(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022131609
(43)【公開日】2022-09-07
(54)【発明の名称】錠剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20220831BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220831BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220831BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220831BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
A61K31/19
A61P21/00
A61K9/20
A61K47/14
A61K47/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021030632
(22)【出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】501273945
【氏名又は名称】太陽エフ・ディ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】春藤 啓文
(72)【発明者】
【氏名】樫原 正人
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC21
4C076CC45
4C076DD41C
4C076DD46C
4C076EE53C
4C076GG12
4C076GG14
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA02
4C206KA12
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA20
4C206ZA94
(57)【要約】
【課題】打錠障害が抑制された、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩を高含有量で含む錠剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】錠剤は、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩と、XXX型トリグリセリドを含む油脂成分(油脂成分の少なくとも一部はβ型油脂)を含有する粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、ステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩を含有する錠剤であって、粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、ステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤と、を含み、
前記粉末油脂組成物が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、前記炭素数xは16~18から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記粉末油脂組成物の粒子は板状形状を有し、前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05g/cm3以上0.6g/cm3以下であり、
前記錠剤の全質量を100質量%とした場合に、
前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩の含量が、70質量%以上98質量%未満であり、
前記第1の滑沢剤の含量が、1.5質量%以上5.0質量%未満であり、
前記第2の滑沢剤の含量が、0.2質量%以上0.8質量%未満である、錠剤。
【請求項2】
前記油脂成分が、前記油脂成分の全質量を100質量%とした場合に、XXX型トリグリセリドを50質量%以上で含む、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
前記粉末油脂組成物の板状形状が、1.1以上のアスペクト比を有する、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
賦形剤をさらに含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項5】
前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩が、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-カルシウムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項6】
前記グリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項7】
3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩を含有する錠剤の製造方法であって、
錠剤原料の全質量を100質量%とした場合に、70質量%以上98質量%未満の3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩と、1.5質量%以上5.0質量%未満の粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、を混合し、造粒して造粒物を得る造粒工程、
得られた造粒物に、0.2質量%以上0.8質量%未満のステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤を添加して混合する混合工程、
前記混合工程で得られた造粒物を打錠する打錠工程、を含み、
前記粉末油脂組成物が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、前記炭素数xは16~18から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記粉末油脂組成物の粒子は板状形状を有し、前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05g/cm3以上0.6g/cm3以下である、錠剤の製造方法。
【請求項8】
前記油脂成分が、前記油脂成分の全質量を100質量%とした場合に、XXX型トリグリセリドを50質量%以上で含む、請求項7に記載の錠剤の製造方法。
【請求項9】
前記粉末油脂組成物の板状形状が、1.1以上のアスペクト比を有する、請求項7又は8に記載の錠剤の製造方法。
【請求項10】
前記造粒工程が、前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩と、前記第1の滑沢剤と、賦形剤と、を混合し、造粒して造粒物を得る工程である、請求項7~9のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
【請求項11】
前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩が、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-カルシウムである、請求項7~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記グリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項7~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤及びその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩と、XXX型トリグリセリドを含む油脂成分(油脂成分の少なくとも一部はβ型油脂)を含有する粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、ステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤と、を含むことを特徴とする錠剤、並びに当該錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸(以下、HMBと表記する)は、必須アミノ酸であるロイシンの代謝生成物であり、筋肉の合成促進や分解抑制などの効果を有することが知られている。体内での代謝によるHMBの生成量はごくわずかであるため、必要量を補うためには、食品又はサプリメントとして摂取することが望ましい。HMB含有錠剤としては、HMBを金属塩の形態で含有しているものが知られており、錠剤に含まれるHMB金属塩としては、例えば3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-カルシウム(以下、HMB-Caと表記する)、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-ナトリウム、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-カリウムなどが挙げられ、好ましくはHMB-Caが使用される。
サプリメントとしてHMBを摂取する場合、必要量のHMBを摂取するために必要なサプリメントの服用量が少ない方が簡便であることを考慮すると、錠剤1錠あたりのHMB含有量を高めることが望ましい。従来、HMB含有錠剤におけるHMBの含有量をできる限り高める試みがなされてきた。
【0003】
一般に、製造される錠剤の含有成分の量やその性質によっては、打錠障害が生じることが知られている。打錠障害としては、例えば、粉末が杵の表面に少量付着するフィルミング、粉末が杵の表面に付着することにより杵離れが悪く、一部がはがれて錠剤表面に傷が生じるスティッキング、錠剤と臼との摩擦が大きく打錠後の錠剤の排出性が悪いため、錠剤の側面に縦の傷が生じるバインディング、錠剤の上面又は下面が帽子状に剥離するキャッピングなどが挙げられる。打錠障害が生じると、製剤化が困難となったり錠剤の外観が悪くなったりするなどの問題が生じるため、打錠障害を抑制可能な成分やその配合比などについて種々の検討がなされている。HMB金属塩を含有する錠剤は、HMB金属塩の含有量が増加するほど打錠障害が生じやすくなるため、打錠障害を抑えつつ1錠あたりに含有可能なHMBの量には上限があった。
特許文献1には、硬化油脂を打錠用滑沢剤として使用することにより、原料粉体の流動性を向上させ、打錠障害を抑制可能であることが開示されている。特許文献2には、HMB-Ca含有錠剤において結晶セルロースを配合すると、打錠障害が抑制された表面に凹凸のない錠剤を製造可能であることが開示されている。特許文献2に記載の錠剤では、HMB-Caを20~70質量%まで含有することが可能である。しかしながら、当該含有量を超えると依然として打錠障害が発生するため、これよりも多くHMBを含有する錠剤は未だ製造困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-126397号公報
【特許文献2】特許第6309343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、打錠障害が抑制され、かつHMBを高含有量で含有する錠剤、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するため、HMB金属塩の錠剤において、粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される第1の滑沢剤と、ステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤と、を併用することにより打錠障害を抑制できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、以下の態様を含み得る。
【0007】
〔1〕3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩を含有する錠剤であって、粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、ステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤と、を含み、
前記粉末油脂組成物が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、前記炭素数xは16~18から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記粉末油脂組成物の粒子は板状形状を有し、前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05g/cm3以上0.6g/cm3以下であり、
前記錠剤の全質量を100質量%とした場合に、
前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩の含量が、70質量%以上98質量%未満であり、
前記第1の滑沢剤の含量が、1.5質量%以上5.0質量%未満であり、
前記第2の滑沢剤の含量が、0.2質量%以上0.8質量%未満である、錠剤。
