(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131495
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】燃料電池の燃料ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220831BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20220831BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20220831BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20220831BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220831BHJP
H01M 8/243 20160101ALN20220831BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/04313
H01M8/04746
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/243
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030464
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】一橋 友介
(72)【発明者】
【氏名】寺本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】入江 弘毅
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126CC02
5H126CC05
5H127AA07
5H127BA05
5H127BA06
5H127BA21
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127DB02
5H127DB03
5H127DB04
5H127DC02
5H127DC04
(57)【要約】
【課題】簡易的な構成で複数の燃料ガスを用いて効率的な運用が可能な燃料電池の燃料ガス供給装置を提供する。
【解決手段】燃料電池の燃料ガス供給装置は、燃料電池に複数の燃料ガスを供給可能な複数の燃料ガス供給源を備える。複数の燃料ガス供給源の各々には下流側に複数の燃料ガス供給路がそれぞれ接続される。燃料ガス供給路の各々には、燃料ガスの混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽の圧力に基づいて開閉可能な複数の第1バルブが設けられる。また複数の燃料ガス供給路の合流点と前記燃料電池との間には、複数の燃料ガスの少なくとも1つを含む混合ガスを燃料電池に供給するための混合ガス供給路が設けられる。混合ガス供給路には第2バルブが設けられる。複数の第1バルブは、燃料ガスの混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽の圧力が予め設定された設定圧力以下になった場合に開くように構成され、設定圧力は、複数の第1バルブの各々について互いに異なるように設定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に複数の燃料ガスをそれぞれ供給可能な複数の燃料ガス供給源と、
前記複数の燃料ガス供給源各々に接続され、前記複数の燃料ガス供給源より下流側において互いに合流する複数の燃料ガス供給路と、
前記複数の燃料ガス供給路にそれぞれ設けられ、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽の圧力に基づいて開閉可能な複数の第1バルブと、
前記複数の燃料ガス供給路の合流点と前記燃料電池とを接続し、前記複数の燃料ガスの少なくとも1つを含む混合ガスを前記燃料電池に供給するための混合ガス供給路と、
前記混合ガス供給路に設けられた第2バルブと、
を備え、
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力が予め設定された設定圧力以下になった場合に開くように構成され、
前記設定圧力は、前記複数の第1バルブの各々について互いに異なるように設定される、燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項2】
前記複数の燃料ガスには予め優先度が設定されており、
前記設定圧力は、前記優先度が高いほど高く設定される、請求項1に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項3】
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力に応じて開度を調整可能な減圧弁である、請求項1又は2に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項4】
前記混合ガス貯槽は、前記混合ガス供給路のうち前記第2バルブより上流側に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項5】
前記第2バルブから前記燃料電池に供給される前記混合ガスの燃料組成を計測する手段を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項6】
前記燃料電池に供給される前記混合ガスに含まれる燃料組成に基づいて必要な混合ガス流量を算出し、当該流量に基づいて前記第2バルブの開度を制御する、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項7】
各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合貯槽の圧力が前記燃料ガス供給ラインにそれぞれ設けられた前記第1バルブの前記設定圧力より高くなった場合に、前記燃料ガス供給源に前記混合ガスが逆流しないように逆流防止機構を更に備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項8】
