、弁棒3が前進すると弁体2が弁箱4内の弁座41に当接して流路が閉じ、弁棒3が後退すると弁体2が弁座41から離れて流路が開く仕切弁11であって、弁箱4の側壁を貫通する緊急時用挿入孔42と、緊急時用挿入孔42を塞ぎ除去可能なキャップ5と、を備え、弁体2が弁棒3から脱落した際に、キャップ5を除去して緊急時用挿入孔42から弁体2を移動可能となっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁棒の先端側に設けられた弁体が弁箱内に収容され、前記弁棒が前進すると前記弁体が前記弁箱内の弁座に当接して流路が閉じ、前記弁棒が後退すると前記弁体が前記弁座から離れて流路が開く仕切弁であって、
前記弁箱の側壁を貫通する緊急時用挿入孔と、
前記緊急時用挿入孔を塞ぎ除去可能なキャップと、
を備え、前記弁体が前記弁棒から脱落した際に、前記キャップを除去して前記緊急時用挿入孔から前記弁体を移動可能となっている、
ことを特徴とする仕切弁。
【請求項2】
前記キャップは、ネジの螺合によって前記緊急時用挿入孔に着脱自在となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の仕切弁。
【請求項3】
前記キャップは、突き破り可能となっている、
ことを特徴とする請求項1に記載の仕切弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の仕切弁の前記弁体が前記弁棒から脱落した際に、前記弁体を移動させるための仕切弁用補助具であって、
棒状で、前記緊急時用挿入孔に挿入して前記弁体を移動可能に形成されている、
ことを特徴とする仕切弁用補助具。
【請求項5】
前記緊急時用挿入孔に挿入した状態で前記弁箱に固定可能となっている、
ことを特徴とする請求項4に記載の仕切弁用補助具。
【請求項6】
前記弁箱に固定された際に、前記緊急時用挿入孔を塞ぐ、
ことを特徴とする請求項5に記載の仕切弁用補助具。
【請求項7】
ネジの螺合によって前記弁箱に固定可能となっている、
ことを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の仕切弁用補助具。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載に仕切弁の前記弁体が前記弁棒から脱落した際に、流路を確保する仕切弁改修方法であって、
前記キャップを除去して前記緊急時用挿入孔から前記弁体を移動させて、前記弁体を前記弁座から離す、
ことを特徴とする仕切弁改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を開閉する仕切弁(ゲート弁)、仕切弁の弁体を移動させるための仕切弁用補助具および仕切弁を改修する仕切弁改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電所には、流体を流したり流れを止めたりするための仕切弁が多数使用されている。この仕切弁は、弁箱内に弁体が配設され、弁体に弁棒が連結されている。そして、弁棒を前進させることで弁体が弁座に当接・密接して流路が閉じ、弁棒を後退させることで弁体が弁座から離れて流路が開くものである。
【0003】
また、弁体の脱落を防止することができる、という仕切弁が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この仕切弁は、後退した弁体を収納する弁体収納部に、弁体を左右両側から挟持して固定するボルト、ナットを設けることで、弁体と弁棒を安定して保持できる、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-173435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、経年劣化や損傷などの何らかの原因で、弁体が弁棒から脱落・離脱するケースが考えられる。このような場合、弁体つまり仕切弁を開けることが不可能になり、流体を流すことができなくなって発電設備の運転などに支障が生じることになる。そして、仕切弁を開けるには、仕切弁を分解、解体して脱落した弁体を取り除いたり、仕切弁自体を新たな仕切弁に取り換えたりしなければならい。この場合、物品や作業者の手配などに時間を要し、短時間での復旧が困難で発電設備の運転などに支障が生じることになる。
【0006】
一方、特許文献1に記載の仕切弁では、弁体収納部に収納された弁体を保持することはできるが、弁棒から脱落した弁体を移動させて流路を開けることはできない。
【0007】
