(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131569
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】バリアブルリラクタンス型レゾルバ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20220831BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
G01D5/20 110H
H02K24/00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030575
(22)【出願日】2021-02-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】591201952
【氏名又は名称】株式会社一宮電機
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】木梨 好一
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA11
2F077AA20
2F077CC02
2F077NN22
2F077NN24
2F077PP26
2F077QQ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】励磁コイルが発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータの磁界が重ね合わされても、電気誤差を発生させることがなく、励磁コイルの総インピーダンスのロータ位置に応じた変動を小さくでき、且つ軸倍角数が2であるレゾルバを提供する。
【解決手段】8組のティース対のうち、1組は励磁コイル26が巻回されていない不使用ティース対29であり、他の7組は励磁コイル26が0回以上巻回されている使用ティース対である。不使用ティース対29に対して90°の位置関係にある使用ティース対に含まれているティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数Waと、不使用ティース対29に対して90°以外の位置関係にある使用ティース対に含まれているティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数Wbとが、0≦Wa≦0.5Wbなる関係を満たすようにする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータロータの磁極数MがM=2m(mは偶数)の関係を満たすモータに設けられ、且つ軸倍角数が2であるバリアブルリラクタンス型レゾルバであって、
モータシャフトと同軸に取り付けられたロータと、
16個のティースを有するステータと、
16個の上記ティースに選択的に巻回された励磁コイル、第1出力コイル、及び第2出力コイルと、を備えており、
16個の上記ティースは、8個のティース対からなり、それぞれの上記ティース対は、上記ロータの軸芯に対して点対称の位置関係にある2個の上記ティースからなり、
8個の上記ティース対のうち、1個の上記ティース対は、上記励磁コイルが巻回されていない不使用ティース対であり、他の7個の上記ティース対は、上記励磁コイルが0回以上巻回されている使用ティース対であり、
上記使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、互いに異なる磁極を発生させるように、それぞれ、上記励磁コイルが互いに逆向きに巻回されており、
上記使用ティース対に含まれている上記ティースのうち、上記軸芯の周方向に沿って隣り合う2個の上記ティースには、上記励磁コイルが互いに逆向きに巻回されており、
上記不使用ティース対に対して90°の位置関係にある上記使用ティース対に含まれている上記ティースに巻回されている上記励磁コイルの巻回数Waと、上記不使用ティース対に対して90°以外の位置関係にある上記使用ティース対に含まれている上記ティースに巻回されている上記励磁コイルの巻回数Wbとは、0≦Wa≦0.5Wbなる関係を満たすバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【請求項2】
7個の上記使用ティース対のうち、5個の上記使用ティース対は、上記第1出力コイルが巻回されている第1使用ティース対であり、他の2個の上記使用ティース対は、上記第2出力コイルが巻回されている第2使用ティース対であり、
上記第1使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、上記第1出力コイルが互いに逆向きに巻回されており、
上記第2使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、上記第2出力コイルが互いに逆向きに巻回されている請求項1に記載のバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【請求項3】