〔2〕前記油脂成分が、前記油脂成分の全質量を100質量%とした場合に、XXX型トリグリセリドを50質量%以上で含む、前記〔1〕に記載の錠剤。
〔3〕前記粉末油脂組成物の板状形状が、1.1以上のアスペクト比を有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の錠剤。
〔4〕賦形剤をさらに含有する、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の錠剤。
〔5〕前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩が、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-カルシウムである、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の錠剤。
〔6〕前記グリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリン脂肪酸エステルである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の錠剤。
〔7〕3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩を含有する錠剤の製造方法であって、
錠剤原料の全質量を100質量%とした場合に、70質量%以上98質量%未満の3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩と、1.5質量%以上5.0質量%未満の粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、を混合し、造粒して造粒物を得る造粒工程、
得られた造粒物に、0.2質量%以上0.8質量%未満のステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤を添加して混合する混合工程、
前記混合工程で得られた造粒物を打錠する打錠工程、を含み、
前記粉末油脂組成物が、グリセリンの1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、前記炭素数xは16~18から選択される整数であり、前記油脂成分がβ型油脂を含み、前記粉末油脂組成物の粒子は板状形状を有し、前記粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度が0.05g/cm3以上0.6g/cm3以下である、錠剤の製造方法。
〔8〕前記油脂成分が、前記油脂成分の全質量を100質量%とした場合に、XXX型トリグリセリドを50質量%以上で含む、前記〔7〕に記載の錠剤の製造方法。
〔9〕前記粉末油脂組成物の板状形状が、1.1以上のアスペクト比を有する、前記〔7〕又は〔8〕に記載の錠剤の製造方法。
〔10〕前記造粒工程が、前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩と、前記第1の滑沢剤と、賦形剤と、を混合し、造粒して造粒物を得る工程である、前記〔7〕~〔9〕のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法。
〔11〕前記3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩が、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-カルシウムである、前記〔7〕~〔10〕のいずれか一項に記載の製造方法。
〔12〕前記グリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリン脂肪酸エステルである、前記〔7〕~〔11〕のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、打錠障害が抑制され、かつHMBを高含有量で含有する錠剤、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の製造例8の粉末油脂組成物(β型油脂)の外観写真である。
【
図2】本発明の製造例8の粉末油脂組成物(β型油脂)の外観写真である。
【
図3】本発明の製造比較例3の油脂組成物(α型油脂)の外観写真である。
【
図4】本発明の製造例8の粉末油脂組成物(β型油脂)の顕微鏡写真である。
【
図5】本発明の製造比較例3の油脂組成物(α型油脂)の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[錠剤]
本発明の錠剤は、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩と、XXX型トリグリセリドを含む油脂成分(油脂成分の少なくとも一部はβ型油脂)を含有する粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、ステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤と、を含むことを特徴とする。以下、本発明の錠剤を詳細に説明する。
【0011】
<HMB金属塩>
本発明の錠剤に含まれる3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸金属塩(以下、HMB金属塩と表記する)は、3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸(以下、HMBと表記する)の水素原子を任意の金属イオンと置換した化合物を指す。HMBは、3-ヒドロキシイソ吉草酸、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸、3-HIAとも呼ばれ、必須アミノ酸の一種であるロイシンからの代謝生成物であり、筋肉の合成促進や分解抑制を助けることが知られている。HMBの金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられ、好ましくはカルシウム塩、即ち3-ヒドロキシ-3-メチル酪酸-カルシウム(以下、HMB-Caと表記する)である。本発明で使用するHMB金属塩は、市販されているものを使用してもよいし、公知の化学合成法に従って製造したものを使用してもよい。
また、HMB金属塩の代わりに、HMB金属塩の水和物を用いることができる。当該HMB金属塩の水和物は、市販されているものを使用してもよいし、公知の化学合成法に従って製造したものを使用してもよい。
例えば、HMB-Caの化学合成方法としては、J.Am.Chem.Soc.80:2882-2887(1958)に記載の方法が挙げられる。市販されているHMB-Caとしては、例えば、フィトファーマ株式会社製、商品名「HMB-Ca」挙げられる。
【0012】
錠剤中のHMB金属塩の含有量は、錠剤の全質量を100質量%とした場合に、70質量%以上98質量%未満であり、好ましくは75質量%以上97.8質量%未満、より好ましくは80質量%以上97.7質量%未満、さらに好ましくは85質量%以上97.6質量%未満、とりわけ好ましくは90質量%以上97.5質量%未満である。なお、本発明の錠剤は、HMB金属塩の含有量を70質量%未満としても当然製造可能である。
【0013】
<第1の滑沢剤>
本発明の錠剤に含まれる第1の滑沢剤は、粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される。
錠剤中の第1の滑沢剤の含有量は、錠剤の全質量を100質量%とした場合に、1.5質量%以上5.0質量%未満であり、好ましくは2.0質量%以上4.5質量%未満、より好ましくは2.2質量%以上4.0質量%未満、さらに好ましくは2.5質量%以上3.5質量%未満である。
【0014】
<粉末油脂組成物>
以下、粉末油脂組成物について説明をする。
粉末油脂組成物は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂成分を含有する粉末油脂組成物であって、該炭素数xは16~18から選択される整数であり、該油脂成分がβ型油脂を含み、該粉末油脂組成物の粒子が板状形状であることを特徴とする粉末油脂組成物である。
また、粉末油脂組成物の融点は、融点50℃以上であることが好ましく、50℃~85℃であることが好ましく、55℃~75℃であることがより好ましく、60℃~70℃であることがさらにより好ましい。
【0015】
以下、粉末油脂組成物について詳細に説明をする。
<油脂成分>
粉末油脂組成物は、油脂成分を含有する。粉末油脂組成物は、当該粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合に、油脂成分を例えば50~100質量%、好ましくは70~99質量%、より好ましくは80~98質量%、さらに好ましくは85~97質量%、殊更好ましくは92~96質量%で含有する。当該油脂成分は、少なくともXXX型トリグリセリドを含み、任意にその他のトリグリセリドを含む。
上記油脂成分はβ型油脂を含む。ここで、β型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ型の結晶のみからなる油脂である。その他の結晶多形の油脂としては、β’型油脂及びα型油脂があり、β’型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるβ’型の結晶のみからなる油脂である。α型油脂とは、油脂の結晶多形の一つであるα型の結晶のみからなる油脂である。油脂の結晶には、同一組成でありながら、異なる副格子構造(結晶構造)を持つものがあり、結晶多形と呼ばれている。代表的には、六方晶型、斜方晶垂直型及び三斜晶平行型があり、それぞれα型、β’型及びβ型と呼ばれている。また、各多形の融点はα、β’、βの順に融点が高くなり、各多形の融点は、炭素数xの飽和脂肪酸残基Xの種類により異なるので、以下、表1にそれぞれ、トリパルミチン、トリステアリンである場合の各多形の融点(℃)を示す。なお、表1は、Nissim Garti et al.、”Crystallization and Polymorphism of Fats and Fatty Acids”、Marcel Dekker Inc.、1988、pp.32-33に基づいて作成した。そして、表1の作成にあたり、融点の温度(℃)は小数点第1位を四捨五入した。また、油脂の組成とその各多形の融点がわかれば、少なくとも当該油脂中にβ型油脂が存在するか否かを検出することができる。
【0016】
【0017】
これらの多形を同定する一般的な手法は、X線回折法があり、回折条件は下記のブラッグの式によって与えられる。
2dsinθ=nλ(n=1,2,3・・・)
この式を満たす位置に回折ピークが現れる。ここでdは格子定数、θは回折(入射)角、λはX線の波長、nは自然数である。短面間隔に対応する回折ピークの2θ=16~27°からは、結晶中の側面のパッキング(副格子)に関する情報が得られ、多形の同定を行なうことができる。特にトリアシルグリセロールの場合、2θ=19、23、24°(4.6Å付近、3.9Å付近、3.8Å付近)にβ型の特徴的ピークが、21°(4.2Å)付近にα型の特徴的なピークが出現する。なお、X線回折測定は、例えば、20℃に維持したX線回折装置((株)リガク、試料水平型X線回折装置UItimaIV)を用いて測定される。X線の光源としてはCuKα線(1.54Å)が最もよく利用される。
【0018】
さらに、上記油脂の結晶多形は、示差走査熱量測定法(DSC法)によっても予測することができる。例えば、β型油脂の予測は、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、品番BSC6220)によって10℃/分の昇温速度で100℃まで昇温することにより得られるDSC曲線に基づいて油脂の結晶構造を予測することにより行われる。
【0019】
ここで、油脂成分はβ型油脂を含むもの、又は、β型油脂を主成分(油脂成分の全質量を100質量%とした場合に、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上を下限とし、例えば、99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下、特に好ましくは80質量%以下、殊更好ましくは70質量%以下を上限とする範囲)として含むものあればよく、好ましい態様としては、上記油脂成分がβ型油脂から実質的になるものであり、より好ましい態様は上記油脂成分がβ型油脂からなるものであり、特に好ましい態様は、上記油脂成分がβ型油脂のみからなるものである。上記油脂成分のすべてがβ型油脂である場合とは、示差走査熱量測定法によってα型油脂及び/又はβ’型油脂が検出されない場合である。別の好ましい態様としては、上記油脂成分(又は油脂成分を含む粉末油脂組成物)が、X線回折測定において、4.5~4.7Å付近、好ましくは4.6Å付近に回折ピークを有し、表1のα型油脂及び/又はβ’型油脂の短面間隔のX線回折ピークがない、特に、4.2Å付近に回折ピークを有さない場合であり、かかる場合も上記油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断できる。本発明の更なる態様として、上記油脂成分が全てβ型油脂であることが好ましいが、その他のα型油脂やβ’型油脂が含まれていてもよい。ここで、本発明における油脂成分が「β型油脂を含む」こと及びα型油脂+β型油脂に対するβ型油脂の相対的な量の指標は、X線回折ピークのうち、β型の特徴的ピークとα型の特徴的ピークとの強度比率:[β型の特徴的ピークの強度/(α型の特徴的ピークの強度+β型の特徴的ピークの強度)](以下、ピーク強度比ともいう。)から想定できる。具体的には、上述のX線回折測定に関する知見をもとに、β型の特徴的ピークである2θ=19°(4.6Å)のピーク強度とα型の特徴的ピークである2θ=21°(4.2Å)のピーク強度の比率:19°/(19°+21°)[4.6Å/(4.6Å+4.2Å)]を算出することで上記油脂成分のβ型油脂の存在量を表す指標とし、「β型油脂を含む」ことが理解できる。本発明は、上記油脂成分が全てβ型油脂である(即ち、ピーク強度比=1)ことが好ましいが、例えば、該ピーク強度比の下限値が、例えば0.4以上、好ましくは、0.5以上、より好ましくは、0.6以上、さらに好ましくは、0.7以上、特に好ましくは、0.75以上、殊更好ましくは0.8以上であることが適当である。ピーク強度が0.4以上であれば、β型油脂を主成分が50質量%超であるとみなすことができる。該ピーク強度比の上限値は1であることが好ましいが、0.99以下、0.98以下、0.95以下、0.93以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下等であってもかまわない。ピーク強度比は、上記下限値及び上限値のいずれか若しくは任意の組み合わせであり得る。