そこで本発明は、弁体が弁棒から脱落した場合に、迅速に流路を確保可能な仕切弁、仕切弁用補助具および仕切弁改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、弁棒の先端側に設けられた弁体が弁箱内に収容され、前記弁棒が前進すると前記弁体が前記弁箱内の弁座に当接して流路が閉じ、前記弁棒が後退すると前記弁体が前記弁座から離れて流路が開く仕切弁であって、前記弁箱の側壁を貫通する緊急時用挿入孔と、前記緊急時用挿入孔を塞ぎ除去可能なキャップと、を備え、前記弁体が前記弁棒から脱落した際に、前記キャップを除去して前記緊急時用挿入孔から前記弁体を移動可能となっている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の仕切弁において、前記キャップは、ネジの螺合によって前記緊急時用挿入孔に着脱自在となっている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の仕切弁において、前記キャップは、突き破り可能となっている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の仕切弁の前記弁体が前記弁棒から脱落した際に、前記弁体を移動させるための仕切弁用補助具であって、棒状で、前記緊急時用挿入孔に挿入して前記弁体を移動可能に形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載の仕切弁用補助具において、前記緊急時用挿入孔に挿入した状態で前記弁箱に固定可能となっている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載の仕切弁用補助具において、前記弁箱に固定された際に、前記緊急時用挿入孔を塞ぐ、ことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の仕切弁用補助具において、ネジの螺合によって前記弁箱に固定可能となっている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載に仕切弁の前記弁体が前記弁棒から脱落した際に、流路を確保する仕切弁改修方法であって、前記キャップを除去して前記緊急時用挿入孔から前記弁体を移動させて、前記弁体を前記弁座から離す、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および請求項8に記載の発明によれば、弁体が弁棒から脱落した場合に、キャップを除去して緊急時用挿入孔から弁体を移動させて、弁体を弁座から離すことで、流路を確保することが可能となる。しかも、キャップを除去して緊急時用挿入孔から弁体を移動させるだけでよく、新たな物品や専門の作業者などを要しないため、誰でも迅速かつ容易に流路を確保することが可能となる。この結果、例えば、応急的に短時間で発電設備の運転を復旧させることが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、キャップがネジの螺合によって緊急時用挿入孔に着脱自在なため、容易かつ迅速にキャップを取り外すことが可能で、より容易かつ迅速に流路を確保することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、キャップが突き破り可能なため、容易かつ迅速にキャップを除去することが可能で、より容易かつ迅速に流路を確保することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、仕切弁用補助具が棒状で、緊急時用挿入孔に挿入して弁体を移動可能に形成されているため、容易かつ迅速に弁体を弁座から離して流路を確保することが可能となる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、緊急時用挿入孔に挿入した状態で仕切弁用補助具を弁箱に固定可能なため、人が手で仕切弁用補助具を持つことなく、弁体を弁座から離した状態、つまり、流路が確保された状態を維持することが可能となる。このため、人の負担を軽減できるとともに、安定して流路を確保することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、仕切弁用補助具が弁箱に固定された状態で、仕切弁用補助具が緊急時用挿入孔を塞ぐため、緊急時用挿入孔から流体が漏れ出るのを防止することが可能となる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、仕切弁用補助具がネジの螺合によって弁箱に固定可能なため、容易かつ迅速に仕切弁用補助具を弁箱に固定したり外したりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の実施の形態1に係る仕切弁を示す概略断面図であり、(a)は、弁体が閉じた状態を示し、(b)は、弁体が開いた状態を示す。