上記ロータが上記ステータの内側に配置されている請求項1または2に記載のバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアブルリラクタンス型レゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体の回転角を検出する回転角センサが知られている。回転角センサの用途は広範にわたり、例えば自動車の動力系における車輪速センサ、ハンドルの操舵角センサ等に使用される。また、ロボットや搬送機器等の回転駆動ユニット、自動組立機や計測機等のインデックステーブル、NC工作機械や専用機等の加工用インデックス等に使用される。過酷な環境で使用される回転角センサには、高い耐環境性が求められる。例えば、従来回転角センサに使用されてきた光学式エンコーダや磁気式エンコーダは、温度変化及び電磁場の影響を受け易く、耐環境性が低い。高い耐環境性を実現する回転角センサとしてレゾルバがある。レゾルバの1つとしてバリアブルリラクタンス型レゾルバ(以下「VR型レゾルバ」と称する。)が知られている。
【0003】
VR型レゾルバは、レゾルバロータの回転に伴って磁気抵抗(リラクタンス)が変化することを利用して、回転角に応じた電圧を出力するものである。一般的なVR型レゾルバにおいて、環状のレゾルバステータの各ティースには、励磁コイル及び2個の出力コイルが巻回されている。レゾルバステータの内側には、レゾルバロータが配置されている。レゾルバロータは、周方向において各ティースとの距離(磁気ギャップ)が異なる。励磁コイルは電流が流れることによって磁界を生じさせ、隣接するレゾルバロータとの間に磁路を形成する。レゾルバロータが回転することによって磁界の強度が変化する。出力コイルは、磁界の強度に基づいた電圧を出力する。
【0004】
レゾルバロータが回転すると、磁路中の磁気抵抗が変化し、2個の出力コイルが出力する電圧は正弦波状又は余弦波状に変化する。レゾルバロータが1回転する間に、2個の出力コイルは正弦波状又は余弦波状の電圧を出力する。2個の出力コイルが出力した電圧が、例えば外部の信号処理回路によって信号処理されて、レゾルバロータの回転速度、回転角等が算出される。
【0005】
レゾルバロータが1回転する間に出力される正弦波状又は余弦波状の電圧におけるサイクル数を軸倍角数nとして、各種のVR型レゾルバが「nX」と称されて区別されている。例えば、レゾルバロータが1回転する間に2サイクルの正弦波状又は余弦波状の電圧が出力されるVR型レゾルバは、「2X」と称される。軸倍角数nは、レゾルバロータの形状によって決定される。以下、レゾルバステータのスロット数(ティース数)をNとする。
【0006】
特許文献1には、このようなVR型レゾルバの一例が開示されている。また、特許文献2には、励磁コイル及び2個の出力コイルが巻回されていない2個のティースを含むVR型レゾルバの各種の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-217852号公報
【特許文献2】特開2018-78755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レゾルバがモータに接近して配置される場合、レゾルバロータに、モータロータのマグネットが発生させる磁界が影響して、以下のような問題を発生させている。
【0009】
図6に示されるように、モータロータには、周方向に沿ってN極及びS極を交互に生じさせるマグネット120が配置されている。モータロータの磁極数MがM=2m(m:偶数)の関係を満たすとき、モータロータにおける磁極の配置は、モータシャフトの軸芯に対して点対称となる。つまり、モータロータの周方向のどの位置においても、N極同士またはS極同士が点対称に配置されている。
【0010】
図7に示されるように、レゾルバロータ121の形状はモータシャフトの軸芯に対して点対称であり、励磁コイル126の巻きの向きの配置もモータシャフトの軸芯に対して点対称である。丸印で囲まれた文字R及び文字Lは、各ティース124に巻回された励磁コイル126の巻線部分の巻きの向きを示している。ティース124をレゾルバロータ121から外向きに視たときに、例えば、文字Rで示される巻線部分の巻きの向きは、右回り向きであり、文字Lで示される巻線部分の巻きの向きは、左回り向きである。したがって、励磁コイル126が発生させる磁極の配置もモータシャフトの軸芯に対して点対称である。つまり、レゾルバロータの周方向のどの位置においても、N極同士またはS極同士が点対称に発生する。
【0011】
前述のモータロータが発生させる磁界は、磁極が周方向に沿って交互に交代し且つ同一磁極が点対称に配置された磁界である。モータロータからレゾルバロータまでの距離が小さいと、モータロータのマグネットが発生させる磁極と同一の磁極が、レゾルバロータに発生する。この結果、レゾルバロータに、モータロータのマグネットにより、同一磁極が点対称に配置される。
【0012】