【0020】
<XXX型トリグリセリド>
本発明の油脂成分は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む。当該XXX型トリグリセリドは、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各飽和脂肪酸残基Xは互いに同一である。ここで、当該炭素数xは16~18から選択される整数であり、好ましくは18である。
具体的な飽和脂肪酸残基Xとしては、好ましくは、パルミチン酸及びステアリン酸であり、より好ましくは、ステアリン酸である。
当該XXX型トリグリセリドの含有量は、油脂成分の全質量を100質量%とした場合、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上を下限とし、例えば、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下を上限とする範囲である。XXX型トリグリセリドは1種類又は2種類以上用いることができ、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類が用いられる。XXX型トリグリセリドが2種類以上の場合は、その合計値がXXX型トリグリセリドの含有量となる。
【0021】
<その他のトリグリセリド>
本発明の油脂成分は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。合成油脂としては、トリカプリル酸グリセリル等が挙げられる。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。本発明の油脂成分中の全トリグリセリドを100質量%とした場合、その他のトリグリセリドは、1質量%以上、例えば、5~50質量%程度含まれていても問題はない。その他のトリグリセリドの含有量は、例えば、0~30質量%、好ましくは1~18質量%、より好ましくは2~15質量%、更に好ましくは3~8質量%である。
【0022】
<その他の成分>
粉末油脂組成物は、上記トリグリセリド等の油脂成分の他、任意に乳化剤、香料、着色料等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、粉末油脂組成物の全質量を100質量%とした場合、0~70質量%、好ましくは0~65質量%、より好ましくは0~30質量%である。
但し、本発明の好ましい粉末油脂組成物は、実質的に上記油脂成分のみからなることが好ましく、かつ、油脂成分は、実質的にトリグリセリドのみからなることが好ましい。また、「実質的に」とは、粉末油脂組成物中に含まれる油脂成分以外の成分または油脂成分中に含まれるトリグリセリド以外の成分が、粉末油脂組成物または油脂成分を100質量%とした場合、例えば、0~15質量%、0.1~10質量%、0.3~5質量%であることを意味する。
【0023】
<粉末油脂組成物の特性>
粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体で、粒子は、板状形状の形態を有している。
本発明の錠剤が含有する粉末油脂組成物の平均粒径(有効径)は、例えば、好ましくは0.5~200μm、より好ましくは1~160μm、さらに好ましくは5~140μm、殊更好ましくは、8~120μmである。
本発明における平均粒径(有効径)は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて、湿式測定により測定した値(d50:粒度分布における積算値50%の粒径の測定値)である。
有効径とは、測定対象となる結晶の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザー回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状形状であっても球状形状であっても同じ原理で測定することができる。
【0024】
ここで、板状形状は、アスペクト比が1.1以上であることが好ましく、より好ましくは、1.2以上のアスペクト比であり、さらに好ましくは1.2~3.0、特に好ましくは、1.3~2.5、殊更好ましくは1.4~2.0のアスペクト比である。なお、ここでいうアスペクト比とは、粒子図形に対して、面積が最小となるように外接する長方形で囲み、その長方形の長辺の長さと短辺の長さの比と定義される。また、粒子が球状形状の場合は、アスペクト比は1.1より小さくなる。従来技術である、極度硬化油等の常温で固体脂含量の高い油脂を溶解し直接噴霧する方法では、粉末油脂組成物の粒子が表面張力によって、球状形状となり、アスペクト比は1.1未満となる。そして、前記アスペクト比は、例えば、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などによる直接観察により、任意に選択した粒子について、その長軸方向の長さおよび短軸方向の長さを計測することによって、計測した個数の平均値として求めることができる。
【0025】
粉末油脂組成物の特徴は、ゆるめ嵩密度を用いて表現することも可能である。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)は、粉体の質量を、その粉体の占める嵩体積で割った値、すなわち、単位嵩体積当たりの粉体質量である。
ゆるめ嵩密度の測定は、パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン株式会社製)を使用して測定することができる。パウダテスタPT-Xは注入法を採用しており、正弦波の振動により容器へ空気を含んだ粉粒体を自由落下させることにより測定を行う。
具体的には、直径7.5cmの目開き1.7mmの円形の篩に粉末サンプルを200~300cm3供し、振幅1.5mmで振動させ、篩から落下させる(正弦波の振動による自由落下)。27cmの高さから自由落下したサンプルは、下に設置してあるステンレス製100cm3カップ(内径5.04cm×高さ5cm)に注入し、サンプルがカップから溢れるまで注入した後、振動を止めた。その後、ブレードでカップ上の余分なサンプルをカップの面に沿ってすり切り、受器の内容積(100cm3)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を算出する。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3)
ゆるめ嵩密度は、1つのサンプルについて3回測定し、その平均値をそのサンプルのゆるめ嵩密度の値とするのが好ましい。
【0026】
粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、例えば実質的に油脂成分のみからなる場合、好ましくは0.05~0.6g/cm3であり、より好ましくは0.1~0.4g/cm3であり、さらにより好ましくは0.2~0.3g/cm3である。
【0027】
次に、粉末油脂組成物の製造方法について説明をする。
粉末油脂組成物は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を溶融状態とし、特定の冷却温度に保ち、冷却固化することにより、噴霧やミル等の粉砕機による機械粉砕等特別の加工手段を採らなくても、粉末状の油脂組成物(粉末油脂組成物)を得ることができる。より具体的には、(a)上記XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を準備し、任意に工程(b)として、工程(a)で得られた油脂組成物原料を加熱し、前記油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂組成物原料を得、さらに(d)前記油脂組成物原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子の形状が板状である粉末油脂組成物を得る。なお、冷却後に得られる固形物に対して、ハンマーミル、カッターミル、微粉砕機等、公知の粉砕加工手段を適用して、該粉末油脂組成物を製造することもできる。
【0028】
さらに詳細に、粉末油脂組成物の製造方法について説明をする。
粉末油脂組成物は、以下の工程、
(a)XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を準備する工程、
(b)工程(a)で得られた油脂組成物原料を任意に加熱等し、前記油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドを溶解して溶融状態の前記油脂組成物原料を得る任意の工程、
(d)前記油脂組成物原料を冷却固化して、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である粉末油脂組成物を得る工程、
を含む方法によって製造することができる。
また、上記工程(b)と(d)の間に、工程(c)として粉末生成を促進するための任意工程、例えば(c1)シーディング工程、(c2)テンパリング工程、及び/又は(c3)予備冷却工程を含んでいてもよい。さらに、上記工程(d)では、粉砕処理をしてもよい。
さらに、上記工程(d)では、冷却後に得られる空隙を有する固形物に衝撃(粉砕する、ほぐす、振動させる、篩にかける等)を加えることにより、粉末状の油脂組成物を得ることもできる。
以下、上記工程(a)~(d)について説明する。
【0029】
(a)原料準備工程
工程(a)で準備されるXXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料は、グリセリンの1位~3位に炭素数xの飽和脂肪酸残基Xを有する1種以上のXXX型トリグリセリドを含む通常のXXX型トリグリセリド等の油脂の製造方法に基づいて製造され、もしくは容易に市場から入手され得る。ここで、上記炭素数x及び飽和脂肪酸残基Xで特定されるXXX型トリグリセリドは、最終的に得られる目的の油脂成分のものと結晶多形以外の点で同じである。当該原料にはβ型油脂が含まれていてもよく、例えば、β型油脂の含有量が0.1質量%以下、0.05質量%以下、又は0.01質量%以下含んでいてもよい。但し、β型油脂は、当該原料を加熱等により溶融状態にすることにより消失するので、当該原料は溶融状態の原料であってもよい。当該原料が、例えば溶融状態である場合に、β型油脂を実質的に含まないことは、XXX型トリグリセリドに限らず、実質的に全ての油脂成分がβ型油脂ではない場合も意味し、β型油脂の存在は、上述したX線回折測定によりβ型油脂に起因する回折ピーク、示差走査熱量測定法によるβ型油脂の確認等によって確認することができる。「β型油脂を実質的に含まない」場合のβ型油脂の存在量は、X線回折ピークのうち、β型の特徴的ピークとα型の特徴的ピークとの強度比率[β型の特徴的ピークの強度/(α型の特徴的ピークの強度+β型の特徴的ピークの強度)](ピーク強度比)から想定できる。上記油脂組成物原料の当該ピーク強度比は、例えば0.2以下であり、好ましくは、0.15以下であり、より好ましくは、0.10以下である。油脂組成物原料には、上述したとおりのXXX型トリグリセリドを1種類又は2種以上含んでいてもよく、好ましくは1種類又は2種類であり、より好ましくは1種類である。
具体的には、例えば、上記XXX型トリグリセリドは、脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリンを用いた直接合成によって製造することができる。XXX型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Xの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
XXX型トリグリセリドは前述の(i)~(iii)のいずれの方法によっても製造できるが、製造の容易さの観点から、(i)直接エステル合成又は(ii)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(i)直接エステル合成がより好ましい。
【0030】