前記複数の燃料ガスは、性状が安定し、且つ、供給量が十分に確保されている燃料ガスを少なくとも1つ含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池の燃料ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスと酸化性ガスとを化学反応させることにより発電する燃料電池は、優れた発電効率及び環境対応等の特性を有している。このうち、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)は、電解質としてジルコニアセラミックスなどのセラミックスが用いられ、水素、都市ガス、天然ガス、石油、メタノール、及び炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガス等のガスなどを燃料ガスとして供給して、高温雰囲気で反応させて発電を行っている。
【0003】
燃料電池で使用される燃料ガスは、上述のように多岐にわたるが、近年、カーボンニュートラルなバイオガスや再生可能エネルギ由来の水素のような燃料ガスのように、都市ガス等に比べて性状や供給量が不安定な種類の燃料ガスの有効利用が望まれている。このような燃料ガスは、燃料電池の安定な運転を実現するために、他の燃料ガスと組み合わされて用いられることがある。例えば特許文献1では、燃料電池に供給される燃料ガスとして、生ゴミ、汚泥などの廃棄物から発生する水素ガスと、廃棄物から発生するメタンガスを改質することで生成した水素ガスとを混合させた混合ガスを用いる燃料電池発電システムが開示されている。また特許文献2では、燃料電池に供給される燃料ガスとして、廃棄物から発生したガスに対して、炭化水素系原燃料による水素ガスを補完することで安定した発電を実現する燃料電池発電システムが開示されている。また特許文献3では、燃料電池に供給される燃料ガスとして、例えばメタン発酵ガスや消化ガスのようなバイオガスを含む混合ガスを用いる燃料電池システムにおいて、ガス組成の計測結果に基づいて、バイオガスのガス組成・熱量の変動に伴って混合ガスの流量を制御することにより、システムを稼働することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-93087号公報
【特許文献2】特開2008-204707号公報
【特許文献3】特開2010-272213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように燃料電池に対して性状や供給量が不安定な燃料ガスを用いる場合、燃料電池で必要とされる燃料成分が不足しないように燃料ガスの供給制御を行う必要がある。このような要請に対して、上記特許文献3では、燃料電池に供給される燃料ガスの組成を計測することで混合ガスの流量制御を行っているが、計測に必要なセンサや制御装置などの構成が必要でありコストが高くなってしまう。特に、燃料電池で使用しようとする燃料ガスの種類が多い場合には、各燃料ガスを計測するための構成が大掛かりとなってしまう。
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、簡易的な構成で複数の燃料ガスを用いて効率的な運用が可能な燃料電池の燃料ガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る燃料電池の燃料ガス供給装置は、上記課題を解決するために、
燃料電池に複数の燃料ガスをそれぞれ供給可能な複数の燃料ガス供給源と、
前記複数の燃料ガス供給源の各々に接続され、前記複数の燃料ガス供給源より下流側において互いに合流する複数の燃料ガス供給路と、
前記複数の燃料ガス供給路にそれぞれ設けられ、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽の圧力に基づいて開閉可能な複数の第1バルブと、
前記複数の燃料ガス供給路の合流点と前記燃料電池とを接続し、前記複数の燃料ガスの少なくとも1つを含む混合ガスを前記燃料電池に供給するための混合ガス供給路と、
前記混合ガス供給路に設けられた第2バルブと、
を備え、
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力が予め設定された設定圧力以下になった場合に開くように構成され、
前記設定圧力は、前記複数の第1バルブの各々について互いに異なるように設定される。
尚、燃料電池の燃料ガス供給装置は、前記複数の第1バルブと前記複数の燃料ガスの合流部との間に各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力が予め設定された設定圧力以上になった場合に混合ガスの逆流を防止する機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、簡易な構成で複数の燃料ガスを用いて効率的な運用が可能な燃料電池の燃料ガス供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る燃料電池の構成を示す図である。
【
図2】
図1のSOFCカートリッジが備えるセルスタックの一態様を示すものである。
【
図3】一実施形態に係る燃料電池の燃料ガス供給装置の構成を示す模式図である。
【
図4】
図3の制御装置によって実施される燃料電池の燃料ガス供給方法のフローチャートである。
【
図5】燃料電池の運用中における混合ガス貯槽の圧力、及び、第1バルブの開度の時間的変化の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る燃料電池の燃料ガス供給装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
以下においては、説明の便宜上、紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて説明した各構成要素の位置関係は、各々鉛直上方側、鉛直下方側を示すものである。また、本実施形態では、上下方向と水平方向で同様な効果を得られるものは、紙面における上下方向が必ずしも鉛直上下方向に限定することなく、例えば鉛直方向に直交する水平方向に対応してもよい。
【0012】
まず
図1及び
図2を参照して本実施形態に係る燃料電池201(SOFCモジュール)の構成について説明する。
図1は本実施形態に係る燃料電池201の構成を示す図であり、
図2は
図1のSOFCカートリッジ203が備えるセルスタック101の一態様を示すものである。尚、
図1では、燃料電池201の内部構成がわかりやすいように、部分的に断面が示されている。
【0013】