前述のモータロータ及びレゾルバが近接して配置されると、モータロータが発生させる磁界が、励磁コイルが発生させる磁界に重なる。モータロータが発生させる磁界及び励磁コイルが発生させる磁界の双方は、同一磁極が点対称に配置された磁界である。そのため、励磁コイルが発生させる磁界は、モータロータが発生させる磁界によって、均等に強められるか又は弱められる。その結果、出力コイルに発生する誘起電圧は、モータロータが発生させる磁界からの誘起電圧を含むことになる。したがって、モータロータが発生させる磁界は、電気誤差の原因となる。特に、モータロータのマグネットの磁界による誘起電圧は、モータロータの回転速度が高速になればなるほど大きくなる。したがって、モータロータの回転速度の高速化に伴って電気誤差は大きくなる。
【0013】
図8に示されるように、特許文献2の第1実施形態に記載されたVR型レゾルバでは、レゾルバロータ221は、軸倍角数4に対応して、軸芯から径方向に突出する4個の突起を有している。また、16個のティース224で構成される8個のティース対のうち、1個のティース対は、励磁コイル226、第1出力コイル227、及び第2出力コイル228が巻回されていない不使用ティース対229であり、他の7個のティース対は、励磁コイル226、及び第1出力コイル227又は第2出力コイル228が巻回されている使用ティース対230である。
図8に示されるVR型レゾルバによれば、励磁コイルが発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータの磁界が重ね合わされても、電気誤差の発生を防止することができる。
【0014】
レゾルバは、磁気抵抗がロータ位置に応じて変化するという性質を用いて、回転体の回転角を検出する。このため、レゾルバでは、励磁コイルの総磁気抵抗(すなわち、励磁コイルの総インピーダンス)は一定であることが前提とされている。しかしながら、特許文献2に記載された方法で軸倍角数nが2であるレゾルバを構成した場合、励磁コイルの総インピーダンスはロータ位置によって変動する。このため、励磁コイルを流れる電流は、本来はロータ位置によらず一定であるべきにも拘らず、実際にはロータ位置によって変動する。したがって、励磁コイルの磁界、及びレゾルバの出力電圧もロータ位置によって変動し、結果として電気誤差が発生する。
【0015】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、励磁コイルが発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータの磁界が重ね合わされても、電気誤差を発生させることがなく、励磁コイルの総インピーダンスのロータ位置に応じた変動を小さくでき、且つ軸倍角数が2であるレゾルバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1) 本発明に係るバリアブルリラクタンス型レゾルバは、モータロータの磁極数MがM=2m(mは偶数)の関係を満たすモータに設けられ、且つ軸倍角数が2であるバリアブルリラクタンス型レゾルバであって、モータシャフトと同軸に取り付けられたロータと、16個のティースを有するステータと、16個の上記ティースに選択的に巻回された励磁コイル、第1出力コイル、及び第2出力コイルと、を備えており、16個の上記ティースは、8個のティース対からなり、それぞれの上記ティース対は、上記ロータの軸芯に対して点対称の位置関係にある2個の上記ティースからなり、8個の上記ティース対のうち、1個の上記ティース対は、上記励磁コイルが巻回されていない不使用ティース対であり、他の7個の上記ティース対は、上記励磁コイルが0回以上巻回されている使用ティース対であり、上記使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、互いに異なる磁極を発生させるように、それぞれ、上記励磁コイルが互いに逆向きに巻回されており、上記使用ティース対に含まれている上記ティースのうち、上記軸芯の周方向に沿って隣り合う2個の上記ティースには、上記励磁コイルが互いに逆向きに巻回されており、上記不使用ティース対に対して90°の位置関係にある上記使用ティース対に含まれている上記ティースに巻回されている上記励磁コイルの巻回数Waと、上記不使用ティース対に対して90°以外の位置関係にある上記使用ティース対に含まれている上記ティースに巻回されている上記励磁コイルの巻回数Wbとは、0≦Wa≦0.5Wbなる関係を満たす。
【0017】
上記構成によれば、使用ティース対に含まれている2個のティースには、互いに異なる磁極を発生させるように、それぞれ、励磁コイルが互いに逆向きに巻回されているので、励磁コイルは、異なる磁極を点対称に発生させる。ここで、励磁コイルが発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータのマグネットによる磁界が重ね合わされて、合成磁界が形成される。この合成磁界により、第1出力コイル及び第2出力コイルに誘起電圧が発生する。励磁コイルにおいて点対称の位置関係にある2個の巻線部分のうち、一方の巻線部分では合成磁界が強められ、他方の巻線部分では合成磁界が弱められる。誘起電圧は、一方の巻線部分の合成磁界によって強められ、他方の巻線部分の合成磁界によって弱められる。結果として、モータロータの磁界によって発生したノイズとしての誘起電圧は、打ち消される。したがって、励磁コイルが発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータの磁界が重ね合わされても、電気誤差が発生しない。