XXX型トリグリセリドを(i)直接エステル合成によって製造するには、製造効率の観点から、グリセリン1モルに対して脂肪酸Xまたは脂肪酸Yを3~5モルを用いることが好ましく、3~4モルを用いることがより好ましい。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成における反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、例えば、120℃~300℃が好ましく、150℃~270℃がより好ましく、180℃~250℃がさらに好ましい。反応を180~250℃で行うことで、特に効率的にXXX型トリグリセリドを製造することができる。
【0031】
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、エステル化反応を促進する触媒を用いても良い。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001~1質量%程度であることが好ましい。
XXX型トリグリセリドの(i)直接エステル合成においては、反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物をさらに精製することができる。
【0032】
上記油脂組成物原料中に含まれるXXX型トリグリセリドの量は、例えば、当該原料中に含まれる全トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、100~50質量%、好ましくは95~55質量%、より好ましくは90~60質量%、さらに好ましくは85~65質量%である。
【0033】
<その他のトリグリセリド>
XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料となるその他のトリグリセリドとしては、上記XXX型トリグリセリドの他、本発明の効果を損なわない限り、各種トリグリセリドを含めてもよい。その他のトリグリセリドとしては、例えば、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの1つが脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリド、上記XXX型トリグリセリドの飽和脂肪酸残基Xの2つが脂肪酸残基Yに置換したXY2型トリグリセリド等を挙げることができる。
上記その他のトリグリセリドの量は、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0~50質量%、好ましくは5~45質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~35質量%である。
【0034】
また、本発明の油脂組成物原料としては、上記XXX型トリグリセリドを直接合成する代わりに、天然由来のトリグリセリド組成物に対し水素添加、エステル交換又は分別を行ったものを使用してもよい。天然由来のトリグリセリド組成物としては、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、パームステアリン及びこれらの混合物等を挙げることができる。特に、これらの天然由来のトリグリセリド組成物の硬化油、部分硬化油、極度硬化油が好ましいものとして挙げられる。さらに好ましくは、ハードパームステアリン、ハイオレイックヒマワリ油極度硬化油、菜種極度硬化油、大豆極度硬化油が挙げられる。
【0035】
さらに、本発明の油脂組成物原料としては、市販されている、トリグリセリド組成物又は合成油脂を挙げることができる。例えば、トリグリセリド組成物としては、ハードパームステアリン(日清オイリオグループ株式会社製)、菜種極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)、大豆極度硬化油(横関油脂工業株式会社製)を挙げることができる。また、合成油脂としては、トリパルミチン(東京化成工業株式会社製)、トリステアリン(シグマアルドリッチ製)、トリステアリン(東京化成工業株式会社製)を挙げることができる。
その他、パーム極度硬化油は、XXX型トリグリセリドの含量が少ないので、トリグリセリドの希釈成分として使用できる。
【0036】
<その他の成分>
上記油脂組成物原料としては、上記トリグリセリドの他、任意に部分グリセリド、脂肪酸、抗酸化剤、乳化剤、水などの溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、XXX型トリグリセリドの全質量を100質量%とした場合、0.1~5質量%、好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.5~1質量%である。
【0037】
上記油脂組成物原料は、成分が複数含まれる場合、任意に混合してもよい。混合は、均質な反応基質が得られる限り公知のいかなる混合方法を用いてもよいが、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー等で行うことができる。
当該混合は、必要に応じて加熱下で混合してもよい。加熱は、後述の工程(b)における加熱温度と同程度であることが好ましく、例えば、50~120℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃、さらに好ましくは80℃で行われる。
【0038】
(b)溶融状態の前記油脂組成物を得る工程
上記(d)工程の前に、上記工程(a)で準備された油脂組成物原料は、準備された時点で溶融状態にある場合、加熱せずにそのまま冷却されるが、準備された時点で溶融状態にない場合は、任意に加熱され、該油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドを融解して溶融状態の油脂組成物原料を得る。
ここで、油脂組成物原料の加熱は、上記油脂組成物原料中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特にXXX型トリグリセリドを融解できる温度、例えば、70~200℃、好ましくは、75~150℃、より好ましくは80~100℃であることが適当である。また、加熱は、例えば、0.1~3時間、好ましくは、0.3~2時間、より好ましくは0.5~1時間継続することが適当である。
【0039】
(d)溶融状態の油脂組成物を冷却して粉末油脂組成物を得る工程
上記工程(a)又は(b)で準備された溶融状態の油脂組成物原料は、さらに冷却固化されて、β型油脂を含有し、その粒子形状が板状である粉末油脂組成物を形成する。
ここで、「溶融状態の油脂組成物原料を冷却固化」するためには、冷却温度の上限値として、溶融状態の油脂組成物原料を、当該油脂組成物原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度に保つことが必要である。「油脂組成物原料に含まれる油脂成分のβ型油脂の融点より低い温度」とは、例えば、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、β型油脂の融点は74℃であるので(表1)、当該融点より1~30℃低い温度(即ち44~73℃)、好ましくは当該融点より1~20℃低い温度(即ち54~73℃)、より好ましくは当該融点より1~15℃低い温度(即ち59~73℃)、特に好ましくは、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃低い温度である。
このような冷却温度以上とするのは、XXX型トリグリセリドを含有するβ型油脂を得るために、当該油脂の結晶化の際、冷却温度をβ型油脂以外のα型油脂やβ’型油脂が結晶化しない温度に設定する必要があるためである。冷却温度は、主にXXX型トリグリセリドの分子の大きさに依存するので、炭素数xと最適な冷却温度の下限値との間には一定の相関関係があることが理解できる。
例えば、油脂組成物原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドである場合、冷却温度の下限値は50.8℃以上となる。従って、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドの場合、「溶融状態の油脂組成物原料を冷却固化」する温度は、50.8℃以上72℃以下がより好ましいこととなる。
また、XXX型トリグリセリドが2種以上の混合物である場合は、炭素数xが小さい方の冷却温度に合わせてその下限値を決定することができる。例えば、油脂組成物原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が16のパルミチン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドと炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドとの混合物である場合、冷却温度の下限値は小さい方の炭素数16に合わせて37.6℃以上となる。
【0040】
別の態様として、上記冷却温度の下限値は、XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料の、当該β型油脂に対応するα型油脂の融点以上の温度であることが適当である。例えば、油脂組成物原料に含まれるXXX型トリグリセリドが、炭素数が18のステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドである場合、当該ステアリン酸残基を3つ有するXXX型トリグリセリドのα型油脂の融点は55℃であるから(表1)、かかる場合の「溶融状態の油脂組成物原料を冷却固化」する温度は、55℃以上72℃以下が好ましいこととなる。
【0041】
さらに別の態様として、溶融状態にある油脂組成物原料の冷却は、xが16のときは、好ましくは36~66℃、より好ましくは44~64℃、更に好ましくは52~62℃であり、xが17又は18のときは、好ましくは50~72℃、より好ましくは54~70℃、更に好ましくは58~68℃である。上記最終温度において、例えば、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、更に好ましくは6時間以上であって、好ましくは2日間以下、より好ましくは24時間以下、更に好ましくは12時間以下、静置することが適当である。
【0042】
(c)粉末生成促進工程
さらに、工程(d)の前、上記工程(a)又は(b)と(d)との間に、(c)粉末生成を促進するための任意工程として、工程(d)で使用する溶融状態の油脂組成物原料に対し、シーディング法(c1)、テンパリング法(c2)及び/又は(c3)予備冷却法による処理を行ってもよい。これらの任意工程(c1)~(c3)は、いずれか単独で行ってもよいし、複数の工程を組み合わせて行ってもよい。ここで、工程(a)又は(b)と工程(d)との間とは、工程(a)又は(b)中、工程(a)又は(b)の後であって工程(d)の前、工程(d)中を含む意味である。
シーディング法(c1)及びテンパリング法(c2)は、粉末油脂組成物の製造において、溶融状態にある油脂組成物原料をより確実に粉末状とするために、最終温度まで冷却する前に、溶融状態にある油脂組成物原料を処置する粉末生成促進方法である。
ここで、シーディング法(c1)とは、粉末の核(種)となる成分を溶融状態にある油脂組成物原料の冷却時に少量添加して、粉末化を促進する方法である。具体的には、例えば、工程(b)で得られた溶融状態にある油脂組成物原料に、当該油脂組成物原料中のXXX型トリグリセリドと炭素数が同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を核(種)となる成分として準備する。この核となる油脂粉末を、溶融状態にある油脂組成物原料の冷却時、当該油脂組成物原料の温度が、例えば、最終冷却温度±0~+10℃、好ましくは+5~+10℃の温度に到達した時点で、当該溶融状態にある油脂組成物原料100質量%に対して0.1~1質量%、好ましくは0.2~0.8質量%添加することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
また、テンパリング法(c2)とは、溶融状態にある油脂組成物原料の冷却において、最終冷却温度で静置する前に一度、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば5~20℃低い温度、好ましくは7~15℃低い温度、より好ましくは10℃程度低い温度に、好ましくは10~120分間、より好ましくは30~90分間程度冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
さらに、予備冷却法(c3)とは、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物原料を、工程(d)にて冷却する前に、前記XXX型トリグリセリドを含む油脂組成物原料を準備した時の温度と前記油脂組成物原料の冷却時の冷却温度との間の温度で一旦冷却する方法、言い換えれば、工程(a)又は(b)の溶融状態の温度よりも低く、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で一旦予備冷却する方法である。(c3)予備冷却法に続いて、工程(d)の油脂組成物原料の冷却時の冷却温度で冷却することが行われる。工程(d)の冷却温度より高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2~40℃高い温度、好ましくは3~30℃高い温度、より好ましくは4~30℃高い温度、さらに好ましくは5~10℃程度高い温度であり得る。前記予備冷却する温度を低く設定すればするほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間を短くすることができる。すなわち、予備冷却法とは、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げるだけで油脂組成物の粉末化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