燃料電池201は、複数のSOFCカートリッジ(燃料電池カートリッジ)203と、これら複数のSOFCカートリッジ203を収納する圧力容器205とを備える。SOFCカートリッジ203は、複数のセルスタック101を含んでおり、各セルスタック101は、
図2に示すように、円筒形状の基体管103と、基体管103の外周面に複数形成された燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されたインターコネクタ107とを備える。燃料電池セル105は、燃料極109と固体電解質膜111と空気極113とが積層して形成されている。また、セルスタック101は、基体管103の外周面に形成された複数の燃料電池セル105の内、基体管103の軸方向において最も端の一端に形成された燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されたリード膜115を備え、最も端の他端に形成された燃料電池セル105の燃料極109に電気的に接続されたリード膜115を備える。
【0014】
基体管103は、多孔質材料からなり、例えば、CaO安定化ZrO2(CSZ)、CSZと酸化ニッケル(NiO)との混合物(CSZ+NiO)、又はY2O3安定化ZrO2(YSZ)、又はMgAl2O4などを主成分とされる。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持すると共に、基体管103の内周面に供給される燃料ガスを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料極109に拡散させるものである。
【0015】
燃料極109は、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で構成され、例えば、Ni/YSZが用いられる。燃料極109の厚さは50μm~250μmであり、燃料極109はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。この場合、燃料極109は、燃料極109の成分であるNiが燃料ガスに対して触媒作用を備える。この触媒作用は、基体管103を介して供給された燃料ガス、例えば、メタン(CH4)と水蒸気との混合ガスを反応させ、水素(H2)と一酸化炭素(CO)に改質するものである。また、燃料極109は、改質により得られる水素(H2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質膜111を介して供給される酸素イオン(O2-)とを固体電解質膜111との界面付近において電気化学的に反応させて水(H2O)及び二酸化炭素(CO2)を生成するものである。尚、燃料電池セル105は、この時、酸素イオンから放出される電子によって発電する。
【0016】
固体酸化物形燃料電池の燃料極109に供給し利用できる燃料ガスとしては、後述するように消化ガス、再生エネルギ由来の水素ガス及び都市ガスをはじめ、水素(H2)、アンモニア(NH3)および一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)などの炭化水素系ガス、天然ガスのほか、石油、メタノール、石炭及び木質系バイオマスなどの炭素含有原料をガス化設備により製造したガス化ガスなどが挙げられる。
【0017】
固体電解質膜111は、ガスを通しにくい気密性と、高温で高い酸素イオン導電性とを備えるYSZが主として用いられる。この固体電解質膜111は、空気極で生成される酸素イオン(O2-)を燃料極に移動させるものである。燃料極109の表面上に位置する固体電解質膜111の膜厚は10μm~100μmであり固体電解質膜111はスラリーをスクリーン印刷して形成されてもよい。
【0018】
空気極113は、例えば、LaSrMnO3系酸化物、又はLaCoO3系酸化物で構成され、空気極113はスラリーをスクリーン印刷またはディスペンサを用いて塗布される。この空気極113は、固体電解質膜111との界面付近において、供給される空気等の酸化性ガス中の酸素を解離させて酸素イオン(O2-)を生成するものである。
空気極113は2層構成とすることもできる。この場合、固体電解質膜111側の空気極層(空気極中間層)は高いイオン導電性を示し、触媒活性に優れる材料で構成される。空気極中間層上の空気極層(空気極導電層)は、Sr及びCaドープLaMnO3で表されるペロブスカイト型酸化物で構成されても良い。こうすることにより、発電性能をより向上させることができる。
酸化性ガスとは,酸素を略15%~30%含むガスであり、代表的には空気が好適であるが、空気以外にも燃焼排ガスと空気の混合ガスや、酸素と空気の混合ガスなどが使用可能である。
【0019】
インターコネクタ107は、SrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物から構成され、スラリーをスクリーン印刷する。インターコネクタ107は、燃料ガスと酸化性ガスとが混合しないように緻密な膜となっている。また、インターコネクタ107は、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した耐久性と電気導電性を備える。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極109とを電気的に接続し、隣り合う燃料電池セル105同士を直列に接続するものである。
【0020】
リード膜115は、電子伝導性を備えること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材やSrTiO3系などのM1-xLxTiO3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で構成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により直列に接続される複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出すものである。
【0021】
図1に示すように、燃料電池201は、燃料ガス供給管207と複数の燃料ガス供給枝管207a及び燃料ガス排出管209と複数の燃料ガス排出枝管209aとを備える。また燃料電池201は、酸化性ガス供給管(不図示)と複数の酸化性ガス供給枝管(不図示)及び酸化性ガス排出管(不図示)と複数の酸化性ガス排出枝管(不図示)とを備える。
【0022】