【0018】
また、上記構成によれば、励磁コイルが巻回されていない不使用ティース対が設けられているので、励磁コイルが互いに逆向きに巻回された使用ティース対を設けながら、励磁コイルによる磁極を周方向に沿って交互に発生させることができる。つまり、ティース数16のスロットのレゾルバが実現される。
【0019】
また、上記構成によれば、上記巻回数Waと上記巻回数Wbとが0≦Wa≦0.5Wbなる関係を満たすので、励磁コイルの総インピーダンスのロータ位置に応じた変動を小さくすることができる。したがって、励磁コイルを流れる電流、励磁コイルの磁界、及びレゾルバの出力電圧のロータ位置に応じた変動を小さくし、電気誤差の発生を防止することができる。
【0020】
(2) 好ましくは、7個の上記使用ティース対のうち、5個の上記使用ティース対は、上記第1出力コイルが巻回されている第1使用ティース対であり、他の2個の上記使用ティース対は、上記第2出力コイルが巻回されている第2使用ティース対であり、上記第1使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、上記第1出力コイルが互いに逆向きに巻回されており、上記第2使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、上記第2出力コイルが互いに逆向きに巻回されている。
【0021】
上記構成によれば、励磁コイルが巻回されていない不使用ティース対が設けられながら、第1出力コイル及び第2出力コイルが効率よく配置される。
【0022】
(3) 好ましくは、上記ロータが上記ステータの内側に配置されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、励磁コイルが発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータの磁界が重ね合わされても、電気誤差が発生しない。また、励磁コイルの総インピーダンスがロータ位置に応じて変動することを防止して、電気誤差の発生を防止できる。また、励磁コイルの総インピーダンスがロータ位置に応じて変動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るレゾルバ100が設けられたモータ10の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係るレゾルバ100が設けられたモータ10のモータロータ17の模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係るレゾルバ100の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係るレゾルバ100において、励磁コイル26、第1出力コイル27、及び第2出力コイル28によって形成される磁極を示す模式図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係るレゾルバ100の効果を説明するための図である。
【
図6】
図6は、従来のレゾルバが設けられたモータのモータロータの模式図である。
【
図7】
図7は、従来のレゾルバにおいて、励磁コイル126、第1出力コイル127、及び第2出力コイル128によって形成される磁極を示す模式図である。
【
図8】
図8は、特許文献2に記載のレゾルバにおいて、励磁コイル226、第1出力コイル227、及び第2出力コイル228によって形成される磁極を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に示される実施形態は、本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更できることは言うまでもない。
【0026】
[モータ10]
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るレゾルバ100は、モータ10に設けられている。モータ10は、ブラシレスモータである。モータ10は、例えばEPS(電動パワーステアリング)に搭載される。モータ10は、モータ本体11と制御部12とを備える。モータ本体11及び制御部12は、電力ケーブル14及びセンサケーブル15によって電気的に接続されている。
【0027】
モータ本体11は、モータステータ16と、モータロータ17と、モータロータ17に固定されたモータシャフト18と、筐体19と、を備える。モータシャフト18には、レゾルバ100が設けられている。モータロータ17は、モータステータ16の内側に配置されている。モータ10は、インナーロータ型のモータである。モータ本体11及びレゾルバ100は、筐体19内に配置されている。