【0043】
(衝撃を与えることによる粉末化)
工程(d)の冷却後に得られる空隙を有する固形物は、溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固体物であるが、この空隙を有する固体物は容易に崩壊して粉末状の物質になるため、特に粉末化工程を設けなくても、容器に充填する充填工程や運搬工程で、空隙が崩壊して粉末状の物質にすることができる。
また、工程(d)で得られた空隙を有する固体物に、衝撃を与えて粉末化することもできる。衝撃を与える方法は特に限定されないが、例えば、通常の粉砕機(ハンマーミル、カッターミル、微粉砕機等)を用いて空隙を有する固体物を粉砕する方法、空隙を有する固体物をスパチュラ、ゴムベラ、スコップ等でほぐす方法、容器に入れた空隙を有する固体物を振動させる方法、空隙を有する固体物を篩に掛けて衝撃を加える方法等が挙げられる。
また、これらの粉砕をする前に、空隙を有する固形物を解砕機で解砕しても良い。
このようにして、本発明に使用する粉末油脂組成物を製造することができる。
【0044】
<グリセリン脂肪酸エステル>
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの1位~3位のうち1又は2つに、脂肪酸がエステル結合した分子、すなわち、モノグリセライドであってもよい。また、グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンが重合したポリグリセリンのヒドロキシ基の1つ以上に脂肪酸がエステル化した、ポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。
本発明に使用するグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセライドよりもポリグリセリン脂肪酸エステルの方が好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルは、市販品を使用することができる。
モノグリセライドの市販品としては、例えば、グリセリンオレイン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「エマルジーOL-100H」)、グリセリンステアリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「エマルジーMS」)等が挙げられる。
また、ポリグリセリン脂肪酸エステルの市販品としては、例えば、トリグリセリンベヘン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名:ポエムTR-FB)、テトラグリセリンベヘン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムJ-46B」)、デカグリセリンオレイン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムJ-0381V」)、ジグリセリンミリスチン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムDM-100」)、ジグリセリンパルミチン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムDP-95RF」)、ジグリセリンステアリン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムDS-100A」)、ジグリセリンオレイン酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムDO-100V」)等が挙げられる。この中でも、トリグリセリンベヘン酸エステルが特に好ましい。
【0045】
<第2の滑沢剤>
本発明の錠剤に含まれる滑沢剤Bは、ステアリン酸及びその塩から選択される。ステアリン酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等を挙げることができ、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
ステアリン酸マグネシウムは、市販品を使用することができる。ステアリン酸マグネシウムの市販品としては、三栄源エフエフアイ株式会社製、商品名「ステアリン酸マグネシウム」等が挙げられる。
錠剤中の第2の滑沢剤の含有量は、錠剤の全質量を100質量%とした場合に、好ましくは0.2質量%以上0.8質量%未満であり、好ましくは0.3質量%以上0.75質量%未満、より好ましくは0.4質量%以上0.7質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上0.65質量%未満である。
【0046】
<賦形剤>
本発明の錠剤は、賦形剤を含有していてもよい。賦形剤としては、錠剤に一般的に添加されるものであれば特に限定されないが、例えば、乳糖、デンプン、デキストリン、白糖、マルチトール、トレハロース、シクロデキストリン、還元麦芽糖水飴、結晶セルロースなどが挙げられ、好ましくは還元麦芽糖水飴である。賦形剤の含有量は、錠剤の全質量を100質量%とした場合に、例えば0~40質量%、3~35質量%、5~30質量%である。
また、本発明の錠剤は、賦形剤として結晶セルロースを含有していてもよいが、含有していなくてもよい。結晶セルロースを後述の二酸化ケイ素などの流動化剤とともに錠剤に含有させると、両者の相互作用により打錠障害が効果的に抑制されることが知られているが、本発明の錠剤においては結晶セルロース及び流動化剤を含有していなくても、打錠障害を抑制可能である。
【0047】
<流動化剤>
本発明の錠剤は、錠剤に一般的に添加される流動化剤を含有していてもよいが、含有していなくてもよい。流動化剤としては、例えば二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、及びリン酸水素カルシムなどが挙げられる。流動化剤を添加することにより粉末の流動性が向上し、打錠障害が抑制されることが一般的に知られているが、本発明の錠剤は、流動化剤を含有していなくても打錠障害を抑制可能である。
【0048】
<その他の成分>
本発明の錠剤は、錠剤に一般的に添加されるその他の成分を添加していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、崩壊剤、結合剤、光沢剤、コーティング剤、界面活性剤(上述したグリセリン脂肪酸エステルを除く)、油脂(上述した粉末油脂組成物を除く)、水溶性高分子、矯味剤、香料、着色剤、甘味料、高甘味度甘味料などが挙げられる。これらの添加剤の合計含有量は、錠剤の全質量を100質量%とした場合に、例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0049】
崩壊剤としては、寒天、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類;クロスポビドン、クロスポビドンコポリマー等の合成高分子等が挙げられる。
【0050】
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖等の糖類;マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類;ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、グルコマンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類;結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類;アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類;ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類;リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機化合物類等が挙げられる。
【0051】
光沢剤としては、カルナバロウ、ミツロウ等が挙げられる。
【0052】
コーティング剤としては、セラック、ビール酵母細胞壁、トウモロコシ蛋白;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類等が挙げられる。
【0053】
界面活性剤(上述したグリセリン脂肪酸エステルを除く)としては、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンサンモノラウレート、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリド、モノオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、モノオキシエチレンソルビタンモノステアレート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0054】
油脂(上述した粉末油脂組成物を除く)としては、パーム油、大豆、菜種、ひまわり油、綿実油、紅花油、米油、オリーブ油、ひまし油等を水添処理した硬化油等が挙げられる。
【0055】
水溶性高分子としては、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン糊等が挙げられる。
【0056】
矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1-メントール等が挙げられる。
【0057】
香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等が挙げられる。
【0058】
着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビン等が挙げられる。
【0059】
甘味料及び高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、サッカリン、ギリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等が挙げられる。
【0060】
本発明の錠剤は、製造途中で水が添加されるものとしてもよい。水は、造粒工程又は混合工程においてバインダー液として添加することができる。
バインダー液は、水のみでも良いが、水とエタノールを混合したエタノール水溶液やエタノールでも良い。エタノール水溶液中のエタノール含量としては、好ましくは30~99%であり、より好ましくは40~97%であり、さらに好ましくは50~95%である。
バインダー液として錠剤に添加される水の量は、錠剤の全質量100質量%とした場合に、例えば3.0質量%以下、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.6質量%以下である。なお、本明細書においては、錠剤の全質量にはバインダー液の質量、即ちバインダー液に含まれる水、エタノール水溶液、又はエタノールの質量が含まれないものとする。
錠剤の製造過程においてバインダー液として添加された水、エタノール水溶液、又はエタノールは、打錠前の造粒工程又は混合工程において造粒物を乾燥させる際に揮発する。したがって、製造途中で水、エタノール水溶液、又はエタノールが添加されたとしても、錠剤原料中の各成分の配合比と、最終製品(錠剤)中の各成分の比率は、ほとんど変化しない。
【0061】
[錠剤の特性]
本発明の錠剤は、HMB含量が高含量であっても打錠障害を起こさず、打錠されることが可能である。一般的に、錠剤中のHMB金属塩の含有量が高いと打錠障害が起こりやすいことが知られている。従来の錠剤においては、打錠障害を抑制可能なHMB金属塩の含有量の最大値は、錠剤の全質量を100質量%とした場合に、例えば70質量%である。また、一般的には、結晶セルロースを二酸化ケイ素などの流動化剤等と併用することにより打錠障害を抑制して、HMB金属塩の含有量を高められることが知られている。
一方で、本発明の錠剤は、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤とを併用することにより、HMB金属塩を高含有量で含む錠剤を、打錠障害を抑制して製造することができる。本発明の錠剤においては、HMB金属塩の含有量を70質量%以上98質量%未満まで上昇させることが可能である。また、本発明の錠剤においては、結晶セルロース及び二酸化ケイ素を含有しなくても十分に打錠障害を抑制し、上記したHMB金属塩含有量の錠剤を製造可能である。
本明細書において使用される打錠障害としては、例えば、粉末が杵の表面に少量付着するフィルミング、粉末が杵の表面に付着することにより杵離れが悪く、一部がはがれて錠剤表面に傷が生じるスティッキング、錠剤と臼との摩擦が大きく打錠後の錠剤の排出性が悪いため、錠剤の側面に縦の傷が生じるバインディング、錠剤の上面又は下面が帽子状に剥離するキャッピングなどを挙げることができる。
【0062】
本発明の錠剤の形状は、特に限定されないが、丸錠、三角錠、異形錠などが好ましい。本発明の錠剤の大きさは特に限定されないが、当該錠剤の質量は250~500mgが好ましく、300~450mgがより好ましく、厚みは4~7mmが好ましく、5~6mmがより好ましい。本発明の錠剤の硬度は、7~20kgfが好ましく、10~17kgfがより好ましい。