燃料ガス供給管207は、圧力容器205の外部に設けられ、燃料電池201の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガス(後述の混合ガスGm)を供給する、後述の燃料ガス供給装置1に接続されると共に、複数の燃料ガス供給枝管207aに接続されている。この燃料ガス供給管207は、燃料ガス供給装置1から供給される所定流量の燃料ガス(後述の混合ガス)を、複数の燃料ガス供給枝管207aに分岐して導くものである。また、燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207に接続されると共に、複数のSOFCカートリッジ203に接続されている。この燃料ガス供給枝管207aは、燃料ガス供給管207から供給される燃料ガス(後述の混合ガス)を複数のSOFCカートリッジ203に略均等の流量で導き、複数のSOFCカートリッジ203の発電性能を略均一化させるものである。
【0023】
燃料ガス排出枝管209aは、複数のSOFCカートリッジ203に接続されると共に、燃料ガス排出管209に接続されている。この燃料ガス排出枝管209aは、SOFCカートリッジ203から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管209に導くものである。また、燃料ガス排出管209は、複数の燃料ガス排出枝管209aに接続されると共に、一部が圧力容器205の外部に配置されている。この燃料ガス排出管209は、燃料ガス排出枝管209aから略均等の流量で導出される排燃料ガスを圧力容器205の外部に導くものである。
【0024】
圧力容器205は、内部の圧力が0.1MPa~約3MPa、内部の温度が大気温度~約550℃で運用されるので、耐力性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。例えばSUS304などのステンレス系材が好適である。
【0025】
ここで、本実施形態においては、複数のSOFCカートリッジ203が集合化されて圧力容器205に収納される態様について説明しているが、これに限られず例えば、SOFCカートリッジ203が集合化されずに圧力容器205内に収納される態様とすることもできる。
【0026】
続いて上記構成を有する燃料電池201に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給装置1について説明する。
図3は一実施形態に係る燃料電池201の燃料ガス供給装置1の構成を示す模式図である。燃料ガス供給装置1は、上述の燃料ガス供給管207に対して複数の燃料ガスを供給するための装置である。
【0027】
複数の燃料ガスは、性状が安定し供給量が十分に確保された少なくとも1つの燃料ガスを含む。ここで「性状が安定し供給量が十分に確保された」とは、他の燃料ガスに比べて、性状において組成が既知・明らかで、組成の変動が小さいことを意味し、供給量において混合ガス貯槽14から燃料電池201へ供給する必要な供給量よりも常時十分多い流量を混合ガス貯槽14へ供給可能であることを意味する。本実施形態では、第N燃料ガスGNである都市ガスは、インフラ設備としての燃料供給源2-Nから供給されるため、性状や供給量が変動する第1燃料ガスG1(消化ガス)や第2燃料ガスG2(再生エネルギ由来の水素ガス)などに比べて安定した燃料ガスである。
【0028】
このような複数の燃料ガスには、予め優先度が設定される。優先度は、ユーザが任意に設定可能であるが、燃料ガスの供給先である燃料電池で優先的に消費したい燃料ガスほど優先度が高くなるように設定される。例えば、複数の燃料ガスの優先度は、燃料電池の運用コスト、再生可能エネルギの優先利用、二酸化炭素の排出削減量などの観点から設定可能である。本実施形態では、第1燃料ガスG1、第2燃料ガスG2、・・・第N燃料ガスGNの順に優先度が設定される。
【0029】
複数の燃料ガス供給源2-1,2-2、・・・、2-Nから各燃料ガスを燃料電池201側に供給するための複数の燃料ガス供給路4-1、4-2、・・・、4-Nがそれぞれ設けられる。複数の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nの各々は、一端側が燃料ガス供給源に接続されており、他端側が互いに合流することにより合流点6を形成している。
合流点6の下流には混合された各燃料ガス(混合ガス)を貯蔵する混合ガス貯槽14が設置されてもよい。
【0030】
複数の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nには、複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nがそれぞれ設けられる。複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nは、各燃料ガスの合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力に基づいて開度が変化することで、複数の燃料ガスの優先度に応じて燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nをそれぞれ流れる各燃料ガスの流量をそれぞれ調整可能になっている。
【0031】
複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nは、各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力に基づいて開度が調整可能なバルブである。複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nには、開閉動作の基準となる二次(下流)側の圧力が設定されており、各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力が第1バルブの設定圧力より低い場合には開(燃料供給)状態であり、設定圧力より高い場合には閉状態になるように構成される。具体的に言うと、複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nには、設定圧力P1、P2、・・・、PNがそれぞれ設定される。
【0032】
複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nの設定圧力P1、P2、・・・、PNは、燃料ガスに設定された優先度が高いほど高くなるように設定される。本実施形態では、第1燃料ガスG1、第2燃料ガスG2、・・・、第N燃料ガスGNの順で優先度が設定されるため、各設定圧力は、P1>P2>・・・>PNを満たすように設定される。