図2図1の仕切弁の弁体が脱落した状態を示す概略断面図(a)と、その後弁体を移動させた状態を示す概略断面図(b)である。
図3】この発明の実施の形態2に係る仕切弁の弁体が脱落した状態を示す概略断面図(a)と、その後弁体を移動させた状態を示す概略断面図(b)である。
図4】この発明の実施の形態3に係る仕切弁の弁体が脱落した状態を示す拡大断面図(a)と、その後弁体を移動させた状態を示す拡大断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0025】
(実施の形態1)
図1図2は、この実施の形態を示し、図1は、この実施の形態に係る仕切弁11を示す概略断面図であり、(a)は、弁体2が閉じた状態を示し、(b)は、弁体2が開いた状態を示す。この仕切弁11は、流路を開閉するゲート弁であり、緊急時用挿入孔42とキャップ5とを備える点を除いて、既製の仕切弁と同等の構成であり、概略次のような構成となっている。ここで、この実施の形態では、楔形仕切弁の場合について説明するが、玉形仕切弁やアングル形仕切弁などのその他の形式の仕切弁であってもよい。また、この実施の形態では、仕切弁11が発電設備に配設されている場合について、主として説明する。
【0026】
すなわち、断面が円形の弁棒3の先端に弁体2が連結され、この弁体2が弁箱4内に収容されている。そして、ハンドル31を一方向に回して弁棒3を前進させると、図1(a)に示すように、弁体2が弁箱4内の弁座41に当接・密接して流路が閉じ、ハンドル31を他方向に回して弁棒3を後退させると、図1(b)に示すように、弁体2が弁座41から離れて流路が開くようになっている。
【0027】
このような基本的構造に対して、この仕切弁11は、緊急時用挿入孔42とキャップ5を備える。
【0028】
緊急時用挿入孔42は、弁箱4の側壁を貫通する丸孔であり、この実施の形態では、弁座41の中央部から弁箱4の外面にわたって真っ直ぐ貫通して形成されている。この緊急時用挿入孔42は、後述する仕切弁用補助具61を挿入して弁棒3から脱落した弁体2を移動させて、弁体2を弁座41から離せるように、外径、位置および形状が設定されている。ここで、この発明において、弁体2を移動させるとは、弁体2全体の位置を動かす場合のみならず、弁体2の姿勢、角度を変える場合も含み、脱落した弁体2を弁座41から離して流路が確保できればよい。
【0029】
キャップ5は、緊急時用挿入孔42を塞ぎ除去可能な蓋体であり、挿入部51とツバ部52とを備える。挿入部51は、ゴム製の円柱体で、緊急時用挿入孔42に隙間なく強固に圧入されるように、外径、長さおよび弾性力が設定され、弁箱4内の流体が緊急時用挿入孔42から漏れ出ないようになっている。ツバ部52は、金属製の円盤体で、挿入部51の一端面に同軸に接続され、対向する2つのDカット面を有することで、ペンチなどで挟めるようになっている。
【0030】
そして、挿入部51が緊急時用挿入孔42に圧入され、ツバ部52が弁箱4の外面に接した状態で装着されている。このような装着状態で、弁体2が弁座41に当接した際に挿入部51が弁体2に接しないように挿入部51の長さが設定されている。また、ツバ部52のDカット面をペンチなどで挟んで引き抜くことで、キャップ5を取り外せる(除去できる)ように、挿入部51の圧入力(長さや弾性力など)が設定されている。
【0031】
図2(b)中の符号61は、この実施の形態に係る仕切弁用補助具であり、仕切弁11の弁体2が弁棒3から脱落した際に、弁体2を移動させるための補助具である。この仕切弁用補助具61は、金属製の丸棒体で、緊急時用挿入孔42に挿入して弁体2を移動させて、弁体2を弁座41から離せるように形成されている。具体的には、この実施の形態では、直線状に真っ直ぐに延び、人が手で持って先端部で弁体2を緊急時用挿入孔42の軸方向に沿って真っ直ぐ移動させられるように(弁棒3側に移動させられるように)、その外径と長さが設定されている。これに対して、弁体2の移動方向や仕切弁11の形式などに応じて、湾曲や異形に形成してもよい。
【0032】
次に、このような構成の仕切弁1の動作および、この仕切弁1に対する仕切弁改修方法などについて説明する。
【0033】
まず、通常時においては、上記のように、弁棒3を前進させると弁体2が弁座41に当接して流路が閉じ、弁棒3を後退させると弁体2が弁座41から離れて流路が開く。そして、何らかの原因で弁体2が弁棒3から脱落・離脱し、図2(a)に示すように、弁体2が弁座41に当接したままになると、流体を流すことができなくなって発電設備の運転に支障が生じることになる。