【0063】
本発明の錠剤は、保湿性、保存安定性などの向上のため、例えば、高分子化合物などの適切なコーティング剤により薄く被覆されたフィルムコーティング錠であってもよく、糖又は糖アルコールを含むコーティング剤に被覆された糖衣錠であってもよい。
【0064】
[錠剤の製造方法]
本発明の錠剤は、以下の工程、
(a)錠剤原料の全質量を100質量%とした場合に、70質量%以上98質量%未満のHMB金属塩と、1.5質量%以上5.0質量%未満の粉末油脂組成物及びグリセリン脂肪酸エステルから選択される1以上の第1の滑沢剤と、を混合し、造粒して造粒物を得る造粒工程、
(b)得られた造粒物に、0.2質量%以上0.8質量%未満のステアリン酸及びその塩から選択される第2の滑沢剤を添加して混合する混合工程、
(c)前記混合工程で得られた造粒物を打錠する打錠工程、
を含む方法によって製造することができる。
ここで、錠剤原料の全質量は、上記工程(a)~(c)において混合される各錠剤原料の質量をすべて合計したものを指すが、ただしバインダー液の質量、即ちバインダー液中の水、エタノール水溶液、又はエタノールの質量を含まないものとする。
以下、上記工程(a)~(c)について説明する。
【0065】
(a)造粒工程
工程(a)にいては、混合されるHMB金属塩は、錠剤原料の全量を100質量%とした場合に、70質量%以上98質量%未満、好ましくは75質量%以上97.8質量%未満、より好ましくは80質量%以上97.7質量%未満、さらに好ましくは85質量%以上97.6質量%未満、とりわけ好ましくは90質量%以上97.5質量%未満で混合される。また、第1の滑沢剤は、錠剤原料の全量を100質量%とした場合に、1.5質量%以上5.0質量%未満、好ましくは2.0質量%以上4.5質量%未満、より好ましくは2.2質量%以上4.0質量%未満、さらに好ましくは2.5質量%以上3.5質量%未満で混合される。
また、工程(a)においては、上述したその他の成分の他、水(バインダー液)、エタノール水溶液(バインダー液)、又はエタノール(バインダー液)を混合することができる。添加剤は、錠剤原料の全量を100質量%とした場合に、合計で例えば30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下で混合される。
バインダー液として混合される水は、錠剤原料の全量を100質量%とした場合に、例えば1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下で混合される。
ここで、添加剤として二酸化ケイ素及び結晶セルロースを混合してもよいし、混合しなくてもよい。
造粒工程における造粒方法としては、例えば精製水、エタノール等を用いた湿式造粒法、又は乾式造粒法などを挙げることができる。造粒工程には、特に限定されないが、例えば流動層造粒機、転動攪拌造粒機、押し出し造粒機などを用いることができる。
【0066】
(b)混合工程
工程(b)においては、工程(a)により得られた造粒物に第2の滑沢剤を混合する。即ち、第2の滑沢剤は、工程(a)においてHMB金属塩及び第1の滑沢剤とともに造粒するのではなく、HMB金属塩と第1の滑沢剤とが混合された造粒物に混合する。理論に限定されないが、HMB金属塩、第1の滑沢剤及び第2の滑沢剤を同時に混合すると、混合物の内側に第2の滑沢剤が取り込まれるが、一方で第2の滑沢剤を後から添加することにより、混合物の外側に第2の滑沢剤が配置されるため、第2の滑沢剤の滑沢性が十分に発揮され、打錠後の錠剤の離型性が高くなり、打錠障害をより効果的に抑制できると考えられる。
混合される第2の滑沢剤は、錠剤原料の全量を100質量%とした場合に、0.2質量%以上0.8質量%未満、好ましくは0.3質量%以上0.75質量%未満、より好ましくは0.4質量%以上0.7質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上0.65質量%未満で混合される。
混合工程における第2の滑沢剤の混合は、特に限定されないが、例えばV型混合機、タンブラー混合機などの混合機、又は高速攪拌造粒機、流動層造粒機、押し出し造粒機、ローラーコンパクターなどの造粒機を用いて行うことができる。
【0067】
(c)打錠工程
工程(c)においては、工程(b)により得られた混合物を、打錠機により圧縮成型して錠剤を得る。打錠工程において使用する打錠機は、特に限定されないが、例えば単発式打錠機、ロータリー式打錠機などを用いることができる。圧縮成型の圧力は、例えば、好ましくは1000~5000kgf、より好ましくは1500~4000kgf、さらに好ましくは2000~3000kgfである。本発明の錠剤は、打錠工程において圧縮成形されたそのままの素錠であってもよく、当該素錠に各種コーティングを施した、糖衣錠やフィルムコーティング錠などのコーティング錠であってもよい。錠剤のコーティングに使用されるコーティング剤やコーティング方法は特に限定されず、一般的に用いられる方法に従って行うことができる。
【実施例0068】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0069】
[粉末油脂組成物の分析方法]
本発明に使用する粉末油脂組成物の各種分析について、以下に説明をする。
・トリグリセリド組成
トリグリド組成は、ガスクロマトグラフィー分析により行った。以下に測定条件を示す。
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)~(15℃/min)~370℃(4min hold)
・X線回折測定
X線回折装置UltimaIV(株式会社リガク社製)を用いて、CuKα(λ=1.542Å)を線源とし、Cu用フィルタ使用、出力1.6kW、操作角0.96~30.0°、測定速度2°/分の条件で測定した。この測定により、XXX型トリグリセリドを含む油脂成分におけるα型油脂、β’型油脂、及びβ型油脂の存在を確認した。4.6Å付近のピークのみを有し、4.1~4.2Å付近のピークを有しない場合は、油脂成分のすべてがβ型油脂であると判断できる。
したがって、上記X線回折測定の結果から、ピーク強度比=[β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å))/(α型の特徴的ピークの強度(2θ=21°(4.2Å))+β型の特徴的ピークの強度(2θ=19°(4.6Å)))]を算出し、その値をβ型油脂の存在量を表す指標として使用した。
【0070】
・アスペクト比
走査型電子顕微鏡S-3400N(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により直接観察し、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製 Mac-View)を用いて、任意に選択した粒子について、その長軸方向の長さおよび短軸方向の長さを計測し、計測した個数の平均値として測定した。
【0071】
・平均粒径(d50)
粉末油脂組成物、及び粉末油脂の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)で、レーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)基づいて、湿式測定により測定した。
具体的には、粒度分布測定装置に極小容量循環器(日機装株式会社製、装置名:USVR)を取り付け、分散溶媒として水を循環させた。また、100mlビーカーに試料を0.06g、中性洗剤を0.6g入れ、スパチュラで混合し、混合後に水を30ml加え、超音波洗浄器(アイワ医科工業株式会社製、装置名:AU-16C)に1分間供したものを滴下、循環させて測定した。得られた粒度分布における積算値50%の粒径の測定値(d50)を平均粒径とした。
【0072】
・ゆるめ嵩密度
ゆるめ嵩密度の測定は、パウダテスタPT-X(ホソカワミクロン株式会社製)を使用して測定した。パウダテスタPT-Xは注入法を採用しており、正弦波の振動により容器へ空気を含んだ粉粒体を自由落下させることにより測定を行った。
具体的には、直径7.5cmの目開き1.7mmの円形の篩に粉末サンプルを後述のカップよりも十分に多い量(200cm3以上)供し、振幅1.5mmで振動させ、篩から落下させた(正弦波の振動による自由落下)。27cmの高さから自由落下したサンプルは、篩の下に設置してあるステンレス製100cm3カップ(内径5.04cm×高さ5cmの円柱型カップ)に注入し、サンプルがカップから溢れるまで注入した後、振動を止めた。その後、ブレードでカップ上の余分なサンプルをカップの面に沿ってすり切り、受器の内容積(100cm3)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を算出した。
ゆるめ嵩密度(g/cm3)=A(g)/100(cm3)
ゆるめ嵩密度は、1つのサンプルについて3回測定し、その平均値をそのサンプルのゆるめ嵩密度の値とした。
・顕微鏡観察、顕微鏡写真撮影
粉末油脂組成物の粒子及び粉末油脂の粒子の様子を、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-8800(株式会社キーエンス製)で観察し、粒子を顕微鏡で写真撮影した。
・融点
示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
【0073】
[粉末油脂組成物の製造]
以下に、粉末油脂組成物の製造例を示すが、いずれの粉末油脂組成物も、錠剤の製造に使用することができる。
【0074】
(製造例1):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、ピーク強度比:0.03、フレーク状の菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)2kgをステンレス容器(530mm×325mm×100mm)に入れ、恒温室(W5100×H2100×D4050、エスペック株式会社)内のスチールラック(W760×D460×H1795mm)に静置し、80℃にて10時間維持して完全に融解し、60℃にて16時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)まで冷却した。得られた固形物を解砕機で解砕し、解砕物を得た。次に、微粉砕機を用いて、得られた解砕物を室温(25℃)の環境下で粉砕し、粉砕品を得た。得られた粉砕品を篩(30mesh)で処理をし、篩を通過した粉末を回収することで、β型油脂を含有する粉末油脂組成物(融点:67.4℃、ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比1.6、平均粒径8.9μm、ピーク強度比:0.89)を得た。
【0075】
(製造例2):x=16
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:89.7質量%、トリパルミチン、東京化成工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、50℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比:2.0、平均粒径:119μm、ピーク強度比:0.90)を得た。
【0076】
(製造例3):x=16
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:69.9質量%、ハードパームステアリン、日清オイリオグループ株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、50℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、アスペクト比1.4、平均粒径99μm、ピーク強度比:0.88)を得た。
【0077】
(製造例4):x=16、(c2)テンパリング法
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:89.7質量%、トリパルミチン、東京化成工業株式会社製)15gを、80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、30℃恒温槽にて0.01時間冷却した後、60℃恒温槽にて2時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比2.0、平均粒径87μm、ピーク強度比:0.89)を得た。
【0078】
(製造例5):x=16、(c1)シーディング法
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:89.7質量%、トリパルミチン、東京化成工業株式会社製)15gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて品温が60℃になるまで冷却した後、トリパルミチン油脂粉末を原料油脂に対して、0.1質量%添加し、60℃恒温槽にて2時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比2.0、平均粒径92μm、ピーク強度比:0.89)を得た。
【0079】
(製造例6):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:99.6質量%、トリステアリン、シグマアルドリッチ製)3gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、60℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比2.0、平均粒径30μm、ピーク強度比:0.93)を得た。