【0028】
図2には、モータ10のモータロータ17が示されている。モータロータ17は、モータシャフト18に固定された8極のマグネット20を備えている。マグネット20は、磁石粒子が円筒状に焼結された永久磁石である。マグネット20には、周方向にN極とS極とが交互に形成されている。マグネット20では、同一磁極が点対称に配置されている。
【0029】
モータ10では、モータロータ17の磁極数Mは、M=2mの関係を満たしている。mは偶数である。モータロータ17は、8極のマグネット20を備えているので、モータロータ17の磁極数Mは8である。磁極数Mが8であるため、mは4である。
【0030】
[レゾルバ100]
図3に示されるように、レゾルバ100は、レゾルバロータ21及びレゾルバステータ22を備えている。レゾルバ100は、いわゆるバリアブルリラクタンス型レゾルバである。レゾルバロータ21は、レゾルバステータ22の内側に配置されている。つまり、レゾルバ100は、インナーロータ型のレゾルバである。レゾルバロータ21は、モータシャフト18と同軸に取り付けられている。
【0031】
レゾルバロータ21は、無方向性電気鋼板が複数枚積層されてカシメ等により固定されて構成されている。レゾルバロータ21の外周は、レゾルバロータ21とレゾルバステータ22とのギャップパーミアンスが、レゾルバロータ21の回転方向の角度θに対して正弦波状に変化する形状に形成されている。レゾルバ100は、2Xのレゾルバである。レゾルバ100の軸倍角数nは、2である。そのため、レゾルバロータ21の外周は、軸倍角数に対応する角度である180°(360°/2)毎に、周期的に同じ形状が繰り返されるように形成されている。レゾルバロータ21は、軸倍角数2に対応して、軸芯13から径方向に突出する2個の突起を有している。
【0032】
図3に示されるように、レゾルバステータ22は、ヨーク23と、16個のティース24と、コイル群25と、を備えている。ヨーク23は、略円筒形状である。16個のティース24は、ヨーク23の内周面から軸芯13に向けて突出し、ヨーク23の周方向に沿って等間隔に並んでいる。ヨーク23及び16個のティース24は、無方向性電気鋼板が複数枚積層されてカシメ等により固定されて構成されている。
【0033】
16個のティース24は、ヨーク23の周方向に沿って並ぶ1番目のティース24(1)から16番目のティース24(16)からなる。i番目のティース24(i)は、1番目のティース24(1)からの順番iに対応するティース24である。順番iは、1から16までの数である。順番の異なるティース24同士を区別する必要がない場合、総称としてのティース24が用いられる。
【0034】
16個のティース24は、8個のティース対からなる。それぞれのティース対は、レゾルバロータ21の軸芯13に対して点対称の位置関係にある2個のティース24からなる。以下、jを1以上8以下の整数としたとき、j番目のティース24(j)及びj+8番目のティース24(j+8)からなるティース対を「j番目のティース対」と称する。例えば、1番目のティース24(1)及び9番目のティース24(9)からなるティース対は、「1番目のティース対」と称される。
【0035】
コイル群25は、
図4に示される励磁コイル26、第1出力コイル27、及び第2出力コイル28の総体を指している。コイル群25は、16個のティース24の一部に選択的に巻回されている。励磁コイル26に所定の電圧が付与されることにより、第1出力コイル27及び第2出力コイル28からそれぞれ正弦波状又は余弦波状の出力電圧が得られる。第1出力コイル27及び第2出力コイル28は、互いの出力電圧の位相が異なるように巻回されている。つまり、第1出力コイル27から正弦波状の電圧が出力される場合、第2出力コイル28から余弦波状の電圧が出力される。逆もまた同様である。第1出力コイル27及び第2出力コイル28の出力電圧に基づいて、レゾルバロータ21の回転角、すなわちモータシャフト18の回転角度が検出されうる。
【0036】
図4には、16個のティース24、励磁コイル26、第1出力コイル27、及び第2出力コイル28が示されている。励磁コイル26、第1出力コイル27、及び第2出力コイル28は、それぞれ、ティース24に巻回された複数の巻線部分を有している。
図4において、丸印で囲まれた文字R及び文字Lは、各ティース24に巻回された励磁コイル26の巻線部分の巻きの向きを示している。ティース24をレゾルバロータ21から外向きに視たときに、文字Rで示される巻きの向きは一方向きであり、文字Lで示される巻きの向きは他方向きである。一方向きは、他方向きとは逆の向きである。例えば、一方向きは右回り向きであり、他方向きは左回り向きである。巻きの向きが同一の巻線部分では、同一の磁極が発生する。巻きの向きが異なる巻線部分では、異なる磁極が発生する。
【0037】