【0033】
尚、各燃料ガスの供給源圧力は、各々の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nに設けられた各々の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nで設定された圧力の設定圧力P1、P2、・・・、PNより高い圧力で供給できる能力を有している。
【0034】
本実施形態では、複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nは、各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力に基づいて機械的に制御可能な減圧弁から構成されてもよい。複数の第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nは、例えば、複数の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nに設置した圧力センサの検出値に基づいて、コントローラを用いた電子制御的な開度制御を行うことも可能であるが、このような機械的に制御可能な減圧弁として構成することで、複数の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nごとにこれらのセンサやコントローラ等を設けることが不要となり、より簡単な構成で燃料ガス供給装置1を実現できる。
【0035】
また複数の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nの合流点6の下流側には、混合ガス供給路10が設けられる。複数の燃料ガスは合流点6で混合されることで混合ガスGmとなり、混合ガス供給路10を介して燃料電池201に供給可能である(混合ガス供給路10の下流側は、前述の燃料ガス供給管207に接続されている)。混合ガス供給路10には、混合ガスGmの流量を調整するための第2バルブ12が設けられる。これにより、混合ガス供給路10における混合ガスGmの流量は、第2バルブ12の開度に応じて調整可能となっている。
【0036】
また混合ガス供給路10には、混合ガスGmを貯留可能な混合ガス貯槽14が設けられる。混合ガス貯槽14は、混合ガス供給路10のうち第2バルブ12より上流側に設けられる。これにより、複数の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nからの複数の燃料ガスを、混合ガス貯槽14に一時的に貯蔵することで混合ガスGmの使用量が大きく変動した場合でも供給圧力の変動を緩和し第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nの作動状態を安定化することができる。また、貯蔵されることで燃料ガスが予め混合され、複数の燃料ガス供給路4-1,4-2、・・・、4-Nからの供給流量の割合が変化した場合においても混合ガスGmの組成の変動を緩和できるため燃料電池の運転を安定化させることができる。
【0037】
尚、混合ガス供給路10には、例えば燃料電池201の起動・停止時に燃料系統をパージするための水素ガス及び窒素ガスを供給するための水素ガス供給路15a及び窒素ガス供給路15bが接続されている場合がある。その際水素ガス供給路15a及び窒素ガス供給路15bは、混合ガス供給路10のうち第2バルブ12より下流側に接続される。水素ガス供給路15a及び窒素ガス供給路15bには、水素ガス及び窒素ガスの供給量を調整するためのバルブ17a、17bが設けられている。
【0038】
また燃料ガス供給装置1は、混合ガス貯槽14に貯留された混合ガスGmの圧力Pxを検出するための圧力センサ16、燃料電池の燃料となる燃料成分の濃度、例えば混合ガスGmのCH4濃度を検出するためのCH4濃度センサ18、混合ガスGmのH2濃度を検出するためのH2濃度センサ20、混合ガスGmのCO濃度を検出するためのCO濃度センサ22と、混合ガスGmの流量Fxを検出する流量検出器23と、これらのセンサの検出値に基づいて第2バルブ12の開度を制御するための制御装置24と、を備える。
【0039】
制御装置24は、燃料ガス供給装置1の制御ユニットであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0040】
続いて上記構成を有する燃料ガス供給装置1によって実施される燃料ガス供給方法について説明する。
図4は
図3の制御装置24によって実施される燃料電池の燃料ガス供給方法のフローチャートである。
【0041】
まず制御装置24は、燃料電池201に対する出力指令Dを取得する(ステップS1)。出力指令Dは、例えば、燃料電池201で発電された電力の供給先である電力系統の需給状態に応じて与えられる。続いて制御装置24は、ステップS1で取得した出力指令Dに基づいて、燃料電池のI-V(電流―電圧)特性により決定される出力電流目標値を算出する。(ステップS2)。
【0042】
一方で制御装置24は、混合ガスGmの各濃度センサ、例えばCH4濃度センサ18、H2濃度センサ20、CO濃度センサ22の検出値をそれぞれ取得し(ステップS3)、ステップS3の取得結果に基づいて混合ガスGmの改質後の燃料組成(H2、CO)を算出する(ステップS4)。そして制御装置24は、ステップ2で算出された目標電流に応じて予め設定された燃料利用率を取得する(ステップS5)。さらにステップS4で算出された燃料組成を基にステップS2で算出された電流目標値とステップ5で取得した燃料利用率から必要となる混合ガスGmの燃料流量を算出する(ステップS6)。更に、その流量になるための第2バルブ12の開度目標値を算出する(ステップS7)。そして制御装置24は、ステップ7で算出された開度目標値に対応する制御信号を第2バルブ12に与えることにより、第2バルブ12の開度制御が行われる(ステップS8)。
【0043】
尚、
図4に示すように、ステップS1,2,5のフローと、ステップS3,4のフローとは互いに独立して実施可能であり、両者の実施順は任意でよい。
【0044】
このように制御装置24によって第2バルブ12の開度制御が行われることにより、混合ガスGmの燃料流量が調整され、燃料電池201に対する出力指令Dに対応することができる。
【0045】