【0080】
(製造例7):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:96.0質量%、トリステアリン、東京化成工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比2.0、平均粒径31μm、ピーク強度比:0.88)を得た。
【0081】
(製造例8):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比1.6、平均粒径54μm、ピーク強度比:0.89)を得た。
【0082】
(製造例9):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:66.7質量%、大豆極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、アスペクト比1.4、平均粒径60μm、ピーク強度比:0.91)を得た。
【0083】
(製造例10):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:84.1質量%、日清ひまわり油(S)(ハイオレイックヒマワリ油)、日清オイリオグループ株式会社製)を定法により完全水素添加処理を行い、水素添加物(XXX型:83.9質量%)を得た。得られたハイオレイックヒマワリ油極度硬化油25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比1.6、平均粒径48μm、ピーク強度比:0.89)を得た。
【0084】
(製造例11):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:66.7質量%、大豆極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)18.75gと、別の1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:11.1質量%、パーム極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)6.25gを混合し、原料油脂とした(XXX型:53.6質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、アスペクト比1.4、平均粒径63μm、ピーク強度比:0.78)を得た。なお、パーム極度硬化油は、XXX型トリグリセリドの含量が極めて少ないので、希釈成分として使用した(以下、同様)。
【0085】
(製造例12):x=18、(c1)シーディング法
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:96.0質量%、トリステアリン、東京化成工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、70℃恒温槽にて品温が70℃になるまで冷却した後、トリステアリン油脂粉末を原料油脂に対して、0.1質量%添加し、70℃恒温槽にて12時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比2.0、平均粒径36μm、ピーク強度比:0.88)を得た。
【0086】
(製造例13):x=18、(c2)テンパリング法
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)15gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、50℃恒温槽にて0.1時間冷却した後、65℃恒温槽にて6時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比1.6、平均粒径50μm、ピーク強度比:0.90)を得た。
【0087】
(製造例14):x=18、(c2)テンパリング法
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)15gを、80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、40℃恒温槽にて0.01時間冷却した後、65℃恒温槽にて2時間静置し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比1.6、平均粒径52μm、ピーク強度比:0.89)を得た。
【0088】
(製造例15):x=18、(c3)予備冷却法
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、原料油脂を70℃になるまで70℃の恒温槽で保持し、65℃恒温槽にて8時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させ、結晶化を完了させた後、室温(25℃)状態まで冷却した。得られた固形物をほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比1.6、平均粒径60μm、ピーク強度比:0.89)を得た。
【0089】
(製造例16):x=16、18
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:89.7質量%、トリパルミチン、東京化成工業株式会社製)12.5gと、1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:96.0質量%、トリステアリン、東京化成工業株式会社)12.5gを混合し、原料油脂とした(XXX型:93.8%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて16時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.2g/cm3、アスペクト比1.6、平均粒径74μm、ピーク強度比:0.90)を得た。
【0090】
(製造例17):x=16、18
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:69.9質量%、ハードパームステアリン、日清オイリオグループ株式会社製)12.5gと、1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)12.5gを混合し、原料油脂とした(XXX型:75.3%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて16時間冷却し、体積が増加した空隙を有する固形物を形成させた後、ほぐすことでβ型油脂を含有する粉末油脂組成物(ゆるめ嵩密度:0.3g/cm3、アスペクト比1.4、平均粒径77μm、ピーク強度比:0.88)を得た。
【0091】
(製造比較例1):x=16
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:89.7質量%、トリパルミチン、東京化成工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、25℃恒温槽にて4時間冷却したところ、完全に固化し(ピーク強度比:0.10)、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
【0092】
(製造比較例2):x=16、18
1位~3位にパルミチン酸残基(炭素数16)を有するトリグリセリド(XXX型:69.9質量%、ハードパームステアリン、日清オイリオグループ株式会社製)12.5gと、1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:11.1質量%、パーム極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)12.5gを混合し、原料油脂とした(XXX型:39.6質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、40℃恒温槽にて12時間冷却したところ、完全に固化し(ピーク強度比:0.12)、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
【0093】
(製造比較例3):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:79.1質量%、菜種極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)25gを80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、40℃恒温槽にて3時間冷却したところ、完全に固化し(ピーク強度比:0.11)、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
【0094】
(製造比較例4):x=18
1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:66.7質量%、大豆極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)12.5gと、別の1位~3位にステアリン酸残基(炭素数18)を有するトリグリセリド(XXX型:11.1質量%、パーム極度硬化油、横関油脂工業株式会社製)12.5gを混合し、原料油脂とした(XXX型:39.7質量%)。原料油脂を80℃にて0.5時間維持して完全に融解し、55℃恒温槽にて12時間冷却したところ、完全に固化し(ピーク強度比:0.12)、粉末状の結晶組成物には至らなかった。
【0095】
上記製造例及び製造比較例の結果を表2にまとめる。
【表2】
【0096】
[錠剤の分析方法]
・硬度
錠剤の硬度(kgf)は、木屋式デジタル硬度計((株)藤原製作所製)を用いて測定した。硬度の測定は、錠剤10錠について、1つ1つの硬度を測定し、その平均値を錠剤の硬度とした。
・質量
錠剤の質量(mg)は、錠剤20錠について、1つ1つの質量を電子天秤で測定し、その平均値を錠剤の質量とした。
・厚み
錠剤の厚み(mm)は、錠剤10錠について、1つ1つの厚みをデジタルノギスで測定し、その平均値を錠剤の厚みとした。
・崩壊時間(補助盤なし)
崩壊試験器(富山産業(株)製、装置「NT-40H」)を用いて、38℃の水中における錠剤の崩壊時間(秒)を求めた。錠剤6錠について破壊時間を測定し、その平均値を錠剤の破壊時間とした。
・摩損度
質量を測定した錠剤20錠を、錠剤摩損度試験器(萱垣医理科工業(株)製、装置「47709」)に入れ、100回/4分間の回転数で回転させた。摩損度試験後、錠剤の質量を測定した。測定した値を用いて、次の式から摩損度(質量%)を算出した。摩損度は測定を1回行い、その値を錠剤の摩損度とした。
摩損度(質量%)=(錠剤摩損度試験器に入れた錠剤の質量-摩損度試験後の錠剤の質量)/錠剤摩損度試験器に入れた錠剤の質量×100
・乾燥減量
錠剤を砕いて、4gをシャーレに入れ、80℃で20分間乾燥し、乾燥前後の砕いた錠剤の質量を測定した。測定した値を用いて、次の式から乾燥減量(質量%)を求めた。乾燥減量は測定を1回行い、その値を錠剤の乾燥減量とした。
乾燥減量(質量%)=(乾燥前の砕いた錠剤の質量-乾燥後の砕いた錠剤の質量)/乾燥前の砕いた錠剤の質量×100
・嵩密度
上部にガラスロートを備えた円柱の25mLの容器に、錠剤の原料の混合末を投入して25ml充填した。体積25mlを、投入した錠剤の原料の混合末の質量で除することで嵩密度(g/mL)を求めた。嵩密度は測定を1回行い、その値を錠剤の原料の混合末の嵩密度とした。
【0097】
[錠剤の製造]
以下に、錠剤の製造例を示す。以下に示す実施例及び比較例の錠剤においては、各成分を表3、表4、及び表5に示す量で配合する。
また、各実施例及び比較例の物性値(硬度、質量、厚み、崩壊時間、摩損度、乾燥減量、及び嵩密度)を測定し、表3、表4、及び表5にそれぞれ示す。なお、キャッピングが発生した比較例については、硬度を計測不可能であるため、×で示した。バインディングが発生した比較例については、質量を計測不可能であるため、×で示した。比較例15については、錠剤を製造不可能であったため、各種物性値を測定していない。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
(実施例1)
表3に示す配合のHMB-Ca含有錠剤を試作機で製造した。
具体的には、まず、HMB-Ca(フィトファーマ株式会社製、商品名「HMB-Ca」)、粉末油脂組成物(製造例1)及び還元麦芽糖水飴(三菱商事ライフサイエンス株式会社製、商品名「アマルティMR-50」)を、ビニール袋に入れて混合後、ステンレス容器に入れ、バインダー液を滴下し練合造粒することにより造粒物を得た。
得られた造粒物を、棚式乾燥機(60℃)で6時間乾燥後、16メッシュの篩に通した。
乾燥した造粒物にステアリン酸マグネシウム(三栄源エフエフアイ株式会社販売、商品名「ステアリン酸マグネシウム」)を添加し、1分間混合した。
ステアリン酸マグネシウムを添加した造粒物を、打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)し、錠剤を得た。
1バッチの仕込み原料50gから、直径10mm、質量420mgの碁石型錠剤を約100個製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0102】