励磁コイル26には交流電圧が印加されるので、励磁コイル26の巻線部分から発生する磁界の極性は、周期的に逆転する。そのため、相互誘導により第1出力コイル27及び第2出力コイル28の巻線部分に発生する磁界の極性も、周期的に逆転する。例えば、ある瞬間には、文字Rで示される一方向きの巻線部分にN極性の磁界が発生し、文字Lで示される他方向きの巻線部分にS極性の磁界が発生する。別の瞬間には、文字Rで示される一方向きの巻線部分にS極性の磁界が発生し、文字Lで示される他方向きの巻線部分にN極性の磁界が発生する。
【0038】
レゾルバステータ22に含まれる8個のティース対のうち、1個のティース対は不使用ティース対29であり、7個のティース対は使用ティース対30である。不使用ティース対29に含まれるティース24には、励磁コイル26、第1出力コイル27、及び第2出力コイル28のいずれもが巻回されていない。使用ティース対30に含まれるティース24には、励磁コイル26が0回以上巻回されている。なお、励磁コイル26が0回巻回されているとは、励磁コイル26が巻回されていないことを意味し、励磁コイル26が0回以上巻回されているとは、励磁コイル26が1回以上巻回されているか、または、励磁コイル26が巻回されていないことを意味する。7個の使用ティース対30のうち、5組の使用ティース対は第1使用ティース対30Aであり、他の2個の使用ティース対は第2使用ティース対30Bである。第1使用ティース対30Aに含まれているティース24には、第1出力コイル27が巻回されている。第2使用ティース対30Bに含まれるティース24には、第2出力コイル28が巻回されている。第1使用ティース対30A及び第2使用ティース対30Bを区別する必要がない場合、総称としての使用ティース対30が用いられる。
【0039】
図4に示されるように、5番目のティース対は、不使用ティース対29であり、他の7個のティース対は、使用ティース対30である。7個の使用ティース対30のうち、5個の使用ティース対30は、第1使用ティース対30Aであり、他の2個の使用ティース対30は、第2使用ティース対30Bである。具体的には、7個の使用ティース対30のうち、1番目のティース対、2番目のティース対、4番目のティース対、6番目のティース対、及び8番目のティース対は、第1使用ティース対30Aであり、3番目のティース対及び7番目のティース対は、第2使用ティース対30Bである。
【0040】
励磁コイル26は、7個の使用ティース対30に含まれる14個のティース24のそれぞれに巻回されている。励磁コイル26は、1番目のティース24(1)、3番目のティース24(3)、6番目のティース24(6)、8番目のティース24(8)、10番目のティース24(10)、12番目のティース24(12)、及び15番目のティース24(15)に、文字Rで示される一方向きに巻回されている。一方向きは、例えば、ティース24をレゾルバロータ21から外向きに視たときに右回り向きである。また、励磁コイル26は、2番目のティース24(2)、4番目のティース24(4)、7番目のティース24(7)、9番目のティース24(9)、11番目のティース24(11)、14番目のティース24(14)、及び16番目のティース24(16)に、文字Lで示される他方向きに巻回されている。他方向きは、例えば、ティース24をレゾルバロータ21から外向きに視たときに左回り向きである。
【0041】
励磁コイル26は、使用ティース対30に含まれる2個のティース24に、互いに逆向きに巻回されている。例えば、1番目のティース対において、励磁コイル26は、1番目のティース24(1)に文字Rで示される一方向きに巻回され、9番目のティース24(9)に文字Lで示される他方向きに巻回されている。また、2番目のティース対において、励磁コイル26は、2番目のティース24(2)に文字Lで示される他方向きに巻回され、10番目のティース24(10)に文字Rで示される一方向きに巻回されている。
【0042】
励磁コイル26は、7組の使用ティース対30に含まれる14個のティース24のうち、レゾルバロータ21の周方向に沿って隣り合う2個のティース24に、互いに逆向きに巻回されている。例えば、励磁コイル26は、3番目のティース24(3)に文字Rで示される一方向きに巻回され、4番目のティース24(4)に文字Lで示される他方向きに巻回されている。3番目のティース24(3)における巻きの向きは、4番目のティース24(4)における巻きの向きと逆向きである。また、励磁コイル26は、6番目のティース24(6)に文字Rで示される一方向きに巻回されている。不使用ティース対29を挟んだ4番目のティース24(4)及び6番目のティース24(6)の間で、4番目のティース24(4)における巻きの向きは、6番目のティース24(6)における巻きの向きと逆向きである。
【0043】