図5は燃料電池201の運用中における混合ガス貯槽14の圧力、及び、第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nの開度の時間的変化の一例を示すタイミングチャートである。
【0046】
時刻t0で示す初期状態では、複数の燃料ガス供給源2-1、2-2、・・・、2-Nには、それぞれ十分な燃料ガスがあると仮定する。発電に必要な燃料電池への燃料供給に伴い混合ガス貯槽の圧力が低下し、複数の燃料ガス供給路4-1、4-2、・・・、4-Nにそれぞれ設けられた第1バルブ8-1、8-2・・・8-Nのうち、まず第1バルブ8-1の設定圧力P1だけが各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxより高くなるため(他の第1バルブ8-2、・・・8-Nの設定圧力は各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxより低い)、混合ガス貯槽14には第1燃料ガス供給路4-1のみから第1燃料ガスG1が供給される。そして時刻t0~t1では、混合ガス貯槽14への第1燃料ガスG1の供給と、混合ガス貯槽14から燃料電池201への混合ガスGmの供給とが平衡することで、混合ガス貯槽14の圧力Pxは第1バルブ8-1の設定圧力P1に略一定に維持される。
【0047】
時刻t1~t2では、例えば燃料電池201における燃料ガスの消費増加や、第1燃料ガスG1の供給量減少などの事情によって、第1バルブ8-1が全開となっても各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが時間経過に従って次第に低下する。そして時刻t2で各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが第1バルブ8-2の設定圧力P2に到達すると、第1バルブ8-2が開状態となり燃料ガス供給源2-2からの第2燃料ガスG2の供給が開始される。これにより、第1燃料ガスG1が不足した場合には、次に優先度が高い第2燃料ガスG2が供給されることで、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxは第1バルブ8-2の設定圧力P2となるよう制御される。
【0048】
そして時刻t2~t3では、混合ガス貯槽14への混合ガスGm(第1燃料ガスG1+第2燃料ガスG2)の供給と、混合ガス貯槽14から燃料電池201への混合ガスGmの供給とが平衡することで、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxは第1バルブ8-2の設定圧力P2に略一定に維持される。
【0049】
時刻t3~t4では、例えば燃料電池201における燃料ガスの更なる消費増加や、第1燃料ガスG1又は第2燃料ガスG2の供給量減少などの事情によって、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが時間経過に従って次第に低下する。そして時刻t4で各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが第1バルブ8-Nの設定圧力PNに到達すると、第1バルブ8-Nが開状態となり燃料ガス供給源2-Nからの第N燃料ガスGNの供給が開始される。このように複数の燃料ガス供給源からの燃料が不足した場合には、最終的に十分な供給量を持つ第N燃料ガスGNが供給されることで、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxは第1バルブ8-Nの設定圧力PNとなるよう制御される。
【0050】
そして時刻t4~t5では、混合ガス貯槽14への混合ガスGm(第1燃料ガスG1+第2燃料ガスG2+第N燃料ガスGN)の供給と、混合ガス貯槽14から燃料電池201への混合ガスGmの供給とが平衡することで、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxは第1バルブ8-Nの設定圧力PNに略一定に維持される。
【0051】
逆に時刻t5~t6では、例えば燃料電池201における燃料ガスの消費減少や、第1燃料ガスG1又は第2燃料ガスG2の供給量増加などの事情によって、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが時間経過に従って次第に増加するため時刻t5で各燃料ガス合流後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが設定圧力PNを超えると、第1バルブ8-Nを閉制御することで、燃料ガス供給源2-Nからの第N燃料ガスGNの供給が停止する。これにより、優先度が低い第N燃料ガスGNの消費を抑え、燃料電池201の運用コストや二酸化炭素の排出量を効果的に削減することができる。
【0052】
時刻t5~t6では徐々に混合貯槽14の圧力Pxが上昇し、時刻t6で第1バルブ8-2の設定圧力に到達すると第1バルブ8-2は混合貯槽14の圧力が設定圧力P2となるよう全開状態から圧力制御を開始する。
時刻t6~t7では、混合ガス貯槽14への混合ガスGm(第1燃料ガスG1+第2燃料ガスG2)の供給と、混合ガス貯槽14から燃料電池201への混合ガスGmの供給とが平衡することで、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxは第1バルブ8-2の設定圧力P2に略一定に維持される。
【0053】
続いて時刻t7で各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが設定圧力P2を超えると、第1バルブ8-2を閉制御することで、燃料ガス供給源2-2からの第2燃料ガスG2の供給が停止する。その結果、最も優先度が高い第1燃料ガスG1のみが供給される初期状態に戻る。
【0054】
このように混合ガス貯槽14の圧力が変動する場合には、各設定圧力P1、P2、・・・、PNとの大小関係に対応して各第1バルブ8-1,8-2、・・・、8-Nが開閉することで、優先度が高い燃料ガスの使用機会を最大化するとともに、不足分に応じて下位の優先度の燃料ガスを順に使用することで、燃料電池201で必要な燃料流量を確保することができる。
【0055】