(実施例2)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0103】
(実施例3)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0104】
(実施例4)
表3に示す配合のHMB-Ca含有錠剤を試作機で製造した。
具体的には、まず、HMB-Ca(フィトファーマ株式会社製、商品名「HMB-Ca」)、粉末油脂組成物(製造例1)を、ビニール袋に入れて混合後、ステンレス容器に入れ、バインダー液を滴下し練合造粒することにより造粒物を得た。
得られた造粒物を、棚式乾燥機(60℃)で6時間乾燥後、16メッシュの篩に通した。
乾燥した造粒物にステアリン酸マグネシウム(三栄源エフエフアイ株式会社販売、商品名「ステアリン酸マグネシウム」)を添加し、1分間混合した。
ステアリン酸マグネシウムを添加した造粒物を、打錠機(株式会社畑鐵工所製、機械名「HT-P18」)で打錠(打錠圧2500kgf)し、錠剤を得た。
1バッチの仕込み原料3000gから、直径10mm、質量420mgの碁石型錠剤を5500個製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度、質量、厚み、崩壊時間、摩損度、乾燥減量、及び嵩密度を表3に示す。
【0105】
(実施例5)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0106】
(実施例6)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0107】
(実施例7)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0108】
(実施例8)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0109】
(実施例9)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更し、粉末油脂組成物の代わりにグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムTR-FB」)を配合した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度、質量、厚み、崩壊時間、摩損度、乾燥減量、及び嵩密度を表3に示す。
【0110】
(比較例1)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピングが生じたので硬度を測定することができなかった。
【0111】
(比較例2)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度及び質量を表3に示す。
【0112】
(比較例3)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表3に示す量に変更し、ステアリン酸マグネシウムを配合しないものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピング、フィルミング、及びスティッキングが生じたので硬度を測定することができなかった。
【0113】
(比較例4)
実施例1における各成分の配合量を表3に示す量に変更した。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピングが生じたので硬度を測定することができなかった。
【0114】
(比較例5)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表3に示す量に変更し、ステアリン酸マグネシウムを配合しないものとし、粉末油脂組成物の代わりに菜種硬化油脂(フロイント産業株式会社製、商品名「ラブリワックス(登録商標)」)を配合するものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピング、フィルミング、及びスティッキングが生じたので硬度を測定することができなかった。
【0115】
(比較例6)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表3に示す量に変更し、ステアリン酸マグネシウムを配合しないものとし、粉末油脂組成物の代わりにグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製、商品名「ポエムTR-FB」)を配合するものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピング、フィルミング、及びスティッキングが生じたので硬度を測定することができなかった。
【0116】
(比較例7)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表3に示す量に変更し、粉末油脂組成物を配合しないものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピング及びバインディングが生じたので硬度及び質量を測定することができなかった。
【0117】
(比較例8)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表4に示す量に変更し、粉末油脂組成物の代わりに菜種硬化油脂(フロイント産業株式会社製、商品名「ラブリワックス(登録商標)」)を配合するものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた碁石型錠剤の硬度、質量、厚み、崩壊時間、摩損度、乾燥減量、及び嵩密度を表4に示す。
【0118】
(比較例9)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表4に示す量に変更し、粉末油脂組成物の代わりに中鎖脂肪酸含有粉末(日清オイリオグループ株式会社製、商品名「日清MTCパウダー」)を配合するものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピング、フィルミング、スティッキング、及びバインディングが生じたので硬度及び質量を測定することができなかった。
【0119】
(比較例10)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表4に示す量に変更し、粉末油脂組成物の代わりにショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル株式会社製、商品名「リョートーシュガーエステルS-370F(登録商標)」)を配合するものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にバインディングが生じたので硬度及び質量を測定することができなかった。
【0120】
(比較例11)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表4に示す量に変更し、粉末油脂組成物の代わりにココナッツオイル(ビーエイチエヌ株式会社販売、商品名「ココナッツオイル粉末」)を配合するものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピング、フィルミング、スティッキング、及びバインディングが生じたので硬度及び質量を測定することができなかった。
【0121】
(比較例12)
実施例1におけるHMB-Caの配合量を表4に示す量に変更し、粉末油脂組成物の代わりにアーモンドオイル(横山香料株式会社、商品名「アーモンドオイルB1667」)を配合するものとした。それ以外は実施例1と同様の方法により製造した。
得られた造粒物を打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にキャッピング、フィルミング、スティッキング、及びバインディングが生じたので硬度及び質量を測定することができなかった。
【0122】
(比較例13)
表5に示す配合のHMB-Ca含有錠剤を試作機で製造した。
具体的には、まず、HMB-Ca(フィトファーマ株式会社製、商品名「HMB-Ca」)、粉末油脂組成物(製造例1)、ステアリン酸マグネシウム(三栄源エフエフアイ株式会社製、商品名「ステアリン酸マグネシウム」)を、ビニール袋に入れて混合し混合物を得た。
得られた混合物を、ステンレス容器に入れ、バインダー液を滴下し練合造粒することにより造粒物を得た。
得られた造粒物を、棚式乾燥機(60℃)で6時間乾燥後、16メッシュの篩に通した。
得られた造粒物50gを打錠機(株式会社菊水製作所製、機械名「No.6」)で打錠(打錠圧1500kgf)したが、打錠時にフィルミング及びスティッキングが生じ、錠剤を製造することはできなかった。
【0123】
[試験例1]錠剤中のHMB-Caの含有量の選択
実施例1~5及び比較例1について打錠性及び製造可否を評価し、錠剤中のHMB-Caの好適な含有量を選定した。
打錠性は、キャッピング、フィルミング及びスティッキング、並びにバインディングのそれぞれについて以下の基準に従って評価した。
<打錠性評価基準>
◎(優):まったく生じなかった。
〇(良):わずかに生じた。
△(可):時々生じた。
×(不可):頻繁に生じた。
製造可否は、打錠性評価の結果に基づき、以下の基準に従って評価した。
<製造可否評価基準>
〇(製造可能):打錠性評価の結果が◎又は〇のみからなる。
×(製造不可):打錠性評価の結果のうち、1つ以上が△又は×である。
【0124】
打錠性評価及び製造可否評価の結果を、以下の表6に示す。
【表6】
【0125】
表6に示すように、錠剤中のHMB-Caの好適な含有量は、70質量%以上98質量%未満であることが明らかとなった。
【0126】
[試験例2]錠剤中の粉末油脂組成物の含有量の選択
実施例4~6及び比較例1、2について打錠性及び製造可否を評価し、錠剤中の粉末油脂組成物の好適な含有量を選定した。なお、打錠性及び製造可否は、上記した評価基準に従って評価した。
【0127】
打錠性評価及び製造可否評価の結果を、以下の表7に示す。
【表7】
【0128】
表7に示すように、錠剤中の粉末油脂組成物の好適な含有量は、1.5質量%以上5.0質量%未満であることが明らかとなった。
【0129】
[試験例3]ステアリン酸マグネシウムの含有量の選択
実施例4、7、8、及び比較例3、4について打錠性及び製造可否を評価し、錠剤中のステアリン酸マグネシウムの好適な含有量を選定した。なお、打錠性及び製造可否は、上記した評価基準に従って評価した。
【0130】
打錠性評価及び製造可否評価の結果を、以下の表8に示す。
【表8】
【0131】
表8に示すように、錠剤中の粉末油脂組成物の好適な含有量は、0.2質量%以上0.8質量%未満であることが明らかとなった。
【0132】
[試験例4]第1の滑沢剤と第2の滑沢剤の併用の必要性
比較例3、5、6、7について打錠性及び製造可否を評価し、錠剤中の第1の滑沢剤と第2の滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)との併用による効果を確認した。なお、打錠性及び製造可否は、上記した評価基準に従って評価した。
【0133】
打錠性評価及び製造可否評価の結果を、以下の表9に示す。
【表9】
【0134】
表9に示される比較例3及び7の結果から明らかなように、錠剤中の粉末油脂組成物及びステアリン酸マグネシウムを、それぞれ単体で含有する場合には打錠障害が発生し、錠剤の製造が困難である。また、比較例5及び6の結果から明らかなように、粉末油脂組成物に替えて菜種硬化油脂又はグリセリン脂肪酸エステルを、それぞれ第1の滑沢剤として単独で使用した場合にも、打錠障害が発生する。したがって、第1の滑沢剤と第2の滑沢剤とを併用する必要があることが明らかとなった。
【0135】
[試験例5]第1の滑沢剤の選択
実施例9及び比較例8~12について打錠性及び製造可否を評価し、粉末油脂組成物以外の油脂を用いた場合の、第1の滑沢剤としての効果の有無を検討した。なお、実施例9及び比較例8~12におけるHMB-Caの配合比は、実施例1~8のうち最も効果的に打錠障害が抑制された、実施例4におけるHMB-Caの配合比と同じである。打錠性及び製造可否は、上記した評価基準に従って評価した。
【0136】
打錠性評価及び製造可否評価の結果を、以下の表10に示す。
【表10】
【0137】
表10に示すように、グリセリン脂肪酸エステルを配合した実施例9においては、打錠障害が発生することなく錠剤を製造することが可能である。したがって、グリセリン脂肪酸エステルを、粉末油脂組成物と同様に第1の滑沢剤として使用可能であることが明らかである。
【0138】
[試験例6]錠剤原料の混合順序の評価
比較例15について、打錠性を評価し、錠剤原料の混合順序に違いよる製造可否を評価した。上述の通り、比較例においてはHMB-Ca、粉末油脂組成物、及びステアリン酸マグネシウムを同時に混合している。なお、比較例15における各錠剤原料の配合比は、実施例1~9のうち最も効果的に打錠障害が抑制された、実施例4における配合比と同じである。打錠性及び製造可否は、上記した評価基準に従って評価した。
【0139】
打錠性評価及び製造可否評価の結果を、以下の表11に示す。
【表11】
【0140】
表11に示すように、比較例13においてHMB-Ca、粉末油脂組成物、及びステアリン酸マグネシウムを同時に混合するとフィルミング及びスティッキングが発生し、錠剤化することができなかった。したがって、本発明の錠剤は、造粒工程及び混合工程の順に製造すること、即ちHMB-Ca及び第1の滑沢剤を先に混合し、次いで第2の滑沢剤を混合することにより製造可能であることが明らかとなった。