第1出力コイル27は、第1使用ティース対30Aに含まれる2個のティース24に、互いに逆向きに巻回されている。1番目のティース対において、第1出力コイル27は、1番目のティース24(1)に文字Rで示される一方向きに巻回され、9番目のティース24(9)に文字Lで示される他方向きに巻回されている。2番目のティース対において、第1出力コイル27は、2番目のティース24(2)に文字Lで示される他方向きに巻回され、10番目のティース24(10)に文字Rで示される一方向きに巻回されている。4番目のティース対において、第1出力コイル27は、4番目のティース24(4)に文字Rで示される一方向きに巻回され、12番目のティース24(12)に文字Lで示される他方向きに巻回されている。6番目のティース対において、第1出力コイル27は、6番目のティース24(6)に文字Lで示される他方向きに巻回され、14番目のティース24(14)に文字Rで示される一方向きに巻回されている。8番目のティース対において、第1出力コイル27は、8番目のティース24(8)に文字Rで示される一方向きに巻回され、16番目のティース24(16)に文字Lで示される他方向きに巻回されている。
【0044】
第2出力コイル28は、第2使用ティース対30Bに含まれる2個のティース24に、互いに逆向きに巻回されている。3番目のティース対において、第2出力コイル28は、3番目のティース24(3)に文字Rで示される一方向きに巻回され、11番目のティース24(11)に文字Lで示される他方向きに巻回されている。7番目のティース対において、第2出力コイル28は、7番目のティース24(7)に文字Rで示される一方向きに巻回され、15番目のティース24(15)に文字Lで示される他方向きに巻回されている。
【0045】
7個の使用ティース対30のうち、1番目のティース対は、不使用ティース対29である5番目のティース対に対して90°の位置関係にある。不使用ティース対29に対して90°の位置関係にある使用ティース対30に含まれているティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数を、Waとする。
【0046】
7個の使用ティース対30のうち、2番目のティース対、3番目のティース対、4番目のティース対、6番目のティース対、7番目のティース対、及び8番目のティース対は、不使用ティース対29である5番目のティース対に対して90°以外の位置関係にある。不使用ティース対29に対して90°以外の位置関係にある使用ティース対30に含まれているティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数を、Wbとする。
【0047】
レゾルバロータ21は、不使用ティース対29に対して90°の位置関係にある使用ティース対30に含まれているティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数Waと、不使用ティース対29に対して90°以外の位置関係にある使用ティース対30に含まれているティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数Wbとが、0≦Wa≦0.5Wbなる関係を満たすように構成されている。
【0048】
1番目のティース対には、2個のティース24が含まれている。これら2個のティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数Waは、同じである。2番目のティース対、3番目のティース対、4番目のティース対、6番目のティース対、7番目のティース対、及び8番目のティース対には、全部で12個のティース24が含まれれている。これら12個のティース24に巻回されている励磁コイル26の巻回数Wbは、すべて同じでもよく、巻回数Wbの中に異なるものが含まれていてもよい。
【0049】
図5を参照して、レゾルバ100の効果を説明する。
図5には、Wa=Wbのとき、Wa=0.47Wbのとき、及びWa=0のときについて、励磁コイル26の総インピーダンスがロータ位置に応じて変動する様子が記載されている。Wa=Wbのときには、励磁コイル26の総インピーダンスのロータ位置に応じた変動量は大きい。これに対して、Wa=0.47Wbのとき、及びWa=0のときには、励磁コイル26の総インピーダンスのロータ位置に応じた変動量は小さく、励磁コイル26の総インピーダンスはロータ位置に応じてほとんど変動しないとも言える。
【0050】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態に係るレゾルバ100によれば、使用ティース対30に含まれている2個のティース24には、互いに異なる磁極を発生させるように、それぞれ、励磁コイル26が互いに逆向きに巻回されているので、励磁コイル26は、異なる磁極を点対称に発生させる。ここで、励磁コイル26が発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータ17のマグネット20による磁界が重ね合わされて、合成磁界が形成される。この合成磁界により、第1出力コイル27及び第2出力コイル28に誘起電圧が発生する。励磁コイル26において点対称の位置関係にある2個の巻線部分のうち、一方の巻線部分では合成磁界が強められ、他方の巻線部分では合成磁界が弱められる。誘起電圧は、一方の巻線部分の合成磁界によって強められ、他方の巻線部分の合成磁界によって弱められる。結果として、モータロータ17の磁界によって発生したノイズとしての誘起電圧は、打ち消される。したがって、励磁コイル26が発生させる磁界に、同一磁極が点対称に配置されたモータロータ17の磁界が重ね合わされても、電気誤差が発生しない。