また、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽14の圧力Pxが燃料ガス供給路4-1、4-2、・・・、4-Nにそれぞれ設けられた第1バルブ8-1、8-2・・・8-Nの設定圧力P1、P2・・・PNより高くなった場合に燃料ガス供給源2-1、2-2・・・2-Nに逆流しないように各第1バルブ8-1、8-2・・・8-Nの下流に逆流防止機構を設けるとよい。逆流防止機構は各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合貯槽14の圧力Pxが各設定圧力P1,P2・・・PNより高い場合に燃料ガス供給路を遮断する遮断弁を設けてもよいし、機械的に逆流を防止する逆止弁を設けてもよい。機械的に逆流を防止する逆止弁を用いるとより簡素なシステムで逆流を防止できる。
【0056】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0058】
(1)一態様に係る燃料電池の燃料ガス供給装置(例えば上記実施形態の)は、
燃料電池に複数の燃料ガス供給源(例えば上記実施形態の燃料ガスG1、G2、・・・、GNをそれぞれ供給可能な燃料ガス供給源2-1、2-2、・・・、2-N)と、
前記複数の燃料ガス供給源の各々に接続され、前記複数の燃料ガス供給源より下流側において互いに合流する複数の燃料ガス供給路(例えば上記実施形態の燃料ガス供給路4-1、4-2、・・・、4-N)と、
前記複数の燃料ガス供給路にそれぞれ設けられ、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽(例えば上記実施形態の混合ガス貯槽14)の圧力(例えば上記実施形態の圧力Px)に基づいて開閉可能な複数の第1バルブ(例えば上記実施形態の第1バルブ8-1、8-2、・・・、8-N)と、
前記複数の燃料ガス供給路の合流点(例えば上記実施形態の合流点6)と前記燃料電池とを接続し、前記複数の燃料ガスの少なくとも1つを含む混合ガス(例えば上記実施形態の混合ガスGm)を前記燃料電池に供給するための混合ガス供給路(例えば上記実施形態の混合ガス供給路10)と、
前記混合ガス供給路に設けられた第2バルブ(例えば上記実施形態の第2バルブ12)と、
を備え、
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力が予め設定された設定圧力(例えば上記実施形態の設定圧力P1、P2、・・・、PN)以下になった場合に開くように構成され、
前記設定圧力は、前記複数の第1バルブの各々について互いに異なるように設定される。
【0059】
上記(1)の態様によれば、複数の燃料ガスを複数の燃料供給源から供給の優先度に応じて供給される燃料ガスを含む混合ガスを燃料電池に供給できる。複数の燃料ガス供給路には圧力に応じて開度を調整可能な第1バルブが設けられており、各燃料ガス混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽の圧力が各設定圧力以下になった場合に開くように構成される。各第1バルブの設定圧力は互いに異なるように設定されることで、複数の燃料供給源から燃料ガスを順次取出し、混合ガスとして燃料電池に供給できる。このように複数の燃料ガスからなる混合ガスを燃料電池に供給することで、複数の燃料ガスを利用した燃料電池の運用が可能となる。
【0060】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記複数の燃料ガスには予め優先度が設定されており、
前記設定圧力は、前記優先度が高いほど高く設定される。
【0061】
上記(2)の態様によれば、各第1バルブの設定圧力は、優先度に基づいて設定される。特に、優先度が高い燃料ガスに対応する設定圧力を大きく設定することで、優先度が高い燃料ガスの使用頻度を高めつつ、当該燃料ガスだけでは不足が生じる場合には、優先度が低い燃料ガスを順次供給して混合ガスとすることで、ユーザが意図する燃料ガスを効率的に使用しつつ、燃料電池201の運用コストや二酸化炭素の排出量を効果的に削減することができる。
【0062】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力に応じて開度を調整可能な減圧弁である。
【0063】
上記(3)の態様によれば、各燃料ガス供給路に設けられた第1バルブを減圧弁として構成することで、圧力を検出するためのセンサや当該センサに基づいて制御信号を生成するためのコントローラなどの構成を用いることなく、シンプルな構成で上記装置を実現できる。
【0064】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記混合ガス供給路のうち前記第2バルブより上流側に設けられ、前記混合ガスを貯留可能な混合ガス貯槽(例えば上記実施形態の混合ガス貯槽14)を更に備える。
【0065】
上記(4)の態様によれば、複数の燃料ガス供給路からの複数の燃料ガスは、混合ガス貯槽に一時的に貯蔵することで混合ガスの使用量が変動した場合でも供給圧力の変動を緩和し第1バルブの作動状態を安定化することができる。また、貯蔵されることで燃料ガスが十分に混合され、複数の燃料ガス供給路からの供給流量の割合が変化した場合においても混合ガス組成の変動を緩和できるため燃料電池の運転を安定させることができる。
【0066】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記第2バルブから前記燃料電池に供給される前記混合ガスの燃料組成を計測する手段前記混合ガスの流量検出手段をさらに備える。
【0067】
上記(5)の態様によれば、安定した性状を有する混合ガスの燃料組成を計測し、その計測結果に基づいて出力指令に基づいて燃料電池に供給する混合ガス流量を算出する制御装置を備える。
【0068】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
混合ガスの流量検出手段を備え、前記燃料電池に供給される前記混合ガスに含まれる燃料組成に基づいて算出された混合ガス流量を前記第2バルブの開度および流量検出手段により制御する。
【0069】
上記(6)の態様によれば、混合ガスに含まれる燃料組成に基づいて第2バルブの開度を制御することで、燃料電池の発電に必要な混合ガスの流量を適切に供給することができる。
【0070】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合貯槽の圧力が前記燃料ガス供給ラインにそれぞれ設けられた前記第1バルブの前記設定圧力より高くなった場合に、前記燃料ガス供給源に前記混合ガスが逆流しないように逆流防止機構を更に備える。
【0071】