【0034】
このため、流路を確保する仕切弁改修方法とし、まず、キャップ5のツバ部52のDカット面をペンチなどで挟んでキャップ5を取り外す。そして、図2(b)に示すように、仕切弁用補助具61を緊急時用挿入孔42に挿入して、例えば、緊急時用挿入孔42の軸方向に沿って真っ直ぐに押し込む。これにより、仕切弁用補助具61の先端部で押されて弁体2が弁棒3側に真っ直ぐに移動し、弁体2が弁座41から離れて流路が開く。
【0035】
以上のように、この仕切弁1および仕切弁改修方法によれば、弁体2が弁棒3から脱落した場合に、キャップ5を取り外して緊急時用挿入孔42から弁体2を移動させて、弁体2を弁座41から離すことで、流路を確保することが可能となる。しかも、キャップ5を取り外して緊急時用挿入孔42から弁体2を移動させるだけでよく、新たな物品や専門の作業者などを要しないため、誰でも迅速かつ容易に流路を確保することが可能となる。この結果、応急的に短時間で発電設備の運転を復旧させることが可能となる。
【0036】
また、仕切弁用補助具61が棒状で、緊急時用挿入孔42に挿入して弁体2を移動可能に形成されているため、容易かつ迅速に弁体2を弁座41から離して流路を確保することが可能となる。
【0037】
(実施の形態2)
図3は、この実施の形態に係る仕切弁12の弁体2が脱落した状態を示す概略断面図(a)と、その後弁体2を移動させた状態を示す概略断面図(b)で態を示す。この実施の形態では、キャップ7および仕切弁用補助具62などが実施の形態1と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0038】
キャップ7は、ネジの螺合によって緊急時用挿入孔42に着脱自在となっている。すなわち、緊急時用挿入孔42は、その内周面にネジ目が形成された雌ネジとなっている。また、キャップ7は、全体が金属製で、円柱状の挿入部71が雄ネジとなっており、この挿入部71の一端面に同軸に円盤状のツバ部72が設けられている。このツバ部72の自由端面には、六角レンチを挿入可能な六角孔が形成されている。
【0039】
そして、挿入部71を緊急時用挿入孔42に螺合させてねじ込むことで、キャップ7が緊急時用挿入孔42を塞ぎ、螺合を解除することでキャップ7を取り外せるものである。ここで、挿入部71の外周面やツバ部72の挿入部71側の端面にシーリングやパッキンなどを施して、緊急時用挿入孔42から流体が漏れ出るのをより防止するようにしてもよい。
【0040】
仕切弁用補助具62は、金属製の棒状体で、緊急時用挿入孔42に挿入した状態でネジの螺合によって弁箱4に固定可能で、しかも、弁箱4に固定された際に、緊急時用挿入孔42を塞ぐようになっている。すなわち、円盤状のツバ部621の一端面に、ツバ部621よりも小径の雄ネジ部622が設けられ、さらに、雄ネジ部622の反ツバ部621側の端面に、雄ネジ部622よりも小径の押し込み棒部623が設けられている。
【0041】
ツバ部621の自由端面には、六角レンチを挿入可能な六角孔が形成されている。雄ネジ部622は、緊急時用挿入孔42に螺合可能に形成され、緊急時用挿入孔42に締め込んでも弁座41側に突出しないように、その長さが設定されている。また、押し込み棒部623の外径と長さは、緊急時用挿入孔42および弁箱4内に押し込むことで、弁棒3から脱落した弁体2を移動させて、弁体2を弁座41から確実かつ安定して離せるように設定されている。ここで、雄ネジ部622の外周面やツバ部621の雄ネジ部622側の端面にシーリングやパッキンなどを施して、緊急時用挿入孔42から流体が漏れ出るのをより防止するようにしてもよい。
【0042】
そして、何らかの原因で弁体2が弁棒3から脱落・離脱した場合には、まず、図3(a)に示すように、六角レンチでキャップ7を取り外す。次に、図3(b)に示すように、仕切弁用補助具62を押し込み棒部623側から緊急時用挿入孔42に挿入して、弁体2を弁棒3側に移動させ、弁体2を弁座41から離して流路を開く。そして、六角レンチで仕切弁用補助具62の雄ネジ部622を緊急時用挿入孔42に締め込んで、緊急時用挿入孔42を塞ぐとともに仕切弁用補助具62を弁箱4に固定する。
【0043】
このような実施の形態によれば、キャップ7がネジの螺合によって緊急時用挿入孔42に着脱自在なため、容易かつ迅速にキャップ7を取り外すことが可能で、より容易かつ迅速に流路を確保することが可能となる。
【0044】