【0051】
また、励磁コイル26が巻回されていない不使用ティース対29が設けられているので、励磁コイル26が互いに逆向きに巻回された使用ティース対30を設けながら、励磁コイル26による磁極を周方向に沿って交互に発生させることができる。つまり、ティース数16のスロットのレゾルバが実現される。
【0052】
また、上記巻回数Waと上記巻回数Wbとが0≦Wa≦0.5Wbなる関係を満たすので、励磁コイル26の総インピーダンスのロータ位置に応じた変動を小さくすることができる。したがって、軸倍角数が2である場合でも、励磁コイルを流れる電流、励磁コイルの磁界、及びレゾルバの出力電圧のロータ位置に応じた変動を小さくし、電気誤差の発生を防止することができる。
【0053】
また、励磁コイル26が巻回されていない不使用ティース対29が設けられながら、第1出力コイル27及び第2出力コイル28が効率よく配置される。
【0054】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。上記実施形態に係るレゾルバ100の各構成要素に関して、実施の形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換、及び追加が行われてもよい。また、上記レゾルバ100の各構成要素の形状及び大きさも、実施の形態に応じて、適宜、設定されてよい。
【0055】
上記実施形態に係るレゾルバは、レゾルバロータがレゾルバステータの内側に配置されたインナーロータ型のレゾルバである。レゾルバとしては、レゾルバロータがレゾルバステータの外側に配置されたレゾルバであってもよい。この場合、レゾルバが設けられるモータも、アウターロータ型のモータとなる。
【符号の説明】
【0056】
17・・・モータロータ
20・・・マグネット
21・・・レゾルバロータ
22・・・レゾルバステータ
24・・・ティース
26・・・励磁コイル
27・・・第1出力コイル
28・・・第2出力コイル
29・・・不使用ティース対
30・・・使用ティース対
30A・・・第1使用ティース対
30B・・・第2使用ティース対
100・・・レゾルバ
【手続補正書】
【提出日】2021-09-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータロータの磁極数MがM=2m(mは偶数)の関係を満たすモータに設けられ、且つ軸倍角数が2であるバリアブルリラクタンス型レゾルバであって、
モータシャフトと同軸に取り付けられたロータと、
16個のティースを有するステータと、
16個の上記ティースに選択的に巻回された励磁コイル、第1出力コイル、及び第2出力コイルと、を備えており、
16個の上記ティースは、8個のティース対からなり、それぞれの上記ティース対は、上記ロータの軸芯に対して点対称の位置関係にある2個の上記ティースからなり、
8個の上記ティース対のうち、1個の上記ティース対は、上記励磁コイルが巻回されていない不使用ティース対であり、他の7個の上記ティース対は、上記励磁コイルが巻回されている使用ティース対であり、
上記使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、互いに異なる磁極を発生させるように、それぞれ、上記励磁コイルが互いに逆向きに巻回されており、
上記使用ティース対に含まれている上記ティースのうち、上記軸芯の周方向に沿って隣り合う2個の上記ティースには、上記励磁コイルが互いに逆向きに巻回されており、
上記不使用ティース対に対して90°の位置関係にある上記使用ティース対に含まれている上記ティースに巻回されている上記励磁コイルの巻回数Waと、上記不使用ティース対に対して90°以外の位置関係にある上記使用ティース対に含まれている上記ティースに巻回されている上記励磁コイルの巻回数Wbとは、0<Wa≦0.5Wbなる関係を満たすバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【請求項2】
7個の上記使用ティース対のうち、5個の上記使用ティース対は、上記第1出力コイルが巻回されている第1使用ティース対であり、他の2個の上記使用ティース対は、上記第2出力コイルが巻回されている第2使用ティース対であり、
上記第1使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、上記第1出力コイルが互いに逆向きに巻回されており、
上記第2使用ティース対に含まれている2個の上記ティースには、上記第2出力コイルが互いに逆向きに巻回されている請求項1に記載のバリアブルリラクタンス型レゾルバ。
【請求項3】
上記ロータが上記ステータの内側に配置されている請求項1または2に記載のバリアブルリラクタンス型レゾルバ。