上記(7)の態様によれば、逆流防止機構を備えることにより、第1バルブの下流側の圧力が設定圧力より高くなった場合においても、第1バルブの上流側に混合ガスが逆流することを防止し、信頼性に優れた燃料ガス供給装置を実現できる。
【0072】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記複数の燃料ガスは、性状や供給量が安定している燃料ガスを少なくとも1つ含む。
【0073】
上記(8)の態様によれば、例えば都市ガスのような性状が安定して十分な供給量のある燃料ガスを用いることで、消化ガスや再生エネルギ由来の水素ガス等のように性状や供給量が安定していない燃料ガスを優先的に使用する場合においても、不足が生じた場合には性状や供給量が安定している燃料ガスを用いることで不足分を賄うことができる。これにより、性状や供給量が安定している燃料ガスの消費を抑えることで燃料電池の運用コストを低減できり、消化ガスや再生エネルギ由来の水素ガス等の性状が安定していない燃料ガスの有効利用が可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料ガス供給装置
2-1、2-2、・・・、2-N 燃料ガス供給源
4-1、4-2、・・・、4-N 燃料ガス供給路
6 合流点
8-1、8-2、・・・、8-N 第1バルブ
9-1,9-2、・・・、9-N 逆流防止機構
10 混合ガス供給路
12 第2バルブ
14 混合ガス貯槽
16 圧力センサ
18 CH4濃度センサ
20 H2濃度センサ
22 CO濃度センサ
23 混合ガス流量検出器
24 制御装置
101 セルスタック
103 基体管
105 燃料電池セル
107 インターコネクタ
109 燃料極
111 固体電解質膜
113 空気極
115 リード膜
201 燃料電池
203 カートリッジ
205 圧力容器
207 燃料ガス供給管
207a 燃料ガス供給枝管
209 燃料ガス排出管
209a 燃料ガス排出枝管
D 出力指令
G1、G2、・・・、GN 燃料ガス
Gm 混合ガス
P1、P2、・・・、PN 設定圧力
【手続補正書】
【提出日】2021-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に複数の燃料ガスをそれぞれ供給可能な複数の燃料ガス供給源と、
前記複数の燃料ガス供給源各々に接続され、前記複数の燃料ガス供給源より下流側において互いに合流する複数の燃料ガス供給路と、
前記複数の燃料ガス供給路にそれぞれ設けられ、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽の圧力に基づいて開閉可能な複数の第1バルブと、
前記複数の燃料ガス供給路の合流点と前記燃料電池とを接続し、前記複数の燃料ガスの少なくとも1つを含む混合ガスを前記燃料電池に供給するための混合ガス供給路と、
前記混合ガス供給路に設けられた第2バルブと、
を備え、
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力が予め設定された設定圧力以下になった場合に開くように構成され、
前記設定圧力は、前記複数の第1バルブの各々について互いに異なるように設定され、
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力に応じて開度を調整可能な制御弁である、燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項2】
前記複数の燃料ガスには予め優先度が設定されており、
前記設定圧力は、前記優先度が高いほど高く設定される、請求項1に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項3】
前記制御弁は、減圧弁である、請求項1又は2に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項4】
前記混合ガス貯槽は、前記混合ガス供給路のうち前記第2バルブより上流側に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項5】
前記第2バルブから前記燃料電池に供給される前記混合ガスの燃料組成を計測する手段を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項6】
前記燃料電池に供給される前記混合ガスに含まれる燃料組成に基づいて必要な混合ガス流量を算出し、当該流量に基づいて前記第2バルブの開度を制御する、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項7】
各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力が前記燃料ガス供給路にそれぞれ設けられた前記第1バルブの前記設定圧力より高くなった場合に、前記燃料ガス供給源に前記混合ガスが逆流しないように逆流防止機構を更に備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項8】
前記複数の燃料ガスは、性状が安定し、且つ、供給量が十分に確保されている燃料ガスを少なくとも1つ含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料電池の燃料ガス供給装置。
【請求項9】
燃料電池に複数の燃料ガスをそれぞれ供給可能な複数の燃料ガス供給源と、
前記複数の燃料ガス供給源各々に接続され、前記複数の燃料ガス供給源より下流側において互いに合流する複数の燃料ガス供給路と、
前記複数の燃料ガス供給路にそれぞれ設けられ、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは混合ガス貯槽の圧力に基づいて開閉可能な複数の第1バルブと、
前記複数の燃料ガス供給路の合流点と前記燃料電池とを接続し、前記複数の燃料ガスの少なくとも1つを含む混合ガスを前記燃料電池に供給するための混合ガス供給路と、
前記混合ガス供給路に設けられた第2バルブと、
を備え、
前記複数の第1バルブは、各前記燃料ガスの混合後の圧力もしくは前記混合ガス貯槽の圧力が予め設定された設定圧力以下になった場合に開くように構成され、
前記設定圧力は、前記複数の第1バルブの各々について互いに異なるように設定され、
前記燃料電池に供給される前記混合ガスに含まれる燃料組成に基づいて必要な混合ガス流量を算出し、当該流量に基づいて前記第2バルブの開度を制御する、燃料電池の燃料ガス供給装置。