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特開2022-131540絶縁複合部品および絶縁複合部品の製造方法
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  • 特開-絶縁複合部品および絶縁複合部品の製造方法 図1
  • 特開-絶縁複合部品および絶縁複合部品の製造方法 図2
  • 特開-絶縁複合部品および絶縁複合部品の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131540
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】絶縁複合部品および絶縁複合部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/00 20060101AFI20220831BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20220831BHJP
   B21D 39/03 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C25D11/00 302
C25D11/04 Z
B21D39/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030538
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】手島 政和
(57)【要約】
【課題】部材同士を絶縁するとともに一体化した絶縁複合部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 第1部材10および第2部材20間を絶縁して一体化する絶縁複合部品の製造方法であって、第1部材は、上面に袋穴部13を有するとともに陽極酸化処理が施され、第2部材は、第1部材の上面に載置され、この状態で第2部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2部材を塑性変形させて第1部材の袋穴部に充填させることにより第1部材と第2部材とを機械的に接合し一体化する絶縁複合部品の製造方法による。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋穴部を有するとともに陽極酸化皮膜が施された第1部材と、
第1部材の袋穴部に機械的に一体接合される第2部材と、
から構成されることを特徴とする絶縁複合部品。
【請求項2】
第1部材の袋穴部の内周壁は、第2部材が抜け止めとなる方向にテーパー状に成形されていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁複合部品。
【請求項3】
第1部材および第2部材間を絶縁して一体化する絶縁複合部品の製造方法であって、
第1部材は、上面に袋穴部を有するとともに陽極酸化処理が施され、第2部材は、第1部材の上面に載置され、この状態で第2部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2部材を塑性変形させて第1部材の袋穴部に充填させることにより第1部材と第2部材とを機械的に接合し一体化することを特徴とする絶縁複合部品の製造方法。
【請求項4】
第1部材の袋穴部の内周壁は、第2部材が抜け止めとなる方向にテーパー状に成形されていることを特徴とする請求項3に記載の絶縁複合部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の部材同士を電気的に絶縁するとともに一体化した絶縁複合部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示す絶縁構造体が知られている。この絶縁構造体は、第1部材および第2部材の間に絶縁部材を介在させるとともに、陽極酸化処理を施したアルミニウム製の位置決めピンによってこれら部材を固定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-158438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記絶縁構造体は、複数の部材を組み合わせて接合するため、コストがかかるばかりか、位置決めピンを第1及び第2部材に圧入する際に、表面の陽極酸化被膜が剥がれ、絶縁性能に支障をきたす問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて創成されたものであり、部材同士を絶縁するとともに一体化した絶縁複合部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、袋穴部を有するとともに陽極酸化皮膜が施された第1部材と、第1部材の袋穴部に機械的に一体接合される第2部材とから構成される絶縁複合部品によって解決できる。
【0007】
また、第1部材および第2部材間を絶縁して一体化する絶縁複合部品の製造方法であって、第1部材は、上面に袋穴部を有するとともに陽極酸化処理が施され、第2部材は、第1部材の上面に載置され、この状態で第2部材を圧縮する方向に圧力を加えることにより、第2部材を塑性変形させて第1部材の袋穴部に充填させることにより第1部材と第2部材とを機械的に接合し一体化する絶縁複合部品の製造方法によっても解決できる。
【0008】