また、緊急時用挿入孔42に挿入した状態で仕切弁用補助具62を弁箱4に固定可能なため、人が手で仕切弁用補助具62を持つことなく、弁体2を弁座41から離した状態、つまり、流路が確保された状態を維持することが可能となる。このため、人の負担を軽減できるとともに、安定して流路を確保することが可能となる。
【0045】
さらに、仕切弁用補助具62が弁箱4に固定された状態で、仕切弁用補助具62が緊急時用挿入孔42を塞ぐため、緊急時用挿入孔42から流体が漏れ出るのを防止することが可能となる。しかも、仕切弁用補助具62がネジの螺合によって弁箱4に固定可能なため、容易かつ迅速に仕切弁用補助具62を弁箱4に固定したり外したりすることが可能となる。
【0046】
(実施の形態3)
図4は、この実施の形態に係る仕切弁13の弁体2が脱落した状態を示す拡大断面図(a)と、その後弁体2を移動させた状態を示す拡大断面図(b)である。この実施の形態では、キャップ8および仕切弁用補助具63などが実施の形態1、2と構成が異なり、実施の形態1、2と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0047】
キャップ8は、突き破り可能となっている。すなわち、破壊・除去しやすくかつシーリング性の高い材料(例えば、樹脂や蝋)で構成され、緊急時用挿入孔42を埋めるように配設、埋設されている。ここで、緊急時用挿入孔42は、実施の形態2と同様な雌ネジで、緊急時用挿入孔42の弁座41側のみにキャップ8が配設され、これにより、後述する仕切弁用補助具63のネジ棒部632を螺合できるようになっている。また、キャップ8は、後述するようにしてネジ棒部632を緊急時用挿入孔42にねじ入れて突き破れるように、あるいは、尖った部材で突き破れるように、その強度が設定されている。
【0048】
仕切弁用補助具63は、金属製の棒状体で、ネジの螺合によって弁体2を移動させながら弁箱4に固定可能で、しかも、弁箱4に固定された(ねじ入れられた)状態で緊急時用挿入孔42を塞ぐようになっている。すなわち、円盤状のツバ部631の一端面に、ツバ部631よりも小径のネジ棒部632が設けられている。
【0049】
ツバ部631の自由端面には、六角レンチを挿入可能な六角孔が形成されている。ネジ棒部632は、緊急時用挿入孔42に螺合可能に形成され、その外径と長さは、緊急時用挿入孔42および弁箱4内にねじ入れることで、弁棒3から脱落した弁体2を移動させて、弁体2を弁座41から確実かつ安定して離せるように設定されている。ここで、ネジ棒部632の外周面やツバ部631のネジ棒部632側の端面にシーリングやパッキンなどを施して、緊急時用挿入孔42から流体が漏れ出るのをより防止するようにしてもよい。
【0050】
そして、何らかの原因で弁体2が弁棒3から脱落・離脱した場合には、まず、図4(a)に示すように、六角レンチで仕切弁用補助具63のネジ棒部632を緊急時用挿入孔42にねじ込み、キャップ8を突き破って除去する。続いて、図4(b)に示すように、ネジ棒部632を弁箱4内にねじ入れて弁体2を弁棒3側に移動させ、弁体2を弁座41から離して流路を開く。このとき、ツバ部631が弁箱4の外面に接するまでネジ棒部632をねじ入れてもよいし、所望・任意の長さまでネジ棒部632をねじ入れてもよい。
【0051】
このような実施の形態によれば、キャップ8が突き破り可能なため、容易かつ迅速にキャップ8を除去することが可能で、より容易かつ迅速に流路を確保することが可能となる。しかも、ネジ棒部632をねじ入れながらキャップ8を突き破るため、キャップ8を除去する作業が省ける。また、ネジジャッキのように、ネジ棒部632をねじ入れて弁体2を移動させるため、弁体2が大きく重量物であっても、確実かつ容易に弁体2を移動させることが可能となる。
【0052】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、弁体2を弁棒3側に移動させて弁座41から離す場合について説明したが、仕切弁の構造などに応じて、弁体2を弁座41から離せれば、どのように移動させてもよい。同様に、緊急時用挿入孔42が弁座41から弁箱4の外面にわたって貫通しているが、弁体2を移動させて弁座41から離せれば、緊急時用挿入孔42をどこに設けてもよい。また、既製の仕切弁に緊急時用挿入孔42などを設けて仕切弁11、12、13を構成し、これを発電設備などに配設してもよいし、発電設備などに配設されている既設の仕切弁に緊急時用挿入孔42などを設けて仕切弁11、12、13を構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
11、12、13 仕切弁
2 弁体
3 弁棒
4 弁箱
41 弁座
42 緊急時用挿入孔
5、7、8 キャップ
61、62、63 仕切弁用補助具
図1
図2
図3
図4