なお、第1部材の袋穴部の内周壁は、第2部材が抜け止めとなる方向にテーパー状に成形されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の絶縁複合部品によれば、部材間を絶縁した状態の一体部品を提供することができる。また、本発明の絶縁複合部品の製造方法によれば、第1部材の陽極酸化皮膜が剥がれることなく第2部材を接合した一体部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によって接合される前の部材の形状を示す図である。
図2】本発明による接合過程の状態を示す図である。
図3】本発明による接合完了の状態示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明である絶縁複合部品の製造方法を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、接合前の部材の形状を示すものであり、図1(b)は、アルミニウム合金材(JIS規格における分類A5056)でなる第1部材10を示す。図1(a)は、アルミニウム合金材(JIS規格における分類A1070)でなる第2部材20を示す。これら第1部材10および第2部材20は、予め別個に成形され準備されるものであり、例えば、冷間圧造加工によって成形される。
【0013】
第1部材10は、厚みが1.3mmの平板状の頭部11と、これに一体成形される軸部12とから構成される。また、頭部11の上面には、有底の袋穴部13が穿設されている。この袋穴部13は、その内周壁が逆テーパー状に成形されており、この逆テーパー部14は、底面に向かうに従って、袋穴部13の内径が拡がる方向に傾斜している。さらに、袋穴部13の開口縁部15は円弧状に面取りが施されている。
【0014】
また、第1部材10には、袋穴部13の内周壁および底面も含め全面にわたって陽極酸化皮膜が施されている。このため、第1部材10は、電気絶縁性を有している。
【0015】
第2部材20は、厚みが1.5mmの平板状の本体22を有しており、その底面には凸部21が一体成形されている。
【0016】
また、第2部材20には、錫めっきが施されている。このため、第2部材20は、はんだを付けやすくなっている。
【0017】
図2は、上記第1部材10と第2部材20との接合方法を示す図である。受け型1は、段付きの挿入孔1aを有しており、この挿入孔1aに第1部材10の軸部12を挿入し、第1部材10の頭部11を段付き部1bに吊下することで、第1部材10を保持するように構成されている。
【0018】
なお、第1部材10の軸部12は、受け型1に位置決め及び保持し易いように設けられているものであり、本発明の作用効果を発揮するために必須の構成要件ではない。
【0019】
続いて、上記第1部材10の袋穴部13に第2部材20の凸部21を挿入するようにして、第1部材10上に第2部材20が配置される。
【0020】
次に、図3に示すように、パンチピン3を下方に前進させて、第2部材20を上方から圧縮することにより、第2部材20の本体22の一部及びその凸部21が塑性変形し、第1部材10の袋穴部13へ充填される。このとき、第2部材20の本体22の厚みは、1.3mm程度に圧縮される一方、第1部材10は、第2部材20よりも硬い材料であるため厚みは変化しない。このようにして、第1部材10と第2部材20は接合され、絶縁複合部品が完成する。
【0021】
接合が完了すると、受け型1の挿入孔1aの下方に配置されたノックアウトピン2を上方へ前進させることにより、絶縁複合部品は、受け型1から排出される。
【0022】
上記接合方法によって製造された絶縁複合部品は、第1部材10の逆テーパー部14が抜け方向に対し引っかかりになるため、高い抜け強度が得られる。また、第1部材10の袋穴部13には第2部材20の本体22の一部及び凸部21が十分に充填されるため、高い密着性が得られる。さらに、第1部材10の開口縁部15が円弧状に成形されているので、塑性変形した第2部材20の本体22が第1部材10の袋穴部13へ流動し易いようになっている。
【0023】
また、上記絶縁複合部品は、第1部材10に陽極酸化皮膜が施されているため、第2部材20に対して電気的に絶縁された一体部品となっている。これにより、従来では、例えば電気部品の分野において、金属間に絶縁部材に介在させて組み立てていたような構造を、上記絶縁複合部品に置き換えることで、部品点数および組み立て工数を削減することができる。
【0024】
さらに、上記絶縁複合部品の製造方法によれば、陽極酸化皮膜が施された第1部材10の袋穴部13に第2部材20を塑性変形により流動させることで接合する方法なので、第1部材10は変形を伴わない。これに加え、第1部材10は、第2部材20よりも硬い材料であるため、第1部材10の表面に施された陽極酸化被膜にクラック等の損傷が生じないので、電気的絶縁性が損なわれない。
【0025】
なお、上記実施形態においては、第2部材20が凸部21を備える例を示したが、これは、第1部材10の袋穴部13に第2部材20を充填し易くするためのものであり、第2部材20の材質によっては、必ずしも凸部21を備える必要は無い。圧縮により塑性変形した第2部材20の本体22が袋穴部13に流動し充填されることもある。
【0026】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記第2部材20は、アルミニウム合金材ではなく別の金属でもよく、つまり第1部材10と第2部材20は異種金属であってもよい。
【0027】
1 受け型
1a 挿入孔
1b 段付き部
2 ノックアウトピン
3 パンチピン
10 第1部材
11 頭部
12 軸部
13 袋穴部
14 逆テーパー部
15 開口縁部
20 第2部材
21 凸部
図1
図2
図3